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【モバマス】クラリス「魔女・セイラム」
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1 :
◆H4.9pPaHc.
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:40:09.64 ID:igdmNlYd0
オリジナル設定のもと、ネームドのオリジナルキャラが登場します。
ご注意いただければ幸いです。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1531557609
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:41:09.86 ID:TXxgAIfuO
###
??懺悔を。
??天にまします主よ。
??私は、たった一度だけ、貴方を疑ったことがあります。
###
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:42:46.37 ID:TXxgAIfuO
私には姉がいました。
その洗礼名をセイラムといいます。
実姉ではなく、ただ先達としての存在であったことから、私が姉と思い慕っていた方です。彼女もまた私のことを、実の妹のように可愛がってくれていました。
セイラムは剛健なひとでした。庭仕事の際、清掃の際、たびたび修道服の袖をまくりあげていた姿を、よく覚えています。行儀が悪いと司祭様から叱られていた様子も、また同じく。
セイラムはオルガンの演奏に優れていました。彼女の気立てがよく表れた明朗な音色に沿って、聖歌をうたった日もあります。
セイラムは料理が得意でした。小斎のときなども、制限された食事さえ、彼女の作るものならば苦ではなくなりました。
少女だったころの私を思い返すと、ほとんど決まってと言っていいほど、セイラムと共に在った日の記憶が掬われます。それくらい、私は彼女の後をついて回っていたのでしょう。
セイラム。貴女の背中を追った私の日々は、幸せでした。私と過ごした貴女の日々は、幸せだったでしょうか。もう確かめるのは難しくなってしまいました。
朝の日差しや、夕の淡い月影にさえ、貴女の不在を強く感じます。
それでも、いままで私に添っていただいた事実はこの胸の底で鮮やかさを保ったまま。
貴女にいただいたものすべてが、この胸で輝いているようです。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:43:27.13 ID:TXxgAIfuO
私はクラリス。
いまだ未熟な身で、きっと誓願を経てもなお、セイラム、貴女のように強く在ることは到底できないのでしょう。
けれど、貴女が生きたこの場所を、貴女と同じく愛していたいと、心からそう願っています。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:44:29.08 ID:TXxgAIfuO
###
「こら、セイラム!」
神父様の厳格な声色に、私の名が呼ばれたわけではないのに、私の肩が跳ねました。教会の廊下を先行くセイラムは足を止め、「はい?」と高く抜けたような声を返します。
「なんでしょう?」
目の前で黒く長い髪がスイングしました。首だけで振り向き、彼女はぞんざいに訊ねます。ここの最高責任者である司祭にこのような対応ができたのは、誰に対しても豪胆さを発揮できる特質を持つ彼女くらいのものでした。
「腕まくりをしてはいけないと、お前はいったい何度言えば……」
「ああ、はい。いや、そうはいいますけど神父様」
私とは違い、セイラム自身は神父様の注意などどこ吹く風かと、悪びれる様子もなくまくりあげた袖をつまみました。
「掃除なんてするときに長袖だとですね、擦ったりなんだりで超汚れるんですよ。ねえ?」
「はいっ?」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:45:22.14 ID:TXxgAIfuO
流れ弾は不意に来るものです。話を振られた焦りに妙な声を出してしまいましたが、私は借り物の修道服をきちんと着込んでいました。
「シスター・セイラム。私は着崩していません」
「うん。だからほら」
セイラムは私の手を取り掲げました。黒かった袖口にはホコリがこすれ、灰をかぶったような色になっています。
「すごい汚れてるでしょ。これじゃ生地がすぐダメになる。清貧なあたしたちが服、頻繁に買い替えちゃ問題じゃないですか?」
「買い替えなければいいだろう」
「ボロ着てろって言うんですか」
「そうじゃない。修繕すればいい、という話だ」
あくまで毅然とした神父様に、セイラムはひょいと顔を背けました。
「……アッタマ硬ぁーい……」
「聞こえてるぞセイラム!」
怒髪天を衝く。というと大げさになりますが、こぼれ落ちた彼女の本音に神父様のボルテージはひとつ上がったようです。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:46:32.29 ID:TXxgAIfuO
軽やかな笑い声を残して、セイラムは駆け出しました。廊下を走るのもまた聖職らしさに欠ける行為で、神父様は眉間のシワに中指を添えてため息をひとつ。
「……セイラムのことは、見習わないように」
私にそう言う彼を見るのは、何度めだったでしょう。私は苦笑だけでこたえました。
ご不興を買ってしまわないよう音を潜めた徒歩で廊下を渡り、表戸を開けて外庭に出ると、窓拭きのためにバケツと雑巾を準備したセイラムがいました。
「あ、来た来た」
「申し訳ありません。お待たせいたしました」
「先輩を待たせるなんて、いい度胸してるじゃない。走って来なきゃでしょ?」
「私まで叱られてしまいます」
袖をまくりあげたままのセイラムが、力強く雑巾の水を切りました。隣で同じようにすると、濡れ手に吹く北風が痺れるような刺激を連れて来ます。
青い空は冷たく遠く。秋は過ぎ、本格化する冬の凍てつきは日向にも霜を降りさせていました。
「頭でっかちなんだって、あのひとは。ここで仕えるなら覚悟しときなね?」
彼女の言い草はひどいものでしたが、その口調の中にはおどけたような優しさがありました。
「もう、すっかり。覚悟はできてしまいましたよ」
そう返すと、「それは重畳だ」とセイラムは肩をすくめました。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:47:26.89 ID:TXxgAIfuO
私は日本の兵庫にある活動修道会で、修道女としての日々を過ごしていました。
そう大きくはない教会が拠点でした。規模もそれに準じます。神父様に、シスター・セイラムを含めて修道女が三人と、聖歌隊の子供たちがいくらか。そこに私を加えた二十にも満たない頭数のコミュニティ。
正規の誓願を受け入れてもらえる――つまり正式に修道女となれるのは十八歳からと教会法で定められているため、当時その要件を満たせていなかった私の身分には、いまだ括弧書きで見習いという文言が付いていました。
共同生活と規律に整頓された日常はやや窮屈ではありましたが、決して不満の鬱積するようなものではなく、慎ましやかだとしても、それを厭う気持ちはカケラさえもありはしませんでした。
もともと聖歌隊にいた私は、ほとんど自然な流れのように修道に身を寄せました。主よりたまわった生をひとのために使えるなら、それはなんと幸せなことか。セイラムをはじめとした修道女のみなさんと接するうち、私はいつしかそう考えるようになっていたのです。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:48:36.88 ID:TXxgAIfuO
「よし。こんなものでしょ」
手にしていた雑巾をバケツに放り込んで、セイラムが言いました。隣の掃き出し窓を同じように拭いていた私は、まだ半分ほどが終わったところです。
私は彼女が担当した窓の、桟のあたりを指さしました。
「ちゃんと隅まで拭いてください」
「ええ? 姑みたいなこと言わないでよ」
「きちんとしませんか」
寒空の下でしたので、口を尖らせる彼女の気持ちはよくわかりました。とはいえ場合が場合です。
「明日は、聖誕祭なんですから」
「……はぁい」
渋めの返事とともに、セイラムはふたたび雑巾に手を伸ばしました。――表情はやはり、依然嫌そうなままでしたけれど。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:50:27.83 ID:TXxgAIfuO
明けた朝には、早くから近隣に住む子供達が教会の外庭に集まっていました。
私達は規模が規模ですので、そう大きな催しものができるわけではありません。それでも多くの参加者に集まっていただけるのは、ひとえにこの修道会が積んできた篤実さがゆえなのでしょう。
「はーい! プレゼントが欲しい子はこっち集まってね!」
平常とは違ってひとり赤いコスチュームを着込んだセイラムの号令に、子供達が誘われています。準備にはあまり乗り気でなかった割に、彼女が誰より楽しんでいるご様子。隣にいた神父様がため息を吐きました。
「……聖ニコラウス。どうぞお許しを」
「注意はされないのですね」
「ああ。それは」
私が訊ねると、神父様は不本意そうにしながらも頷きました。彼の視線の先には幸せそうな賑やかさがあり、それは私の目にもよく見えています。
「……子供達が喜んでいるしな。それに、こういう時に口を酸っぱくするのは、さすがに無粋が過ぎるだろう?」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:51:13.15 ID:TXxgAIfuO
――あはは! はーい、大事に食べてね。あたしたちが丹精込めて作ったクッキーなんだから!
童話上のサンタクロースさながらに大きな袋から小包を取り出し、セイラムは子供達に配っています。はじめはひとつひとつ手渡していましたが、おそらく面倒になったのでしょう。まるで絵本の描写をなぞるように、途中からの小包は宙を舞って子供達の元へ届けられました。要するに、セイラムは次第に投げ渡すようになっており。
「――まあ、あとで思い切り怒るよ」
その神父様の言い切りは断定でした。とはいえ、これは仕方がないことでしょう。私は心中でのみ彼女の無事を祈り、催しの運営としての役割を全うするため、教会の中へ入りました。
祭壇の横に安置されたオルガンは昨日のうちに調律を終えて、出番をいまかと待っていました。私はその上に開いてあった楽譜に目を滑らせます。
私は聖歌隊とともに、キャロルを披露することになっていました。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:52:15.08 ID:TXxgAIfuO
聖堂内にはちらほらと人影が見えていました。そのうちのひとり、ある馴染みの婦人からは、「歌、楽しみにしてるからね」というお声をいただきました。
「はい。精一杯、努めさせていただきます」
「頑張ってねえ。今年もセイラムちゃんが演奏?」
ええ、それはもちろん、と首肯を返そうとしたのですが、「あのねおばちゃん」とサンタクロース衣装のセイラムが割り込んできました。あらかたを配り終えたようで、彼女の抱える袋は張りを失ってしぼんでいます。
「いいかげんちゃんづけやめてよ。あたし成人過ぎて何年経ってると思ってるの」
「あら? ええと……五年くらいかしら」
「そうだよ。もういい大人なんだってば」
「あらあら。でも、わたしにとってはいつまでもセイラムちゃんだわぁ」
ふふふ、と上品そうに微笑まれると、もう返す言葉もなくなったようでした。
婦人が離れていくと、セイラムは脱力するままオルガン前の椅子に腰掛けます。
「……参るなあ、もう。いつまでも子ども扱いなんだから」
「ふふ。そんなにお嫌ですか?」
「嫌でしょお。むず痒いったら」
セイラムは私よりも時期早く、かつ年若くしてこの教会に身を委ねるようになったと聞いています。
先ほどの婦人は、そのセイラムの訪れよりもさらに以前からここに通い続ける熱心な方でした。この場所におけるセイラムの軌跡をすべて知っているひとりなのです。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:53:03.92 ID:TXxgAIfuO
「昔から変わっていない。という意味で、喜ばしいことなのでは?」
「悪いようにも取れるよ」
「そんな嫌味を言う方ではないでしょう」
訊ねるというよりは、確かめるように私は言いました。セイラムは「ま、そうなんだけど」と呟いて、座ったままオルガンに向き直ります。
おもむろに、鍵盤とスウェルペダルの上で、白い指と、黒い靴は踊るように。
音の箱にたくわえられた風は互いに混じり、溶け合って成長を経て、木管から華やかに旅立ってゆきます。聖堂の中、鮮やかに明るい音色が響きました。
賛美歌第二編129番――ひいらぎかざろう。
オルガンに置かれていた楽譜の、今日に披露を予定していたものではありません。弾くのはご無沙汰なはずですが、軽快な旋律はその空白を感じさせませんでした。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:53:48.36 ID:TXxgAIfuO
そばにただ佇む私に、セイラムは目配せをしました。
――ほら、うたえるでしょ?
言外の意味は容易に伝わります。私は少しだけためらったものの、ついには彼女の行動に添いました。
音楽はひとを呼ぶものです。聖堂内に少しだけあった人影は、次第にその濃度を高めていきました。外にいた子どもたちや、その保護者の方々も続々と集まってきます。
第二編129番はどこかマドリガルの要素が感じられる、短い歌です。
ループする演奏が二度目の周期に入り、最後の囃子詞にさしかかったあたりで慌てた顔の神父様が聖堂に入ってきました。後ろからは聖歌隊の子どもたちが続きます。
彼らは、どうやら予定のキャロルが知らず始まったと勘違いしたようでした。
神父様の眉間にシワが寄り、私は素直に謝ったものの、セイラムは謝りつつも開き直って、聖歌隊と一般信徒たちがそのやりとりに笑いました。
やがて、あらかじめ組まれていたプログラムがセイラムに流されるように始まりました。
その場に居合わせなかったひとからは、もしかすると、やや粗放な進行に思われるのかもしれません。けれど、賑やかなあたたかみが確かにそこにはあったのでした。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:54:42.46 ID:TXxgAIfuO
その日の夜は、ごくささやかな慰労会が開かれました。
私たち修道会の今年の大きな活動も、この日が最後。教派によっては飲酒を固く禁ずるところもありますが、私たちはその限りではありません。軽度にアルコールの入った会は、ゆるやかに盛り上がりを得たあとに、なだらかに落ち着きました。
年齢の問題によってお酒を飲めなかった私は、食事を済ませたあとの時間を持て余していました。当てどのない足任せに運ばれていると、いつのまにか外庭の冷え切った大気に含まれていたことに気づきます。
私は外庭が好きでした。特段なにかがあるわけでもなく、ほんのわずかな植え込みが、かろうじて遊歩に楽しむ余地を残しているだけのような空間。
なにかを好きになるときというのは、往々にして理由があるものです。汝の隣人を無償に愛せと、その教えを忠実に守られる聖哲がまれであることからもわかるように。
特別さの見えないこの庭に、好ましく思う理由を見出すのは難しいことでしょう。それでも。
私は、ここが好きなのでした。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:55:20.39 ID:TXxgAIfuO
不意に、うしろから名を呼ばれて、振り向くと片手にグラスを持ったセイラムが立っていました。色白な肌には少し酒気を帯びて、ほの赤く染みた頬が艶やかでした。
「なにやってるの、こんなところで」と彼女は言いました。
「そちらこそ」
「あたしはちょっと。からだ火照ってきちゃって」
「私も、似たようなものです」
「お酒も飲んでないのに?」
「暖気にあてられたのかもしれませんね」
私の隣に並んで、彼女はふと微笑みます。解放感や高揚感からか、いつもよりたわんだ笑顔でした。
「もう今年も終わりだね」
「そうですね。早いもので」
「そういえば、いくつになったんだった?」
「私は今年で十七に」
「あら、もうそんなに。じゃあ来夏なんだ」
セイラムは古い日を懐かしむような口ぶりで言いました。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:56:10.38 ID:TXxgAIfuO
「――誓願。するの?」
「はい。もちろん」
「そっか」
問いに返す言葉には、ためらいのかけらもなく。
清貧・貞淑・従順の誓いを正式に立てる日。私の立場から、括弧書きの見習いが取れる日は、もうそう遠くはありませんでした。
私はもう十年近く、この教会と共に在ります。思い返せば長い道のりだったような、あっという間だったような。
その日を境に、はたして何かが変わるのでしょうか。
訊ねてみると、セイラムは曖昧に笑いました。
「ま、それはともかく」
彼女は手のグラスをひと息に干します。眼差しに、ふと哀愁めいた何かがよぎった気がしました。
「一緒に守っていこうね。この居場所を」
私は、はい、とこたえました。
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:56:58.70 ID:TXxgAIfuO
少しだけ――本当に、少しだけ。このとき、違和を感じたように思います。
セイラムの態度に、その口ぶりに。それらは、彼女の本質との整合性にわずかばかりの不和を下ろしました。
しかし、ごくかすかな違和感は、時間と共に埋もれていくものです。手に刺さった、尖った微細な木片さえ、日ごと存在を忘れていくのとちょうど同じように。
小さな小さな棘。普段は気づかぬうち、自然に抜け落ちてしまっているような。けれど、深く深くに潜り込んだ夾雑物は、いつしか化膿し、消えない痛みを残すこともあるのです。
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:57:24.19 ID:TXxgAIfuO
年は暮れるや明け、「行く」「逃げる」「去る」と言い表される年初の三ヶ月は慌ただしくも過ぎ去りました。
変わらないと思っていました。些細なことは日々変わりゆけども、大いなる根幹は小揺るぎもしないと。
そんな甘やかな希望に充たされた私の考えは、表出した違和の痛みによって一変してしまいました。
春先、まだ桜の咲く少し前のことです。
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/14(土) 17:58:23.45 ID:TXxgAIfuO
###
私がそれを知ったのは、ほんの偶然でした。
午前の日曜礼拝を終えたのち、私は神父様を探していました。午後の礼拝に私が出席する必要があるかどうかを訊ねるためです。
聖堂内には姿が見えず、教会二階にある神父様の私室の扉を叩いても返事はなく、外庭を見下ろしても白い祭服は立っていません。
ふたたび一階に降りて、何とはなしに、裏口の方へ足を寄せました。
すると声が耳に届きます。セイラムの、珍しくも沈んだような声色でした。
「……参りましたね」
「……参ったな」続いて、神父様の低い声が聞こえました。
目的のひとは見つかった。
と、そこまではよかったのですが、その彼と、彼女の雰囲気は控えめに言ってもよろしくありませんでした。すぐに出て行くことはできず、意図の外側で私は息を潜めていました。
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