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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」
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778 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:29:59.13 ID:OT7OSUtjo
マッ鎮とのコラボはおもしろそうだと思うけど筋肉はノーサンキュー
あっちは加入した艦娘を徹底的に鍛えてるけど
こっちは加入した艦娘を徹底的に甘やかしてるから
練度フィジカル差がガバガバで対抗できる艦娘が皆無よ?
あとル級が泣く。絶対泣かされる
潮と初雪あたりもいろんな意味で怖くて泣き出すと思う
魔神様覚醒後ならワンチャンあるかもしれないけどマッスルさんはイビルシュートすら耐えそうなんだよなあ
長々書いたけどいち読者としてあちらの話も期待してます
以上独り言終わり
続きです。
779 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:30:45.60 ID:OT7OSUtjo
* 埠頭 *
仁提督「なに、そう難しい話ではない。練度の高い駆逐艦を6隻、こちらに差し出せば良いのだ」
提督「断る」
仁提督「おい!?」
提督「話は済んだな。帰れ」クルリ
仁提督「」ピキキッ
霞「10秒で済んだわね」
初春「にべもないのう」
提督「話すだけ時間の無駄だ」
霞「まあ、同意するけど」
仁提督「待たんかあああ!」
提督「だから嫌だっつってんだろうが、面倒臭え」
780 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:31:30.70 ID:OT7OSUtjo
仁提督「貴様、准尉のくせに上官に対していその口の利き方はなんだ!」
提督「ふん、てめえこそ、それが人に恵んでもらう態度か? 物乞いの分際で」
仁提督「物乞い……っ!」
提督「物乞いじゃなきゃ人攫いだ。うちの駆逐艦、無断で連れて行くとか言ってたのはどこのどいつだ? 憲兵に言うぞ?」
仁提督「だ、誰もそんなことは言っていない!」
提督「そうか。だったら帰れ、俺はお前なんかに身内を差し出すような真似はしねえ」
仁提督「ぐぬぬ……下士官のくせに口の減らない男だ!」
「テートクー!」
提督「!」
金剛「テートクのために、応援を呼んできまシタヨー!」
榛名「榛名もお手伝いいたします!」
扶桑「私たちも、提督のお役に立てることがありましたらお手伝いさせていただきます」
山城「……まあ、どのくらいお手伝いできるかわかりませんけど」
781 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:32:18.70 ID:OT7OSUtjo
提督「戦艦勢揃いか……大袈裟だな」
比叡「お相手さんが戦艦6隻揃えてきたということでしたから!」
陸奥「それに出撃も制限中だったでしょう? 暇だから必然的にみんな来ちゃったの」
提督「そういやそうだったな……」
仁金剛「オーゥ、あちらには私たちもいるみたいデース」
仁比叡「あ、でも霧島はいないみたいですよ、金剛お姉様」
仁提督「ぐぬぬ……辺境とはいえ、戦力は揃えておるのか」
長門「ふむ……あちらには私や陸奥もいるのか」スタスタ
潮「! 長門さん!」ダッ
電「長門さんなのです!」ヒシッ
初春「おお、長門が来たか!」
長門「? どうしたんだ?」
782 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:33:00.96 ID:OT7OSUtjo
電「あっちの長門さんに追いかけられたのです!」ダキツキ
潮「目が血走ってて、すっごく怖かったんです……!」ウルウル
初春「うむうむ、やはりこちらの長門は安心するのう」スリスリ
長門「そうか、私がいない間に怖がらせて、悪いことをしたな」
敷波「長門さんは悪くないんだから謝ることないよー」
仁長門「……うぐううう!」ギリギリギリ
仁比叡「ひえっ……」
仁霧島「血涙を流すほど悔しいんですか……」
仁榛名「駆逐艦欠乏症だとか仰ってましたから……」
仁陸奥「なによそれ……」アタマカカエ
仁提督「……! あ、あれは!」
仁金剛「? どうしマシタ……!?」
783 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:33:45.68 ID:OT7OSUtjo
大和「それにしても、駆逐艦を狙うなんて、酷いことをなさいますね」
仁金剛「大和!?」
提督「まあな。とりあえずお前らが揃って来てくれたのはありがたいが、連中との話は終わったぞ」
大和「そうなんですか?」
提督「あいつ、あの白露たちのもと司令官だ。海域の攻略に行き詰まって、うちの駆逐艦を寄越せと言ってきやがった」
全員「「……!」」
提督「その話もさくっと断ったからな。もう持ち場に戻っていいぞ」
仁提督「待て待て待て! なぜ貴様が大和を連れているんだ!」
提督「……またかよ」ハァ
仁提督「こんなところで大和を寝かせておく気か! おい大和! うちの鎮守府なら、何度でも出撃させてやるぞ!」ズカズカズカ
仁提督「こんな貧乏くさい鎮守府なんかおさらばして、うちに来るんだ!」テヲノバシ
大和「……あぁ?」ギロリ
仁提督「」ビクッ
長門「……つくづく提督そっくりだな」
比叡「ほんっと、似てますねー……」
784 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:34:30.21 ID:OT7OSUtjo
大和「どこのどなたか存じませんが……あなたも、この大和を所望なさるんですか?」
仁提督「お前がいればどんな海域も怖くはない! 我が艦隊の破竹の勢いは誰にも……」
大和「度胸と勢いだけですか。考えなしの未熟者に命を預ける気は毛頭ありません」プイッ
仁提督「な……っ!」
大和「この鎮守府の提督准尉は思慮深く、そして各々の幸せを熟慮した指揮を執っておられます」
大和「あなたのような、艦娘をただの駒にしか見ていない輩とは違うのです」
仁提督「こんな男が……こんな口も態度も目つきも悪いこの青二才がか!」
大和「提督? この方は、提督の実力を侮っておいてのようですね。ここは私たちにお任せできないでしょうか?」
提督「任せろって……どうする気だよ」
大和「演習などなさってはいかがでしょう?」
仁提督「ほう……!」
提督「演習ねえ……」
785 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:35:15.65 ID:OT7OSUtjo
大和「今の彼ら相手でしたら、負ける要素はありません」ニコ
仁提督「なにぃ!?」
仁霧島「それは聞き捨てなりませんね。精鋭の戦艦6隻に勝てる自信がおありですか」ズイ
大和「ええ、『蜂の巣にできる切り札』があります。ね? 提督」
提督「!」ピーン
仁霧島「切り札?」
提督「……ああ、そうだな。誰が凄んだところで結果は同じだ」ニヤリ
提督「全員ぼろ雑巾にしてやってもいいが……戦艦の修復は時間がかかる。1対1でやろうじゃねえか」
仁霧島「それほど自信がおありですか……!」
仁提督「面白い、力の差を見せつけてやろうじゃないか!」
提督「よし、大和、ちょっと来い」
大和「はいっ!」
786 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:36:00.59 ID:OT7OSUtjo
仁長門「仁提督、私を出してくれ! 名誉挽回のチャンスを……!」
仁提督「馬鹿者、ここは練度の高い金剛を出すに決まっているだろう! 霧島!」
仁霧島「はいっ!」
仁提督「金剛の実力なら負けることはないだろうが、お前も良い作戦を考えてやれ!」
仁霧島「お任せください!」
仁提督「それから榛名に、比叡が船の厨房で赤飯を作り出さないように見張れと伝えておけ!」
仁霧島「わ、わかりました……!」
仁長門「提督、忘れるんじゃないぞ、本来の目的は大和に勝つんじゃなく、駆逐艦たちの保護だからな!」
仁提督「わかっているから後にしろ!」
仁陸奥(また話を聞いていないケースねこれは……)
仁長門「この戦い、演習とはいえ負けるわけにはいかないんだ……!」
仁陸奥「長門も一体どうしたの?」
仁長門「この鎮守府の提督准尉……とんでもない外道かもしれないんだぞ!」
仁陸奥「どういうこと……?」
787 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:36:45.68 ID:OT7OSUtjo
* それからしばらくして *
仁提督「こちらの準備は整ったぞ。いつでも演習可能だ!」
提督「そうか」
仁提督「どうした、相手の大和の姿が見えないな」
提督「こっちはまだ準備中だからな」
仁提督「怖じ気づいたか? 貴様のような未熟者が大和を持つなど十年早いんだ」」
仁提督「せっかくだ、俺が勝ったら大和は貰ってやろう! がはははは!」
提督「何寝言こいてんだ。お前んとこの金剛がいくらご自慢の艦娘でも、こっちに砲弾を当てることはできねえよ」
仁提督「まだ言うか!」
提督「ああ言うね。お前がそんなことを言うんなら、俺も勝ったら何かもらってやろうじゃねえか」
大和「提督、お待たせしました! 準備完了です!」
仁提督「!? な、なぜ大和がここに!?」
提督「あぁ? 俺は大和を演習に出すなんて一言も言ってねえぞ?」
788 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:37:30.55 ID:OT7OSUtjo
仁提督「なんだと!? それじゃ相手は……」
提督「さあ、お互い準備できたぞ! 演習開始だ! 霞、合図しろ!!」バッ
霞「わかったわよ!」
ドーン
仁比叡「ねえ、敵艦が見えないんだけど」
仁霧島「……まさか」
ボチャーン
提督「砲弾の着水が演習開始の合図だったな」
仁提督「お、お前の艦娘はどこへやった!」
提督「ああ? あそこにいるじゃねえか。見えねえだけでな……!」ニヤァ
789 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:38:15.68 ID:OT7OSUtjo
* 洋上 *
仁金剛「……合図はありまシタガ、敵影がありまセン……」
仁金剛「もしかして、恐れをなしての不戦勝デスカ?」ドヤッ
仁霧島「金剛お姉様ーーーっ!!」
仁金剛「オーゥ、霧島ー! 作戦は必要なかったデース!」
仁霧島「違います! 下です! 下ーーーー!!」
仁金剛「下?」
魚雷<ゴボボボボボ!
仁金剛「!?」
ドガァァァン!
790 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:39:00.26 ID:OT7OSUtjo
* 埠頭 *
仁提督「……!!」アングリ
提督「魚雷命中。中破判定か、流石に頑丈だな」
仁提督「き、きさ、貴様っ……!」
提督「戦艦には潜水艦。まあ、相手がわかってるなら当然だよな」
仁提督「み、認めん! 認めんぞ! こんな卑怯な手で勝って貴様は嬉しいのか!」
提督「卑怯? どこが卑怯なんだ?」
仁提督「姿を見せずに海の中からなんて卑怯だと思わんのか! 正々堂々戦え!」
提督「潜水艦は潜水してなんぼだろ? なんで潜水艦がわざわざ浮上して敵の真ん前から雷撃しなきゃなんねーんだ?」
仁提督「戦艦に潜水艦をぶつけるのが卑怯だというんだ! 水上艦を出せ!」
提督「嫌だね。高い練度の戦艦とまともにやりあえば、圧倒的な火力で反撃すら許さないまま潰されるのが目に見えてる」
提督「俺たちのやってることは戦争だ。奇襲に夜襲に兵糧攻め、勝つためにあらゆる手を尽くすことは卑怯でもなんでもねえ」
提督「お前だって、自慢の艦隊を維持するために不要な艦を切り捨てたりしてきたんだろ?」
仁提督「……!」
791 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:39:45.78 ID:OT7OSUtjo
提督「俺も俺ができることをやってるだけだ。どうやったら被害を抑えられるか、どうやったら打ち勝てるか」
提督「どうやったら、これまで散々駆逐艦を切り捨ててきて、必要になったら慌てて余所の鎮守府へ掻っ攫いに来るようなやつに……」
提督「赤っ恥をかかせられるか、ってなあ……!」ズイ
仁提督「き……!」
提督「大和、あの二人はどうしてる」
大和「あちらで演習の様子を見ていると思います」
提督「会うつもりはあったか? あるなら連れてきてくれ」
大和「わかりました」スッ
提督「さて。何の話か、さすがにもうわかってるよな? 仁提督よぉ……?」ニィ
仁提督「貴様、最初から……我々のことを知っていたのか!」
提督「戦艦好きとは聞いていた。まあ、まさかそっちから現れて難癖付けてくるとは思わなかったがな」
仁提督「おのれ、謀ったなあ……!」
792 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:40:30.48 ID:OT7OSUtjo
仁長門「仁提督、やめるんだ。勝負は付いた、我々の負けだ」スッ
仁提督「ば、馬鹿な。この試合は無効だ! この勝負はなかったことに……」
仁長門「仁提督! これ以上の言い訳はよせ! 見苦しいぞ、恥を知れ!」
仁提督「ぐ……!」
提督「……」
仁長門「提督准尉、仁提督の非礼は詫びよう。それと……」
提督「ん?」
仁長門「貴様と話がしたい。訊きたいことがある」クイ
提督「あぁ……?」
大和「提督、白露さんたちを連れて来まし……どうなさいました?」
提督「向こうの長門が話があるんだとよ。大和は白露と島風を守ってやってくれ」
大和「は、はい……」
島風「なにがあったんだろうね?」
白露「さあ?」
793 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:41:15.39 ID:OT7OSUtjo
* 埠頭と丘の間の通り道 *
提督「聞きたいことってのは、なんだ」
仁長門「如月のことだ」ギロリ
仁長門「如月の衣服の下の傷はなんだ!?」エリクビツカミ
提督「……見たのか?」ジロリ
仁長門「見えたんだ。あの傷は、貴様がつけたのか」グイ
提督「……」
仁長門「答えろ!」グワッ
提督「……他言するなよ」
仁長門「!」
提督「如月は、この島の砂浜に大破して流れ着いてきた」
提督「あいつは、海軍が開発する新兵器の実験台にされていたんだ。あいつの傷は、そこでつけられた傷だ」
仁長門「っ!? それは本当か……!?」
794 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:42:00.64 ID:OT7OSUtjo
提督「しばらく前に、Z提督とかいう奴が捕まったことが海軍の新聞に載ってたんだが……」
仁長門「お、覚えているぞ……その事件か!」ワナワナ
提督「知ってんなら話が早えな」
仁長門「その被害者があの如月か……だとしたら、すまない、どうやら私は誤解していたようだ」スッ
提督「おいおい、素直が過ぎるぞ。俺の出まかせだったらどうすんだ」
仁長門「貴様、嘘なのか!?」
提督「嘘じゃねえよ。ただ、そんな風にホイホイ信じていいのかっつってんだよ」ハァ
仁長門「ぐ……そういう貴様こそ、その如月の話が本当だとしたら、簡単に話していいものなのか? デリケートな問題だろう!」
提督「……お前の目が、真剣だったからな。如月の体の傷と、その仕打ちに真面目に怒りを覚えてたんだろ?」
提督「だったら、話してもいいと思っただけだ」
仁長門「……」
提督「それから如月だけじゃない。この島にいる艦娘の多くは、理由こそ違うが大破轟沈してそのまま流れ着いてきた奴らだ」
提督「俺は、あいつらを保護するため、特例としてこの島限定で着任できるようにしたんだ」
795 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:42:45.39 ID:OT7OSUtjo
仁長門「それじゃ、この島の駆逐艦たちはこの島から出られないのか……!?」
提督「駆逐艦に限らねーがな。だからこの島にいる奴らは余所では働けねえ」
仁長門「なぜそんなことを……」
提督「あいつらは、人間の勝手で沈められたんだ。俺はそんな連中と同じになりたくねえ」
提督「運良く助かるならいいが……丘の上にある艤装は見たか? あれは全部、この島に流れ着いてきた艦娘の墓標だ」
提督「潮の流れが強いもんで、水葬できずに砂浜に打ち上げられるんで、ああやって埋葬してる」
仁長門「如月がこの島に流れ着いたのも、その潮の流れのおかげだったと……?」
提督「かもな。まあ、白露と島風は大した怪我もなく……仁提督の勝手な判断で艦隊から見捨てられただけだが」
仁長門「……なるほど。ある意味では噂通りなのか」
提督「追放された艦娘が、ってやつか?」
仁長門「ああ。我々はその噂を聞いて、余所の鎮守府で不要になった駆逐艦を引き取るつもりでいたんだ」
提督「うちは預り所とかレンタルなんとかじゃねーんだぞ。ふざけてんのか、くそが」
仁長門「ふ、ふざけてるつもりはない! 私はそんな可哀想な駆逐艦がいたなら、保護して全力で可愛がるつもりだったんだぞ!」
提督「……お前、駆逐艦をペットか何かと勘違いしてねーか?」
仁長門「そんなことはない!」ゴォッ
提督「本当かよ」ジト
796 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:43:30.53 ID:OT7OSUtjo
仁長門「それに……身も蓋もない言い方をしてしまうが、仁提督は、ケチで極端なんだ」
提督「ケチ、ねぇ」
仁長門「仁提督は、これまで遠征で頑張ってくれていた睦月型にキス島の戦闘を任せているんだが……」
仁長門「装備をドラム缶から変えていないんだ」
提督「……はぁ?」
仁長門「どうせ今回だけだからと、駆逐艦の装備を揃えるつもりもないらしい」
提督「馬鹿じゃねーのか!?」
仁長門「素直に武器を開発すればいいと、我々も何度も進言した! しかし彼は目的のこと以外に金や手間をかけたがらないんだ!」
仁長門「我々の意見はまったく聞き入れてもらえず、大淀にも匙を投げられ……」
仁長門「そんな折に噂を聞いて、島にめぼしい艦娘がいないか、探しに来たということなんだ」
提督「そうかい。じゃ、無駄足だったってことだな」
仁長門「そういうことになるな……」ガックリ
提督「そんなに駆逐艦を編入できなかったのがショックだったのか」
797 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/03(木) 00:44:22.66 ID:OT7OSUtjo
仁長門「それもあるが……この島の実情が噂よりひどかったことのほうがショックだ」
仁長門「この島の駆逐艦たちも可愛い子ばかりじゃないか。それなのに、みな轟沈を経験していると思うと……」グスッ
仁長門「そういえばさっき、白露と島風もいたな」
仁長門「我々の鎮守府にもいたんだが、ろくに構うこともできないうちに、仁提督はあの二人を……」ブワッ
仁長門「今頃二人は何をしているのか! 無事でいるのか!! そう、思うと……うううう!」ナミダジョバーー
提督「そいつら、今うちにいるぞ」
仁長門「……え?」
提督「運がいいのか、航行中に羅針盤があてにならなくなって、それでうちの鎮守府に迷い込んだって感じだからな」
提督「たいした怪我もしてねえし、まあ元気なもんだったぞ」
仁長門「さ、さっきの二人が……そうなのか? よ、よかっ……」ジワッ
仁長門「良がっだぁぁぁぁぁああ!!」ナミダジョバーーーー ズドドドド…
提督「おい!? どこ行くんだ!?」
扶桑「……おそらく、あの二人の駆逐艦のところではないでしょうか?」コソッ
提督「!? お、お前、どこに潜んでた!?」
扶桑「万一があってはならないと思いまして。艤装を隠してそちらの草叢に潜んでいました」
扶桑「金剛型の皆さんから、私たちではじっとしていられないから、ということでしたので」フフッ
提督「……」
798 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2019/10/03(木) 00:45:01.27 ID:OT7OSUtjo
今回はここまで。
799 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/04(金) 00:51:20.48 ID:FBO9he6Ro
いつも楽しみにしてるよ。
800 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:04:22.30 ID:1eXZRzVZo
続きです。
801 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:06:01.93 ID:1eXZRzVZo
* 埠頭 *
仁霧島「艦隊の頭脳として言わせてもらいますが、今回の模擬戦の結果は司令の慢心が原因です」
仁霧島「我々戦艦の力を過信するあまり敵の戦力を考えず、結果金剛お姉様を危険な目に合わせた司令の判断、稚拙極まりないと言って過言ではないでしょう」
仁提督「そ、そこまで言うか」
仁霧島「ええ、大淀共々以前から申し上げておりますが、姑息とか卑怯とか相手を貶める言葉でご自身を正当化するのは、いい加減におやめください」
仁霧島「司令が我々を信頼してくださるのはありがたいことですが、我々が戦えない相手と戦えば負けます。至極当然の結果です!」
仁提督「……」
仁陸奥「それから、この島で駆逐艦を引き抜くにしても、白露や島風と知り合ってるのならいい印象を持たれてる訳がないわ」
仁陸奥「諦めて睦月型に装備を用意してあげたらいいじゃない」
仁提督「し、しかし……」
仁陸奥「しかし、って、何が不満なのよ」ムッ
仁陸奥「特定の艦種だけじゃ相手できない相手もいるって、今回の件で分かったでしょ?」
仁提督「……いや……」
802 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:06:47.18 ID:1eXZRzVZo
仁霧島「常々言わせていただいておりますが、戦艦だけの艦隊では問題がございます。そのお考え、改めて戴かないと困ります!」
仁提督「うぐ……」
仁霧島「お返事は!」
仁提督「ぐぅぅぅ……!」
ズドドドド…
白露「……ねえ、何か聞こえない?」
島風「なにって……あ、あれ!」
仁長門「うおおおおおお!!」ズドドドド…
仁陸奥「長門!?」
大和「こっちに向かって走ってきてますね……」
仁長門「うおおお! 白露ぅぅぅ! 島風ぇぇぇ!!」ズドドドド
白露「……な、なんかすっごい顔して私たちのこと呼んでるんだけど!」
803 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:07:36.06 ID:1eXZRzVZo
島風「に、逃げよ白露!! はやく!!」ダッ
白露「えええ? う、うん!」ダッ
仁長門「うおおお! 白露も島風もよく無事で……って、なんで逃げるんだあああ!」
ズドドドド…
榛名「すごい勢いで通り過ぎて行きましたね……」
初春「まあ、涙と鼻水ですごい顔になっておったからのう……逃げられても已む無しじゃ」
提督「……あの長門は何考えてやがんだ」
扶桑「二人の無事に感極まっただけだと思いますが……」
山城「扶桑お姉様!」
大和「提督! ご無事でしたか!」
金剛「何の話をしてきたんデスカ?」
提督「うちの鎮守府の事情を訊かれた。一応、駆逐艦が傷付けられるのは耐えられないくらいの常識は持ってるようだな」
仁陸奥「まあ、そうね。知ってるかもしれないけど、私たちの鎮守府って、駆逐艦は遠征に行く睦月型の子たちだけなの」
804 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:08:31.81 ID:1eXZRzVZo
仁陸奥「おかげで長門は、駆逐艦との触れ合いが欲しいって普段から言ってて……」
提督「それであの有様か」
長門「……」ズーン
潮「な、長門さん?」
長門「あれが余所の私か……」
仁陸奥「……そっちの長門はまともそうね」
潮「え、ええ……とっても優しいんです。お裁縫も上手ですし」
電「エプロンを作ってもらったのです!」
比叡「お料理も上手ですよ!」
仁陸奥「なにその女子力の固まりみたいな長門」
榛名「包容力の固まりでもありますよ? 榛名も見習いたいです!」
扶桑「そのおかげで駆逐艦の子たちにも慕われているわね」
仁霧島「艦娘には個体差があると言われていますが、その一端でしょうか……?」
805 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:09:17.06 ID:1eXZRzVZo
伊8「提督」スタスタ
提督「ん、はっちゃんか。急に呼び出して悪かったな」
伊8「戦闘は、あまり好きじゃないけど、頑張りました」フンス
仁提督「……俺の戦艦が、こんな奴に、手も足も出せないのか……」ポツリ
提督「そういうことだな。何に拘ってんのか知らねーが、戦艦だけでことを進めようなんざ……」
仁提督「何を言う! 戦艦の主砲こそ戦場の華! 巡洋艦や駆逐艦でちまちま撃っても、奴らが恐れなど抱くものか!!」
仁陸奥「え……?」
提督「何言ってんだ?」
仁提督「提督准尉、貴様にはわかるまい! こんな僻地で過ごしてきた貴様には!」エリクビガシッ
仁提督「奴らに……深海棲艦どもに、街を粉々にされた、この俺の恨みはわかるまい!!」
提督「恨み?」
仁提督「その通りだ! 港町を砲撃し、瓦礫に変えたあいつらへの恨み……貴様にわかるものか!!」バシッ
提督「っ……」ヨロッ
806 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:10:32.21 ID:1eXZRzVZo
仁提督「駆逐艦の砲撃も、巡洋艦の砲撃も、あいつらが放った砲弾の威力とは雲泥の差だ……だが、戦艦なら!」
仁提督「戦艦の砲撃なら! 戦艦の持つ大口径主砲なら、あいつらを木っ端微塵に粉砕できる!!」
仁霧島「提督……だからあなたは私たちを……」
仁提督「戦艦の持つ破壊力こそが奴らに絶望を与えるんだ。拘って何が悪い!」
提督「……何言ってんだ? 馬鹿じゃねえの?」
仁提督「!?」
仁陸奥「ちょっと!?」
提督「いや、馬鹿だろ。何度も言ってんだろ、戦艦じゃ勝てない相手がいるのに、戦艦に拘り続けるのは馬鹿だって」
提督「お前、単に敵を吹っ飛ばしたいってだけだろ? それでいいわけがねえだろが」
提督「本当に仇を討ちたいなら、丁寧に、詰め将棋のように、端っこから、逃げ道を消して、確実に、息の根を止めてやる……」
提督「復讐ってのは、そういうことじゃねえのか?」グイ
仁提督「く……」ギリッ
807 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:11:17.03 ID:1eXZRzVZo
提督「それになあ。お前の復讐劇に付き合わされる連中の身にもなってみろ」
提督「戦艦にとっての潜水艦みたいに、かなわない相手に何百回挑んだって、労力の無駄だぞ? 資材も金も時間も、無駄なだけだ」
提督「負けたからと言って反省する気配もねえ。力押しのごり押しが通用しない相手は、卑怯なことをする相手が悪いと責任転嫁」
提督「失敗から何かを学ぶのが人間だ。それがねえお前は、艦娘にとっての『ひとでなし』になっちまうだろうが」
仁提督「……っ」
提督「やり返したいんなら頭を使え。あいつらにだって知恵があるんだ、こっちが使わなきゃ不利は当然」
提督「そもそも頭に血が上りすぎなんだよ。復讐したいんなら誰相手に喧嘩を売るべきか、ちゃんと相手を選びな」ポイ
仁提督「……ぐっ」ドスン
提督「それから、お前らこの島から駆逐艦を連れてくつもりだったようだが……」
* 説明中 *
仁陸奥「それじゃ、ここにいるみんなは轟沈を経験してるの!?」
仁霧島「そのような特例が出ていたなんて……初耳です」
808 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:12:01.90 ID:1eXZRzVZo
提督「そういう意味でもあまり有名になりたくないんだけどな。こうやって、誰かが来る都度、こうやって説明すんのも面倒臭えし」
提督「お前らみたいに間違った噂を信じて来客が増えんのも、はっきり言って迷惑だ」
仁霧島「そのような事情では、この鎮守府から引き抜きというのは不可能ですね」
仁陸奥「そうね。やっぱり睦月型の子たちに、ちゃんとした装備を渡してあげるべきよ」
提督「そうしてくれ。どうせそいつのことだ、新しく駆逐艦を連れてきても、用が済んだら解体するんじゃねえの」
仁霧島「やらないとも言い切れませんね」ジトメ
仁陸奥「むしろ最初からそのつもりだったんじゃない?」ジトメ
仁提督「……」ウナダレ
提督「とにかく、この島から艦娘を連れ出すのは諦めろ。金剛たちの修理が終わったら、さっさと引き上げたほうがいいぜ」
仁霧島「そうさせていただきましょう……提督准尉、余計なお手間でした。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」フカブカ
提督「苦労してんな、お前らも」ハァ
仁陸奥「私たちは主力として活躍させてもらってるし、そういう意味では、いい思いをさせてもらってるからいいんだけど」
809 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:12:47.04 ID:1eXZRzVZo
提督「空母連中はいないのか?」
仁陸奥「いないわけじゃないわ。今回は呼ばなかっただけよ」
仁霧島「それに対空でしたら、比叡お姉様と榛名お姉様が対空電探と三式弾を載せていますし……」
提督「そうじゃなくてだな、今は空母棲姫が出没するって話があったろ。そいつらに襲われたらたまったもんじゃねえ」
提督「ここに来たってことは遭遇しなかったんだろうが……黒い雲のような艦載機の群れ、途中で見えなかったか?」
仁霧島「いえ。私の水上観測機からは、そのような報告はありませんでしたよ?」
提督「たまたま運良く遭遇しなかったのか……?」
仁提督「いいや……その話なら、もう決着がつくはずだ」
提督「なに?」
仁提督「本営から、空母棲姫の出没条件がわかったと連絡が来た。だから、俺はこの編成で来たんだ」
提督「本営から? なにか指示があったのか」
仁提督「空母棲姫を討つため、本営中将の配下である中佐が連合艦隊を編成し、撃滅にあたることに決まった」
提督「中佐……!?」
810 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:13:35.91 ID:1eXZRzVZo
如月「なんで中佐が……!?」
大和「また、あの男ですか……!」
仁霧島「どうしたんですか?」
提督「どうしたもこうしたもあるか……! あれが絡むと、絶対ろくなことが起きねえってのに……!」
大和「あの男、今度は何をしようとしているんです?」
仁提督「空母棲姫は、ある鎮守府の雪風を追いかけていることがわかった」
仁提督「中佐は空母機動部隊の連合艦隊を準備し、その雪風をわざと海に出して空母棲姫を誘き寄せて叩く算段だ」
提督「最悪のパターンじゃねえか! なんでそんなに行動が早いんだよ、くそが……!」
仁提督「なぜだ? 深海の大物が駆逐艦一隻に釣られてくるんだぞ。十分すぎるリターンじゃないか」
提督「その雪風の姉妹艦は……残された奴らはどうする!!」
仁提督「甘いことを言うな。これは戦争だと、貴様も言ったばかりだろう……!」
提督「被害は想定しても犠牲はないに越したことねえだろう!」
仁提督「随伴のヲ級ですら海域の最奥にいるようなやつだぞ! 犠牲を出さないなんてぬるいことを言っていられるか!」
811 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:14:16.96 ID:1eXZRzVZo
仁提督「それにこれはもう決定事項だ! 今回の決定でテレビ局も動いている!」
提督「テレビ局!?」
仁提督「海軍も政府も腹を決めたらしい。我々の敵である深海棲艦が一体どういう奴らなのか、テレビ放映して国民に知らしめる気だ」
提督「艦娘も映す気か!?」
仁提督「そうなるだろうな……!」
提督「ふざけんな!! 他人事みたいに言いやがって……!」ガシッ
仁提督「ぐ……っ!?」ギリッ
大和「て、提督! おやめください!」
仁陸奥「落ち着いて! 仁提督を責めてどうするの!」
如月「司令官!」ガシ
提督「く……っ!!」パッ
仁提督「ぐ、げほ、げほっ……き、貴様が不満だろうと、もう始まってしまったことだ……止めることはできん!」
812 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:15:02.98 ID:1eXZRzVZo
提督「冗談じゃねえぞ……」
仁提督「抗議する気ならやめておけ! 我々のような末端の提督に、その決定に意見する資格も、止める権利も力もないのだ……!!」
提督「なにか資格だ! そんなもんくそくらえだ!」
仁提督「そもそも今から行っても遅いと言っている! 出向いたところで海域は封鎖されているし、今から向かってももう終わっているぞ!」
如月「え……?」
提督「……それじゃ、もう、その作戦を始めたってのか……?」ワナワナ
仁提督「俺はこの島に来る途中まで、衛星ラジオで開戦の様子を聴いていたんだ。霧島、船内の通信機で上に今の戦況を確認してくれ」
仁霧島「わ、わかりました!」タッ
提督「……電と初春は、工廠にいる大淀に今の話の確認を取るよう伝えてくれ」
電「わかりましたなのです!」タッ
初春「任せよ!」タッ
仁提督「俺の話が信用できんのか」
提督「違ぇよ。そっちで把握できる情報と、俺たちが催促した情報に差がないか確認したいだけだ」
813 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:16:01.76 ID:1eXZRzVZo
提督「俺が一番信用してねえのは俺の真上だ。あれはこっちにまともな情報を寄越さねえからな」
仁提督「貴様が信用されていないだけじゃないのか」
提督「まあ、それもあるな。俺も中佐に信用されたいとは思ってねえから、お互い様だ」
仁提督「中佐だと!? 貴様は中佐の部下か!」
提督「不本意ながらな。俺はあれに邪魔者扱いされて、こんな島にいる」
仁提督「……」
仁陸奥「仁提督、彼の中佐と仲が悪いって話は本当じゃないかしら」ヒソヒソ
仁提督「そうか……?」ヒソヒソ
仁陸奥「ええ、この前、中佐が大怪我した話って大和が関係してるでしょ?」
仁提督「……確かに、中佐の名前を出したときに、大和もあからさまに嫌な顔をしていたな」
仁陸奥「ねえ、提督准尉。今回の空母棲姫要撃の件、何も聞いていないの?」
提督「なーんにも聞いてねえな。あいつからは重要な話はひとつも流れてこねえ。仕方ないから中将から聞いてるくらいだ」
仁提督「中将!?」
提督「ああ、ちょっとした伝手があるんだ。さっきの轟沈艦の話で世話になって以来だな」
814 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:17:01.49 ID:1eXZRzVZo
仁提督「……わからんな」
提督「?」
仁提督「なぜ貴様は中佐に歯向かう? その上で、沈んだ艦娘にそこまでするんだ」
提督「……気に入らねえってだけだよ。どっちもな」
仁提督「貴様が雪風を気にかけているのはなぜだ? 雪風の知り合いか?」
提督「俺じゃねえ。雪風の身内がいる」
仁提督「身内? ……もしや、民間人に暴力をふるって指名手配された艦娘か。単艦で海に出て、最後にこの島に流れ着いたか」
提督「……さあてね」チラッ
仁陸奥「……丘のほうを見たってことは、もしかして沈んだの?」
提督「……」プイ
仁陸奥「そう……」ウツムキ
如月(司令官って、こういう思わせぶりな仕草、得意よね……)
敷波(演技派だ……)
815 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:18:01.22 ID:1eXZRzVZo
仁提督「沈んだのなら、それ以上雪風を気遣う必要はないだろう」
提督「手前はいちいち癪に障るな……!」
仁提督「当然だ。艦娘は建造によって作られる兵器だ、逐一感傷に浸っていられるか」
提督「兵器だと? 笑ったり泣いたりするこいつらが兵器だと?」
仁提督「人為的に造られたのなら兵器だろう。人である証明もできない以上、無責任に人だと言えるか! 人語を解せば人扱いか!」
提督「人並みの考えや感情を持っててそれを無視できる方がおかしいだろうが! お前こそ人でなしじゃねえのか!」
仁提督「軍に属している以上、艦娘も俺たちも使われるのは当然のことだ! 俺たちはそういう組織なんだぞ!」
仁提督「貴様は艦娘に入れ込みすぎだ! 何が貴様をそこまで駆り立てるんだ!」
提督「……どうせ、言ってもわからねえだろうよ」ギリ
仁提督「……ふん、大体わかった。さては艦娘に懐柔されたか」
提督「懐柔じゃねえよ! 単純に、理不尽だと思わねえのか! こいつらの受けた仕打ちを!」
仁提督「だから戦争とはそういうものだ! 人間であっても、艦娘であっても、そこに違いはない! 何度も言わせるな!」
816 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:18:46.72 ID:1eXZRzVZo
提督「そうかよ……だったらもう話すことはねえ」クルッ
仁提督「どこへ行く気だ」
提督「雪風がどうなったか、大淀に話を聞きに行く」
仁霧島「司令! 状況、確認できました!」タタッ
仁提督「ん、報告してくれ。提督准尉も聞くといい」
提督「……チッ」
仁霧島「よろしいでしょうか。まず、戦闘開始は本日1130、戦闘終了が同1310……」
仁霧島「指揮を執ったのは中佐、艦隊旗艦は中佐鎮守府の赤城。そして提督9名とその配下の艦娘54名、総勢60名の艦娘が戦闘に参加しました」
仁霧島「目標は敵航空母艦である空母棲姫、およびその随伴艦である航空母艦5隻、内訳は空母ヲ級3隻と軽空母ヌ級2隻」
仁霧島「戦果として、敵艦隊は6隻すべて撃沈。海軍の被害は……66名中、5名が轟沈、24名が大破、14名が中破しました」
提督「……」ムス…
仁提督「……続けてくれ」
仁霧島「はい。戦闘後に本営が会見を行いました。会見の席に上がったのは中佐、J少将、政府高官が2名」
仁霧島「今回の戦闘の影響と被害状況について政府高官から説明があり、その後中佐から艦娘と深海棲艦についての説明が行われています」
817 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:19:34.23 ID:1eXZRzVZo
仁霧島「そこで、今回見せた深海棲艦……空母棲姫は、深海棲艦の中でも力の強い深海棲艦であること……」
仁霧島「そして、それを撃退できた自分たちの艦娘は、深海棲艦に対抗できるただ一つの戦力であるということ……」
仁霧島「そして、その艦娘を率いているのは、海軍の中でも選りすぐりの精鋭であること……!」
仁霧島「テレビで流された音声の情報をいただきましたが、中佐はこのような演説を行っておりました」
提督「……チッ」
仁提督「どう思う、提督准尉」
提督「だいたいは奴の思い描いたシナリオ通りじゃねえか」
提督「中佐が欲しいのは名声だ。機密情報だった艦娘のお披露目に、深海の大物退治の陣頭指揮も執れて」
提督「自分の権力と力をテレビカメラの前で誇示できたんだ、チヤホヤされて幸せの絶頂なんじゃねえの」ケッ
仁提督「……なるほどな」
提督「ところで、ひとつ質問いいか?」
仁霧島「は、はい、なんでしょうか」
818 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:20:17.91 ID:1eXZRzVZo
提督「空母棲姫の狙いは雪風だ……その雪風がどうなったか、わかるか?」
仁霧島「……どこの鎮守府の所属かはわかりますか?」
提督「確か、保提督だったか」
仁霧島「保提督……その方は、今回の作戦には参加なさっていないようですが」
提督「だとしたら、別の鎮守府に編入されたのか?」
大淀「提督、雪風さんは無事です。中破こそしましたが、本営には戻ったということです」スッ
提督「大淀……!」
仁提督「それは確かなのか?」
大淀「はい、不知火さんが丁度本営におりましたので、そちらで把握している情報をいただきました」
仁霧島「ほ、本営から直接、ですか!?」
仁提督「准尉、これが貴様の言う伝手という奴か」
提督「中将麾下の不知火が、この鎮守府のお目付役だ。この鎮守府には憲兵も特警もいない。その代わりを担っている、とでも思ってくれ」
819 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:21:17.07 ID:1eXZRzVZo
提督「大淀、中佐はどうした? 赤城はいなかったのか」
大淀「赤城さんは留守のようでした。代わりに中佐鎮守府の職員らしき人が出たんですが、後にしろと言われまして」
提督「それで不知火に連絡したのか。やっぱ中佐んとこの人間連中はくそだな」
提督「とにかく雪風が無事か……轟沈したのはどこの鎮守府の艦娘だ」
大淀「はい……B提督鎮守府の5名ですね」
提督「B提督鎮守府……?」ピク
仁提督「霧島。どうなんだ、正しいのか」
仁霧島「私の情報と合致しています。誰が轟沈したかの詳細はありませんが、B提督の艦娘5名がくだんの雪風を庇って轟沈したとあります」
仁提督「ということは、その雪風はB提督鎮守府の艦隊に入っていたわけか……」
山城「冗談じゃないわ……!」
提督「どうした? 山城」
山城「どうしたもこうしたも……目の前で仲間が沈められるのを見てて、平気でいられる艦娘がどれだけいると思うの?」
仁提督「おい、何をそんなに興奮しているんだ。落ち着け」
820 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:22:02.85 ID:1eXZRzVZo
山城「落ち着いていられるわけないじゃない……轟沈よ!? 沈んだのよ!?」
山城「……雪風って、幸運艦って呼ばれてるでしょう? 時雨もそうだったわ」
山城「その時雨が以前、言ってたのよ。自分は幸運艦になんかならなくて良かった。他のみんなが沈んで、自分だけ生き残るのはつらい、って……」
提督「……」
山城「それがどれほどの悲しみか……雪風は、どう思っているのかしら……」ウツムキ
提督「……雪風もケアしてやらなきゃならねえ状態ってことか」
クイクイ
提督「ん?」
敷波「……あのさ、司令官」
電「……」
敷波「B提督って、もしかして……」
提督「俺もそうなんじゃねえかって思ってるが……そういうことだな?」
821 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/10/15(火) 00:22:47.59 ID:1eXZRzVZo
電「……どうして」ウツムキ
電「どうしてあの人は……!」フルフル…
電「どうしてなんですか……!!」
大淀「い、電ちゃん……?」
提督「敷波。B提督ってのは、そういう奴だったか?」
敷波「ううん……あたしは、ここまで酷いなんて思ってなかったけど……!」
仁提督「B提督を知っているのか」
提督「……ああ」
敷波「知ってるよ。あたしと、電と、由良さんを捨てた、あたしたちの元司令官だもん……!」ギリッ
仁提督「……!」
822 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2019/10/15(火) 00:23:32.12 ID:1eXZRzVZo
今回はここまで。
823 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/21(月) 21:17:36.87 ID:TmDxV+mtO
保守
824 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:38:06.59 ID:CGh4h9Qto
お待たせしました、続きです。
825 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:39:45.70 ID:CGh4h9Qto
* 入渠ドックわきのテーブル *
提督「ここなら邪魔も入らねえ。まあ、あんな地雷を踏むとは思わなかったがな」
提督「とりあえず、あんたが聞いた話を聞かせて欲しいんだが」
仁提督「……雪風たちを襲ったのは、艦娘を持たない他国のスパイだと聞いていた」
仁提督「しかし、実行犯の一人が政治家の息子となると、その話も眉唾物だな」
提督「俺はスパイの関与を今初めて聞いたぜ。俺には真犯人を隠匿するための後付けの嘘にしか思えねえ」
仁提督「だからと言って黒潮に対する処分が軽くはならんだろうな」
提督「なぜだ」
仁提督「艦娘が、海軍の備品として扱われているからだ」
提督「……」
仁提督「俺を睨んでもその事実は変わらん。日々の任務にも、建造と解体の任務があるだろう」
提督「うちじゃやってねえよ」
仁提督「そうか。まあ、人それぞれだ、好きにするといい。だが、この任務はどこの鎮守府にもあるものだ」
仁提督「貴様の考えに賛同する者もいるだろうが、それはごくごく少数派だ。艦娘を率いる多くの者は、艦娘とは一線を引いている」
仁提督「そもそも、建造ドックから出てきて、解体すれば資材が残るような人型のなにかを、人間と呼ぶのはさすがに無理がある」
826 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:40:30.81 ID:CGh4h9Qto
提督「仁提督は……艦娘の処分は慣れたものか?」
仁提督「そう……だな。特にどうとも思わん。余計な感情もなく、日々の任務で黙々とこなすだけだ」
提督「ふん……」
仁提督「……なるほど」
提督「どうしたよ」
仁提督「本営は、我々が艦娘を躊躇なく処分できるように、そういった任務を課しているのかもしれんな」
提督「……」
仁提督「話が逸れたな。で、貴様は、雪風たちを助けた黒潮の名誉回復を考えていると」
提督「……そうだ」
仁提督「ふむ……今からでは遅いかもしれんな」ウデグミ
提督「遅い?」
仁提督「中佐が艦娘についての情報を公にした。となれば、艦娘の世間での扱いについてもある程度決まったんだろう」
仁提督「そこで艦娘が人間に危害を加えた場合の要綱も織り込まれているはずだ。ついこの前、それを考えるきっかけになった事件もあった」
提督(以中佐の話か……)
827 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:41:15.78 ID:CGh4h9Qto
仁提督「そこの提督自身にとんでもない問題があったとはいえ、艦娘たちに反抗されて鎮守府が崩壊した事件だ。聞いたことはあるか?」
提督「……まあ、知らなくはねえよ」
仁提督「不愉快そうだな。もしかして、詳しく知っているのか?」
提督「さぁな」プイ
仁提督「……ともかく、そいつのように致命的な悪事を起こしていない限りは、立場をひっくり返すのは難しいだろう」
提督「致命的な悪事ね……既に起こしてるんだがな」
仁提督「何だと?」
提督「雪風たちの司令官だった保提督は、厳秘情報扱いだった艦娘を一般人と接触させようとしたんだ」
提督「艦娘から艤装を奪い無力化させた上でな」
仁提督「……!」
提督「艤装を外して可愛い服を着せ、めかし込んだ艦娘を外に連れ出した保提督を訝しんだのが黒潮だ」
提督「艦娘を連れ外出した保提督を尾行して、入っていった建物から出てきたのは保提督一人」
提督「黒潮が保提督を問い詰めれば、保提督は知らぬ存ぜぬと言い出した」
提督「この時点で、いろんな意味で致命的だと思わねえか……?」
仁提督「……」
828 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:42:00.41 ID:CGh4h9Qto
提督「黒潮が現場に入ったとき、雪風たちは襲われる寸前だった。衣服は破かれ、手足には引っ掻き傷も受けていた」
提督「可愛い妹分がそんな目に遭っていたら、ブチ切れんのも当然だ。全員、海に投げ捨てようって考えてもしょうがねえだろ」
仁提督「だから海に連れ出したのか……しかし、保提督たちが命拾いしたのはなぜだ」
提督「途中で冷静になっちまったんだよ。こんなことをしたら余計に雪風たちに迷惑をかけちまう」
提督「だからと言ってこのまま保提督の下で働けるはずもねえ。黒潮はもう、その時点で戻る気はなかった」
提督「どう思うよ? 奴がやったことは艦娘の援助交際……いや、売春の斡旋だ。売った側も買った側も、お咎めなしってのはどうかしてる」
仁提督「……」
提督「それから、艦娘を見せろと言ってきた奴らは、保提督の悪い知り合いらしい」
仁提督「知り合いだったのか!?」
提督「いじめっこといじめられっこってやつだとよ。昔の話を持ち出して、それをネタに強請られてたらしいぜ」
提督「大人になってまで子供みたいなことをしてる奴らに提督させてんだ、任命責任という奴を問われてもいいと思うがな」
仁提督「……そんなことをさせていては限がない。海軍は慢性的に人手不足なんだ、ただでさえ提督業は人離れが多いからな」
提督「そうなのか?」
829 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:42:45.68 ID:CGh4h9Qto
仁提督「本来、戦争なんかに縁のない、縁を作ってはいけない民間人にこんな仕事をさせるほうがおかしいんだ」
仁提督「適性があっても、艦娘がぼろぼろになって帰ってくるのを見るのが苦しくてやめた奴も多い」
提督「……ふん、本当かよ」
仁提督「皆が皆、貴様のように強い人間ではない。覚悟がなければ心が折れるのも仕方ないことだ」
提督「やけに理解ある言い草だな?」
仁提督「過去のトラウマというものは、どんな人間も弱くしてしまうものだ。貴様にもないのか?」
提督「……なくはねえよ。吐き気がする程度にだがな」
提督「とにかく。本営が今回の保提督のやったことを隠そうとしてるってことはわかった」
提督「バカの父親が政府とどこまで懇ろなのかは知らねえが、都合の悪い事実を揉み消したいくらいには重要な奴なんだろうな」ハァ
仁提督「……提督准尉。この話が事実だとして、なぜ貴様は俺にこの話をした?」
提督「あんた最初に言ってたろ。俺たちが口を出しても無駄だ、みたいなことをよ」
提督「どうせ無駄なら、あんたにも俺の無力感を味わってもらおうと思ってなあ」ニヤリ
仁提督「……それこそ無駄なことを」フン
提督「そーだな。こんな話、うちの連中に愚痴るわけにもいかねえ」
830 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:43:30.64 ID:CGh4h9Qto
提督「話はこれで終わりだ。金剛の修理が終わったら、もうこの島に用はねえだろ」
提督「さて……問題は、雪風をこれからどうするかだな」
仁提督「……貴様は雪風も助けるつもりか?」
提督「おそらく、中佐や本営は雪風の処分をどうしようか考えているはずだ」
提督「連中が隠したい保提督の悪事を知る被害者だ、そのまま放ったらかしにしとくわけにはいかねえだろ」
仁提督「かもな。だが、どうやって助けるつもりだ」
提督「さあな?」
仁提督「ヘラヘラしているが、貴様に手はないだろう。ただでさえ今回の空母棲姫邀撃の話も聞いてなかったんだろう?」
仁提督「本営に頼むにしても、中佐が貴様に雪風を渡すとは思えん」
提督「……」
< テートクーーー!
提督「!」
仁提督「この声……金剛か?」
831 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:44:30.63 ID:CGh4h9Qto
金剛「失礼しマース! Tea break にしまセンカー?」シュピッ
仁提督「……貴様のところの金剛か」
提督「あんな大声出さなくてもいいぞ?」
金剛「No ! わざわざ人払いをしてこんなトコロで meeting してるんデスから、knock は必要デショー?」
仁提督「あの声がノック代わりか。気が利くな」
金剛「それからテートク? 向こうの比叡が厨房を借りたいと言ってきてるんですケド……」
仁提督「やめさせろ」クワッ
金剛「What !?」
仁提督「絶対に比叡を厨房に近づけるな。死人が出ても知らんぞ」
提督「……」
金剛「アー……わかりまシタ。使わせないようにしマス」ヒキカエシ
提督「……そんなにひでえのか」
仁提督「ああ、ひどいぞ。トラウマものだ」
提督「そういや長門も騒いでたな……化学兵器とか言ってやがったか」
832 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:45:15.51 ID:CGh4h9Qto
仁提督「比叡もそうだが、貴様のところの長門はえらく駆逐艦に好かれていたな。落ち着いてもいるし……」
提督「反面教師を見てきたんだよ。元居た鎮守府の提督が、筋金入りの変態だったからな」
仁提督「……誰も彼も、訳ありなのはみな同じか」フゥ
提督「……」
仁提督「……人払いはしてあるんだったな」
仁提督「俺の住んでいた街が深海棲艦に壊されたことはさっき言ったが……」
仁提督「正直に言えば、俺にとってそれはあまり重要じゃない」
提督「おい……!?」
仁提督「昔の話だ。俺は当時陸自だったんだが、その日は非番で、海の見える砂浜を愛犬を連れて散歩してたんだ」
仁提督「その途中……深海棲艦の駆逐艦が浅瀬で死にかけていたのを、その街に住んでいた子供らが見つけてな……」
仁提督「あろうことか、深海棲艦に石を投げてぶつけて遊んでいたんだ」
仁提督「深海棲艦がやばい存在だってことは知っていた俺は、すぐに子供を避難させ、急いで海自に連絡しようとした」
提督「……」
833 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:46:00.77 ID:CGh4h9Qto
仁提督「ところが、子供は一向に言うことをきかん。俺も苛立って、担いで連れて行こうとした矢先に、いきなり砲撃を受けた」
提督「!」
仁提督「運良く外れたが、瀕死の駆逐艦を迎えに来たのか、連中の仲間が4隻、こっちを睨んでいたんだよ」
仁提督「それを見て慌てて逃げ出した子供の一人がすっ転んだのを、俺の犬が庇って……」
提督「……」
仁提督「直撃はしなかった。ただ、爆風であいつは吹っ飛ばされて……」ウツムキ
提督「……」
仁提督「ひどいもんだった。子供の親は、子供が深海棲艦に石を投げるのを見てたらしいが、何の注意もせず……」
仁提督「愛犬を殺された俺に、子供の怪我の責任を押し付けてきやがった」
仁提督「そんなことを言ってる場合じゃない、ここから早く逃げろと言っても聞く耳も持たず」
仁提督「深海棲艦は街中へ逃げた子供を追って、市街に向けて砲撃し始めたんだ」
仁提督「……そのころからだな、子供を好きだと言えなくなったのは。駆逐艦連中も幼い容姿の奴らが多いからな……」
提督「……」
834 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:47:00.49 ID:CGh4h9Qto
仁提督「海自への要請で来たのは、伊勢型戦艦の日向を旗艦とした艦隊だった。あいつらはあっと言う間に深海棲艦を始末していった」
仁提督「痛快だったさ。軽巡や駆逐艦の砲撃とは次元の違う、破壊力のある砲弾が次々深海棲艦を沈めていったのは」
仁提督「……俺の状況説明を受けた日向は遅参したことを詫び、俺に海軍の存在を教えてくれた」
仁提督「そうして、俺は海軍に身を置くようになったんだ」
提督「なるほどな。ま、人間なんて守ろうなんて思わないほうが健康的だぞ?」
仁提督「そう一括りにするな……と、言いたいが、あの時は……失望感が半端なかったな」
仁提督「街を破壊されたことに俺がそこまでショックを受けなかったのも、違う意味でショックだった」
提督「……街を壊されたことを恨んでたんじゃないのか」
仁提督「そんなものは建前だ。愛犬の敵を取りたくて戦っているなんて、誰にも言えたもんじゃない」
仁提督「それを隠したくて、街を破壊されたことに怒りを覚えたと、自分も含めて周囲に言い聞かせてきただけだ」
提督「……」
仁提督「フッ……情けないだろう、笑いたければ笑え」
提督「あぁ? 馬鹿か? 笑える話じゃねえだろうが」
仁提督「……!?」
835 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:47:46.91 ID:CGh4h9Qto
提督「犬だろうが猫だろうが、敵を取りたいってことは、そいつが大事な存在だったんだろ」
提督「笑える要素がどこにある」
仁提督「……」
提督「……」
仁提督「ふう……」ミアゲ
提督「……」
仁提督「この話を……誰かに」フルッ
仁提督「肯定してもらえるとは……思っても、いなかった」ウツムキ
提督「……」
仁提督「あいつらには、たかが、と言われたんだ……」
仁提督「……たかが、じゃないんだ」
仁提督「俺にとっては……あいつは……」フルフル
提督「……」
836 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:48:30.65 ID:CGh4h9Qto
* 鎮守府 埠頭 *
大淀「仁提督、お帰りになられましたね……」
提督「……だな」
大淀「これから、どうしましょう……?」
提督「……どうしようもねえな。参ったぜ」ハァ…
大淀「赤城さんとも連絡は取れませんし、中将も今は不在と、不知火さんから連絡がありました」
提督「その不知火は本営で待機しろって話だろ……動きようがねえな」
提督「そうこうしてる間に、本営は勝手に話を進めていくだろうし……」
黒潮「……司令はん」スッ
提督「……黒潮か」チラッ
黒潮「もうええよ。死人に口なしって言うやん」
黒潮「保提督に歯向かった時点で、うちは解体されるって決まっとったんやから、こうして生き永らえてるだけで儲けもんや」ニコ
提督「……」
837 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:49:16.15 ID:CGh4h9Qto
黒潮「雪風も、無事やって聞いたし。雪風を追っかけてた空母棲姫も倒せたんやろ?」
黒潮「これで雪風も安心や。ええんや。これで」
提督「……」
大淀「……黒潮さん……」
黒潮「辛気臭いでー! ほらー、解決したんやし、笑わんと!」
提督「……解決?」ジロリ
黒潮「……」
提督「お前のその面で解決か。それでいいんだな……?」
黒潮「……」ウツムキ
提督「大淀」ヒソッ
大淀「はい」
提督「黒潮が夜中に脱走しないか、誰かに見晴らせておけ」
大淀「!」
* * *
* *
*
838 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:50:00.62 ID:CGh4h9Qto
* 翌日 執務室 *
提督「……」ムスッ
潮「あ、あの……提督、顔が怖いんですけど……」ガタガタ
提督「……回り番とはいえ、こういう日に限って秘書艦が潮ってのはどうなんだ?」ハァァ…
潮「わ、私に言われても……!」
提督「まあ、そーだよな。とにかく潮に当たり散らしたりはしないから安心しろ」
潮「もしかして……黒潮ちゃんのことですか?」
提督「まあな……あいつ今どうしてるか、知ってるか?」
潮「……生気がない感じ、でしょうか……」
提督「そうか。立ち直れと言われて立ち直れる状況じゃねえし……どうしたもんかねえ」
潮「……あの」
提督「うん?」
潮「黒潮ちゃんは、遠慮……してます、よね? 提督にも、私たちにも……」
提督「あー……そうっぽいな。死人に口なしとか言ってやがったし、どうも悪い意味で諦めが入ってる気がするぜ」
提督「もしかしたら昨晩のうちに保提督の鎮守府に乗り込むんじゃねえかって、心配になるくらいだった」
839 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:50:45.87 ID:CGh4h9Qto
提督「せめて雪風たちの件が、ちゃんと落ち着く形で解決できりゃあいいんだが、こっちからは手を出せる状況にない……」
潮「みんなも気を遣いますし……元気になれるニュースがひとつでもあればいいんですけど」
扉<コンコン
朝雲「ほーんと、そうよー? 元気になってくれなきゃ困るわ」ガチャ
提督「朝雲か。なんでお前が困るんだ?」
朝雲「私、後発にあたる陽炎型には、負けたくないって思ってるんだけど。あんなに元気がないとちょっとねー」
朝雲「それに、山雲を助けてもらったのに、本人の元気がないのも良くないと思わない?」チラッ
提督「!」
山雲「お邪魔しまぁ〜す」スッ
朝雲「司令、改めて紹介するわね。朝潮型駆逐艦6番艦の山雲よ」
山雲「山雲ですぅ〜、よろしくお願いしまぁ〜す!」
提督「お、おう……怪我はもういいのか」
山雲「おかげ様で〜、体のほうは、大丈夫ですぅ〜」
840 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:51:30.76 ID:CGh4h9Qto
提督「……」
山雲「司令さ〜ん? どうか、なさいましたか〜?」
提督「いや。お前と話してると、俺が早口になった錯覚に陥りそうだ」
山雲「ふぅ〜ん、そうかしら〜?」クビカシゲ
提督「……なあ朝雲? こいつ、もとからこんな感じなのか?」
朝雲「え? ええ、そうだけど。でも、砲雷撃戦で足を引っ張ったりなんかしないから、大丈夫よ?」
提督「ならいいんだけどよ……」
山雲「山雲は〜、ちゃあんと戦えますからぁ〜、大丈夫ですぅ〜」
提督「……」
潮(提督、微妙そうな顔してる……)
提督「まあいいや、とりあえずいつもの質問しとくか」
山雲「あ〜、それなんですけれど〜」
提督「うん?」
山雲「私〜、そのときって〜、生まれたばっかりだったと思うんですよ〜」
提督「生まれた……どういうことだ?」
841 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:52:16.10 ID:CGh4h9Qto
朝雲「私もそうなんだけど、山雲は俗にいうドロップ艦なの。海で見つけて拾ってくるタイプの艦娘」
提督「雲龍みたいなもんか」
朝雲「ええ。山雲は、どうもドロップ直後に被害にあったみたいなのよ」
山雲「そうなんです〜。気付いたら、頭の後ろに大きなコブも出来てて〜」
朝雲「背中にも痣が出来てて、なにかに叩きつけられたような感じの怪我だったの」
提督「それを黒潮が運よく見つけたと……」
朝雲「山雲が中破で済んだのも、空母棲姫が雪風を追いかけるのに必死だったって考えれば納得できるわ」
提督「なるほど、見過ごされたってか。時系列考えても、そう考えるのが無理ねえな」
山雲「ですから〜、これから頑張るぞー、って、意気込む前に、こうなっちゃったんですよ、ねー」
潮「運が良かったのか悪かったのか、わかんないですね……」
山雲「うーん、山雲は〜、運が良かったと思います〜」
山雲「だって今、朝雲姉と〜、一緒にいられるんですから〜!」ニコニコー
提督「……つうことは、聞くまでもねえってことか」
朝雲「そういうことです!」フンス
朝雲&山雲「「ねー」」カオヲミアワセー
842 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:53:00.63 ID:CGh4h9Qto
提督「……」
潮「……な、仲がいいんですね」
提督「……」
潮「て、提督?」
提督「……黒潮の一件、早めになんとかしてやらねえとな」ウーン
提督「黒潮が姉妹艦との繋がりを絶たれてああなってるんなら、朝雲たちみたいに姉妹で仲良くしてる姿を見せるのは、ちょっと酷だ」
提督「不知火も最近はこっちにいない時間が多いし、妹じゃねえからな……」ウーン
潮「……」ニコー
提督「……なんだ?」
潮「あ、いえ……やっぱり、提督は、お優しいんですね」
提督「そうかねえ……」アタマガリガリ
朝雲「ふふふ、司令ったら照れてる?」ニマー
提督「放っとけ」プイ
山雲「ふ〜ん、思ったより、優しそうな人なんですねぇ〜」
提督「優しくしてるつもりはねえよ。できる範囲で艦娘の希望を叶えようとしてるだけなんだがな」
843 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:53:45.62 ID:CGh4h9Qto
山雲「それじゃあ山雲も〜、お願いしてもよろしいでしょうか〜?」
提督「ん? なんだ?」
山雲「山雲は〜、土いじりがしたいんです〜」
提督「土いじり?」
朝雲「山雲は畑仕事をやりたいの。丁度人手が欲しかったんでしょ?」
提督「そういう話なら渡りに船だな。ビニールハウスも増やす予定だったし、初雪と分担して管理してもらってもいいか」
山雲「ありがとうございます〜」パァ
朝雲「良かったわね、山雲!」
山雲「それからぁ〜、もうひとつ、司令さんに聞きたいことがありまして〜」
提督「なんだ?」
山雲「司令さんは〜……」ユラッ
提督「……!」
潮「!」
山雲「胸部装甲の大きい艦娘がお好きなんですかぁ〜……?」ジトォ
朝雲「や、山雲!?」ゾクッ
844 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:54:30.62 ID:CGh4h9Qto
山雲「雲龍さんも大きかったし〜、今いる秘書艦さんも、ねー……?」グリッ
潮「ひっ!?」ビクッ
山雲「朝雲姉もなんだか微妙にあるみたいだし……朝雲姉に、何か、したんですかぁ〜?」ハイライトオフ
朝雲「や、山雲、誤解よ! 私は司令にはなにもされてないってば!」
提督「……」
潮(て、提督があの顔になってる……まさか)ハッ
提督「潮。正直に言っていいよな?」
潮「……そ、それ、私が止めても、言いますよね?」
提督「お前がどう思うかってのもあったんだが……まあ、それもそうか。おい、山雲」
山雲「!」ギョロッ
提督「俺はお前らの胸のサイズなんぞに興味はねえぞ」
山雲「!?」
朝雲「なにそのどストレートなぶっちゃけ方!?」ガビーン
845 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:55:15.83 ID:CGh4h9Qto
提督「ぶっちゃけついでに、胸の大小なんか俺の知ったこっちゃねえし、いちいち気ぃ遣うのも面倒臭え」フン
朝雲「もうちょっとオブラートに包んだ言い方ないの!?」ガビーン
山雲「」アッケ
潮「私、知ってます……提督は、そういう人なんですよね……」ガックリ
朝雲「いくら独身宣言してるとはいえ、もうちょっとデリカシーのある言動をお願いしたいんだけど」ガックリ
提督「そういうの面倒臭えから嫌なんだ」
朝雲「そーですね、司令はそういう人でしたもんねー……」
提督「それをさておいても、そいつは俺が何かして解決するような問題じゃねえだろが」
提督「努力してどうにかなる類の悩みでもねーし、他人に当たんのも論外だし、せいぜい泣いて発散するくらいしかねえだろ」
朝雲「う、うーん……」
提督「それでも俺になにかしろってんなら、ついでに俺の身長も伸ばしてくれよ。あと3センチでいいからよ」
朝雲「そんなこと無理に決まってるじゃない……」
提督「つまりはそういう話だってことだ。嫉妬するのはしょうがねえ」
846 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:56:00.58 ID:CGh4h9Qto
提督「ただ、それを当たり散らしたって良い結果にはならねえし、それを承知で暴れる気なら、俺も容赦しねえぞって話になる」ジロリ
提督「それに、胸がありゃいいってもんでもねえぞ。潮はそれがきっかけで、前の鎮守府でひどいセクハラ受けてたからな」
潮「……」シュン
提督「山雲がその手の話題を嫌がるんなら俺はしねえよ。ただ、あんまり沸点が低すぎるのは見過ごせねえからな?」
山雲「……」
朝雲「山雲……?」
山雲「……なんていうか〜」ハイライトオン
山雲「無理矢理納得させられた感じがするわね〜?」ウーン
提督「泣き言言いたいんなら付き合ってやる。ただ、お前の望むリアクションは期待すんな、俺にはデリカシーがねえからな」
朝雲「それ、威張って言うことじゃないでしょ……もう」ハァ
提督「それより、さっきの山雲の様子なんだが……お前、本当に大丈夫か?」
山雲「? 山雲が〜、どうかしましたかー?」クビカシゲ
提督「自覚ねえのかよ……正直に言わせてもらうぞ。お前、深海棲艦と関係あるか?」
山雲「……え……ええ〜?」
潮「て、提督!?」
朝雲「ちょっと司令!? どういう意味よ!?」
847 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:56:45.72 ID:CGh4h9Qto
提督「なんとなく、なんだけどな。さっきお前の放ってた殺気が、どうもル級の雰囲気に似てた気がするんだよ」
提督「艦娘と深海棲艦が決して遠い存在じゃないことはわかるが、そこまで雰囲気が似るものなのか?」
提督「お前らも感じなかったか? 山雲の目がマジだったときの、水中みたいな息苦しさを」
潮「……」
提督「山雲が、この鎮守府にいる間に深海棲艦になっちまったら目も当てられねえ」
提督「山雲に自覚がないなら猶更危険だ。何かされた記憶はないか? 些細なことでもなんでもいいから思い出せ」
山雲「そ、そう、言われても〜……」
山雲「気が付いて〜、海の上に立ってたと思ったら、ガーン、って、衝撃が来て……」ウーン
山雲「そのあとは、覚えてないわ〜」
潮「全然、わからないですね……」
提督「……衝撃……空母棲姫は、山雲を攻撃目標に入れていなかった」
提督「当然、爆撃された痕もない。単純に全身を打ち付けたような怪我だった……」
提督「つうことは、山雲は空母棲姫に激突されたってことだよな……!? もしかしてそれか!?」ガタッ
朝雲「し、司令!? それってどういうこと!?」
848 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:57:35.96 ID:CGh4h9Qto
* 工廠 *
明石「まーた新しい説をねじ込んできましたねー」
提督「深海棲艦と接触した艦娘なんて、そうそういないだろ?」
明石「まあ、大体は接触というか、近づく前に砲雷撃戦で沈んでますからねえ」
明石「危ない相手ほどアウトレンジで戦いますから、激突なんて滅多におこらないですよ」
山雲「つまり〜、山雲は、轢き逃げに遭ったってこと〜?」
提督「ああ、そういうわけだからお前はしばらく通院だ。山雲は工廠に通って経過を診てもらえ」
明石「深海棲艦との直接的な接触が艦娘に影響するかどうか、ですね。調べてみます!」
提督「……今度ル級にも聞いてみるか。でも最近、あいつ穏やかだよな?」
朝雲「ええ、昔よりも雰囲気が柔らかいっていうか」
潮「や、やっぱり、怒ってるかどうかだと思いますよ……?」
提督「多分、そうなんだろうな……」ウーン
山雲「ねーねー朝雲姉〜、ル級さん、って、誰〜?」
朝雲「え? 文字通り戦艦ル級さんよ? 深海棲艦の」
山雲「えええええ……?」
提督(こいつでも驚いた顔はするんだな……)
849 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:58:15.70 ID:CGh4h9Qto
ドドドド…
白露「明石さぁぁぁぁん!」キキーッ
提督「? 白露か?」
明石「ど、どうしたのー?」
白露「大変! 大変なの! 島風が……!!」
* 砂浜 *
白露「こっち! こっちだよ!」
提督「……島風はなにやってんだ」
島風「」キュゥ…
白露「ごめんなさい、前方不注意で……あたしがちゃんと見ててあげなかったから!」
提督「それで、そっちは誰だ?」
850 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/10(日) 16:59:15.79 ID:CGh4h9Qto
三隈「最上さん! 最上さん、しっかりなさって!」
最上「」キュゥ…
白露「提督ごめんなさい! 島風が前を見ないで走ったせいで、この人と衝突しちゃったの!」
提督「衝突って、海でか?」
白露「うん、この島の周りをぐるっと、航行トレーニングしてたんだけど……」
三隈「お気になさらないで、最上さんも衝突事故をよく起こすんです。不用意にあちこちへ突き進むから……」シュン
提督「気にしないわけにもいかねえだろ。とりあえずどこの誰だ? ここで入渠するって連絡してやらねえとな」
三隈「あ、ありがとうございます。私、部提督鎮守府の三隈と申します。それから、ついでと言ってはなんですけれど……」
提督「なんだ?」
三隈「私たちは、××島の提督准尉という方を探しているんですけれど……もしかして、あなたでしょうか?」
提督「ああ、俺だが……」
三隈「良かった、無事に辿り着けましたのね……!」
提督「?」カオヲ
白露「?」ミアワセ
851 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2019/11/10(日) 17:01:43.19 ID:CGh4h9Qto
というわけで、今回はここまで。
島風:スピードを追い求める姿勢を疎まれて、訓練中に除名される
白露:島風と一緒に特訓するため艤装を改造、同じく訓練中に除名される
黒潮:姉妹艦を人身御供にした司令官にぶち切れて、犯人もろとも海に投げ捨て離反
山雲:ドロップ直後に、黒潮を探す雪風が起こした深海勢に激突される
次は最上と三隈の回です。
852 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/11/10(日) 17:41:01.80 ID:4RgD5hGXo
なんだかんだと提督仲間と言うか…
話の通じる提督業仲間みたいのが徐々に増えて来たねぇ
853 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:17:49.85 ID:BuX++sWso
こんな時間ですが続きです。
854 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:18:32.71 ID:BuX++sWso
* 執務室 *
三隈「提督准尉、こちらをご覧ください。私たちの提督である部提督……正確には部提督代理からです」スッ
提督「代理?」ウケトリ
三隈「は、はい……部提督はある事情で、鎮守府を離れておりまして……」
提督「ふーん……」ガサガサ
三隈「その書類の内容については、三隈たちも知らされておりません」
三隈「ですが、その書類を提督准尉に届けて、必ずご覧になっていただいて、それを見届けるよう指示されました」
提督「なんだそりゃ。俺がこれを見たのをちゃんと確認しろってか」
三隈「はい」
提督「信用されてねえってか? まあ、いいけどよ……」ペラリ
三隈「……」
提督「……」ペラリ
提督「それで三隈。なんでお前がわざわざこれを届けに来た?」
提督「定期便でいいじゃねえか。お前が来て、見たかどうか確認しろとか、普通じゃねえよな?」チラッ
三隈「そ、それは……」ウツムキ
855 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:19:17.51 ID:BuX++sWso
提督「……潮」
潮「は、はい」
提督「こっちの書類を見てくれ。こいつ、なかなか愉快なことやらかしてんぞ」ニヤッ
潮「え……?」ショルイウケトリ
三隈「……!」
潮「……え、えええ!? こ、こんな……本当ですか!?」
提督「おそらく本当だ。で、こっちの書類にはこう書かれてんだよ」
提督「部提督鎮守府所属、重巡洋艦最上、並びに三隈。両名に、部提督鎮守府から××国××島鎮守府への異動を命ずる、ってな」ニヤリ
三隈「……」グッ
提督「まあ、当然っちゃあ当然だよな。手前の上司を撃つような奴が、そこに居続けられるわけがねえ」
提督「見ろよ! 余程悔しいんだか、煮るなり焼くなり好きにして構わないなんて書いてきてんぞ!」
提督「下手打った手前の自業自得じゃねえか……負け惜しみもいいとこだ! くっくっくっ……!」
潮(うわぁ……提督が悪人の笑顔になってる……)アワワ…
856 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:20:02.49 ID:BuX++sWso
三隈「……提督准尉!」キッ
潮「!」ビクッ
三隈「あなたは、最上さんを……私たちを、どうするおつもりですか!?」ジャキッ
提督「うん? どうするって……何かあんのか??」キョトン
三隈「えっ」
潮「……」アタマカカエ
提督「潮? なんで三隈はこんなに殺気立ってんだ?」クビカシゲ
潮「提督が悪い顔して笑ってるせいです!」プンスカ!
提督「……俺、そんな誤解を招かれるようなことしてたか?」
潮「してました!!」プンプンプーン!
提督「……潮にこんなに怒られたの、初めてかもしれねえ」ボソ
三隈「……」
857 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:20:47.22 ID:BuX++sWso
提督「とりあえず、三隈には一言言わせてもらうか」フー
提督「三隈、よくやった」ニヤァ
三隈「!?」
潮「……て、提督!?」
提督「何を驚いてんだよ、これは賞賛するべきじゃねえの? 潮もそう思うだろ?」
潮「それは思いますけど!」
三隈「……」アッケ
提督「セクハラなんざかます方が悪いんだよ、ざまあねえや」クックック
三隈「……あのう……」
潮「は、はいっ!?」
三隈「ここの提督は、変わってらっしゃいますのね?」
潮「……そ、そうですね……変わってるんです」ハァ
858 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:21:32.32 ID:BuX++sWso
* 工廠 *
山雲「最上さんの検査結果〜、特に問題ないそうですよ〜?」
三隈「ああ、よかった……」ホッ
山城「それにしても無茶するわね、自分の提督の……アレを撃つなんて」ポ
扶桑「でも、そのおかげでその鎮守府から追放……というより、解放? されたのよね?」
三隈「ええ……私のせいで、最上さんは……」シュン
明石「気を落とすことなんかありませんよ!」
扶桑「離れられたのはいいことだと思うわ。それにこの鎮守府なら安心よ。ね? 山城?」
山城「そうですね……ここの提督、色気には興味なしですからね」
白露「ここの提督なら、三隈さんに撃たれることもないだろうねー!」
朝雲「物資が少なかったり、いろいろ不便ではあるけど、住めば都って言いますから!」
859 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:22:17.47 ID:BuX++sWso
三隈「……もしかして、みなさんも訳ありだったりするんですか?」
山城「そうね……一人残らず訳ありよ。そうなんでしょ? 提督」
提督「まーな」
扶桑「……提督? どうかなさいました?」
提督「あー……いや、正直、三隈が羨ましくてな……」
三隈「羨ましい?」
明石「あ、もしかして……言っちゃ」
提督「俺も中佐のキ○タマぶっ潰してやりてえぞ、くそが……」ハァァァ
三隈「はい!?」カァァ
山城「ちょっと!?」カァァ
明石「ダメですよ、って、遅かったか……」アタマカカエ
朝雲「もう……その辺のデリカシーはほんっとないんだから」セキメン
山雲「いけませんわー、それはセンシティブですぅ〜」ポ
860 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:23:01.23 ID:BuX++sWso
提督「いいだろ別に。三隈だって実際に部提督に主砲で実行したんだからよー」
扶桑「流石に、そのように言葉に出すのは控えたほうがよろしいかと。女性ばかりの席ですし」
提督「しゃーねーな……」
明石「それにしてもですよ、最上さんと三隈さんの処分も、よく異動だけで済みましたね?」
三隈「最上さんは、とても長い間セクハラされてたんです」
三隈「目撃者もたくさんいますし、提督に問題があると何度も憲兵さんに訴えていました」
提督「その実績があったんで、解体処分まではいかなかった、ってこったろうな」
提督「だからって、三隈に直接書類持たせて直行しろとか、普通やるかよ?」ムスッ
白露「提督、不機嫌そうだね……」
提督「当然だ。黒潮や仁提督も言ってた噂を信じて、問題がある艦娘をこの島に送り付ける奴が現実に出てきてる」
朝雲「迷惑な噂が現実になりつつあるのね……!」
提督「この調子だとこの狭い島に、三隈たちみたいに次々と艦娘が送られてくるかもしんねーんだぞ。くそが」
861 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:23:46.95 ID:BuX++sWso
明石「結構な人数になりましたからねー。部屋数も増やさないといけなくないですか?」
提督「ドックだって拡張しねえとな。くそ、あんまり本営にこの手の頼み事はしたくねーんだけどな……」
大淀「提督、こちらにおられましたか」スッ
提督「!」
大淀「……あ、あの、提督?」
提督「なんかすっげー嫌な予感がすんだよな。お前の抱えてるFAXの束……」ウヘェ
大淀「……」
提督「また、艦娘が送られてくるのか?」ウンザリ
大淀「はい……」シュン
提督「……」
862 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:24:32.22 ID:BuX++sWso
白露「泣ーかした、泣ーかしたー」
提督「!?」
大淀「!?」
明石「せーんせーに言ってやろー」
提督「……頭、掴まれたいかお前ら」ワキワキワキ
白露「きゃーーー!」ダッシュ
明石「ちょっ、速っ!?」
山雲「逃げるくらいなら〜、言わなきゃいいのにね〜?」
提督「なにやってんだか……はぁ、しょうがねえ。大淀、そいつ、見せてくれ」
大淀「はい……」
三隈「……あのう、事情が良く飲み込めないのですが……」
朝雲「あー、それはですね……」
863 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:25:16.59 ID:BuX++sWso
* 執務室 *
提督「到着は明日か……」フー
大淀「……」
提督「4人とも命令違反ねえ……なんでそういう連中をこっちに送り付けてくるのかね」
大淀「……」
提督「……大淀?」
大淀「は、はい!?」
提督「大丈夫か? 元気ねえっつうか……いや、まあこんなもん来たんじゃ元気も失せるか」
大淀「え……いえ、私は大丈夫です」
提督「……そうか?」
大淀「大丈夫です!」
提督「……」
大淀「……」
提督「本当にそうか?」ズイ
大淀「ふえっ!?」ビクッ
864 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:26:02.23 ID:BuX++sWso
提督「お前は気付いてるかわからねえが、今まで見たことないくらいの落ち込んでるからな……さすがに心配だぞ」
大淀「い、いえ、その……わ、私はいいです……」
提督「……本当にか?」
大淀「はい……この知らせが原因では、ありませんから……」
提督「……」
大淀「ちょっと……昔を思い出しただけですので」
提督「昔……?」
大淀「……前の鎮守府で……艦娘の解体の話題になると、よく言われてたんです。そんなつらそうな顔をするな、って」
大淀「この資料を持って行ったときに、提督が……その、前の提督と似たような、うんざりした顔をしてましたので」
大淀「つい、その時のことを、思い出してしまったんです……」
提督「……」
大淀「それだけです……私が、ふと、思い出しただけで、提督が悪いなんてことはありません」
大淀「……ですから、提督は、お気になさらないでください」
提督「ふーん……なあ、大淀?」
大淀「……はい?」
865 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:26:47.25 ID:BuX++sWso
提督「俺は、お前がいてくれて助かってるぞ」
大淀「……」
提督「お前の働きはみんなのためになってるし、俺もお前を頼りにしてる」
提督「だから、その……なんだ」
大淀「……」
提督「……他人を褒めるってのは難しいな。俺、変なこと言ってないよな?」
大淀「……い、いえ……」ウルッ
提督「お、おい」
大淀「あり……ありがとう、ございます」ポロポロ
大淀「私……前のところでは、疎まれていると、感じていたので……」
大淀「そんなふうに、お褒めの言葉を、いただけたのが……」グスッ
提督「……」アタマガリガリ
大淀「うれ……うれし……う、うえ……」ボロボロボロ
提督「大淀!? だ、大丈夫か?」セナカサスリ
大淀「だい、だいっ……ふえ、ふええええ……!」グスグス
866 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:27:32.06 ID:BuX++sWso
* *
大淀「……」ダキツキ
提督「……落ち着いたか?」ダキツカレ
大淀「……」
提督「大淀?」
大淀「……」ギュ
提督「……まあ、たまにゃあいいか」
大淀「……」
大淀(……どうしよう)ミミマデマッカ
大淀(感極まって提督に抱き着いて泣いたのは終わったことだから仕方ないとして)
大淀(恥ずかしくて顔が見せられない……)ギュウ
提督「……俺は、大淀に頼りすぎてたか?」
大淀「えっ」ミアゲ
提督「いや、俺が休まないから、大淀も休ませられなかったのが悪かったのかと思ってな」
提督「そもそも俺がこんなんだしな。気が休まらないのは良くねえ」
大淀「え、あの」
提督「とりあえず、今日の業務はこれまでにしとくか。その顔、見られたくないだろ」
大淀「……!」カァァ
提督「どうする? 部屋まで送ってくか?」
大淀「し……しばらく、執務室に引き籠らせてください」カオマッカ
提督「お、おう」
867 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:28:31.83 ID:BuX++sWso
* 夕方 執務室 *
RRRR... RRRR...
提督「……」
通信『はい、中佐鎮守府です』
提督「××島鎮守府からの定時連絡だ。こちらは提督准尉……赤城はまだいないのか?」
通信『ええ。私は航空母艦、加賀です。あなたが不知火を中将のところへ着任させたひとね?』
通信『彼女に居場所と役目を与えてくれたこと、感謝しているわ』
提督「大したことはしてねえよ。俺は……」
通信『……どうしたの』
提督「いや、なんでもない」
通信『?』
提督「とりあえずだ、今日あったことの連絡を……」
通信『……中佐なら、まだ戻ってきていません。それから私も、あの男のことは良く思っていないから、警戒しないで』
提督「!」
868 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:29:17.80 ID:BuX++sWso
通信『急に口調が変わったから、私を警戒しているのだと思ったのだけれど。違ったかしら』
提督「……」
通信『あの男のせいで、赤城さんはいつも険しい顔をしているの』
通信『赤城さんは赤城さんで、私たちに厄介事が飛び火しないよう、私たちを遠ざけているし……』
提督「まあ……確かにな。ちょっと行き過ぎてるときもあるな」
通信『……あなたも、そう思うのね』
通信『それで、今日も無茶というか……ちょっとした揉め事があって』
提督「揉め事?」
通信『ええ。もし、私たち艦娘に、戦うなという人たちが現れたら、あなたはどうしますか』
提督「そりゃあれか、メディアの馬鹿どもか」
通信『……テレビ局の人たちであることは違いないわね』
通信『彼らからは、深海棲艦と話し合いができないか、女性が戦うことに異論はないのか……そういう質問が飛んできたの』
通信『その会見の席には、J少将という方が中佐と同席していたのだけれど、彼が、なぜ艦娘が戦っているのかを説明していたわ』
通信『例えば、深海棲艦には現代兵器が決定的な打撃にならず、海自や海保では太刀打ちできないこととか』
通信『自分たちの力が及ばず、艦娘に頼らないと国を守ることすら叶わないのが、悔しくて仕方がないとも語っていたわ』
提督「……」
869 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:30:01.07 ID:BuX++sWso
通信『それでも文句を言う人がいて。私たちは後ろに控えて話を聞くだけだったのだけれど、赤城さんが……』
提督「……どうしたんだ?」
通信『その文句を言う人の前まで歩いて、自分の弓を差し出して、こう言ったの』
『私たちの存在意義は、この国の人命と財産を守ること。深海棲艦との戦争を終わらせることです』
『私たちに戦うなというのなら、この弓を取り上げて、この場で折ってください』
『私たちの代わりに、この国の人命と財産を、あなたがたが守ってみせてください』
『あなたは、あの空母棲姫とも、話し合えば戦争を終わらせられるとお考えなのでしょう?』
提督「……」
通信『空母棲姫との戦闘を見た後だったからでしょうね。さすがにその人も狼狽えていたわ』
通信『そのあと、赤城さんはJ少将に下がるよう言われて、私たちも会場を後にしたのだけれど……』
通信『赤城さんは全く表情を変えなかったの。会見の最中も、その前も……その後も』
通信『もしかしたら、テレビ局の人が狼狽えていたのは、質問の内容じゃなくて、赤城さん自身だったのかも……』
870 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:30:51.62 ID:BuX++sWso
提督「お前も怖いと思ったのか?」
通信『赤城さんの覚悟は重いわ。私たちを寄せ付けないくらいに』
提督「ふん。だが、確かに艦娘たちにとっちゃあ、そいつの発言は面白くねえよな。外野の分際でうるせえって話だ」
提督「どの辺が赤城の逆鱗かは知らねえが、それに近いことを言えば、そうなってもしょうがねえ」
通信『……』
提督「てぇことはなんだ、赤城は居残りでお説教か?」
通信『いいえ、単純に秘書艦だから中佐の付き添いよ』
通信『J少将からは言い過ぎだとお叱りを受けたけれど、無知で無粋なマスコミに冷や水を浴びせたことには、溜飲が下りたとも言われたわ』
提督「……ふん、ちったあまともな奴も少しはいるもんだな。中佐とつるんでる時点で、どれほどのもんかはわからねえが」
通信『そうね……』
提督「そうすると、赤城が戻るのは夜か。明日には話ができるか?」
通信『ええ。ただ……』
提督「ただ?」
871 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:31:52.88 ID:BuX++sWso
通信『あまり赤城さんに無理難題を押し付けないでくれるかしら』
通信『これ以上、迷惑も苦労もかけたくありませんから』
提督「無理、ねぇ……そうか。それじゃ、今後は軽い雑談程度の報告にさせてもらうか」
通信『……』
提督「まだ何かあんのか?」
通信『いいえ。赤城さんとは、雑談も満足にできていないことを思い出したから』
通信『あなたが少し、妬ましく思っただけよ』
提督「……」
通信『……』
提督(どうしろっつうんだよ、面倒臭え……)
通信『悪かったわね、面倒臭い女で。自覚してるのよ、これでも』ハァ
提督「……」
872 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/11/27(水) 01:32:25.69 ID:BuX++sWso
今回はここまで。
873 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/12/11(水) 09:43:47.55 ID:50i5OocZo
待ってます
874 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/12/14(土) 17:43:28.16 ID:dy6IoZCVo
続きです。
875 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/12/14(土) 17:44:30.97 ID:dy6IoZCVo
* 翌日 執務室 *
吹雪「そういえば、司令官はいつお休みしてるんですか?」
提督「休み?」
吹雪「そうです。私、提督が一日お休みしてるとこ、見たことありませんよ?」
提督「つってもなあ……休んだって、別段何もすることがねえんだよな。気分転換なんて日頃からやってるようなもんだし……」
吹雪「その言い方だと、司令官が普段からさぼってるって言ってるみたいになりますよ」
提督「まあ、その通りだろ。普段から最低限のことしかしてねえし、深海棲艦を積極的に倒そうとも思ってねえし」
吹雪「でも、書類とか点検とか、司令官はきっちりしてますよね。普段から面倒臭い面倒臭いって口癖のように言ってるくせに」
提督「後から間違ってたから直せって言われるほうが面倒だ。大淀にも余計な手間かけさせるじゃねえか」
吹雪「司令官って、ほんっとーに、ああ言えばこう言いますよね……」
大淀「……ぷっ、くすくす」
吹雪「! お、大淀さん? な、なんで笑うんですか!」
大淀「いえ、いつの間にか、提督のお話になっていたものだから、つい……」
876 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/12/14(土) 17:45:16.89 ID:dy6IoZCVo
提督「もともと大淀の休みをどうするかって話だったんじゃねえか。なんで俺の話に逸れるんだよ」
吹雪「そ、そんなつもりはないですよ!?」
提督「そうか? まあいいや……それで、大淀は本当に大丈夫なのか? 今の勤務体制のままで」
大淀「はい、もともとこの島の仕事量もそれほど多いわけではありませんので、自由になる時間もいただいてます」ニコ
大淀「提督の仰る通り、仮に一日丸ごとお休みをいただいても、それはそれで暇を持て余してしまいますから」
提督「……そもそも娯楽が限られてるからなあ。近くに気晴らしできる施設でもありゃあいいんだがな」
吹雪「司令官はどんな施設があったらいいって思ってるんですか?」
提督「うん? 俺は別に……って、だからなんで俺の話になってんだよ」
大淀「っく、ぷくく……」プルプル
吹雪「お、大淀さん、笑いすぎですよぉ!」
大淀「す、すみません……ふふふ……」
提督「やれやれ……で、今日の予定はどうなんだっけか? 命令違反の連中が来るのって何時ごろだ?」
吹雪「え? ええっと……マルキュウサンマルですね!」
提督「じゃあ、そのころまでに準備してお出迎えってか」
877 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/12/14(土) 17:46:46.31 ID:dy6IoZCVo
大淀「はい、金剛型の皆さんに大和さんも協力して、お茶と菓子を用意すると言っていました」
提督「そうか。ちったあ暗い雰囲気をなんとかできるといいな」
吹雪「……」
提督「どうした?」
吹雪「艦娘が背きたくなるような命令を出す人が、多すぎますよね……」
大淀「吹雪さんも、捨て艦にされたと聞いていますが……」
吹雪「私を捨て艦にした前の提督は、それこそ苦渋の決断だったと記憶しています」
吹雪「重要な戦闘を前に私が大破したんですけど、危険を承知で進軍すると……私に、どうにか逃げて耐えてほしい、と」
吹雪「結局、私はその期待に応えられなくて……」
提督「一見美談に聞こえるが、力不足の艦娘を無理矢理強行させたわけだからな。そいつの肩は持ちたかねえ」
吹雪「……」シュン
提督「が、これから来る奴らに比べりゃあ、マシというか、まともな神経してると思うぜ」
大淀「……そうですね。あまりに更迭された理由が我儘すぎて……」
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