伊藤誠『キラキラパティスリー……潜伏させていただきます』

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/08(日) 21:49:11.67 ID:oK2+7dbc0
敵組織内部、キラキラルを奪う者たちの巣窟。


エリシオ「トランスガン?」
エリシオは、銀色のデスクにある青いクリアータイプの水鉄砲を見ながら、上司のノワールに言う。
ノワール「ああ、ぱっと見はカモフラージュのため水鉄砲に似せてあるが、これを使えば、お前は男子中学生か高校生の姿になれるはずだ。これを利用して、プリキュアたちのいる中学か高校にスパイとして潜伏してほしい」
エリシオ「……別にそんなことをしなくても。私は空っぽの道化師。正面からぶつかりつつ、精神的な揺さぶりをかけるような戦法が得意だし、好きなのですが」
ノワール「これは上司命令だぞ。それに、キラキラル集めはプリキュアのせいでうまくいっていない。スパイとして潜伏しつつ、奴らのいるキラパティスリーもよく観察し、奴らの弱点を探ってほしいのだ」
エリシオ「……そうですか……」
傍らにいるグレイブとビブリーはやや不満げ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1531054151
2 :a :2018/07/08(日) 22:09:02.33 ID:oK2+7dbc0
グレイブ「なんで俺にやらせてくれねえ」
ビブリー「そうよ、なんで根暗なエリシオにやらせるのかしら」
ノワール「グレイブ、お前は荒っぽいし、ビブリー、お前はわがままだろう。ここは口調も丁寧で慎重なエリシオこそがスパイにふさわしいのだ」
エリシオ「評価してくれるのはありがたいのですが、私が普通の人間になったら、ろくなことが起こらない気が……。
まあ、やってみましょう」
エリシオは青いトランスガンを取り、銃口を上に挙げて構える。
3 :a :2018/07/08(日) 22:10:03.98 ID:oK2+7dbc0
エリシオ「……引き金を引けば変身できるのでしょうが、掛け声……入れたほうがいいですかね」
ビブリー「仮面ライダーじゃないんだから」
グレイブ「適当に決めろ」
エリシオ「わかりました…….
私たちは、特殊なエネルギーを奪う存在だから……
『盗宝(とうほう)!!』」
思い付きで変身時の掛け声を決め、エリシオはトランスガンの黄色い引き金を引いた。
上を向いた銃口から黒い霧が出てきて、エリシオの白い長髪と長身痩躯の体を包み込み、彼の姿を分からなくしていく。
4 :a :2018/07/08(日) 22:11:20.67 ID:oK2+7dbc0
ビブリー「しかしねえ。エリシオは男子高校生の姿に化けられるという話だけど、どんな姿になるの?」
ノワール「深層心理に隠された姿に変身が可能だ。おそらく、男子の学生に変身できるのは確実だろう」
グレイブ「大丈夫かねえ」
黒い霧の中心から、バチバチと青白い光が出たかと思うと、急に黒い霧がはじけ飛び、中の人間の姿が現れた。
それは、エリシオの姿ではなかった。
中肉中背で、黒いスーツ、赤いネクタイをしている。黒い短髪に一本アホ毛を垂らした、彫りの深い顔つきの高校生っぽい少年になっていた。
エリシオ「……?」
エリシオは近くの鏡を見てみる。自分の姿がいつもとは全く違っていた。
5 :a :2018/07/08(日) 22:12:18.82 ID:oK2+7dbc0
エリシオ「え!? え!? これ、俺!?」
ビブリーは、ん? となった。エリシオの一人称は『私』で、『俺』ではないはずだ。グレイブは気づいてないようだが。
ノワール「どうやら成功したようだな。その姿だと中学生より高校生のほうが似つかわしいだろう。とりあえず、転入届を偽装するから、いちご野高校に行ってくれ。名前はそんまんまだとまずかろう。どうする?」
エリシオ「それは……」
唐突で思いつかなかったが、とりあえず即断即決で決めた。

エリシオ「『伊藤誠(いとうまこと)』というのはどうだろう、あ、いや、どうでしょう?」

ノワール「悪くはないな。この名前で行こう」
6 :a :2018/07/08(日) 22:13:06.26 ID:oK2+7dbc0
ビブリー「ん? エリシオ、あんた一瞬ため口になってなかった? いつも敬語なのに」
グレイブ「ビブリー、お前鋭いなあ」
エリシオ「とりあえず、この姿で潜伏してみます」
ノワール「期待しているぞ、エリシオ。いや、伊藤誠。
あ、言い忘れたが、もう一度トランスガンの引き金を引けば元の姿に戻れる。それと、この姿の時はモンスターを召喚できるカード以外、超常的な力はオミットされてているから気を付けてくれ」
エリシオ「分かりました」
7 :a :2018/07/08(日) 22:13:58.72 ID:oK2+7dbc0
その翌日、『伊藤誠』という偽名と姿で、エリシオはいちご野高校の教卓のそばに立つことになった。
緑色の黒板に白いチョークで『伊藤誠』と名前を書き、机に座っている高校生たちと向き合う。腰までかかる白い長髪ではなく、黒い短髪といういで立ちなので、生徒たちの顔が髪に邪魔されず見えやすい。
黒いスーツ姿はドレスコードに外れるということで、いちご野高校の男子生徒と同じ、ベージュのブレザーとグレーのスラックス、青いネクタイという姿になっていた。
皆噂話をしつつ、高校生の姿に変装したエリシオの顔を見ている。
先生「じゃ、自己紹介をお願いします」
誠(エリシオ)「はい。はじめまして。俺……いや、僕の名前は伊藤誠です」
はきはきと発表する彼を見て、ほうと皆々注目。
8 :a :2018/07/08(日) 22:14:39.69 ID:oK2+7dbc0
琴爪ゆかり「へえ……なかなか顔もいいし、面白そうな子じゃない……」
剣城あきら「確かに、顔は結構きれいだけど……何か腹に一物ありそうな気がするなあ……」
プリキュアであるゆかりとあきらがぼそぼそと会話をする。ゆかりは猫らしい気まぐれさか楽しんでいるようだが、あきらは犬らしく従順でまじめだ。
誠(エリシオ)「僕の趣味はゲームと音楽鑑賞で、特技は七宝焼きとシルバーアクセをつくることです。不束者ですが、よろしくお願いします」
エリシオは人間界のTPOについてはよく知らないが、一種の勘で趣味と特技を思いつき、はきはきした声で答えていく。
9 :a :2018/07/08(日) 22:15:16.34 ID:oK2+7dbc0
深々と頭を下げて顔を上げると、ゆかりの腰までかかる紫の髪と、あきらの男と思しき赤い短い髪が見えた。
2人をさりげなく、誠(エリシオ)は凝視する。
(いたな、プリキュア……この姿で行くと、また感慨深いけれど……)
10 :a :2018/07/08(日) 22:16:27.30 ID:oK2+7dbc0
『伊藤誠』としていちご野高校に潜伏し、平時の琴爪ゆかり(キュアマカロン)と剣城あきら(キュアショコラ)に接近することになったらエリシオ。
学生服姿の2人を見た時、妙に新鮮味を感じた。
誠(エリシオ)(キュアマカロン……なんか、いつもより色っぽく感じますね……)
人間の姿に化けたからなのか、それともプリキュアのあまり見ない姿を感じたからなのか、誠(エリシオ)は妙な感慨を覚えた。
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