俺「アンチョビが画面から出てきた」

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274 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:37:14.58 ID:LvNYVq+e0
 2021年5月8日。土曜日。

 最終章第5話が公開された。

 あと、長田と柿葉さんから、二人の結婚報告を受けた。

 結婚ラッシュだなあ、おい。
275 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:38:18.50 ID:LvNYVq+e0
 2021年10月1日。金曜日。

 キミドリ氏が起業のため退職した。

 俺も付いていきます、と彼に言ったのだが、キミドリ氏は「付き合わせるのも悪いです。まぁ会社が落ち着いたらまた誘いますよ」とのことだった。

 花澤は最後の飲み会で「あ、俺も会社が落ち着いたらそっち行きますわ。給料たくさんくださいね」と言っていた。
 お前はもう少し遠慮しろよ。
276 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:39:46.86 ID:LvNYVq+e0
 2021年11月23日。火曜日。

 ミカが世界一周の旅に出かけたと連絡があった。

 ある日、突然、リビングに書き置きがあったのだと。

 俺は「ついにか」という感想を抱いた。
 ミカなら何をやっても不思議ではない。

 旅に出たのは1月ほど前らしいが、頻度こそ減ったものの、いまだにアンチョビは動画を公開し続けている。
 おそらくは、編集も彼女自身で行っているのだろうと思う。
277 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:40:37.12 ID:LvNYVq+e0
 2022年2月19日。土曜日。

 最終章、最終話が、公開された。

 これにて、アニメ、ガールズ&パンツァーの幕が下りた。
278 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:42:38.18 ID:LvNYVq+e0
 2023年4月15日。土曜日。

 けれど、ガルパンは終わらなかった。

 最終章が終わっても、最後のBlu-rayが発売されても、公開から1年以上が経ったというのに、ガルパンはまったくもって終わりを見せる気配はない。

 公式で展開があったわけではない。
 もうアニメは続かない。

 それでも終わらない。生き続けている。

 ファンアートは未だ生産され続けている。
 同人誌だってまだまだ主流だ。
 SNSはガルパンの話題で溢れかえっている。
279 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:43:51.82 ID:LvNYVq+e0
 忘れられるはずがなかった。

 どれだけの期間、俺たちはガルパンに付き合い続けてきたというのだ。
 あれだけ好いていたものを、忘れられるはずがなかろう。

 そして記憶に残り続けているということは、それは目に見える形でも現れる。

 だから終わらない。終わらないのだ。

 今日は、4月15日。

「あぁ、そうか」

 俺はあれからちょうど5年が経過していたことに気付いた。
280 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:47:38.88 ID:LvNYVq+e0
 そして、2023年5月1日。日曜日。

 大洗のバーに入ると、カウンターに一人、アンチョビが座っていた。

「おー、戸庭」

「アンチョビさん、お久しぶりです」

「敬語に戻ってるぞ、敬語に」

「あぁ、いえ、確かに。そうね、そう」

 アンチョビはロックグラスを傾けていた。
 中身はウイスキーだろう。
 いつぞやの飲み会で知ったところによると、彼女はべらぼうにアルコールに強いのだ。
 このウイスキーだって何杯目なんだかわからない。

「俺も同じのください」

 そうマスターに注文しておいて、俺はアンチョビの隣に座る。

 マスターからグラスを受け取り中身を口に含むと、ウイスキーの銘柄はボウモアのようだった。
281 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:48:37.45 ID:LvNYVq+e0
「そういえば、ミカさんはもう帰ってきたの」

「いや、まだなんだよなあ。出て行ってから1年以上経つというのに、まったく。あいつのことだから生きてはいると思うが、心配になるから連絡くらい欲しいものだ」

 そう言ってアンチョビはグラスの残りを飲み干し「もう一杯くれえ」とマスターへグラスを差し出す。

「アンチョビさんも、いつの間にやら俺のことを言えないくらいの呑兵衛になっちゃてまあ」

「私はたまにしか飲まないぞ。飲む時は量飲むけどな」

 マスターからグラスを受け取り、アンチョビはまた一口含む。
282 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:49:43.27 ID:LvNYVq+e0
「それにしても戸庭、なんにもイベントごとがないのに大洗に来るなんて珍しいじゃないか」

「いやあ、ゴールデンウイークだしね。久しぶりに昔話とか、色々な話がしたかったし」

「昔話〜? そもそも、私が戸庭と会ったのだってそれほど昔の話じゃないだろう?」

「5年っつったらけっこうな時間でしょう。まあ、そんだけ時間が経ってもガルパンが続いてるってのは不思議だけど」

「アニメは終わっただろ?」

「それでもガルパンは終わってないでしょう」

「確かにな」

 アンチョビが笑う。
 きっと彼女も、俺と同じような想いを抱いているのだろう。
283 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:50:25.54 ID:LvNYVq+e0
「……アンチョビさんは、変わらないなあ」

「戸庭もな」

「そうそう簡単に人間は変わらないってことかなあ」

「そりゃあそうだろう。私だってまだ動画の公開を続けてるんだぞ。えらいだろう!」

「えらいなあ。えらいよ、えらい」

 俺が言うと、アンチョビは、はっはっはーと高笑いをする。

 あぁ、やっぱりアンチョビの隣は心地良いなあ。しみじみとそう思う。
284 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:53:43.05 ID:LvNYVq+e0
 まぁ、口に出してみるくらい良いか。

「アンチョビさん」

「なんだ?」

「だったら、また一緒に暮らしてみます?」

 俺が言うと、アンチョビは吹き出した。

「あ、ははっ。戸庭、また敬語に戻ってるぞ!」

「本当だ。まぁそう、そうだな。気を付けます」

 アンチョビは笑いすぎて瞳から漏れ出た涙を、右の人差し指で拭う。

「いいぞ」

「え? 何が? ガルパン?」

「会話の流れが読めないのか、お前はっ」

 手元のウイスキーをぐいと飲み干し、アンチョビを「自分の言葉を思い返してみろ!」と続ける。

「あぁ、なるほど」
285 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:55:08.19 ID:LvNYVq+e0
 ふいに、ぽろろん、と、どこからともなくカンテラの音が聞こえた。

「ん、んん?」

 姿が見えずともわかる。
 カンテラなんて弾く人間、俺たちの身内では一人しかいない。

「ぉおおっ!? ミカ、帰ってきたのか!」

「甘い香りに誘われてね」

 バーの入り口から現れたミカは、アンチョビを挟んで俺の二つ隣に座ると、マスターへオレンジジュースを注文した。
 下戸なのだ、この人は。

 ミカはジュースを一口飲むと、ふうと息を吐き、再び、ぽろろろーんとカンテラを弾いた。

「アンチョビ。朝が来る前に勝利を収められて良かったね」

 ミカの言葉に、アンチョビは「どういう意味だ!」と抗議の声を上げる。

 俺はどういう意味かがわかってしまって、気恥ずかしさを誤魔化すべく「パンツァーフォーっ!」と叫んだ。

 マスターが俺と一緒に右手を突き上げてくれたのが、俺には大層嬉しかった。
286 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:55:43.69 ID:LvNYVq+e0
おわり。
287 : ◆JeBzCbkT3k [saga]:2018/07/20(金) 23:56:46.77 ID:LvNYVq+e0
読んでくれた方、ありがとうございました。
長くてごめんなさい。
なんとか、今日中に終われました。
288 : ◆JeBzCbkT3k [sage saga]:2018/07/20(金) 23:58:13.55 ID:LvNYVq+e0
HTML化依頼出してきます。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/20(金) 23:59:11.77 ID:+QCmCWX+O
面白かった、乙!
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/21(土) 02:50:49.53 ID:81Q89+YDO
最終章のダイマ乙
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/21(土) 04:31:12.70 ID:ZOSn9DtRo
淡々とした意外性が面白かった。
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/21(土) 06:10:04.76 ID:BswzQad50
最終章公開に向けてしほさんの同人描かなきゃ(使命感)
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/23(月) 14:30:14.90 ID:488o+hhn0
しぽりんがこっちの世界に召喚されるとな
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