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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」

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650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/19(水) 21:29:37.41 ID:BMbqcM740
あ〜あ〜やっちまったなぁ
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/21(金) 10:05:48.34 ID:EzgF/GPF0
>>649
そうだろうか。こういうのに限って理想だけを求めて現実直視した時に絶望して八つ当たりして家庭崩壊させる典型的なおぼっちゃんお嬢ちゃんパターンな気がする。
652 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:43:39.07 ID:LGVzzbMWo
まさか動くリベッチオが見られるとは。

それでは続きです。
653 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:44:17.48 ID:LGVzzbMWo

 * 食堂 *

(不知火以外の全員が集まって、明石と由良から提督の話を聞いている……)

明石「……というわけで、提督は家族だった人たちと縁を切ったわけです」

霞「……あんまりだわ」

朝潮「司令官……今のお話、本当ですか!」ワナワナ

提督「まあ、概ねその通りだな」

五月雨「提督……」ウルッ

暁「司令官! 司令官には暁たちがついてるからね!」ヒシッ

電「電も一緒なのです!」ガシッ

提督「あー、よしよし、泣くな泣くな」ナデナデ

金剛「私もついてマース!」ガッシ

榛名「榛名も大丈夫です!」ガッシ

提督「ぐぇっ!」
654 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:45:03.11 ID:LGVzzbMWo

金剛「提督が愛を知らないと仰るのは、良い家族や友人を得られなかったからなんデスネー……!」スリスリ

榛名「榛名なら、いくら甘えても甘えられてもなでなでして差し上げてもなでなでしてくださっても大丈夫です……!」ウットリ

提督「いいから離れろ」アタマツカンデヒキハガシ

比叡「金剛お姉様も榛名も何をしてるんですか……」アタマカカエ

敷波「まあとにかくさ、司令官があたしたちに優しいのも、なーんか納得だよね」

朧「うん。でも、もうちょっと言い方が優しかったら、初対面で誤解されることも減るのにね」

潮「ほ、本当です……! 本当はすごく、私たちに気を遣ってくれてるから……!」

初雪「……言動だけ勿体ない」

吹雪「司令官、改善するなら今のうちですよ!」

提督「けっ、この齢で今更この性格を矯正できっかよ」ベー

五月雨「提督は、小さいころに頼れる人がいなかったんですね……」

提督「可哀想だなんて思ってくれなくていいぞ。今となっちゃあ、俺は連中と縁を切りたくて仕方なかったくらいだ」

提督「むしろ、最初からなにもない俺に比べれば、頼る相手を失った五月雨のほうが、よっぽどつらいんじゃねえか」

五月雨「それは……」ウツムキ
655 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:45:46.46 ID:LGVzzbMWo

提督「ま、お互い様かねえ。どっちがつらいかなんて量れるもんでもねえし、俺も慰めなんか言えねえし」

明石「だからって、その代わりに『生きたいか死にたいか』なんて言葉かける人がいますかねえ?」

提督「面倒臭いのは嫌いなんだよ。自分の行き先くらい、ちゃっちゃっと決めてくれ」

明石「そういうところを改めてください、って話ですよ……ここまで言われて恥ずかしくないんですか」

提督「全員いる前で俺の昔話を語られることのほうが、よっぽど恥ずかしいぞ俺は」

明石「それも誤解を生まないように、全員を集めてるわけじゃないですか」

由良「提督さんも以前言ってたでしょ。伝言ゲームになって嘘が混ざったら困る、って」

提督「……よく覚えてやがんな」フー

山城「それで、帰ってきたときに不機嫌だったのは、その親との仲直りをしろと言われたからなのね?」

提督「そういうこった。古鷹、お前はどう思う」

古鷹「う、うーん、難しいですね……本音を言えば、お父様と喧嘩なんかしない方がいいんですが……」

古鷹「信じられるものが根本的に違うわけですから、関わり合いにならないようにした方がいいと思います」

提督「意外だな? 博愛主義なお前のことだから、仲良くしろと説教してくるかと思ったんだが」

古鷹「残念ですが、艦娘そのものを忌み嫌う方々もいらっしゃいますし……」シュン
656 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:46:31.38 ID:LGVzzbMWo

朝雲「あー……あったわね、ヘンテコな人権団体が鎮守府前でデモ行進してたこと」

利根「なんと。そのようなことがあったのか」

大淀「日本国内の鎮守府に限れば、デモ自体はそれなりに行われているそうですよ」

大淀「国としては正式発表していませんし、一応は国家機密なので、基本的に艦娘は民間人との接触を断つように指示されていますが……」

大淀「鎮守府近辺の地域に限定されるとはいえ、艦娘の存在自体は民間でもそれなりに知られています」

長門「深海棲艦が存在する以上、隠しきれるわけではないからな」

大淀「はい。そもそも、深海棲艦が各国の船舶を襲撃するようになったのがこの戦争の始まりです」

大淀「軍隊のみならず民間にも被害が出ていますから、情報公開を求められるのは当然でして」

提督「そういやあの時は、ゴジラが出たとか宇宙人の侵略だとか、いろいろ変な噂がたったっけな……」

大淀「その後、深海棲艦に対抗できる艦娘が現れ、海軍が再編され、各地に鎮守府が設置され、現在に至るわけですが」

大淀「私たちの存在自体を否定する人たちが未だに多いのは、私たち自身が艦娘の出自を明らかにできないことが最たるところかと……」

提督「それ以上に政府も信用されてねえんだよ、テレビのせいでな」

提督「テレビが報道の自由だ、情報開示しろとか言って、視聴率欲しさに国家機密まで晒せなんて無茶振りすんのが悪いんだ」

提督「それを拒否されたら、隠蔽体質だのなんだのとレッテル貼りして逆切れだ。メディアは調子に乗り過ぎなんだよ、くそが」
657 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:47:16.53 ID:LGVzzbMWo

大淀「それもありますが、艦娘の指揮を執る人材が不足していることもあって、民間の協力者を秘密裏に募ったことも不評の一因かと」

提督「秘密裏に、ねえ」

朧「提督はどうだったんですか?」

提督「俺の場合は海軍の人間にスカウトされたんだが……そういえば、俺がバイトを辞めるって伝える前にバイト先に連絡が行ってたな」

提督「多分、俺のことを調べて裏で手回ししたんだろうな。今思えば、やけに手際が良かった気がすんぜ」ハァ

大淀「そういったこともあって、海軍は民間人に何をしているんだ、という不満も持つようになりまして……」

大淀「今の野党も、そういう団体の後押しを受けて国会で艦娘について言及を続けています」

提督「つうことはあれか。父親みたいなアンチオカルト思想の連中が、国会でギャーギャー言ってるわけか」

暁「そういう人たちに、私たちの戦いを直接見てもらったら納得してもらえないの?」

提督「どうせ見せたって納得なんかしねえよ。あいつらのやってることは宗教と同じだ」

提督「自分の信じてること、自分に都合のいいこと以外は事実であっても否定するからな」

暁「そ、そうなの……?」

五月雨「私、実際にそういう人たちと話をする機会があって、話をしたこともあります。でも、話が通じないんです」

五月雨「深海棲艦が何なのか説明しろ、から始まって、私のこと……艦娘のことは最後まで信じてもらえなくって」

五月雨「私が何を言っても、女の子が戦うなとか、洗脳されてるとか、遊びじゃないんだとか……正直、くじけちゃいそうになりました」

暁「五月雨……」
658 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:48:01.32 ID:LGVzzbMWo

提督「どうせそのうち手のひらを返すさ。人間なんか信用できたもんじゃねえ」

提督「俺も同じだ、使えるもんは使う。この鎮守府も、寄越してくる資材や食料も、あいつらが決めたルールを利用してるに過ぎねえ」

長門「使うのはあくまでも自分たちのために、か?」

提督「そういうこった。戦ってるのは艦娘たちだ、艦娘を優先して何が悪いって話だよ」

朝潮「朝潮は、司令官が間違っているとは思いません!!」キョシュ!

提督「……朝潮はあぶねーな。狂信者かお前は」ハァ

明石「極端なんですよねえ……どうにも」

如月「でも司令官? 私たちはあなたを信じてるのよ? ちゃんと自覚してる?」

提督「俺についてきてくれている以上、お前らに悪いようにはさせねえさ。こんな不自由な生活も強いてるわけだしな」

提督「もっとも、俺がいなくても生活できる環境になってくれりゃあ、一番いいんだが」

吹雪「まだそんなこと言うんですか!」キッ

如月「ねえ司令官?」ニコー

朧「提督もこりませんね」ジトッ

提督「そういう意味じゃねえよ。くっそ面倒臭え問題が残ってんじゃねーか、食料とか、中佐とか!」

全員「「!」」
659 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:48:46.53 ID:LGVzzbMWo

提督「俺だって楽になりてえんだよ。そういう面倒臭えのが残ってるから、そうもいかねえってだけだ」

由良「もう……そういう話なら、みんな手伝うにきまってるじゃない」

神通「提督は、私たちをトラブルから遠ざけようとしているのですか……?」

提督「当然だろ、人間の不始末だ。人間の俺が、カタを付けられるように道を作るのが筋ってもんだろうが」

初春「もう少し手段を選んでも良かろうに、のう?」

提督「いいんだよ、俺は善人じゃねえし。なあ?」

全員「「……」」

提督「なんだその反応」

長門「いや……なあ、って、誰に対して同意を求めてるんだ」

提督「だって俺、善人か? エゴの塊だろ? 人の弱みに付け込むクズだろ?」

扶桑「提督は、ご自身を悪者に仕立て上げるのがお好きなようですね」ハァ

伊8「うん。提督は、その自分を必要以上に卑下する悪癖を最初に何とかしないと駄目なんじゃないかな」

全員「「……」」コクリ

提督「……わけわかんねえ。俺をおだてたって何も出ねえぞ」アタマガリガリ

敷波「そーゆーとこ、あたしそっくりなのがなんかむかつく」ボソ
660 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:49:31.45 ID:LGVzzbMWo

伊8「まあ、提督の病気というか、悪いところはそれだけじゃないんだけど」チラッ

那珂「……あ、もしかして、これ?」ショルイサシダシ

伊8「そうそう。Danke」ゴソゴソ ペラリ

提督「……ああ、それの話か」

長門「何の話だ?」

明石「もしかして、提督の病気ってやつですか」

伊8「うん」

金剛「病気!?」ズガーン

榛名「そんなの大丈夫じゃないです!?」ズガーン

提督「そこまで深刻じゃねえから安心しろ」

那珂「でも、めっちゃダメージ受けてるよ、大和さん」ユビサシ

大和「……」ズーン

如月「私もわかるわ……」ションボリ

雲龍「それで病気っていうのは、何?」

伊8「人によっては朗報になるのかな」

陸奥「?」
661 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:50:16.96 ID:LGVzzbMWo

伊8「端的に言うと、提督は女性に興奮しません」

全員「「「!?」」」

神通「そ、それは一体……どういうことですか」

明石「もしかして、提督はホモだってこと!?」

全員「「「!?」」」ドヨヨッ!

金剛「...Oh, Jesus」クラッ

榛名「……榛名は、提督が同性愛者でも、だい、だい……」グラグラグラ

比叡「ふ、二人ともしっかりしてーー!?」

明石「うわー、そっか……そういう方向だったのね……」

吹雪「」コウチョク

潮「ふ、吹雪ちゃん……吹雪ちゃん!?」ユサユサ

敷波「お、驚きすぎて固まっちゃってるよ……」

朧「朧も、ちょっと頭が痛いかな……」

長門「」コウチョク

初春「長門も立ったまま失神しておるぞ!?」

陸奥「お姉さんもちょっと引くんだけど……」トリハダ

山城「私も遠慮させてもらうわ。気持ち悪い……」トリハダ
662 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:51:01.80 ID:LGVzzbMWo

暁「……ホモって何かしら?」クビカシゲ

電「よ、よくわからないのです」オロオロ

古鷹「わ、わからなくてもいいと思いますよ!?」

雲龍「……うーん」

龍驤「雲龍? どないしたん」

雲龍「私と龍驤もそう思われたりするのかしら。もしそうだとしたら困るわ」

龍驤「その辺は大丈夫なんちゃうかな」

扶桑「そうすると、私と山城もそう思われているのかしら……」

山城「姉妹はくっついてても当然ですよ扶桑お姉様!?」アセアセ

由良「ちょっと……結構ショック大きいんだけど」アタマカカエ

朝潮「……ど、どうして、男性が男性を好きになるんでしょう……」オメメグルグル

五月雨「わ、わかりません! どういう理屈なんでしょう……!?」クラクラ

利根「いや待て、提督が衆道に走るとはとても思えんのだが……」

神通「……ですよね?」

朝雲「し、司令! どういうことか説明してもらえない!?」

如月「もう……放っておいていいの?」

提督「まあ、どうでもいいんじゃねえか。俺は困らねえ」

霞「あんた、なんでそこまで自分を捨てられるのよ……」ヒキッ
663 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:51:46.68 ID:LGVzzbMWo

那珂「伊8ちゃん、わざと誤解を生むような言い方したでしょ……」

伊8「うん」テヘペロ

龍驤「やっぱりかー……ろくでもあらへんやっちゃな」ガックリ

龍驤「はいはい、みんな注目や! ちゃんと言い直すで!」パンパン

不知火「なんですかこの騒動は」スッ

提督「ん? 不知火か、丁度良く戻ってきたな。まあ話を聞いてくれ」

不知火「はい」

 *

伊8「まず、ちゃんと言い直すけど、提督は男性が好きなわけじゃないよ?」

金剛「Yeaaaaaaaaaaaaaaaaaaarr !!」ガッツポーズ

不知火「金剛さん、ステイ」ギンッ

金剛「」スッ

榛名(!?)

伊8「さっき明石さんたちが話した通り、提督は人間嫌いで、誰かを好きになったこと自体ありません」

伊8「だから、提督は普段から愛情がそういうものかわからない、と言っています」

利根「うむ……」
664 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:52:31.67 ID:LGVzzbMWo

伊8「もうひとつ、決定的なことがあって……提督は、学生のころに他人がセックスしてるところを見ちゃったんです」

 ドヨッ

吹雪「せ……!?」カオマッカ

電「はわわ……!」カオマッカ

五月雨「えええ……」カオマッカ

暁(え? セ……なに? みんなどうして顔を赤くしてるの!?)オロオロ

長門「お、おい! 駆逐艦たちもいるのにその単語はまずいだろう!!」カオマッカ

伊8「じゃあ、なんて言えばいいんですか」プクー

初春「……であれば、交尾かのう?」

長門「は、初春っ!!」アセアセ

潮「……」カオマッカ

敷波「……」カオマッカ

暁「……?」クビカシゲ

朧(暁はわからないんだ……)タラリ

不知火「……」ユゲボシュー

明石「不知火ちゃんが熱暴走してる……」
665 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:53:46.40 ID:LGVzzbMWo

初雪「ね、ねえ……朝潮はどうして平然としていられるの」

朝潮「生物学的にはごく自然な生殖行為だと思うのですが?」

霞「ま、まあ、そうね……」

朝雲「で、でも、交尾って、もう少し言い方が……」

提督「いや、交尾って言い方のほうが相応しいかもなー。ぶっちゃけ、人間じゃなくて獣見てる気分じゃなかったしよぉ……」アオザメ

山城「でも、年頃の男だったら、その手のことに興味を持つものじゃないの? そこまで嫌な思いするもの?」

由良「この前、提督さんが思い出して気持ち悪くなって吐いてたんです」

朧「してたのが、おじいちゃんとおばあちゃんだったそうですからね」

山城「……」

伊8「ともかく、それを見た提督は、気持ち悪くてトラウマになっちゃった」

伊8「なので、提督は女性に限らずそういう行為に興奮することができなくて、えっちなこともしたいと思わない人になったんです」

扶桑「それって、性欲すら湧かない、ってこと……?」

陸奥「それで手を出そうとしないのね……」

伊8「それで、気になって調べてもらったんですが、診察の結果は予想通り、EDでした。ちんちんが勃たないっていう症状です」

全員「「!?」」

金剛「」マッシロ

榛名「」マッシロ

比叡「ひえええ! 金剛お姉様と榛名が灰みたいに真っ白に!?」
666 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:54:31.40 ID:LGVzzbMWo

潮「あ、あの、それ、大丈夫なんですか? て、提督の普段の生活にも、影響が出るとか……!?」

伊8「あ、それは大丈夫。これまでの提督の生活からしても、影響はほぼないに等しいんじゃないかな」

吹雪「じゃ、じゃあ、長期の入院とか、そういうこともないんですね!?」

伊8「提督は治す気ないでしょ?」

提督「生活に困るこたねーし、何より医者は嫌いだ」

古鷹「提督……本当にそれでよろしいんですか?」

提督「いいんだよこのままで。下手に治して、反動でお前たちに襲いかかっても嫌だろ」

吹雪「それはないと思います」

朧「ないよね」

電「ありえないのです」

敷波「うん。ないない」

大淀(提督、そういうところはヘタレですから……)

神通「私も同意見ですが、大淀さんがそれを言うのはどうかと……」ボソ

大淀「!?」ギョッ
667 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:55:16.01 ID:LGVzzbMWo

暁「司令官が私たちを襲うとか、ありえないわ。みんな何を言ってるの?」

初春「……うむ、そうじゃな。そうに違いない……のう」

暁「なんか引っかかるわね……?」クビカシゲ

由良「とにかく、提督さんは現状維持ってわけね?」

提督「だな。別に気にするほどでもない病気……いや、病気でもねえな」

龍驤「いやいやあかんて。ちゃんと自分の身体の異常は、異常として認識しとき」

提督「そうか? まあとにかくだ、俺が子供を残せないことはこれで確実だってわけだな」

伊8「人工授精ならできるけど?」

提督「そういうことをしないと無理なんだろ? そこまでしたくねえよ、面倒臭え」

提督「こんなことならちょん切ってもらっても良かったかも知れねえな」

如月「司令官!?」

伊8「それはやめといたほうがいいと思う。ホルモンバランスが崩れて、女の人みたくなっちゃう可能性もあるから」

提督「マジか?」

伊8「男性ホルモンが作られなくなって、髭が生えてこなくなったりとか、胸が出てきたりする例があるみたい」

提督「髭はいいけど、胸は勘弁だな……」

如月「……」ホッ
668 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:55:53.29 ID:LGVzzbMWo

伊8「そういうわけだから、提督に迫るのはいいけど、その見返りが返ってくるとは思わないほうがいいよ、って言いたかったんだけど」

金剛「」

榛名「」

伊8「一番聞かせたい人たちが真っ白になってて、聞いてるのかわかんないから、あんまり意味ありませんね」

比叡「金剛お姉様も榛名もしっかりしてください!」ユサユサ

不知火「如月は大丈夫ですか」

如月「え? ええ……事情だけなら船の上で聞いたから」

利根「その二人も心配と言えば心配だが……」チラッ

扶桑「そうね……」チラッ

大和「……」

山城「目を閉じてずっと俯いてますものね……何も言わないのがかえって不気味っていうか」

長門「大和、大丈夫なのか」

大和「……」スクッ クルッ

大和「しばらく、一人にさせてください……」

 スタスタ…

長門「……」
669 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:56:31.52 ID:LGVzzbMWo

陸奥「ねえ、長門。本当に大丈夫なの?」

長門「た、確かに心配だが、私たちが口出ししていいものなのか?」

陸奥「だからって放っておくわけにもいかないでしょう? ヤケを起こされたら止められないわ」

長門「……そういうことか。そういうことなら行くしかないな」スクッ

如月「あの……私も行っていいかしら」

陸奥「え?」

如月「話を聞くだけなら、私も力になれると思うから……」

神通「一緒に行かせてあげてください。思うところがあるみたいですから」

長門「……わかった」

陸奥「長門!?」

長門「何かあればすぐに止める。それでいいか?」

如月「ええ」コク

陸奥「……いいわ、とりあえず急ぎましょ?」

 タタタッ…

扶桑「とりあえず、お知らせは以上かしら?」

伊8「はい。ご清聴ありがとうございました」ペコリ
670 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:57:16.53 ID:LGVzzbMWo

 ザワザワ…

不知火「司令、一つご報告が……」ヒソッ

提督「? なんだ?」

不知火「実は……」ヒソヒソ

提督「……なんだそりゃ」

那珂「提督! 那珂ちゃんからもちょっといいかな?」

提督「?? お前からもか?」

神通「はい。不知火さんもよろしいでしょうか」

不知火「? はい」

那珂「実はねえ……食堂の外に誰かいるみたい」ヒソッ

提督「!」

那珂「さっきから窓のほうから視線を感じてたんだよね。不知火ちゃん、何か気付いたこととかなーい?」

不知火「実はここに戻って来るまでの間、何者かに後を尾行された気配を感じました」

神通「そういうことでしたか……」
671 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:58:01.15 ID:LGVzzbMWo

提督「不知火を追ってきたと言うことは、相手は艦娘か?」

不知火「おそらく」

提督「……」

神通「捕まえますか?」

提督「そうだな、できればなんでこんなところに来たのか、話を聞いてみたいところだな」

那珂「那珂ちゃんも手伝いまーす!」

神通「那珂は厨房の裏口から。私は休憩室の窓から行きます。それから……」

神通「聞き耳を立てている初春さん?」クルリッ

初春「」ギクッ

神通「私たちが捕まえましたら、輪形陣でお出迎え、お願いできますか?」

初春「心臓に悪いのう……あいわかった、わらわの姉妹艦の得意技じゃな」

神通「お願いしますね。那珂、行きましょう?」

那珂「那珂ちゃん、いつでもスタンバイ完了でーっす!」ビシッ

 ビュンッ
672 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:58:46.27 ID:LGVzzbMWo

初春「……」

提督「……はえーな」

不知火「敵に回したくない人が二人に増えましたね」

初春「あの二水戦と四水戦の旗艦じゃからの……」

 窓<コンコンコン

那珂「捕まえたよーー!」

初春「……」

提督「……はえーな」

不知火「心底、敵に回したくありませんね」


 *


提督「で、お前らは何者だ」

白露「私は白露型駆逐艦の一番艦、白露です!」

島風「駆逐艦、島風です! こっちにいるのは連装砲ちゃんです!」

提督「この島には何しに来た」

白露「私はこの島がいったいどこなのかが知りたいんだけど……」

提督「なんだそりゃ」
673 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 00:59:31.21 ID:LGVzzbMWo

島風「白露と一緒に海を走ってたら、持ってた羅針盤がおかしくなっちゃって」

白露「これが壊れると、元の鎮守府に戻りたくても戻れなくなっちゃうの」

島風「羅針盤が壊れるなんて、今までなかったのに……」

白露「お願い! これ、修理できないかな?」

提督「明石、そういう話ってあるのか?」

明石「いやー、滅多なことでは壊れませんよ羅針盤は。なんたって妖精さんの謎のテクノロジー使ってますから」

白露「えええ!? じゃあ、なんでこんなにぐるぐる針が回ってるの!?」

敷波「……あー、それ、もしかして」

島風「なに? 直す方法知ってるの!?」

敷波「そうじゃなくってさ、逆」

白露「逆?」

敷波「その羅針盤がそっぽ向いたってことは……」
674 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/03(水) 01:00:16.65 ID:LGVzzbMWo

敷波「二人とも、その鎮守府から除名されちゃったんだよ」


白露「!?」

島風「!?」

神通「ああ……なるほど」

古鷹「敷波さん、それってどういう意味ですか?」

敷波「意味も何もあたしが体験済みだもん」

敷波「あたしが電たちを探すためにB提督の鎮守府を出て、数日したら持ってた羅針盤がぐるぐる回り出して使えなくなっちゃったの」

那珂「ええええ!? 本人の同意もなしに契約を切られちゃったの!?」

敷波「手っ取り早く行方不明扱いにしたかったんでしょ。どうせあたしも邪魔者扱いだったしさ! ふん!」

白露「」コウチョク

島風「」コウチョク

提督「なにやらかしたんだ、こいつらは……」
675 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2019/07/03(水) 01:01:55.88 ID:LGVzzbMWo
というわけで、今回はここまで。

波大尉たちの出番はしばらくお休み。
白露&島風登場、さらにもう2隻出す予定です。
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/03(水) 07:07:21.13 ID:N3xANJInO
まぁ最終的に駆逐艦の殆どが死ぬんだけどね
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/03(水) 19:02:33.15 ID:/X4eeocr0
そろそろ本編のメンツが揃いつつあるのかな?
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/04(木) 09:14:33.62 ID:SwhuN5zy0
久しぶりに読んでたんだけど……こっちしか読んでないけどほとんどみんな死んじゃうの!?
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 14:36:55.65 ID:BAA370ozO
>>678
ネタバレになるけど死んじゃうどころか異世界まで絡んでくるもう艦娘が出てくる別物語になるよww
吹雪が鞭振り回して女王様になったり…
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/06(土) 11:05:23.35 ID:Z7lVASY9O
>>678
そもそもDMWゲームで運営されてた他のゲームとのクロスSSが大元なんだよ
681 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:22:46.33 ID:KyRJ6wZ/o
影牢トラップガールズというゲームとのクロスです。
詳細は>>1をご覧いただければと。

というかそんなに殺してませんよ?

では続きです。
682 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:24:29.31 ID:KyRJ6wZ/o

 * 墓場島鎮守府 艦娘寮の外 *

山雲を背負った黒潮「ふぅ、ふぅ……」ヨタヨタ

黒潮「なんなんやここ……人が住んでるっぽいのに、人の気配がないとか、なんなん」

黒潮「人を探しに行った島風たちも戻ってきいへんし。不知火が入ってった、って言ってたのも見間違いちゃうんかな……」

黒潮「……工廠、どこやろ。ちゅーか、使えんのかいな」キョロキョロ

 < ウワァァァァン!

黒潮「!? な、なんや、泣き声!?」ビクッ

黒潮「あっちのほうからやな……」コソコソ

黒潮「この部屋かな?」マドノゾキコミ


部屋の中でギャン泣きする大和「うわああああああんん!!」ナミダジョバー


黒潮「!?」

大和「提督……あんまりです! あんまりですうううう!」ウワーーン!

黒潮「どういうことなん……あの大和があんな泣き方するなんて」

黒潮「もしかしてここの提督、ド外道なんやないやろな!?」

黒潮「となると、島風たちもやばいんちゃうか!? 急いで探さんと!!」

黒潮「……それにしても、さすがにお腹がすいたわ……」ヨロヨロ


大和「提督に対するあんまりな仕打ち! 提督が可哀想ですうううう!!」ウワーーーン!


683 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:26:08.93 ID:KyRJ6wZ/o

 * 食堂 *

敷波「羅針盤って、あたしたちが海域を攻略するときに、進んだほうがいいルートを示してくれるんだ」

敷波「誰も試したことがないんだけど、この針が指し示す方向と別のほうに行くと、必ずひどい目に合うって言われてるの」

提督「本当なのか?」

敷波「本当かどうかはわかんない。けど、逆に羅針盤に逆らって生きて帰ってきたっていう艦娘には、会ったことないんだよね」

提督「……なるほど」

敷波「それに、この羅針盤の通りに進んでひどい目に合うこともあるけど、帰れないほどじゃないし」

敷波「帰るときはちゃんと鎮守府のほうを向いて安全なルートを示してくれるから、羅針盤は大事なんだよ」

敷波「だから、これがぐるんぐるん回りだしたときはすっごく焦ったんだから」

提督「帰り道を誘導してくれるのか。それじゃ一大事だな」

敷波「で、ここに流れ着いてしばらくして、あたし轟沈扱いにされたってわかったじゃない?」

敷波「それで、ああ、あの鎮守府から切り離されたんだ、ってわかっちゃったんだよね」
684 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:27:06.28 ID:KyRJ6wZ/o

電「……」シュン

由良「……」ウツムキ

敷波「ああ、二人が気に病むことないって。どうせあたしもあいつが気に入らなかったんだし、いい機会だったんだってばさ」

白露「……」

島風「……私たち、どうなっちゃうのかな」

白露「……大丈夫だよ!」ガシッ

島風「え?」

白露「あたしたち、まだ沈んだわけじゃないし! こうやって生きてるんだもの!」

白露「それに、今の敷波の話だと、あたしたちは帰る場所がなくなっちゃっただけで、新しく帰る場所ができれば問題ないんだよね!?」

敷波「え? ま、まー、そうかも……」

龍驤「いやいや、ちょっち待ちぃや。うちが言うのもアレやけど、何したら除名処分されるんよ?」

白露「わかんない」

龍驤「は?」
685 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:28:18.75 ID:KyRJ6wZ/o

白露「だって、私たちなにもしてないよ? 自主訓練してただけなんだけど」

利根「……」

島風「私たち全然出番がなくって。私たちの提督からお呼びがかからないから、自主的に訓練してたんだよ?」

由良「それ……本当?」

白露「本当だよー!?」

提督「こいつらの言ってること、おかしいのか?」

初春「うむ。白露はともかく、島風は駆逐艦の中でも破格の性能を誇っておる。それを放ったらかしというのは理解できん」

不知火「島風は重雷装駆逐艦と呼ばれることもあるほどですが、特筆すべきはやはりその速度かと」

五月雨「そうですね。普通なら、島風さんがいたら重用しない司令官はいないと思います」

提督「じゃあなんで艦隊に編成されてないんだ」

白露「簡単だよ、私たちの司令官の仁提督は、戦艦や空母の人たちしか興味ないんだもの」

島風「そうそう! 私がいくら速くっても、艦隊に入るのは長距離砲を撃てる戦艦の人たちばっかり!」

白露「駆逐艦の子は遠征に行くだけの最低限の人数しかいなくってさ。島風は珍しいから解体されなかっただけみたいなんだよね」

山城「また偏った思想の司令官ね……」ハァ
686 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:29:20.33 ID:KyRJ6wZ/o

島風「私以外はみんな睦月型でさ。姉妹艦がいなくて、ぼっちだったところを、新造艦の白露に声をかけられて……」


 白露「私が島風のお姉ちゃんになってあげる!!」


島風「とか言い出したの。遅いのに」

白露「遅くなーい! 明石さんに頼んで思いっきり速くしてもらったもん! 今は私のが速いよー!」

島風「そんなことないもん! 島風のほうが速いもん!」

白露「私のほうが一番だよ! 一番艦だもん!」

 ギャーギャー

暁「……お姉ちゃん、かぁ」ウーン

吹雪「……」

提督「なんだかな……こいつら、単純にやかましいから切られたんじゃねーのか?」

扶桑「それより、自主訓練だと言っていましたが、ちゃんと許可を取って海に出てきたんでしょうか?」

提督「命令違反の度が過ぎた、ってか?」

扶桑「定かではありませんが」
687 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:30:04.78 ID:KyRJ6wZ/o

大淀「とにかく、これだけ元気だと自殺志願者ではなさそうですね」

朧「お決まりの台詞はお預けですね」

提督「まあ、そうっぽいな……ただなあ」

神通「この鎮守府の所属にするかどうかは、考え物ですね」

提督「だな」

潮「そ、それはどうしてですか?」

提督「この二人が仁提督の鎮守府から切られた理由が、本当にそれだけかがわからねえ」

提督「本当の問題がどこにあるのか、探ってみたほうがいいな」

初春「!」キラーン

提督「そういうわけで初春。お前、不知火と一緒に本営回って仁提督の鎮守府に探り入れてこい」ハァ

初春「うむ! 任せよ!!」ムネポーン!

提督「それから白露と島風は……」

白露「一番艦がどれくらい速いか、見せつけてあげるんだから!」

島風「そっくりそのままお返しするよ! 島風が一番速いもん!」

提督「……」ピキ

吹雪「あっ」
688 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:32:03.09 ID:KyRJ6wZ/o

提督「おい」ヌゥッ

白露「え!?」アタマガシッ

島風「おうっ!?」アタマガシッ

提督「お前らは少し静かにしろ。こっちの話を聞きやがれ」

白露「あぎゃあああ!?」メキメキメキ

島風「うおおおおう!?」メキメキメキ

提督「お前ら今の自分の立場、わかってんのか? ああ?」ピキピキ

五月雨「……何やってるんですか白露姉さんは……」ガックリ

朧「まあ、いい薬なんじゃないかな」

「そこまでや!」

神通「!」バッ

那珂「提督!」バッ

窓の外から入ってくる黒潮「動くんやないで!!」ジャキッ!

島風「!」

白露「黒潮!?」
689 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:34:44.35 ID:KyRJ6wZ/o

 * 一方 艦娘寮から食堂に通じる廊下 *

長門「……」

如月「大和さん……」ウルッ

陸奥「彼女、本当に提督のことが好きなのね」

長門「ああ……一人にしてほしいと言うのもそういうことだったんだな」

如月「あんな風に泣いてるところ、誰にも知られたくなんかないですものね……」

陸奥「ええ、泣き止むまでそっとしておいたほうが良さそうね」

長門「とりあえず食堂に戻ろう。大和が泣いていたことは秘密だぞ」

如月「はい……? 食堂が騒がしいわ」

長門「何だ……っ!?」


黒潮「放しぃ! なんでこいつの肩を持つんや!」ジタバタ

神通「おとなしくしててくださいね」ギリッ

黒潮「あだだだだ!?」

金剛「私たちが気絶してる間に、何事デスカーー!」

榛名「勝手は榛名が許しません!」

伊8「いや、もう遅いんだけど……」
690 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:36:51.37 ID:KyRJ6wZ/o

島風「黒潮!」

白露「ああもう! この手! いい加減放し」

提督「ああ?」ギリッ

白露「痛い痛い痛ーい!!」メキメキ

如月「ちょっと、何の騒ぎなの?」

不知火「余所の鎮守府の艦娘の乱入騒ぎです」

陸奥「えええ!?」

長門「どういうことだ! 殴り込みか!?」

黒潮「うるっさいわ! なんでみんな、こんな外道にへこへこしとるんや!」

金剛「外道!? そんなこと絶対ありまセーン!」Boo!

霞「そうよ、外道じゃないわよ。ただのクズよ」

朝潮「霞!?」ガビーン

暁「ちょっと待ってよ、司令官の何を見て外道なんて言うの!?」

黒潮「うちは見たんやで! そいつのせいで、大和が泣いてるところを!」

陸奥「え」
691 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:39:21.42 ID:KyRJ6wZ/o

黒潮「あんな風に大和をギャン泣きさせといて、しれーっとしとるそいつの神経がわからん言うとんねん!!」

長門「……」ハァ

如月「……仕方ないわ、長門さん」

榛名「そ、それは榛名も、無理もないと思います……」

黒潮「はぁ?」

那珂「黒潮ちゃん、それ、大和さんの名誉のためにも、言わないほうが良かったと思うんだけどなー」

黒潮「どういう意味やねん、それ!」


 * かくかくしかじか *


黒潮「……ほんまかいな」ムスッ

那珂「本当だってば。ここの提督さんはセクハラどころかエッチなこと自体に抵抗を持ってる人だもん」

黒潮「ふんっ、どうやろな!」

不知火「随分と跳ねっ返りますね」

電「とにかく、司令官さんは私たちの嫌がることはしないのです」
692 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:40:07.36 ID:KyRJ6wZ/o

島風「だったら私たちも早く放してよーー!」

提督「話を聞こうとせずにどっか行こうとするから捕まえてるだけじゃねえか」

利根「うむ。おぬしたちはまず静かにせよ」

黒潮「……まあええ。百歩譲ってそういうことにしといたる。うちは信じられへんけどな……!」

神通「ところで、外にもう一人、いるのではないですか?」チラッ

黒潮「!! せや、山雲や!」

朝雲「山雲!?」

黒潮「海上で拾たんやけど、気絶したまま動かんのや! うちとは関係あらへんから、助けたって!!」

提督「関係ない?」

黒潮「うちとは所属が違うっちゅう意味や! なんも後ろめたいことはない! やから……」

提督「朝雲、明石、すぐ見てやってくれ」

朝雲「ええ!」ダッ

明石「わかりました!」

提督「とりあえず、なんでこの島に来たのか、ゆっくり話を聞こうじゃねえか」

提督「込み入った事情もあるみたいだし、なあ?」ギロッ

黒潮「……っ!」ジロッ
693 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/07(日) 17:42:06.63 ID:KyRJ6wZ/o
というわけでここまで。

黒潮、山雲も遅れて登場です。
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/07(日) 22:12:29.49 ID:SWHBfoFMO
>>681
そんなに殺していませんよ?(墓場提督側以外)
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/09(火) 07:32:05.96 ID:6RncqbpXO
乙でした。
696 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:32:20.63 ID:uHfOFbsco
続きです。
697 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:32:51.04 ID:uHfOFbsco

 * 仁提督鎮守府 *

仁提督「よしよし! 戦艦はやはり強いな! 空母が制空権を抑えれば、何も怖いものはない!」

仁提督「よぉし、このまま北方海域も突き進むぞ!」

大淀(仁提督鎮守府所属)「あの、提督……」

仁提督「なんだ大淀、駆逐艦の育成の話か? それだったら日頃から遠征で育てている睦月型で事足りているだろう」

仁提督「我が艦隊の主力はあくまで戦艦だ。駆逐艦はあくまでスポット的な運用としか考えていないというのに……」

仁提督「これ以上駆逐艦に手をかけてはおれん。さっさと除名処分して、新しい戦艦のために枠を開けるべきだ」

大淀「だからと言って、そのように強制的に除名してしまっては……」

仁提督「島風も、自主訓練したいというから第4艦隊を任せていたが、闇雲に出撃するだけで戦果が上がっとらん」

仁提督「だいたい、たまたま建造でできた白露が焚き付けたせいで、白露にも余計な改装を施すことになった!」

仁提督「戦艦の恒常的な運用のために必要な資材を無駄にする気はないぞ!」

大淀「ですから、それでは……」
698 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:33:33.05 ID:uHfOFbsco

仁提督「この艦隊の司令官は私だ。命令違反したからこそ除名した、それに何か問題があるのか」

大淀「そうではありません、問題なのは……」

仁提督「我々が戦線を維持していくためには、主力である戦艦の維持が必要不可欠なのだ」

仁提督「駆逐艦だけではなく、軽巡洋艦も不要な艦は資源に変える。一番良いのは、潜水艦による資源調達チームの編成だな」

大淀「……提督」

仁提督「よし、知り合いに頼んで潜水艦娘を融通してもらえないか、交渉してみるか。大淀は引き続き第一艦隊に出撃の連絡を出せ」

大淀「提督! お話を……!」

仁提督「くどい! 俺に指示に対する返事は!」

大淀「……了解、致しました」

仁提督「それでいい!」

 バタン

大淀「……はぁ……仁提督では、北方海域を攻略できなさそうですね」ハァ
699 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:34:21.29 ID:uHfOFbsco

 * 墓場島鎮守府 執務室 *

不知火「なるほど。そのようなことが」

初春「ふむ……北方海域か。あまり良い思い出はないのう」

提督「昔の話か?」

初春「それもある。が、今は今で厄介な仕掛けがあると五月雨から聞いておる」

初春「北方海域には、駆逐艦だけの編成にしないと、決して最奥まで辿り着けない海域があるそうじゃ」

提督「なに?」

陸奥「聞いたことがあるわ。キス島のあたりでしょ?」

初春「うむ。入れたとしても軽巡を一隻まで、じゃな。でなくば、羅針盤と潮流に阻まれ、それ以上の進軍は成らぬのじゃ」

大淀「仁提督の方針では、北方海域の突破は難しいと思います」

提督「北方海域への進軍が近かったら、その辺の情報も仕入れてるよな? なのに、島風と白露を切ったってか」

大淀「どうしてなんでしょう……」ウーン

提督「単純に、仁提督が調べてないか、その手の情報を無視してるか、どっちかだな」

白露「島風、何か心当たりない?」

島風「うーん……正直に言うと、私、あんまり歓迎されてなかったし……」

初春「なんじゃと……?」
700 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:35:02.92 ID:uHfOFbsco

黒潮「それ、ほんまなん?」

島風「本当だよ、『ふーん、そうか』程度のリアクションしかされなかったもん」

黒潮「ありえへんて。島風が欲しい言うてる提督、大勢おるのに」

提督「そいつが島風の能力を重要視してねえんだろ。なんか、話聞く限り射程や火力の高い艦を優先してるっぽいしな」

白露「そんなあ! 島風のいいところを無視するつもり!?」

提督「というより、戦艦しか見えてねえんだろ。艦種でばっさり見切っちまってんじゃねーの」

提督「仮に除名されずに仁鎮守府に戻ったとしても、早かれ遅かれ除名か解体か、そこらへんになってたんじゃねえか?」

白露「そんな!?」

提督「戦艦を出撃させるために、無駄を削って遠征を増やすのが常になってるなら、出撃予定のない駆逐艦の強化をよしとするか?」

提督「多分、そいつは全部戦艦と空母で事足りると思ってんだろ。初春、その辺の裏付け、とってこれるか?」

初春「うむうむ、わらわに任せよ」ムネハリ

島風「……やっぱり、必要とされてなかったんだ」シュン

白露「……島風、気を落とさないで」

陸奥「ねえ、初春ってこういうの得意なの?」ヒソッ

大淀「出たがりなんです。好奇心旺盛というか、推理小説好きだからというか」ヒソヒソ

陸奥「ああ……」
701 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:35:47.86 ID:uHfOFbsco

提督「でだ、次は黒潮の番だが」

黒潮「……」ジロッ

提督「俺を睨んだってなにも出ねーぞ。話す気がないならとっとと家に帰んな」

黒潮「……うちに帰る場所なんか、あらへんわ」

不知火「黒潮……?」

黒潮「うちはなあ……人を……人間を、海に連れ出して捨ててやったんや……!」ギリッ

白露「!?」

島風「え……ええええ!?」

黒潮「せやから今のうちは犯罪者も同然や。帰りたくても帰れへんねん」

黒潮「けど、別に帰りたいとも思わん。あいつがあんな奴だとは、思わんかったからなあ……!」ギリギリッ

初春「……提督よ、この殺気は危険じゃぞ!」

提督「別にいいだろ。怒りたいんだろ? どうせ俺には関係ねえ」

大淀「提督!?」

提督「いいから何があったか喋ってみな。お前のその怒りの理由……俺たちに聞かせられないようなことか?」

黒潮「……」
702 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:36:32.77 ID:uHfOFbsco

白露「私は話を聞くよ!」

島風「し、白露!?」

白露「だって、海上で声をかけられたとき、黒潮は中破した山雲を背負ってたじゃない!」

白露「気を失ってたところを、放っておけなくて連れてきたって言ってたじゃない!」

白露「見ず知らずの誰かを心配できる人が、悪い人なわけないよ!」

黒潮「……白露……」

提督「人の話を聞かない奴がよく言うぜ……」ハァ

陸奥「とにかく、そこまでするに至る理由があるわけでしょう? その理由はちゃんと聞くべきよ」

不知火「黒潮。話してもらえませんか」

黒潮「……ええわ、話したる。胸糞悪いけどな」


 *


黒潮「うちは、保提督の鎮守府の艦娘や。規模はまあ、中の下くらいの、ほどほどの鎮守府やな」

黒潮「その鎮守府には陽炎型が4人おってな。うちと、雪風、嵐、萩風が着任してる」

黒潮「その中ではうちが一番上……陽炎型の三番目やから、雪風たちは妹みたいなもんなんや」
703 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:37:18.25 ID:uHfOFbsco

提督「不知火も陽炎型だったか?」

不知火「はい。不知火は陽炎型の二番艦に当たります」

黒潮「……あの3人にしてみればうちは一応お姉ちゃんやから、まあ、それなりに姉らしいことはしとったんよ」

黒潮「けど、あの日、どうしても許せない事件が起きたんや……!」

白露「何があったの?」

黒潮「保提督が、学生時代のいじめっ子に、ゆすられとったんや」

島風「え……!?」

黒潮「子供のころの弱みっちゅうか恥ずかしい写真をばらまかれたくなかったら、言うこと聞けって言われとったらしいんよ」

黒潮「金やら何やら巻き上げられて……ほんとアホらしいわ。警察なりなんなりに突き出せば良かったんや」

提督「……」イライラ

初春「提督よ。あからさまに不機嫌な顔をしておるな」

提督「当然だ。ほいほい言うこと聞いてたら、そいつらが調子に乗るのが目に見えてる」イライラ

黒潮「……ようわかるな。その通りや」
704 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:38:03.44 ID:uHfOFbsco

黒潮「それで、そいつらが次に何を要求したか……わかる?」

島風「……?」

白露「……何て、言ってきたの?」

黒潮「雪風たちと会わせろ言うてきたんや……!」

大淀「!」

提督「……それで、会わせたのか?」

黒潮「ああ、会わせたったよ。可愛い服を着せて、艤装を外してなあ?」

初春「馬鹿な!?」

提督「……おい、オチが読めたぞ。そいつは保提督の差し金か? だとしたらとんでもねえ下衆野郎だな」

黒潮「まあ、そういうことや……!」ギリッ

島風「え? ど、どういうこと!?」

大淀「艦娘は艤装を外すと、力が普通の人間と同じくらいにまで制限されます。安全装置のようなものです」

大淀「その安全装置がかかった非力な状態で、提督を脅かすような相手と会うことが、安全だと言えますか?」

白露「え……」
705 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:39:07.15 ID:uHfOFbsco

大淀「そういうことなんですね、黒潮さん?」

黒潮「そう……あいつは、雪風たちを襲わせたんや。自分の保身のためになあ……!」

全員「「……」」

提督「よくやるぜ、くそが……!」

陸奥「最低ね……」

提督「今の話が本当なら、黒潮の怒りは至極当然だ。黒潮のやった行為は非難されるようなことじゃねえぞ」

黒潮「……」

提督「お前らはどう思う?」

島風「……信じられない、よ……」フルフル

白露「うん……まさか、そんなことをする人がいるなんて」アタマオサエ

初春「とんだ愚物がいたものじゃのう……!」

不知火「はい……頭に来ました」

大淀「提督、どうなさるおつもりですか」

提督「……どうすっかねえ。その雪風たちを助けに行くか? それとも保提督をぶちのめすか?」
706 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:39:48.11 ID:uHfOFbsco

初春「ふむ……もう少し黒潮から仔細を訊かねばなるまい。黒潮よ、雪風たちは今どうしておるか、わかるか?」

黒潮「……」フルフル

島風「それじゃ、雪風たちは……」アオザメ

黒潮「あー……その、襲われたって言ったけど、実際にはぎりぎり現場を押さえて阻止できたんよ」

白露「本当!?」パァッ

島風「良かった……!」ホッ

黒潮「あの日、うちは遠征に行くように指示されてたんやけど、そのときに変な話を聞いたんよ。雪風たちがおめかししてる、って」

白露「おめかし?」

黒潮「うん。お洒落な服を着て、艤装を外してた、て」

黒潮「雪風たちは比較的最近着任したんよ。だから同型艦のうちが、あの三人のお世話係みたいなもんやったん」

黒潮「実際、陽炎型としてもうちの妹分やから、可愛がらなあかんなあ、って。ちょっとはお姉ちゃんらしいとこ、見せたろ思とったん」

黒潮「そこに艤装外すだの、可愛いおべべ着せてるだの、胡散臭いことしてたら気になるやん……」

初春「……それで、雪風たちを尾行したと?」
707 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:40:33.10 ID:uHfOFbsco

黒潮「……ほかの子に遠征の任務の代わりをお願いして、保提督と一緒に出掛けてった3人のあとをこっそりついて行ったんや」

黒潮「人通りの少ない港の倉庫街を歩いてるのも、お忍びやからかなー、って考えてた」

黒潮「ついたら古臭い雑居ビルのカラオケボックスで、チャラそうな男たちがおって……おとなしい保提督の連れとは思えんかった」

黒潮「それがどうにも嫌な感じがして、もう気が気でなくて、中に入ろうか入るまいか、ビルの周りをうろうろしてたんよ……」

白露「……そ、それから?」

黒潮「しばらくしたら……保提督だけが一人でビルから出てきたんや……!」

黒潮「見た瞬間、血の気が引いたっていうか、さあっ、と、体温が抜けてったっていうか……」

黒潮「そんで、保提督の襟首掴んで、問い詰めたんや。雪風たちをどこへやった、て」

黒潮「保提督は、答えてくれんかった。なんのことだ、って、とぼけよった」

黒潮「それでぷっつん来て、力づくで居場所を吐かせて……その部屋に入ったら、雪風たちは部屋の隅に追いやられてた」

島風「無事だった……ん、だよね?」

黒潮「……うん」コク

黒潮「けど、3人ともあちこち引っ掻き傷やら擦り傷やらつくってて、服も破けてて……悔しいやら悲しいやら、泣けてきてなあ」

黒潮「3人を襲った奴らも、保提督も許せなくて……馬鹿男4人担いで港に行って、そのまま海に出たんや」

白露「……」
708 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:41:19.47 ID:uHfOFbsco

黒潮「ほどほどに沖に出たところで、そのゴミどもを海に投げ捨てて……あとはもう、そのまま当てもなく……」ウナダレ

初春「……」

島風「……」

大淀「……その、保提督たちは、死んだんですか?」

黒潮「……どうなんやろ」ハァ…

黒潮「怒りに任せて海に出たはええけど、そのあと妙に冷静になって……」

黒潮「このまま保提督が死んだら、雪風たちやみんなに迷惑かかるかなあって……」

黒潮「沖から50か、60メートルくらいやったかなあ……このくらいなら泳いで戻れるかな、ってあたりで投げ捨てたんよ」

黒潮「せやから、あいつらがどうなったかは確認してないねん……」

陸奥「そういうことなら確かめようがないわね……」

白露「黒潮はそのあとどうするつもりだったの?」

黒潮「……少なくとも鎮守府には戻れへんと思ったし、自分の司令はんを沖に投げ捨てるような艦娘なんか、即解体されるやん」

黒潮「帰るのも馬鹿馬鹿しいし、だったらこのまま行方知れずになろかな、って。保提督の不始末になればええねんて、思ったん」

白露「で、でも、それじゃ雪風たちが心配するよ!」

黒潮「……そうなんよ……そうなんやけど」ガックリ
709 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:42:17.98 ID:uHfOFbsco

提督「やっちまったもんはしょうがねえ。大淀。この場合、黒潮は脱走扱いになるのか?」

大淀「それもありますが……司令官である保提督への暴行と、民間人に対する暴行というのも、看過できないかと」

提督「そっちも面倒だな。黒潮が死ぬ気じゃないなら、戻ってもいいことはねえか」

不知火「……黒潮」

黒潮「……?」

不知火「今のあなたの、望みはなんです」

黒潮「望み……望みなあ」

黒潮「雪風や、嵐や萩風が無事なら……それが一番やな」

黒潮「……できたら、みんなと……また、一緒に出撃したかったけど、さすがにそれは無理やろなあ」ウルッ

白露「……」

島風「……」

提督「なあ、不知火」

不知火「はい」

提督「黒潮のいた鎮守府……保提督だったか? そいつと、そこにいる陽炎型の艦娘が今どうしてるか、初春と一緒に調べられるか?」

不知火「はい」コク
710 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:43:02.72 ID:uHfOFbsco

提督「それから、保提督が艦娘と外部の民間人を引き合わせた件、大事件にできねえかな?」

島風「え!? な、なんでそんなことするの!?」

提督「黒潮のやったことが、しょうがねえな、って思われるくらい保提督が悪かったことにする。黒潮が戻って罪に問われない方法はそれくらいだろ」

黒潮「……!」

提督「話をでかくするとしたら、駆逐艦娘を使った売春の斡旋を企んだことにするか。艦娘の機密情報の流出あたりも使えるか?」

大淀「ええっと、そうですね、ほかには……」バインダートリダシ


黒潮「……」

陸奥「ねえ」

黒潮「!」

陸奥「あの人、そんなに悪い人じゃないわ。本当にいい人かは、私も着任して日が浅いからそうとは言い切れないけど」

陸奥「でもね。提督は、私たちの望みを、可能な限り聞いてくれる人で、私たちの憂いを、可能な限り排除しようとしてくれる人よ」

陸奥「とっても不器用だけど、あなたが生きることを諦めない限り、味方になってくれる人だから」

黒潮「……せやろか」プイ
711 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:43:48.09 ID:uHfOFbsco

提督「というわけでだ、不知火」

不知火「はい」

提督「刑罰が重たくなりそうな罪状、全部重ねて訴えろ。保提督が生きてたら社会的にぶっ潰してやれ」

提督「死んでたら死んでたで、死んでも当たり前って思われるくらい罪状盛っとけ。死人に口なしだ」

大淀「て、提督! あまり虚偽の報告はしないようにお願いします!」

提督「いいだろ少しくらい」

大淀「ちょっとした勘違い程度にしてください!」

黒潮「……」

不知火「黒潮?」

黒潮「ん? あ、ああ、なんや?」

不知火「少し安心しました。なんとなく、目に光が戻ったような気がしたので」

黒潮「! も、もう、何言っとんねん! 恥ずかしいやんか!」

初春「うむうむ、元気が出たようなら何よりじゃな」

提督「おい、まだ話は終わってねえぞ。山雲の話が残ってんだ」

全員「「!」」
712 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:44:33.34 ID:uHfOFbsco

提督「黒潮が、港から外海に出て、その途中で見つけたって話だったな?」

黒潮「あー、うん。そうや」

提督「黒潮と山雲に面識はない。白露と島風は同じ仁提督鎮守府の出で、黒潮、山雲ともに面識がない」

白露「うん、そうだねー」

提督「山雲は誰に中破させられたんだ? そして、山雲はどこの鎮守府の艦娘なんだ?」

全員「「……」」

提督「わかんねえよなあ……こりゃ本人が目を覚まさねえとわからなさそうだな」

初春「……しかし、随分な偶然じゃな。所属の違う3艦隊が、揃ってこの鎮守府に辿り着くとはのう?」

提督「事実は小説より奇なり、ってな。ま、こっちに都合のいい偶然なら、いくらでも起こってもらいたいもんだ」

 コンコン

山城「都合のいい偶然ね……私たちには縁のない話だわ」ガチャ

全員「「!」」

扶桑「失礼します、お茶をお持ちしました」ニコニコ

提督「おう、ありがとな」
713 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:45:18.47 ID:uHfOFbsco

山城「提督、この部屋は防音してないの? 扉の前から話が筒抜けなんですけど」

提督「妖精がそこかしこで聞き耳立ててるからな。防音なんてあってないに等しいぜ?」

山城「それこそ少し考えたらどうなの? それでもあなた、この鎮守府の司令官?」

提督「俺は妖精と艦娘のおかげで提督できてるようなもんだ。下手に隠そうとしたほうが良くねえと思うが?」

山城「まったく、ああ言えばこう言う……」

扶桑「それはそうと、山城? あなたは本当に、その都合のいい偶然には無縁だと思ってるの?」ニコニコー

山城「それはまあ私たちにとっては……って、何を仰りたいんですか扶桑お姉様」

扶桑「いいえ? 少なくとも、私が助かったのは偶然にしては都合が良すぎると思って。提督、お茶をどうぞ」コト

提督「ん」

山城「……姉様……」

扶桑「それだけじゃないわ。那珂が救われたのもあなたがいたからでしょう? 本当に、それらはただの偶然なのかしら」

初春「話が出来過ぎておる、と?」

扶桑「……どう、なのかしら。誰かが仕組むなんてこともできないし、本当に出来過ぎた話なら、時雨も助かっていたと思うのだけれど」

提督「そうだな、流れ着く艦娘の全員が助かってるわけじゃねえからな」
714 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:46:02.81 ID:uHfOFbsco

黒潮「なんか……もしかしてこの島、えらい物騒なとこなんか」

提督「墓場島、って聞いたことあるか? 本営とか、巷じゃあそう呼ばれてるってよ」

黒潮「うわ……うち、聞いたことあるわ」

島風「えっ!? なになに!?」

白露「どういうこと!?」

提督「この島には、大破轟沈した艦娘がしょっちゅう流れ着いてくるんだ。俺がそいつらを埋葬してたら、そんな別名が付いた」

提督「ま、最近はだいぶ轟沈艦が減ったみたいで、流れ着いてくる奴も減ったけどな」

提督「扶桑には前も言ったが、遺言が聞ければ上等、生きてりゃ奇跡。お前らみたいに生きて流れ着いてくる奴はあんまりいねえな」

黒潮「……うちが聞いた話はちょっと違うなあ?」

提督「違う?」

黒潮「使い物にならなくなった艦娘が送られる島、て聞いたで。言うことを聞かない子や、何かしら問題がある艦娘を放り込む場所、て」

提督「……誰だそんなこと言ってた奴は」ピキ

黒潮「そんなん噂や噂。誰が言ってたか、正確な出所なんてうちわからんもん」

大淀「……」ブゼン

陸奥「……」フクザツ

初春「まあ、ある意味間違ってはおらんかの。わらわも捨て艦にされて沈んだ身、使い物にならんからこそ、この扱いをされたわけじゃ」
715 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/15(月) 11:48:23.57 ID:uHfOFbsco

提督「そういう噂があること自体、問題だがな。噂を放置しておくと、どっかの馬鹿が艦娘をこの島に押し付けてくる」

提督「ここは介護施設じゃねーんだぞ。不知火、中将と本営に釘刺してこい」

不知火「く、釘……ど、どのようにすべきかわかりませんが……しょ、承知しました」

黒潮「中将!? そんなとこと繋がりあんのかいな」

山城「提督の階級は准尉だけれどね」

黒潮「いや、それやったら中将に釘刺すとか何言うてんねん!? 大丈夫なんか!」

大淀「大丈夫もなにも、この島にはもういろいろな特例が出てますから。轟沈経験艦をそのまま運用して良いとか……」

黒潮「……」

扶桑「まあまあ、お話はこれくらいにして。羊羹もあるからどうぞ?」

陸奥「あら、おいしい。これ、比叡が作ったの?」

黒潮「ひえ……っ!?」

山城「まあ、そういう反応になるわよね」

陸奥「利根が嘆いてたわよ。新しく入った艦娘が比叡の料理を食べるたびに驚く姿を見ると、比叡が気の毒だって」

島風「……不思議な場所だね、ここ」

白露「……うん」
716 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2019/07/15(月) 11:50:01.50 ID:uHfOFbsco
今回はここまで。
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 13:32:39.30 ID:mjJrXz6AO
乙でした。
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 23:02:38.76 ID:tPMcHYoao
乙乙。
…この鎮守府の地下にはグランゾンが埋められている!(ババーン
719 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 21:56:32.94 ID:mnCcr+a9o
続きです。
720 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 21:57:33.20 ID:mnCcr+a9o

 * 工廠 入渠ドック *

黒潮「わけわからへん。この島、いったいなんなんや……うち、夢でも見てるんか」

陸奥「そう思うのも仕方ないわね。みんな訳ありなのよ、この島の艦娘たちは」

明石「まともな着任した艦娘がほぼいませんからねえ!」アハハー

黒潮「いや、それ笑うところちゃうんちゃうか」

朝雲「笑わないとやってられないところもあるわよ?」

黒潮「なんか、もうやけくそやな……」

龍驤「まあまあ、笑う門には福来るて言うし、ぶすっとしてても事態は好転せえへんよ。ストレスためないほうがええで」

雲龍「心配事があるんだろうけれど、今は自分を気遣ったほうがいいわ」

黒潮「ん……」ウツムキ

朝雲「元気ないとこ悪いんだけど、黒潮!」

黒潮「……なんや」

朝雲「山雲を助けてくれてありがとう!」ペコッ

黒潮「……っ」
721 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 21:58:24.31 ID:mnCcr+a9o

雲龍「どうしたの?」

黒潮「……いや、助けたのは、たまたまや。たまたま、見つけただけやし……」

朝雲「だとしても、お礼を言うのは当然よ」

雲龍「私もたまたま、龍驤に助けられたわ。お世話になったなら、その気持ちを伝えたいと思うもの」

白露「初春も捨て艦にされたって言ってたけど、もしかしてそんな艦娘ばっかりなの?」

龍驤「その辺の事情はそれぞれやな。うちと陸奥は……厄介払いされたって感じかなぁ?」

陸奥「まあ、そういうことにしておこうかしら」

明石「私もそんな感じかなあ……私たちの場合はご丁寧に雷撃処分までされましたけど」

島風「えええ!?」

朝雲「明石さんにしても、龍驤さんたちにしても、共通してるのは、その当時の司令官がクズすぎるところよね」

陸奥「朝雲のところはどうだったの?」

朝雲「前は本当におバカだったんです。今はもう別人みたいにちゃんと働いてるみたいだけど」

白露「ってことは、改心したんだ?」

朝雲「練習巡洋艦の香取さんが再教育したの。前は古鷹さんが馬鹿みたいに甘やかすから、本当にもう勘違いしまくってて……」ハァ
722 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 21:59:06.70 ID:mnCcr+a9o

古鷹「朝雲さん呼びました?」ヒョコ

朝雲「うひゃあ!? よ、呼んでないですよ!?」

龍驤「古鷹、山雲はどないやった?」

古鷹「修復材を入れたプールに入ってもらっていますが、顔色がだいぶ良くなりました。そろそろ目を覚ますと思います」ニコッ

雲龍「そう。じゃあ、次は私の番ね、見てくるわ」

龍驤「よろしく頼むでー」

朝雲「目を覚ましそうなら呼んでくださいねー!」

黒潮「……うん。助かりそうならええことや……うん」

島風「……黒潮は、雪風たちが心配なの?」

黒潮「まあ、せやな……雪風たちから一刻も早くあいつら遠ざけたくて、ろくに話もせんで後にしたから……」

白露「それじゃ、提督准尉から保提督の鎮守府に連絡が取れないか、聞いてみようよ?」
723 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 21:59:48.26 ID:mnCcr+a9o

島風「うん、そうしよう!」

黒潮「ちょっ、余計なことせんでも」

不知火「そういうことでしたら、不知火からも進言してみます。中将にも事態の確認を促してみますので」スッ

黒潮「不知火……!」

不知火「黒潮。不知火も陽炎型ですから、遠慮は不要ですよ」クルッ

黒潮「……そか……そやな……」

明石「さ、お話はこのくらいにしておいて、3人とも体に異常がないか検査するから、中に入って!」

白露「はーい! 白露が一番でいい?」

黒潮「うん、うちはええよ」

島風「私、最後でいい? ちょっとここの提督さんとお話ししてくるから!」ビュンッ

明石「わかりま……って、速っ!?」

724 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 22:00:38.02 ID:mnCcr+a9o

 * 入渠ドック内 *

龍驤「……なあ朝雲?」

朝雲「はい?」

龍驤「ちょっち訊くけどな……きみ、ほんまに朝潮型?」

朝雲「それ、どういう意味ですか?」ムス

龍驤「ああ、気を悪くせんといて。一か所、気になることがあってなあ……」ジッ

龍驤「朝雲は、朝潮型にしてはちゃんと胸があるなあ思て……」

朝雲「ど、どこを見てるんですか!?」バッ

古鷹「本当ですか? 良かった、効果あったんですね!」

朝雲「古鷹さん!?」

龍驤「ちょっ、朝雲、きみ何かやっとったん!?」

朝雲「いやっ、そのっ……!」ワタワタ

古鷹「私がしてあげたんです!」

龍驤「え?」グリッ
725 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 22:01:33.24 ID:mnCcr+a9o

古鷹「見様見真似ですけど、マッサージを……」

龍驤「マジで!?」ズズイッ

古鷹「龍驤さんも御希望でしたら、お風呂の後に伺いますよ?」

龍驤「是非! 是非によろしゅう!!」ガッシ

古鷹「では、夜にお邪魔しますね!」ニコ

朝雲「……龍驤さん、龍驤さん」チョイチョイ

龍驤「うん? なんや?」

朝雲「一応断っておくけど、結構どころじゃなく痛いですからね?」ヒソヒソ

龍驤「ほーん。まあ、その程度の代償で済むならうちは構へんで! ちなみに、どんなマッサージなん?」

朝雲「マッサージっていうか……その……おなかや背中の贅肉を集めて胸に寄せるんです」カァァ

朝雲「東南アジアだかでニューハーフの人たちが自前で胸を作るためにやってたっていうのをテレビで見て……」

朝雲「それを見様見真似で、ほぼ独学で習得したんです」

龍驤「独学!?」

朝雲「私、それで実験台にされたんですよ」ハァ

龍驤「ははぁ……」
726 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 22:02:18.28 ID:mnCcr+a9o

朝雲「ひどいんですよ、体中の肉を痛いくらい揉み解したうえで無理矢理寄せて引っ張って作るから、体中突っ張るし……」

朝雲「それを最低でも1か月くらい続けないと胸に脂肪が固着しないから、すっごい苦行で」

龍驤「ま、まあ、それでもうちは大丈夫や!」

朝雲「それから、無駄な肉を移動させるわけですから、失礼なこと言いますけど、痩せてる人には効果ありません」

龍驤「それやったら、前の鎮守府で食わされすぎたから、ダイエットせななーって思っとったし、かえって好都合やで」

朝雲「そうですか……」

龍驤「朝雲? どうかしたん?」

朝雲「古鷹さんのマッサージ、身体的にも痛いんです。でも、それ以上に……」ドヨーン

朝雲「自分の体にこんなに余分な肉がついてたっていう、精神的なダメージがすごくて……」ハイライトオフ

龍驤「……」

朝雲「あれだけ痛い思いとみじめな思いをして、成果がこれだけっていうのもショックではあるんですけど」ズーン

龍驤「う、うん、その、ご、ごめんな?」
727 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 22:03:03.23 ID:mnCcr+a9o

朝雲「いえ……せっかく古鷹さんにお世話になって、こういう言い草もよくありませんよね」ハァ…

龍驤「うん、難しい問題なのはうちもよーくわかってるから」ヨシヨシ

龍驤「それから……も一つええか? 朝雲も気になったかどうかなんやけど」

朝雲「……なんですか?」

龍驤「白露て、あんなに胸小さかったかな?」

朝雲「そういえば……」

龍驤「白露型は改装すると胸が大きなる子が多いんや。中でも、白露や村雨は改装前でもまあまああったって記憶してる」

龍驤「けど、あの白露は全然そんな感じせえへん。ちゅうか、むしろうちと同じくらいやった」

朝雲「……体のどこかがおかしいとか?」

龍驤「明石も気にしてたから、検査言うたんやないか? 何かあったんやろか……」
728 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 22:03:48.22 ID:mnCcr+a9o

 * 執務室 *

提督「違法改造?」

島風「違法っていうか、無茶な改装、って言ったほうがいいのかなぁ」ウーン

島風「白露の艤装はね、明石さんに無理を言って魔改造してもらったの」

提督「マカイゾウ?」

大淀「普通じゃない改造のことを俗にそういいます。魔法のような改造、だから魔改造ですね」

提督「言葉の響きがやべえな。大丈夫なのかよ、それ」

島風「……あんまり大丈夫じゃないと思うんです」

提督「!」

島風「私、島風は、唯一無二のスピードを誇る、疾きこと島風の如し! な、特別な駆逐艦なんです」

島風「そのおかげもあって……ううん、そのせいで、島風型は私一人なんです」シュン

大淀「島風さんは駆逐艦の中でも珍しい、姉妹艦が建造されなかった艦なんですよ」

提督「……一代限り、ってやつか」
729 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 22:04:33.14 ID:mnCcr+a9o

島風「そんな私に声をかけてくれたのが白露で……」

提督「島風の姉になるとか言ってた話か?」

島風「そうなんです。でも、島風は速いんですよ! 白露が追いつけるわけなくって……」

島風「それで白露は、明石さんに無茶なお願いをしたんです」

島風「艤装をばらしてすっごい速いタービンに替えたり、とにかくいろいろ、原型がないくらい改造して!」

島風「改白露型どころか、準島風型みたいな艤装で、島風を追いかけてきたんです」

島風「……島風は、それがすごく、嬉しくて」

島風「今まで、島風を追いかけてくれる人はいなかったんです。いつも遠征に出てる睦月型のみんなは疲れてるし」

島風「戦艦や重巡のお姉さんたちは最初から諦めてて追ってこないし」

島風「だから、白露に構ってもらえるのは、嬉しかったんです」

島風「……でも、白露はかなり無理をしてるみたいで」シュン

提督「無理? 体のほうが追いつかないってことか?」

島風「すっごい負担がかかってるはずなんです。その証拠に、白露の体は痩せて筋肉質になったし……」

島風「だから、さっき白露がドックに入って検査を受けてるけど、本当に大丈夫なのか心配だし……結果を聞くのが怖いんです」
730 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 22:05:18.26 ID:mnCcr+a9o

提督「……」

大淀「……」

提督「……羨ましいもんだな」

島風「!?」

提督「俺にも弟がいたが、今は関わりたいとも思わねえ。あれは俺を完全に見下してるからな」

提督「だが、島風は、お互いを気遣える姉妹を手に入れた。いいことじゃねえか」

島風「……」

大淀「提督……」

提督「白露が心配なら、検査の結果はちゃんと聞いてきな。そのうえで、何をしてやれるか、一緒に悩んでやればいい」

島風「……准尉さん!」スクッ

島風「島風、白露の検査の結果聞きに行ってきます!」ダッシュ!

 ドドドド…

提督「……騒々しい奴だな」

大淀「提督……」

提督「とりあえず、変なもんくっつけられたりしてねえといいな」

大淀「はい!」
731 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 22:06:03.40 ID:mnCcr+a9o

 * ドック内 入渠用プール *

山雲「……」

雲龍「だいぶ顔色が良くなってるわね。これならすぐに目を覚ましそう」ニコ

雲龍「それにしても、後頭部に打撃痕だなんて」

雲龍「後ろから誰かに襲われたのかしら」ウーン

山雲「……ん……」

雲龍「!」

山雲「う……」

雲龍「山雲? 山雲!」

山雲「う、うう……っ」

雲龍「そうだ……彩雲、みんなを呼んできてくれる?」シャランッ

 彩雲<バルーン!

雲龍「……」

山雲「う……こ、こは……」パチッ
732 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 22:06:50.25 ID:mnCcr+a9o

雲龍「目が覚めた?」ヌッ

山雲「!?」

雲龍(の胸部装甲:山雲視点)「山雲? 大丈夫?」ズドーン

山雲「」

雲龍(の胸部装甲:山雲視点)「どうしたの? 山雲?」ユッサユッサ

山雲「」

山雲「」

山雲「」アワブクブク

雲龍「!?」

龍驤「雲龍! 山雲が目を覚ましそうやって!?」

朝雲「山雲ー!!」

山雲「」チーン

雲龍「えっ? えっ?」オロオロ

朝雲「や、山雲!? なんで泡を吹いてるの!? 山雲ーー!」
733 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/07/28(日) 22:07:33.12 ID:mnCcr+a9o

龍驤「……なんや、目を覚ましておらんやん。どういうこっちゃ」

雲龍「いえ、あの、目を覚ましたんだけど……また、気絶したっていうか……」オロオロ

龍驤「ええ……?」

 タタタタ…

朧「泡を吹いたって!?」ガラッ

雲龍「!?」ビクッ

龍驤「朧は何しに来たん!?」
734 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2019/07/28(日) 22:08:17.99 ID:mnCcr+a9o
というわけで今回はここまでー。
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/29(月) 12:34:25.62 ID:uGTQqUeq0
カニ要素に敏感すぎるww
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/13(火) 13:12:00.96 ID:XdK4/e9z0
保守
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 14:42:34.15 ID:VCB1d7a6O
夏休み中かな
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/29(木) 04:47:14.13 ID:n8AsQSj30
保守
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/09/11(水) 08:18:51.33 ID:EqUTYrM00
保守ぬるぽ
740 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/09/15(日) 17:11:00.84 ID:S0IxyqgSo
保守ありがとうございますガッ
書けない病に罹患して苦しんでおりました


少しだけですが続きです。
741 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/09/15(日) 17:12:18.82 ID:S0IxyqgSo

 * 数日後 執務室 *

 扉<コンコン

五月雨「失礼します、黒潮さんをお連れしました!」チャッ

黒潮「……」ス…

提督「ん、ご苦労さん」

五月雨「提督……そのお顔の様子からすると……」

大淀「ええ、あまり良い結果が得られなかったみたいです」

提督「しょうがねえさ。何でもかんでも、こっちが思ってるように都合よく話が進んでくれたりはしねえ」

提督「さて、何から黒潮に話してやったらいいもんかね……まずは座んな。どうせ今の俺たちにできることはねえ」

黒潮「……」ストン

五月雨「あ、あの、私も、ですか?」

提督「ああ。お前の意見も聞かせてくれ」

五月雨「はぁ……」ストン

黒潮「……うちだけ呼んで聞かせればええやんか」

提督「いいから第三者の意見も聞いとけ。大淀も同席頼む」

大淀「はい」ストン
742 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/09/15(日) 17:13:03.34 ID:S0IxyqgSo

提督「じゃあ、不知火と初春の調査結果について報告する」

提督「まず保提督。一応、怪我自体は大したことねえが、ひどく落ち込んでるって話だ」

提督「今更ながら、自分のやったことを悔いているらしい。何もかも遅いがな」

黒潮「……」

大淀「保提督の処罰はどうなったのでしょうか?」

提督「減俸と謹慎1か月、一階級降格と、思ってたより軽いな。罪を全面的に認めちまってるせいで、同情でも買ったか」

提督「保提督を唆したチンピラどもには、それなりに重い処罰が下ったみたいだが……それでも執行猶予がついてやがる」

提督「残念ながら、そいつらはそれほど悪びれてねえみたいだ。ったく、面白くねえ」

黒潮「……」

提督「次。雪風が行方不明だ」

黒潮「!!」ガタッ

五月雨「提督……!」

提督「鎮守府に戻ったあと、艤装を身に着けてすぐ黒潮の後を追いかけたらしい」

黒潮「……っ!」ガタッ
743 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/09/15(日) 17:15:11.82 ID:S0IxyqgSo

提督「どこに行くつもりだよ。黒潮、座ってな」

黒潮「座ってなんかいられるかい!!」

五月雨「ちょっと待ってください! 提督、ほかの人たちはどうなったんですか?」

提督「嵐と萩風は保提督の鎮守府に戻ってるが、出撃はしてねえ。姉妹艦を一度に二人失ったもんで、塞ぎこんでるって話だ」

黒潮「……!」ギリギリッ

提督「それから黒潮。お前の処遇についてだが、解体することに決まったそうだ」

黒潮「はぁあ!?」

五月雨「そんな!!」ガタッ

提督「お前が海に放り込んだチンピラのうちの一人が、政治家の息子なんだとよ」

大淀「!」

提督「そいつの親がお前の処遇に口を出してきたんだ。お前が保提督の鎮守府に戻ったら、解体処分しろってな……!」

提督「ったく、どうしてこう『えらいやつ』ってのはこう我が儘なんだろうな。頭おかしいんじゃねえか、くそが!」

五月雨「……提督、黒潮ちゃんは元の鎮守府に戻れないんですか!?」

提督「今は無理だな。保提督の鎮守府の周囲で厳戒態勢が敷かれてる」
744 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/09/15(日) 17:17:42.78 ID:S0IxyqgSo

提督「人間を守るはずの艦娘が、民間人に手を出したのが奴らは余っ程気に入らなかったようでな」

提督「そのせいで、萩風たちへの接触は中将麾下の不知火でも難しいとさ。国家権力なのはこっちも同じはずなんだがな?」

五月雨「……」

提督「それから、雪風は雪風で足取りが掴めねえ」

大淀「どうしてですか?」

提督「雪風捜索中、その周辺海域で見たことのない深海棲艦が目撃されてる」

提督「不知火たちにも同じように本営から警告が出されてるし、事実そういう連中を目撃してるそうだ」

大淀「提督……それじゃ、さっき遠征部隊を呼び戻せと仰ったのは……!」

提督「下手に動けば被害が出そうだと思ってな」

黒潮「……」

五月雨「どういうことなんでしょう……」

提督「ともかくだ、海は海で物騒だし、保提督の鎮守府に近づいたとしても、どうにもならねえって話だ」

黒潮「せやったら、どうすんねんな……」

提督「だから俺は待つことにする」

黒潮「何もせん、っちゅうんかい!」

提督「ああ、何もしねえよ。果報は寝て待てって言うしな」
745 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/09/15(日) 17:19:51.69 ID:S0IxyqgSo

提督「雪風ってのは幸運艦なんだろ? もしかしたら、お前みたいに運よくこの島に流れてくるかもしれねえし」

五月雨「……そ、それはだめですよ!」

提督「じゃあ、迎えに行くか? 行って見つけて無事に戻ってこられるか?」

五月雨「……」

提督「無理だろ? 待つしかねえんだよ」

黒潮「そんな都合よくいくかいな」

提督「さあな。それともお前、自殺しに行くか?」

黒潮「……」ギリッ

大淀「提督!」

提督「それよりもだ、黒潮にいくつか聞きたいことがあるんだが」

黒潮「……なんや?」ジロッ

提督「お前は海に出た後、羅針盤を見てたか?」

黒潮「? まあ、見てたけど……習慣付けみたいなもんやったし」

提督「……ということは、その針の向きに、逆らって進んだりはしてないんだな?」

黒潮「……」

提督「別にそれが悪いとかいいとか、そういう意図はねえよ。深く考えなくていい」

提督「この前、敷波が言ってたんだ。羅針盤に逆らって戻ってきた艦娘に会ったことがない、ってな」

提督「白露と島風は羅針盤の針がぐるぐる回っててびっくりしたとも言ってたし、お前はどうだったのか気になったんだ」
746 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/09/15(日) 17:20:59.78 ID:S0IxyqgSo

黒潮「……そういうことなら、うちは特に何も面白いことはないで」

提督「そうか」

黒潮「……あ、でも」

提督「?」

黒潮「山雲を助けるちょっと前やったかな……羅針盤の針が異常なほどぶるぶる震えてて」

黒潮「針の方と逆を見たら、黒い雲がぶわーーって通ってったんよ」

黒潮「なんていうか、見てて背筋が寒くなるような、おどろおどろしい雲やったん。あれは正直やばかったんちゃうかな……」

大淀「その後で山雲さんを助けたんですか?」

黒潮「うん。あの黒い雲がわーっと通り過ぎた後、その通り道を羅針盤が指してて」

黒潮「何かと思って進んでみたら、気絶した山雲がぷかぷか浮いとったんよ」

提督「その、雲を見たのがいつごろだったかは覚えているか?」

黒潮「……あんまりよく覚えてないけど、うちが出港してから2、3日ってあたりちゃうかな」

提督「……」

五月雨「提督……?」
747 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/09/15(日) 17:22:40.68 ID:S0IxyqgSo

提督「どうもな、その黒い雲、雪風が海に出てすぐくらいから発生してるみたいなんだ」

黒潮「……黒い雲が雪風やっちゅうんか?」

提督「いや、そうじゃねえ。黒い雲の正体は無数の深海棲艦だって言われてる」

提督「俺は、もしかしたらそいつらが雪風を追いかけてるんじゃねえか、って思ってんだよ」

五月雨「ど、どうしてですか!」

提督「雪風が、羅針盤を無視したから……ってのはどうだ」

黒潮「……!」

提督「雪風が黒潮を探すために、羅針盤を無視して無茶苦茶に海を駆けずり回ってるとしたら……」

大淀「……それが、深海棲艦を呼び寄せたと?」

提督「羅針盤を見れば危険を察知することができる。しかし、見なかったり無視した時はその限りじゃない……」

五月雨「それじゃ、雪風ちゃんは……!」

提督「さあて、な。今の俺たちに確かめる術はねえぞ」

黒潮「……」ヘタッ

提督「今は祈っとくしかねえな。雪風が幸運であることに」

748 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/09/15(日) 17:23:46.64 ID:S0IxyqgSo

 * 一方そのころ V提督鎮守府(もとN提督鎮守府) *

妙高「通してください! 急患です!」

寝かされて運ばれる鳳翔(大破)「……」ガラガラガラ

加賀「鳳翔さん!?」ギョッ

赤城「何があったんですか……っ!」

望月(大破)「うう……痛ってえ……」フラフラ

卯月(大破)「弥生、しっかりするぴょん……!」ヨロヨロ

弥生(大破)「……卯月、こそ」ヨロヨロ

赤城「皆さん、鎮守府正面の対潜哨戒に行ってたはずでは!?」

加賀「いくらなんでも、そこまで攻撃は激しくないはずよ。一体、何があってこうなったの……!?」

卯月「よ、よくわかんない、ぴょん……!」

弥生「……鳳翔さんが、危ないって、叫んで、それ、から……」フラ

加賀「! 危な……!」ガシ

望月「ほんと、マジ、わけわかんないって……とんでもない数の艦載機だったし……」

赤城「……艦載機……!?」
749 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/09/15(日) 17:24:33.30 ID:S0IxyqgSo

弥生「そうだ……あの子は、無事……?」

加賀「あの子?」

卯月「うーちゃんたちが襲われてから、大怪我してた艦娘を助けたんだぴょん」

 ガラガラガラ…

赤城「あれは……」

寝かされて運ばれる雪風(大破)「……」ガラガラガラ…

加賀「あの子は……雪風?」

望月「……あー、来たってことは、無事、だったのかな……?」

卯月「一安心だぴょん……」ヨロ

加賀「!!」ガシ

赤城「加賀さん、この3人も私たちがドックへ運んであげましょう」ヒョイ

望月「お、おお……?」カカエラレ
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