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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」

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810 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:13:35.91 ID:1eXZRzVZo

如月「なんで中佐が……!?」

大和「また、あの男ですか……!」

仁霧島「どうしたんですか?」

提督「どうしたもこうしたもあるか……! あれが絡むと、絶対ろくなことが起きねえってのに……!」

大和「あの男、今度は何をしようとしているんです?」

仁提督「空母棲姫は、ある鎮守府の雪風を追いかけていることがわかった」

仁提督「中佐は空母機動部隊の連合艦隊を準備し、その雪風をわざと海に出して空母棲姫を誘き寄せて叩く算段だ」

提督「最悪のパターンじゃねえか! なんでそんなに行動が早いんだよ、くそが……!」

仁提督「なぜだ? 深海の大物が駆逐艦一隻に釣られてくるんだぞ。十分すぎるリターンじゃないか」

提督「その雪風の姉妹艦は……残された奴らはどうする!!」

仁提督「甘いことを言うな。これは戦争だと、貴様も言ったばかりだろう……!」

提督「被害は想定しても犠牲はないに越したことねえだろう!」

仁提督「随伴のヲ級ですら海域の最奥にいるようなやつだぞ! 犠牲を出さないなんてぬるいことを言っていられるか!」
811 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:14:16.96 ID:1eXZRzVZo

仁提督「それにこれはもう決定事項だ! 今回の決定でテレビ局も動いている!」

提督「テレビ局!?」

仁提督「海軍も政府も腹を決めたらしい。我々の敵である深海棲艦が一体どういう奴らなのか、テレビ放映して国民に知らしめる気だ」

提督「艦娘も映す気か!?」

仁提督「そうなるだろうな……!」

提督「ふざけんな!! 他人事みたいに言いやがって……!」ガシッ

仁提督「ぐ……っ!?」ギリッ

大和「て、提督! おやめください!」

仁陸奥「落ち着いて! 仁提督を責めてどうするの!」

如月「司令官!」ガシ

提督「く……っ!!」パッ

仁提督「ぐ、げほ、げほっ……き、貴様が不満だろうと、もう始まってしまったことだ……止めることはできん!」
812 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:15:02.98 ID:1eXZRzVZo

提督「冗談じゃねえぞ……」

仁提督「抗議する気ならやめておけ! 我々のような末端の提督に、その決定に意見する資格も、止める権利も力もないのだ……!!」

提督「なにか資格だ! そんなもんくそくらえだ!」

仁提督「そもそも今から行っても遅いと言っている! 出向いたところで海域は封鎖されているし、今から向かってももう終わっているぞ!」

如月「え……?」

提督「……それじゃ、もう、その作戦を始めたってのか……?」ワナワナ

仁提督「俺はこの島に来る途中まで、衛星ラジオで開戦の様子を聴いていたんだ。霧島、船内の通信機で上に今の戦況を確認してくれ」

仁霧島「わ、わかりました!」タッ

提督「……電と初春は、工廠にいる大淀に今の話の確認を取るよう伝えてくれ」

電「わかりましたなのです!」タッ

初春「任せよ!」タッ

仁提督「俺の話が信用できんのか」

提督「違ぇよ。そっちで把握できる情報と、俺たちが催促した情報に差がないか確認したいだけだ」
813 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:16:01.76 ID:1eXZRzVZo

提督「俺が一番信用してねえのは俺の真上だ。あれはこっちにまともな情報を寄越さねえからな」

仁提督「貴様が信用されていないだけじゃないのか」

提督「まあ、それもあるな。俺も中佐に信用されたいとは思ってねえから、お互い様だ」

仁提督「中佐だと!? 貴様は中佐の部下か!」

提督「不本意ながらな。俺はあれに邪魔者扱いされて、こんな島にいる」

仁提督「……」

仁陸奥「仁提督、彼の中佐と仲が悪いって話は本当じゃないかしら」ヒソヒソ

仁提督「そうか……?」ヒソヒソ

仁陸奥「ええ、この前、中佐が大怪我した話って大和が関係してるでしょ?」

仁提督「……確かに、中佐の名前を出したときに、大和もあからさまに嫌な顔をしていたな」

仁陸奥「ねえ、提督准尉。今回の空母棲姫要撃の件、何も聞いていないの?」

提督「なーんにも聞いてねえな。あいつからは重要な話はひとつも流れてこねえ。仕方ないから中将から聞いてるくらいだ」

仁提督「中将!?」

提督「ああ、ちょっとした伝手があるんだ。さっきの轟沈艦の話で世話になって以来だな」
814 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:17:01.49 ID:1eXZRzVZo

仁提督「……わからんな」

提督「?」

仁提督「なぜ貴様は中佐に歯向かう? その上で、沈んだ艦娘にそこまでするんだ」

提督「……気に入らねえってだけだよ。どっちもな」

仁提督「貴様が雪風を気にかけているのはなぜだ? 雪風の知り合いか?」

提督「俺じゃねえ。雪風の身内がいる」

仁提督「身内? ……もしや、民間人に暴力をふるって指名手配された艦娘か。単艦で海に出て、最後にこの島に流れ着いたか」

提督「……さあてね」チラッ

仁陸奥「……丘のほうを見たってことは、もしかして沈んだの?」

提督「……」プイ

仁陸奥「そう……」ウツムキ

如月(司令官って、こういう思わせぶりな仕草、得意よね……)

敷波(演技派だ……)
815 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:18:01.22 ID:1eXZRzVZo

仁提督「沈んだのなら、それ以上雪風を気遣う必要はないだろう」

提督「手前はいちいち癪に障るな……!」

仁提督「当然だ。艦娘は建造によって作られる兵器だ、逐一感傷に浸っていられるか」

提督「兵器だと? 笑ったり泣いたりするこいつらが兵器だと?」

仁提督「人為的に造られたのなら兵器だろう。人である証明もできない以上、無責任に人だと言えるか! 人語を解せば人扱いか!」

提督「人並みの考えや感情を持っててそれを無視できる方がおかしいだろうが! お前こそ人でなしじゃねえのか!」

仁提督「軍に属している以上、艦娘も俺たちも使われるのは当然のことだ! 俺たちはそういう組織なんだぞ!」

仁提督「貴様は艦娘に入れ込みすぎだ! 何が貴様をそこまで駆り立てるんだ!」

提督「……どうせ、言ってもわからねえだろうよ」ギリ

仁提督「……ふん、大体わかった。さては艦娘に懐柔されたか」

提督「懐柔じゃねえよ! 単純に、理不尽だと思わねえのか! こいつらの受けた仕打ちを!」

仁提督「だから戦争とはそういうものだ! 人間であっても、艦娘であっても、そこに違いはない! 何度も言わせるな!」
816 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:18:46.72 ID:1eXZRzVZo

提督「そうかよ……だったらもう話すことはねえ」クルッ

仁提督「どこへ行く気だ」

提督「雪風がどうなったか、大淀に話を聞きに行く」

仁霧島「司令! 状況、確認できました!」タタッ

仁提督「ん、報告してくれ。提督准尉も聞くといい」

提督「……チッ」

仁霧島「よろしいでしょうか。まず、戦闘開始は本日1130、戦闘終了が同1310……」

仁霧島「指揮を執ったのは中佐、艦隊旗艦は中佐鎮守府の赤城。そして提督9名とその配下の艦娘54名、総勢60名の艦娘が戦闘に参加しました」

仁霧島「目標は敵航空母艦である空母棲姫、およびその随伴艦である航空母艦5隻、内訳は空母ヲ級3隻と軽空母ヌ級2隻」

仁霧島「戦果として、敵艦隊は6隻すべて撃沈。海軍の被害は……66名中、5名が轟沈、24名が大破、14名が中破しました」

提督「……」ムス…

仁提督「……続けてくれ」

仁霧島「はい。戦闘後に本営が会見を行いました。会見の席に上がったのは中佐、J少将、政府高官が2名」

仁霧島「今回の戦闘の影響と被害状況について政府高官から説明があり、その後中佐から艦娘と深海棲艦についての説明が行われています」
817 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:19:34.23 ID:1eXZRzVZo

仁霧島「そこで、今回見せた深海棲艦……空母棲姫は、深海棲艦の中でも力の強い深海棲艦であること……」

仁霧島「そして、それを撃退できた自分たちの艦娘は、深海棲艦に対抗できるただ一つの戦力であるということ……」

仁霧島「そして、その艦娘を率いているのは、海軍の中でも選りすぐりの精鋭であること……!」

仁霧島「テレビで流された音声の情報をいただきましたが、中佐はこのような演説を行っておりました」

提督「……チッ」

仁提督「どう思う、提督准尉」

提督「だいたいは奴の思い描いたシナリオ通りじゃねえか」

提督「中佐が欲しいのは名声だ。機密情報だった艦娘のお披露目に、深海の大物退治の陣頭指揮も執れて」

提督「自分の権力と力をテレビカメラの前で誇示できたんだ、チヤホヤされて幸せの絶頂なんじゃねえの」ケッ

仁提督「……なるほどな」

提督「ところで、ひとつ質問いいか?」

仁霧島「は、はい、なんでしょうか」
818 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:20:17.91 ID:1eXZRzVZo

提督「空母棲姫の狙いは雪風だ……その雪風がどうなったか、わかるか?」

仁霧島「……どこの鎮守府の所属かはわかりますか?」

提督「確か、保提督だったか」

仁霧島「保提督……その方は、今回の作戦には参加なさっていないようですが」

提督「だとしたら、別の鎮守府に編入されたのか?」

大淀「提督、雪風さんは無事です。中破こそしましたが、本営には戻ったということです」スッ

提督「大淀……!」

仁提督「それは確かなのか?」

大淀「はい、不知火さんが丁度本営におりましたので、そちらで把握している情報をいただきました」

仁霧島「ほ、本営から直接、ですか!?」

仁提督「准尉、これが貴様の言う伝手という奴か」

提督「中将麾下の不知火が、この鎮守府のお目付役だ。この鎮守府には憲兵も特警もいない。その代わりを担っている、とでも思ってくれ」
819 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:21:17.07 ID:1eXZRzVZo

提督「大淀、中佐はどうした? 赤城はいなかったのか」

大淀「赤城さんは留守のようでした。代わりに中佐鎮守府の職員らしき人が出たんですが、後にしろと言われまして」

提督「それで不知火に連絡したのか。やっぱ中佐んとこの人間連中はくそだな」

提督「とにかく雪風が無事か……轟沈したのはどこの鎮守府の艦娘だ」

大淀「はい……B提督鎮守府の5名ですね」

提督「B提督鎮守府……?」ピク

仁提督「霧島。どうなんだ、正しいのか」

仁霧島「私の情報と合致しています。誰が轟沈したかの詳細はありませんが、B提督の艦娘5名がくだんの雪風を庇って轟沈したとあります」

仁提督「ということは、その雪風はB提督鎮守府の艦隊に入っていたわけか……」

山城「冗談じゃないわ……!」

提督「どうした? 山城」

山城「どうしたもこうしたも……目の前で仲間が沈められるのを見てて、平気でいられる艦娘がどれだけいると思うの?」

仁提督「おい、何をそんなに興奮しているんだ。落ち着け」
820 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:22:02.85 ID:1eXZRzVZo

山城「落ち着いていられるわけないじゃない……轟沈よ!? 沈んだのよ!?」

山城「……雪風って、幸運艦って呼ばれてるでしょう? 時雨もそうだったわ」

山城「その時雨が以前、言ってたのよ。自分は幸運艦になんかならなくて良かった。他のみんなが沈んで、自分だけ生き残るのはつらい、って……」

提督「……」

山城「それがどれほどの悲しみか……雪風は、どう思っているのかしら……」ウツムキ

提督「……雪風もケアしてやらなきゃならねえ状態ってことか」

 クイクイ

提督「ん?」

敷波「……あのさ、司令官」

電「……」

敷波「B提督って、もしかして……」

提督「俺もそうなんじゃねえかって思ってるが……そういうことだな?」
821 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/10/15(火) 00:22:47.59 ID:1eXZRzVZo

電「……どうして」ウツムキ

電「どうしてあの人は……!」フルフル…

電「どうしてなんですか……!!」

大淀「い、電ちゃん……?」

提督「敷波。B提督ってのは、そういう奴だったか?」

敷波「ううん……あたしは、ここまで酷いなんて思ってなかったけど……!」

仁提督「B提督を知っているのか」

提督「……ああ」

敷波「知ってるよ。あたしと、電と、由良さんを捨てた、あたしたちの元司令官だもん……!」ギリッ

仁提督「……!」
822 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2019/10/15(火) 00:23:32.12 ID:1eXZRzVZo
今回はここまで。
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/21(月) 21:17:36.87 ID:TmDxV+mtO
保守
824 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:38:06.59 ID:CGh4h9Qto
お待たせしました、続きです。
825 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:39:45.70 ID:CGh4h9Qto

 * 入渠ドックわきのテーブル *

提督「ここなら邪魔も入らねえ。まあ、あんな地雷を踏むとは思わなかったがな」

提督「とりあえず、あんたが聞いた話を聞かせて欲しいんだが」

仁提督「……雪風たちを襲ったのは、艦娘を持たない他国のスパイだと聞いていた」

仁提督「しかし、実行犯の一人が政治家の息子となると、その話も眉唾物だな」

提督「俺はスパイの関与を今初めて聞いたぜ。俺には真犯人を隠匿するための後付けの嘘にしか思えねえ」

仁提督「だからと言って黒潮に対する処分が軽くはならんだろうな」

提督「なぜだ」

仁提督「艦娘が、海軍の備品として扱われているからだ」

提督「……」

仁提督「俺を睨んでもその事実は変わらん。日々の任務にも、建造と解体の任務があるだろう」

提督「うちじゃやってねえよ」

仁提督「そうか。まあ、人それぞれだ、好きにするといい。だが、この任務はどこの鎮守府にもあるものだ」

仁提督「貴様の考えに賛同する者もいるだろうが、それはごくごく少数派だ。艦娘を率いる多くの者は、艦娘とは一線を引いている」

仁提督「そもそも、建造ドックから出てきて、解体すれば資材が残るような人型のなにかを、人間と呼ぶのはさすがに無理がある」
826 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:40:30.81 ID:CGh4h9Qto

提督「仁提督は……艦娘の処分は慣れたものか?」

仁提督「そう……だな。特にどうとも思わん。余計な感情もなく、日々の任務で黙々とこなすだけだ」

提督「ふん……」

仁提督「……なるほど」

提督「どうしたよ」

仁提督「本営は、我々が艦娘を躊躇なく処分できるように、そういった任務を課しているのかもしれんな」

提督「……」

仁提督「話が逸れたな。で、貴様は、雪風たちを助けた黒潮の名誉回復を考えていると」

提督「……そうだ」

仁提督「ふむ……今からでは遅いかもしれんな」ウデグミ

提督「遅い?」

仁提督「中佐が艦娘についての情報を公にした。となれば、艦娘の世間での扱いについてもある程度決まったんだろう」

仁提督「そこで艦娘が人間に危害を加えた場合の要綱も織り込まれているはずだ。ついこの前、それを考えるきっかけになった事件もあった」

提督(以中佐の話か……)
827 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:41:15.78 ID:CGh4h9Qto

仁提督「そこの提督自身にとんでもない問題があったとはいえ、艦娘たちに反抗されて鎮守府が崩壊した事件だ。聞いたことはあるか?」

提督「……まあ、知らなくはねえよ」

仁提督「不愉快そうだな。もしかして、詳しく知っているのか?」

提督「さぁな」プイ

仁提督「……ともかく、そいつのように致命的な悪事を起こしていない限りは、立場をひっくり返すのは難しいだろう」

提督「致命的な悪事ね……既に起こしてるんだがな」

仁提督「何だと?」

提督「雪風たちの司令官だった保提督は、厳秘情報扱いだった艦娘を一般人と接触させようとしたんだ」

提督「艦娘から艤装を奪い無力化させた上でな」

仁提督「……!」

提督「艤装を外して可愛い服を着せ、めかし込んだ艦娘を外に連れ出した保提督を訝しんだのが黒潮だ」

提督「艦娘を連れ外出した保提督を尾行して、入っていった建物から出てきたのは保提督一人」

提督「黒潮が保提督を問い詰めれば、保提督は知らぬ存ぜぬと言い出した」

提督「この時点で、いろんな意味で致命的だと思わねえか……?」

仁提督「……」
828 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:42:00.41 ID:CGh4h9Qto

提督「黒潮が現場に入ったとき、雪風たちは襲われる寸前だった。衣服は破かれ、手足には引っ掻き傷も受けていた」

提督「可愛い妹分がそんな目に遭っていたら、ブチ切れんのも当然だ。全員、海に投げ捨てようって考えてもしょうがねえだろ」

仁提督「だから海に連れ出したのか……しかし、保提督たちが命拾いしたのはなぜだ」

提督「途中で冷静になっちまったんだよ。こんなことをしたら余計に雪風たちに迷惑をかけちまう」

提督「だからと言ってこのまま保提督の下で働けるはずもねえ。黒潮はもう、その時点で戻る気はなかった」

提督「どう思うよ? 奴がやったことは艦娘の援助交際……いや、売春の斡旋だ。売った側も買った側も、お咎めなしってのはどうかしてる」

仁提督「……」

提督「それから、艦娘を見せろと言ってきた奴らは、保提督の悪い知り合いらしい」

仁提督「知り合いだったのか!?」

提督「いじめっこといじめられっこってやつだとよ。昔の話を持ち出して、それをネタに強請られてたらしいぜ」

提督「大人になってまで子供みたいなことをしてる奴らに提督させてんだ、任命責任という奴を問われてもいいと思うがな」

仁提督「……そんなことをさせていては限がない。海軍は慢性的に人手不足なんだ、ただでさえ提督業は人離れが多いからな」

提督「そうなのか?」
829 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:42:45.68 ID:CGh4h9Qto

仁提督「本来、戦争なんかに縁のない、縁を作ってはいけない民間人にこんな仕事をさせるほうがおかしいんだ」

仁提督「適性があっても、艦娘がぼろぼろになって帰ってくるのを見るのが苦しくてやめた奴も多い」

提督「……ふん、本当かよ」

仁提督「皆が皆、貴様のように強い人間ではない。覚悟がなければ心が折れるのも仕方ないことだ」

提督「やけに理解ある言い草だな?」

仁提督「過去のトラウマというものは、どんな人間も弱くしてしまうものだ。貴様にもないのか?」

提督「……なくはねえよ。吐き気がする程度にだがな」

提督「とにかく。本営が今回の保提督のやったことを隠そうとしてるってことはわかった」

提督「バカの父親が政府とどこまで懇ろなのかは知らねえが、都合の悪い事実を揉み消したいくらいには重要な奴なんだろうな」ハァ

仁提督「……提督准尉。この話が事実だとして、なぜ貴様は俺にこの話をした?」

提督「あんた最初に言ってたろ。俺たちが口を出しても無駄だ、みたいなことをよ」

提督「どうせ無駄なら、あんたにも俺の無力感を味わってもらおうと思ってなあ」ニヤリ

仁提督「……それこそ無駄なことを」フン

提督「そーだな。こんな話、うちの連中に愚痴るわけにもいかねえ」
830 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:43:30.64 ID:CGh4h9Qto

提督「話はこれで終わりだ。金剛の修理が終わったら、もうこの島に用はねえだろ」

提督「さて……問題は、雪風をこれからどうするかだな」

仁提督「……貴様は雪風も助けるつもりか?」

提督「おそらく、中佐や本営は雪風の処分をどうしようか考えているはずだ」

提督「連中が隠したい保提督の悪事を知る被害者だ、そのまま放ったらかしにしとくわけにはいかねえだろ」

仁提督「かもな。だが、どうやって助けるつもりだ」

提督「さあな?」

仁提督「ヘラヘラしているが、貴様に手はないだろう。ただでさえ今回の空母棲姫邀撃の話も聞いてなかったんだろう?」

仁提督「本営に頼むにしても、中佐が貴様に雪風を渡すとは思えん」

提督「……」

< テートクーーー!

提督「!」

仁提督「この声……金剛か?」
831 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:44:30.63 ID:CGh4h9Qto

金剛「失礼しマース! Tea break にしまセンカー?」シュピッ

仁提督「……貴様のところの金剛か」

提督「あんな大声出さなくてもいいぞ?」

金剛「No ! わざわざ人払いをしてこんなトコロで meeting してるんデスから、knock は必要デショー?」

仁提督「あの声がノック代わりか。気が利くな」

金剛「それからテートク? 向こうの比叡が厨房を借りたいと言ってきてるんですケド……」

仁提督「やめさせろ」クワッ

金剛「What !?」

仁提督「絶対に比叡を厨房に近づけるな。死人が出ても知らんぞ」

提督「……」

金剛「アー……わかりまシタ。使わせないようにしマス」ヒキカエシ

提督「……そんなにひでえのか」

仁提督「ああ、ひどいぞ。トラウマものだ」

提督「そういや長門も騒いでたな……化学兵器とか言ってやがったか」
832 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:45:15.51 ID:CGh4h9Qto

仁提督「比叡もそうだが、貴様のところの長門はえらく駆逐艦に好かれていたな。落ち着いてもいるし……」

提督「反面教師を見てきたんだよ。元居た鎮守府の提督が、筋金入りの変態だったからな」

仁提督「……誰も彼も、訳ありなのはみな同じか」フゥ

提督「……」

仁提督「……人払いはしてあるんだったな」

仁提督「俺の住んでいた街が深海棲艦に壊されたことはさっき言ったが……」

仁提督「正直に言えば、俺にとってそれはあまり重要じゃない」

提督「おい……!?」

仁提督「昔の話だ。俺は当時陸自だったんだが、その日は非番で、海の見える砂浜を愛犬を連れて散歩してたんだ」

仁提督「その途中……深海棲艦の駆逐艦が浅瀬で死にかけていたのを、その街に住んでいた子供らが見つけてな……」

仁提督「あろうことか、深海棲艦に石を投げてぶつけて遊んでいたんだ」

仁提督「深海棲艦がやばい存在だってことは知っていた俺は、すぐに子供を避難させ、急いで海自に連絡しようとした」

提督「……」
833 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:46:00.77 ID:CGh4h9Qto

仁提督「ところが、子供は一向に言うことをきかん。俺も苛立って、担いで連れて行こうとした矢先に、いきなり砲撃を受けた」

提督「!」

仁提督「運良く外れたが、瀕死の駆逐艦を迎えに来たのか、連中の仲間が4隻、こっちを睨んでいたんだよ」

仁提督「それを見て慌てて逃げ出した子供の一人がすっ転んだのを、俺の犬が庇って……」

提督「……」

仁提督「直撃はしなかった。ただ、爆風であいつは吹っ飛ばされて……」ウツムキ

提督「……」

仁提督「ひどいもんだった。子供の親は、子供が深海棲艦に石を投げるのを見てたらしいが、何の注意もせず……」

仁提督「愛犬を殺された俺に、子供の怪我の責任を押し付けてきやがった」

仁提督「そんなことを言ってる場合じゃない、ここから早く逃げろと言っても聞く耳も持たず」

仁提督「深海棲艦は街中へ逃げた子供を追って、市街に向けて砲撃し始めたんだ」

仁提督「……そのころからだな、子供を好きだと言えなくなったのは。駆逐艦連中も幼い容姿の奴らが多いからな……」

提督「……」
834 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:47:00.49 ID:CGh4h9Qto

仁提督「海自への要請で来たのは、伊勢型戦艦の日向を旗艦とした艦隊だった。あいつらはあっと言う間に深海棲艦を始末していった」

仁提督「痛快だったさ。軽巡や駆逐艦の砲撃とは次元の違う、破壊力のある砲弾が次々深海棲艦を沈めていったのは」

仁提督「……俺の状況説明を受けた日向は遅参したことを詫び、俺に海軍の存在を教えてくれた」

仁提督「そうして、俺は海軍に身を置くようになったんだ」

提督「なるほどな。ま、人間なんて守ろうなんて思わないほうが健康的だぞ?」

仁提督「そう一括りにするな……と、言いたいが、あの時は……失望感が半端なかったな」

仁提督「街を破壊されたことに俺がそこまでショックを受けなかったのも、違う意味でショックだった」

提督「……街を壊されたことを恨んでたんじゃないのか」

仁提督「そんなものは建前だ。愛犬の敵を取りたくて戦っているなんて、誰にも言えたもんじゃない」

仁提督「それを隠したくて、街を破壊されたことに怒りを覚えたと、自分も含めて周囲に言い聞かせてきただけだ」

提督「……」

仁提督「フッ……情けないだろう、笑いたければ笑え」

提督「あぁ? 馬鹿か? 笑える話じゃねえだろうが」

仁提督「……!?」
835 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:47:46.91 ID:CGh4h9Qto

提督「犬だろうが猫だろうが、敵を取りたいってことは、そいつが大事な存在だったんだろ」

提督「笑える要素がどこにある」

仁提督「……」

提督「……」

仁提督「ふう……」ミアゲ

提督「……」

仁提督「この話を……誰かに」フルッ

仁提督「肯定してもらえるとは……思っても、いなかった」ウツムキ

提督「……」

仁提督「あいつらには、たかが、と言われたんだ……」

仁提督「……たかが、じゃないんだ」

仁提督「俺にとっては……あいつは……」フルフル

提督「……」


836 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:48:30.65 ID:CGh4h9Qto

 * 鎮守府 埠頭 *

大淀「仁提督、お帰りになられましたね……」

提督「……だな」

大淀「これから、どうしましょう……?」

提督「……どうしようもねえな。参ったぜ」ハァ…

大淀「赤城さんとも連絡は取れませんし、中将も今は不在と、不知火さんから連絡がありました」

提督「その不知火は本営で待機しろって話だろ……動きようがねえな」

提督「そうこうしてる間に、本営は勝手に話を進めていくだろうし……」

黒潮「……司令はん」スッ

提督「……黒潮か」チラッ

黒潮「もうええよ。死人に口なしって言うやん」

黒潮「保提督に歯向かった時点で、うちは解体されるって決まっとったんやから、こうして生き永らえてるだけで儲けもんや」ニコ

提督「……」
837 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:49:16.15 ID:CGh4h9Qto

黒潮「雪風も、無事やって聞いたし。雪風を追っかけてた空母棲姫も倒せたんやろ?」

黒潮「これで雪風も安心や。ええんや。これで」

提督「……」

大淀「……黒潮さん……」

黒潮「辛気臭いでー! ほらー、解決したんやし、笑わんと!」

提督「……解決?」ジロリ

黒潮「……」

提督「お前のその面で解決か。それでいいんだな……?」

黒潮「……」ウツムキ



提督「大淀」ヒソッ

大淀「はい」

提督「黒潮が夜中に脱走しないか、誰かに見晴らせておけ」

大淀「!」

 * * *

 * *

 *
838 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:50:00.62 ID:CGh4h9Qto

 * 翌日 執務室 *

提督「……」ムスッ

潮「あ、あの……提督、顔が怖いんですけど……」ガタガタ

提督「……回り番とはいえ、こういう日に限って秘書艦が潮ってのはどうなんだ?」ハァァ…

潮「わ、私に言われても……!」

提督「まあ、そーだよな。とにかく潮に当たり散らしたりはしないから安心しろ」

潮「もしかして……黒潮ちゃんのことですか?」

提督「まあな……あいつ今どうしてるか、知ってるか?」

潮「……生気がない感じ、でしょうか……」

提督「そうか。立ち直れと言われて立ち直れる状況じゃねえし……どうしたもんかねえ」

潮「……あの」

提督「うん?」

潮「黒潮ちゃんは、遠慮……してます、よね? 提督にも、私たちにも……」

提督「あー……そうっぽいな。死人に口なしとか言ってやがったし、どうも悪い意味で諦めが入ってる気がするぜ」

提督「もしかしたら昨晩のうちに保提督の鎮守府に乗り込むんじゃねえかって、心配になるくらいだった」
839 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:50:45.87 ID:CGh4h9Qto

提督「せめて雪風たちの件が、ちゃんと落ち着く形で解決できりゃあいいんだが、こっちからは手を出せる状況にない……」

潮「みんなも気を遣いますし……元気になれるニュースがひとつでもあればいいんですけど」

 扉<コンコン

朝雲「ほーんと、そうよー? 元気になってくれなきゃ困るわ」ガチャ

提督「朝雲か。なんでお前が困るんだ?」

朝雲「私、後発にあたる陽炎型には、負けたくないって思ってるんだけど。あんなに元気がないとちょっとねー」

朝雲「それに、山雲を助けてもらったのに、本人の元気がないのも良くないと思わない?」チラッ

提督「!」

山雲「お邪魔しまぁ〜す」スッ

朝雲「司令、改めて紹介するわね。朝潮型駆逐艦6番艦の山雲よ」

山雲「山雲ですぅ〜、よろしくお願いしまぁ〜す!」

提督「お、おう……怪我はもういいのか」

山雲「おかげ様で〜、体のほうは、大丈夫ですぅ〜」
840 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:51:30.76 ID:CGh4h9Qto

提督「……」

山雲「司令さ〜ん? どうか、なさいましたか〜?」

提督「いや。お前と話してると、俺が早口になった錯覚に陥りそうだ」

山雲「ふぅ〜ん、そうかしら〜?」クビカシゲ

提督「……なあ朝雲? こいつ、もとからこんな感じなのか?」

朝雲「え? ええ、そうだけど。でも、砲雷撃戦で足を引っ張ったりなんかしないから、大丈夫よ?」

提督「ならいいんだけどよ……」

山雲「山雲は〜、ちゃあんと戦えますからぁ〜、大丈夫ですぅ〜」

提督「……」

潮(提督、微妙そうな顔してる……)

提督「まあいいや、とりあえずいつもの質問しとくか」

山雲「あ〜、それなんですけれど〜」

提督「うん?」

山雲「私〜、そのときって〜、生まれたばっかりだったと思うんですよ〜」

提督「生まれた……どういうことだ?」
841 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:52:16.10 ID:CGh4h9Qto

朝雲「私もそうなんだけど、山雲は俗にいうドロップ艦なの。海で見つけて拾ってくるタイプの艦娘」

提督「雲龍みたいなもんか」

朝雲「ええ。山雲は、どうもドロップ直後に被害にあったみたいなのよ」

山雲「そうなんです〜。気付いたら、頭の後ろに大きなコブも出来てて〜」

朝雲「背中にも痣が出来てて、なにかに叩きつけられたような感じの怪我だったの」

提督「それを黒潮が運よく見つけたと……」

朝雲「山雲が中破で済んだのも、空母棲姫が雪風を追いかけるのに必死だったって考えれば納得できるわ」

提督「なるほど、見過ごされたってか。時系列考えても、そう考えるのが無理ねえな」

山雲「ですから〜、これから頑張るぞー、って、意気込む前に、こうなっちゃったんですよ、ねー」

潮「運が良かったのか悪かったのか、わかんないですね……」

山雲「うーん、山雲は〜、運が良かったと思います〜」

山雲「だって今、朝雲姉と〜、一緒にいられるんですから〜!」ニコニコー

提督「……つうことは、聞くまでもねえってことか」

朝雲「そういうことです!」フンス

朝雲&山雲「「ねー」」カオヲミアワセー
842 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:53:00.63 ID:CGh4h9Qto

提督「……」

潮「……な、仲がいいんですね」

提督「……」

潮「て、提督?」

提督「……黒潮の一件、早めになんとかしてやらねえとな」ウーン

提督「黒潮が姉妹艦との繋がりを絶たれてああなってるんなら、朝雲たちみたいに姉妹で仲良くしてる姿を見せるのは、ちょっと酷だ」

提督「不知火も最近はこっちにいない時間が多いし、妹じゃねえからな……」ウーン

潮「……」ニコー

提督「……なんだ?」

潮「あ、いえ……やっぱり、提督は、お優しいんですね」

提督「そうかねえ……」アタマガリガリ

朝雲「ふふふ、司令ったら照れてる?」ニマー

提督「放っとけ」プイ

山雲「ふ〜ん、思ったより、優しそうな人なんですねぇ〜」

提督「優しくしてるつもりはねえよ。できる範囲で艦娘の希望を叶えようとしてるだけなんだがな」
843 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:53:45.62 ID:CGh4h9Qto

山雲「それじゃあ山雲も〜、お願いしてもよろしいでしょうか〜?」

提督「ん? なんだ?」

山雲「山雲は〜、土いじりがしたいんです〜」

提督「土いじり?」

朝雲「山雲は畑仕事をやりたいの。丁度人手が欲しかったんでしょ?」

提督「そういう話なら渡りに船だな。ビニールハウスも増やす予定だったし、初雪と分担して管理してもらってもいいか」

山雲「ありがとうございます〜」パァ

朝雲「良かったわね、山雲!」

山雲「それからぁ〜、もうひとつ、司令さんに聞きたいことがありまして〜」

提督「なんだ?」

山雲「司令さんは〜……」ユラッ

提督「……!」

潮「!」

山雲「胸部装甲の大きい艦娘がお好きなんですかぁ〜……?」ジトォ

朝雲「や、山雲!?」ゾクッ
844 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:54:30.62 ID:CGh4h9Qto

山雲「雲龍さんも大きかったし〜、今いる秘書艦さんも、ねー……?」グリッ

潮「ひっ!?」ビクッ

山雲「朝雲姉もなんだか微妙にあるみたいだし……朝雲姉に、何か、したんですかぁ〜?」ハイライトオフ

朝雲「や、山雲、誤解よ! 私は司令にはなにもされてないってば!」

提督「……」

潮(て、提督があの顔になってる……まさか)ハッ

提督「潮。正直に言っていいよな?」

潮「……そ、それ、私が止めても、言いますよね?」

提督「お前がどう思うかってのもあったんだが……まあ、それもそうか。おい、山雲」

山雲「!」ギョロッ

提督「俺はお前らの胸のサイズなんぞに興味はねえぞ」

山雲「!?」

朝雲「なにそのどストレートなぶっちゃけ方!?」ガビーン
845 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:55:15.83 ID:CGh4h9Qto

提督「ぶっちゃけついでに、胸の大小なんか俺の知ったこっちゃねえし、いちいち気ぃ遣うのも面倒臭え」フン

朝雲「もうちょっとオブラートに包んだ言い方ないの!?」ガビーン

山雲「」アッケ

潮「私、知ってます……提督は、そういう人なんですよね……」ガックリ

朝雲「いくら独身宣言してるとはいえ、もうちょっとデリカシーのある言動をお願いしたいんだけど」ガックリ

提督「そういうの面倒臭えから嫌なんだ」

朝雲「そーですね、司令はそういう人でしたもんねー……」

提督「それをさておいても、そいつは俺が何かして解決するような問題じゃねえだろが」

提督「努力してどうにかなる類の悩みでもねーし、他人に当たんのも論外だし、せいぜい泣いて発散するくらいしかねえだろ」

朝雲「う、うーん……」

提督「それでも俺になにかしろってんなら、ついでに俺の身長も伸ばしてくれよ。あと3センチでいいからよ」

朝雲「そんなこと無理に決まってるじゃない……」

提督「つまりはそういう話だってことだ。嫉妬するのはしょうがねえ」
846 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:56:00.58 ID:CGh4h9Qto

提督「ただ、それを当たり散らしたって良い結果にはならねえし、それを承知で暴れる気なら、俺も容赦しねえぞって話になる」ジロリ

提督「それに、胸がありゃいいってもんでもねえぞ。潮はそれがきっかけで、前の鎮守府でひどいセクハラ受けてたからな」

潮「……」シュン

提督「山雲がその手の話題を嫌がるんなら俺はしねえよ。ただ、あんまり沸点が低すぎるのは見過ごせねえからな?」

山雲「……」

朝雲「山雲……?」

山雲「……なんていうか〜」ハイライトオン

山雲「無理矢理納得させられた感じがするわね〜?」ウーン

提督「泣き言言いたいんなら付き合ってやる。ただ、お前の望むリアクションは期待すんな、俺にはデリカシーがねえからな」

朝雲「それ、威張って言うことじゃないでしょ……もう」ハァ

提督「それより、さっきの山雲の様子なんだが……お前、本当に大丈夫か?」

山雲「? 山雲が〜、どうかしましたかー?」クビカシゲ

提督「自覚ねえのかよ……正直に言わせてもらうぞ。お前、深海棲艦と関係あるか?」

山雲「……え……ええ〜?」

潮「て、提督!?」

朝雲「ちょっと司令!? どういう意味よ!?」
847 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:56:45.72 ID:CGh4h9Qto

提督「なんとなく、なんだけどな。さっきお前の放ってた殺気が、どうもル級の雰囲気に似てた気がするんだよ」

提督「艦娘と深海棲艦が決して遠い存在じゃないことはわかるが、そこまで雰囲気が似るものなのか?」

提督「お前らも感じなかったか? 山雲の目がマジだったときの、水中みたいな息苦しさを」

潮「……」

提督「山雲が、この鎮守府にいる間に深海棲艦になっちまったら目も当てられねえ」

提督「山雲に自覚がないなら猶更危険だ。何かされた記憶はないか? 些細なことでもなんでもいいから思い出せ」

山雲「そ、そう、言われても〜……」

山雲「気が付いて〜、海の上に立ってたと思ったら、ガーン、って、衝撃が来て……」ウーン

山雲「そのあとは、覚えてないわ〜」

潮「全然、わからないですね……」

提督「……衝撃……空母棲姫は、山雲を攻撃目標に入れていなかった」

提督「当然、爆撃された痕もない。単純に全身を打ち付けたような怪我だった……」

提督「つうことは、山雲は空母棲姫に激突されたってことだよな……!? もしかしてそれか!?」ガタッ

朝雲「し、司令!? それってどういうこと!?」
848 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:57:35.96 ID:CGh4h9Qto

 * 工廠 *

明石「まーた新しい説をねじ込んできましたねー」

提督「深海棲艦と接触した艦娘なんて、そうそういないだろ?」

明石「まあ、大体は接触というか、近づく前に砲雷撃戦で沈んでますからねえ」

明石「危ない相手ほどアウトレンジで戦いますから、激突なんて滅多におこらないですよ」

山雲「つまり〜、山雲は、轢き逃げに遭ったってこと〜?」

提督「ああ、そういうわけだからお前はしばらく通院だ。山雲は工廠に通って経過を診てもらえ」

明石「深海棲艦との直接的な接触が艦娘に影響するかどうか、ですね。調べてみます!」

提督「……今度ル級にも聞いてみるか。でも最近、あいつ穏やかだよな?」

朝雲「ええ、昔よりも雰囲気が柔らかいっていうか」

潮「や、やっぱり、怒ってるかどうかだと思いますよ……?」

提督「多分、そうなんだろうな……」ウーン

山雲「ねーねー朝雲姉〜、ル級さん、って、誰〜?」

朝雲「え? 文字通り戦艦ル級さんよ? 深海棲艦の」

山雲「えええええ……?」

提督(こいつでも驚いた顔はするんだな……)
849 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:58:15.70 ID:CGh4h9Qto

 ドドドド…

白露「明石さぁぁぁぁん!」キキーッ

提督「? 白露か?」

明石「ど、どうしたのー?」

白露「大変! 大変なの! 島風が……!!」



 * 砂浜 *

白露「こっち! こっちだよ!」

提督「……島風はなにやってんだ」

島風「」キュゥ…

白露「ごめんなさい、前方不注意で……あたしがちゃんと見ててあげなかったから!」

提督「それで、そっちは誰だ?」
850 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/10(日) 16:59:15.79 ID:CGh4h9Qto

三隈「最上さん! 最上さん、しっかりなさって!」

最上「」キュゥ…

白露「提督ごめんなさい! 島風が前を見ないで走ったせいで、この人と衝突しちゃったの!」

提督「衝突って、海でか?」

白露「うん、この島の周りをぐるっと、航行トレーニングしてたんだけど……」

三隈「お気になさらないで、最上さんも衝突事故をよく起こすんです。不用意にあちこちへ突き進むから……」シュン

提督「気にしないわけにもいかねえだろ。とりあえずどこの誰だ? ここで入渠するって連絡してやらねえとな」

三隈「あ、ありがとうございます。私、部提督鎮守府の三隈と申します。それから、ついでと言ってはなんですけれど……」

提督「なんだ?」

三隈「私たちは、××島の提督准尉という方を探しているんですけれど……もしかして、あなたでしょうか?」

提督「ああ、俺だが……」

三隈「良かった、無事に辿り着けましたのね……!」

提督「?」カオヲ

白露「?」ミアワセ
851 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2019/11/10(日) 17:01:43.19 ID:CGh4h9Qto
というわけで、今回はここまで。

島風:スピードを追い求める姿勢を疎まれて、訓練中に除名される
白露:島風と一緒に特訓するため艤装を改造、同じく訓練中に除名される
黒潮:姉妹艦を人身御供にした司令官にぶち切れて、犯人もろとも海に投げ捨て離反
山雲:ドロップ直後に、黒潮を探す雪風が起こした深海勢に激突される

次は最上と三隈の回です。
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/10(日) 17:41:01.80 ID:4RgD5hGXo
なんだかんだと提督仲間と言うか…
話の通じる提督業仲間みたいのが徐々に増えて来たねぇ
853 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:17:49.85 ID:BuX++sWso
こんな時間ですが続きです。
854 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:18:32.71 ID:BuX++sWso

 * 執務室 *

三隈「提督准尉、こちらをご覧ください。私たちの提督である部提督……正確には部提督代理からです」スッ

提督「代理?」ウケトリ

三隈「は、はい……部提督はある事情で、鎮守府を離れておりまして……」

提督「ふーん……」ガサガサ

三隈「その書類の内容については、三隈たちも知らされておりません」

三隈「ですが、その書類を提督准尉に届けて、必ずご覧になっていただいて、それを見届けるよう指示されました」

提督「なんだそりゃ。俺がこれを見たのをちゃんと確認しろってか」

三隈「はい」

提督「信用されてねえってか? まあ、いいけどよ……」ペラリ

三隈「……」

提督「……」ペラリ

提督「それで三隈。なんでお前がわざわざこれを届けに来た?」

提督「定期便でいいじゃねえか。お前が来て、見たかどうか確認しろとか、普通じゃねえよな?」チラッ

三隈「そ、それは……」ウツムキ
855 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:19:17.51 ID:BuX++sWso

提督「……潮」

潮「は、はい」

提督「こっちの書類を見てくれ。こいつ、なかなか愉快なことやらかしてんぞ」ニヤッ

潮「え……?」ショルイウケトリ

三隈「……!」

潮「……え、えええ!? こ、こんな……本当ですか!?」

提督「おそらく本当だ。で、こっちの書類にはこう書かれてんだよ」

提督「部提督鎮守府所属、重巡洋艦最上、並びに三隈。両名に、部提督鎮守府から××国××島鎮守府への異動を命ずる、ってな」ニヤリ

三隈「……」グッ

提督「まあ、当然っちゃあ当然だよな。手前の上司を撃つような奴が、そこに居続けられるわけがねえ」

提督「見ろよ! 余程悔しいんだか、煮るなり焼くなり好きにして構わないなんて書いてきてんぞ!」

提督「下手打った手前の自業自得じゃねえか……負け惜しみもいいとこだ! くっくっくっ……!」

潮(うわぁ……提督が悪人の笑顔になってる……)アワワ…
856 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:20:02.49 ID:BuX++sWso

三隈「……提督准尉!」キッ

潮「!」ビクッ

三隈「あなたは、最上さんを……私たちを、どうするおつもりですか!?」ジャキッ

提督「うん? どうするって……何かあんのか??」キョトン

三隈「えっ」

潮「……」アタマカカエ

提督「潮? なんで三隈はこんなに殺気立ってんだ?」クビカシゲ

潮「提督が悪い顔して笑ってるせいです!」プンスカ!

提督「……俺、そんな誤解を招かれるようなことしてたか?」

潮「してました!!」プンプンプーン!

提督「……潮にこんなに怒られたの、初めてかもしれねえ」ボソ

三隈「……」
857 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:20:47.22 ID:BuX++sWso

提督「とりあえず、三隈には一言言わせてもらうか」フー

提督「三隈、よくやった」ニヤァ

三隈「!?」

潮「……て、提督!?」

提督「何を驚いてんだよ、これは賞賛するべきじゃねえの? 潮もそう思うだろ?」

潮「それは思いますけど!」

三隈「……」アッケ

提督「セクハラなんざかます方が悪いんだよ、ざまあねえや」クックック

三隈「……あのう……」

潮「は、はいっ!?」

三隈「ここの提督は、変わってらっしゃいますのね?」

潮「……そ、そうですね……変わってるんです」ハァ
858 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:21:32.32 ID:BuX++sWso

 * 工廠 *

山雲「最上さんの検査結果〜、特に問題ないそうですよ〜?」

三隈「ああ、よかった……」ホッ

山城「それにしても無茶するわね、自分の提督の……アレを撃つなんて」ポ

扶桑「でも、そのおかげでその鎮守府から追放……というより、解放? されたのよね?」

三隈「ええ……私のせいで、最上さんは……」シュン

明石「気を落とすことなんかありませんよ!」

扶桑「離れられたのはいいことだと思うわ。それにこの鎮守府なら安心よ。ね? 山城?」

山城「そうですね……ここの提督、色気には興味なしですからね」

白露「ここの提督なら、三隈さんに撃たれることもないだろうねー!」

朝雲「物資が少なかったり、いろいろ不便ではあるけど、住めば都って言いますから!」
859 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:22:17.47 ID:BuX++sWso

三隈「……もしかして、みなさんも訳ありだったりするんですか?」

山城「そうね……一人残らず訳ありよ。そうなんでしょ? 提督」

提督「まーな」

扶桑「……提督? どうかなさいました?」

提督「あー……いや、正直、三隈が羨ましくてな……」

三隈「羨ましい?」

明石「あ、もしかして……言っちゃ」

提督「俺も中佐のキ○タマぶっ潰してやりてえぞ、くそが……」ハァァァ

三隈「はい!?」カァァ

山城「ちょっと!?」カァァ

明石「ダメですよ、って、遅かったか……」アタマカカエ

朝雲「もう……その辺のデリカシーはほんっとないんだから」セキメン

山雲「いけませんわー、それはセンシティブですぅ〜」ポ
860 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:23:01.23 ID:BuX++sWso

提督「いいだろ別に。三隈だって実際に部提督に主砲で実行したんだからよー」

扶桑「流石に、そのように言葉に出すのは控えたほうがよろしいかと。女性ばかりの席ですし」

提督「しゃーねーな……」

明石「それにしてもですよ、最上さんと三隈さんの処分も、よく異動だけで済みましたね?」

三隈「最上さんは、とても長い間セクハラされてたんです」

三隈「目撃者もたくさんいますし、提督に問題があると何度も憲兵さんに訴えていました」

提督「その実績があったんで、解体処分まではいかなかった、ってこったろうな」

提督「だからって、三隈に直接書類持たせて直行しろとか、普通やるかよ?」ムスッ

白露「提督、不機嫌そうだね……」

提督「当然だ。黒潮や仁提督も言ってた噂を信じて、問題がある艦娘をこの島に送り付ける奴が現実に出てきてる」

朝雲「迷惑な噂が現実になりつつあるのね……!」

提督「この調子だとこの狭い島に、三隈たちみたいに次々と艦娘が送られてくるかもしんねーんだぞ。くそが」
861 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:23:46.95 ID:BuX++sWso

明石「結構な人数になりましたからねー。部屋数も増やさないといけなくないですか?」

提督「ドックだって拡張しねえとな。くそ、あんまり本営にこの手の頼み事はしたくねーんだけどな……」

大淀「提督、こちらにおられましたか」スッ

提督「!」

大淀「……あ、あの、提督?」

提督「なんかすっげー嫌な予感がすんだよな。お前の抱えてるFAXの束……」ウヘェ

大淀「……」

提督「また、艦娘が送られてくるのか?」ウンザリ

大淀「はい……」シュン

提督「……」
862 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:24:32.22 ID:BuX++sWso

白露「泣ーかした、泣ーかしたー」

提督「!?」

大淀「!?」

明石「せーんせーに言ってやろー」

提督「……頭、掴まれたいかお前ら」ワキワキワキ

白露「きゃーーー!」ダッシュ

明石「ちょっ、速っ!?」

山雲「逃げるくらいなら〜、言わなきゃいいのにね〜?」

提督「なにやってんだか……はぁ、しょうがねえ。大淀、そいつ、見せてくれ」

大淀「はい……」


三隈「……あのう、事情が良く飲み込めないのですが……」

朝雲「あー、それはですね……」

863 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:25:16.59 ID:BuX++sWso

 * 執務室 *

提督「到着は明日か……」フー

大淀「……」

提督「4人とも命令違反ねえ……なんでそういう連中をこっちに送り付けてくるのかね」

大淀「……」

提督「……大淀?」

大淀「は、はい!?」

提督「大丈夫か? 元気ねえっつうか……いや、まあこんなもん来たんじゃ元気も失せるか」

大淀「え……いえ、私は大丈夫です」

提督「……そうか?」

大淀「大丈夫です!」

提督「……」

大淀「……」

提督「本当にそうか?」ズイ

大淀「ふえっ!?」ビクッ
864 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:26:02.23 ID:BuX++sWso

提督「お前は気付いてるかわからねえが、今まで見たことないくらいの落ち込んでるからな……さすがに心配だぞ」

大淀「い、いえ、その……わ、私はいいです……」

提督「……本当にか?」

大淀「はい……この知らせが原因では、ありませんから……」

提督「……」

大淀「ちょっと……昔を思い出しただけですので」

提督「昔……?」

大淀「……前の鎮守府で……艦娘の解体の話題になると、よく言われてたんです。そんなつらそうな顔をするな、って」

大淀「この資料を持って行ったときに、提督が……その、前の提督と似たような、うんざりした顔をしてましたので」

大淀「つい、その時のことを、思い出してしまったんです……」

提督「……」

大淀「それだけです……私が、ふと、思い出しただけで、提督が悪いなんてことはありません」

大淀「……ですから、提督は、お気になさらないでください」

提督「ふーん……なあ、大淀?」

大淀「……はい?」
865 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:26:47.25 ID:BuX++sWso

提督「俺は、お前がいてくれて助かってるぞ」

大淀「……」

提督「お前の働きはみんなのためになってるし、俺もお前を頼りにしてる」

提督「だから、その……なんだ」

大淀「……」

提督「……他人を褒めるってのは難しいな。俺、変なこと言ってないよな?」

大淀「……い、いえ……」ウルッ

提督「お、おい」

大淀「あり……ありがとう、ございます」ポロポロ

大淀「私……前のところでは、疎まれていると、感じていたので……」

大淀「そんなふうに、お褒めの言葉を、いただけたのが……」グスッ

提督「……」アタマガリガリ

大淀「うれ……うれし……う、うえ……」ボロボロボロ

提督「大淀!? だ、大丈夫か?」セナカサスリ

大淀「だい、だいっ……ふえ、ふええええ……!」グスグス

866 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:27:32.06 ID:BuX++sWso

 * *

大淀「……」ダキツキ

提督「……落ち着いたか?」ダキツカレ

大淀「……」

提督「大淀?」

大淀「……」ギュ

提督「……まあ、たまにゃあいいか」

大淀「……」

大淀(……どうしよう)ミミマデマッカ

大淀(感極まって提督に抱き着いて泣いたのは終わったことだから仕方ないとして)

大淀(恥ずかしくて顔が見せられない……)ギュウ

提督「……俺は、大淀に頼りすぎてたか?」

大淀「えっ」ミアゲ

提督「いや、俺が休まないから、大淀も休ませられなかったのが悪かったのかと思ってな」

提督「そもそも俺がこんなんだしな。気が休まらないのは良くねえ」

大淀「え、あの」

提督「とりあえず、今日の業務はこれまでにしとくか。その顔、見られたくないだろ」

大淀「……!」カァァ

提督「どうする? 部屋まで送ってくか?」

大淀「し……しばらく、執務室に引き籠らせてください」カオマッカ

提督「お、おう」

867 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:28:31.83 ID:BuX++sWso

 * 夕方 執務室 *

 RRRR... RRRR...

提督「……」

通信『はい、中佐鎮守府です』

提督「××島鎮守府からの定時連絡だ。こちらは提督准尉……赤城はまだいないのか?」

通信『ええ。私は航空母艦、加賀です。あなたが不知火を中将のところへ着任させたひとね?』

通信『彼女に居場所と役目を与えてくれたこと、感謝しているわ』

提督「大したことはしてねえよ。俺は……」

通信『……どうしたの』

提督「いや、なんでもない」

通信『?』

提督「とりあえずだ、今日あったことの連絡を……」

通信『……中佐なら、まだ戻ってきていません。それから私も、あの男のことは良く思っていないから、警戒しないで』

提督「!」
868 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:29:17.80 ID:BuX++sWso

通信『急に口調が変わったから、私を警戒しているのだと思ったのだけれど。違ったかしら』

提督「……」

通信『あの男のせいで、赤城さんはいつも険しい顔をしているの』

通信『赤城さんは赤城さんで、私たちに厄介事が飛び火しないよう、私たちを遠ざけているし……』

提督「まあ……確かにな。ちょっと行き過ぎてるときもあるな」

通信『……あなたも、そう思うのね』

通信『それで、今日も無茶というか……ちょっとした揉め事があって』

提督「揉め事?」

通信『ええ。もし、私たち艦娘に、戦うなという人たちが現れたら、あなたはどうしますか』

提督「そりゃあれか、メディアの馬鹿どもか」

通信『……テレビ局の人たちであることは違いないわね』

通信『彼らからは、深海棲艦と話し合いができないか、女性が戦うことに異論はないのか……そういう質問が飛んできたの』

通信『その会見の席には、J少将という方が中佐と同席していたのだけれど、彼が、なぜ艦娘が戦っているのかを説明していたわ』

通信『例えば、深海棲艦には現代兵器が決定的な打撃にならず、海自や海保では太刀打ちできないこととか』

通信『自分たちの力が及ばず、艦娘に頼らないと国を守ることすら叶わないのが、悔しくて仕方がないとも語っていたわ』

提督「……」
869 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:30:01.07 ID:BuX++sWso

通信『それでも文句を言う人がいて。私たちは後ろに控えて話を聞くだけだったのだけれど、赤城さんが……』

提督「……どうしたんだ?」

通信『その文句を言う人の前まで歩いて、自分の弓を差し出して、こう言ったの』


  『私たちの存在意義は、この国の人命と財産を守ること。深海棲艦との戦争を終わらせることです』

  『私たちに戦うなというのなら、この弓を取り上げて、この場で折ってください』

  『私たちの代わりに、この国の人命と財産を、あなたがたが守ってみせてください』

  『あなたは、あの空母棲姫とも、話し合えば戦争を終わらせられるとお考えなのでしょう?』


提督「……」

通信『空母棲姫との戦闘を見た後だったからでしょうね。さすがにその人も狼狽えていたわ』

通信『そのあと、赤城さんはJ少将に下がるよう言われて、私たちも会場を後にしたのだけれど……』

通信『赤城さんは全く表情を変えなかったの。会見の最中も、その前も……その後も』

通信『もしかしたら、テレビ局の人が狼狽えていたのは、質問の内容じゃなくて、赤城さん自身だったのかも……』
870 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:30:51.62 ID:BuX++sWso

提督「お前も怖いと思ったのか?」

通信『赤城さんの覚悟は重いわ。私たちを寄せ付けないくらいに』

提督「ふん。だが、確かに艦娘たちにとっちゃあ、そいつの発言は面白くねえよな。外野の分際でうるせえって話だ」

提督「どの辺が赤城の逆鱗かは知らねえが、それに近いことを言えば、そうなってもしょうがねえ」

通信『……』

提督「てぇことはなんだ、赤城は居残りでお説教か?」

通信『いいえ、単純に秘書艦だから中佐の付き添いよ』

通信『J少将からは言い過ぎだとお叱りを受けたけれど、無知で無粋なマスコミに冷や水を浴びせたことには、溜飲が下りたとも言われたわ』

提督「……ふん、ちったあまともな奴も少しはいるもんだな。中佐とつるんでる時点で、どれほどのもんかはわからねえが」

通信『そうね……』

提督「そうすると、赤城が戻るのは夜か。明日には話ができるか?」

通信『ええ。ただ……』

提督「ただ?」
871 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:31:52.88 ID:BuX++sWso

通信『あまり赤城さんに無理難題を押し付けないでくれるかしら』

通信『これ以上、迷惑も苦労もかけたくありませんから』

提督「無理、ねぇ……そうか。それじゃ、今後は軽い雑談程度の報告にさせてもらうか」

通信『……』

提督「まだ何かあんのか?」

通信『いいえ。赤城さんとは、雑談も満足にできていないことを思い出したから』

通信『あなたが少し、妬ましく思っただけよ』

提督「……」

通信『……』

提督(どうしろっつうんだよ、面倒臭え……)

通信『悪かったわね、面倒臭い女で。自覚してるのよ、これでも』ハァ

提督「……」

872 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/11/27(水) 01:32:25.69 ID:BuX++sWso
今回はここまで。
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/11(水) 09:43:47.55 ID:50i5OocZo
待ってます
874 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:43:28.16 ID:dy6IoZCVo
続きです。
875 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:44:30.97 ID:dy6IoZCVo

 * 翌日 執務室 *

吹雪「そういえば、司令官はいつお休みしてるんですか?」

提督「休み?」

吹雪「そうです。私、提督が一日お休みしてるとこ、見たことありませんよ?」

提督「つってもなあ……休んだって、別段何もすることがねえんだよな。気分転換なんて日頃からやってるようなもんだし……」

吹雪「その言い方だと、司令官が普段からさぼってるって言ってるみたいになりますよ」

提督「まあ、その通りだろ。普段から最低限のことしかしてねえし、深海棲艦を積極的に倒そうとも思ってねえし」

吹雪「でも、書類とか点検とか、司令官はきっちりしてますよね。普段から面倒臭い面倒臭いって口癖のように言ってるくせに」

提督「後から間違ってたから直せって言われるほうが面倒だ。大淀にも余計な手間かけさせるじゃねえか」

吹雪「司令官って、ほんっとーに、ああ言えばこう言いますよね……」

大淀「……ぷっ、くすくす」

吹雪「! お、大淀さん? な、なんで笑うんですか!」

大淀「いえ、いつの間にか、提督のお話になっていたものだから、つい……」
876 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:45:16.89 ID:dy6IoZCVo

提督「もともと大淀の休みをどうするかって話だったんじゃねえか。なんで俺の話に逸れるんだよ」

吹雪「そ、そんなつもりはないですよ!?」

提督「そうか? まあいいや……それで、大淀は本当に大丈夫なのか? 今の勤務体制のままで」

大淀「はい、もともとこの島の仕事量もそれほど多いわけではありませんので、自由になる時間もいただいてます」ニコ

大淀「提督の仰る通り、仮に一日丸ごとお休みをいただいても、それはそれで暇を持て余してしまいますから」

提督「……そもそも娯楽が限られてるからなあ。近くに気晴らしできる施設でもありゃあいいんだがな」

吹雪「司令官はどんな施設があったらいいって思ってるんですか?」

提督「うん? 俺は別に……って、だからなんで俺の話になってんだよ」

大淀「っく、ぷくく……」プルプル

吹雪「お、大淀さん、笑いすぎですよぉ!」

大淀「す、すみません……ふふふ……」

提督「やれやれ……で、今日の予定はどうなんだっけか? 命令違反の連中が来るのって何時ごろだ?」

吹雪「え? ええっと……マルキュウサンマルですね!」

提督「じゃあ、そのころまでに準備してお出迎えってか」
877 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:46:46.31 ID:dy6IoZCVo

大淀「はい、金剛型の皆さんに大和さんも協力して、お茶と菓子を用意すると言っていました」

提督「そうか。ちったあ暗い雰囲気をなんとかできるといいな」

吹雪「……」

提督「どうした?」

吹雪「艦娘が背きたくなるような命令を出す人が、多すぎますよね……」

大淀「吹雪さんも、捨て艦にされたと聞いていますが……」

吹雪「私を捨て艦にした前の提督は、それこそ苦渋の決断だったと記憶しています」

吹雪「重要な戦闘を前に私が大破したんですけど、危険を承知で進軍すると……私に、どうにか逃げて耐えてほしい、と」

吹雪「結局、私はその期待に応えられなくて……」

提督「一見美談に聞こえるが、力不足の艦娘を無理矢理強行させたわけだからな。そいつの肩は持ちたかねえ」

吹雪「……」シュン

提督「が、これから来る奴らに比べりゃあ、マシというか、まともな神経してると思うぜ」

大淀「……そうですね。あまりに更迭された理由が我儘すぎて……」
878 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:47:30.80 ID:dy6IoZCVo

 * 埠頭 *

 輸送船<ザァァァ…

提督「来たみてーだな」

吹雪「……あれ? あれってもしかして……」

 ザッ

吹雪改二「……初めまして、提督准尉。私は止提督鎮守府所属、吹雪です」ケイレイ

吹雪「……!」

提督「ご苦労さん、俺が提督だ。お前は吹雪の……改装艦か」

吹雪改二「はい。特型駆逐艦、吹雪の第二改装です」

吹雪「うわぁ……格好いい! 私もあんな風になれるんですね!」

提督「はしゃぐな。それより、命令違反した艦娘を連れてきたって聞いてるが」

吹雪改二「はい。今、連れてまいります」クルッ

879 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:48:15.92 ID:dy6IoZCVo

吹雪「司令官! 私も頑張って第二改装になりますね!」

提督「その話はあとでな。へらへらしていい時間じゃねえぞ」

吹雪「す、すみません!」ビシッ


吹雪改二「お待たせいたしました。こちらをお受け取りください、移籍手続きの書類と、手錠の鍵です」ジャラ

提督「……手錠ねえ」ス

「ってえな! 押すんじゃねえよ!」

吹雪「!」ビク

摩耶「こんなもんで拘束しておいて急かしやがって! 危ねえだろうがよ!」

霧島「摩耶。慎みなさい」

摩耶「ち……わかってますよ、霧島さん」

川内「うーん、すごいところに流されたねえ、私たち」キョロキョロ

若葉「……」

880 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:50:00.77 ID:dy6IoZCVo

吹雪改二「こちらの四名……戦艦霧島、重巡洋艦摩耶、軽巡洋艦川内、駆逐艦若葉が、貴艦隊所属になります」

提督「ふーん……」

摩耶「……ああ? 何見てんだよ、くそが!」ギロリ

提督「ああ? うっせーぞ、くそが」ジロリ

摩耶「んなっ!? て、てめえやんのか、おいっ!?」

霧島「やめなさい摩耶!」

摩耶「……っ!」

提督「……」

霧島「あなたが提督准尉ですね。ご無礼をお許しください」ペコリ

提督「気にすんな。あんな理由で連れてこられたんじゃ喧嘩も売りたくなるし、隙を窺いたくもなる」ニヤ

霧島「!?」ハッ

提督「お前の目にも、ちょっと殺気が宿ってたからな。お前も気に入らねえんだろ? いろいろとな」クックックッ

霧島「……」
881 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:51:30.89 ID:dy6IoZCVo

吹雪改二「……提督准尉、大丈夫なんですか?」

提督「何がだ?」

吹雪改二「この場を……この人たちを任せていいか、という意味です」

吹雪改二「そこにいる『私』では、頼りないと思いますが?」

吹雪「っ!」

提督「心配いらねえよ。うちの吹雪だって、そこまで心配になるタマじゃねえし……」チラッ

<提督ー!

提督「ほれ、応援も呼んでる」ユビサシ

龍驤「お待たせやー!」

神通「遅くなって申し訳ありません」

雲龍「待たせてしまったみたいね。ごめんなさい」
882 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:52:30.66 ID:dy6IoZCVo

三隈「……どうして私もなんでしょう……?」

陸奥「ずっと工廠に籠りっぱなしは不健康だからでしょ」

提督「龍驤、こいつ預かっといてくれ」ジャラッ

龍驤「うん? もしかして……手錠かけられてるん?」

提督「そういうこった」

龍驤「ほほーん……ま、ええわ。うちらに任しといてや!」ムネポーン

提督「ああ、頼むぜ」

陸奥「あなたたちがこの島に配属になった人たちね。案内するわ」ニコ

霧島「……はい」

摩耶「……霧島さん、このくらいの相手なら……」ヒソッ

龍驤「おお、なんか怖いこと考えてるん?」

摩耶「っ!」

雲龍「あなた、高雄型の摩耶ね。対空装備が充実してるって噂の」

龍驤「お出迎えが空母に航空巡洋艦やからなあ。一矢報いるつもりかもしれんねえ」
883 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:53:16.07 ID:dy6IoZCVo

龍驤「まあ、あんまり気張らんでええよ? うちらも似たようなもんやったからね!」ニパー

三隈「……まあ! 皆さん、そういうことですの?」

若葉「! もしや……その口振りだと、三隈さんもなのか」

陸奥「そうね……というか、やったことなら三隈が一番すごいんじゃないかしら」

霧島「え……?」

摩耶「……つまり、あたしたちと同じような連中のたまり場ってことか?」

龍驤「雲龍はちょっとちゃうけど、そんなとこやねぇ」

摩耶「……」

龍驤「そういえば神通はどんな理由やったんやっけ?」

神通「私も、厄介払いされたんです」ニコ

龍驤「なんや、訳ありそうな笑顔やなあ」

神通「ええ、正直に言えば、あまり語りたくはありませんね」フフッ

川内「……」
884 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:54:01.06 ID:dy6IoZCVo

 *

提督「サインはこれでいいんだな?」

吹雪改二「……はい。確かに」

提督「さて、俺たちも行くか。んじゃ……」

吹雪改二「提督准尉、少しお時間をいただけますか? いくつか、あなたに質問があります」

提督「ん?」

吹雪改二「……そちらの、秘書艦の吹雪にも」ジロリ

吹雪「……!」ビク

提督「おいおい、尋常じゃねえ目しやがって。何のつもりだ?」

吹雪改二「……提督准尉は」


吹雪改二「S提督を、御存知ですか」


提督「!」

吹雪「!!」
885 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:55:01.01 ID:dy6IoZCVo

吹雪改二「今の反応……やっぱり、そうなんですね」

吹雪「し、司令官!? S提督って……いったい何があったんですか……?」

提督「本営から回ってきた軍の新聞で見たが、S提督は退役したんだよな?」

吹雪「え……?」

提督「ったく、どうしてこう人が身構えてもいねえときに……不意を衝いてそういう話ぶっこんで来んなよな、くそが」ハァ

吹雪「あの、司令官……? S提督が退役したって……」

提督「で? その話を俺とうちの吹雪にするってことは、お前はS提督の関係者か?」

吹雪改二「……おまえの……」

吹雪「っ!」ゾク

吹雪改二「おまえのせいで、司令官は……!!」ギロッ

吹雪「わ、わたしの、せい……!?」
886 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:56:30.74 ID:dy6IoZCVo

提督「どういうことだよ。おい、説明しろ」

吹雪改二「……わかりました」ス…

吹雪改二「S提督は、お優しい方でした」

吹雪改二「そのS提督が、作戦成功のため、たった1度だけ、無理な進軍をして、沈めてしまった艦娘がいます」

提督「……吹雪のことだな?」チラッ

吹雪改二「そうです。その作戦を執って成功を収めたS提督はやがて自己嫌悪に陥り、廃人寸前にまで陥ったと聞いています」

吹雪改二「事態を重く見たそのS提督の艦娘は、何度か建造を試みて、私を建造したんです……!」

吹雪改二「私は、S提督にとても可愛がっていただきました。私も、それに応えようと、努力して艦隊の主力にまでなったんです。なのに……!!」

吹雪改二「S提督は……お辞めになったんです……! 私を……『吹雪』を沈めた罪は消えないと言って……!!」

吹雪改二「私が頑張ってる姿を見るのがつらいって! 私を見ると、沈めてしまった吹雪に申し訳が立たないって!!」

吹雪改二「司令官は……S提督は、『私』を見てなんかなかった。私の努力も、私の顔も、見てなかった……」

吹雪改二「私を通して……沈んで、過去になったはずの……お前しか見てなかったんだ……!!」ギロリ

吹雪「……っ!!」
887 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:57:30.58 ID:dy6IoZCVo

吹雪改二「どうして!? どうして、沈んだお前にしか、S提督は目を向けてくれなかったの!?」

吹雪改二「近くにいるのは私なのに! 私が吹雪なのに!! 頑張ったのは私なのに!」

吹雪改二「司令官を……S提督を好きなのは、この私なのに!! S提督が見ているのは、この私なのにっ!!」

吹雪改二「どうして……どうして私は、身代わりでしかないの……!?」ブワッ

吹雪「……」

提督「……」

吹雪改二「……今の司令官……止提督からは、ここは、いらない艦娘が集められる島だと聞いていました」

吹雪改二「けれど、よくよく調べてみれば、轟沈した艦娘が流れ着く島だって……」

吹雪改二「もしかしたら……S提督が沈めてしまった、『私』がいるかもしれないって……」

提督「それで、わざわざ出向いて探しに来た、ってか?」

吹雪改二「……まさか、こんなにあっさり、見つかるなんて、思っていませんでしたよ」ニヘラ

吹雪改二「それも、何も知らないで、幸せそうににこにこしてて……」プルプル

吹雪「そ、それは……」
888 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:58:16.86 ID:dy6IoZCVo

提督「知らないも何も、吹雪にはS提督のことなんざ何も知らせてねえんだ。知らなくて当然だろうが」

吹雪「司令官……!?」

吹雪改二「……許せない」ジロッ

提督「……!」

吹雪改二「S提督は、ずっと苦しんでいたのに……」

吹雪改二「S提督は、ずっとお前のことを気にしていたのに……」

吹雪改二「S提督の気も知らないで、のうのうと笑っていられる『私』がいるなんて」ジャキッ

吹雪「!」ジリッ

提督「吹雪、下がってろ」

吹雪改二「S提督を苦しめる、悪い吹雪は……ここで、消えてしまえばいいんだ……っ!!」

提督「言いたいことは言い終わったか?」ガシッ

吹雪改二「っ!? ……な、なにこの馬鹿力! は、放して……!」グイ

吹雪「司令官!? そんな風に真正面から連装砲を掴んじゃ危ないですよ!!」
889 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 17:59:15.23 ID:dy6IoZCVo

提督「ああ? 何言ってんだ、こうしねえとお前が撃たれるだろ」

吹雪改二「……い、いいから放して! そこをどいて! 私の邪魔をしないでっ!!」グイッ

提督「勝手なことばかりぴーぴー言いやがって……こっちも言いたいこと言わせてもらうぜ」メキッ

吹雪改二「!?」ビクッ

提督「S提督がうちの吹雪のことを考えてた? だから何だ! 考えてるだけでうちの吹雪が幸せになるわけねえだろうが!」

提督「お前が身代わりだ? それの何が悪い! S提督に可愛がってもらってたのは、うちの吹雪じゃなくて、間違いなくお前だろ!」

吹雪「……司令官……」

提督「お前こそうちの吹雪がどれだけ悲しんでどれだけ泣いたか!」

提督「知りもしねえのに自分のことばっかぎゃあぎゃあ喚きやがって! ああうざってぇ!!」

吹雪改二「う、うざ……っ!」

提督「捨てられたのはこっちの吹雪も同じなんだよ! それも、お前のように育ててもらうこともないうちにな!」

提督「第一、身代わりが不服なら、そう訴えろよ! お前が建造された時にも文句を言えただろうが!」
890 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 18:00:32.29 ID:dy6IoZCVo

提督「S提督もS提督だ! 吹雪を沈めたのも手前の決断した結果じゃねえか! 沈めるのが嫌なら撤退する決断もあっただろうがよ!」

提督「そんな女々しい奴が戦争やっていけんのか! どのみちどこかで挫折して逃げ出すのも、ある意味目に見えてたんじゃねえのかよ!」

吹雪改二「……っ!! し、司令官を悪く言うなっ!!」

提督「なんで庇うんだよ! S提督ってやつは、ここまで慕ってる艦娘を見捨てて、自分の都合で逃げ出したんじゃねえか!」

提督「沈んだ吹雪の面影を別のやつに重ねて、まともにそいつを見ようとしねえ! そのくせ成長したら見るのがつらいだ!? ふざけんな!」

提督「こっちの吹雪も! お前も! 結局はS提督の気分のいいように利用されただけじゃねえか!!」

吹雪改二「そんなことない……そんなことないっ!!」ブワッ

提督「意識していようがいまいが、結果的には同じだろうが!」

提督「一度目は、最初の吹雪を捨て艦で沈めて! 二度目はお前を見捨てて!」

提督「三度目は、お前にうちの吹雪を殺させようとした!!」

吹雪改二「そ、ん……!」

提督「S提督は、吹雪を3回も殺してるのと同じようなもんじゃねえか!」
891 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 18:01:15.96 ID:dy6IoZCVo

吹雪改二「そんなこと……そんなことない……!」フラ…ヘタッ

提督「お前は、そんな奴をまだ信じてんのかよ!!」

吹雪改二「S提督は……そんなことぉ……」グス…

吹雪「し、司令官、さすがに言いすぎですよぉ……」

提督「あ? お前までS提督のことを庇うのか?」

吹雪「い、いえ、そうじゃなくて、そっちの私にです……なにもこんなに泣かさなくてもいいじゃないですか」

吹雪改二「う、うううぅ……えぐ、えぐ」ボロボロ

提督「……ったく、しょうがねえな……」

吹雪「ええっと、私、ティッシュ持ってきます!」タッ

提督「……」

吹雪改二「ぐすっ、ぐすっ」

提督「……おい、お前」シャガミ

吹雪改二「……?」
892 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 18:02:16.35 ID:dy6IoZCVo

提督「今は止提督の下で働いてるんだったな?」

吹雪改二「……」コク

提督「やっていけてるのか?」

吹雪改二「……?」キョトン

提督「あー……あの止提督の下でこれからも働いていけるか、って訊いてんだ」

吹雪改二「……あう……」ウルッ

提督「なんだよ、いきなり気弱になるなよ……やりづれえ」

吹雪改二「……」シュン

提督「……吹雪、お前は止提督とS提督とどっちがいいんだよ」

吹雪改二「……そ、それは……」

提督「この場には俺とお前だけだからな。本音をぶちまけてみろ」

吹雪改二「わ、私は……S提督のほうが、いい、です」

提督「そのS提督には、お前の言いたいことはちゃんと言ったか?」

吹雪改二「……」フルフル
893 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 18:03:31.73 ID:dy6IoZCVo

提督「だったらちゃんと言ったほうがいいぞ。S提督がお前を見てないなら、ちゃんと見ろって言ってこい」

吹雪改二「で、でも……」

提督「やめたとしても関係ねえよ。お前はS提督にちゃんと向き合ったのか? 今までのお礼なり思いなり、ちゃんと伝えたか?」

吹雪改二「……」

提督「S提督に未練があるんだろう? 取り合ってもらえなかったと思ってるから、うちの吹雪に矛先を向けたんだろう?」

提督「うちの吹雪に当たることはできるのに、S提督に当たりには行けないのか?」

吹雪改二「……」ウツムキ

吹雪「あのう……知ってたら、ですけど、S提督は、今どこに行ったんでしょう?」ヒョコッ

提督「!」

吹雪改二「……」

吹雪「私は、轟沈しちゃったから、この鎮守府から離れられないけど……一言だけ、言っておきたいかな……」

提督「一言? 何だ?」

吹雪「もし伝えられるなら……私は元気だから、未練があるなら、早く忘れて欲しい、って伝えてほしいです」

提督「お前……いいのか?」
894 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 18:05:30.69 ID:dy6IoZCVo

吹雪「私が頑張ってるってことを認めてほしかったんだけど、それがS提督にとって嫌な思い出なら、その方がいいなって」

吹雪「それに、S提督には、こっちの吹雪がいますし!」ニコ

吹雪改二「……!」

吹雪「私より後に着任したのに、短い期間で第二改装までできたんだから、その頑張りはきっとS提督にも届いていたはずです!」

提督「なるほど……『認められた』からこその第二改装、か」

吹雪改二「……あ……う……!」ポロポロポロ

吹雪「ああ、泣かないで!」ティッシュサシダシ

提督「箱がらみ持ってきたのかよ……」

吹雪「提督が泣かせすぎるからですよ!」プンスカ!

吹雪改二「ううっ、ぐず……ぢーん!」ズビー

895 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 18:07:00.70 ID:dy6IoZCVo

 *

提督「少し休んでから戻っても良かったのにな。泣き腫らした顔で戻ったら向こうも驚くだろ」

吹雪「……きっと、早くS提督を探しに行きたいんですよ、あっちの吹雪ちゃんは」

提督「そうか。それにしてもまあ、こっちの吹雪も成長したもんだ、自分に殺意を向けた相手にあれだけ優しくできるとはな」

吹雪「……」

提督「どうした?」

吹雪「ごめんなさい司令官……私、そんないい子じゃありません」

提督「?」

吹雪「S提督が、私のことを忘れられなかったって聞いたとき……私、喜んじゃったんです」

吹雪「あっちの吹雪に、勝ったって……心の中で思っちゃったんです」ウルッ

吹雪「最低ですよね……私より努力した相手が、私のことを嫉妬してたことに、優越感を持ったっていうか……いい気になっちゃって」

吹雪「ひどいですよね、私……」グスン

提督「……まあ、思うくらいはいいんじゃねえか」ナデ

吹雪「……」
896 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 18:08:15.69 ID:dy6IoZCVo

提督「この島に着任した時だって、S提督に認めてもらうって目標作ったもんな。忘れられてなかったのを嬉しいと思うのはしょうがねえ」

提督「俺が吹雪にS提督の辞職を伝えなかったのも、それを知ったお前が自棄を起こさないか心配だったからだし……」

吹雪「司令官……!」パァ

提督「誰かに強く思われてることが嬉しいってのも、最近なんとなくわかってきた気がすんぜ……」ハァ

吹雪「! ど、どうしてそこでため息なんかつくんですか!」

提督「……深い意味はねえよ。なんか、お前とのやり取り思い出して、恥ずかしくなっただけだ」

吹雪「は、恥ずかしいって、そんなあ!」

提督「あんなお前みたいな青臭い台詞吐いて……普通なら俺が言うなってツッコミ入るよなあ」

吹雪「そんなことありません! 司令官だって苦労されてるんですから!」

提督「それに、俺はまだ最悪の事態を想定してるからな。俺がいきなり死んでも、悲しまないようにしたいんだが……」

吹雪「んなっ!? まだそんなこと言ってるんですか!!」

提督「それにしても、あれだな。吹雪は、どこの吹雪でも泣き虫だってことはわかった」

吹雪「もーおーー! 話を逸らさないでください! しれーーーかーーーん!!」プンスカ!
897 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 18:09:30.78 ID:dy6IoZCVo

朧「提督。まだそういうことを言ってるんですか」ジト

扶桑「まあ。人をあれだけ煽っておいて、ご自身がそうでは示しがつきませんね」フフッ

吹雪「ふえっ!?」ビクッ

提督「……お前ら、いつから話を聞いてた? 結構前から視線を感じてたんだが」

扶桑「気付いてらしたんですか」

朧「えーと、あっちの吹雪が不穏な空気を出したころからです」

吹雪「それ、ほぼ最初からじゃない!?」

朧「龍驤さんたちが新しく来た人を迎えに行くって騒いでたので」

扶桑「ちょっと野次馬根性が働いてしまいました」ニッコリ

提督「いい笑顔しやがって……」

朧「それで、あの吹雪はいったい何の用だったんですか?」

提督「あいつは、S提督の……吹雪を捨て艦にした提督のところにいたんだとよ」

朧「え!?」
898 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/12/14(土) 18:10:16.22 ID:dy6IoZCVo

提督「で、吹雪に一言物申す、って感じで……まあ、その話はあとだ。あの4人は食堂に案内したんだよな?」

扶桑「ええ、そのはずです」

提督「思わぬところで時間食っちまった。俺も急いで食堂に向かうが、吹雪は大丈夫か?」

吹雪「は、はい!」

 タタタ…

朧「……扶桑さん?」

扶桑「なぁに?」

朧「さっき、吹雪が提督たちに向かって連装砲を構えたとき、全砲門……」

扶桑「……ええ、撃てる状態にしてたわ」ニコ

朧「……」ウヘァ

扶桑「大人げなかったかしら」フフッ

朧「どうなるかと思いましたよ……」ハァ

扶桑「そういうあなたも、提督があの子の連装砲を掴んだ時に、目の色を変えてたみたいだけれど」

朧「提督のああいうところ、朧は嫌いなんですけど」

扶桑「放っておけないのね?」

朧「……まあ、そうですね。お世話になってますから」
899 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2019/12/14(土) 18:11:46.24 ID:dy6IoZCVo
というわけで今回はここまで。
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/14(土) 18:20:50.20 ID:RNpXk2G50
更新乙です
扶桑さんが古女房感
901 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/15(日) 05:56:46.61 ID:Hr79ZqJV0
何か色々とクリティカルに刺さる回だった
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/09(木) 03:21:59.82 ID:IKJBQYEN0
あけおめ&ほしゅ
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/15(水) 22:58:03.62 ID:aYMZNDfS0
あけおめ
これめっちゃ好きだわ
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/16(木) 10:15:06.33 ID:Cw/Grrq60
あけおめ。続き待ってますね
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/18(土) 20:51:31.93 ID:Nk9CJMFAO
乙でした。
906 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/01/20(月) 00:06:30.95 ID:B4/8xNuCo
遅れ馳せながら、今年もよろしくお願い致します。

そして大変お待たせしました。続きです。
907 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/01/20(月) 00:07:16.61 ID:B4/8xNuCo

 * 食堂 *

金剛「Welcome to our fleet ! キーリシマーー!!」ダキツキー

霧島「こ、金剛お姉様!?」ダキツカレー

比叡「霧島ずるい! 金剛お姉様、私にもハグプリーズです!!」バッチコイ!

榛名「比叡お姉様!?」

若葉「……随分熱烈な歓迎だな」

龍驤「金剛型は仲が良えからなあ」

那珂「川内ちゃーん!」フリフリ

川内「あぁ、那珂もいたんだ」

那珂「せっかくだから、那珂ちゃんも川内ちゃんをハグしよっか?」

川内「いいって、そういうガラじゃないし」

那珂「そーぉ?」

川内「そうそう。今回の異動の理由も誉められた話じゃないしさ」

摩耶「っつうか、異動の理由そのものも納得いかねえけどな……!」
908 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/01/20(月) 00:08:01.34 ID:B4/8xNuCo

長門「その理由が4人とも命令違反と聞いていたが?」

摩耶「そっちの二人はよく知らねえけど、あたしたちはそうさ。あたしと霧島さんは、特攻しろなんて命令出されたからな」

金剛「What's !?」クワッ

比叡「はぁ!?」クワッ

榛名「どういうことですか!」クワッ

摩耶「どうって、その通りだよ。この前、空母棲姫との戦闘があったの知ってるだろ? そいつが目の敵にしてたのが、とある雪風らしくてさ」

摩耶「そいつが沈められると空母棲姫が逃げるかもしれないから、絶対に雪風を守れって指示があったんだよ」

摩耶「そのせいで……雪風を編成に入れてた艦隊は、雪風以外全員沈んじまったんだ……!」

由良「……」

摩耶「雪風が一人取り残されて、今度はあたしたちに雪風の盾になれって指示が飛んできて……」

摩耶「あたしたちは死んでもいいから、雪風だけは守れってさ。ふざけんなって話だよ」

榛名「それ……本当なの!?」

霧島「ええ、本当です。榛名お姉様」

榛名「……」
909 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/01/20(月) 00:08:46.36 ID:B4/8xNuCo

霧島「私たちが所属していたC提督の艦隊は、私と摩耶、それから駆逐艦たちの4人で作戦に参加していました」

霧島「当初、私たちは敵空母艦隊の艦載機から護衛対象……雪風を守ることを作戦目標としていたんです」

霧島「しかし、相手が空母棲姫だとは誰も知らされておらず、私も、情けないことに冷静な対応ができず……!」

摩耶「それでも最初は良かったんだ。ひたすら艦載機を墜として、敵戦力を削っていくしか、あたしたちにはできなかったけどさ」

霧島「駆逐艦の子たちの練度が低かったから大変だったけど、そんな中でも、摩耶は対空砲火のレクチャーをしてくれました」

霧島「慣れない戦い方でありながら、誰も沈まず私たちが最後まで戦い抜けたのは、摩耶のおかげです」

摩耶「何言ってんだよ、霧島さんの一撃がなきゃ、あたしたちは今頃沈んでたんだぜ!?」

霧島「でも、そのせいでみんな散り散りに……」

長門「? そのせい、というのはどういう意味だ」

摩耶「命令はもう一つあって、あたしたちには空母棲姫に直接攻撃するなって指示が出てたんだよ」

長門「それは、空母棲姫に気付かれるな、という意味か?」

摩耶「最初はあたしたちもそう思ったんだけどよ……多分、うちのC提督は、中佐の艦隊に手柄を取らせようとしたんだと思う」

神通「!」
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