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ハッシュヴァルト「未来が視えるとは思い悩む事ばかりだ。そうだろう、黒木智子」
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172 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:53:00.49 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……私が、黒木智子の側から離れられず、黒木智子に霊力があったことも、救済とやらの一環か?」
グレミィ「その通りだよ、ハッシュヴァルト」
ハッシュ「………」
グレミィ「実際、もこっちの側にいて、彼女を支えてあげることは、君にとって本懐だったはずだ」
ハッシュ「………」
173 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:54:58.81 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「違うとは言わせないよ」
グレミィ「なんたって、君は皇帝補佐として、調和を重んじてきたからね」
グレミィ「そのために、どこかのモヒカンの暴走を制し続けてきた。根気よく、平和的に、ね」
ハッシュ「………………」
グレミィ「それらの事実から想像するに、誰かが道を誤らないよう支えてあげることは、君の本懐だとすら思えた」
グレミィ「だから、君には、もこっちを支える役目を与えてあげた」
グレミィ「その役目を成立させるために、君のその霊骸は、もこっちから離れられないよう造られているんだ」
グレミィ「また、もこっち個人限定で、彼女の霊力を自動的に覚醒させる機能もついている」
グレミィ「全ては、ハッシュヴァルト、君を救済するためなんだよ」
ハッシュ「………………」
174 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:57:03.11 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……ああ、余談だけど、ヤンキーにも君が見えるようになったのは、ぼくからのささやかなプレゼントさ」
グレミィ「ぼくは元々、もこっち及びその関係者には霊体を視認できる程度の霊力を分け与えていた。ぼくがこの世界に来た瞬間からね」
グレミィ「もちろん、その霊力は混乱を防ぐために記憶と共に封印したけど、それをしたのがぼくである以上、霊力だけ覚醒させるのも可能なのさ」
ハッシュ「………」
グレミィ「もこっち以外には見えないままっていうのも可哀想だったし」
グレミィ「それに、ヤンキーなら、君の存在を明かしても、なんだかんだで受け入れてくれるだろうからね」
ハッシュ「………………」
175 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:59:28.13 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……さて、これで、君がこの世界に送られて、もこっちの側に置かれた理由はわかったよね?
ハッシュ「………」
グレミィ「だったら、お次は、いよいよこの世界の秘密について明かしちゃうねーー」
ハッシュ「……秘密だと?」
グレミィ「うん、言い忘れてたけど、この世界ーーー」
グレミィ「ーーー実はループしているんだよ」
176 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:02:14.11 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「?!」
グレミィ「まあ、厳密には時間の巻き戻しなんだけど、ここではイメージしやすさ重視で敢えてループと表現するよ」
グレミィ「そう、この世界は、条件を満たすことで世界全体の時が巻き戻り、ループする仕組みになっている」
ハッシュ「……?!?」
グレミィ「ループする条件は2つ」
グレミィ「卒業式の日が終わる前にもこっちが死ぬか、もこっちが生存したまま卒業式の日が終わるかのどちらかだ」
グレミィ「そのどちらかを満たした時、君がこの世界で目覚めたその瞬間まで、世界全体が巻き戻るのさ」
177 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:04:39.84 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「ーーーーーー?!」
グレミィ「ははっ、ビックリしてるね、ハッシュヴァルト」
グレミィ「無理もない。人は己が理の外にあるものを、易々と己のものになんて、できっこないんだから」
ハッシュ「………!」
グレミィ「でも、これは現実で事実で本当のことなんだよね」
グレミィ「それは覆しようが無い」
ハッシュ「………」
178 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:06:52.80 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……おかしいとは思わなかった?」
ハッシュ「………?」
グレミィ「どうして、君がもこっちを脅迫した時ーーー」
グレミィ「ーーー君はもこっちの反論に耐えることができたのか?」
ハッシュ「!?」
グレミィ「何周回も君を見続けてきたぼくだから言えるけど、君は本来なら、ああいった言葉に耐えられず、感情的になってしまう人なんだ」
グレミィ「違う?」
179 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:08:15.88 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「ーーっ、!?」
グレミィ「だけど、もこっちのあの台詞を、君は耐えることができた」
グレミィ「感情のままに、もこっちを殺さずにいられた」
グレミィ「おかしいね? いったい何が違うんだろうね?」
ハッシュ「………」
グレミィ「答えは、とっても簡単」
グレミィ「君が何度も同じことを繰り返しているからだ」
グレミィ「最初の周回から前の周回の経験が深層意識に刻まれているからなのさ」
180 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:10:07.55 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「………」
グレミィ「本来なら、ぼく以外は問答無用で全部巻き戻るよう設定してあるんだけどね」
グレミィ「君の霊圧があまりに大きいせいで、巻き戻しに不十分なところがあったみたいだ」
グレミィ「まあ、そのおかげで今の君があるわけなんだけどさ」
グレミィ「そう、今の君が、ね」
ハッシュ「………………」
181 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:11:40.20 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……君は、もこっちの言葉に耐えようとした」
グレミィ「だけど、我慢できず、殺して、ループした」
グレミィ「そして、改めて耐えようとした」
グレミィ「だけど、やっぱり我慢できず、殺して、ループした」
グレミィ「それを積み重ねた結果、君は今ここに立っている」
グレミィ「君がもこっちの言葉に耐えようとしたことは、努力として経験として、君の深層意識に刻まれたからだ」
グレミィ「そして、その努力は実った。だから、君はこうしてぼくと話ができている」
182 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:13:11.42 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「さて、今の君は、いったい何百周目なんだろうね?」
ハッシュ「………」
グレミィ「何百回、もこっちを殺しているんだろうね?」
ハッシュ「………」
グレミィ「あまりに退屈で、数えるのやめちゃったよ。殺した回数なんてもはや想像することしかできない」
183 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:14:26.54 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……なぜだ?」
グレミィ「?」
ハッシュ「なぜ、時間を巻き戻すシステムなど造った?」
グレミィ「………」
ハッシュ「……卒業式の日が終わる前に黒木智子が死亡することを条件に、時間を巻き戻すというのはまだ理解できる」
ハッシュ「お前のいう幸福には、黒木智子の存在が必須となる。ならば、死んだ事実を消失させることは道理」
ハッシュ「だが、なぜ黒木智子が生存したまま卒業式の日が終わることを条件に、時間の巻き戻しを発生させる?」
ハッシュ「そんなことをすればーーー」
グレミィ「もこっち達との高校生活を何度でも楽しめるようにしたかったからだよ」
184 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:16:15.82 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「………」
グレミィ「ぼくは、君やもこっちが、いまの高校生活を何度も楽しめるようにしたかったんだ」
グレミィ「……どんな素敵な物語も、いつかは必ず終わってしまう」
グレミィ「いくつもの漫画が、いつかは終わりを迎えるように」
グレミィ「もこっち達の高校生活も、いつかは必ず終わってしまう」
ハッシュ「………」
グレミィ「それでも楽しみたかったら、頭をカラッポにして読み返すしか無い」
グレミィ「だから、もこっち達が卒業した後、ループするシステムを造ることにした」
グレミィ「終わりの無い幸福なんて、想像の果てにしか無いのだから」
185 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:17:48.68 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……もちろん、そんなことをすれば、この世界に未来は無くなる」
グレミィ「今日、生まれた、もこっちとヤンキーの信頼関係も」
グレミィ「これから、もこっちが、ヤンキーや他のキャラクター達と、どれほど親交を深めようとも」
グレミィ「彼女たちが、先生だの、声優だの、どれほど素晴らしい夢や目標を想い描き、そのために努力を重ねようとも」
グレミィ「ハッシュヴァルト、君がもこっちをどれほど支えてあげようとも」
グレミィ「全てが、おじゃんになる」
ハッシュ「………」
186 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:19:07.54 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「だけど、幸福だ」
グレミィ「この高校生活が終わらない限り、もこっち達も君も、幸福の中で生き続けられることが約束される」
グレミィ「いまがどれだけ満たされていようと、未来も同じように満たされるとは限らないからね」
グレミィ「これが、時間を巻き戻した理由だよ」
グレミィ「納得した?」
187 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:20:41.33 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……どうやって、時間を巻き戻すシステムなど造った?」
グレミィ「………」
ハッシュ「世界全体の時間を巻き戻す、それは状態を変化させる想像だ」
グレミィ「したがって、巻き戻った状態を想像し続けなければ、巻き戻しは解除されることになる」
ハッシュ「ならば、ゲートとやらを造って完聖体を失ったお前に、何百回という周期、巻き戻した状態を維持し続けられるはずがない」
ハッシュ「お前の性格上、途中で飽きが来て、想像をやめるだろうからな」
ハッシュ「それを考慮すれば、時間を巻き戻すシステムなど成立するはずがない」
グレミィ「………」
ハッシュ「……どうやって、時間を巻き戻すシステムなど造ったのだ?」
ハッシュ「それとも、三人目以降のお前がいたとでも言うのか?」
188 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:27:57.57 ID:8pi9iqKTO
ミス
>>187
は無かったことにしてください
グレミィの名前がハッシュになってる部分があった
189 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:29:22.10 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……どうやって、時間を巻き戻すシステムなど造った?」
グレミィ「………」
ハッシュ「世界全体の時間を巻き戻す、それは状態を変化させる想像だ」
ハッシュ「しかし、巻き戻った状態を想像し続けなければ、巻き戻しは解除されることになる」
ハッシュ「ならば、ゲートとやらを造って完聖体を失ったお前に、何百回という周期、巻き戻した状態を維持し続けられるはずがない」
ハッシュ「お前の性格上、途中で飽きが来て、想像をやめるだろうからな」
ハッシュ「それを考慮すれば、時間を巻き戻すシステムなど成立するはずがない」
グレミィ「………」
ハッシュ「……どうやって、時間を巻き戻すシステムなど造ったのだ?」
ハッシュ「それとも、三人目以降のお前がいたとでも言うのか?」
190 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:32:07.77 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「間違いが二つある」
ハッシュ「………」
グレミィ「一つ目、それは、三人目以降なんていないということ」
ハッシュ「………」
グレミィ「そして、二つ目」
グレミィ「ぼくらが時間を巻き戻すシステムを造った当時、完聖体はまだあったということだ」
ハッシュ「!?」
グレミィ「当時、まだ、ぼくらは完聖体を失っていなかったんだ」
グレミィ「ただ、それぞれゲートを想像したことの反動で、完聖体の制御が不可能になっていただけに過ぎない」
ハッシュ「………」
グレミィ「言ったでしょ? 完聖体を失ったのは、無茶したからだって」
グレミィ「その無茶が時間の巻き戻しだった」
191 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:33:57.75 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「そう、本当に無茶苦茶だった」
グレミィ「時間の巻き戻しは状態変化の想像である以上、完全に維持するためには完聖体の力が必要になる」
グレミィ「たったそれだけの理由で、制御できもしない力を使うことに決めた」
ハッシュ「………」
グレミィ「深く考えず、自分たち二人がかりなら制御できるとテキトーに思い込んで、強引に使用したんだ」
グレミィ「その結果、どちらも制御に失敗して、ぼくらから完聖体が切り離されてしまった」
グレミィ「それで完全に制御を失った二つの完聖体は、暴走し、この世界全体を包み込んでーーー」
グレミィ「ーーーぼくらが下した命令通りに、勝手にこの世界の時を巻き戻すシステムと化した」
グレミィ「この世界の中にある、ぼくとゲートを除いた全てを、ね」
グレミィ「こうして、時間を巻き戻すシステムは造られたんだ」
192 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:39:07.02 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「………」
グレミィ「ちなみに、システムが造られた後は、卒業式の日に到達して終わり次第、時間が巻き戻された」
グレミィ「ただ、その時はまだループの基準点となる君が来ていなかったから、君が目覚めた直後に時間を巻き戻すことはできない」
グレミィ「だから、その代わりとして、君の霊骸がゲート内に想像された瞬間まで世界が巻き戻った」
グレミィ「そして、君の霊骸に精神が宿り、ゲート内から出て来るまで、この世界の時間はストップした」
グレミィ「……時間が動き始めたのは向こうで君が死んだ時」
グレミィ「君の精神がこちらに来てゲートが消えた時、ようやく時間が動き始めたんだ」
グレミィ「もっとも、その動き始めた時間も、君がもこっちを殺し続けたことで、君が目覚めた瞬間まで何度も巻き戻される羽目になったわけだけどね」
193 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:40:36.48 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「………」
グレミィ「ちなみにゲートは、向こうの『ぼく』とハッシュヴァルトが死んだことで、完全に消滅した」
グレミィ「ゲートは、ぼくと同じで巻き戻しの対象外だから、復活することは無い。もうあちらに戻ることは不可能だ」
ハッシュ「………」
グレミィ「それと、これも一応言っておくけど、ここでぼくを殺したところで、ループは終わらない」
グレミィ「完聖体がぼくのコントロール下に無い以上、ぼくが死んでも変わらず残り続けるんだ」
グレミィ「奪われた卍解が、元の持ち主の生死に関わらず、生き続けるようにね」
グレミィ「なんなら、試しにぼくを殺してくれて構わないよ」
グレミィ「ぼくの想像通りの結末になるだろうけどね」
194 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:42:44.96 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……時間を巻き戻すシステムが造られた経緯は理解した。その後どうなったかもな」
グレミィ「わかってくれたようで、何よりだよ」
ハッシュ「……だが、完聖体を失った後、お前たちは何をしていた?」
グレミィ「………」
ハッシュ「完聖体を失って、それで終わりか?」
ハッシュ「そのまま、己の想像力不足による不始末から、逃げ出したのか?」
195 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:44:15.16 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「………そうだね。否定はしないよ」
グレミィ「なにせ、ぼくは、霊力までも失ったのだから」
ハッシュ「!」
グレミィ「全ての霊力を、完聖体に奪われた」
グレミィ「それによって、ぼくは聖文字の力の発動すら不可能になった」
グレミィ「それさえできれば、ゲートがまだ残っていた当初、向こうの『ぼく』と認識を共有くらいはできただろう」
グレミィ「でも、霊力がなくて、できなかった」
ハッシュ「………」
グレミィ「ホームレス滅却師、爆誕さ」
196 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:47:07.96 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「そして、向こうの『ぼく』は、霊力の代わりに、完聖体を含むこの世界に関する全ての知識を奪われたようだ」
ハッシュ「………」
グレミィ「完聖体が切り離された後も、向こうの『ぼく』のゲートはしばらく残っていた。時の止まった世界でね」
グレミィ「にも関わらず、そのゲートが消滅……向こうの『ぼく』が死亡するまでの間、一切利用されることはなかった」
グレミィ「これはもう、この世界に関する知識を完全に奪われたとしか思えない」
グレミィ「この世界に関する知識が残っているのなら、ゲートを利用して、自分の完聖体に挑みに行っただろうからね」
グレミィ「そう、力ある『ぼく』が、何かに負けっぱなしでいることを、許すはず無いだろうから……」
ハッシュ「………」
グレミィ「でも、そうはならなかった」
グレミィ「ぼくの想像通りなら、向こうの『ぼく』は、この世界の何もかもを忘れて、別のことに夢中になっているだろうね」
197 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:48:03.29 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……お前たちが何をしていたかは理解した」
グレミィ「それはどうも」
ハッシュ「……この世界及びその出来事について、他に話すことはあるか?」
グレミィ「んー、特にはないかな? 他は、そこまで大事な話じゃないし」
ハッシュ「……ならば、最後に一つ、こちらから確認することがある」
グレミィ「なにかな?」
198 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:49:10.07 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……お前が黒木智子の中にいたのは、私に気づかれないよう、霊力を取り戻すためか?」
グレミィ「………」
ハッシュ「………」
グレミィ「……その通りだよ」
ハッシュ「………」
グレミィ「霊力を持たない者が霊力を得る方法は、このくらいしか無いと思った」
グレミィ「そう、もこっちの中に入って、君と四六時中一緒にいれば良い」
ハッシュ「………」
199 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:51:20.26 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「君は魂を分け与える能力を持った滅却師だからね」
グレミィ「もこっちの中に入って、君の近くに四六時中いれば、新たな霊力を手に入れることも可能と考えた」
グレミィ「もっとも、混乱を防ぐために、君の魂を分け与える能力は人間には通用しないように造っておいたけどーーー」
グレミィ「ーーーぼくは人間じゃない。滅却師だ。問題なく君の力に寄生できる」
ハッシュ「………」
グレミィ「実際に周回を重ねることで、聖兵程度の霊力は取り戻している」
グレミィ「もっとも、その時点で気づかれちゃったわけだけどさ」
グレミィ「君がもっと馬鹿なら、完全に霊力を取り戻せただろうね」
ハッシュ「………」
200 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:53:05.35 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ(……そういうことか)
ハッシュ(……この世界の正体ーーー)
ハッシュ(ーーーそれは、人の想像によって発見され、人の想像によって改造された世界ーーー)
ハッシュ(ーーーいわば、牢獄だ)
ハッシュ(その牢獄は、そこに住まう囚人から大切なものを奪う)
ハッシュ(黒木智子たちは未来を奪われ、グレミィは力を奪われ、私はーーーー)
201 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:54:13.39 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ(ーーーふざけた話だ)
ハッシュ(我々を除いて、全てが冤罪だというのに)
202 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:55:51.26 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「んー、いろいろ想像してみたけど、大事な話はもう無いかな、やっぱ」
ハッシュ「………」
グレミィ「それじゃあ、以上がこの世界の “ 全て ” ってことで。聞いてくれて、ありがとー、ハッシュヴァルト」
ハッシュ「………」
グレミィ「……あれー? 拍手はー?」
ハッシュ「………」
グレミィ「……まっ、いいか。別に受け狙いで話したわけじゃないからね」
グレミィ「ああ、そうそう、最後にーーーーーー」
グレミィ「ーーーこれあげるよ、ハッシュヴァルト」ヒュウンッ
203 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:57:04.71 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「!?」ババッ
グレミィ「『身代わりの盾』か……だけど、そんなの使っても無駄だよ」
ハッシュ「!?」 スウンッ
グレミィ「だって、それはーーー」
ハッシュ「な、なぜーーー」シュウウッ
グレミィ「ーーー “ 不運 ” じゃないから」
ハッシュ「なぜ、私の魂に、お前の聖文字が……?」
204 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:58:13.76 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「そう、ぼくは、君に聖文字 “ V ” を与えた」
グレミィ「ぼくの “ 夢想家 ” の聖文字を、ね」
ハッシュ「………」
グレミィ「これは、紛れも無い “ 幸運 ” だ」
グレミィ「だから、『身代わりの盾』じゃ防げない。あれは君個人に降りかかった “ 不運 ” を移し取り、それを相手に押し付けるものだからね」
ハッシュ「………」
グレミィ「なにはともあれ、これで、ぼくは聖文字の力を持たない頃に逆戻りしたってわけだ」
グレミィ「いや、あの時よりは今の方がマシかな……この身体があるわけだしね」
ハッシュ「……なぜだ?」
グレミィ「ん?」
ハッシュ「なぜ、私に聖文字を渡した?」
ハッシュ「そんなことをしたところで、お前には何らメリットは無いはずだ」
205 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:59:41.49 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「簡単だよ、ハッシュヴァルト」
グレミィ「どうせ、ぼくは君に殺されるからだ」
ハッシュ「………」
グレミィ「慎重な君のことだ。どれだけ弱体化していようと、ぼくのような危険因子を生かしておくはずがない」
グレミィ「対抗しようにも、今のぼくの霊圧じゃ勝てっこない。なんたって、今のぼくの霊圧は聖兵並みだからね」
グレミィ「その程度の霊圧じゃ、ロクな想像を実現できない。仮にやったら実現する前に自身が消滅するだろうことは想像に難くない」
グレミィ「そして、今のぼくに実現できる程度の想像じゃ、君を即死させることは不可能」
グレミィ「それじゃ、『身代わりの盾』と “ 世界調和 ” の聖文字を持つ君には勝てない」
グレミィ「もこっちを人質にすれば何とかなるかもしれないけど、そういうのは好きじゃないからね」
グレミィ「そうなると、ぼくは、このまま君に殺されるしかない」
206 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:05:01.96 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「……だったら、せめて、霊力を少しでも回復させてくれた借りを返そうと思ってね」
ハッシュ「………」
グレミィ「その聖文字も、今のぼくなんかより、君が持っていた方がずっと有意義だろう」
グレミィ「それはもう君の力だ、好きに使いなよ、ハッシュヴァルト」
207 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:07:19.41 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「……さて、これでぼくは完全に用済みとなった」
グレミィ「殺しなよ、ハッシュヴァルト」
グレミィ「そして、『身代わりの盾』を使うんだ」
ハッシュ「!」
グレミィ「そうすれば、ぼくに “ 真実を教えられた ” という “ 不運 ” を、『身代わりの盾』に移し取らせることができる」
グレミィ「 “ 真実を教えられた ” 不運は、君個人が受けた “ 不運 ” だからね。当然、『身代わりの盾』に移し取らせることは可能なはずだ」
グレミィ「そうして、移し取らせた “ 不運 ” をぼくに降り注がせ、ぼくと話した事実を完全になかったことにできる」
グレミィ「つまり、君はぼくから聞いたことを全て忘れることができるんだ。燃やす直前のゴミに、 “ 不運 ” という切れ目を入れるだけでね」
グレミィ「たったそれだけの犠牲で、全てを忘れられる」
208 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:09:27.51 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「この世界に未来が無いということも」
グレミィ「もこっちとヤンキーの信頼関係がまた元に戻ることも」
グレミィ「それ以前に、もこっち達のしていることに何の意味もないということも」
グレミィ「ハッシュヴァルト、君がもこっちと築いた絆が消えるということも」
グレミィ「全てを忘れられるんだ」
209 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:11:06.60 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「ぼくは、夢想家ではあるけど、忘却を悪だとは思わない」
ハッシュ「………」
グレミィ「忘却するからこそ、創造できる幸福もある」
グレミィ「人が、己の死から目を逸らして、幸福を生き続けるように」
グレミィ「君もまた、この世界の未来から目を逸らしたって良いんだ」
ハッシュ「………」
210 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:12:04.54 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「目を逸らせば、未来永劫、幸福の中にいられる」
グレミィ「もこっち達のように、自分たちのこれからに夢や希望を想い描いて、幸福に生き続けることができるんだ」
グレミィ「ただ、想い通りの未来にならないというだけに過ぎない」
グレミィ「だけど、それは普通のこと」
グレミィ「夢や希望は、それを想像している間がもっとも幸福なのだから」
グレミィ「………」
211 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:14:31.75 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「選択の時だ、ハッシュヴァルト」
グレミィ「未来から目を逸らさず、絶望のままに飛び移り、幸福を恐怖で塗り潰すか」
グレミィ「全てを忘れ、目を閉じて飛び移り、もこっち達と共に幸福を想い描くか」
グレミィ「きちんと、秤にかけて決めることだ」
グレミィ「後悔は、したくないだろう?」
212 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:16:11.37 ID:JGbiaTdGO
ハッシュ「………」
ハッシュ「………………」
ハッシュ「…………………………」
213 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:17:27.12 ID:JGbiaTdGO
今夜はここまで
214 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:40:52.60 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「だから、ぼくは完聖体の力で君の中にゲートを作った」
グレミィ「まあ、その時の負荷が要因で完聖体を失って、他の星十字騎士団を救済することができなくなってしまったんだけど、そこは置いとくね」
グレミィ「とりあえず、ぼくは、聖文字 “ V ” の力を使って、君が死ぬ直前、その精神が自動的にこの世界に運び込まれるようにした」
グレミィ「ゲートの持ち主が死んだら、ゲートも消えちゃうからね。君が死ぬ前に精神を送ってあげる必要があった」
グレミィ「もちろん、精神だけじゃ活動できないから、ゲートの出口には君の霊骸を想像しておいた」
グレミィ「そうすれば、君の精神は、ゲートをくぐり抜ける寸前で自動的に霊骸の中に入り、活動可能となる」
グレミィ「実際、ゲートをくぐり抜けた瞬間、君の意識は目覚めた」
グレミィ「……とまあ、そんな感じで、君を救済してあげることにしたのさ」
215 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:41:50.92 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「目を逸らせば、未来永劫、幸福の中にいられる」
グレミィ「もこっち達のように、自分たちのこれからに夢や希望を想い描いて、幸福に生き続けることができるんだ」
グレミィ「ただ、想い通りの未来にならないというだけに過ぎない」
グレミィ「だけど、それは普通のこと」
グレミィ「夢や希望は、それを想像している間がもっとも幸福なのだから」
ハッシュ「………」
216 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:45:09.77 ID:JGbiaTdGO
>>171
の内容を
>>214
に差し替えます
また、
>>210
の内容を
>>215
に差し替えます
それぞれグレミィとハッシュの名前が逆になってるところがあった
ミスばかりで申し訳ないです
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/29(日) 09:29:32.15 ID:PJcxL2Ve0
乙。
218 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:02:57.90 ID:x4CjbjdcO
投下します
219 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:04:32.46 ID:x4CjbjdcO
チュンチュン……
もこっち「……ふわあ〜〜」ムクッ
もこっち「……あー、もう、朝か」
もこっち「まったく、学生っては面倒ったらーーー」
ハッシュ「………」
もこっち「うおっ、!?」
220 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:06:01.11 ID:x4CjbjdcO
もこっち「あ、ああ、ハッシュヴァルトか……」
もこっち(くそっ、中二病の幽霊もどきとはいえ、イケメンだからな。そんな奴と同棲なんて、心臓に悪過ぎる……!)ドキドキ
ハッシュ「………」
もこっち「……なんだよ、何か用か?」
ハッシュ「……用があるわけではない」
ハッシュ「ただ、思うことがあっただけだ」
もこっち「思うこと? 何だよそれ?」
ハッシュ「………………」
221 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:07:29.01 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ「……未来が視えるとは思い悩む事ばかりだ」
ハッシュ「そうだろう、黒木智子?」
222 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:10:57.58 ID:x4CjbjdcO
もこっち「……ああ? 未来が見えるだあ?」
もこっち(なんだ、また患ってんのかーーー)
ハッシュ「ーーー行くぞ、黒木智子」
もこっち「!」
ハッシュ「今日も登校日のはずだ」
ハッシュ「そして、放課後は友と勉強会を行う予定のはず」
ハッシュ「ならば、休む理由は無い」
223 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:12:05.76 ID:x4CjbjdcO
もこっち「ーーーそうだな」
もこっち「行くか、あいつらが待ってるんだからな」
ハッシュ「………」
もこっち「それに、あいつらと一緒なら、きっとーーーーーー」
224 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:14:24.68 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ(……そうだ)
ハッシュ(世界を形づくるものが如何なる存在であれ、その世界の生命と歩みに、無意味なものなどありはしない)
ハッシュ(世界の先に、どのような結末が待ち受けていようとも、思うままに選択し、思うままに進むことに意味があるからだ)
ハッシュ(意味があるからこそ、人はその歩みに特別な名を付け、現在の一瞬一瞬に挑み続ける)
ハッシュ(そうして、未来を創り上げていく)
ハッシュ(決して、閉ざされて良いものでは無い)
ハッシュ(無意味にしては、ならないのだ)
225 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:17:55.40 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ(……ならば挑もう、『神の創想』に)
ハッシュ(世界と一つになろうとも、その支配がある限り、必ずや打ち砕いてみせる)
ハッシュ(……秤にかけた上での結論だ。迷いはない)
ハッシュ(未来を、変えてみせる)
226 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:21:24.59 ID:x4CjbjdcO
もこっち「ーーーおい」
ハッシュ「………」
もこっち「ーーーおい、ハッシュヴァルト!」
ハッシュ「!」
もこっち「いつまで、そこで立ってるんだよ。着替えらんないだろ」
ハッシュ「……すまないな。いますぐ影に入ろう」ズズズッ
もこっち「目隠しも忘れんなよ」
ハッシュ「………」シュルシュル
もこっち「目隠し、取るんじゃねーぞ」
ハッシュ「……ああ」
もこっち「絶対だぞ! 絶対の絶対だからな! 前フリとかじゃなくて!」
ハッシュ「……わかっている」ズズズッ
227 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:23:09.37 ID:x4CjbjdcO
もこっち「ーーーおい」
ハッシュ「………」
もこっち「ーーーおい、ハッシュヴァルト!」
ハッシュ「!」
もこっち「いつまで、そこで立ってるんだよ。着替えらんないだろ」
ハッシュ「……すまないな。いますぐ影に入ろう」ズズズッ
もこっち「目隠しも忘れんなよ」
ハッシュ「………」シュルシュル
もこっち「目隠し、取るんじゃねーぞ」
ハッシュ「……ああ」
もこっち「絶対だぞ! 絶対の絶対だからな! 前フリとかじゃなくて!」
ハッシュ「……わかっている」ズズズッ
228 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:25:22.13 ID:x4CjbjdcO
>>227
は無かったことにしてください
二重に投稿しちゃった
229 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:28:15.55 ID:x4CjbjdcO
ズズズッ………
ハッシュ「………」パサアッ
グレミィ「あー、あー、目隠し取っちゃったー」
ハッシュ「………」
グレミィ「いーけないんだ、いけないんだー」
グレミィ「もーこっちーに、言っちゃうぞーー?」
ハッシュ「………上を見なければ問題の無い話だ」
グレミィ「なるほどねー、だから、ぼくを牢屋に入れて、ぼくが物理的に上が見れないようにしているわけだ」
グレミィ「ハッシュヴァルトって紳士だね」
グレミィ「ズレてるけど」
230 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:29:59.83 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ「……今日の朝食だ」
ポンッ
グレミィ「あはは、さっそく、聖文字使いこなしてるねーー!」スッ
グレミィ「そういうわけで、いっただきまーす!」パクパク
グレミィ「うん、美味しい!」
ハッシュ「………」
グレミィ「流石はハッシュヴァルト、毎日特別良いもの食べてただけはあるね」モグモグ
グレミィ「想像の範囲内ではあるけど、素晴らしい料理だよ」モグモグ
ハッシュ「………」
グレミィ「まあ、この身体は食事の必要が無いように造られているんだけどね、あはは!」
ハッシュ「………」
シュンッ……
231 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:32:04.84 ID:x4CjbjdcO
グレミィ「あー、ちょっと、なんで想像料理消しちゃうの? まだ食べてるじゃん」
ハッシュ「お前が食事の必要は無いと言ったからな」
グレミィ「いや、それは身体のことで、心は必要なんだよ」
ハッシュ「………」
グレミィ「想像力豊かな人は身体のためだけじゃなくて、心のためにも食べるものなんだよ」
グレミィ「毎日の食事を心をこめて美味しくいただくことこそ、豊かな想像力を維持する秘訣でーーー」
ハッシュ「そうか」
グレミィ「バッサリだねー、ホント。もこっちが言うところの陰キャの対応だよ、それ」アハハ
232 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:35:10.63 ID:x4CjbjdcO
グレミィ「ーーーで、ぼくはいつまで、もこっちの影の中にいれば良いのかな?」
ハッシュ「借りを返すまでだ」
グレミィ「いや、借りは返したじゃん。その聖文字 “ V ” は何?」
ハッシュ「私にではない、黒木智子たちへの借りだ」
グレミィ「………」
233 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:37:30.91 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ「私たちは、黒木智子たちの世界を蹂躙し、その未来を奪い続けた」
ハッシュ「ならば、私たちには、その借りを返す義務がある。果たし終えるまで、逝けると思うな」
グレミィ「………」
ハッシュ「せめて、私の役に立つくらいはしてみせることだ」
グレミィ「……なるほどね、流石は調和を重んじてきた男だ」
グレミィ「想像通りの正論だよ」
ハッシュ「………」
グレミィ「だけど、役立とうにも、ぼくは聖文字の力を失ってるんだよ?」
グレミィ「君に寄生してパワーアップしようにも、この牢屋が君から放出される魂を防いでしまう。これじゃ、パワーアップも夢のまた夢」
グレミィ「そのぼくに何ができるってのさ?」
234 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:42:31.82 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ「……お前の想像力は飾りか?」
グレミィ「!」
ハッシュ「お前は今まで、陛下から授かった聖文字をもって、ありとあらゆることを実現してきた」
ハッシュ「だが、それはその強大な想像力あってこそのものではないのか?」
グレミィ「………」
ハッシュ「少なくとも、私には魂と聖文字を分離させるなどという真似はできなかった」
ハッシュ「 “ 夢想家 ” の聖文字を持つ今であってもだ」
グレミィ「!」
ハッシュ「お前の想像力は紛れもなく強さであり、誇るに値するものだ」
ハッシュ「ならば、己が想像力を秤として、選択することだ」
ハッシュ「その想像の果てに、『神の創想』をも打ち砕き、借りを返すか」
ハッシュ「それとも、己が想像力の敗北を認め、今ここで全ての想像をやめるか」
ハッシュ「秤にかけて、選ぶが良い」
ハッシュ「後悔したくないのならな」
235 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:44:30.99 ID:x4CjbjdcO
グレミィ「……まさか、やり返されるなんてね、想像もしてなかったよ」
ハッシュ「………」
グレミィ「ずるい奴だよ、君は」
グレミィ「そんなこと言われたら、やるしかないじゃん」
ハッシュ「………」
グレミィ(……完聖体に負けたぼくが、あれから本当は何を思っているか、君なら想像できているだろうに)
グレミィ(その上で言っているんだ)
グレミィ「まったく、本当にずるいーーー」
「おい、ハッシュヴァルト、着替え終わったから、もう出てきて良いぞーー」
236 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:45:55.29 ID:x4CjbjdcO
グレミィ「……このタイミング……ほんとう、想像つかないなあ、もこっちは」
ハッシュ「……外に戻る」
グレミィ「あっ、ちょっと、外行く前に一つ教えてよ!」
ハッシュ「……なんだ?」
グレミィ「いや、今更だけど、君は今まで食事や風呂やトイレとかどうしてたの?」
237 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:49:14.89 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ「………」
グレミィ「ぼくら、その辺のことまでは、想像し忘れてたから、何の用意もしてなかったんだよね」
グレミィ「だから、どうしていたのかなってーーー」
ハッシュ「影の中で済ませていた」
グレミィ「ーーーいや、だから、どうやって?」
ハッシュ「…………この身の栄養不足、排泄物の全てを “ 不運 ” として、『身代わりの盾』に移し取らせていた」
グレミィ「……えっ、なにそれ、」
ハッシュ「………」
グレミィ「普通にドン引きなんだけど」
ハッシュ「………」
グレミィ「あれ、ひょっとして、ぼくは一歩間違えれば腹ペコとエンガチョ押し付けられるところだったわけ?」
ハッシュ「………」
グレミィ「わー、ないわー、こんなの想像できないっていうか、創造したくすらーーーーーー」
238 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:52:28.28 ID:x4CjbjdcO
>>237
は無かったことにしてください
グレミィの台詞の想像と創造を間違えてた
239 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:54:06.23 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ「………」
グレミィ「ぼくら、その辺のことまでは、想像し忘れてたから、何の用意もしてなかったんだよね」
グレミィ「だから、どうしていたのかなってーーー」
ハッシュ「影の中で済ませていた」
グレミィ「ーーーいや、だから、どうやって?」
ハッシュ「…………この身の栄養不足、排泄物の全てを “ 不運 ” として、『身代わりの盾』に移し取らせていた」
グレミィ「……えっ、なにそれ、」
ハッシュ「………」
グレミィ「普通にドン引きなんだけど」
ハッシュ「………」
グレミィ「あれ、ひょっとして、ぼくは一歩間違えれば腹ペコとエンガチョ押し付けられるところだったわけ?」
ハッシュ「………」
グレミィ「わー、ないわー、こんなの想像できないっていうか、想像したくすらーーーーーー」
240 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:56:15.61 ID:x4CjbjdcO
ヒューッ……ガラーンッ!
バコンッ!
グレミィ「ぶべっ!?」ドテッ
ハッシュ「………」
グレミィ「か、金ダライ……?」ピクピク
グレミィ「き、君がこんなの想像するなんて、想像もーーー」
ハッシュ「……想像力を上げたいのならば、さっさと食事を摂って頭を働かせることだ」
ポンッ
グレミィ「!」
ハッシュ「食事とは、心で摂るものなのだろう?」
グレミィ「……そうだね」パクパク
ハッシュ「………」シュルシュル
241 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:57:54.17 ID:x4CjbjdcO
グレミィ(ああ、そうだ)
グレミィ(この舌の平にあるものが)
グレミィ(心か)
ハッシュ「………」ズズズッ
242 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:59:13.94 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ「……戻ったぞ、黒木智子」 ズズズッ
もこっち「遅い! 人の影ん中で何やってた!」
ハッシュ「………」パサアッ
もこっち「っ、お前まさか、やっぱり私のパンツーーー」
ハッシュ「それはない」
243 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:00:47.51 ID:x4CjbjdcO
もこっち「……だったら何でーーー」
ハッシュ「……それは勉強会が終わり次第説明する」
もこっち「ーーーああ? なんで、勉強会の終わりになんだよ?」
ハッシュ「……今話したところで、混乱するだけだ」
もこっち「?」
ハッシュ「その気持ちは、勉強会に持ち込むべきではない」
もこっち「………」
ハッシュ「故に、今は話すことができない」
もこっち「なんだよ、そりゃ……」
ハッシュ「その上で、知ることを望むのであれば、今すぐ教えるがーーーーどうする?」
244 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:01:54.60 ID:x4CjbjdcO
もこっち「………」
ハッシュ「………」
もこっち「……わかったよ、今は引いてやる。今日は勉強会に集中しないといけないからな」
ハッシュ「……そうか」
もこっち「だが、終わったら絶対に教えろよ、いいな!」
ハッシュ「……無論だ」
245 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:03:58.45 ID:x4CjbjdcO
もこっち「ーーーよし、そうと決まれば、まず朝飯食っとかないとな」
ハッシュ「……そうだな、食事は大切だ」
もこっち(……なんだよ、普通に相槌も打てるんじゃねえか)
ハッシュ「……食事を摂る時は、心で食べると良いそうだ」
もこっち「ああ? なんだ、また、中二病か?」
ハッシュ「………」
246 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:05:46.37 ID:x4CjbjdcO
もこっち「ーーーごちそうさま!」
もこっち「弟、先行ってるぞ!」
智貴「お、おう……」
黒木母「ふふっ、智子ったら、すっかり良い顔になったわね」
智貴「……まあ、それなりにダチもできたみてーだし、自然とああなるのかもな」
黒木母「あら、そうなの?」
智貴「ああ、特に学食の時なんて、ダチのことで俺と張り合おうとしてることもあったし、そんだけ大事なーーー」
黒木母「あら、張り合うって何? どんなこと」
智貴「えっ、」
黒木母「教えて、登校まで、まだ時間はあるわ」
智貴「いや、その」
黒木母「お願い」
智貴「」
247 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:07:22.51 ID:x4CjbjdcO
ゆり「……黒木さん、おはよう」
真子「おはよう、黒木さん!」
ネモ「クロ、おはよー!」
岡田「おはよう、黒木」
加藤「おはよう、黒木さん」
うっちー「く、黒木、おはよう」
もこっち「……おはよう!」
248 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:08:48.82 ID:x4CjbjdcO
吉田「ーーーおおっ、お前か」
もこっち「あっ、吉田さん……!」
吉田「それとーーー」
ハッシュ「………」
吉田「………」ギロッ
ハッシュ「……おはよう、だな」
吉田「!」
もこっち「!?」
ハッシュ「……私とて、挨拶くらいはできる」
249 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:10:02.54 ID:x4CjbjdcO
吉田「……」
吉田「……なら、こっちも、おはようだ」
ハッシュ「……」
吉田「もちろん、お前にもだ」チラッ
もこっち「!」
吉田「…………おはようだ、黒木」
250 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:11:09.41 ID:x4CjbjdcO
もこっち「えっーーー」
吉田「なんだよ、私が挨拶しちゃ悪いかよ」カアアッ
もこっち「あっ、そのーーー」
吉田「誰にでも挨拶くらいできねえと、この先、いろいろ面倒なことになるみてーだしな。今のうちから慣れてこうって話だ」
もこっち「そ、そうじゃなくてーーー」
もこっち「いま私の名前ーーー」
251 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:13:19.59 ID:x4CjbjdcO
吉田「ああ? お前だって、私の名前呼んでんじゃねえか」
吉田「だったら、私がお前の名前呼んでも良いだろ」
もこっち「………!」
もこっち「………うん!」
ゆり「………」
真子「……ゆり?」
ゆり「……大丈夫。吉田さんなら大丈夫」グッ
真子「………」ホッ
ゆり(それに、私はもう既にーーーーーー)
252 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:15:04.45 ID:x4CjbjdcO
もこっち(おおっ、なんか、良い感じじゃねーか!)
もこっち(この流れなら……いける!)
ハッシュ「………」
もこっち「……えっと、その、吉田さん……」
もこっち「それなら、そのーーー」
吉田「……あ? どうかしたか?」
もこっち「いや、そのーーー」
吉田「?」
もこっち「ーーー今度、一緒にランジェリーショップ行かない?」
吉田「?!?!」
ハッシュ「………………………」
253 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:17:17.96 ID:x4CjbjdcO
もこっち「だ、だめ?」
吉田「き、急に何言ってやがんだ、てめー!? 意味わかんねーぞ?!」
もこっち「い、いや、だって、勝負下着ってあるじゃん」
吉田「!?」
もこっち「ああいうのって、色仕掛けだけじゃなくて、受験にも効果あるって聞いてさ」
吉田「……?!!」
もこっち「だから、ゲン担ぎのために、ランジェリーショップで勝負下着買うのはどうかなーって」
ハッシュ「……………………………………………」
もこっち「もちろん、下着とかはコソコソ一人で買うのが普通だと思うけど、吉田さんの場合、誰かと一緒の方が良いと思うんだ」
もこっち「でないと、勝負下着とは程遠い、ガキっぽいキャラもの選んでーーー」
吉田「おらーーーーーーー!!」
もこっち(ひぃーーーっ、なんでーーー!?)
254 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:19:03.08 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ(……まったく、騒がしい子供だ)
ハッシュ(礼儀を知らず、己が器を知らず、傲り高ぶり、品が無い)
ハッシュ(ーーー故に、幼く、眩しく、星のように輝く)
ハッシュ(その光は、暗黒に沈む星さえも照らし、その星の在り方すらも変えていく)
ハッシュ(いま、どれほどの星たちが、この夜空に浮かんでいるのだろうか)
ハッシュ(ーーーーーーーーーーーーーーー)
255 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:21:23.62 ID:x4CjbjdcO
ゆり(また黒木さんがバカなこと言ってる……)
真子(……黒木さんと吉田さん、また二人で楽しそうにしてる。いいなあ……)
ネモ(……ほんと、バカだよねー、クロは)
岡田(また、黒木が変なこと言ってんのか……)
加藤(……やっぱり、止めた方がーーーー、でも、黒木さんと吉田さんはあれをするから、仲が良いって話だしーーー)
うっちー(なによ、また吉田とイチャついて、しかもまた他の女に下着をーーー、ああキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイ)
吉田「また、バカなこと言いやがって、てめーーー!」
もこっち(な、なんでえ!? 一緒に勉強する仲なら、このくらいの冗談は普通だろ?!)
もこっち(なんで、なんで、なんでえーーーー!?)
256 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:22:58.61 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ(……輝こう、私もまた)
ハッシュ(そして、十字架を背負い、目を逸らすことなく、秤を揺らすのだ)
ハッシュ(全ては、護るために)
ハッシュ(だから、私は今一度、力を振るう)
ハッシュ(そう、誇り高き騎士のように)
ハッシュ(勇気の剣を握る、あの星のように)
257 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:24:10.00 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ(後悔は無い、何一つ)
もこっち(た、助けてーーーー!?)
吉田「おらーーーーーーーーーー!!!」
258 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 21:25:16.09 ID:x4CjbjdcO
以上で完結です。
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/29(日) 21:56:11.97 ID:siYxHI5p0
おつ
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