【モバマス】クラリス「魔女・セイラム」

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42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:15:19.23 ID:TXxgAIfuO
 しかしそうだったとしても、聖職者の副業として相応しいと、大衆に受け容れられるものではありませんでした。

「破門……ということでしょうか」
「違う。破門じゃあない。信徒としての一切の権利を――主に祈る資格さえ剥奪するのが、破門だ。そんな心無いことをしてたまるものか」

 あくまでこの修道会から除名するだけだと、神父様は言いました。

 ――除名する、「だけ」だなんて。その処分がどんなに惨いことか。

「セイラムは……彼女は、この教会のために、そこで働いていたんですよ?」
「わかってる」
「夜もまともに寝ないで……教会の仕事と、並行して」
「わかってる」
「ずっと、ここで過ごしてたから……あのひとは、ここが、大好きで、だからっ」
「わかってる」
「でしたら!」
「仕方ないだろうがっ!!」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:16:15.98 ID:TXxgAIfuO
 神父様は椅子を倒す勢いで立ち上がり、吠えるように言いました。

「どんな事情があったにせよ、あいつが風俗店で働いていたという事実があって、それを顔の見えない何者かに知られてるんだぞ! ……もしも悪意の元に広まってしまったら、どうなると思う?」

 それこそ、破門せざるを得なくなるかもしれない。

 その言いようは、理解はできても、納得はできず、できるわけがなくて、私はくちびるを強く噛みました。

 大丈夫だと、おっしゃっていたではないですか。

「……ここの帳簿は、セイラムに任せていたんだ」

 神父様は、まるで懺悔するように言います。

「いまの調子で大丈夫だと、私たちには言っておいて……本当は大丈夫ではなかったのに。大丈夫じゃない分は、自分でなんとかするつもりで」

 彼の目元を覆う手から、光るものがこぼれて落ちました。

「ばかものめ……」

 私と神父様は、拭い得ぬ悲嘆に暮れました。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:17:01.65 ID:TXxgAIfuO
「……信頼できる私の友人が、関東の方で修道会の代表を務めている」

 少しののち、神父様が静かに言いました。

「そこへの、紹介状を書くつもりだ」

 私は、何と返事をしたでしょうか。覚えていません。あるいは、何の返事もできなかったのかもしれませんでした。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:17:36.21 ID:TXxgAIfuO
 セイラムは、愛した教会を去りました。

 セイラムは淡々と、謝罪と、感謝と、離別の挨拶を口にしました。

 私はすがるように、謝罪と、感謝だけを伝えました。

 別れ際に、私はいたたまれなさから彼女の目を見ることができませんでした。

 その瞳がいま何を見ているのか、どんな色を宿しているのか。

 確かめるのが、ひたすらに怖かったのです。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:18:34.71 ID:TXxgAIfuO
 日常は、たとえ大切なものが失われてしまったとしても、絶えず回ってゆきます。

 回り回る世界の、欠け落ちた部分が身に触れるたびに、私は痛みにうずくまりそうになりました。

 欠落したものがあまりにも大きく、多かったことを、日々の中でたびたびに思い知りました。食事のとき、祈りのとき、うたうとき、掃除のとき、ほかにも、数え切れないほど。

 セイラムが居なくなったことは、私たちにとってありとあらゆる面で好ましくありませんでした。

 それでも、やっていかなければならないということはわかっていました。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:19:19.63 ID:TXxgAIfuO
 夏の長い年でした。

 八月も後半になりましたが、いまだ健在の暑気が寝起きから汗を滲ませます。

 ひとり部屋となってしまった私室で、私は朝日の中に目を覚ましました。身体の芯に痛みを覚えましたが、気づかなかったふりをしました。

 着替えを終え、朝食の支度をしようと部屋を出かかったところで、ふと思い出します。せめて今日くらいはと、当番を代わってもらえたのでした。

 私は自身の寝台に腰掛けました。

 そうしてやっと、少しホコリをかぶり始めた向かいの寝台の上に、無造作に置かれているものに気付きました。昨日まではたしかになかったはずで、私は自身の表情が訝しげに強張るのを感じました。

 無地の白い包装紙をまとった小さな箱に、可愛らしい小花柄の便箋が重ねられています。

 その便箋には、ただ一文が書かれていました。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:20:03.07 ID:TXxgAIfuO
 ――『ハッピー・バースデイ』
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:20:44.64 ID:TXxgAIfuO
 その手書きの字の特徴に心臓が跳ねました。

 いったいどうして。どうやって?

 混乱する心中もそのままに、私は慎重にラッピングを解きました。包装紙の下には、メーカーのロゴも何も印字されていない、真っ白い箱。

 おじおじとふたを開けると、緩衝材の中にうずまる朱い石が日の光を弾いてつやめきました。

「……ブローチ?」

 その留め金には、メモ書きが挟まっていました。やはり、よく知っている癖の見える字が走るように。

『ごめん、誕生石間違えた……
 でもせっかくだし、良かったら、付けてて』

 好情が吹き出すように、思わず笑いがこぼれました。少し遅れて、涙がひとつふたつとこぼれました。引きつった、不恰好な泣き笑いになってしまい、誰に見られることもなくて、本当に良かったと思えます。

 どうせメッセージを書くなら先の便箋に書いておけば良かったでしょうに、その奔放なやり方さえ愛しい。
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:21:49.95 ID:TXxgAIfuO
 こぼれる涙につられるようにして、抑え込んでいた痛みと感情が溢れました。笑う余裕なんてもうなくなって、私はただひたすらに、悲しさと寂しさを彼女の寝台に吐き出しました。

 居なくなってもなお、私は貴女にいただいてばかりでした。

 数え切れない恩が胸に浮かぶごと、私の中の貴女の領域が大きくなる。やめてほしかった。潰れてしまいそうでした。募る彼女への想いが、そのまま彼女を失ったことへの痛みに置き代えられます。

 どうしていま、ここに、貴女はいないのでしょう。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:22:16.61 ID:TXxgAIfuO
 主よ。貴方の定めたセイラムの運命は、
 本当に、正しかったのですか?
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:22:53.83 ID:TXxgAIfuO
 私は、ブローチを胸元に付けました。手を添えると、安らぎを得られるように感じました。

 鏡に映る私は、目元が赤くなっていました。それをからかい笑うようなひとは、もういません。

 部屋を出ると、神父様が待っていました。

「……いいんだな」
「もちろんです」

 ためらいなど、あるはずもありませんでした。

「洗礼名は、決めたか?」
「はい」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:23:59.29 ID:TXxgAIfuO
 ――私には姉がいました。

 その洗礼名をセイラムといいます。

 実姉ではなく、ただ先達としての存在であったことから、私が姉と思い慕っていた方です。彼女もまた私のことを、実の妹のように可愛がってくれていました。

 セイラムは剛健なひとでした。庭仕事の際、清掃の際、たびたび修道服の袖をまくりあげていた姿を、よく覚えています。行儀が悪いと司祭様から叱られていた様子も、また同じく。

 セイラムはオルガンの演奏に優れていました。彼女の気立てがよく表れた明朗な音色に沿って、聖歌をうたった日もあります。

 セイラムは料理が得意でした。小斎のときなども、制限された食事さえ、彼女の作るものならば苦ではなくなりました。

 少女だったころの私を思い返すと、ほとんど決まってと言っていいほど、セイラムと共に在った日の記憶が掬われます。それくらい、私は彼女の後をついて回っていたのでしょう。

 セイラム。貴女の背中を追った私の日々は、幸せでした。私と過ごした貴女の日々は、幸せだったでしょうか。もう確かめるのは難しくなってしまいました。

 朝の日差しや、夕の淡い月影にさえ、貴女の不在を強く感じます。
 それでも、いままで私に添っていただいた事実はこの胸の底で鮮やかさを保ったまま。

 貴女にいただいたものすべてが、この胸で輝いているようです。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:24:36.01 ID:TXxgAIfuO
 私はクラリス。

 いまだ未熟な身で、きっと誓願を経てもなお、セイラム、貴女のように在ることは到底できないのでしょう。

 けれど、貴女が生きたこの場所を、貴女と同じく愛していたいと、心からそう願っています。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:25:11.25 ID:TXxgAIfuO
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 あれから、二年という月日が過ぎました。

 セイラムの脱離は教会の運営にきわめて大きな影響を残しました。収入の大きな部分を補っていた彼女がいなくなってしまったのですから、それも当然のこと。借り入れていた金額は日増しに大きくなり、返済は当然のように滞って――教会は物件として差し押さえられ、ついには使用を禁じられました。

 かろうじて修道会という名前だけは保っているものの、有名無実と揶揄されても仕方ないような情況です。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:25:53.98 ID:TXxgAIfuO
 青空の下、花の落ちて緑だけが美しいバラ園の中、私はCDプレイヤーの停止ボタンを押し込んで微笑みます。

「ふふ、素晴らしい合唱でしたね。きっと、神様にも届いたと思いますよ。今日はこれでおしまいにいたしましょう」

 聖歌隊の子供たちは、邪気のない顔で私に別れと再会の約束を告げ、帰途に着きます。その彼らに、次の日曜日もまたこの場所でと、そう伝えなければならないのがただただ辛い。

 私は、ベンチに腰掛けました。俯き加減な顔の角度はもう癖のようになってしまって、ため息は地面に向けてまっすぐ落下しました。

 なんとかしなければなりません。

 この夏、やっと私も二十歳になります。

 間接的な支えだけでは、もう留められない。いまとなると、あのときの彼女の心情が痛いぐらいにわかるようでした。

 なんだってしなければ、この愛する場所を失うかもしれない。その恐怖のなんと痛烈なことか。

 私は口元を引き結び、胸元のブローチに手を添えました。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:26:40.61 ID:TXxgAIfuO
 ふと、その私の頭上に影が差しました。

「――どうして悲しげなの?」

 不意のことでしたが、質問が私に向いていることは明らかでした。表情をあらためて、私は目に入った黒革のパンプスにこたえます。

「……あら、 見られてしまいましたね。子供たちに悲しい思いをさせてしまっているのが心苦しくて、つい」
「へえ。悲しい思い?」
「はい。彼らは聖歌隊の子供たちです。私は教会のシスターなのですが、仕える教会が財政難に陥っていまいまして。現在、教会は使用できない状態なのです。聖歌の練習はもちろん、神に祈りを捧げることも叶わず……このままでは建物を売り払うしか道はありません」
「それは……大変ね」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:27:46.91 ID:TXxgAIfuO
 きっと、あたたかな心を持つひとなのだろうと思いました。そうしてようやく、顔も見ずに話している無礼にはたと気付きます。

 取り急ぎ、立ち上がって――目を合わせるや茫然として、自らを忘れました。

「でも、間に合ってよかった」と言うその顔は、慈しむように微笑んでいました。

 よく知った、愛した、何度も想ったひとが、そこで笑っていました。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:28:58.71 ID:TXxgAIfuO
申し訳ございません、>>58はミスです。以下に訂正を。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:29:47.58 ID:TXxgAIfuO
 他人事であるはずなのに、その声は私の内情に優しく添うようでした。

 きっと、あたたかな心を持つひとなのだろうと思いました。そうしてようやく、顔も見ずに話している無礼にはたと気付きます。

 取り急ぎ、立ち上がって――目を合わせるや茫然として、自らを忘れました。

「でも、間に合ってよかった」と言うその顔は、慈しむように微笑んでいました。

 よく知った、愛した、何度も想ったひとが、そこで笑っていました。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:30:20.06 ID:TXxgAIfuO
「……セイラム?」

「うん。ひさしぶり」

「……本当に?」

「さすがに見たらわかってよ。いやまあ、見慣れないカッコしてるだろうけど……あ、そういえば付けてくれてるんだね、ブローチ。よく似合ってる」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:31:51.68 ID:TXxgAIfuO
 伸ばしてあった髪は潔いくらいにばっさりと短くなり、黒衣であることは変わりませんでしたが、修道服ではなく、本来私たちと交わるはずのないビジネススーツを着込んでいました。

 それでも変わることはない彼女の本質が、そこに立っていたのです。

「クラリス」と、彼女が初めて私の洗礼名を呼びました。たったそれだけのことで、驚きと戸惑いも抑えて、嬉しい気持ちは溢れそうなほど。ですが、続いた言葉に気を引き締めました。

「貴女は、これからどうするつもり?」
「……あの教会は、多くのひとの心のよりどころ。失うわけにはいきません。そのために、私も他のお仕事をしてお金を稼ぎます。多少の不安はありますが、神は……きっと、お救いくださるはずですから」

「そっか」彼女は苦笑いに近い笑みを浮かべて言いました。「貴女はそう言うと思ってた」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:33:15.26 ID:TXxgAIfuO
 それから、彼女は私に一枚の名刺を差し出しました。そこには「セイラム」ではなく、彼女の俗名が綴られています。

 肩書きは、

「シンデレラガールズ・プロダクション、アイドル部門、プロデューサー……?」
「うん。それがいまのあたし」
「シスターは……」
「やめたよ。悩んだけど……あたしが本当に大切にしたいものは何かって考えたらね。よその修道会でお世話になってる場合じゃないかなって」

 急な訪問からめまぐるしい彼女に、私は心の落ち着く暇もありませんでした。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:34:23.34 ID:TXxgAIfuO
「いろいろあったんだ」と彼女は言いました。

 私たちの教会を去ってから、彼女は紹介された修道会に一旦は身を寄せたそうです。しかし、そこで日を過ごすごとに、愛した場所との違いが目に入る。自分の本来の居場所がここではないと思い知る。決別は早かったそうです。

 どうにかして帰りたかった。帰れないことだけは明らかだった。だったら、せめて外からでも力になろうと思った。

 資金が必要だった。そのために思考を巡らせ、あらゆる可能性を調べて、ついに見つけたのは、皮肉にも彼女が居場所を去る原因となった、スナックで手に入れた伝手。

 その店の常連で、彼女をいたく気に入っていたのが、ある有名な芸能事務所のお偉方だったのだと。

 人当たりがよく、聡く、オルガンから音楽の造詣にも通じる彼女。採用に至るのがあっという間だったと、自慢げに言われたことも納得ができるようでした。

 それから長めの研修期間を積んで、その間も愛した場所を決して忘れることはなく――そしてようやく、今日にこの地を踏んだ。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:35:10.01 ID:TXxgAIfuO
「昨日やっと、プロデューサーとしてひとり立ちを認められてね。したらすぐ、担当するアイドルをスカウトするのが最初の仕事だって言われて。スパルタでしょ。まあ、それは都合よかったし別にいいんだけど」

 しばらくぶりの彼女との会話に、時間を忘れるようでした。なにものにも代えがたい喜びに浸っていたところ、ふと、気になる言葉に引っかかりました。

「……都合がいい?」
「うん」

 訊ねると、彼女は頷いてから、私と視線を合わせました。

「クラリス。覚えてる? いつかあたしが言ったこと」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:36:09.53 ID:TXxgAIfuO
 その質問は漠然としていて、すぐにこたえることはできませんでした。問いで返そうとする私を、しかし彼女の続く言葉が塞ぎます。

「あたしは、ひっどい間違いをしたよね。あたしがなんとかしなきゃって、ひとり思ってばっかりで、取り返しのつかないことして、結局余計に教会を追い込んだ」
「そんなことは……」
「それでも」

 彼女の目は、強い意志の光を宿していました。二年前、別れるときの目を見ておくべきだったかもしれない。そう思いました。

「あたしはやっぱり、守りたいんだ。だからクラリス」

 私はようやく、先の質問の意味を悟りました。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:37:11.56 ID:TXxgAIfuO
「貴女の歌声を、活かしてみるつもりはない? あたしと一緒に……大切な場所を守ってくれるつもりは、もうないかな」

 一度は間違えた。だけど、だから、もう間違えない。間違えさせないから。

 呟きと共に、差し出された手。

 私は笑おうとしました。笑えませんでした。視界が歪むほど、心の底から湧き出すような感情が止まりませんでした。

「……いつか、忘れていたのは……貴女じゃないですか」
「もう、絶対忘れないよ」

 私は、彼女の手を取りました。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:37:45.93 ID:TXxgAIfuO
 神父様やほかのシスターたちに、相談はしました。しかし、ほとんどする必要もなかったと感じられるほど、彼らはすぐに私の背中を押してくれました。

「あいつめ。いま、そんなことになっているのか」

 怒ったように言う神父様でしたが、その表情は反して朗らかでした。

「すまないな。頼むよ、クラリス」
「任せてください。私ももう、大人ですもの」
「そうか。いや、そうだな。……セイラムにも、よろしく」
「はいっ」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/14(土) 18:38:26.19 ID:TXxgAIfuO
 それから三日後、私は東京のオフィス街を訪れました。

 駅のホームに出ると、怒涛のような人波に圧倒されました。そんな中に、凛と背筋を伸ばして立つ姿はすぐに見つかります。

 彼女もまたこちらを見つけ、微笑みました。

 歩み寄る彼女と、自らと、空に向けて、私は伝えます。

「アイドルの道を行く覚悟を決めてまいりました。貴方との再会を……心より、感謝します」

                   了。
70 : ◆H4.9pPaHc. [saga]:2018/07/14(土) 18:42:20.17 ID:TXxgAIfuO
終わりです。
色々と初めてのことだったため、拙いところもあり申し訳ありません。
最後まで読んでいただいた方が、もしもいらっしゃるのなら、本当にありがとうございました。至上の感謝を申し上げます。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 18:49:49.14 ID:h0kBZKIDO


女プロデューサーは沢山いるが、クラリスさんを誘う例は初めてやな


あとセイラム言われて、デ・モイン級を思い出したのは俺だけでいい
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 19:38:27.50 ID:IrIVSCkI0
RWBYのボスキャラがそんな名前だったような
まだ読んでないから感想ちょっと待って
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/19(木) 13:33:32.96 ID:7E+0rioC0
乙、良かった…!

タイトルが魔女裁判を髣髴させると思ったら、周り回って灰被り姫に魔法をかける魔女になったかと思うと胸熱
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