【艦これ】龍驤「たりないもの」外伝

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1 : ◆I4lwDj9Dk4S2 [saga]:2018/07/29(日) 19:36:41.81 ID:KWhwaqQEO
このスレは
【艦これ】龍驤「足りないもの」【安価】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515586186/

からの派生作品や外伝を書き込む場所です、とりあえず場所だけ立てておきました


自分も使えなくなったエンドやその他ボツの話なんかを書き込むかもしれませんので、よろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1532860601
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/29(日) 19:43:16.32 ID:D3aw33GFO
拡散希望
あやめ速報、あやめ2ndへの掲載拒否を推奨します
創作活動に対する冒涜を行う酷いまとめサイトです

あやめ速報へのSS掲載を拒否して下さい
あやめ速報に掲載されてしまった貴方のSSを消すように訴えて下さい
不当サイトの活動源にしてはいけません
あやめ速報を利用しないで下さい
このことを多くの方へ伝えて下さい
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 23:29:46.46 ID:OowvP4VX0
保守
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 07:12:34.93 ID:2LesPwfK0
保守
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 23:14:21.72 ID:objbYOuMO
ほんの少しですが書かせてもらいます。外伝と呼べるかはわかりませんが龍驤と提督が発狂していた時の話です



狂日

「あひゃははははははっ!沈め沈め沈め沈め!」

今日もまた神通はんの叫び声で目が覚める。朝方までやることギッシリでやっと寝れたと思ったらこれや。
神通はんは朝やろうが昼やろうがお構い無しに暴れよる。もう何が敵で何が味方かすらわかってないみたいや

「やめて下さい神通さん!そんな装備で海に出るなんて!」
「ゼンブワタシが壊す。コワスコワスコワスコワス。…」

夕張はんが必死で神通はんを止めてるけど練度の差は大きい。夕張はんを振り払うと神通はんは単艦出撃して行った

「痛あ・・」
「夕張はん怪我とかしてない?」
「大丈夫です、でも神通さんが一人で出撃してしまいました・・」
「ウチらにはどないしょうもできへん、せめて鎮守府で暴れやんのが救いやで」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 23:17:15.74 ID:objbYOuMO
夕張はんは潜水艦の子らに付きっ切りやから他にできることはウチがせなあかん。執務室に向かおうとした所で今度は龍田はんらを見かけてしまった



「シネ」
「あがっっっぐ・・」
「あああぁぁああぁぁアぁァァァァ!」


龍田はんは槍の柄で暁の首を突き刺しとる。ほんでその脇には頭を抱えて叫んどる響がおった。暁は息ができてないみたいで顔色が悪い。このままやとあかんからとにかく槍を引っ込めるように説得せなあかん



「龍田はんお願いやからやめたってくれる?」
「オマエもシネ」
「がっっっっ・・」


暁に槍を突き立てたままウチの首を絞めてきた。首の骨が折れるん違うかっていうくらい強い力で絞めてくる。右手で槍を持っとるから利き手は右手のはずや。ウチの首を絞めとる左手はそこまで強くないはずやのに。



「シぬ、シヌ・・また死ぬぅんああァァァァ※△○◇!」


響は向こうの言葉で叫んでるみたいやけどどないすることもできへん。暁はとうとう声も聞こえへんようになった。次はウチの番なんやろか。ウチはこのまま死んでしまうんか。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 23:19:02.53 ID:objbYOuMO
いっそこのまま死ぬ方が楽かもしれん。龍田に殺してもらった方が楽かもしれやん。司令はんも狂ってしまったこんな日々は地獄でしかない。この世が地獄なんやったらあの世はきっと天国や。もうやれることは全部やったんやから恨まれることはないでな。ウチがそう思って体を力を弱めた瞬間、龍田はんは突き飛ばされて廊下に転がっていった



「しっかりしなさい暁。意識はあるの?」
「ゲ・・ほっっ・・」
「意識はあるみたいで安心したわ黒潮は平気?」


雲龍はんにお礼を言いつつウチは平気って答える。龍田はんは雲龍はんの一撃でのびたみたいで動いてなかった



「龍田は私が面倒見るから安心して」
「ウチは暁と響のフォローしとくわ。助けてくれてほんまにありがとうな」
「これくらいなんて事ないけど、提督はどこに行ったのかしらね。提督も漣も早く帰ってこないかしら」


雲龍はんの中ではあの事件がなかったことになっとる。龍驤はんが電車に轢かれてカタワになったのと漣がここから逃げ出したことが綺麗サッパリ消えとるんや。
それだけや無くて今が何月何日かも理解できてない。着任してきた日付けを言うたと思ったらその一か月の話をしだしたりするねん。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 23:21:48.73 ID:objbYOuMO
夕張はんによれば記憶障害かもしれんって言うてるけどそんなもんどうでもいいコイツらは全員狂っとるんや。
唯一無事やった潜水艦のみんなもそのうちあかんようになるやろ。そうなったらこの鎮守府は終わりや。


終わり、全部終わりや。せっかく艦娘として生を受けたのにウチはまた死ぬんか。こんなことやったら生まれてくるんやなかった。


何も考える気がなくてボーっとしとったら窓の外から空が見えた。雲一つない景色で上からここが丸見えになっとる感じやった。これやったらカミサマにも見てもらえてるんと違うかな。そんなことはあり得れへんけどウチの口は自然と開いた


「カミサマ助けて・・お願いやからこの地獄からウチを救って下さい・・・・」


ウチの独り言は響の叫び声にかき消されてカミサマどころか誰にも届くことは無かった
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 23:22:47.71 ID:objbYOuMO
お目汚しありがとうござました
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 23:27:42.40 ID:+Pbvy/qso
おつおつ
よう踏ん張ったな…
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/04(日) 10:58:39.97 ID:w93enpFpO
おつ
酉つけてないということは>>1ではないってことかな?
良かったよ
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/04(日) 15:58:00.58 ID:XaXlXUNH0
乙です
正に地獄だな…
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 19:51:30.43 ID:zLVN/nU7O
勝手に書きました。口調などが一貫してない部分があるかもしれません。


これはガングートが爆撃から漁港を守る→記者会見の話の数ヶ月後、漁港が再開され数日経った日の話

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漁港
ワイワイ ガヤガヤ
ワイワイ ガヤガヤ


漁師1「いや〜爆撃された時はどうなるかと思ったがなんとかなるもんだな。」

漁師2「建物はピカピカ、通路はツルツル、死傷者が出なくて本当に良かったな。」

ガングート「全くだ、私に感謝しろよ。」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 19:52:18.79 ID:zLVN/nU7O
漁師1「おっ!ガングートさん、すみませんねまたボランティア頼んじゃって。」

ガングート「いや、私もこの漁港が再開されたらまた手伝おうと思っていたのだ、遠慮するな。
それよりこの荷物はいつもの倉庫に積んでおけば良いのか?」

漁師2「まったく、嬉しい事言ってくれるじゃないの・・・あ〜、このオレンジ色の箱はあっちにいる田中ってヤツに渡してくれ、あいつが整理するから、残りはいつもの場所だ。」

ガングート「了解した、では失礼する。」カツカツ

漁師1「さぁ、俺たちも仕事だ仕事。ボランティアばっかりに任せちゃ顔が立たねぇ。」

漁師2「本当だな、ははは!」

ワイワイ ガヤガヤ
ワイワイ ガヤガヤ
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 19:53:43.03 ID:zLVN/nU7O
----
昼休み

ガングート「さて、次は・・・」

漁師1「オーイ!もう昼休みだぞー!」

ガングート「む、もうそんな時間だったか」

漁師1「ははは、そんな反応だと思ったよホラ」缶コーヒー

漁師1「そんなに普段の仕事に比べてこっちは楽かい?」

ガングート「あぁ遥かに楽だ、普段の生きるか死ぬかに比べたらな」カシュッ

漁師1「あんた達が居るからこっちも商売出来てるから感謝しきれないよ。本当にありがとうな。」

ガングート「同じ様な事を皆から言われているぞ、気にしなくていい。本当にこの国の人間は義理堅いな。」ゴクゴク

漁師1「・・・それにしても記者会見のガングートさんはテンパってて噛みまくりで面白かったな〜。」

ガングート「ッ!ゴホッゴホッ、貴様ッ!アレを見たのか!」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 19:55:23.43 ID:zLVN/nU7O
漁師1「見たも何も、ここで働いてる人全員であの会見見てたんだぞ。」

ガングート「なっ、全員でだと!」

漁師1「あっ、良いところに。オーイ!」
漁師2「ん?なんだ?」

ガングート「おい!仲間を呼ぶんじゃない!」

漁師1「ガングートさんの記者会見ってみんなで見たよな?」

ガングート「聞くんじゃない!」

漁師2「見た見た。すごい面白かったなアレ」

ガングート「お前も答えるな!」

漁師1「いつもは自信満々で鋭い眼光のガングートさんが挙動不振になって、何か喋る度に唇がプルプル震えてたよな。」

ガングート「思い出さなくていいそんな事!」

漁師2「俺は途中の『危険が危なかった』のやつが好きだけどな。」

ガングート「ぬぁぁぁ!蒸し返すんじゃない!鎮守府内でもかなりイジられたんだからな!」

漁師1「でもそんなガングートさんがこの漁港を守ってくれたから・・・」

ガングート「急に取り繕ったフォローを入れるな!なんなんだまったく・・・」カツカツ
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 19:56:16.02 ID:zLVN/nU7O
漁師1「ガングートさん何処行くんですか??」

ガングート「昼飯だ!缶コーヒーだけで腹が膨れるか!」

漁師2「あっ!ガングートさん、お詫びに奢りますよ!」

ガングート「何?本当か??」

漁師2「俺と1さんで奢りますから。」

漁師1「話題振ったのは俺だしな・・・機嫌なおして下さい。」

ガングート「・・・早く行くぞ!さっさと食べて仕事再開だ!」

漁師1「はーい」
漁師2「うーす」

----
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 19:57:24.14 ID:zLVN/nU7O
初めてこういうの書きました、楽しんで頂けたら幸いです。
つまらなかったごめんなさい。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 20:08:04.25 ID:0PJ/qziBo
おつおつ
鎮守府ても外でもイジられる親しみ易いガンちゃんいいね!
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/06(火) 18:17:26.87 ID:WiC6eSNG0
途中までですが投稿します。
旧世界(傷付いた)から新世界(足りないもの)へどう変わっていったのか。『足りないもの』が始まる何年か前の所で終わります。
妄想バリバリなので合わない人がいると思います。ご了承ください。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/06(火) 18:25:01.69 ID:WiC6eSNG0
神威「皆さん、着きました。」


提督「……ここか。」


望月「あ〜、疲れた〜。」


菊月「望月は何もしてないだろう……。三日月、この場所で間違いないな?」


三日月「えぇ、間違いない。ここです。」


千代田「ここで扉ってやつを開けば平和な世界になるのね。」


荒潮「今よりは良い世界になるって言ったけれど本当かしら〜?」


三日月「…………本当よ。理想郷、ニルヤカナイへの扉を開けばその力がこっちの世界に流れ込んで来る。理想郷の力が流れ込んで来るのだから、少なくとも今よりは良い世界になるわ。」


荒潮「……如月はどう思う?始まりの艦娘の言っていることは本当かしら?」


如月「わから…ない…。けれど…嘘を…ついている様には…見えないわ…。」


荒潮「そう……。なら、信じるしか無いわねぇ。」


龍驤「うちはもうこの体で満足してるんやけどなぁ……。もしかして今よりもナイスバディになってしまうんか!?ほんま困るわ〜♪」


曙「はいはい、存分に困ってちょうだい。大鳳、念のために海の底の確認してもらえる?」


大鳳「わかったわ。万全を期しましょう。……………………うん、大丈夫ね。」


羽黒「船の中過ごしやすかった!」


グラーフ「そうだな。揺れも殆ど気にならなかった。」


ル級「(船が揺れてグラーフが泣きついてくると思ったのに……!)」


ガンビアベイ「ほ、本当に船の上でやるんですか?」


ポーラ「直上に島でもあれば良かったんですけどね〜。仕方ないですよねぇ。」


三日月「ここが良いわ。三日月、そろそろ…………。分かりました、始まりの艦娘さん。」


三日月「さぁ、皆さん。ここに大きい扉があるとイメージしてください。そして自分の中にある力を放出してその扉を捉えてください。」


三日月「捉えた。そのまま押して!いきます!」

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/06(火) 18:34:38.20 ID:WiC6eSNG0


ガシッ ズッ……


千代田「うぅ……重い。」


菊月「くっ、司令官!支えてくれ!」


望月「まじ面倒くせ〜……でもやるしかないか!」


ポーラ「車椅子はポーラが押します!ガンビアベイさんは扉の方に集中してください!」


ガンビアベイ「T……Thank you!(ポーラさん本気だ……。が、頑張らなきゃ!)」


龍驤「これちょっち重過ぎやぁ……曙、まだまだ行くでぇ!」


曙「言われなくても……くっ。」


羽黒「皆が好きだから。だから頑張る!」


神威「皆さんの力に少しでもなれるなら私も頑張ります!」


グラーフ「ル級、一緒に頼む!」


ル級「もちろんだ。……グラーフ、この扉を開けて世界がどうなるか未知数だ。それでも怖くないのか。」


グラーフ「ふんっ、散々話しただろう。怖がって先に進まなかったら平和な世界になんてたどり着けない。・・・・・・怖いのは変わらない。それでも進めるのなら進むのだと。」


ル級「……そんなグラーフも悪くない!」


大鳳「私はこの扉の先、扉が開いた世界の先まで見透してみせるわ。はっ!」


ズズズッ……


三日月「……私は艦娘が虐げられる世界なんて望まないわ。三日月も皆も協力してくれてありがとう。」


荒潮「まだ開いていないんだから、もう終わった事のように言わないでもらえるかしら……!」


菊月「そうだ、終わったら桜の丘で花見をしないか?」


曙「それ今言うの!?」


望月「おぉー。いいねぇ。」


千代田「じゃあ師匠と私と曙で食事の用意しましょ。」


ポーラ「ポーラはワインを用意しますね〜。とってもとっっても楽しみです〜。ザラ姉様達も連れて行きましょう〜。」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/06(火) 18:44:26.84 ID:WiC6eSNG0




ーー


ーーー


ザラ「……提督。」


ザラ提督「どうした?」


ザラ「平和な世界になるのだとしたら怪我が起こらない。そうすれば怪我が因果となった出会いも消える。」


ザラ「そして過去が変われば今も未来も変わってしまう……。もしそうなるとしたら提督……。」


ザラ提督「……ザラのことは忘れない。忘れたくない。もし忘れたとしても必ず迎えに行く。だからそれまで待っていてくれないか?」


ザラ「あ……。ずっと……ずっと待ってます……。ふふっ。」


ーーー


ーー





千代田「ひ、ら、い、た!」


菊月「ああ……で、一体どのように変わる……んっ…風?」


提督「……!全員俺の所に集まれ!飲み込まれるぞ!」


ーーー


ーー




24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/06(火) 18:47:40.12 ID:WiC6eSNG0



「………………んっ。ここは?」


寒い。暗い。何があったんだっけ。そうだ。扉を開いたら光と風の奔流を受けて……。


「皆!」


返ってくる私の声が無情に突き刺さるだけ。


「菊月!」


そう叫ぶと、錆びついた扉を開ける音と太陽の光が私に飛び込んできた。


「私の名前を呼んだか?」


菊月だ。
私は寒さと喜びで体を震わせながらも菊月の所まで走った。
その姿を見るまでは。


「えっ……。」


右腕がある。右目もある。髪も赤色に変色していない。


いや、扉を開けて平和な世界になったから治ったのね。


そんな私の希望は



「誰だ?貴様。」



容易く打ち砕かれた。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/06(火) 18:55:22.52 ID:WiC6eSNG0
ーーー

ーー




「お茶です。どうぞ。」


「ありがとう。いただくわ。」


私は菊月に不審艦として応接室まで連れていかれた。
目の前には私を睨む菊月、ソファで寝転んで雑誌か何かを読んでいる望月がいる。


「……望月。」


「ん。呼んだ?」


「その、体は大丈夫?」


「実はさっきまで遠征に行っててさー。あぁー、しんど。マッサージでもしてくれるの?」


「そう、ね。やらせてもらえるかしら?」


「おい、望月。こいつは所属場所が怪しく、私達の鎮守府の倉庫に忍び込んでいたやつだぞ。何をされるか……」


「菊月、客人に失礼過ぎ!もっちもほら、何させようとしているの!」
「してくれるって言ってるんだから良いじゃん。……あーそこそこ。凝ってんだよねー。」


深海棲艦化していない。普通の『望月』だ。なら私の知っている望月とは違う。違う『望月』だ。
なのに私の感覚はこの望月が私の知っている望月だと訴えてくる。


「菊月、謝って!謝らないとまた実験するよ!」


「うげっ!菊月、早く謝れって!」


「はぁ……。確かに失礼だった。悪かった。」


「別に気にしてないから……。ねぇ、菊月。左手で握手してもらえる?」


「なぜ左手?まぁ構わないが…………んっ。」


菊月の手を取る。
千代田と演習した後、一緒にお風呂に入って菊月を応援した。その時に握手したのと同じ感覚。
……あぁ、平和な世界ってそういうことなのねぇ〜。
すると応接室の扉が開かれ、軍服を着た男性が入室してきた。


「司令官。どうでしたか?」


「彼女、荒潮の言っていた鎮守府についてもう一度調べてみたが何も出てこなかった。A提督って人もいなかったよ。それで、もし良かったら……」


「ん〜?A?」


望月が雑誌をパラパラめくっている。覗いてみる。どうやら望月が読んでいたのはファッション雑誌らしい。そしてあるページを開いてテーブルの上に置いた。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/06(火) 18:58:20.95 ID:WiC6eSNG0

「Aってこの男性モデル?」


そうよねぇ。平和な世界なら提督になってないわよねぇ。なら、こう言うしかないじゃない。


「違う人だわ〜。」


「そうだよねー。」


「……で?司令官は続けて何を言おうとしたんだ?」


「あぁ。荒潮さえ良ければドロップ艦として着任しないか?」


「超低確率のドロップ艦としてですか?」


「超低確率?」


「はい。ドロップ艦は超低確率で……もしかして知りませんでした?」


「あたしだって知ってるよー。」


「誰にでも知っていること知らないことがあるだろう。比べることじゃない。」


この世界だとドロップ艦は希少なのねぇ。


そうだ。


「ねぇ、欠損艦っていないのかしら?」


4人とも目を丸くして私を見てくる。
あら〜、聞いたらまずかったかしらぁ。
そう思っていると三日月が口を開いた。


「欠損艦なんていませんよ。艤装展開中なら大きな怪我もしないんですから。怪我をしてもかすり傷程度です。」


「欠損って深海棲艦に腕とか食べられちゃうわけ?そんな戦いやってらんねー。」


「そんな仕様だったら負け戦になるな。艦娘が最初から今の仕様で本当に良かった。」


「艤装を展開しなければ欠損は起こるだろう。だが今のところそういった話も聞かないな。何か気になることがあるのかな?」


「いいえ、混乱させてごめんなさいねぇ。」


私達が存在するってことは深海棲艦がいる。そして戦いもある。
けれど私達の世界みたいな被害は出ないのねぇ。
なら皆は私達の世界の事を思い出さない方が良いわねぇ。
いえ、菊月も望月も欠損や深海棲艦化が起こっていない。艦娘の常識さえ変わっている。
だとすればこの世界は艦娘誕生から変わっていると考えるのが妥当ねぇ。
だから知らない方が良いっていうのが正しいかしらぁ?


私達の世界で起こった悲しい出来事は私の中だけに閉まっておきましょう。
……でも楽しいこともあったわねぇ。


「うーわぁ、司令官泣かせた。泣かせるのは三日月だけにしときなよ。この前の出張の時に私も一緒に行きたかったって泣いてたんだから。はいハンカチ。」


「え?」


あらやだ大変。泣いちゃった。

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