恋と宇宙と運送業

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102 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/05(木) 13:51:14.89 ID:ruD4CfR8O
巫女「…今日は誘って下さってありがとうございました」

巫女「私、地球(むこう)ではあんな感じですから」

巫女「みんな怖がって話し掛けてくれないんです」

同僚「確かに歌ってる時の巫女ちゃんはオーラがヤバいwww」

同僚「そういやふっつーに誘っちまったけど…」

同僚「彼氏に怒られたりしねぇのか?」

巫女「いないですよそんなの」フフッ

同僚「あーやっぱ宗教的な理由で?」

巫女「"母なる太陽"では交際も結婚も自由ですよ」

巫女「単に私がモテないだけです…」

同僚「やべww地雷踏んだかwww」

巫女「…。」フルフル

巫女「だから余計に嬉しかったんです」

巫女「私の事、普通の女の子として見てくれたのが」

同僚「だって普通の可愛い女の子じゃんかwww」

巫女「か、可愛いだなんてそんな」

103 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/05(木) 13:51:58.84 ID:ruD4CfR8O
少女「なるほどなー!寄付かぁ」

男性客「多額の寄付をするのが金持ちのステータスみたいな所があるからな」グビ

マスター「噂話ですので、詳しい事は分かりませんが」キュッキュ

少女「うぅん!参考になったわ!」

少女「おっちゃんもマスターさんもありがとぉな♪火星(こっち)の人はみんな優しいわぁ」ニコッ

男性客「…。」

104 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/05(木) 13:52:33.38 ID:ruD4CfR8O
<ありがとうございましたー

<カランカランッ


少女「あんまり進展はなかったけど…」

少女「少なくとも火星から地球へお金の流れがあるって事は分かったわ」

テクテク

少女「ん?カウンターに座っとぉの同僚ちゃんやん!」ノゾキ

少女「しかも良く見たら女の子連れやんか!」

少女「同僚ちゃんも隅に置けへんなぁ」ニシシ

少女「邪魔したアカンな!今度会ぅた時じーっくり聞かせてもらお♪」

テクテク

105 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/05(木) 13:53:00.27 ID:ruD4CfR8O
巫女「あら?外を歩いていったのは朝の…」チラッ

同僚「んーどしたwww?」

106 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/05(木) 13:53:51.47 ID:ruD4CfR8O
-ネオロンドン郊外 先輩の家-



<乾杯! カチンッ

先輩「何だか久しぶりだな、こうして同じテーブルを囲むのも」グビ

女「そうね、ラボでの仕事はどう?」

先輩「どうにかこなしてるさ」

先輩「ただ、いつも隣にいた君がいないってのは寂しいもんだ」

女「距離がある分、いつまでも新鮮味があっていいのかも知れないわよ?」

先輩「物は言い様だな」クスッ

107 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/05(木) 13:54:30.64 ID:ruD4CfR8O
カチャ… モグモグ

先輩「今日、同僚の奴が来てな」

先輩「地球からのお客さんを連れてたよ」

女「あら、同僚くんもなのね」

女「男くんは地球から来た女の子とコンビを組んでるらしいわ」

先輩「そうか、あいつがコンビをな」

女「…もう3年も経つのね」

先輩「男の奴、一人で背負い込み過ぎなんだよ」

先輩「俺にはあいつを責める気持ちなんて、これっぽっちもないってのに」

女「そういう子なのよ、男くんは」

女「彼女…少女ちゃんに対して思う所はあるけれど」

女「男くんにとってはいい機会なのかも知れないわ」


108 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/05(木) 13:55:20.45 ID:ruD4CfR8O
先輩「思う所?」

女「…"紅き月"」

先輩「…イタリア南部で幅を利かせてるマフィアか、まさかそんなのと関わりが?」

女「今の所なんとも」フルフル

女「ただ、資産家だった彼女のご両親が何らかの理由で姿を消したものだから」

女「少女ちゃんは行方を探しているらしいわ」

先輩「ふむ…金の絡んだ諍いとなると、そいつらの関与も有り得るな」

先輩「危ない事に巻き込まれなきゃいいが」

女「…男くんが言っていたのだけれど」

先輩「?」

女「少女ちゃんの雰囲気…どこか似ているらしいわ」

先輩「…。」グビ

109 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/05(木) 13:56:50.88 ID:ruD4CfR8O
-深夜 男の家-


男「…ん、あいつまた出掛けたのか」フワァ

男「聞き込みだなんて言っても、ネオロンドンで地球(むこう)の事がどれだけ分かるのやら」

ムクッ

男「なんだか目が覚めちゃったな」

男「ココアでも淹れるか」コポポ

男「」ズズッ

男「…ふぅ」

カチャ キィィ…

男「窓を開けると夜風が気持ちいいな」

男「何だか勢いに流されてしまっているけど…」

男「少女の事、何となく放っとけないんだよなぁ」

スッ

写真「」

男「…。」

男「少女がこれからやろうとしてる事を考えると」

男「どうしたって地球へ行かなきゃならないよな」

男「SSS…宇宙の歌声」

男「…助手、お前にも聴こえたのか?」

男「俺にまた鳴らせって言うのか?」

写真「」

110 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/05(木) 13:58:46.45 ID:ruD4CfR8O
短いですが本日ここまでとします
気付いてくれた方がいたので前作貼っておきます
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1524705171/
ストーリーに繋がりはないので前作未読でも大丈夫です
それではありがとうございました
111 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:16:00.76 ID:923IrNgqO
-深夜 ネオロンドン酒場街-


テクテク

同僚「どうしてこうなったwww」

巫女「はにゃぁぁ飲み過ぎまひたぁぁww」グデングデン

同僚「背負って歩くのも一苦労だwww」

巫女「あー!それって私が太ってるって意味ですかぁぁ!??」

同僚「普段使わない筋肉を使うからだよwwwしかし…」

ポヨ-ン

同僚「背中に伝わるこの感触…悪くないw悪くないぞwww」

巫女「まぁ減るもんじゃないれすし、構わんですよww」クスクス

同僚「そう開き直られると却って冷静になるwww不思議www」

112 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:16:42.26 ID:923IrNgqO
同僚「…そういえばよ」

巫女「?」

同僚「巫女ちゃんの所属してる団体…"母なる太陽"だったか」

同僚「一体どういう集まりなんだ?」

巫女「…バーでする話じゃないですもんね」フゥ

巫女「"母なる太陽"は、太陽を信仰の対象とする宗教団体です」

巫女「太陽を崇拝し、祈りを捧げる事で豊かな陽の光を取り戻そうというのが基本的な理念です」

同僚「太陽崇拝?なんだか古代宗教にありそうだな」

巫女「原点回帰と言えるかも知れませんね」

巫女「ただ古代エジプトに見られるような多神教のスタイルとは違い、太陽を唯一神としていますが」

同僚「それで"No one can steal the sun"か…」

巫女「減少を続ける日照時間と、それに対する渇望」

巫女「旧来の宗教に対する諦念などが重なって、今急速に信者の数が増えているんです」

同僚「なるほどな」

113 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:17:37.19 ID:923IrNgqO
巫女「まぁ地球(むこう)ではあんな感じで活動してますけど…」

巫女「私自身は誰かに信仰を強制するつもりはありませんので安心して下さい」

同僚「そりゃどうもwww俺あんまよく分かんないからよwww」

同僚「太陽崇拝か…男が聞いたら何て言うかな」ボソッ

巫女「へ?なんか言いまひたかぁ??」

同僚「巫女ちゃんオンとオフの差が凄いwww」

巫女「同僚しゃん、いい匂いしますねぇ」クンクン

同僚「おい首筋はやめろwwwくすぐったいwww」

114 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:18:31.53 ID:923IrNgqO
-朝 男の部屋-


チュンチュン…

男「…ん」パチ

少女「」zzz

男「いつの間に帰って来てたのか」

男「おい起きろ、朝だぞ」ユサユサ

少女「んん…あと5分…」

男「そう言っていつも起きないだろ、ほらサクッと起きろ」バサァッ

少女「んぁ…」シタギ-

男「っ!す、すまん!!」

少女「ほぇ…男ちゃんおはよーさん」

少女「ん…?なんや朝から欲しがりさんやなぁ♪」ニヤニヤ

男「見てない!見てないぞ!」

少女「別にえぇのに、減るもんちゃうし」

男「そういう問題じゃないだろ!ほら着替えて支度しろ!」

115 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:19:27.68 ID:923IrNgqO
少女「いただきまーす!」

男「簡単なものですまんな」

少女「エッグベネディクトをささっと作る男の人ってそうおらんと思うで」モグモグ

少女「ほんで今日の仕事はなんやったっけ?」

男「今日は艇の定期メンテナンスの日なんだ」

少女「そうなんや!物流協会にそんな施設もあるん?」

男「いや、ヘラスの港の手前にある国連軍の基地でやってもらうんだよ」

116 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:20:54.41 ID:923IrNgqO
-同刻 ヒースロー宇宙空港-



ワイワイ ガヤガヤ…

巫女「見送りまで来て頂いてありがとうございます」

同僚「いいって事よwwwそれより酒は残ってねぇかwww?」ニヤニヤ

巫女「だ、大丈夫です!」

同僚妹「ご一緒出来ませんでしたが、火星の現状はご理解頂けまして?」

巫女「はい!やっぱり百聞は一見に如かずって事ですねー」

同僚「そりゃ良かったよwww」

同僚「まぁせっかくこうして仲良くなれたんだ、また会えたらいいな!」

巫女「あ、あの同僚さん…これ」スッ

同僚妹「!」ピコ-ン

同僚「?」

同僚妹「そいっ」ドンッ

同僚「おおっとwww」ヨロケ

同僚妹「レディに恥をかかせるおつもりですか?さっさと受け取って下さいまし」ヒソヒソ

巫女「わ、私の連絡先です」

巫女「良かったらその…あの…」モジモジ

同僚「あぁ!また酒でも付き合ってくれや」ニカッ

巫女「は、はいです!」パァァ

同僚「あんまりとっ散らからない程度になwww」ケラケラ

巫女「うぅ…気をつけます」

同僚「必ず連絡するよ!また会おうぜ!」

117 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:22:20.98 ID:923IrNgqO
-17年前 地球-

-ブリュッセル郊外 太陽孤児院-


ワイワイ キャッキャ…

幼児A「ー♪」フンフン

幼児B「お歌上手だねー」トコトコ

幼児A「へへー!せやろー」

幼児B「あなたはどこから来たの?」

幼児A「んーわからへん」フルフル

幼児A「けどな、あたらしいおうちがきまってん!」

幼児B「良かったじゃない!おめでとう!」

幼児A「おねーさんは?」

幼児B「わたしはまだ」フルフル

幼児B「もしかしたらこのまま教団に引き取られるかもって」

幼児A「きょーだん?」

幼児B「でもそれもいいかなって。ここの人はみんな優しいし」

幼児A「そしたらウチがおっきくなったら、おねーさんのことむかえにきたるわ!」

幼児B「ほ、ホントに?」

幼児A「うん!やくそくや!」ユビキリ

幼児B「ふふっ。うん、約束ね!」ゲンマン

118 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:23:26.72 ID:923IrNgqO
-火星 アルギュレ盆地-

-国連軍火星基地-


テクテク

少女「うわー!ひろー!!」キョロキョロ

男「火星での軍備がここに集約されてるんだ」

少女「ってか、軍の人が物流協会の艇をメンテナンスしてくれるん?」

男「物流協会自体が国連軍主導の下に組織された機関だからな」

少女「そうなんやー」

少女「あ、じゃあもしかして有事の時は駆り出されたりもするん??」

男「名目上はな」

男「今まで一度もないけど」

少女「そっか…良かった」

119 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:24:05.31 ID:923IrNgqO
ピンポ-ン

<物流協会所属の運搬艇 R-3104

<メンテナンスが終了しましたので、乗組員は整備ドックへ来て下さい


男「お、終わったみたいだな」

少女「迎えに行こか!」

120 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:25:02.01 ID:923IrNgqO
-国連軍火星基地 整備ドック-



男「お世話になります、R-3104の乗組員です」

少女「こんちわー!」

整備士「おぉ来たか、バッチリ診ておいたぞ」

男「ありがとうございます」

整備士「と言っても消耗品の交換位で、特に修理が必要な箇所は無かったが」

整備士「大事に乗ってるんだな!」ニカッ

男「一張羅ですからね」ハハ

整備士「SSSの方も診ておいた、こっちもシステム自体は問題ないぞ」

整備士「ただドライバがインストールされてないみたいだが、いいのか?」

男「あぁ…それはいいんです」

男「ドライバ自体は持ってるんで」

整備士「そうかい…まぁ俺は俺の仕事をするだけだが」

整備士「宇宙を飛ぶのなら、備えは常にしておいた方がいいぞ?」

整備士「何が起こるか分からんからな」

男「…はい」

少女「…。」

121 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:26:15.61 ID:923IrNgqO
-火星上空 男の艇-


ヒュゥゥン…

少女「メンテナンス完了で絶好調やんな!」

男「あぁ、こいつが不調じゃ仕事にならないからな」

少女「ってか、さっき話してたけど…」

少女「SSS搭載してるんやんけ!」ビシッ

男「ははっ説明が足りなかったな」

男「システム自体は搭載されてるんだけど、起動に必要なドライバを外してあるって事さ」

少女「そうなんや、じゃあどっちみち使われへんって事なんやな」

男「…すまないな」

少女「何で謝るん?気にしやんでえぇて」

少女「それより明日の仕事はなんやろなー?」

男「あぁ、それなら無線で確認するか」

少女「えぇやんこのまま飛んでこ?メンテナンス後の慣らしついでにお散歩や♪」

男「ふふっそれもいいな」

少女「ほなれっつごー!」


バヒュゥゥン…!


少女「…。」

122 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:28:54.92 ID:923IrNgqO
-物流協会倉庫 事務所-



男「調査任務ですか?」

配車係「はい、国連軍からの依頼で」

少女「フラグの回収早過ぎやろ…」

配車係「ただ戦闘や後方支援などではなく、純粋な調査任務ですのでご安心を」

少女「それは一安心やな」ホッ

男「それで、何を調査するんですか?」

配車係「星図を見ながら説明しましょう」バサッ

配車係「中心が太陽、その周囲を囲む楕円が火星の公転軌道です」

少女「ふむふむ」

配車係「現在の火星の位置はこの辺り」トントン

少女「ちょうど楕円の一番潰れとぉ辺りやんな」

配車係「まぁ誇張して書かれているので、実際にはほぼ真円に近い軌道なんですけどね」

男「…。」

配車係「今回はこの辺りの公転軌道上に存在する、未確認の浮遊物を調査してもらいます」

少女「公転軌道上って事は、火星の重力圏内なん?」

配車係「そうとも限りませんが、多少の距離ならSSS無しでも問題ありませんので」

男「…。」

配車係「…男さん、仰りたい事は分かります」

配車係「ただ僕は敢えて男さんにお願いしてるんです」

配車係「意図は分かってもらえますね?」

男「…分かりました」

少女「…。」


123 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:29:49.57 ID:923IrNgqO
-夕刻 男の家-


少女「今日はウチの当番やな、パスタでえぇ?」ゴソゴソ

男「あぁ、頼むよ」

少女「あった、ディ・チェコとは男ちゃん分かってるなぁ♪」ウンウン

少女「そしたらクリームソースにしよか」

少女「極東の国ではナポリタンとかいうレシピがあるみたいやけど…」

少女「ケチャップで炒めるなんて邪道もえぇとこや!ナポリにそんな料理ないわ!」フンス

グツグツ…ジュワァァ


124 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:31:29.16 ID:923IrNgqO
少女「おまちどーさん!」コトッ

男「ありがと、鮭のクリームソースか」

少女「ほうれん草もたっぷりやで!ほな…」


<いただきまーす


男「…。」モグモグ

少女「ありゃ、口に合わんかった?」

男「あ、いやそんな事ないぞ!ブラックペッパーがいい塩梅だ」

少女「…明日のお仕事?」

男「…。」

少女「…。」チラッ

写真「」

男「…話すか」フゥ

少女「…。」

男「…俺もかつてコンビを組んでたんだ」

男「そいつは幼馴染で、お世話になってる先輩の妹で…」

男「その頃は俺の艇でもSSSを起動してて」

男「地球へも時々行ってたんだ」

少女「…。」コクッ

125 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:32:34.55 ID:923IrNgqO
-4年前 物流協会倉庫 事務所-



配車係「今日から一緒に勤務してもらう助手さんです」

助手「よろしくお願いしまーす!」

男「あぁ、よろしくな」

同僚「よろしくちゃーんwww」

同僚妹「よろしくお願いしますわ」

先輩「…お前ら騙されるなよ」クックック

先輩「今はしおらしくしてるが、家じゃとんだじゃじゃ馬なんだぜ」ワハハ

助手「お兄ちゃん一言多い!」バシッ

先輩「いてて…ほらな」

配車係「ちょうど男さんのパートナーを探していた所でしたので」

配車係「二人に組んでもらうという事でよろしいですか?お兄さん」

先輩「仕事に関する事なんだ、お前さんの決定を尊重するさ」

配車係「男さんもよろしいですか?」

男「もちろん!」

126 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:33:06.75 ID:923IrNgqO
-火星上空 男の艇-


ヒュゥゥン…

男「昔から知ってるから、改まってとなると照れ臭いけど…」

男「よろしくな!助手!」

助手「うん!よろしくね、男っち♪」

127 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:33:54.24 ID:923IrNgqO
助手「これが噂のSSSかぁ」ノゾキ

男「人類の宇宙開拓における要だな」

助手「これを使うとどの位のスピードが出るの?」

男「驚くなかれ、光速の1.5%だ!」ババ-ン

助手「1.5%って聞くとそうでもないような気がするけど…」

男「時速にすると1620万kmだな」

助手「せ、せんろっぴゃ…まん?」ポカ-ン

助手「スケールが大き過ぎてよく分かんないね」

男 「確かにな」

128 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:34:50.06 ID:923IrNgqO
男「ウォッカトニックで」

助手「シャンディガフで!」


<乾杯! カチンッ


男「どうだった?初めての地球は」グビ

助手「いやー噂通りの曇天だったねぇ」ゴクゴク

助手「でもあそこが私達人類の故郷なんだと思うと感慨深いよね」

男「そうだな」

助手「あ!でもアレ気になったなー」

男「?」

助手「アメリカ英語っていうの?can’tをキャントって発音するの」

男「すげー分かるよそれ、英国流はカントだからな」

助手「すっごいモヤモヤしたなー」

男「English なんだから英国流に揃えるべきだよな」ウンウン


129 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:36:01.07 ID:923IrNgqO
助手「ねー見て!昔の写真持ってきたよ!」ババ-ン

同僚「おー男ちっちぇーなwww」

同僚妹「助手さんは相変わらず美少女ですわね」

男「なんだか恥ずかしいな」

先輩「おーまた懐かしいモンを」

助手「お兄ちゃん今とおんなじ仏頂面だねー!」プ-クスクス

同僚「ホントだこりゃ酷いwww」ケラケラ

先輩「む、そんな事ないだろ」

ガチャ

女「みんなで楽しそうに何見てるの?」

同僚妹「あら女さん、ご機嫌よう」

男「あれ、今日は地上(した)なのか?」

女「先輩くんにお弁当を届けに来たの」ヒョイ

先輩「いつも悪いな」

女「いいのよ」

同僚「こっちも相変わらず仲良いなwww」

助手「早く結婚しちゃいなよー」ウリウリ

男「ふふっ」

130 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:36:49.84 ID:923IrNgqO
同僚妹「写真と言えば、私最近カメラを新調したんですの」ジャ-ン

男「こりゃまた本格的な」

同僚「せっかくだからみんなで撮ろうぜww助手ちゃんの宇宙デビューを記念してwww」

配車係「私が撮りましょう、はい皆さん集まって下さい」

先輩「おし、男と助手は真ん中な」グイグイ

同僚妹「ほら女さん、旦那様ともっとくっついて下さいまし」グイグイ

男「みんな強引だなー」

女「ホントにね」

同僚「隣が俺でわりぃなwww」

同僚妹「なーに言ってるんですの」

助手「男っち!もっと近くに!」グイッ

男「おわっ」ヨロケ

配車係「それじゃ撮りますよー、はいチーズ!」

カシャッ

131 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:37:29.53 ID:923IrNgqO
-3年前 物流協会倉庫 事務所-



助手「男っち!この星図どうやって見るの?」

男「あぁこれはな…」



配車係「いいコンビですね、あの二人」

先輩「もともとガキの頃からの幼馴染だからな、息はピッタリだ」

配車係「近々、また国連軍から調査航行の依頼が来てるんですが…」

先輩「あの二人なら大丈夫だろう」

配車係「火星の公転軌道からは外れますが、まぁSSSもありますしね」

132 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:38:33.89 ID:923IrNgqO
-数日後 先輩と助手の家-


先輩「そうか…分かった、助手には伝えとく」

先輩「あぁ、それじゃあな」ガチャ

助手「お兄ちゃんおはよー」トコトコ

助手「電話?どしたの?」

先輩「起きたか、男が風邪でダウンしたらしい」

助手「マジで!?」

先輩「それで急遽なんだが、例の調査航行…」

先輩「お前の単独航行(ソロ)で行って欲しいそうだ」

助手「ホントに急だね…大丈夫かなぁ」

先輩「目標地点まではコンピュータがナビゲートしてくれる」

先輩「いざとなったらSSSもあるから、すぐに火星まで戻ってくればいいさ」

助手「そっちじゃなくて!」

先輩「ん?あぁ男の方か」

助手「出勤する前にちょっと様子見てくるね!」

ガチャ バタンッ

先輩「おいおい!…行っちまった」


133 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:39:42.44 ID:923IrNgqO
-男の家-


ガチャ

助手「男っち!大丈夫!?」

男「ごほっ…ノック位しろよな」ヨロヨロ

助手「隣に住んでるとこういう時に助かるね…熱は?」ピトッ

助手「あー結構熱いねぇ」

男「すまない…こんな時に」ゴホゴホ

助手「そうやってすぐ自分を責めるんだから!」

助手「キミの悪い癖だよ?人間なんだから体調崩す事位あるって!」

男「調査航行、ソロで行くのか?」

助手「図らずもソロデビューを迎えちゃったわけだね…うん、行ってくるよ」

男「気をつけてくれ…公転軌道の外は危険も多い」

助手「大丈夫だよ!危ないと思ったらSSSですぐ戻って来るから」

助手「それより男っちはしっかり休んでね?ちゃんと寝てなきゃダメだよ?」

男「なんだか女みたいだな」

助手「女さん…いつかお義姉さんって呼ぶ日が来るんだよね」

助手「上手く呼べるかなぁ」

男「どうだろな」

助手「じゃあそろそろ行くね!風邪治ったらソロデビューのお祝い、頼むよ?」ニコッ

男「あぁ、気をつけてな」

134 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:43:35.51 ID:923IrNgqO
-現在 男の家-



男「それが、生きてるあいつを見た最後だ」

少女「…。」

男「助手の乗った艇は、原因不明のトラブルによって航行不能となった」

男「後日、国連軍によって船体と助手の遺体が回収されたが」

男 「トラブルの直前にSSSの振動が異常値を示していた事以外…」

男「結局、何一つ分からなかった」

少女「そんな…」

男「人類の宇宙開拓における要であるSSS…」

男「だがそれを持ってしても、あいつ一人の命すら救えなかったんだよ」


135 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:44:24.93 ID:923IrNgqO
-深夜-


男「」zzz

ゴロンッ

少女「…ヤキモチなんて焼いとぉ場合やなかったな」ハァ

少女「でもな?男ちゃん」

少女「ウチはSSSのお陰で男ちゃんと出会えたんや」

少女「それは忘れんとって欲しいな…」

136 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 09:44:51.17 ID:923IrNgqO
-深夜-


男「」zzz

ゴロンッ

少女「…ヤキモチなんて焼いとぉ場合やなかったな」ハァ

少女「でもな?男ちゃん」

少女「ウチはSSSのお陰で男ちゃんと出会えたんや」

少女「それは忘れんとって欲しいな…」

137 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:08:28.76 ID:923IrNgqO
-同刻 -


[BAR REQUIEM]


カランッ…


同僚「アードベッグをソーダ割でww」

同僚妹「シャーリーテンプルをお願いしますわ」


<乾杯!カチンッ


同僚妹「珍しいですわね、兄様が誘って下さるなんて」ゴク

同僚「だって酒飲まないじゃないのアンタww」グビ

同僚妹「まぁそうですけれど…何かあったんですの?」

同僚「…ちょっと気になるんだ、前にお前が言ってた事」

同僚妹「私がですか?」

同僚「男の奴、明日は調査航行らしくてな」

同僚妹「調査航行…ですか」

同僚「今回は火星の公転軌道上だからそれ程危険はないって話なんだが」

同僚妹「…SSS」

同僚「あいつ、助手ちゃんの事は自分のせいだと未だに思ってやがるんだ」

同僚妹「男さんの性格を考えると頷けますわね」

138 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:09:14.07 ID:923IrNgqO
同僚「だが、今回は少女ちゃんも一緒だ」

同僚「これは極論だがな、自分の決めた生き方で自分が命を落とすのは勝手だ」

同僚「けど、他人を巻き込むのは違う」

同僚妹「…SSSのドライバは助手さんの形見でもあります」

同僚妹「彼の性格を考えると、恐らく今も肌身離さずお持ちになっているかと」

同僚「あとはあいつの気持ち次第か」

同僚妹「必要に迫られればお使いになると思いますわよ?艇のメンテナンスもなさっている筈ですから」

同僚「俺…考え過ぎかな?」

同僚妹「兄様のそういう所、嫌いではありませんわ」フフッ

同僚「やだもう照れちゃうww」

同僚妹「またすぐ茶化すんですから」ハァ

同僚「シリアスなの苦手なんだってばwww」

139 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:10:25.40 ID:923IrNgqO
-翌日 火星上空 男の艇-


ヒュゥゥン…

少女「調査対象んトコまでどん位かかるんかなぁ?」

男「火星の重力圏から少し離れた所だけど、俺の艇でも6時間ちょっとってとこだろうな」

少女「そっか、ってか国連軍も自分とこで行ったらえぇのに」

男「言えてるな。きっと他の任務で艇が出払ってるんだろう」

少女「なるほどなー」

少女「…。」

少女「(…昨夜の話聞いてから、なんやモヤモヤする)」

少女「(でも助手さんにヤキモチ妬いとぉわけじゃなくて)」

少女「(むしろ男ちゃんに…?)」

少女「だぁー分からへん!!」ジタバタ

男「っ!?急にどうした??」ビクッ

少女「あ、ゴメンなんでもないねん」

男「ビックリさせないでくれよ…」フゥ


140 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:11:24.56 ID:923IrNgqO
-宇宙空間-

ヒュゥゥン…

男「火星の大気圏を抜けたぞ」

少女「すご…見渡す限り星の海やん」

男「ここから先はステーションへ行く時みたいに誘導電波は使えないから、レーダーで調査対象を捕捉するぞ」

少女「これやんな?」ポチッ

[索敵レーダー起動…攻撃対象ヲ捕捉]ピコッ

少女「…なーんや物騒な事言っとぉで?」

男「元々が国連軍のお下がりだからな、文言の設定が軍仕様になってるだけさ」

男「攻撃しようにも武器なんか積んでないから安心していいぞ」

少女「なんや脅かさんとってーな!」

少女「しかしこの眺め…まさに天の光は全て星って感じやなー」

男「何となく縁起悪いからやめなさい」

141 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:12:37.99 ID:923IrNgqO
-宇宙空間 謎の浮遊物近く-


ヒュゥゥン…

[攻撃対象ニ接近]ピピ-ッ

男「お、アレか」

少女「なんやあれ…機械の残骸?」

男「スペースデブリって奴だな…っと」ポチッ

ウィィ…カシャッ

少女「誰がデブやねん」

男「デブじゃなくてデブリだよ」

男「宇宙に漂う無意味な人工物…つまりゴミだ」カキカキ

少女「ゴミぃ!?」

男「多くはロケットを飛ばす時に途中で切り離されるパーツとか」

男「あとは活動を終えたり、故障して動かなくなった人工衛星とか」

男「そういったゴミが回収されずに漂ってるんだよ」

少女「なんや…エイリアンでも攻めて来たんかと思ったわ」

男「ははっそれは恐ろしいな」

男「こいつはかなり古そうだ…恐らく宇宙開拓黎明期の物だろう」

少女「これはこのまま放っとくん?」

男「俺達の艇はただの運搬艇だからな、今日の調査報告を出しておけば」ペラッ

男「後日、国連軍が回収してくれる筈さ」

少女「(あ、今"俺達の艇"って…)」

少女「…。」ニヘラ

男「?」

142 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:19:10.80 ID:923IrNgqO
少女「意外とあっけなく終わったなぁ」

男「まぁこんなモンだろう」

チカッ チカッ

少女「ん?なんや光っとぉ」チラッ

ピピ-ッ ピピ-ッ

[警告 周辺ノ重力値二異常アリ]

男「何だと!?」

少女「な、何が起こってるん!?」アワアワ

ギシッ ミシミシッ…!

少女「なんやなんや!艇が軋んどぉ!?」

男「何だってんだ…!?」

143 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:19:57.04 ID:923IrNgqO
-物流協会倉庫 事務所-



同僚「重力ポケット!?」

配車係「周辺の天体による引力が作用し合い、空間上の一点に外向きの重力が掛かる現象です」

配車係「ポケットに嵌ってしまうと、船体があらゆる方向から引っ張られ…」

配車係「最悪の場合、粉々に砕け散ります」

同僚妹「じ、じゃあお二人は!?」

配車係「幸い、完全に嵌まり込む前に離脱行動に移れましたので」

同僚妹「よ、良かったぁ…」ホッ

配車係「あとはSSSを全開起動すればどうにか抜けられる筈です」

同僚「…おい相棒」

同僚妹「?」

144 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:21:32.31 ID:923IrNgqO
-男の艇-



バシュゥ!バシュゥッッ!!

男「クソっ!ダメか!!」

少女「ま、まだそのポケットに引っ張られてるん??」

男「あぁ…最悪の事態は免れたみたいだけどな」ピコピコ

男「これなら何とか帰れるだろう」

少女「よ、良かったぁ…」ホッ

男「だけど通常のエンジン出力じゃ振り解けそうにないな」

男「…使うしかないか」スチャ

少女「あ、SSSのドライバ!」

男「助手の形見さ…さて頼むぞ」シャコン

[SSSドライバインストール…]

少女「(形見かぁ…男ちゃんにとってお守りみたいなモンなんやなぁ)」



ピピ-ッ ピピ-ッ

[エラー SSSドライバヲ認識デキマセン]


男「な、何だと!?」

145 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:22:19.14 ID:923IrNgqO
-物流協会倉庫 出航デッキ-



ゴゥンゴゥン…

同僚「なーんか嫌な予感がするんだ」ピコピコ

同僚「あいつの艇のSSS、助手ちゃんの事故以来使ってないんだろ?」

同僚妹「如何にSSSと言っても機械ですからね」

同僚妹「長年使用していなければ、起動に問題が発生する事も考えられますわ」

同僚「だろー?」ピコピコ

[グリーン 発進デキマス]ピコ-ン

同僚妹「…優しいんですのね」

同僚「心配性なだけだよwwほら行くぞwww」

同僚妹「了解ですわ!」シャコン


ゴゴゴ…バヒュゥゥ…!!


146 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:25:38.25 ID:923IrNgqO
-男の艇-

男「何度やってもダメか…クソっ!」

少女「さっきのミシミシで故障してもうたんかなぁ…」

男「あり得るな。長い間使ってなかったのが原因かも知れないし」

少女「…SSS無しやと出られへんねや?」

男「このまま出力全開で回し続けても、ジリジリとポケットに吸い寄せられて行くだけだろうな」

少女「マジか」

男「(考えろ…考えるんだ!)」

男「誰かが救援に来てくれるまで持ち堪えるか?いやその前に燃料が…」ブツブツ

少女「ま、まぁどうにかなるやろ!同僚ちゃんあたりが来てくれるんちゃう?」

男「クソっ…またSSSか!」

男「どうして大事な時に限って…!」

少女「…男ちゃん、落ち着いてぇな」ポンポン

男「…。」

少女「ウチらは生きてるし、今すぐ危険が迫っとぉわけでもない」ナデナデ

少女「でも慌ててワケ分からんくなったら、それこそ助かるモンも助からんよ?」

男「…すまん」シュン

少女「謝らんでえぇて」

少女「元気出して?ええ子やから。な?」ナデナデ

男「…お前、そういう所ホント似てるよ」

少女「…助手ちゃん?」

男「あぁ。俺がテンパってる時、いつもそんな感じで宥めてくれたっけ」

少女「そっか」ナデナデ

少女「…そうやって比較されるの、ちょーっち複雑やけどな」ホッペギュ-

男「いてて!いや、そういうつもりじゃ」

少女「冗談やて」ケラケラ

少女「(…でもないけど)」


147 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:26:54.10 ID:923IrNgqO
ピピ-ッ ピピ-ッ

[エンジン回転数オーバー 水温計異常値]

少女「…なんや暑くない?」

男「エンジンにだいぶ負担掛けてるからな、艇内の空調じゃカバーし切れなくなってきてるんだ」

少女「マジかぁ…うーん上だけでも脱ごかな」モゾモゾ

男「お、おいちょっと!俺も一応男なんだぞ!?」アセッ

少女「…うっそぴょーん♪」テッテレ-

男「…お前なぁ」ハァ

少女「やーい引っ掛かってやんの♪男ちゃんホント可愛いなぁ」ケラケラ

男「なんかすんげぇ悔しい…」

148 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:28:31.96 ID:923IrNgqO
男・少女「…。」



少女「(…ふざけて気ぃ紛らわすのも限度があるなぁ)」

男「(少女に気を遣わせてしまってる…情けない)」

少女「(ってか暑さのせいかいな…)」クラクラ

男「(頭がボーっとしてきたぞ…)」クラクラ



男・少女「…。」ウツラウツラ




149 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:43:25.52 ID:923IrNgqO
-???-



…とこっち…おと…ち…



男「ん…」



『男っち!!!』



男「!?」パチッ

『やっと起きたねー!』

男「その声…助手!?助手なのか!??」キョロキョロ

『久しぶりだね!男っち♪』

男「お前…お前って奴は…!」ウルウル

『元気そうで安心したよ』

『でも案の定、あの時の事を引き摺ってるんだね』

男「当たり前だろ!!お前は俺にとって家族みたいなモンなんだぞ!!」

『アタシにとってもおんなじだよ』

『でもね男っち、忘れないでいてくれるのと過去を引き摺ってるのとは違うよ』

『男っちは生きてる。生きてる限りは前を向いて進まなきゃ』

男「…俺だってそう思うよ」

男「だけどそんなに簡単に割り切れる程、俺は強くないんだ」

『弱さは欠点じゃないよ』

『それは優しさだから』

150 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:45:29.62 ID:923IrNgqO
男「…SSSが起動しないんだ」

『SSS…宇宙の歌声』

『もしかしたら男っちの側にいる子が鍵になるかもよ?』

男「少女が?どういう事だ!?」

『アタシにもよく分かんないけどね、何となくそう感じるんだよ』

男「少女が…。」

『ねぇ男っち、少しずつでいいからさ』

『前を向いて進んでいって欲しいな』

男「…。」

『あの事故の後、お兄ちゃんと女さんが当初の予定を変えずに結婚したのって』

『それがアタシの一番望んでた事だからなんだよね?』

男「あぁ…先輩はそう言ってた」

『さっすがお兄ちゃん!分かってるぅ♪』

151 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:46:14.35 ID:923IrNgqO
『…アタシの時間は止まっちゃったけど、みんなの時間は進んでく』

『男っちだって同じだよ?アタシが望んでるのは』

『キミが幸せに生きてる事だからさ』

男「助手…」

『アタシはいつでも男っちの心の中にいるから』

『何かに迷った時は想像してみて?』

『"あのじゃじゃ馬娘だったら何て言うかな"ってさ』

男「ぷっ…自分で言うかそれ」フフッ

『やーっと笑ってくれたね』

『ほら、そろそろ行かなきゃ。レディを待たせるなんて紳士じゃないぞー?』

男「あぁ…ありがとな、助手」

152 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:47:55.15 ID:923IrNgqO
-???-


ー♪


少女「…ん」パチ


ー♪


少女「歌…?この歌、前にどっかで聴いた事あるなぁ」ウツラウツラ


ー♪


少女「孤児院…パパとママに会う前…」

少女「仲良ぉしてくれたおねーさん…」

少女「一緒に歌ったような…」


ー♪


少女「…それだけやない」

少女「あれは確か…同僚ちゃんの艇に潜り込んだ時にも」

少女「あったかぃ歌…」


スゥ


少女「ー♪」

153 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:50:40.15 ID:923IrNgqO
-男の艇-


男「っ!!」ガバッ

男「…夢、だったのか?」

男「…。」

男「助手…お前の言う通りかも知れないな」

男「前を向いて、か…」

少女「」ポケ-ッ

男「ん?少女??」クルッ

少女「」ポケ-ッ 

男「おい少女!具合でも悪いのか!?」ユサユサ

少女「聴こえる…歌…」

男「???」

少女「」スゥ




少女「ー」♪




男「歌…?お前、その歌って」




少女「ー」♪




男「身体の奥底に響いてくる…もしかして同僚の言ってたのと同じ…?」ビリビリ




ピコ-ン

[SSSドライバヲ認識…システム起動シマス]

ヒュィィィン…



男「!!!」

154 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 10:55:57.15 ID:923IrNgqO
-母なる太陽総本部 巫女の私室-


巫女「火星での体験、色々新鮮でしたねぇ」シミジミ

巫女「火星でも地球でも、人間の営みは同じ…」

巫女「私達に出来る事って、祈る以外にもまだまだあるような気がしますね」

巫女「…そう言えば、男性とあんなに自然にお話出来たのって初めてかもしれません」

巫女「不思議な人だったなぁ…同僚さん」

猫「みー」トテトテ

巫女「おいでホースト」ヒョイ

猫「みー」スリスリ

巫女「それにしても、あの女の子…」

巫女「背も大きくなって、髪も伸びてたけど間違いありません」

巫女「だってあの声…鈴の鳴るような」チラッ

写真「」

巫女「元気で生きていたんですね…少女ちゃん」


155 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:04:51.96 ID:923IrNgqO
-17年前 太陽孤児院-



少女B「ついに行っちゃうんですね」

少女A「いままでありがとぉな、おねーさん」

少女A「おねーさんがおしえてくれた歌、ぜったいわすれへんよ!」

少女B「私もです。いつかまた必ず一緒に歌いましょうね」

少女A「うん!」

少女父「さて、ご挨拶は済んだかな?」

少女母「車を待たせてあるからね」

院長「それでは最後に記念写真を撮りましょう」

院長「一番の仲良しだった二人と、ささご両親も一緒に」

少女A「ぜったいわすれへんからね」キュッ

少女B「私もです、忘れません」キュッ

院長「それでは…はいチーズ」



カシャッ

156 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:06:19.19 ID:923IrNgqO
-男の艇-


男「目が覚めたか!少女!」

少女「あれ、ウチ眠って…?」

男「SSSが起動した!これで帰れるぞ!!」

少女「マジで!?いよっしゃぁー!!」

男「早速ジャンプするぞ!」ピコピコ

少女「がってん承知!!」


[SSS起動問題ナシ…機関オールグリーン]

[目的地ヲ設定…設定完了]ピコ-ン


男「でも不思議な事もあるんだな」

少女「?」

男「歌だよ歌!お前の歌声に反応して起動したとしか思えない!」

少女「歌?ウチなんも覚えてへんで」

男「心ここにあらずって感じだったからな、心配したぞ?」

[SSSジャンプマデ10、9、8、…]

少女「よぉ分からんけど…ま、結果オーライって事やんな!」

男「そうだな」

男「(…助手、ありがとう)」

男「(俺も少しずつ前に進んでみるよ)」

[SSSジャンプ開始]

…ヒュンッ

157 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:07:18.93 ID:923IrNgqO
-同僚の艇-
 


[SSSジャンプ終了…目的地付近デス]ピコ-ンッ

…ヒュンッ

同僚「ここら辺か」

同僚妹「とりあえず調査対象の辺りまで来ましたわ」

同僚妹「あまり近付き過ぎると我々も危険ですので、ある程度の距離はありますが」

同僚「レーダーに何か反応あるか?」

同僚妹「お待ち下さいませ」ピコピコ

[索敵レーダー起動…超高速移動体ヲ確認]ピコ-ンッ

同僚妹「この速度…間違いありませんわ!男さんの艇がSSSジャンプで接近しています!!」

同僚「無事に動いたかー」フゥ

同僚妹「兄様の心配も杞憂に終わりましたわね」フフッ

同僚「こういうのは杞憂で終わってくれていーんだよwww無駄足大歓迎www」

同僚妹「同感ですわ」ニコッ



バヒュンッ…!!



[移動体ガ停止…船舶番号ヲ認識シマシタ]

[物流協会所属R-3104]ピコ-ンッ

158 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:08:09.17 ID:923IrNgqO
-男の艇-



バヒュンッ…!!

男「戻ってきたな」

少女「上手いこと振り切れたんやな」

男「んー…さすがに焦ったよ」ノビ-ッ

少女「ん?男ちゃんそのまま上向いとって?」ガシッ

男「な、なんだよ顔を掴むなよ」

少女「さっきの衝突で眼鏡欠けてもぅてるやん!どっか切ってへん??」ノゾキ

少女「ちょっと眼鏡外すで」スチャ

男「お、おい顔が近いぞ」アセッ

少女「…男ちゃん睫毛ながっ」ジ-ッ

男「あの…少女さん?」ドキドキ

少女「…。」ドキドキ


159 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:09:03.39 ID:923IrNgqO
-同僚の艇-



同僚「戻ってきやがったなwww一応元気そうか見てみようぜwww」

同僚妹「そうですわね、故障等していたら大変ですもの」ピコピコ

[スコープ起動 倍率上昇]ウィィン

同僚「船体は平気そうだな、操縦席は、と…ん??」

同僚「…あwいwつwらwwww」

同僚妹「人が心配して駆けつけてみれば…」

160 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:10:22.81 ID:923IrNgqO
-ネオロンドン酒場街-


[BAR REQUIEM]


カランカランッ


男「サファイヤトニックで」

同僚「俺もwww」

少女「シャンディガフで!」

同僚妹「サラトガクーラーをお願いしますわ」


<乾杯! カチンッ


161 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:11:40.36 ID:923IrNgqO
同僚「ぷはーっwww全くヒヤヒヤさせやがってwww」グビ

同僚妹「まぁ何事もなくて何よりですわ」

男「心配かけてすまなかった」

同僚「いーって事よwww」

少女「同僚ちゃん達なら来てくれるんちゃうって話しててんで!なー?」

男「あぁ。実際同僚の艇が見えた時には安心したよ」

同僚妹「本当ですのー??」ジト-ッ

少女「へ?なんでぇさ?」

同僚「完っ全に二人の世界に入ってたもんなwww」

少女「!」カァァッ

男「見られてたか…」

同僚妹「ま、その点では兄様も…」チラッ

少女「せやせや!見たでー?可愛い女の子とココに座っとぉの!」ニヤニヤ

男「ん?もしかして例の巫女さんか?」

同僚「お前余計なこと言うんじゃないよwww」

同僚妹「いいじゃないですか、素敵な出会いがあったのは事実なんですから」

男「詳しく聞かせてくれよ」

少女「ひゅーひゅー♪」

同僚「お前らそういうの好きねーwww」

162 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:12:22.98 ID:923IrNgqO
少女「どーちゃん!久しぶりやん!」

同僚妹「なんですのその呼び名は…」

少女「同僚ちゃんの妹ちゃんやから略してどーちゃんやで♪」

同僚妹「まぁいいですけれど」

少女「なぁなぁどーちゃん、助手さんの事は知っとぉ?」

同僚妹「男さんにお聞きになったんですのね、勿論知ってますわ」

少女「あんなぁ?そのぉ…二人って」モジモジ

同僚妹「あのお二人は小さい頃からの幼馴染でしたの」

同僚妹「殆ど家族みたいな関係でしたから、少女さんの心配されてる様な事はなかったかと」

少女「そ、そっかぁ」ホッ

163 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:12:56.59 ID:923IrNgqO
同僚妹「…男さん、少し表情が変わりましたわね」

同僚妹「柔らかくというか、優しくなった気がしますわ」

少女「せやねん!ウチがボーっとしとった間に何かがあったっぽいねんけど…」

少女「まぁ何かえぇ事やったんやなきっと!」ウンウン

同僚妹「ですわね」

少女「今の表情の方がえぇなぁ♪見てて安心するっちゅうか」ニヘラ

同僚妹「顔が緩みまくってますわよ」

少女「こればっかりはしゃーないわ!」

164 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:14:02.42 ID:923IrNgqO
少女「あ!どーちゃん手ぇ出して?」スッ

同僚妹「?何ですの?」スッ

パチンッ

少女「親愛の証!ハイタッチやで♪」ニコッ

同僚妹「親愛の…」

同僚妹「…。」ニコッ

165 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:15:16.98 ID:923IrNgqO
男「知らない間にそんな事があったのか」グビ

同僚「百聞は一見に如かずって言うだろwwwだから見てもらおーってさwww」

男「…それだけじゃないんだろ?」ゴクゴク

同僚「なんだよwww」

男「その巫女ちゃんって子の話をする時」

男「いい顔してるぜ?お前」

同僚「うるせーなwwwお前こそ少女ちゃんとどーなのよwww」

男「どうって…その」

同僚「噂じゃ地球(むこう)のマフィア絡みとかwwホームラン級の"訳あり"じゃんかよwww」ケラケラ

男「それなー、俺も心配してるんだけど」

男「でも両親を…家族を探してるなんて言われたらさ」

同僚「お前のそういう所嫌いじゃないぜ」

同僚「まぁ気を付けるに越した事はねぇよ、俺も仕事で絡みがあるが」

同僚「シャレにならないぜ、あいつらは」

男「肝に銘じるよ」

同僚「なんつって巫女ちゃんの方も新興宗教の活動家だかんなww母なる太陽とかいうwww」

166 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 11:16:28.31 ID:923IrNgqO
男「…そういえばさ」

同僚「?」

男「重力ポケットに嵌りそうになった時、助手の声が聴こえた気がしたんだ」

同僚「…。」

男「忘れない事と過去を引き摺ってる事は違うってさ」

同僚「…助手ちゃんっぽいなぁ」ウンウン

男「肉体は無くなっちまったけど…」

男「あいつの心…魂は、今も宇宙の何処かで生きてるんじゃないかって気がしたんだよ」

同僚「それを言うならココだろ、ココ」トントン

男「心の中、か」

同僚「人は誰からも忘れ去られた時に本当の死を迎えるんだ」グビ

同僚「逆に言えば俺達が忘れないでいる限り…」

男「そうだな」

同僚「そいじゃー男と少女ちゃんの無事と…」スッ

男「…助手に」スッ



<乾杯 カチンッ


167 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/07/07(土) 12:08:11.32 ID:923IrNgqO
第一部完となります
ありがとうございました
168 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:22:41.86 ID:fVYEk8l1O
投下します
169 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:23:54.82 ID:fVYEk8l1O
-地球 イタリア南部-

-"赤き月" 幹部邸宅-



幹部「さて、進捗の報告を聞こう」

調査員「はい」ペラッ

調査員「現在、計画の候補地として挙げられた場所のうち」

調査員「アフリカ南端とアメリカ西海岸地域については買収交渉が完了しております」

幹部「カネで解決出来るならそれに越したことはないからな、スマートで良い」

調査員「オーストラリア北部ですが、国立公園に近い事と先住民の実権が強い事から」

調査員「交渉が難航しております」

幹部「想定の範囲内だ、そんな時にこそ彼等の出番という訳だな」

工作員「現在、現地民による民間組織の立ち上げを進めています」

工作員「無論、我々の名は出さず」

幹部「あくまで善良な市民の集団、という事だな」

工作員「仰る通りです」コクッ

幹部「よろしい」

スクッ

幹部「忘れるな」

幹部「恐れるべきは聡明たる悪意ではなく盲目なる善意である、という事を」

調査員・工作員「はぁっ」


170 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:24:38.47 ID:fVYEk8l1O
カチャ

幹部「私だ。子猫の居場所は掴めたのか?」

幹部「そうか、そのまま監視を続けろ」

幹部「手荒な真似はするな、あくまでスマートにだ」カチャ

幹部「…。」

171 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:26:03.70 ID:fVYEk8l1O
-火星 物流協会倉庫 出航デッキ-



ゴゥンゴゥン…

男「さっそく火星重力圏外の仕事が回ってきたな」

少女「無限の彼方へさぁ行くぞ!やな♪」

男「今回はそんなに遠出じゃないさ」

少女「そうなん??」

男「地球育ちの少女には一番馴染み深い星だろうな」

少女「それって…!」

男「あぁ、月だ」

172 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:27:19.13 ID:fVYEk8l1O
-宇宙空間-


ヒュゥゥン…

少女「そういえば地球から見たら一番身近な天体やもんな」

男「月は火星みたいに大気がないから、全面的なテラフォーミングは行われていないんだ」

男「その代わり、必要な面積分だけ囲いを作った"パラテラフォーミング"という方法が採られたんだよ」

少女「でーっかいビニールハウスみたいな感じ??」

男「そうだな、天井まで最大で3km位あるけど」

少女「イチゴ作り放題やん!!」

男「ビニールハウス=イチゴなんだな」

男「実際のハウス内には、物流協会の倉庫や宇宙船の建造拠点なんかがあるぞ」

少女「そーなんや!じゃあこの艇も月で造られたん??」

男「そうだよ、地球より重力がうんと小さいから工業施設を稼動するのに都合が良いんだ」ピコピコ

[目的地ヲ設定シマシタ]

173 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:28:09.74 ID:fVYEk8l1O
少女「♪」フンフン

男「古い歌だな」

少女「月へ行くとなったらこの曲やろ♪」

男「実際月面で最初に鳴らされた楽曲らしいからね」

少女「ほんで今日の仕事はー?」

男「火星や小惑星帯で採掘された金属資源を、宇宙船の建造工場へ持って行くんだ」

少女「ほうほう」

男「…今度は忘れない内に言っとくけど」

少女「?」

男「宇宙船の建造工場を取り仕切ってるのは…俺の親父だ」

少女「まままマジか」

男「まぁ顔を合わせるとは限らないからそんなに固くなる事ないよ」ハハ

少女「どうしてそうフラグ立てるかなこの人は…」


ヒュゥゥン…

174 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:28:57.29 ID:fVYEk8l1O
-月 第13プラント 搬入口-


ヒュゥゥン…

男「こちら物流協会所属R-3104」

男「宇宙船建造工場へ金属資源の搬入に来ました」

無線『R-3104、連絡来てますよ』

無線『今開けますね』ザザッ



ガコンッ!ゴゴゴゴ…

175 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:29:42.57 ID:fVYEk8l1O
-月 第13ハウス内部-


ヒュゥゥン…

少女「月面!って感じの景色やんなぁ」

男「人間の居住地というより工業地域って感じの所だからな」

少女「あ!男ちゃん大変や」

男「どうした?何か問題か!?」

少女「こんな荒涼とした所やったらウサギさん住まれへんやん…」シュン

男「…。」

少女「あれ、もしかして呆れとぉ?」

男「…いや、地球と火星における価値観の違いを痛感しただけだ」

少女「なんや引っかかるなぁー」ホッペギュ-

男「ほいやめろ!あぶないはろ!」

少女「何言うてるか分かれへんわ」ケラケラ


ヒュゥゥン…

176 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:31:27.26 ID:fVYEk8l1O
-宇宙船建造工場 貨物搬入ドック-


ゴゥンゴゥン…

親父「久しぶりだな!男!」

男「なんで責任者である親父がわざわざ…」

親父「何年かぶりに息子が来るのにデスクに噛り付いてられるかよ!」スッ

シュボッ スゥ

男「工場内で煙草吸う奴があるか」クスッ

親父「このエリアに火器を伴う施設はない、ほらよ」スッ

男「ったくもう」シュボッ スゥ

スパァ…モクモク

少女「あ、あの」

親父「ん?この可愛い女の子はもしかして」

男「あぁ、最近コンビを組む事になった少女だ」

男「少女、俺の親父だ」

少女「はじめましてやでー!」

親父「そうかそうか!」

親父「…助手ちゃんの事、俺も忘れた日はねぇぞ」

男「…。」

親父「だが生きてる限り、俺達は前に進んでいかなきゃならねぇ」

親父「お前もようやくその気になったって事だな」

男「助手にも同じような事を言われた気がするよ」

親父「少女ちゃん、こいつは俺に似て不器用な奴だが」

親父「相手の気持ちになって考えることの出来る優しい奴だ」

少女「ウチもそう思う」コクコク

男「なんだか照れ臭いな」

親父「やっぱ分かるか!ま、仲良くしてやってくれ」

少女「もちのろんやで♪」

親父「あ、それとな」

親父「お前が来るって話をしたら大慌てで修練室に向かってったぞ」

男「ま、まさか」ゴクッ

少女「?」

親父「"師範"がお待ちかねだぜ?」ニヤッ

177 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:32:48.08 ID:fVYEk8l1O
-国連軍月面基地 修練室-


ピッ ウィィイン

男「失礼しま…っく!?」グラッ

少女「な、なんやこれ!?体が重っ!!」ガクッ

兵長「おー男くん!久しぶりじゃないか!」タッタッタ

男「ど、どうも兵長さん…お久しぶりです」

少女「ちょっとこれ立ってられへんわ」クタッ

兵長「む?女の子が一緒だったか!これは失礼!」ピピッ


[重力値変更…現在1.00Gデス]


男「ふぅ、やっと普通に立てる」

少女「なんやったん今の??」ヨロヨロ

兵長「すまんすまん!修練の為に室内の重力を1.2Gに上げてたんだよ」

少女「1.2Gって…体重が1.2倍になるって事?」

男「その通りだよ、俺の体重が55kgだから突然11kg増量するって事だな」

少女「それじゃあウチの場合はよんじゅ…っ!」ハッ

少女「誘導尋問とは…やるな男ちゃん」ゴクリ

男「何の話だよ」

兵長「自己紹介が遅れたな!俺はここで兵士達のトレーニングを担当している兵長だ!」

兵長「男くんのお父さんとは古い友人でな!現役時代は火星の三傑なんて言われたもんさ!」

少女「男ちゃんとコンビ組んどぉ少女やで!よろしゅうね♪」

兵長「少女ちゃんか!よろしくな!」ニカッ


178 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:33:32.92 ID:fVYEk8l1O
少女「っていうか1.2Gの状態で普通に走り回るってどういう筋力してんねん…」

兵長「鍛え方が違うのさ!これも人々の暮らしを守る為だ!」ワハハ

男「こういう分かりやすーい人なんだよ」

少女「うん、大体把握出来た気がする」

兵長「荷下ろしは工員さん達がやってくれるんだよな?久し振りにトレーニングでもどうだい?」

少女「男ちゃん頑張って!陰ながら応援しとぉで!」ササッ

男「あ、逃げたな」

兵長「レディを巻き込む訳にはいかないさ!さて、始めるぞ!」ピピッ


[重力値変更…現在1.25Gデス]


男「さっきより重く…んなっ!!」ズシッ

179 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:34:33.58 ID:fVYEk8l1O
-宇宙空間 男の艇-


ヒュゥゥン…

男「酷い目に遭った」

少女「男ちゃんタバコくせー!」オエ

男「ゴメンな、親父と会うと付き合いで吸っちゃうんだ」

少女「帰ったら速攻シャワーな!」

男「はいはい」

少女「あ、そういえば」

男「?」

少女「さっき兵長さんが"火星の三傑"って言うてはったけど」

男「あぁ。親父も元国連軍だったのさ」

男「兵長さんと組んで色々な任務にあたったらしいよ」

男「"三傑"とも"酸欠"とも言われてたみたいだけど」

少女「酸欠…あぁ」クスッ

少女「でも三傑っちゅー事は三人やろ?男ちゃんのおとさんと、兵長さんと」

男「もう一人…俺もその人の事はよく知らないんだ」

男「なんでも軍を退役した後、地球へ行ったらしいけど」

少女「地球?なんでまた」

男「あまり話したがらないんだよ。親父と兵長さんは今も仲良しなんだけど」

少女「そっかぁ」


ヒュゥゥン…

180 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:35:23.78 ID:fVYEk8l1O
-母なる太陽総本部 会議室-



巫女「活動エリアの拡大、ですか」

職員1「はい。ご存知の通り"母なる太陽"は今急速に信者数を増やしています」

職員1「イタリア国内やヨーロッパに留まらず、アメリカ西海岸、オセアニア、アフリカ南部…」

職員2「インターネット上では、巫女様の祈歌が連日話題になっています」

職員2「太陽の恵みと巫女様の祈歌を望む声は、今や世界中から上がっているのですよ」

巫女「世界中の人が私の歌を…?」

ガチャ

指導者「その通りだ」

職員1・2「指導者様!」

巫女「おはようございます…お義父様」

指導者「巫女よ、お前の歌声によって心を救われたという声が後を絶たない」

指導者「今後我々はイタリア国内に留まらず、世界へと活動の規模を広げていこうと思う」

巫女「世界へ…」

指導者「世界各地に教団の支部を建設し、祈歌と教団の理念を普及するのだ」

指導者「力を貸してくれるな?」

巫女「…分かりました」コクッ

181 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:36:06.06 ID:fVYEk8l1O
-巫女の私室-



ガチャ パタンッ

巫女「…ふぅ」

巫女「私の気持ちなんかお構いなしに、どんどん教団が大きくなっていきますね」

猫「みー」トテトテ

巫女「アーツは甘えんぼさんですね」

巫女「よいしょっと」ダキアゲ

猫「」ゴロゴロ

巫女「しかし、気になります」

巫女「先程上がっていた地域…世界的に見ても日照時間の長い場所ばかりでした」

巫女「曇天続きの地域に住む方達ならまだしも、なぜ陽の光に溢れた地域からそのような声が…?」

182 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:36:44.76 ID:fVYEk8l1O
-宇宙空間 同僚の艇-


ヒュゥゥン…

同僚「男も無事にSSSジャンパーになった事だしwww俺の仕事もラクになるwww」

同僚妹「そう言いつつしっかり地球行きの仕事を押さえてるあたり流石というか」

同僚「別に邪な気持ちがあるわけじゃないぞww?単に稼ぎが良いからだなwww」

同僚妹「分かってますわ」フフッ

同僚「なーんか気になるなwその笑い方ww」


ヒュゥゥン…

183 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:38:09.29 ID:fVYEk8l1O
-地球 南アフリカ南端-



ヒュゥゥン…キキッ

[目的地付近デス]ピコ-ン

同僚「なんだここwwなんもねー平原じゃねぇかwww」

同僚妹「依頼書に記載された緯度と経度は確かにこの辺りなんですが」ペラッ

同僚「ん?よく見りゃちっちぇー倉庫みたいのがあるなww」

タッタッタ…

現場監督「おーい!物流協会!」

同僚妹「どうやらここで間違いないようですわね」ガチャ

同僚「まいどーwww」

184 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:38:46.87 ID:fVYEk8l1O
現場監督「遠路はるばるご苦労さま、何もない所で驚いただろ」

同僚「行き先間違えたかと思いましたよwww」

同僚妹「しかしこんな場所に宇宙空間の鉱物資源を…一体何に使われるんですの?」

現場監督「ここに新しい教団支部を建設するんだよ」

同僚「教団?」

同僚妹「それってまさか」

現場監督「何でも"母なる太陽"とかいう新興宗教みたいだ」

同僚「マジかwww」

同僚妹「巫女さんの所属している教団ですわね」

現場監督「そうそう巫女!お前達も動画を見たのか」

同僚妹「動画?」

現場監督「今ネット上で話題になってる巫女って子の歌だよ!」

同僚「そうなんすかww?俺は偶然通りかかって生で見たっすwww」

現場監督「そりゃ羨ましい!運送屋だからあちこち飛び回ってるわけだもんな」

同僚妹「巫女さんの歌…そんなに凄いものなんですのね」

現場監督「動画で見てても心に響くんだから、生で聴いたらさぞ凄いだろうよ」

同僚「確かに凄いっすww身体が震えるっすよwww」

現場監督「ここにもその巫女さんがいずれはやって来るんだろう、その為に今せっせと準備を進めてるってわけだ」

現場監督「さて、それじゃ荷下ろしを始めるか!今重機を持ってくるからな!」

タッタッタ…

185 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:39:18.21 ID:fVYEk8l1O
同僚「おなしゃーすwww」フリフリ

同僚「しかし巫女ちゃんのいる教団ってそんなにでけぇのかよww全然知らなかったぞwww」

同僚妹「確かに、火星では名前を聞く事すらありませんでしたものね」

同僚「何だか急にあいつを遠くに感じちまったな」

同僚妹「ロミオを気取るのはまだ早計ですわ、肝心なのはお互いの気持ちですから」

同僚「気取ってなんかないやいwwってか俺もしかして慰められてるwww?」

同僚妹「兄様ももう少し素直になればよろしいのに」ハァ

186 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:40:00.97 ID:fVYEk8l1O
-深夜 火星 国連軍本部-

-中央電算室-


カタカタ ピコピコ…

職員「それじゃお先に失礼します」ガチャ

主任「おうお疲れー」フリフリ

シ-ン…

主任「さて、ようやく誰もいなくなったな」

主任「深夜のお楽しみタイム開始っと!」カタカタ…ッタ-ン!

主任「今やネットが地球とも繋がってるからな、何か面白そうな動画はと…ん?」カチカチ

画面「"今話題!神秘の歌声!"」

主任「神秘の歌声?ちょっと見てみるか」カチッ

画面「"太陽に祈りを捧げる、巫女の祈歌をお聴き下さい…"」

主任「祈り?新興宗教か何かか」


画面「"ー♪"」


主任「!!?」ゾクゾクッ

主任「な、なんだこりゃ…」


画面「"ー♪"」

187 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:42:07.62 ID:fVYEk8l1O
主任「腹の底に響く歌声…そして歌詞」

主任「"太陽を奪う事など誰にも出来ない"か」

主任「…そういえば前から疑問だったんだよな」

主任「地球で日照時間が低下してるなら、火星(こっち)のソレッタみたいのを向こうでも建造すればいいのにって」


画面「"ー♪"」


主任「太陽を奪う…」

主任「もしかして、地球の奴らからしたら俺達が太陽を独り占めしてるように思ってるのか?」

主任「もしそうなら、俺達のやってる事って…」


画面「"ー♪"」


188 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:43:08.39 ID:fVYEk8l1O
-宇宙空間 同僚の艇-


[SSSジャンプ開始 オートクルーズニ移行シマス]ピコ-ン

同僚「よしwあとは火星近くまで放置プレイだぞっとwww」

同僚妹「プレイって…それでは少し休憩致しますわね」ゴソゴソ

同僚「おやすみちゃーんwwほれ毛布www」パサッ

同僚妹「ありがとうございます…ふわぁ」モゾモゾ

同僚「シートの上で丸まっちゃって可愛いなおいww」

同僚妹「はいはいそりゃどう…も…」zzzz

同僚「寝るの早過ぎwwの○太かよwww」


スゥ…スゥ…


189 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:43:37.16 ID:fVYEk8l1O
同僚「さて」ピコ-ン

画面「"よう 今日アフリカの教団支部の建設現場に行ってきたぞ"」カタカタ

画面「"巫女ちゃんのいる教団ってすげぇデカいんだな 少し遠くに感じちまったぜ"」カタカタ

同僚「"なーんつって"って…既読はやっw返信もはえぇww」

画面「"展開のスピードが急過ぎて私も戸惑ってるんですよねー"」

画面「"行ってみたなら分かると思うんですけど、アフリカ南部って日照時間めちゃめちゃ長いんですよ"」

同僚「確かに暑かったなwww」

画面「"何でわざわざ日照に恵まれた土地に展開するのか分からないんですよねー"」

同僚「"それはあれじゃね?祈りの力でこんなに日光が!まぁ素敵!みたいな事をしたいんじゃね?"…っと」カタカタ

画面「"あ、そういう事ですか!?なんて安易な笑"」

画面「"それと、私は遠くへなんか行ってないですよ?確かに地球と火星じゃ2億km程離れてますけど…"」

画面「"…また会えたらいいな、って思ってます"」

同僚「!」ドキッ

同僚「」ジタバタ

同僚妹「…。」パチ

同僚「"俺もだ 近い内に飲みにでも行こうな"」カタカタ

同僚「…。」ニタニタ

同僚妹「…可愛いのはどっちですか」クスッ

190 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:44:16.88 ID:fVYEk8l1O
-火星 物流協会倉庫-


テクテク

男「今日は遅くなっちゃったな」

少女「まぁしゃーないね、晩ご飯どーしよっか?」

男「たまには外で食べてくか」

少女「さんせーい!」

191 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:44:50.96 ID:fVYEk8l1O
-ネオロンドン酒場街-



ワイワイ ガヤガヤ

男「ほいお待たせ」コトッ

少女「でた!名物フィッシュフライ!」

少女「それとこっちは?」

男「牡蠣のソテーだよ、スコッチと合うんだ」

少女「美味しそー♪ほんならウチはボウモアのソーダ割にするわ!男ちゃんは?」

男「俺も同じのにしようかな」

少女「はいなぁ♪ちょっと待っとって」ガタッ

192 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:46:47.42 ID:fVYEk8l1O
<乾杯! カチンッ


少女「んー♪」

男「いけるだろ」グビ

少女「最高やね!」

男「海産物にはアイラモルトが合うよな」

男「しかしいい顔して食べるよなほんと」

少女「だってホンマに美味しいねんもん!」

男「たまには外で食べるのもいいな」

少女「あ!男ちゃん、あーん」ズイッ

男「な、何だよ照れ臭いな」

少女「えぇから!あーん!」

男「あ…あーん」パクッ

男「うん!美味い!」モグモグ

少女「せやろー♪」



男性客「…。」ジ-ッ

193 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:50:32.26 ID:fVYEk8l1O
-地球 ナポリ市街 酒場街-



ワイワイ ガヤガヤ

酔っ払い「おいマスター!酒が足りねぇぞ!!」バンバン

店主「おいお客さん、いい加減にしてくれよ!」

酔っ払い「あぁん!?客が飲みたいっつってんだから酒持って来りゃいいだろー!」

酔っ払い「お?おねーちゃん可愛いじゃねぇか、一緒に飲もうぜ」ワキワキ

女性客「や、やめて下さい!」

店主「言ってるそばからこの野郎!おい手を離せ!」グイッ

酔っ払い「おいおい客に手ぇ上げんのかぁ!?」

酔っ払い「ここのマスターは客に暴力を振るうのかよー!!」

ザワザワ…ヒソヒソ…

店主「っ…こいつ…!」

194 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:51:05.24 ID:fVYEk8l1O
カランカランッ


店主「いらっしゃい!ちょいと騒がしくてすまねぇ…あ」

黒服「…。」スッ

幹部「ようマスター、今日は賑やかだな」

店主「これはこれは幹部さん…すんませんねぇ」ヘコヘコ

幹部「酒場だからな、多少騒がしい位の方が興が乗るってもんさ」ストッ

幹部「モレッティを」

店主「はいよ!」ソソクサ

酔っ払い「あんだぁーお前?随分デカい態度じゃねぇか」ジロリ

幹部「…。」

店主「お待ちどうさま!」コトッ

幹部「」グビ

幹部「この甘みと香りが堪らんな」

店主「美味いですよね、流石はイタリアが誇る伝統のビールだ」

酔っ払い「おい聞いてんのかよ!?」グイッ

店主「…。」

195 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:52:23.70 ID:fVYEk8l1O
幹部「…。」スクッ

ドカッ バキッ

酔っ払い「うぐっ!?」バタッ

店主「…。」フキフキ

幹部「店主が手を上げるならともかく、酔っ払い同士の喧嘩じゃ…」

幹部「そいつは客同士の問題だ、そうだろ?」ブンッ

酔っ払い「がふっ!!」

店主「…。」

酔っ払い「こ、この野郎…」ヨロヨロ

幹部「…。」チャキッ

酔っ払い「ひっ!な、ナイフ!?」

幹部「酒に飲まれて他人に迷惑をかける…」

幹部「実に醜い」ギロリ

酔っ払い「な、何を…!?」

幹部「こんなゴミ野郎に指なんざ10本もいらないんじゃないか?」ザシュ

酔っ払い「ひゃあぁぁ!ゆ、指がぁ」ダラダラ

幹部「グラスが持てるように3本だけ残してやる、どっちの手がいい?」ヒュンヒュン

酔っ払い「す、すいませんでしたぁぁ」

幹部「外に連れてけ」

黒服「…。」コクッ

酔っ払い「や、やめてくれぇぇ」ズリズリ


バタンッ カランカランッ


幹部「お騒がせしてすまないな、お客の皆さん」クルッ

幹部「ここは俺の奢りだ、後は好きに飲んでくれ」札束ドンッ

ワイワイ…ガヤガヤ

196 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 11:53:17.43 ID:fVYEk8l1O
店主「先程はありがとうございました」ペコリ

幹部「構わん、余所者なんだろうよ」

幹部「…時に店主、我がイタリアは資本主義国家だ」

幹部「何かを得るのに対価を支払う、シンプルで洗練されたシステムだ」

幹部「そうは思わないか?」

店主「…ごもっともです」

店主「」スッ

幹部「迷惑な客が消え、店の平穏が戻った」シマイ

幹部「人の命はカネじゃ買えない」

幹部「どれだけ大金を積んでも、死んだ者は蘇らないんだ」フルフル

店主「…。」

幹部「だが店の平穏はそうじゃない」

幹部「良かったな、カネで買えるもので」

店主「…。」コクッ

197 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/04(土) 12:59:49.53 ID:fVYEk8l1O
短いですが本日ここまでとします
間が空いてしまいましたがこれからまたぼちぼち投下していきますのでよろしくお願いします
ありがとうございました
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/04(土) 15:23:13.24 ID:wYlLPnaRO

悲報
クソまとめサイトあやめ速報、あやめ2nd
創作活動への冒涜続行


・SSちゃおラジシリーズの盗作が発覚
作者も自白済み


・各まとめサイトにちゃおラジの盗作が伝えられる
真っ当なまとめサイトはちゃおラジシリーズを削除


・まとめサイトあやめ2ndはちゃおラジの削除を拒否
独自の調査により盗作に当たらないと表明


・あやめ2ndが荒れる
あやめ管理人は盗作だというちゃんとした証拠をもってこいと言う


・かと思いきやあやめ管理人、盗作に当たらない発言も証拠を求めた発言も寄せられたコメントもなにもかも削除
全部もみ消してなかったことにする気かとあやめ2ndもっと荒れる


・あやめ2nd、ちゃおラジシリーズは盗作ではないがこのままではサイト運営に不都合なためと削除


・後日あやめ2nd、ちゃおラジが盗作ではない独自の理論を公開
ちゃおラジシリーズ再掲載


・あやめ2nd、多数のバッシングにあい数時間後ちゃおラジシリーズ全削除
自らの非を全て認める謝罪記事を掲載


・謝罪記事掲載から5日後、あやめ2nd謝罪記事削除
サイトは謝罪時から通常通りの運行だった
またもみ消して逃げるのかと荒れる


・あやめ2ndに迷惑だから釈明するなり謝罪するなりしろとの訴えが出される


・あやめ管理人釈明なし
責任を逃れ私欲に走る

この間、あれだけちゃおラジへのコメントを削除したにも関わらず以下のようなコメントの掲載を承認
ダブルスタンダードは健在
http://ayamevip.com/archives/52295361.html#comments


ご意見はこちらまで
ayamevip@gmail.com


あやめ管理人は謝罪記事の再掲載を行え

199 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/09(木) 19:25:06.19 ID:wy8+Hwj/0
投下します
200 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/09(木) 19:26:05.38 ID:wy8+Hwj/0
-火星 物流協会事務所-


少女「星祭り?」

男「あぁ。火星入植当時からの伝統で、毎年16月の終わりにやるんだ」

配車係「当日はネオロンドン中の電灯を消して、満天の星空を堪能するんですよ」

少女「ほぇーめっちゃロマンチックやんなぁ♪」

配車係「お祭り自体はまだ先ですが、皆さん少しずつ準備を始めています」

男「露店なんかも沢山出るから、その為の資材や材料の搬入で俺達も忙しくなるぞ」

配車係「お二人には星間便に加えて陸送便も頼もうと思っていますので、よろしくお願いしますね」

男「了解です」

少女「がってん承知やで!」

201 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/08/09(木) 19:27:00.38 ID:wy8+Hwj/0
-火星 陸送便専用道路-


ブロロロ…

少女「火星でそんなお祭りをやっとぉなんて知らんやったわ」

男「俺達は地球から星の海を渡って来たんだ」

男「世代が変わってもその事を忘れないようにっていう意味が込められてるのさ」

少女「なるほどにゃー」ウンウン

男「当日は音楽の演奏なんかもあるんだけど」

男「…少女も参加してみないか?」

少女「へっ!?ウチが??」

男「少女の歌声は心の底に響いてくるんだよ」

男「みんなも喜ぶと思うんだけど…どうかな?」

少女「マジかぁぁぁ」テレテレ

少女「で、でもウチが参加してもえぇの?ウチ火星の産まれちゃうで??」

男「関係ないさ。星が違ったって俺達はこの宇宙で共に生きてるんだから」

少女「この宇宙で…」

男「ま、考えといてくれよな」


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