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ハッシュヴァルト「未来が視えるとは思い悩む事ばかりだ。そうだろう、黒木智子」
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122 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:06:07.12 ID:L31gtIdCO
もこっち(なにビビってんだ、私は! 今からヤンキーと向き合うんだろ!)
もこっち(怖がるな、恐れるな、今やらなきゃ、後で必ずーーー)
吉田「……用がねーなら、別んとこ行くがーーー」
もこっち「…っ…、……よ…?」
吉田「……ああ? いま何てーーー」
もこっち「私って、必要?」
123 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:08:28.58 ID:L31gtIdCO
吉田「ーーーーーーーーーーーーーーーー」
もこっち(い、言えた……!)
ハッシュ(……だが、ここからが本番だ)
吉田「ーーーいや、急に何言ってんだ?」
もこっち「あっ、だから、その、」
もこっち「私って、吉田さんにとって必要なのかな、って」
もこっち「気になってさ……」
124 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:09:35.90 ID:L31gtIdCO
吉田「……意味わかんねえ」
もこっち「っ、」
ハッシュ「………」
吉田「急にそんなこと聞かれてもよ……」
もこっち「………っ、!!」
吉田「つーか、必要も何も……腐れ縁だろ、私たち?」
吉田「お前が、必要かなんて、その、考えたことも無かったつーか……」
125 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:11:20.56 ID:L31gtIdCO
ハッシュ「………」
もこっち(〜〜〜〜落ち着け、私!)
もこっち(まだ、必要じゃないって断定されたわけじゃない!)
もこっち(だったら、これからーーー)
吉田「いや、必要じゃねーとか言うつもりはねーけどよ、なんでいきなりそんなーーー」
もこっち「……一緒に、」
吉田「?」
もこっち「一緒に、勉強しよう、吉田さん!」
126 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:14:31.06 ID:L31gtIdCO
吉田「ーーーいや、急にまた何言ってんだ?」
もこっち「あ、いや、その、私たち3年で受験だよね?」
吉田「……ああ、そのつもりでいるがーーー」
もこっち「だったら、一緒に勉強することも必要なんじゃないかなって」
吉田「………」
もこっち「それに、そういうことなら、きっと役に立てると思う」
もこっち「私、そんなに頭良いわけじゃないけどさ」
もこっち「二人なら、面接の練習とかもできるしーーー」
もこっち「ーーーそれに、ヤンキーって、短気でバカだから、気の長さも頭も普通の私がいた方がーーー」
吉田「んだと、おらーーーー!!」バッ
もこっち「ひいいーーっ!?」
127 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:16:56.47 ID:L31gtIdCO
ハッシュ「…………!??」
もこっち(や、やっちまった! またいらんこと言ってヤンキーを怒らせてーーー)
吉田「バカはお前だろ! 修学旅行の時も、ゲーセンの時も、バレンタインの時も、階段の時も、いつもいつもバカなことばかりしやがって!」
もこっち「ご、ごめんなさい?!」
吉田「……ったく、」パッ
もこっち「」ヨロッ
ハッシュ「………」
もこっち(う、ううっ、)ジワッ
もこっち(私のバカ、ほんとにバカ! こんな時まで、いらんこと言ってーーー)
吉田「ーーーそんで、いつやんだ?」
128 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:19:48.42 ID:L31gtIdCO
もこっち「………」
もこっち「………………えっ、?」
吉田「……いつ勉強すんだって言ってんだよ」
もこっち「えっ、あっ、その」
吉田「いや、だからいつーーー」
もこっち「ーーー良いの?」
吉田「……何がだよ?」
もこっち「いや、私なんかと一緒に勉強なんてーーー」
吉田「何言ってやがる。何の問題もねーだろ」
もこっち「?!」
吉田「お前が意味わかんねーことを言うのなんて当たり前のことだし、それで私が怒るのも当たり前のことだ」
もこっち「………!」
吉田「……怒ったくらいで、いちいち距離取っていたらキリがねーしな」
吉田「それに、勉強ってのは、誰かと一緒にやることで、自分じゃ気づけねーところにも気づけるもんなんだ」
もこっち「!」
吉田「それを思えば、お前と勉強することに、何の異議もねーしーーー」
吉田「ーーーむしろそっちの方が良いくらいだ」
129 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:22:51.14 ID:L31gtIdCO
ハッシュ「………」
もこっち(……そうか、そうか、私といた方が良いのかーーー)
もこっち(ーーーよかった、これで私は必要とされてーーー)
吉田「だけどよ、一つ気になるんだがーーー」
もこっち「………?」
吉田「なんでお前と二人きりなんだ?」
もこっち「っ、?!」
ハッシュ「………」
吉田「田村や田中は誘わねーのか?」
もこっち「ーーーーーーーーーーーーーー」
もこっち(ーーーああ、そうか。そうだよな)
もこっち(やっぱり、私なんかよりも、あいつらの方が必要ーーー)
吉田「……まあ、別に二人きりでも悪くないと思うけどな」
130 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:26:05.99 ID:L31gtIdCO
もこっち「……えっ?」
吉田「いや、勉強ってのは、一人よりも誰かとやった方がやる気が出るもんだろ?」
もこっち「…………」
吉田「少なくとも、麗奈たちと一緒に勉強してた時は、一人でやるよりはよっぽど、やる気が出た」
吉田「……楽しかったし、嬉しかった」
もこっち「!」
吉田「だから、お前と二人きりでも、きっと悪くない」
吉田「ただ、全員いっしょにいれば、もっと悪くないってだけの話だ。だから田村や田中が来ても良いんじゃねーかって思ってる」
吉田「……誰も欠けないその時が、きっと一番なんだろうからな」
もこっち「ーーーーーーーーーーーーーー」
131 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:29:32.55 ID:L31gtIdCO
吉田「ーーーお、おい、なに泣いてんだよ!」
もこっち「……えっ、」ポロポロ
吉田「あーもう、このハンカチで拭け!」
もこっち「……あ、うん! あり…がとう…っ、!」フキフキチーン
吉田「てめっ、なに鼻かんでやがる!」
もこっち「あっ、ご、ごめん!」
吉田「まったく、ほんとわけわかんねえ奴だな、お前はよ……」ハアッー
もこっち「……ねえ、」
吉田「あ?」
もこっち「少し、良いかな……?」
吉田「……ったく、今度は何だってんだ」
もこっち「さっき、二人で勉強しようって言ったけどーーー」
吉田「………」
もこっち「ーーーやっぱり、みんなで、勉強しよう! 吉田さん!」
吉田「ーーーおう!」
132 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:31:47.50 ID:L31gtIdCO
ネモ(……クロの様子がおかしかったのは、やっぱり吉田さんが理由かーーー)
ネモ(ーーー昨日は何もできなくて、本当にごめんね)
ネモ(でも、勉強会には参加させて欲しいかな……)
ネモ(面接も実技も、きっと、役に立ってみせるから……!)
ゆり(……今度は四人で勉強……そう、吉田さんも一緒にーーー)
ゆり(ーーーありがとう、黒木さん、吉田さん。また私たち四人を繋げてくれて)
ゆり(そして、ごめんなさい、ふたりとも。踏み込むのが怖くて、何もできなかった)
ゆり(……せめて勉強会の時は役にーーー)
133 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:34:05.30 ID:L31gtIdCO
真子(黒木さん、泣いちゃうくらい吉田さんのことで悩んでたんだね……)
真子(……私は吉田さんに余裕ができるまで我慢するつもりだったけど、それは私の独りよがりな考えでしかなかったーーー)
真子(ごめんね、黒木さん……また私、黒木さんのこと傷つけた……っ、)
真子(……ううん、黒木さんだけじゃない。きっと、ゆりも……!)
真子(……せめて、勉強会、絶対みんなの助けになるから!)
うっちー(……ふーん、なんだ、私が何かするまでもなく仲直りできるんじゃない)
うっちー(……ほんと、よかった)
うっちー(……だけど、黒木の奴、ちょっと吉田とイチャつき過ぎじゃ……)
うっちー(これは私も勉強会に参加して、みんなの役に立って、黒木のハートをーーー)
うっちー(ーーーああもう、なんでこんな時まで、そういうこと考えちゃうの私! ほんと、キモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイ)
134 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:35:33.24 ID:L31gtIdCO
もこっち「……じゃあ、後で友達誘ってみるね」
吉田「おう、こっちも麗奈たちを誘ってーーー」
キュイーンッ……!
ハッシュ「!?」
吉田「……ん?」
ハッシュ(なんだ、急に霊圧が……!?)
吉田「……?」
ハッシュ「?」
吉田「……?!?!」
ハッシュ「……!?」
吉田「な、なななななななななーーー!?」
吉田「なんだ、お前!?」
135 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:37:14.03 ID:L31gtIdCO
ハッシュ「!?」
ハッシュ(まさか、この娘ーーー)
吉田「てめえに言ってんだよ、この野郎! このガキから離れろ!」
もこっち「……えっ、吉田さん、ひょっとして、こいつが見えるの!?」
吉田「ああ? 見えるに決まってんだろ? つーか、お前も早く、この野郎から離れろ!」
ハッシュ「……私は、この野郎ではない。ユーグラム・ハッシュヴァルトだ」
吉田「ハッシュポ◯ト?」
ハッシュ「ハッシュヴァルトだ」
吉田「何でも良い! どこから入ってーーーー、あー、もー、とにかく、このガキから離れろ!」
もこっち「ち、ちょっとストップストップ! まずはあっち行こう! いろいろ落ち着こう!」
吉田「ああ!? 何言ってやがる、これが落ち着いてーーー」
もこっち「ーーー周りみろよ!」
吉田「!」
136 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:39:29.84 ID:L31gtIdCO
あいつ、どうしたんだ……?
なんで、何もないところに怒鳴ってるの……?
ヤバくないか、あれ……
吉田「?!?!」
真子「ち、ちょっと、吉田さん! どうしたの急に!?」タッタッタッ
ゆり「……何かあったの?」タッタッタッ
ネモ「……よくわからないけど、ここはクロの言う通りにした方が良いかな?」タッタッタッ
うっちー「どうしたの、吉田!? まさか、蠱惑され過ぎて、禁断症状がーーー」タッタッタッ
吉田「な、なに言ってんだ、お前ら? この野郎が見えないってのかーーー」
もこっち「こ、これ以上はやめようよ、吉田さん!」
吉田「!?」
もこっち「吉田さん、ただでさえ高3ヤンキーで色々痛いのに、中二病キャラ認定されたら更に痛いことにーーー」
吉田「だれが痛いだと、おらーーーー!!」
もこっち「ひいーーっ、!?」
ハッシュ「………」
137 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:41:36.30 ID:L31gtIdCO
もこっち「……ようやく、学校終わって、家だーーー」グデーッ
ハッシュ「……そうか」
もこっち「そうか、じゃねえよ! 何でいきなりヤンキーにもお前の姿が見えるんだよ!」
ハッシュ「……それは私にもわからないことだ」
もこっち「……なんとか、お前の存在をヤンキーは受け入れて、内緒にもしてくれたけどさあ」
もこっち「もし、もっと大勢に見えてたら、どうなっていたことか……」
もこっち「今回は、ヤンキーが蚊に啖呵切ってたってことにして誤魔化してくれたけど、ヤンキー以外にも見えてたら通用しなかったぞ? ええ?」
ハッシュ「……ならば、これからはお前の影に潜伏し、身を隠すとしよう」
138 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:42:38.98 ID:L31gtIdCO
ハッシュ(……そうだ、これほどの時間が経過して何ら異常も無いところを見るに、 “ この身 ” に、影の領域圏外の活動限界時間が無いことは疑い無い)
ハッシュ(ならば、これ以上、影の外部にいる必要は無い)
もこっち「影って……ああ、そういや、そんなこともできてたな、お前……」
もこっち(まったく、影の中に入れるなんて羨ましい限りだ。それができれば、下からパンツ覗き放題……)
もこっち「……えっ、?」
139 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:45:38.79 ID:L31gtIdCO
ハッシュ「……なんだ、どうした?」
もこっち「……なあ、」
もこっち「影の中って、やっぱり、影の外の光景が見えるんだよな……?」ギュッ
ハッシュ「無論だ。昨日入った時、お前の部屋が見えただろう?」
もこっち「………!!??」ギュウッ
ハッシュ「なぜ、そのようなことを今更ーーー」
もこっち「ふざけんなよ! このエロネギ野郎!」ベチーンッ
ハッシュ「……なぜ殴る」
もこっち「な、殴るに決まってんだろ!」カアアッ
もこっち「……お、お前、下から……っ、わ、私のパンツ、見やがったな……!」キッ
ハッシュ「……安心しろ、私はお前の下着に興味など無い」
もこっち「なんだそうか……って、そういう問題じゃねーよ!」
140 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:47:33.37 ID:L31gtIdCO
もこっち(それに、下から色々見放題ってことは、昨日、風呂やトイレ入ってる時ーーー)
もこっち「」プルプル
ハッシュ「どうした? 念のために言っておくが、私はお前の裸体にも何ら興味はーーー」
もこっち「」ブチッ
もこっち「この変態が!」ベチーンッ
ハッシュ「何故だ」
141 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:51:59.18 ID:L31gtIdCO
………………………………………………………………
もこっち(ーーーさて、飯も風呂も着替えも終わったし、寝るか……)
もこっち「……いま、着替え終わった。もう影から出て良いぞ」
もこっち「……目隠しも取って良い」
ハッシュ「……了解した」ズズズッ
シュルシュル……パサアッ……
ハッシュ「………」
もこっち「……何度も言うが、お前が影の中に隠れて良いのは、私やヤンキー以外にお前を見ることのできる奴が出た時か、着替えの時とか私が許可した時だけだからな?」
ハッシュ「……わかった」
もこっち「……その時は、すぐに隠れろよ?」
ハッシュ「……わかった」
もこっち「目隠しも忘れんなよ?」
ハッシュ「…………わかった」
もこっち「……面倒くせーとか思ってねえよな?」
ハッシュ「……そのようなことは………………ない…………」
もこっち「ぜってー思ってるだろ! その間は何だ!」
142 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:54:40.87 ID:L31gtIdCO
「うるせえぞ!」ドンッ
もこっち「」ビクッ
ハッシュ「………」
もこっち「……はあ、怒るのはやめだ。疲れるし、弟にキレられても困るしな」
ハッシュ「……苦労をかける」
もこっち「まったくだ。これで、猫みたいに飯が必要なら追い出してたかもしれねえ、いや、できねえだろうけどさ」
ハッシュ「………」
もこっち「でも、まあ、そのーーー」
もこっち「ーーーありがとな…………ハッシュ…ヴァルト……」ボソッ
ハッシュ「!」
もこっち「昨日はその、相談に乗ってくれて……」
もこっち「背中を押してくれて……」
143 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:56:07.81 ID:L31gtIdCO
ハッシュ「……礼を言われるようなことではない」
ハッシュ「ただ、秤にかけた結果、私があのように行動をすることを選択しただけの話に過ぎない」
ハッシュ「……そう、それだけのことだ」
144 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:57:08.85 ID:L31gtIdCO
もこっち(……ほんと、隠キャだな、こいつは)
ハッシュ「………」
もこっち(まあ、私も人のこと言えたわけじゃねーけどな……)
145 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 20:59:11.10 ID:L31gtIdCO
もこっち「……今から寝る」
ハッシュ「そうか……」
もこっち「明日はさっそく勉強会だ、昨日よりも早めに寝る必要があるからな」
ハッシュ「……ならば、寝ると良い。邪魔はしない」
もこっち「……寝てるからって、私に変なことすんなよ」
ハッシュ「……お前の身体に興味など無いと何度言えばーーー」
もこっち「……はあ、おやすみ」
ハッシュ「……ああ、おやすみ、だ」
パチンッ
146 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 21:00:16.29 ID:L31gtIdCO
もこっち「……ぐーっ、ぐーっ、」
ハッシュ(……眠ったか)
ハッシュ(……この睡眠状況を見れば、即座に目を覚ますことはあるまい)
ハッシュ(目が覚めること無くば、聞かれることも無い)
ハッシュ(ならばーーーーーー)
147 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 21:01:35.70 ID:L31gtIdCO
ハッシュ「……さて、」
ハッシュ「そろそろ良いだろう?」
もこっち「ぐがーっ、」
ハッシュ「……お前が黒木智子の身体に潜伏していることは、既に気がついている」
もこっち「………」
ハッシュ「出てこい、黒木智子の中にある、もう一つの魂魄よ」
ハッシュ「……いや、こう言った方が良いか?」
ハッシュ「星十字騎士団 “ V ” グレミィ・トゥミュー?」
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/28(土) 21:03:22.98 ID:L31gtIdCO
グレミィ「……あ、ばれちゃった?」ヌゥッ
ハッシュ「……気づかれないとでも思ったのか?」
グレミィ「……おっかしいなー、この服は完全に霊圧を遮断するように造られているはずなんだけど……」
ハッシュ「……霊圧の問題ではない」
グレミィ「……?」
ハッシュ「お前は私に視線を向け過ぎた」
グレミィ「!」
ハッシュ「この世界に来た瞬間から今に至るまで、視線を感じた」
ハッシュ「退屈しのぎに小説を読むかのような視線を、な」
ハッシュ「そして、そのような視線を私にも向ける存在には心当たりがあった」
ハッシュ「それがグレミィ、お前だったということだ」
グレミィ「………」
ハッシュ「黒木智子によって眼の曇りが払われた現在、視線の正体に気づかないはずがないだろう」
149 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 21:06:16.82 ID:L31gtIdCO
グレミィ「……驚かないんだね、ハッシュヴァルト」
グレミィ「ぼくがここにいることに」
ハッシュ「当然だ」
ハッシュ「お前のことだ。更木剣八との戦いで死亡する前に、自分をもう一人残しておいたとしても不思議はあるまい」
グレミィ「………」
ハッシュ「お前の聖文字 “ V ” 、 “ 夢想家 ” は、想像を実現する力を持つのだからな」
ハッシュ「無論、骨を茶菓子に変えるような『状態を変化させる』想像であれば、想像が途切れた時に消えるがーーー」
ハッシュ「ーーーもう一人の自分を出現させるといった『物を生み出す』想像は、想像が途切れようとも変わらず持続する」
ハッシュ「お前自らが、意図的に消そうとしない限りは、な」
ハッシュ「それらの事実を考慮すれば、お前が変わらず存在していることなど、驚くに値しない」
グレミィ「……なるほどね」
150 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 21:08:08.38 ID:L31gtIdCO
ハッシュ「……お前には聞きたいことがある」
グレミィ「……なにかな?」
ハッシュ「……決まっている、この世界についてだ」
グレミィ「………」
ハッシュ「この世界は、お前が想像した幻か? グレミィ」
151 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 21:09:15.56 ID:L31gtIdCO
グレミィ「……あはは、それは違うよ、ハッシュヴァルト」
ハッシュ「………」
グレミィ「幻なんて、寂しいこと言わないでよ」
グレミィ「この世界は、紛れもなく現実で、厳然たる事実」
グレミィ「そう、間違いなく本物なんだから」
グレミィ「もっとも、『ぼく』らのいた世界の魂の流れに何一つ関わらない、遠い遠い異世界ではあるけどね」
ハッシュ「……」
152 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 21:10:24.97 ID:L31gtIdCO
グレミィ「いま、 “ ならば、何故その異世界に私たちはいる? ” ーーー」
グレミィ「ーーーって思ったでしょ?」
ハッシュ「………」
グレミィ「その答えは、とても簡単」
グレミィ「『ぼく』が、この世界と向こうの世界を繋げたからだ」
ハッシュ「……!?」
153 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 21:11:22.78 ID:L31gtIdCO
グレミィ「……教えてあげるよ、ハッシュヴァルト」
グレミィ「この世界の “ 全て ” を」
154 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 21:12:22.52 ID:L31gtIdCO
今はここまで
22時くらいから再開します
155 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:12:03.86 ID:8pi9iqKTO
投下します
156 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:17:12.31 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……さっきも言った通り、この世界は間違いなく本物だ」
グレミィ「『ぼく』らのいた世界の魂の流れに何一つ関わらない、遠い遠い異世界なんだ。覆しようの無いくらいにね」
ハッシュ「………」
グレミィ「もちろん、そんな異世界は、普通なら発見できないけどーーー」
グレミィ「ーーー『ぼく』の聖文字 “ V ” の能力は、普通じゃない。異世界だって発見できる」
グレミィ「なんたって、 “ 夢想家 ” 、想像を実現させる力なんだから」
ハッシュ「……まさかーーー」
グレミィ「そう、そのまさか」
グレミィ「『ぼく』は、異世界に行くゲートを想像し、それを実現したんだ」
ハッシュ「!?」
157 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:21:24.68 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……………… “ なぜ、そんなことを ” などと、問うつもりはない」
グレミィ「………」
ハッシュ「お前のことだ。どうせ、 “ できるから想像した ” に過ぎないのだろう?」
グレミィ「うん、そうだね」
ハッシュ「………」
グレミィ「面白そうなことができるのなら、なんだって想像してみせる」
グレミィ「それが『ぼく』だからね」
グレミィ「だから、漫画の世界を繋げることにも、迷いはなかった」
158 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:22:53.27 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……漫画だと?」
グレミィ「そう、漫画」
グレミィ「現世の創作物さ」
ハッシュ「………」
グレミィ「『ぼく』は、閉じ込められている間、現世のとある漫画にハマっていてね」
ハッシュ「………なに?」
グレミィ「それは、黒木智子…通称 “ もこっち ” が主人公をしている漫画だった」
ハッシュ「!?」
グレミィ「グエなんとかさんに頼んで、こっそり現世から取り寄せた創作物の一つさ、退屈しのぎにね」
ハッシュ「………!」
グレミィ「もこっちの行動は、『ぼく』から見ても想像を超えたことばかりだった。『ぼく』もすっかり蠱惑されてしまったよ」
159 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:27:11.60 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……そこで思ったんだ。もこっちに会いたい、って」
ハッシュ「………」
グレミィ「だけど、結局は漫画だ。そこのキャラクターと会うことはできないし、『ぼく』がもこっちを想像したとしても、それは『ぼく』の想像の域を出ない別人でしかない」
グレミィ「『ぼく』は、『ぼく』の想像に収まらない、本物のもこっちに会いたかった」
グレミィ「だから、『ぼく』は、本物のもこっちに会うための方法を想像することにした」
グレミィ「ほら、『ぼく』や君のいる世界では漫画の出来事でも、本当のこととして起きている世界もあるかもしれないでしょ?」
ハッシュ「………!」
グレミィ「その世界に繋がるゲートを想像したのさ」
グレミィ「全ては、もこっちに会うためにね」
160 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:30:45.78 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……ふざけるな」
グレミィ「ん? 別にふざけてはいないけど?」
ハッシュ「……行く世界を自由に選べるというのならば、陛下がその力を利用しないはずが無い」
グレミィ「確かに、そこまでのことができるなら、陛下が利用しないはずは無いね」
ハッシュ「………」
グレミィ「実際、 “ 夢想家 ” の聖文字だけじゃ、異世界に繋ぐゲートなんて、造れなかっただろう」
グレミィ「だけど、『ぼく』も聖十字騎士団だよ? 完聖体というものがある」
ハッシュ「!!」
グレミィ「幻とか使って隠してはいたけど、本当はできたんだ」
ハッシュ「……?!」
グレミィ「完聖体になれば、状態を変化させる想像だって想像せずに維持できるし、想像力も上がる」
グレミィ「その上がった想像力で、ゲートを造ったんだ、向こうの『ぼく』の中にね」
161 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:33:23.55 ID:8pi9iqKTO
>>160
は無かったことにしてください
星十字騎士団が聖十字騎士団になってた
162 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:34:48.95 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……ふざけるな」
グレミィ「ん? 別にふざけてはいないけど?」
ハッシュ「……行く世界を自由に選べるというのならば、陛下がその力を利用しないはずが無い」
グレミィ「確かに、そこまでのことができるなら、陛下が利用しないはずは無いね」
ハッシュ「………」
グレミィ「実際、 “ 夢想家 ” の聖文字だけじゃ、異世界に繋ぐゲートなんて、造れなかっただろう」
グレミィ「だけど、『ぼく』も星十字騎士団だよ? 完聖体というものがある」
ハッシュ「!!」
グレミィ「幻とか使って隠してはいたけど、本当はできたんだ」
ハッシュ「……?!」
グレミィ「完聖体になれば、状態を変化させる想像だって想像せずに維持できるし、想像力も上がる」
グレミィ「その上がった想像力で、ゲートを造ったんだ、向こうの『ぼく』の中にね」
163 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:37:30.68 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……いや、だが、それならば、なぜ陛下はお前のーーー」
グレミィ「ああ、陛下が『ぼく』の完聖体を使わなかったのは、向こうの『ぼく』が完聖体を失っているからだと思うよ?」
ハッシュ「!」
グレミィ「少なくとも、ぼくは、完聖体を失っているからね」
ハッシュ「………?」
グレミィ「なんたって、向こうの『ぼく』は、自分の中にゲートを造ってーーー」
グレミィ「ーーーぼくは、君の中にゲートを造ったからね」
ハッシュ「………!」
グレミィ「異世界を繋げるって結構大変でね。負荷とか凄いんだ」
グレミィ「実際問題、ぼくは、君の中にゲートを造ったことによる負荷が要因となって、完聖体を失ってしまった」
グレミィ「だったら、同じくゲートを造った向こうの『ぼく』が完聖体を失っていても不思議じゃない」
グレミィ「まあ、君の反応から想像するに、向こうの『ぼく』も間違いなく完聖体を失っているだろうけどね」
164 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:40:17.85 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「………」
グレミィ「だって、向こうの『ぼく』に完聖体が使えるなら、 “ 更木剣八 ” に殺された時点で完聖体は陛下のものになるわけでしょ?」
グレミィ「陛下は、聖文字を持った奴が死んだ時、そいつが聖文字を得てから開花させた力の全てを我が物にできるんだから」
グレミィ「そして、陛下に、『ぼく』の完聖体が使えたのなら利用しない手は無い」
グレミィ「だけど、君の話によれば、陛下は『ぼく』の完聖体を使わなかったらしい」
グレミィ「それは、向こうの『ぼく』も完聖体を失ったということに他ならない」
グレミィ「いくら陛下でも、既に失われた力を、自分の力にすることはできないだろうからね」
グレミィ「まったく、ぼくも『ぼく』も、我ながら本当に無茶したもんだと思うよ……」
ハッシュ「………」
165 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:41:24.46 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「とまあ、陛下が、『ぼく』の完聖体を使わなかった理由については、このくらいで良いよね?」
ハッシュ「………」
グレミィ「それで、『ぼく』がゲートを想像した後、何をしたか? 続きを説明しても良いかな?」
ハッシュ「………続けろ」
グレミィ「ありがと、じゃあ、続けるねーーー!」
166 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:42:59.39 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「さて、『ぼく』がゲートを想像してからしたことは単純明快」
グレミィ「当初の目的通り、もこっちに会うことだ」
グレミィ「そのために、聖文字の力で、もう一人の自分を造って、ゲートをくぐらせた」
グレミィ「ぼくが、その、もう一人の自分なんだ」
ハッシュ「………」
グレミィ「そして、この世界に来た後は、もこっち達と思う存分遊んで楽しんだ」
グレミィ「まあ、今のもこっち達に、その記憶は無いけどね。その記憶は、ぼくが想像した記換神機で封印しちゃった」
167 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:44:37.78 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……なぜだ」
グレミィ「ん? なにが?」
ハッシュ「なぜ、黒木智子たちの記憶を封印した?」
ハッシュ「飽きただけならば、わざわざ記憶を封印する必要は無いはずだ」
グレミィ「別に飽きちゃいないけど……」
ハッシュ「……それに加えて、なぜ、お前は私をこの世界に招き入れ、黒木智子の側に置いた?」
ハッシュ「答えろ、グレミィ」
168 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:45:57.67 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「んー、じゃあ、まずは最初の質問から答えさせてもらうね」
ハッシュ「………」
グレミィ「記憶を封印した理由は簡単、ぼくがいた形跡を残したままだと、後から来る君がいらないこと考えそうだったから」
ハッシュ「………」
グレミィ「そして、次の質問の答えだけどーーー」
グレミィ「ーーーきみが可哀想だったからかな?」
169 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:48:21.83 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「………」
グレミィ「ああ、別に君が特別可哀想だなんて思ってないよ。可哀想なのは陛下以外の星十字騎士団全員のことさ」
ハッシュ「…………」
グレミィ「星十字騎士団は、騎士とは名ばかりの殺伐とした人殺しの集団だ」
グレミィ「まさに、地獄に堕ちるに値する、生きた咎人」
グレミィ「しかも、役に立たないと判断された者は、処刑だの聖別だので殺処分される」
グレミィ「他ならぬ陛下の御意思によってね」
ハッシュ「………………」
グレミィ「ぼくには簡単に想像できた、星十字騎士団のみんなが、ロクな死に方をしないだろうことは」
グレミィ「それを想像すればするほど、みんなが可哀想で仕方がなかったんだ」
170 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:49:43.03 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……それで、せめて死後は、平和なこの世界に送ろうとでも思ったか」
グレミィ「うん、そうだね」
ハッシュ「………」
グレミィ「誰から救済するか迷ったけど、無難にアルファベット順に、救済してあげることにした
グレミィ「そう、聖文字 “ B ” を持つ君からね
ハッシュ「………」
171 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:52:06.24 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「だから、ぼくは完聖体の力で君の中にゲートを造った」
グレミィ「まあ、その時の負荷が要因で完聖体を失って、他の星十字騎士団を救済することができなくなってしまったんだけど、そこは置いとくね」
グレミィ「とりあえず、ぼくは、聖文字 “ V ” の力を使って、君が死ぬ直前、その精神が自動的にこの世界に運び込まれるようにした」
グレミィ「ゲートの持ち主が死んだら、ゲートも消えちゃうからね。君が死ぬ前に精神を送ってあげる必要があった」
グレミィ「もちろん、精神だけじゃ活動できないから、ゲートの出口には君の霊骸を想像しておいた」
グレミィ「そうすれば、君の精神は、ゲートをくぐり抜ける寸前で自動的に霊骸の中に入り、活動可能となる」
ハッシュ「実際、ゲートをくぐり抜けた瞬間、君の意識は目覚めた」
グレミィ「……とまあ、そんな感じで、君を救済してあげることにしたのさ」
172 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:53:00.49 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……私が、黒木智子の側から離れられず、黒木智子に霊力があったことも、救済とやらの一環か?」
グレミィ「その通りだよ、ハッシュヴァルト」
ハッシュ「………」
グレミィ「実際、もこっちの側にいて、彼女を支えてあげることは、君にとって本懐だったはずだ」
ハッシュ「………」
173 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:54:58.81 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「違うとは言わせないよ」
グレミィ「なんたって、君は皇帝補佐として、調和を重んじてきたからね」
グレミィ「そのために、どこかのモヒカンの暴走を制し続けてきた。根気よく、平和的に、ね」
ハッシュ「………………」
グレミィ「それらの事実から想像するに、誰かが道を誤らないよう支えてあげることは、君の本懐だとすら思えた」
グレミィ「だから、君には、もこっちを支える役目を与えてあげた」
グレミィ「その役目を成立させるために、君のその霊骸は、もこっちから離れられないよう造られているんだ」
グレミィ「また、もこっち個人限定で、彼女の霊力を自動的に覚醒させる機能もついている」
グレミィ「全ては、ハッシュヴァルト、君を救済するためなんだよ」
ハッシュ「………………」
174 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:57:03.11 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……ああ、余談だけど、ヤンキーにも君が見えるようになったのは、ぼくからのささやかなプレゼントさ」
グレミィ「ぼくは元々、もこっち及びその関係者には霊体を視認できる程度の霊力を分け与えていた。ぼくがこの世界に来た瞬間からね」
グレミィ「もちろん、その霊力は混乱を防ぐために記憶と共に封印したけど、それをしたのがぼくである以上、霊力だけ覚醒させるのも可能なのさ」
ハッシュ「………」
グレミィ「もこっち以外には見えないままっていうのも可哀想だったし」
グレミィ「それに、ヤンキーなら、君の存在を明かしても、なんだかんだで受け入れてくれるだろうからね」
ハッシュ「………………」
175 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 22:59:28.13 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……さて、これで、君がこの世界に送られて、もこっちの側に置かれた理由はわかったよね?
ハッシュ「………」
グレミィ「だったら、お次は、いよいよこの世界の秘密について明かしちゃうねーー」
ハッシュ「……秘密だと?」
グレミィ「うん、言い忘れてたけど、この世界ーーー」
グレミィ「ーーー実はループしているんだよ」
176 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:02:14.11 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「?!」
グレミィ「まあ、厳密には時間の巻き戻しなんだけど、ここではイメージしやすさ重視で敢えてループと表現するよ」
グレミィ「そう、この世界は、条件を満たすことで世界全体の時が巻き戻り、ループする仕組みになっている」
ハッシュ「……?!?」
グレミィ「ループする条件は2つ」
グレミィ「卒業式の日が終わる前にもこっちが死ぬか、もこっちが生存したまま卒業式の日が終わるかのどちらかだ」
グレミィ「そのどちらかを満たした時、君がこの世界で目覚めたその瞬間まで、世界全体が巻き戻るのさ」
177 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:04:39.84 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「ーーーーーー?!」
グレミィ「ははっ、ビックリしてるね、ハッシュヴァルト」
グレミィ「無理もない。人は己が理の外にあるものを、易々と己のものになんて、できっこないんだから」
ハッシュ「………!」
グレミィ「でも、これは現実で事実で本当のことなんだよね」
グレミィ「それは覆しようが無い」
ハッシュ「………」
178 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:06:52.80 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……おかしいとは思わなかった?」
ハッシュ「………?」
グレミィ「どうして、君がもこっちを脅迫した時ーーー」
グレミィ「ーーー君はもこっちの反論に耐えることができたのか?」
ハッシュ「!?」
グレミィ「何周回も君を見続けてきたぼくだから言えるけど、君は本来なら、ああいった言葉に耐えられず、感情的になってしまう人なんだ」
グレミィ「違う?」
179 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:08:15.88 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「ーーっ、!?」
グレミィ「だけど、もこっちのあの台詞を、君は耐えることができた」
グレミィ「感情のままに、もこっちを殺さずにいられた」
グレミィ「おかしいね? いったい何が違うんだろうね?」
ハッシュ「………」
グレミィ「答えは、とっても簡単」
グレミィ「君が何度も同じことを繰り返しているからだ」
グレミィ「最初の周回から前の周回の経験が深層意識に刻まれているからなのさ」
180 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:10:07.55 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「………」
グレミィ「本来なら、ぼく以外は問答無用で全部巻き戻るよう設定してあるんだけどね」
グレミィ「君の霊圧があまりに大きいせいで、巻き戻しに不十分なところがあったみたいだ」
グレミィ「まあ、そのおかげで今の君があるわけなんだけどさ」
グレミィ「そう、今の君が、ね」
ハッシュ「………………」
181 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:11:40.20 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……君は、もこっちの言葉に耐えようとした」
グレミィ「だけど、我慢できず、殺して、ループした」
グレミィ「そして、改めて耐えようとした」
グレミィ「だけど、やっぱり我慢できず、殺して、ループした」
グレミィ「それを積み重ねた結果、君は今ここに立っている」
グレミィ「君がもこっちの言葉に耐えようとしたことは、努力として経験として、君の深層意識に刻まれたからだ」
グレミィ「そして、その努力は実った。だから、君はこうしてぼくと話ができている」
182 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:13:11.42 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「さて、今の君は、いったい何百周目なんだろうね?」
ハッシュ「………」
グレミィ「何百回、もこっちを殺しているんだろうね?」
ハッシュ「………」
グレミィ「あまりに退屈で、数えるのやめちゃったよ。殺した回数なんてもはや想像することしかできない」
183 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:14:26.54 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……なぜだ?」
グレミィ「?」
ハッシュ「なぜ、時間を巻き戻すシステムなど造った?」
グレミィ「………」
ハッシュ「……卒業式の日が終わる前に黒木智子が死亡することを条件に、時間を巻き戻すというのはまだ理解できる」
ハッシュ「お前のいう幸福には、黒木智子の存在が必須となる。ならば、死んだ事実を消失させることは道理」
ハッシュ「だが、なぜ黒木智子が生存したまま卒業式の日が終わることを条件に、時間の巻き戻しを発生させる?」
ハッシュ「そんなことをすればーーー」
グレミィ「もこっち達との高校生活を何度でも楽しめるようにしたかったからだよ」
184 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:16:15.82 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「………」
グレミィ「ぼくは、君やもこっちが、いまの高校生活を何度も楽しめるようにしたかったんだ」
グレミィ「……どんな素敵な物語も、いつかは必ず終わってしまう」
グレミィ「いくつもの漫画が、いつかは終わりを迎えるように」
グレミィ「もこっち達の高校生活も、いつかは必ず終わってしまう」
ハッシュ「………」
グレミィ「それでも楽しみたかったら、頭をカラッポにして読み返すしか無い」
グレミィ「だから、もこっち達が卒業した後、ループするシステムを造ることにした」
グレミィ「終わりの無い幸福なんて、想像の果てにしか無いのだから」
185 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:17:48.68 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「……もちろん、そんなことをすれば、この世界に未来は無くなる」
グレミィ「今日、生まれた、もこっちとヤンキーの信頼関係も」
グレミィ「これから、もこっちが、ヤンキーや他のキャラクター達と、どれほど親交を深めようとも」
グレミィ「彼女たちが、先生だの、声優だの、どれほど素晴らしい夢や目標を想い描き、そのために努力を重ねようとも」
グレミィ「ハッシュヴァルト、君がもこっちをどれほど支えてあげようとも」
グレミィ「全てが、おじゃんになる」
ハッシュ「………」
186 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:19:07.54 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「だけど、幸福だ」
グレミィ「この高校生活が終わらない限り、もこっち達も君も、幸福の中で生き続けられることが約束される」
グレミィ「いまがどれだけ満たされていようと、未来も同じように満たされるとは限らないからね」
グレミィ「これが、時間を巻き戻した理由だよ」
グレミィ「納得した?」
187 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:20:41.33 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……どうやって、時間を巻き戻すシステムなど造った?」
グレミィ「………」
ハッシュ「世界全体の時間を巻き戻す、それは状態を変化させる想像だ」
グレミィ「したがって、巻き戻った状態を想像し続けなければ、巻き戻しは解除されることになる」
ハッシュ「ならば、ゲートとやらを造って完聖体を失ったお前に、何百回という周期、巻き戻した状態を維持し続けられるはずがない」
ハッシュ「お前の性格上、途中で飽きが来て、想像をやめるだろうからな」
ハッシュ「それを考慮すれば、時間を巻き戻すシステムなど成立するはずがない」
グレミィ「………」
ハッシュ「……どうやって、時間を巻き戻すシステムなど造ったのだ?」
ハッシュ「それとも、三人目以降のお前がいたとでも言うのか?」
188 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:27:57.57 ID:8pi9iqKTO
ミス
>>187
は無かったことにしてください
グレミィの名前がハッシュになってる部分があった
189 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:29:22.10 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……どうやって、時間を巻き戻すシステムなど造った?」
グレミィ「………」
ハッシュ「世界全体の時間を巻き戻す、それは状態を変化させる想像だ」
ハッシュ「しかし、巻き戻った状態を想像し続けなければ、巻き戻しは解除されることになる」
ハッシュ「ならば、ゲートとやらを造って完聖体を失ったお前に、何百回という周期、巻き戻した状態を維持し続けられるはずがない」
ハッシュ「お前の性格上、途中で飽きが来て、想像をやめるだろうからな」
ハッシュ「それを考慮すれば、時間を巻き戻すシステムなど成立するはずがない」
グレミィ「………」
ハッシュ「……どうやって、時間を巻き戻すシステムなど造ったのだ?」
ハッシュ「それとも、三人目以降のお前がいたとでも言うのか?」
190 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:32:07.77 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「間違いが二つある」
ハッシュ「………」
グレミィ「一つ目、それは、三人目以降なんていないということ」
ハッシュ「………」
グレミィ「そして、二つ目」
グレミィ「ぼくらが時間を巻き戻すシステムを造った当時、完聖体はまだあったということだ」
ハッシュ「!?」
グレミィ「当時、まだ、ぼくらは完聖体を失っていなかったんだ」
グレミィ「ただ、それぞれゲートを想像したことの反動で、完聖体の制御が不可能になっていただけに過ぎない」
ハッシュ「………」
グレミィ「言ったでしょ? 完聖体を失ったのは、無茶したからだって」
グレミィ「その無茶が時間の巻き戻しだった」
191 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:33:57.75 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「そう、本当に無茶苦茶だった」
グレミィ「時間の巻き戻しは状態変化の想像である以上、完全に維持するためには完聖体の力が必要になる」
グレミィ「たったそれだけの理由で、制御できもしない力を使うことに決めた」
ハッシュ「………」
グレミィ「深く考えず、自分たち二人がかりなら制御できるとテキトーに思い込んで、強引に使用したんだ」
グレミィ「その結果、どちらも制御に失敗して、ぼくらから完聖体が切り離されてしまった」
グレミィ「それで完全に制御を失った二つの完聖体は、暴走し、この世界全体を包み込んでーーー」
グレミィ「ーーーぼくらが下した命令通りに、勝手にこの世界の時を巻き戻すシステムと化した」
グレミィ「この世界の中にある、ぼくとゲートを除いた全てを、ね」
グレミィ「こうして、時間を巻き戻すシステムは造られたんだ」
192 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:39:07.02 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「………」
グレミィ「ちなみに、システムが造られた後は、卒業式の日に到達して終わり次第、時間が巻き戻された」
グレミィ「ただ、その時はまだループの基準点となる君が来ていなかったから、君が目覚めた直後に時間を巻き戻すことはできない」
グレミィ「だから、その代わりとして、君の霊骸がゲート内に想像された瞬間まで世界が巻き戻った」
グレミィ「そして、君の霊骸に精神が宿り、ゲート内から出て来るまで、この世界の時間はストップした」
グレミィ「……時間が動き始めたのは向こうで君が死んだ時」
グレミィ「君の精神がこちらに来てゲートが消えた時、ようやく時間が動き始めたんだ」
グレミィ「もっとも、その動き始めた時間も、君がもこっちを殺し続けたことで、君が目覚めた瞬間まで何度も巻き戻される羽目になったわけだけどね」
193 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:40:36.48 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「………」
グレミィ「ちなみにゲートは、向こうの『ぼく』とハッシュヴァルトが死んだことで、完全に消滅した」
グレミィ「ゲートは、ぼくと同じで巻き戻しの対象外だから、復活することは無い。もうあちらに戻ることは不可能だ」
ハッシュ「………」
グレミィ「それと、これも一応言っておくけど、ここでぼくを殺したところで、ループは終わらない」
グレミィ「完聖体がぼくのコントロール下に無い以上、ぼくが死んでも変わらず残り続けるんだ」
グレミィ「奪われた卍解が、元の持ち主の生死に関わらず、生き続けるようにね」
グレミィ「なんなら、試しにぼくを殺してくれて構わないよ」
グレミィ「ぼくの想像通りの結末になるだろうけどね」
194 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:42:44.96 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……時間を巻き戻すシステムが造られた経緯は理解した。その後どうなったかもな」
グレミィ「わかってくれたようで、何よりだよ」
ハッシュ「……だが、完聖体を失った後、お前たちは何をしていた?」
グレミィ「………」
ハッシュ「完聖体を失って、それで終わりか?」
ハッシュ「そのまま、己の想像力不足による不始末から、逃げ出したのか?」
195 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:44:15.16 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「………そうだね。否定はしないよ」
グレミィ「なにせ、ぼくは、霊力までも失ったのだから」
ハッシュ「!」
グレミィ「全ての霊力を、完聖体に奪われた」
グレミィ「それによって、ぼくは聖文字の力の発動すら不可能になった」
グレミィ「それさえできれば、ゲートがまだ残っていた当初、向こうの『ぼく』と認識を共有くらいはできただろう」
グレミィ「でも、霊力がなくて、できなかった」
ハッシュ「………」
グレミィ「ホームレス滅却師、爆誕さ」
196 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:47:07.96 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「そして、向こうの『ぼく』は、霊力の代わりに、完聖体を含むこの世界に関する全ての知識を奪われたようだ」
ハッシュ「………」
グレミィ「完聖体が切り離された後も、向こうの『ぼく』のゲートはしばらく残っていた。時の止まった世界でね」
グレミィ「にも関わらず、そのゲートが消滅……向こうの『ぼく』が死亡するまでの間、一切利用されることはなかった」
グレミィ「これはもう、この世界に関する知識を完全に奪われたとしか思えない」
グレミィ「この世界に関する知識が残っているのなら、ゲートを利用して、自分の完聖体に挑みに行っただろうからね」
グレミィ「そう、力ある『ぼく』が、何かに負けっぱなしでいることを、許すはず無いだろうから……」
ハッシュ「………」
グレミィ「でも、そうはならなかった」
グレミィ「ぼくの想像通りなら、向こうの『ぼく』は、この世界の何もかもを忘れて、別のことに夢中になっているだろうね」
197 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:48:03.29 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……お前たちが何をしていたかは理解した」
グレミィ「それはどうも」
ハッシュ「……この世界及びその出来事について、他に話すことはあるか?」
グレミィ「んー、特にはないかな? 他は、そこまで大事な話じゃないし」
ハッシュ「……ならば、最後に一つ、こちらから確認することがある」
グレミィ「なにかな?」
198 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:49:10.07 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「……お前が黒木智子の中にいたのは、私に気づかれないよう、霊力を取り戻すためか?」
グレミィ「………」
ハッシュ「………」
グレミィ「……その通りだよ」
ハッシュ「………」
グレミィ「霊力を持たない者が霊力を得る方法は、このくらいしか無いと思った」
グレミィ「そう、もこっちの中に入って、君と四六時中一緒にいれば良い」
ハッシュ「………」
199 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:51:20.26 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「君は魂を分け与える能力を持った滅却師だからね」
グレミィ「もこっちの中に入って、君の近くに四六時中いれば、新たな霊力を手に入れることも可能と考えた」
グレミィ「もっとも、混乱を防ぐために、君の魂を分け与える能力は人間には通用しないように造っておいたけどーーー」
グレミィ「ーーーぼくは人間じゃない。滅却師だ。問題なく君の力に寄生できる」
ハッシュ「………」
グレミィ「実際に周回を重ねることで、聖兵程度の霊力は取り戻している」
グレミィ「もっとも、その時点で気づかれちゃったわけだけどさ」
グレミィ「君がもっと馬鹿なら、完全に霊力を取り戻せただろうね」
ハッシュ「………」
200 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:53:05.35 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ(……そういうことか)
ハッシュ(……この世界の正体ーーー)
ハッシュ(ーーーそれは、人の想像によって発見され、人の想像によって改造された世界ーーー)
ハッシュ(ーーーいわば、牢獄だ)
ハッシュ(その牢獄は、そこに住まう囚人から大切なものを奪う)
ハッシュ(黒木智子たちは未来を奪われ、グレミィは力を奪われ、私はーーーー)
201 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:54:13.39 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ(ーーーふざけた話だ)
ハッシュ(我々を除いて、全てが冤罪だというのに)
202 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:55:51.26 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「んー、いろいろ想像してみたけど、大事な話はもう無いかな、やっぱ」
ハッシュ「………」
グレミィ「それじゃあ、以上がこの世界の “ 全て ” ってことで。聞いてくれて、ありがとー、ハッシュヴァルト」
ハッシュ「………」
グレミィ「……あれー? 拍手はー?」
ハッシュ「………」
グレミィ「……まっ、いいか。別に受け狙いで話したわけじゃないからね」
グレミィ「ああ、そうそう、最後にーーーーーー」
グレミィ「ーーーこれあげるよ、ハッシュヴァルト」ヒュウンッ
203 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:57:04.71 ID:8pi9iqKTO
ハッシュ「!?」ババッ
グレミィ「『身代わりの盾』か……だけど、そんなの使っても無駄だよ」
ハッシュ「!?」 スウンッ
グレミィ「だって、それはーーー」
ハッシュ「な、なぜーーー」シュウウッ
グレミィ「ーーー “ 不運 ” じゃないから」
ハッシュ「なぜ、私の魂に、お前の聖文字が……?」
204 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:58:13.76 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「そう、ぼくは、君に聖文字 “ V ” を与えた」
グレミィ「ぼくの “ 夢想家 ” の聖文字を、ね」
ハッシュ「………」
グレミィ「これは、紛れも無い “ 幸運 ” だ」
グレミィ「だから、『身代わりの盾』じゃ防げない。あれは君個人に降りかかった “ 不運 ” を移し取り、それを相手に押し付けるものだからね」
ハッシュ「………」
グレミィ「なにはともあれ、これで、ぼくは聖文字の力を持たない頃に逆戻りしたってわけだ」
グレミィ「いや、あの時よりは今の方がマシかな……この身体があるわけだしね」
ハッシュ「……なぜだ?」
グレミィ「ん?」
ハッシュ「なぜ、私に聖文字を渡した?」
ハッシュ「そんなことをしたところで、お前には何らメリットは無いはずだ」
205 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/28(土) 23:59:41.49 ID:8pi9iqKTO
グレミィ「簡単だよ、ハッシュヴァルト」
グレミィ「どうせ、ぼくは君に殺されるからだ」
ハッシュ「………」
グレミィ「慎重な君のことだ。どれだけ弱体化していようと、ぼくのような危険因子を生かしておくはずがない」
グレミィ「対抗しようにも、今のぼくの霊圧じゃ勝てっこない。なんたって、今のぼくの霊圧は聖兵並みだからね」
グレミィ「その程度の霊圧じゃ、ロクな想像を実現できない。仮にやったら実現する前に自身が消滅するだろうことは想像に難くない」
グレミィ「そして、今のぼくに実現できる程度の想像じゃ、君を即死させることは不可能」
グレミィ「それじゃ、『身代わりの盾』と “ 世界調和 ” の聖文字を持つ君には勝てない」
グレミィ「もこっちを人質にすれば何とかなるかもしれないけど、そういうのは好きじゃないからね」
グレミィ「そうなると、ぼくは、このまま君に殺されるしかない」
206 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:05:01.96 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「……だったら、せめて、霊力を少しでも回復させてくれた借りを返そうと思ってね」
ハッシュ「………」
グレミィ「その聖文字も、今のぼくなんかより、君が持っていた方がずっと有意義だろう」
グレミィ「それはもう君の力だ、好きに使いなよ、ハッシュヴァルト」
207 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:07:19.41 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「……さて、これでぼくは完全に用済みとなった」
グレミィ「殺しなよ、ハッシュヴァルト」
グレミィ「そして、『身代わりの盾』を使うんだ」
ハッシュ「!」
グレミィ「そうすれば、ぼくに “ 真実を教えられた ” という “ 不運 ” を、『身代わりの盾』に移し取らせることができる」
グレミィ「 “ 真実を教えられた ” 不運は、君個人が受けた “ 不運 ” だからね。当然、『身代わりの盾』に移し取らせることは可能なはずだ」
グレミィ「そうして、移し取らせた “ 不運 ” をぼくに降り注がせ、ぼくと話した事実を完全になかったことにできる」
グレミィ「つまり、君はぼくから聞いたことを全て忘れることができるんだ。燃やす直前のゴミに、 “ 不運 ” という切れ目を入れるだけでね」
グレミィ「たったそれだけの犠牲で、全てを忘れられる」
208 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:09:27.51 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「この世界に未来が無いということも」
グレミィ「もこっちとヤンキーの信頼関係がまた元に戻ることも」
グレミィ「それ以前に、もこっち達のしていることに何の意味もないということも」
グレミィ「ハッシュヴァルト、君がもこっちと築いた絆が消えるということも」
グレミィ「全てを忘れられるんだ」
209 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:11:06.60 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「ぼくは、夢想家ではあるけど、忘却を悪だとは思わない」
ハッシュ「………」
グレミィ「忘却するからこそ、創造できる幸福もある」
グレミィ「人が、己の死から目を逸らして、幸福を生き続けるように」
グレミィ「君もまた、この世界の未来から目を逸らしたって良いんだ」
ハッシュ「………」
210 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:12:04.54 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「目を逸らせば、未来永劫、幸福の中にいられる」
グレミィ「もこっち達のように、自分たちのこれからに夢や希望を想い描いて、幸福に生き続けることができるんだ」
グレミィ「ただ、想い通りの未来にならないというだけに過ぎない」
グレミィ「だけど、それは普通のこと」
グレミィ「夢や希望は、それを想像している間がもっとも幸福なのだから」
グレミィ「………」
211 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:14:31.75 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「選択の時だ、ハッシュヴァルト」
グレミィ「未来から目を逸らさず、絶望のままに飛び移り、幸福を恐怖で塗り潰すか」
グレミィ「全てを忘れ、目を閉じて飛び移り、もこっち達と共に幸福を想い描くか」
グレミィ「きちんと、秤にかけて決めることだ」
グレミィ「後悔は、したくないだろう?」
212 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:16:11.37 ID:JGbiaTdGO
ハッシュ「………」
ハッシュ「………………」
ハッシュ「…………………………」
213 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:17:27.12 ID:JGbiaTdGO
今夜はここまで
214 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:40:52.60 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「だから、ぼくは完聖体の力で君の中にゲートを作った」
グレミィ「まあ、その時の負荷が要因で完聖体を失って、他の星十字騎士団を救済することができなくなってしまったんだけど、そこは置いとくね」
グレミィ「とりあえず、ぼくは、聖文字 “ V ” の力を使って、君が死ぬ直前、その精神が自動的にこの世界に運び込まれるようにした」
グレミィ「ゲートの持ち主が死んだら、ゲートも消えちゃうからね。君が死ぬ前に精神を送ってあげる必要があった」
グレミィ「もちろん、精神だけじゃ活動できないから、ゲートの出口には君の霊骸を想像しておいた」
グレミィ「そうすれば、君の精神は、ゲートをくぐり抜ける寸前で自動的に霊骸の中に入り、活動可能となる」
グレミィ「実際、ゲートをくぐり抜けた瞬間、君の意識は目覚めた」
グレミィ「……とまあ、そんな感じで、君を救済してあげることにしたのさ」
215 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:41:50.92 ID:JGbiaTdGO
グレミィ「目を逸らせば、未来永劫、幸福の中にいられる」
グレミィ「もこっち達のように、自分たちのこれからに夢や希望を想い描いて、幸福に生き続けることができるんだ」
グレミィ「ただ、想い通りの未来にならないというだけに過ぎない」
グレミィ「だけど、それは普通のこと」
グレミィ「夢や希望は、それを想像している間がもっとも幸福なのだから」
ハッシュ「………」
216 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 00:45:09.77 ID:JGbiaTdGO
>>171
の内容を
>>214
に差し替えます
また、
>>210
の内容を
>>215
に差し替えます
それぞれグレミィとハッシュの名前が逆になってるところがあった
ミスばかりで申し訳ないです
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/29(日) 09:29:32.15 ID:PJcxL2Ve0
乙。
218 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:02:57.90 ID:x4CjbjdcO
投下します
219 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:04:32.46 ID:x4CjbjdcO
チュンチュン……
もこっち「……ふわあ〜〜」ムクッ
もこっち「……あー、もう、朝か」
もこっち「まったく、学生っては面倒ったらーーー」
ハッシュ「………」
もこっち「うおっ、!?」
220 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:06:01.11 ID:x4CjbjdcO
もこっち「あ、ああ、ハッシュヴァルトか……」
もこっち(くそっ、中二病の幽霊もどきとはいえ、イケメンだからな。そんな奴と同棲なんて、心臓に悪過ぎる……!)ドキドキ
ハッシュ「………」
もこっち「……なんだよ、何か用か?」
ハッシュ「……用があるわけではない」
ハッシュ「ただ、思うことがあっただけだ」
もこっち「思うこと? 何だよそれ?」
ハッシュ「………………」
221 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2018/07/29(日) 20:07:29.01 ID:x4CjbjdcO
ハッシュ「……未来が視えるとは思い悩む事ばかりだ」
ハッシュ「そうだろう、黒木智子?」
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