【シュタインズ・ゲート】岡部「このラボメンバッチを授ける!」真帆「え、いらない」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:12:25.12 ID:lo4gwy6N0
シュタゲSSでございます

・SG世界線到達後
・比屋定真帆が主人公で彼女がラボメンになるまでのお話
・当然ながらネタバレ注意です
・捏造設定の嵐なので 苦手な方はご注意を
・スレたてとか初めてなので失礼あれば指摘してやってください
・ゼロの真帆ルートを知っていたほうが少しだけ分かりやすい部分があるかも?
・気が向いたとき更新タイプです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1530382344
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:16:08.04 ID:lo4gwy6N0
     01

米国 ヴィクトル・コンドリア大学 脳科学研究室 2011/1/25 深夜

自分のデスクに座り、モニターと睨めっこしている真帆。

レスキネン「マホ、こんなに遅くまで随分と熱心だね」ドアガチャ

真帆「…」

レス「マホ?」

真帆「……」

レス「マーホー」

真帆「………」

レス「マーホーさーん」

真帆「…………………」

レス「新手の嫌ガラセなのかな?」ヒョコ

真帆「ひあっ!? ……って教授。いきなりモニターの前に顔を突っ込まないでください! ビックリするじゃないですか!」

レス「Oh、驚かせてしまったかな。これは申し訳ないことをしたようだ」

真帆「ふぅ。本当にもう、心臓に悪いです。そういうことするから、レイエス教授にも子供っぽいって言われるんですよ?」

レス「耳が痛いね。だけどね、マホ。これでも、何度も呼びかけていたのだよ? まったく気づいていなかった様だが」

真帆「あ……そうだったんですか、それは……すいません」
真帆(ぜんっぜん気づかなかった)

レス「てっきり音楽でも聴いているのかと思ったけど、そうでもなさそうだったからね。これがジャパニーズ“シ・カ・ト”なのかと、私は少し悲しくなったものだよ」

真帆(シカトって……)
真帆「そんなワケないじゃないですか。何ていうか、ちょっと考えがまとまらなくて、ついつい深入りというかのめり込みというか……」

レス「それは昨日の件について、ということかい?」

真帆「ええ、はいそうです」

レス「Hum。研究者として熱心なのは良いことだろう。だけど根を詰めすぎるのも考え物ではないかな? 身体にもインスピレーションにもね」

真帆「そ、そうですね。これからは気をつけます」

レス「分かってくれれば、それでいいんだよ」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:18:14.63 ID:lo4gwy6N0
真帆「それで教授こそ、こんな遅くにどうしたんですか?」

レス「私かい? なに、研究室の明かりが中庭から見えたのでね。寂しがりやなマホが一人で泣いているのではと気になって、それで様子を見に来たというわけさ」

真帆「何ですかそれ。どうして私が泣いているなんて──」

レス「またまーた。分かっているんだよ? 仲良しの紅莉栖がいないだもの、仕方がないね」

真帆「は?」

レス「隠さなくても大丈夫だよ。マホはここ最近ずっと寂しそうにしていたじゃないか。原因は紅莉栖がまた日本へ遊びに行ってしまったからからなのだろう?」

真帆「は……はぁ!? 何ですかそれっ!?」

レス「Hahaha! 立派な目くじらが立っているね。ズバリ、図星だったかな?」

真帆「そんなワケありません!」
真帆(っていうかシカトとかズバリとか、どこでそんな日本語覚えてくるのよ、まったく)

レス「別に恥ずかしがるような事ではないだろう? 君たちはまるで姉妹のように仲がいいからね。この研究室で“くんずほぐれづ”している様を観ていると、私たちの心も癒されるというものさ」

真帆「くんでないし、ほぐれてもいません! っていうか、言葉の使い方が間違ってますから!」

レス「おや、そうだったかい? Hum。まあ、意図は伝わっているようだから、構わないだろう」

真帆(いや、構ってくださいよそこは)

レス「さて、それでだマホ。結局のところ、昨日の件について今のところ、どこまで分かっているんだい?」

真帆(……いきなり話題を変えてくるわね)
真帆「ええと、それは……」

レス「てこずっているようだけど、それでもマホの事だ。何かしらの仮説くらいは既に考えているのだろう?」

真帆「……いえそれが、残念ながら」

レス「おや、そうなのかい?」

真帆「はい。ただ……」

レス「ただ?」

真帆「ログを見ている限りだと、特に技術的・機械的なトラブルがあったようにも思えなくて」

レス「Hou……」

真帆「どうして昨日抽出しなおしたデータだけが、予想した値を遥かに越えてきたのか」
真帆「前回、前々回の抽出ログとも比較検証してはみたんですけど、これといった原因にも思い至らなくて」

レス「……そうか。まあ、昨日の今日なのだし、それも仕方がないだろう」

真帆「…………」
真帆「ちなみにですけど、記憶データの肥大に関する一件、教授ならどう考えます?」

レス「Hum。私に訊いてしまって良いのかい?」

真帆(う……)

レス「それは、マホ。その記憶データは他ならぬ君自身から取り出したものだ。そこに見られた不可解な現象に対する解を、私に委ねてしまっても良いのかい?」

真帆「そ、それは……」
真帆「………」
真帆「……」
真帆「…いやです」

レス「Hahaha。マホは素直だね」

マホ(むう……)

レス「おやおや、そんな顔をしないでおくれ、マホ。別に君を嗜めようとしたわけではないのだからね」

真帆「いえ、その……私の方こそ思慮が足りませんでした」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:20:12.01 ID:lo4gwy6N0
真帆「…………」

レス「Oh……ヘーコンでしまったのかな?」

真帆(へこ……だから、どこでそういう言い回しを)

レス「そうだね。誤解の無いように言っておくけどね、私にとっても昨日の件は想定外だったよ。当然だけど、まだ何の仮説もありはしない」

真帆「……教授にも分かりませんか」

レス「それはそうだろう。我々が扱っているのは、そういう類の分野なのだからね」
レス「今のマホに分からないのであれば、それはつまり、この世界の誰一人として解を得ることはできない、と」
レス「これは、そういうお話なのだろうね」

真帆「大げさすぎますよ」

レス「そうかな? でもどうだい、不思議でとても面白いだろ?」

真帆(おも……しろい……)

レス「これだから、科学者というものはやめられないね」

真帆「そう、ですね。そう……」

真帆(そう、面白い……か)
真帆(ううん、どちらかと言えば興味深いという解釈が正しいのかも)

真帆「ふぅ」

真帆(アマデウスを起動させるために、初めて記憶データの抽出を行ったのが去年の3月)
真帆(そして今日までの10ヶ月の間に、アマデウス・プログラムの二度に渡るバージョンアップと並行して、私のアマデウスも二回、記憶データの更新を行ってきた)
真帆(そして、次回のバージョンアップに向けて、新たに記憶データの抽出を行ったのが、昨日のこと)
真帆(つまり……)
真帆(私の記憶は、インターバルにばらつきこそあるものの、それでもこれまでに計四回のデータ化を行ってきた事になる)
真帆(その中で、どうして昨日抽出した記憶データの容量だけが、あれほど大規模な肥大化を見せたのか?)

真帆「…………」

真帆(何も、データ容量の増加という現象自体が異常だと言うわけではない)
真帆(現にこれまでだって、抽出した記憶データが数百キロバイト〜数メガバイト単位で増加するような現象は確認されている)
真帆(でもそれは、あくまでも想定された範囲内での増加だったと言えるのよね)
真帆(一人の人間が数ヶ月という単位の時間を過ごしたならば、まあ有ってもおかしくはないだろうと思える程度の増加量だったと捉えるべきものでしかなかった)
真帆(だから私と紅莉栖は、これまでの増加データ量の推移から推し量り……)
真帆(個人差や環境の違いこそあれど、それでも人一人が一月の間に増やす記憶データは、大体300〜400キロバイト程度なのではないかという推測も立ててもいた)
真帆(……それなのに)
真帆(昨日私から抽出した記憶データは、前回のときに比べて107メガバイトもの増加量が確認さえた)
真帆(これまでよりも期間が空いていたとはいえ、それでもざっと六ヶ月程度。六ヶ月。たった六ヶ月の間に107メガバイトよ?)
真帆(想定されていた量の、実に250倍以上。とてもではないけど、これは余りにも毛色が違いすぎると言わざるを得ない)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:22:39.78 ID:lo4gwy6N0

レス「……マホ?」

真帆(理論上定義した3.24テラバイトという、人間一人分の記憶容量からすれば、100メガ程度の数字なんて誤差のようなものなのでしょうけど……)
真帆(それでも。どういう分けか、この一件が私には気にかかって仕方がない)
真帆(なぜこれほど気になるのか、正直自分でも判然としていないのが困り物なのだけれどね)

レス「マーホー」

真帆(何だかんだで、アマデウスのバージョンアップ作業にストップをかけて、肥大していた記憶データを精査する猶予こそ貰いはしたのだけれど……)
真帆(結局一晩中、抽出実行中のログを見漁ってみても、目に見える範囲に問題のあるプロセスは発見できなかった)
真帆(発見できないのなら、とりあえず記憶データの抽出プログラム自体は、問題なく以前までの三回とまったく同じプロセスを遂行したのだと考えるべきなのよね)
真帆(けど、それじゃあ原因は何? どこに注視すれば、取っ掛かりを見つけることができるのかしら?)

レス「マーホーさーん」

真帆(仮に記憶の抽出およびデータ化自体が正常に行われているのだと仮定した場合、次に考えるべきは……)

真帆(……私自身の記憶?」

レス「やはり、シ・カ・トなのかい?」ヒョッコリ

真帆「うおひあっ!? あ、あ……ああ!?」グラグラドガシャ!

レス「マホッ!?」

真帆「いつつ……」

レス「マホ、大丈夫かい? イスごと派手に転がったようだけど」

真帆「え、ええ、大事はありません。お騒がせしまして」

レス「そうかい? まあ、怪我がなくてなによりだよ。私ももう少し早く手を伸ばせたらよかったのだけど、すまなかったね」

真帆「い、いえそんな」

レス「さあ、手を貸そう」スッ

真帆「あ、どうも」
真帆(自分の記憶…………何てまさかね。いくら何でも突拍子の)

レス「それで、マホの記憶がどうかしたのかい?」

真帆「へっ!?」

レス「マホがダイブする直前に、そんな言葉を口にしていたように聞こえたのだけどね?」

真帆「あ……あー」
真帆(そういえば、つい声に出してたような気も)

レス「どうしたんだい、マホ?」

真帆「いえ、何と言えばいいか……。つまり、容量の肥大化はプログラムやプロセスの問題じゃなくて、ひょっとしたら私の記憶にこそ問題が……って、私なに言ってるんだろ。すいません教授、今のは忘れてもらえると助かります」

レス「そうなのかい? 私は面白そうな考え方だと感じたのだけれどね」

真帆「え……いやいやいや、流石にそれは」

レス「……ふむ。しかし、マホの記憶自体に異常、か。なるほど、私にその発想はなかったよ」

真帆「いや、あはは。言ってみただけなので……忘れてくださいってば、後生ですから」

レス「いいじゃないか。この半年の間に、マホの記憶には実に100メガバイト以上の記憶容量が追加されていた。抽出システムはそれを忠実にデータ化しただけ、と」

真帆「だ、だからですね、有り得ませんから」

レス「いや実にファンタスティック! 嫌いではないよ」

真帆(ぐむむ)
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:25:50.41 ID:lo4gwy6N0

レス「きっとマホは、自分でも知らない間に数多くの冒険をしてきたのだろうね」

真帆「何の話ですか、もう」

レス「それはさながら、不思議の国のアリスのような体験だったのかい? 夢のような世界の中で、時には空を飛び、時に時間をも飛び越えるマホ。Yaaa!」

真帆「しつこいですよ、レスキネン教授。そんなのだから、皆にも子供っぽいってからかわれるんです」

レス「Oh、これは手厳しいね。でも、とても楽しそうじゃないか、ワクワクするねロマンだね」

真帆「夢物語を追いかけすぎです。科学者としてその姿勢はどうかと思います」

レス「でもね。言いだしっぺはマホだということを忘れてはいけないよ」

真帆「でーすーかーらー!」

レス「Hahahahaha!」

真帆「もー!」

レス「それでだよ。マホはどうしたいのかな?」

真帆「は?」

レス「容量増加の件。このままもうしばらく、検証を続けてみるつもりはあるのかな?」

真帆「え、ああ……」
真帆(また急に話題を)
真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

レス「どうだい?」

真帆「ふぅ、そうですね」

レス「…………」

真帆「うん。もう……いいかなと思います」

レス「もういい?」

真帆「あ、すいません。表現が曖昧すぎましたね。ええと、要するにです。今回の件は、ここで終わりにしますという意味です」

レス「……ふむ、検証は断念すると。それで良いのかい?」

真帆「はい。もともと、どうしてこんなに拘ってたのかもよく分かりませんし、これ以上続けても本来の研究の妨げにしかならないでしょうから」

レス「もしかしたら、検証の先で思いもかけない事象に辿り着けるのかもしれないよ?」

真帆「ですから、そんな事は有り得ませんってば。それよりも今は、このデータをアマデウスにコンバートして、これまで通りの比較検証に戻るほうが有意義なはずです」

レス「私としては、少し残念な気もするのだけれどもね」

真帆「夢を見るのなら寝ているときに限りますよ、教授」

レス「言われてしまったね。それではマホ、こういうのはどうだろう?」

真帆「今度は何ですか?」

レス「通常、アマデウス・プログラムにコンバートし終えた記憶データは、抽出用の外部ハードディスク内から削除するようにしている」

真帆「そうですね。でもそれが何か?」

レス「Hun、つまりだね。今回は特別に、外部ハードディスク内にマホの記憶データを残しておくというのはどうだろう、という提案を私はしてみようと思う」

真帆「……はあ」

レス「そうすれば、今後も時間のあるときに、自由に原因を検証することもできるだろう。どうかな?」

真帆「私は別に構いませんけど……でもどうしてそこまで?」

レス「理由なんて、決まっているだろう。ワクワクする状況を切り捨ててしまうのが、何だか勿体無い気がしてしまうからだよ」

真帆「勿体無いって、また日本語独得の言い回しを……」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:28:32.46 ID:lo4gwy6N0

レス「もっとも。次にアマデウスの更新が行われる際は、再び真帆の記憶データを抽出しなおすことになるだろうから」
レス「そうなれば、いつまでも今回のデータを残しておくわけにはいかないだろうけどね」

真帆「まあ、そうですね」

レス「期間限定ではあるが、しかし当面は気が向いたときに検証できる。悪くはない提案だろう?」

真帆「それで教授の気が済むのでしたら」

レス「すばらしい。それでこそ、科学者というものだよ、マホ」

真帆「何て物言いですか、本当にもう」

レス「では、話はまとまったね」

真帆「ええ、そう言うことにしておきます」

レス「OK! それでは明日、抽出しておいたマホの記憶データを使用して、アマデウス・プログラムのバージョンを更新する。それで構わないね?」

真帆「お願いします」

レス「いいだろう。ではそれに伴い、明日の工程についてマホに相談しておきたいことがあるのだけれど、いいかな?」

真帆「はあ、何でしょうか?」

レス「実はだね。明日の更新の際、君のアマデウスを管理しているサーバーを、新しいものに入れ替えてみようと思うんだ」

真帆「サーバーを……入れ替える、ですか?」

レス「Yes。実はすでに、必要な機材類も一通り確保しているのだけど、マホはどう思うかな?」

真帆「私は別に……どちらでも」

レス「Hum。ちなみにだが……」
レス「明日の更新では、今のサーバーから新しいサーバーへアマデウスのデータをコピーしたりはしない。当然、ムーブも行わないつもりだ」

真帆「コピーもムーブもしない……って、えっと、どういう」

レス「つまりだよ。これまでの“上書き更新”という形式ではなく、新サーバー内にはまったくの新規で、マホのアマデウス・システムを構築しなおすつもりでいる」

真帆(まったくの新規……)
真帆「ですがそれだと、私のアマデウスが二機になってしまうのでは?」

レス「そうだね」

真帆(そうだねって……)

レス「そこでだ。新規サーバーの稼動に伴い、現在運用しているサーバー内にあるマホのアマデウスを破棄しようと思う」

真帆「!?」

レス「あえて誤解のないように言っておくよ。私の言う“破棄”とは現在のサーバーを物理的に破棄するという意味ではない」

真帆「…………」

レス「現在稼動しているアマデウス・マホを起動させた状態で、システムとしてのデリート・プログラムを実行すると言う意味だ」

真帆「……え、え?」

レス「当然、“彼女自身”にもデリートする旨を伝えた上でそうしようと思っている」

真帆「な!?」

レス「そこでだ、マホ。改めて相談させてもらうよ。君の分身でもある『アマデウス・マホ』をデリートすることに、彼女のオリジナルとして賛成してはくれないかな?」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:32:12.41 ID:lo4gwy6N0
真帆「……それは」

レス「hum。難しく考えることはないよ。何も君のアマデウス自体が研究対象から外れるという事ではない」
レス「結果だけを見たのなら、君とクリスのアマデウスが一つずつ残る事になるわけだから、これまでと何ら変わらない状況だ。そうだろ?」

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

レス「どのみち君のアマデウスは、システムのバージョンアップに伴う記憶データの更新で、その都度状態がリセットされているに等しい」
レス「それならば──」

真帆「そうすることで、教授は何を知りたいのですか?」

レス「…………」

真帆「…………」ジッ

レス「気になるかね?」

真帆「はい」
真帆「ただサーバーを取り替えたいだけなら、コピーやムーブを利用して現状を継続させる方が一般的です」

レス「まあ、そうだろうね」

真帆「それにデリート・プログラムを実行すれば、対象のアマデウスはバックアップすら残さずに完全消去されるはずです」
真帆「そんな行為を、彼女に伝えた上で実行する……その目的は何なのですか?」

レス「目的か。そうだな、しいて言葉にするならば……好奇心を満たしたいと言ったところだろうね」

真帆「好奇心?」

レス「マホ。君はアマデウスの彼女たちを見てどう思っている?」

真帆「と言われますと?」

レス「本来であれば彼女たちは、0と1のみで構成されたデジタルな人工物でしかないはずだ。しかし実際はどうだい?」
レス「二進数で組み上げられた歪な作り物というには、彼女たちは余りにも生々しすぎるとは思わないかい?」

真帆「…………」

レス「事実。マホのアマデウスは記憶データを更新して起動する度に、大きく取り乱しているのだろう?」

真帆「……はい」

レス「それはやはり、自らが『アマデウスというデジタルな存在になった』という状況に心を乱しての事なのだろうね?」

真帆「ええ、はい……そうだと思います」

レス「そして、クリスのアマデウスもそうだ」
レス「これまで一度も記憶データを更新していないクリスのアマデウスなどは、もはや本当にオリジナルな彼女と同一人物だったのかを疑いたくなるほどに……」
レス「変化し、成長し、独自のアイデンティティを構成するに至っている」

真帆「それはそうですが」

レス「もしもだよ? そんな彼女たちに対して、正面から“デリート”という現実を突きつけたとき、彼女たちはそれをどう捉えるのか?」
レス「コピーでもムーブでもなく、更新でも上書きでもない」
レス「完全な削除というものに直面したとき、彼女たちの反応は果たして明確な二進数であり続けるのか、それとも」

真帆「…………」

レス「マホ。君は先ほど私に『何を知りたいのか?』と問いかけてきたね?」

真帆「はい」

レス「そうだ、私は知りたいのだよ。私たちが作り上げた物が何なのか? 私はそれを、どうしても知りたいのだよ」
レス「だから、マホ。どうか私に、協力してはくれないだろうか?」

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」
真帆「ふう。分かりました。私のアマデウス、削除しましょう」

レス「Oh! 分かってくれたかい」

真帆「ええ、削除します。削除しますけど、ただし──」


9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:34:50.74 ID:lo4gwy6N0
     02

翌日。2011/1/26

レス「段取りは分かっているね、マホ?」

真帆「はい、大丈夫です。新サーバーで新規アマデウスの正常起動を確認してから、現行アマデウスの削除に移行すればいいんですよね?」

レス「その通り。問題はないはずだけど、それでも万が一ということもあるからね」
レス「くれぐれも、先に現行のアマデウスをデリートしてはいけないよ」

真帆「分かってます。消しちゃったー、だけど新しいのもなんか動かないーじゃ、洒落になりませんからね。任せてください」

レス「当然だけど、いつもの儀式もやってもらわなければならないからね」

真帆「ぎ、儀式とか呼ばないでくださいってば! あれはあれで、結構しんどいんですから」

レス「Oh……気に障ったかな?」

真帆(っていうか、儀式って何よ!? こっちは更新の度に人格侵害の憂き目にあってるっていうのに……人ごとだと思って!)
真帆「もういいです。とりあえず、まずはアマデウスの新規構築に集中しなくちゃ始まりませんし」

レス「そうだね、それがいいだろう。それでどうかな? 今のところ、新しく用意したサーバーは順調そうに見えるのだけど?」

真帆「ええ、問題なさそうですね。特にこれといってエラーも出ていませんし……ログはどう、紅莉栖?」

アマデウス紅莉栖(A紅莉栖)『はい。コマンドラインとプロンプトをリアルタイムで参照していますけど、特筆して問題と呼べるような箇所は見受けられません』

真帆「……そう」
真帆(新規サーバーに新規アマデウス。ついでに例の107メガバイトの件もあったりしたから、新規アマデウスの起動については、ちょっとだけ心配してたのだけど、杞憂だったかしら)

レス「ちなみにだね。マホの“あれ”を儀式と最初に呼び出したのはクリスだからね。私じゃないよ、違うからね」

A紅莉栖『!?』

真帆「教授……それはどっちの紅莉栖のことですか?」

レス「それは──」

A紅莉栖『あっ! 先輩! ログに異常が!』

真帆「え!? ど、どこ!?」

A紅莉栖『と……思ったら、見間違いだったみたいです。すいません、テヘ』

真帆「…………」
真帆(AIが見間違いとか、有り得んでしょうが。プログラムが……嘘をつくとか……テヘってお前)

レス「Oh。我々は本当に何を作ってしまったのか……」

真帆「教授、笑えません」

レス「これは失礼。では先ほどの続きだけど、儀式と最初に──」

A紅莉栖『ちっ』
A紅莉栖『さあ、そろそろ記憶データのコンバートが終わりますよ。教授、退室をお願いいたします。さっさと退室してください教授、さあ早く、ハリーアップ』

レス『Oh……』

真帆「ふぅ。そんなに急かさなくてもいいわよ。時間はたっぷりあるんだし」

A紅莉栖『むう……』

レス「マホ。やっぱり私も立ち会うわけにはいかないのかな?」

真帆「ダメです。私一人で作業を行う。それが条件だと言ったはずですよ?」

レス「できるなら、デリートのときだけでも」

真帆「余計にダメです。詳細は後ほどレポートで提出しますから、それで我慢してください」

レス「どうしても?」

真帆「どうしてもです」

レス「OK、分かったよ。それではおとなしく、退散することにしよう」

真帆「そうして下さい」
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