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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」

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510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/03/25(月) 11:41:22.06 ID:Z386oyuAO
>>509
じゃAカップ以下の女の子の胸しか見たらあかんで
511 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:40:41.46 ID:KnApYcbEo
続きです。
512 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:41:53.17 ID:KnApYcbEo

 * それからさらに3日後の朝 *

 * 墓場島鎮守府 食堂 *

提督「雲龍の回復もあっという間だったな」ウドンズルズル

明石「はい、予想以上でした」ソバズルズル

提督「やっぱり、高速修復剤入りの食事が効いたのか?」

明石「だと思います。あとは、食べて寝てを短いサイクルで繰り返したので、回復を促すことができたのが大きいかと」

提督「食っちゃ寝してたってことか」チラッ

明石「身も蓋もない言い方をすると、そうですね」チラッ

雲龍「……」モグモグ

明石「おかげで食べるのがすっかり楽しみになっちゃったみたいで、今朝も早く食堂に行きたいって言ってましたよ」

提督「仕込みの最中からここに来てたらしいな?」

明石「どんなふうに作ってるのかを見たいし、時間をかけてゆっくり食べたい、とも言ってましたからね」

提督「そうか……それにしても、やっぱ目立つな。あの胸は」

明石「ああ、そーですねー……提督でも目が行きますか」

提督「今まで見たことねえサイズだからな。神通やはっちゃんが口開けて驚いてるとこも初めて見たぞ」
513 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:42:47.09 ID:KnApYcbEo

明石「那珂ちゃんも笑顔のまま目を見開いて固まってましたからねー」

提督「神通もそうだが、那珂のトレーニング風景見たことあるか?」

提督「あいつら、アスリートでも目指してるのかって感じにハードでストイックだからな」

提督「胸ってのは脂肪の塊らしいから、那珂にせよ神通にせよ、今のトレーニング続けてたら絶対大きくならねえぞ」

明石「……すいませんねえ、脂肪の塊で」

提督「当て付けのつもりはねえぞ。っつうか、相手によっちゃあその一言も嫌味に聞こえたりするんだろ? 本っ当、面倒臭えな」

明石「まあ、そうですねー……気にするなって言われても、どうしても気になることですよ」

提督「難しいもんだな……」

金剛「Good morning, テートクゥ!!」

比叡「司令、おはようございます!」

榛名「おはようございます!」

提督「おう」ズゾゾ
514 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:43:48.80 ID:KnApYcbEo

榛名「お、お二人とも、朝から麺類ですか!?」

明石「……驚かれるようなことですかね?」モギュモギュ

提督「別に珍しくねえだろ?」クビカシゲ

榛名「そ、そうなんですか?」

比叡「うん、司令はたまに厨房借りて作ってたりするよ?」

金剛「ンー、 balance の良い食事を心掛けないとよくありまセン……ヨ……」

提督「?」

榛名「どうかなさいましたか、金剛お姉さ……」

比叡「何を見てるん……」

明石「あ」

比叡「ひええええ! おっぱいでっか!!」

提督(声がでけえし感想がどストレートすぎる)

金剛「……テートク……あの White haird big breast はいったい誰デース……」ハイライトオフ

提督「雲龍だ。少し前に戦艦棲姫のいる海域で見つけた、飢え死に寸前の艦娘がいたろ?」
515 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:44:53.40 ID:KnApYcbEo

比叡「えええ!? あの骨みたいな人が、あんなにおっぱいおっきくなったんですか!?」

金剛「比叡……おっぱい連呼するのははしたないデース……」

比叡「でも良かったですね、元気になって!」

提督「ああ、まあな……って、榛名?」

榛名「……」ボーゼン

明石「榛名さん、大丈夫ですか?」

榛名「……」

榛名「榛名は……」

榛名「榛名はだいじょばないです……」ヒザカラクズレオチ

比叡「は、榛名ーー!?」

金剛「榛名!? 榛名、しっかりするデース! 傷は浅いデスヨ!?」ダキカカエ

提督「落ち込むのはあとにして、とりあえず飯にしてこい」

金剛「Yes...行きマスヨ、榛名ー」ズリズリ

榛名「ハイ……ハルナハダイジョウブデス……」ズルズル

比叡「金剛お姉様も元気を出してください!」
516 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:45:49.38 ID:KnApYcbEo

提督「……比叡は大丈夫そうだな」

明石「他人に悪意を向けたり、嫉妬したりするタイプじゃないですからねー」

明石「それをさておいても、比叡さんもそれなりにあるほうですから。そこまで羨ましいと思ってないんでしょう」

提督「まあ、とにかく……しばらくすりゃあ見慣れると思うんだが、それは楽観視しすぎか?」

明石「大半の人はそれで大丈夫だと思いますが……この件で致命的にショックを受けてる人がいますからね」

提督「……それ、もしかして龍驤か?」

如月「ええ、そうみたいよ?」スッ

提督「如月……?」

如月「お隣失礼しますね、司令官」ニコ

陸奥「……おはようございます」

提督「陸奥も一緒か。顔色も悪くなさそうだな」

陸奥「え、ええ……おかげさまで、ね」

提督「飯もまともに食えてるようなら、あとは鎮守府の雰囲気に慣れてもらうだけだな」

陸奥「……」コク
517 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:47:09.21 ID:KnApYcbEo

如月「……陸奥さん、大丈夫?」

提督「緊張してんだよ。陸奥と龍驤も前の鎮守府でひどい目に遭わされたからな」

如月「そういうことなら大丈夫ですよ? 司令官は、私たちに意味もなく手をあげたりしないもの」ニコ

提督「そこは理屈じゃねえよ。刷り込みみたいなもんだから、ゆっくり時間をかけて馴染んでもらうしかねえさ、マイペースにな」

明石「ひどい目に遭わされた、という点では私たちも同じですから。力になれることがあれば相談に乗りますよ」

陸奥「そ、そうなの?」

提督「まあな。ところで陸奥、今日は龍驤と一緒じゃないのか」

如月「それなんだけど、龍驤さんが部屋から出ようとしなくって……陸奥さんにどうしたらいいかって声をかけられたの」

提督「もしかして、それが雲龍絡みか?」

陸奥「……」コクン

如月「陸奥さんは潮ちゃんにお願いするつもりだったんだけど、今朝は大和さんと厨房に入る予定だったし……」

如月「ショックを受けてる理由が雲龍さんのそれだとしたら、潮ちゃんも……ね?」
518 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:47:49.65 ID:KnApYcbEo

提督「なるほど……思ったより深刻だな。とりあえず朝餉済ませて龍驤を訪ねてみるか」ズズッ

如月「私たちも一緒にいいかしら?」

提督「……そうだな、頼む」

如月「ええ」ニコー

提督「それで、龍驤は部屋にいるのか?」

陸奥「え、ええ、そうよ」

 ズイッ

雲龍「少し、いいかしら」ヌッ

提督「うお……!? ど、どうした」

雲龍「龍驤が、部屋から出てこないって聞いてるんだけど」

提督「……ああ、そうだが」

雲龍「私も、話がしたいの。できれば、工廠で」

提督「……工廠?」
519 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:48:47.19 ID:KnApYcbEo

雲龍「そう。もし、話ができるなら、工廠で待ち合わせをお願いしたいのだけれど」

提督「……明石。場所、借りられるか?」

明石「うーん……わかりました。そういうお話なら、片付けてきますので少々お時間ください」

雲龍「ええ。よろしくお願いね」スッ

 スタスタスタ…

提督「……雲龍は何考えてんのか、いまいち掴めねえな」

明石「……」

如月「……」

提督「どうした?」

明石「い、いや、まあ……間近で見ると迫力ありますね」

提督「あー……そうだな、いきなり視界にでん、と入ってくるからな。正直、俺もびびった」

如月「……」ムニムニ

提督「……」

如月「気にしてないつもりだったけど、やっぱりちょっとショックね……」ガックリ

提督「どうやって龍驤を立ち直らせるかねえ……骨が折れるぞ、これ」ハァァ

陸奥「……」
520 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:49:38.12 ID:KnApYcbEo

 * 工廠 *

龍驤「うちを呼び出すとか……なんなん」

提督「四の五の言わずに付き合え。雲龍がお前と話をしたいんだとよ」

龍驤「用があるんはあんたやないんか」

提督「なくはねえ。が、俺は後でいい」

龍驤「さよか」

如月「……明石さんと雲龍さんはどこへ行ったのかしら?」

明石「何をしてるんですか!!」

(のこぎりや電動の丸鋸を抱えて奥の部屋から出てくる明石)

如月「明石さん!?」

提督「そんなもの抱えて走ると危ねえぞ」

明石「それどころじゃありませんよ! 雲龍さんが自分を切ろうとしてるんですから!」

提督「なに?」

雲龍「明石。それを貸して」ヌッ

明石「嫌です! 貸せません!」
521 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:50:30.37 ID:KnApYcbEo

雲龍「……そう。なら、厨房で包丁を借りるわ」

提督「おい待て雲龍。お前、自殺でもする気か」

雲龍「自殺? 違うわ。私は、この胸を切り落としたいだけよ」

提督「なに?」

陸奥「胸を……って、のこぎりで!?」

雲龍「別に道具はなんでもいいわ」

雲龍「私は胸を切り落とせるなら、それでいいの」

龍驤「!?」

如月「何を考えてるんですか! そんなことしたら、大怪我どころの話じゃすみませんよ!?」

提督「雲龍、どうしてそんなことをする」

雲龍「龍驤が悲しんでるから」

龍驤「……!!」
522 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:51:24.34 ID:KnApYcbEo

雲龍「私を助けてくれた龍驤が、私を見て俯くの」

雲龍「だから、私は彼女が気にしているところを、なくしたいだけ」

雲龍「それの何が悪いの?」

如月「……そ、それは……!」

明石「別にそう思うのは構いませんけど、そういうことになら私の道具は貸せませんし、協力もできません!」

雲龍「それはどうして?」

明石「成功するビジョンが見えないからですよ。治療ならまだしも、体形をいじる手術なんて私の専門外です」

提督「厨房の包丁も無理だな。比叡や暁なら、包丁は料理を作るものであって、人を怪我させるものじゃない、って言い張るだろうさ」

雲龍「……そう。なら、それ以外の刃物がどこかにないか……」

龍驤「……けんな……!」

如月「!」

龍驤「ふざっけんなやああ!!」

雲龍「!?」ビクッ
523 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:52:34.58 ID:KnApYcbEo

龍驤「馬鹿にしとるんか!? それとも、うちを憐れんでるつもりなんか!! 舐めんのも大概にしいや!!」ブワッ

龍驤「そんなもんぶった切ったところで、うちが喜ぶ思たんか!! うちが満足する思たんか!!」ボロボロボロ

龍驤「思い上がんなや! このドアホ!!」ダッ

雲龍「え!? え……!?」オロオロ

如月「龍驤さん……!」

提督「やめとけ。下手に刺激しないほうがいい」

如月「……」ウツムキ

雲龍「なんで……!? ……どう、して……!?」オロオロ

提督「どうして? 胸を切ったところで満足するのはお前だけじゃねえか」

提督「龍驤は自分の体にコンプレックスを持ってるんだ。お前のやることは、それの解決に繋がらねえ」

提督「下手すりゃ、お前以外の胸がある奴が、お前と同じように切らないといけないのか、と悩むようになったり……」

提督「最悪、龍驤は雲龍の胸を切除するように迫ったひどい奴、なんて噂が立つかもしれねえな」

雲龍「そ、そんなこと……!!」

提督「他人がどう見るかはお前がコントロールできる話じゃねえよ」
524 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:53:43.10 ID:KnApYcbEo

提督「龍驤はお前を助けたくて、うちの連中と揉めて喧嘩別れしたのを土下座して謝ってきた」

提督「そこまでしてお前を助けたいと思ってた奴が、お前が傷付くのを容認できると思うか?」

雲龍「……」

雲龍「だったら」

雲龍「だったら、私はどうすればいいの……」ヘタッ

雲龍「私は……」ウツムキ

雲龍「助けてもらったお礼をしたかっただけなのに」

明石「……」カオヲ

陸奥「……」ミアワセ

提督「礼をしたいなら最低でも自傷行為はやめとけ。胸を切ったお前を見るたび、龍驤が罪悪感に苛むかもしれねえからな」クルッ

明石「提督!? どこに行くんですか!」

提督「この話、今の俺じゃ、これ以上首を突っ込んでも役に立てねえよ」スタスタ

如月「司令官……」
525 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:54:43.57 ID:KnApYcbEo

陸奥「……仕方、ないのかしら」

明石「まあ……デリケートな問題ですからね」

雲龍「……」ウナダレ

陸奥「……雲龍、気を落とさないで」

雲龍「……」

陸奥「あなたは龍驤にお礼を言いたかったんでしょう?」

雲龍「……」コクン

陸奥「とにかくまずは謝ってきましょ? それから、あなたの思いを、真剣に伝えればいいわ」

雲龍「でも……」

陸奥「許してもらえるかどうかわからないけど……それでも、あなたは龍驤を傷付けるつもりなんかなかったんでしょ?」

陸奥「それだけは伝えないと。大丈夫よ、龍驤は面倒見がいいの。きっとあなたを見捨てたりしないわ」ニコ

雲龍「……」
526 : ◆EyREdFoqVQ :2019/03/31(日) 14:55:46.72 ID:KnApYcbEo
今回はここまで。
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/31(日) 23:10:30.81 ID:+Jj9/1yrO
更新乙です
毎回の更新お待ちしています
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 11:57:28.82 ID:JSna9MLhO
あまりにもデッカいとやっぱ単純に衝撃的だよねぇ
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/02(火) 01:28:46.70 ID:QtcpBdfgo
ずっと楽しみに読んでます。
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/20(土) 01:08:53.92 ID:PrqfVsBs0
保守
531 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:36:52.12 ID:03VeN8f5o
ローソン山雲に2回くらい心臓を止められてました


続きです。
532 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:37:55.37 ID:03VeN8f5o

 * 龍驤の私室 *

(龍驤が自分のベッドの上で、うつぶせになって枕に顔をうずめている)

 コンコン

龍驤「……」

 チャッ

雲龍「……龍驤」ソロッ

龍驤「……」

雲龍「……」

(龍驤のベッドのそばの床に正座する雲龍)

雲龍「……ごめんなさい」ペコリ

龍驤「……」

雲龍「……」
533 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:38:53.32 ID:03VeN8f5o

龍驤「……なにしとん」モゾ

雲龍「……」

龍驤「土下座なんかされたって、なんにもならんで」

雲龍「……」

龍驤「別に雲龍が悪いわけやないんやし」

雲龍「え……!?」ミアゲ

龍驤「うちが勝手に嫉妬して、醜態さらしとるだけやろ」

龍驤「……まあ、雲龍がアホなこと言い出したのも気に入らんのは確かやけどな」

龍驤「うちに同情してあんなこと言うたんやろうけど、うちにとっては屈辱や」

雲龍「……本当に、ごめんなさい」ションボリ
534 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:39:53.76 ID:03VeN8f5o

龍驤「もうええねん……うちがうじうじしとったのが悪いんや」

雲龍「でも……」

龍驤「少し前に扶桑が言うとったんやけどな。扶桑は、うちが羨ましいんやて」ムクッ

雲龍「……?」

龍驤「うちが雲龍を助けたこと、立派やと。もっと胸を張るべきや、って言うんよ」

雲龍「……」

龍驤「扶桑は、前の鎮守府で冷遇されてて、自暴自棄になっててな。そのあと、そこの司令官に嵌められて轟沈させられたんや」

龍驤「扶桑はそれを受け入れたらしい。夢も希望もありゃしない、やから、それに乗じて沈んでしまおうとしたんや」

龍驤「だけど扶桑は、この島に流れ着いて助かった。逆に扶桑を心配した友達が、扶桑を探して追いかけたせいで轟沈したんやって……」

雲龍「……!」

龍驤「扶桑は、自分がつらい現実から目を背けて逃げたせいで、大事な友達が沈んだのを、めっちゃ後悔してる」

龍驤「だから扶桑は、もうどんなことからも逃げたくない、目を逸らさんで、何にでも向き合う……そう、決めたんやて」

雲龍「……」

龍驤「さっきまで腐ってたんやけど、扶桑が言ってたこと思い出してな」

龍驤「なんや、うちも逃げてるだけやなあって……」
535 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:41:10.35 ID:03VeN8f5o
龍驤「変わりたくても変われなかったんが現実で。雲龍に当たり散らしたってしゃあない。なんの解決にもなってへん」

龍驤「それどころか、うちの心配してくれる雲龍にこんなことさせて……我ながら情けなくて涙出てくるわ」

雲龍「情けなくなんかないわ」

龍驤「そんなことないねんて」

雲龍「いいえ、あなたがあなたを蔑むのはおかしいと思うもの。きっと、おかしくなっていたのよ」スクッ

龍驤「……さよか」

雲龍「……」

龍驤「……」

雲龍「ねえ、龍驤」

龍驤「うん?」

雲龍「私はあなたに助けてもらった。私は、あなたの力になりたいの」

雲龍「さすがに体を取り換えることはできないけれど……そうね」

雲龍「龍驤。私の体、好きにしていいわ」ニコ

龍驤「……うん??」
536 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:42:21.84 ID:03VeN8f5o

雲龍「私は、あなたのものになる。だから、何をしてもいいの」

龍驤「……雲龍、何を言うてるん???」

雲龍「うん。それがいいわね」ズイ

雲龍「龍驤。私のことは、煮るなり焼くなり好きにして」

龍驤「だからさっきから何言うとんねん!!?」

雲龍「私は本気よ?」ズズイ

龍驤「お、おう……って、そうじゃなくて!」

雲龍「!」

龍驤「……ど、どしたん?」

雲龍「声が出てる。元気になったみたいで良かった」ニコ

龍驤「な、なんか調子が狂うなあ……そんなにうちのことが気になるん?」

雲龍「ええ」

龍驤「なんでそんなにうちのことばかり気にするんよ? もう少し、自分のこと心配したほうがええんちゃうか」

雲龍「私はいいわ。あなたのことが大事。それだけよ」
537 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:43:01.05 ID:03VeN8f5o

龍驤「うちに酷いこと言われてもか?」

雲龍「私があなたに嫌われるのは、それなりに原因もあるし、受け入れるわ。でも、だからと言って私はあなたを嫌いになりたくないの」

龍驤「……はぁ、かなわんな。どうやったら嫌いになれるねん、こんなお人好し」

雲龍「……」

龍驤「な、なんや、急に黙りこくって」

雲龍「良かった」ポロ

雲龍「本当は嫌われたくなかったから」ダキツキ

龍驤「わぷ!?」モニュ

雲龍「本当に良かった……」ニコ

龍驤(あー……あかんわ。こんな泣きながら子供みたいな笑顔向けてくる相手、憎むようになったら終わりや)

雲龍「……♪」スリスリ

龍驤(それにしても……)

龍驤「……ほんまに、でかいなこれ……」モミ

雲龍「触ってみる?」

龍驤「……ええんか?」

雲龍「ええ」
538 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:43:31.06 ID:03VeN8f5o

龍驤「うちに酷いこと言われてもか?」

雲龍「私があなたに嫌われるのは、それなりに原因もあるし、受け入れるわ。でも、だからと言って私はあなたを嫌いになりたくないの」

龍驤「……はぁ、かなわんな。どうやったら嫌いになれるねん、こんなお人好し」

雲龍「……」

龍驤「な、なんや、急に黙りこくって」

雲龍「良かった」ポロ

雲龍「本当は嫌われたくなかったから」ダキツキ

龍驤「わぷ!?」モニュ

雲龍「本当に良かった……」ニコ

龍驤(あー……あかんわ。こんな泣きながら子供みたいな笑顔向けてくる相手、憎むようになったら終わりや)

雲龍「……♪」スリスリ

龍驤(それにしても……)

龍驤「……ほんまに、でかいなこれ……」モミ

雲龍「触ってみる?」

龍驤「……ええんか?」

雲龍「ええ」
539 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:44:08.54 ID:03VeN8f5o

龍驤「うちに酷いこと言われてもか?」

雲龍「私があなたに嫌われるのは、それなりに原因もあるし、受け入れるわ。でも、だからと言って私はあなたを嫌いになりたくないの」

龍驤「……はぁ、かなわんな。どうやったら嫌いになれるねん、こんなお人好し」

雲龍「……」

龍驤「な、なんや、急に黙りこくって」

雲龍「良かった」ポロ

雲龍「本当は嫌われたくなかったから」ダキツキ

龍驤「わぷ!?」モニュ

雲龍「本当に良かった……」ニコ

龍驤(あー……あかんわ。こんな泣きながら子供みたいな笑顔向けてくる相手、憎むようになったら終わりや)

雲龍「……♪」スリスリ

龍驤(それにしても……)

龍驤「……ほんまに、でかいなこれ……」モミ

雲龍「触ってみる?」

龍驤「……ええんか?」

雲龍「ええ」
540 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:46:19.62 ID:03VeN8f5o

龍驤「なら、遠慮なく……」

 フニッ

龍驤「……」

 モニュ

龍驤「……」

 モニュモニュモニュ

龍驤「……」

龍驤「なんやこれ……」

龍驤「なんやこれえええええ!!」

龍驤「めっちゃやわっこい! なんやのこれ!!」ワシッ

龍驤「うわ、ぽよんぽよん跳ねるくせにめっちゃ重た!」

龍驤「発見や……こんなもん胸にぶら下げてたら洒落にならんわ」タラリ

龍驤「な、なあ雲龍、その……もう少し触っててもええか?」ドキドキ

雲龍「ええ」コク

 * * *

 * *

 *
541 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:47:53.94 ID:03VeN8f5o

 * 執務室 *

提督「……」ウーム

大淀(提督、また考え事をしてるみたいですね)

提督「なあ大淀、ちょっと聞いていいか」

大淀「はい。なんでしょうか」

提督「もし、嫌いな相手とどうしても話をしなきゃならないとき、お前ならどうする?」

大淀「嫌いな相手……ですか?」

提督「ああ」

大淀「そうですね……できるだけ余計なことを言わないで、用件だけを事務的に接すると思います」

提督「そうか……大人の対応だな」

大淀「私は、人の好き嫌いを言えるような立場ではありませんから」

提督「そういう話かよ。いくら役割とはいえ、健全じゃねえな」

大淀「そうでもありませんよ。ここに来てからは、それなりに言いたいことを言わせていただいてます」

提督「そうか? まあ、ストレスになってなきゃいいんだが……」
542 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:49:46.74 ID:03VeN8f5o

提督「こう言っちまうとなんだが、うちの艦娘はほぼ全員まともな配属のされ方してねえからな」

提督「難しい境遇の艦娘同士、衝突もあって当然だと思ってたから、ここまで内部分裂起こしてねえのが奇跡だと思ってる」

大淀「お互いの立場を慮れる人たちばかりですから」

大淀(ここを追い出されたら行く当てがないと言うのもあるかもしれませんが)

大淀「それに案外、居心地がいいと思ってる人も少なくないと思いますよ」

大淀(提督のそばにいたいって人、それこそたくさんいますからね……)

提督「なんか一言二言言いよどんでる気がするが……」

大淀「気のせいです」ニコー

提督「……本当かよ」

大淀「それより、どうしてそんな質問を? 嫌いな相手と話さなければならなくなったんですか?」

提督「俺じゃねえよ。龍驤と雲龍だ」

大淀「ああ……」

提督「龍驤が雲龍を身体的特徴で敵視しちまうのはどうしようもねえと思う。少なくとも俺が口を挟んでどうこうできると思うか?」

大淀「デリケートな問題ですし、下手に口を出すべきではないかもしれませんね」

提督「そうなるよなあ……」
543 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:50:48.62 ID:03VeN8f5o

大淀「提督こそことあるごとに人間を嫌ってますが、これまではいったいどうなさってたんですか?」

提督「開き直って無視してただけだ。まあ、妖精がいたから孤独じゃあなかったし、一人のほうが楽だったしな」

提督「嫌われる側はそれでいいんだが、龍驤に好意を抱いてる雲龍にそれをさせるのは酷だ」

提督「嫌う側の龍驤だって、これから毎日雲龍と顔を突き合わせることになりゃあ、否応なしにストレスたまっちまう」

大淀「ですが、あの二人を引き離しても大丈夫でしょうか……」

大淀「餓死寸前の雲龍さんを、絶対助けると息巻いていたのは、ほかでもない龍驤さんですよ?」

提督「そうかもしんねえけど今回のケースはなあ……助けた相手が親の仇、みたいなもんだろ?」

提督「だとしたら、血を見る前に隔離したほうがいいと思わねえか?」

大淀「雲龍さんを余所の鎮守府に異動させるということですか」

提督「そうするしかないんじゃねえかな……」

提督「龍驤がこの島に送られてきた罪状を考えると、龍驤がこの島を出たとしても受け入れてくれる鎮守府はないだろ」

大淀「雲龍さんも邂逅した状況が複雑ですよ?」

提督「そりゃあな……」

 コンコン

龍驤「ちょっとええか?」ガチャ

提督「……龍驤!?」
544 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:51:35.22 ID:03VeN8f5o

龍驤「あー、なんかうちらのことで揉めとるん?」

雲龍「失礼するわ」

大淀「雲龍さんも……!」

提督「もしかして聞いてたのか、今の俺たちの話」

龍驤「うーん、まあ……聞こえてきてもーたなあ」ポリポリ

雲龍「私を余所の鎮守府に、ってあたりからね」

龍驤「でも、あれや、大丈夫や。もう心配あらへんよ」

提督「なに?」

龍驤「うちと雲龍は和解できたから。気を遣わんてくれて大丈夫や」ニコ

大淀「え?」

雲龍「一応聞くのだけれど、私と龍驤が仲良くなれば、どちらかがこの島を離れる必要もなくなるのよね?」

提督「あ、ああ……そうだな」

雲龍「いらない心配をさせてしまって、ごめんなさい」ペコリ

大淀「い、いえ、そういうことでしたら何よりです……ね、提督?」

提督「そう……だな」
545 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:52:45.47 ID:03VeN8f5o

龍驤「ほな、工廠に行ってくるわ。明石たちにも謝らなきゃなあ」

雲龍「ええ」コク

提督「……」

大淀「……」

 パタン

提督「……」

大淀「……」

提督「なにがあったんだ?」

大淀「……さあ……」

提督「……」

大淀「……」

提督「わけわかんねえ。なんでこんなにうまく回ってんだこの鎮守府!?」

大淀「て、提督……?」

提督「おかしいだろ!? あんなに取り乱してたやつが、簡単に心変わりするもんか!?」

大淀「提督、落ち着いてください!」
546 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:53:41.93 ID:03VeN8f5o

提督「俺が見てきたやつらに、あんな風に理解のある連中なんか……!!」

提督「……人間じゃあ、ないからか?」

提督「艦娘だから……だからここまで、諍いがすんなりおさまるのか?」

大淀「提督……?」

提督「……」

大淀「……」

提督「やっぱ人間は一度滅んだほうがいいな」ハイライトオフ

大淀「て、提督!? 何を言い出すんですか!?」

提督「あぁ? だってそうだろうが。あんな下らねえ連中がのさばっていい理由がどこにある」

大淀「いけません! そのような発言は控えてください!」

提督「なぜだ? お前だって人間から拒絶されたクチじゃねえか、なんであいつらを庇う」

大淀「そうじゃありません! どこで誰が聞いているかわからないんですから、口を慎んでください!」

提督「……」

大淀「それに提督、その思想は危険です」

提督「俺の偽らざる本音だぞ」

大淀「そうであっても! そう言うのをやめてほしいと私は言っているんです!」
547 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:54:39.07 ID:03VeN8f5o

大淀「いつその不用意な発言が誰かの耳に入って、あなたの身を脅かすようになったらどうするおつもりですか!」

提督「そうなったらそうなった、だ」

大淀「先日! 吹雪さんが何と訴えていたか、もうお忘れですか!」ツクエバシッ

大淀「自殺をほのめかすようなことを言うなって泣かれたこと、もうお忘れになったんですか!」

提督「……忘れちゃいねえよ」プイ

大淀「吹雪ちゃんだけじゃありませんよ……! 私だって同じ思いです」

大淀「任務管理役として役立たずになった私を……私の我儘を受け入れて、私に役割を与えてくださったのは、提督です」

大淀「提督の……あなたの代わりはどこにもいません。あなたがいなければ、私の居場所もきっとどこにもありません」

提督「……」

大淀「提督。どうか、ご自愛ください」

大淀「私には、あなたが必要なんです」

提督「……」

大淀「……」

提督「……お前もそこまで言うのかよ」アタマガリガリ

提督「わかったよ、自重する。だから、そんな泣きそうな顔すんのはやめてくれ」

大淀「そ、そんな顔してません!」カオマッカ
548 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:55:34.65 ID:03VeN8f5o

提督「え……お前自覚ないのかよ。滅茶苦茶落ち込んで泣きそうだっ」

大淀「そんなことありませんっ!!」ツーン!

提督「いや、おま」

大淀「だいたい! 提督はご自身を軽んじすぎておられます!」クワッ!

大淀「少しはご自身の立場というものをご理解ください! いいですね!?」ズイッ

提督「……わかった。わかったよ」ハァ

大淀「また同じようなことがあったらお説教ですからね! まったくもうっ!」プンスカ

提督「散々だな今日は……まあ、大淀の言うことも尤もだ」

提督「妖精たちもその辺で聞き耳立ててるし、迂闊なこと言って心配させねえほうがいいか」

大淀「……!?」

島の妖精たち「」コソコソッ

大淀「」

提督「まあ、自嘲はできるだけ言わないようにするが……人間への文句は言いたくなる時があるから、そっちは勘弁してくれ」

大淀「……」カオマッカ

提督「どうした?」

大淀「なんでもありませんっ!!」プイッ

提督「……なんなんだ、いったい」
549 : ◆EyREdFoqVQ :2019/04/21(日) 17:56:31.22 ID:03VeN8f5o
>538-539は書き込みミスのため無視をお願いします。
なんで連投になっちゃったんだろう……。

今回はここまで。
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 14:14:49.94 ID:+uRgqd9OO
乙です、提督自分からめんどくさい奴オーラ出していたせいで
ぼっちになった可能性がある?
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/25(木) 01:39:05.51 ID:5joR2FSqo
ハーレムまだー?
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/11(土) 23:42:08.41 ID:K4wJA/Ja0
ほしゅ
553 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:38:41.59 ID:tgIYhLP7o
お待たせしました、続きです。

今回はその、ぼっちになった理由をば。
554 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:40:09.93 ID:tgIYhLP7o

 * 工廠 *

古鷹「そうですか、二人とも仲良くなれたんですね!」

雲龍「ええ」ニコニコ

龍驤「まあ……うちが大人になれへんかっただけや。いらん気ぃ遣わせてごめんなあ」ペコリ

明石「いえいえ、身体的なコンプレックスはなかなか根深いですから、仕方がないですよ」

古鷹「本当に良かったです!」ニコニコー

長門「……」

如月「……」

陸奥「それにしても……」

龍驤「うん?」

雲龍「なぁに?」

陸奥「ちょっとくっつきすぎじゃない?」

(雲龍の膝の上にちょこんと座る龍驤)

龍驤「そう?」クビカシゲ

雲龍「私は構わないわ」
555 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:41:08.02 ID:tgIYhLP7o

如月(雲龍さんの胸が枕みたいになってるわ)

長門(潮にもしてあげたら喜ぶだろうか)ウーム

陸奥「……まあ、二人がいいならいいんだけど」

古鷹「良いことばかりだと思います!」パァッ

古鷹「陸奥さんも仰ってましたよね、龍驤さんは前の鎮守府でも練度の高い航空母艦として、みんなから信頼されていたって!」

古鷹「そんな良い先生がすぐそばにいれば、雲龍さんもすぐに強くなれそうですね!」ニコニコー

雲龍「そうなりたいわ」ニコ

龍驤「先生なんて、そんなたいしたことあらへんて」テレテレ

長門「いや、たいしたことはあるぞ。何といっても、この鎮守府の航空戦力はお前たちだけだ」

明石「この鎮守府、空母が長らく不在だったせいで、艦載機の妖精さんたちは暇を持て余してましたからねえ」

島妖精A(流星改)「まったくだ」ウンウン

島妖精C(彗星)「やっと私たちが腕を振るえる日がきたねえ」ウンウン
556 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:42:35.18 ID:tgIYhLP7o

長門「これから頼りにさせてもらうぞ?」

如月「私たちも頑張って護衛するわね」

龍驤「おおきにな、うちも頑張るわ」ホロリ

雲龍「私も頑張るわ」

龍驤「ところで……」チラリ

妖精「……」ションボリ

龍驤「なんでキミはそんな風にしょげてるん?」

妖精「提督がね……」ハァ

明石「まーたなにか碌でもないこと言い出したんですか」

島妖精A「人間は一度滅ぶべきだ、と言っていた」

古鷹「!?」ギョッ
557 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:43:42.92 ID:tgIYhLP7o

 * 執務室 *

朧「大淀さんが珍しく怒ってると思ったら」

由良「そんな滅多なこと、口にするべきじゃないわ」

大淀「ですよね!」

提督「わけわかんねえ。どうしてお前らが人間を擁護するんだよ」

朧「気に入らないことは確かですけど、それをアタシたちが口にしたらダメだと思います」

由良「そうよ。仮にも私たちは国民を守るため、国を守るために働いた軍艦の生まれ変わりよ?」

由良「かつて私たちに乗っていた人たちだって、親しい人たちと一緒に生きたくて、生きて帰りたくて戦ったのよ」

朧「戦争に負けたらどうなるかわからない。みんな必死だったんです」

提督「それで死んだ先人たちの無念を知る艦娘を、生き残った人間どもはどんな風に扱ってるんだ?」

提督「お前らこそ悔しくねえのかよ、俺は呆れてるくらいだ。そうでなくても、俺はあいつらを信用できねえ」

由良「良い人だっているじゃない。どうしてそこまで人間を敵視するの?」
558 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:44:23.06 ID:tgIYhLP7o

 * 工廠 *

妖精「わたしのせいで提督は、提督の両親と険悪になっちゃったんだ」

陸奥「どういうこと?」

妖精「提督は、小さいころからわたしの姿が見えてたんだ。それを両親に話したらとんでもないことになっちゃって……」

龍驤「そんな長い付き合いなんか。キミたちもそうなん?」

島妖精A「残念だが、わたしたちは提督の幼少のころの話は知らないぞ」

島妖精C「こっちの子は提督が島に来る前から一緒だったけど、わたしたちは提督とはこの島で初めて出会ったからね」

妖精「わたしが提督と出会ったとき、提督は4つか5つだったと思う。素直でいい子だったんだ」

明石「素直……」

長門「いい子……?」

龍驤「いやいや、さすがにそんな歳から歪んどったら可哀想やろ」ビシッ
559 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:45:09.00 ID:tgIYhLP7o

古鷹「でも、そこまで話を遡るってことは、そのころから問題があったんですね?」

妖精「うん。提督の両親……っていうか、お父さんはオカルトが大嫌いでね」

妖精「提督がわたしを見つけて、その話を提督のお父さんに話したの。そうしたら、すごい剣幕で提督を詰りだして……」

妖精「話を合わせるわけでもなく、優しく諭すわけでもなく、いきなり怒鳴り始めたんだ」

長門「子供相手にか……!?」

妖精「うん、まるで関係なかったみたい。そこまで毛嫌いするのかって、わたしもびっくりしたよ」

妖精「提督も見えたことは事実だから、嘘じゃないって主張するんだけど、そうすると火に油を注いでるような感じで」

妖精「わたしの存在を否定するだけじゃなく、提督のことまで非難し始めて……そのうち暴力も振るわれて」

如月「……!」

妖精「それからかな。提督の言うことを、周囲の人に信じてもらえなくなったのは……」

妖精「提督の前に姿を見せた、わたしが悪かったの……」ションボリ

島妖精たち「……」

艦娘たち「……」
560 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:46:08.09 ID:tgIYhLP7o

 * 執務室 *

提督「悪いのは聞く耳も持たずに俺の話を全否定した父親だ。妖精に罪はねえよ」

朧「お母さんとか、信じてくれる人がいなかったんですか」

提督「いなかった。なまじ父親が社会的に権力を持ってたせいでな」

提督「外面も良かったし、そんな父親だから母親も妄信してた」

由良「……信じられない。幼稚園児くらいだったんでしょ?」

提督「俺だって信じられなかったさ。確かに今思えば我ながらメルヒェンな寝言をほざいてたとは思うが……」

大淀「ですが子供の言うことですよ? せめて、見間違えじゃないか、くらいの言葉をかけられても良いはずです」

提督「……お前らは優しいな」

提督「そういう言葉をかけてくれるやつが一人でもいたんなら、妖精にもつらい思いをさせずに済んだはずなんだがな」

朧「提督と一緒にこの島に来たっていう、あの妖精さんですか」

提督「ああ。俺に見つかりさえしなきゃ、こんな島に来ることはなかったのによ。あいつには迷惑かけっぱなしだ」
561 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:47:16.89 ID:tgIYhLP7o

 * 工廠 *

妖精「提督はわたしに迷惑をかけたって言うけれど、わたしは迷惑だなんて思ってないよ」

龍驤「キミもえらいお人好しやなあ。この島に来る前に、提督と別れることだってできたやんか」

妖精「さっきも言ったけど、見られないと思って姿を見せちゃったわたしが悪いんだ」

妖精「単純に心配だ、ってところも多いけどね。提督は人付き合いっていうか、他人が苦手だし」

長門「まあ……そうだな」

妖精「提督と小さいころから過ごしてきて、土壇場でわたしは行かない、なんて言ったら不義理じゃないか」

妖精「提督はわたしを信頼してくれてるし。離れ離れになったら、提督が心配でわたしが大丈夫じゃないよ」

陸奥「それで一緒にここに来たのね」

妖精「本当はすごく優しい人なんだ。以前はわたしたち妖精にもにこにこ笑ってくれてたんだよ」

妖精「でも、何もないところを向いて微笑んでいるところを、何も知らない人たちが見たらどう思うか、わかるよね」

妖精「提督が小さい頃……学生になってからもかな。それで提督はずっと後ろ指を指されていたんだ」

如月「司令官……」

妖精「提督が普段殆ど笑わないのも、そのせいなんだと思う」
562 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:48:12.71 ID:tgIYhLP7o

 * 執務室 *

提督「妖精に向かって何を喋っても、馬鹿にしてくるクソどもがいねえってのは本当に快適だぜ」

提督「海軍の内部ですら、ひそひそしてくる奴がいたからな」

大淀「……提督。妖精さんが見えると言う話、警察やお医者さんには話さなかったんですか?」

提督「うん? そう言やあ、話した記憶はねえな。つっても、村中で噂になってたから、知らない奴はいなかった気がするが」

朧「村……ですか?」

提督「おう。俺の生まれは山奥のど田舎だ。海とは無縁の農村だよ」

大淀「私が知る限り、警察やお医者様には、妖精さんが見える人がいたら海軍へ連絡するように連絡が行っているはずなんです」

提督「そうなのか?」

由良「……ねえ、大淀。もしかしてその話って、提督が小さいころは広まってなかったんじゃない?」

大淀「提督の話を聞くと、そうかもしれませんね……」

大淀「それと、妖精さんの目撃情報が海沿いに集中していましたから、内陸部にはその連絡が広まっていなかったのかも」ウーン

提督「かもな。実際、山奥の妖精は珍しいぞ」

朧「そうなんですか?」

提督「小学校のときは田舎の分校だったが、中学からは学校も町中になって、それ相応に妖精も増えてたな」

提督「そもそもあの妖精も、気まぐれで俺の村に来たとか言ってたし」

由良「それなら、提督さん以外にも妖精さんが見える人がいてもおかしくないわよね。ね?」

提督「いや、生憎と俺以外で妖精が見える奴には、お目にかかれなかったな」
563 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:49:11.46 ID:tgIYhLP7o

 * 工廠 *

妖精「ほかの子たちにも聞くと、提督以外にもわたしたちの姿が見えていそうな人はいたみたいなんだ」

妖精「でも、提督が妖精と話ができる、という話が『良くない噂』として知れ渡っていたせいで……」

妖精「見えることを秘密にしちゃう人ばかりだったんだよね」

長門「なるほど、もし誰かが妖精さんを視認できていたとしても、とても言い出せない環境だったわけか」

如月「ちょっと待って、それじゃ司令官は、その学校にいる間ずっと『良くない噂』で何かされてたってことなの!?」

妖精「うん……たとえば、からかわれたり、無視されたり……いじめに近いと言えばそうだったね」

龍驤「今のいじめって陰湿なのが多いからなあ……」

陸奥「でも、提督が子供のころだと、そこまで陰湿ないじめってなかったんじゃ……?」

妖精「最初はからかわれるほうが多かったよ。でも、それを提督が無視して、無視し返されて……」

妖精「そのうち喧嘩になったんだけど、提督が全部返り討ちにしてね。それからは腫物扱いされてたよ」

雲龍「提督って強いの?」

明石「間違いなく強いはずですよ。計ったことはありませんが、握力がとんでもないですから」

如月「アイアンクローもすごいけど、でこぴんもすっごく痛いの」

古鷹「そういえば、吹雪さんをでこぴん一発で気絶させたこともありましたね……」

妖精「あったね、そんなこと……」ハァ
564 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:50:17.01 ID:tgIYhLP7o

 * 執務室 *

提督「最初は腕力を鍛えてたさ。けど、あの父親のげんこつはそれじゃ止められなかった」

朧「それで握力を鍛えてたんですか」

提督「とにかく向こうの攻撃を防ぎたかったからな。殴れないように腕を抑えればいい、って考えたのがきっかけだった」

由良「それにしたって、小学生相手に暴力をふるう父親ってどうなの!?」プンスカ

提督「俺が折れないせいで頭に来たんだろ。俺も俺で妖精が見えることを嘘だと言いたくなかったからな」

朧「でもそれで提督は怪我してるわけですよね。周りの大人が提督を庇ったりしなかったんですか」

提督「あー……あいつ、一応は県議だったからな。村の連中にしてみれば超エリート、村の英雄みたいなもんだ」

大淀「権力でもみ消したんですか?」

由良「スキャンダルになるんじゃないの!?」

提督「国会議員になる話もあったからな。議員と話をする機会もあって、お巡りも町医者も委縮してやがった」ケッ

提督「誰に言っても無駄だとわかってからは、誰に頼らずにも済む方法を模索し始めたのは確かだ」

提督「出来のいい弟のおかげで、俺のことはなかったことにしようとしてたくらいだからな」

由良「提督さん、弟がいたんですか」

提督「あいつらの英才教育のおかげで、そりゃあお利口さんに育ったぜ」

朧「絶対に皮肉ですよね、それ」

提督「おうよ」
565 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:51:08.05 ID:tgIYhLP7o

 * 工廠 *

妖精「最初は提督も弟さんのことは可愛がってたよ。それこそ小っちゃいころの話だけど」

妖精「でも、提督がわたしたちの姿を見えると言った途端、提督に近づけちゃいけない、って完全に隔離されちゃってね」

長門「理解のない親だったとは言え、そこまでするのか……!」

妖精「あのお父さん、潔癖なくらいわたしたちの存在を否定してたからね」

妖精「その甲斐もあって、弟さんはお父さんと同じエリートコースに乗ってるみたい」

妖精「兄である提督に対する態度は、お父さんよりひどいものがあるけど」

明石「なにそれむかつく! 当然、因果応報があったんですよね!?」

妖精「むしろ逆かなあ……」

陸奥「逆?」

妖精「提督が海軍に入って提督業に就いたことが、提督の家族にとってはプラスに働いたみたい。エリート家族の箔がついたって」

明石「うわ、そうくるの!?」

古鷹「で、でも、そうなったら、お父さんたちも提督に感謝して……」

妖精「あの人たちは、提督に対して感謝はしないと思うなあ」

古鷹「ど、どうしてですか!?」
566 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:52:12.93 ID:tgIYhLP7o

 * 執務室 *

提督「俺がこの島に来る前に、中佐が父親たちに金を渡したって言ってきたんだ」

由良「ど、どうして!?」

提督「俺の身に何があっても口出しするな、ってことだろうさ」

朧「……!」

提督「随分と神妙に受け取ったらしいが、あいつらのことだ。体よくごみを処分できたと喜んでるだろうよ」

由良「そ、そこまで言い切るの!?」

提督「妖精が見えるなんて血迷ったことを言う問題児。表に出れば問題行動を起こして迷惑をかける大馬鹿者」

提督「一族の面汚し、ってのが俺の評価だろうな。それを破格の値段で売っ払ったんだぜ? 笑ってないわけがねえ」

朧「笑えませんよ……!」

提督「そういうわけなんで、俺は奴らを家族だなんて思っちゃいねえ」

提督「その俺を見捨てないで、根気よく相手してくれたのは妖精だけなんだ」

提督「人間からは……誰からも救いの手を差し伸べられなかった。いくら妖精がいると訴えても、信じてもらえなかったんだからな」

提督「だから俺も人間は信じてねえし、信じられねえ」
567 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:53:07.71 ID:tgIYhLP7o

 * 工廠 *

妖精「……でもね。あの時は嬉しかったかなあ」

明石「あの時?」

妖精「N中佐に啖呵を切ったときのあの言葉だよ」

妖精「俺にとって大事なのは、この鎮守府にいる艦娘たちだ、って」

明石長門「「!」」

如月「そうね……すごく嬉しかったわ、あの時は」ニコ

妖精「あ、そうか、如月はあの時あの場所にいて、一緒に聞いてたんだよね」

如月「だからこそ、その後、自分の命を粗末にするようなことを言うのが許せなかったけど」ザワッ

明石長門((怖っ!?))ビクッ

龍驤「お、落ち着きや! なあ!?」

如月「あ、ごめんなさい。うふふっ」ニコ

陸奥「……信頼されてるのね、ここの提督は」

龍驤「陸奥?」
568 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:54:19.81 ID:tgIYhLP7o

陸奥「あの鎮守府にいたときは、以中佐に怒りを覚えることはあっても、以中佐のために怒るようなこと、絶対になかったもの」

長門「陸奥……」

陸奥「私、少しだけ頑張っちゃおうかしら」

龍驤「まあ、無理せんでええよ。徐々に慣らしてき」

明石「それにしても……提督の昔話は、聞けば聞くほどひどくなってません?」

如月「まだ話してない過去もありそうね……」

妖精「そうだね……いじめの話もいろいろあって。だいたいはわたしたちが提督に告げ口するから、すぐ解決するんだけど」

龍驤「例えばどんなん?」

妖精「嫌がらせで物を隠されても、妖精ネットワークですぐに犯人も探し物も見つかるし……」

妖精「大勢での待ち伏せやだまし討ちなんかも、わたしたちが見つけて事前に対策できちゃうんだよね」

龍驤「あー……偵察機飛ばすのに似てるなあ」

如月「妖精さんたちとは、いい関係が築けてたのね」

妖精「提督が、危険を知らせてくれたお礼に、って、お菓子やアイスをわたしたちに買ってくれたのも大きかったかなー」

妖精「スーパーに並んでるお菓子を勝手にとっていくのは、さすがにわたしたち的にもアウトだからね」

龍驤「お金はどうしてたん?」

妖精「結構落ちてるよ? 自販機の裏とかに」

龍驤「そういうことかいな!」
569 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:55:13.62 ID:tgIYhLP7o

 * 執務室 *

提督「妖精に助けてもらってばかりいたが、図書館以外でゆっくりできた場所がなかった気がするな」

提督「親は親で、育児放棄を疑われたくないから飯だけは出してくれたが、会話なんてなかったぜ」

朧「それで提督は、家族なんかいない、と仰るわけですか」

提督「ああ。あいつらは中佐に俺を金で売ったんだ。そうでなくても、俺は中学で父親に勘当されてる」

朧「勘当したくせにお金は受け取るんですか」ムスッ

提督「不服そうだな?」ニヤリ

朧「当然ですよ。そんなの家族なんて呼べません」

提督「ああ、俺もそう思う。けどな、忌々しいことに俺はそいつらの血を引いちまってるんだよな」

朧「!」ハッ

提督「そんなばつの悪そうな顔すんな。むしろ俺と同じ不満を口にしてくれたんだから、これでも嬉しいんだぜ?」

朧「提督……」

大淀「大和さんたちからの求愛を拒んだのも、そういうことですか」

提督「こういう血筋だからな。とっとと途絶えちまえ、って思ってる。結婚なんてもってのほかだ」

由良「それに加えて提督さん……その、えっちなのも、嫌いなんでしょ?」ポ

提督「確かにそれもあるな」アタマガリガリ

朧「あー……吐いてましたね、そういえば」
570 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:56:56.48 ID:tgIYhLP7o

 * 工廠 *

如月「司令官は、このまま独身を貫くつもりなのかしら……」

龍驤「……もしかして、ここの提督って童貞なん?」

妖精「うん、そういうことになるね」

龍驤「そういうのって、タガが外れた時の反動とか怖ないんかな?」

明石「そういうお話はよくありますけど、あの提督の性欲のなさは本当に異常ですよ」

明石「大和さんが隣で寝てようが、恥ずかしがるだけで絶対に手を出してこないそうですから」

長門「提督のほうが抱き枕にされてるくらいだと聞いてるな」

雲龍「その調子だと、生涯不犯でいる気なのかしら」

古鷹「ふぼん、ってなんですか?」

雲龍「僧侶の戒律ね。異性との交わりを断って禁欲することよ」

古鷹「そこまでするなんて……」

如月「有り得るわ……それに、男性向けの大人の雑誌を見て、拒否反応を起こして気分を悪くしたくらいだもの」

如月「もしかしたら司令官、そういうこと自体受け付けないっていうか、できないんじゃないかしら……」

長門「明石。確か、近々提督に健康診断を受けさせる話があったな?」

明石「はい、大淀から本営に申請したって聞きましたよ」

長門「提督には、一度カウンセリングにかかってもらったほうが良いと思うんだが、どうだろうか」

明石「うーん、今からじゃ、ちょーっと遅いと思いますよ」
571 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:57:54.58 ID:tgIYhLP7o

 * 執務室 *

 扉<コンコン

不知火「失礼します」チャッ

提督「不知火か」

不知火「ご報告いたします。司令の健康診断の日程が決まりました。詳細はこちらの書類に」スッ

不知火「この島へ向かっている医療船もすでに出港しております。診察前日の夜から飲食は控えるようにとのことでした」

提督「そうかい。はー……面倒臭えなあ」

不知火「面倒がらずに準備をお願いいたします。何もなければ面倒もなくすぐに済む話ですから」

提督「ああ、わかったわかった」

朧「不知火も結構世話焼きだね」

不知火「司令はご自身のことに頓着しませんから」

提督「……世間じゃあ、こういうのと母親みたいだって言うんだろうな」

大淀「提督……」

提督「気にすんな、ちょっと思うところがあっただけだ。ガキのころなら嫉妬してたがな」
572 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:58:45.92 ID:tgIYhLP7o

提督「それに、お前たちこそ『親』とかいねえじゃねえか。今の発言、無神経なのは俺のほうだろ」

由良「言われてみれば不思議よね。提督さんが言うまで、親がいないことを何とも思わなかったわ」

朧「……アタシも、鳳翔さんがいたから……」

提督「……いろいろ、おかしいよな」

不知火「……司令」スッ

提督「ん?」

不知火「不知火は、司令とは家族のようなものだと考えております」

提督「……」

不知火「司令はこれまで、不知火や如月、そしてこの鎮守府に流れ着いた艦娘たちを、救ってくださいました」

不知火「血縁でもないのに、体を張って、私たちを守ってくださいました」

不知火「それはさながら、親や兄弟のためであるかのように」

提督「……」
573 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/19(日) 22:59:33.71 ID:tgIYhLP7o

不知火「いえ、今のお話を伺うに、親や兄弟以上の……」

提督「そのくらいにしとけ」スクッ

不知火「!」

提督「……冗談じゃねえ」スタスタスタ

 扉<パタン

朧「行っちゃった……」

由良「提督さんったら、何を考えているの!?」

大淀「……し、不知火さん」ハラハラ

不知火「……」




 * 埠頭 *

提督「……」

提督「不知火に本音を言うのは間違いだったかな」

提督「……」ハァ

提督「ったく、やめてくれよ。俺に優しくしないでくれ」

提督「……離れられなくなるじゃねえか」ウツムキ
574 : ◆EyREdFoqVQ :2019/05/19(日) 23:01:08.38 ID:tgIYhLP7o
というわけで、今回はここまで。
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/20(月) 22:05:33.50 ID:i6eOxzN3o
早く艦娘に堕ちれば良いのにw
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/21(火) 00:11:43.38 ID:mOAtKXzqo
>>575
その未来はもう一個のシリーズでワンチャンないかどうかくらいだから……
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/23(木) 13:43:59.32 ID:wmPrf4H2o
>>576
まじかー悲しみ
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/24(金) 01:37:45.22 ID:+rW4bLYEo
>>577
罠だらけシリーズの方読んでくるとよかよ
579 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:35:04.16 ID:WB2fCxgbo
あちらの方はなかなか筆が進まずすみません。
というか、こっちを書き進んでいるといろいろ辻褄が合わなくなることが多すぎて困ります。

本当は、今回の二人の出番はもっと後だったのですが。


というわけで、続きです。
580 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:36:08.41 ID:WB2fCxgbo

 * 太平洋上某所 航行中の護衛船の一室 *

女性提督(以下「波大尉」)「……」ムスッ

士官1「大尉、機嫌を直してくださいよ」

士官2「そうですよ。大尉にもいい人が見つかりますよ」

波大尉「そーゆー台詞を聞き続けて何年経ってると思ってんのよ!!」ウガーッ

波大尉「だいたい! どうしてこのタイミングで私がブルネイまで出張しなきゃいけないの!? いつかは行きたいって言ったけど!」

士官1「そ、そう言われましても」

波大尉「ほかに行ける人いっぱいいるでしょ!? おかげでまた出会いの機会を逃がしちゃうし!!」

士官2(また隠れて合コン行くつもりだったんだ)

士官1「いいじゃないですか、波大尉もこの仕事を頑張っておられるんですから、そのご褒美のバカンスだと思えば」

波大尉「バカンスに独りで行ったってしょうがないでしょーーー!!」

士官1「……す、すみません」

波大尉「っていうかさぁ、そう思うんなら、あんた、あたしに付き合いなさいよ」

士官1「え? そりゃ駄目ですよ。俺、妻がいますんで、未婚の女性とそういう行動をとるのは既婚者としてどうかと」
581 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:37:22.07 ID:WB2fCxgbo

波大尉「はあ!? じゃああんたは!」

士官2「結婚はまだですけど、そういう約束なら……」テレテレ

波大尉「」

士官1「え、マジ? お前、あの子とそこまで行ったのか!?」

士官2「いやー、ちょっと顔見せ程度だったんだけど、彼女の両親に会わせてもらって……」テレテレ

士官2「ほんっと緊張したぜー、強面の親父さんだったしなあ。でも、俺の職業聞いたら歓迎されちゃってな!」テレテレ

士官1「えっ、普通逆じゃね? 俺、めっちゃ反対されたぜ」

士官2「親父さん、警察官なんだよ。それで同情されたっていうか」

士官1「あー、なるほどなー、あっちも命懸けの仕事だもんな。苦労がわかるってかー」

士官2「だもんだから、娘をさびしくさせるなよ、ってしみじみ言われちゃって……あれはちょっとホロリときたぜ」

士官1「でも、理解ありそうで良かったじゃねーか」ハハハ

士官2「そーだな! なんだかんだで一大イベントもいい感じで行けたし、俺もそろそろ……なあ!」ハハハ

士官1「そろそろかもなあ!」ハハハ

波大尉「それはそれは……良かったわねえ」ズゴゴゴゴゴ

士官1「」

士官2「」
582 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:38:16.56 ID:WB2fCxgbo

波大尉「なぁに? 目の前に独り身の女性がいるってのに、のろけ話!?」

士官2「そ、そんなつもりは」

波大尉「あーーはいはい御馳走様!! お腹いっぱいで吐きそうだわ!」

士官2「も、申し訳ありません!」バッ

千歳「ちょっと、申し訳なくなんかないでしょ」スッ

士官1「千歳……さん」

千歳「こればっかりはおめでたい話なんだから。ほら、士官2君も顔をあげて。頭を下げるのは向こうのお父さんに、でしょ」

士官2「は、はい!」

千歳「提督、八つ当たりはよくありませんよ、一歩間違えばパワハラです。愚痴でしたら私がお付き合いしますから」

波大尉「……」ムスーッ

千歳「二人とも、この場は私に任せて。持ち場へ戻って頂戴」ニコッ

士官1「はっ!」ビシッ

士官2「了解いたしました! 失礼いたします!」ビシッ

 ガチャ パタン

士官1「千歳さんが来てくれて助かった……」

士官2「大尉の前では迂闊なことが言えないな……」

 スタスタ…
583 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:39:08.28 ID:WB2fCxgbo

 * 一方の室内 *

波大尉「……」ムッスーッ

千歳「ほら、提督、いつまでもむくれてないで。お仕事中なんですから」

波大尉「……敵影は」

千歳「今のところありません。先行している護衛艦隊からも、私たちが飛ばしている艦載機からも、今のところは異常ありません」

波大尉「……艦隊の疲労度は? 休憩はちゃんとしてる?」

千歳「現時点で体調不良や疲労を訴えている艦娘もいませんし、欠員も出ていません」

波大尉「××島の駆逐艦隊の様子はどう? コミュニケーションはちゃんと取れてる?」

千歳「こちらも問題ありません。深海棲艦の艦隊の迎撃をお願いしていますが、今のところ出番なしです」

千歳「連絡もこまめに来ていますし、雑談もできるくらいには馴染んでいますね」

波大尉「……とにかく、順調なのね?」

千歳「はい。順調です」

波大尉「……」

千歳「……」

波大尉「だったらあたしがいなくたって良かったじゃない……」ゲンナリ

千歳「提督!?」
584 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:40:08.31 ID:WB2fCxgbo

波大尉「こんなのただの遠征任務じゃない! 別にあたしがいなくたって回る任務なんじゃないの!?」

千歳「今回の任務は医療船の引き渡しです。提督が代表として引き渡しを行わないといけないんですから、駄目ですよ」

波大尉「そんなの誰かやってよぉ、なんであたしなのよぉぉ……」

千歳「提督が物資の管理を担当しているからじゃないですか、これはれっきとした提督のお仕事ですよ」

千歳「それに、一人に全部任せたら大変だからって、幌筵やショートランドには他の提督が向かうことになったじゃありませんか」

波大尉「ううう……せめて、1日くらいずらせなかったの……!?」

千歳「戦時中ですよ。戦況は毎日変化するんですから、1日順延して明日になったら襲撃されて時すでに、なんてことがあってはいけません」

波大尉「そうですよねー……国民の命ですもんねー……」イジイジ

波大尉「それに比べたら、あたし一人の幸せなんかちっぽけなもんですよねー……」

千歳「……もしかして、また合コンに行こうとしていたんですか?」

波大尉「……」プイ

千歳「提督。こっち見てください……提督?」

波大尉「なによう。あたしだって好きで不貞腐れてるわけじゃないわよ」グス

波大尉「やっと都合つけたのに。やぁぁっと、私の旦那様が見つかるかと思ったのにぃ……!」グズグズ

千歳「提督……!」
585 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:41:08.50 ID:WB2fCxgbo

波大尉「わかってるわよ……今のお仕事は立派なお仕事で、誰に対しても誇れる仕事だって」

波大尉「でも実際にはあたしはデスクワークしてるだけで、立派なのは現場で戦ってるちーちゃんたちじゃない」

波大尉「あたし、はんこ捺すだけだもん……みんなを励まして見送るだけだもん」

千歳「提督、そんなことありませんよ」

波大尉「作戦立てるのも、あいつらに攻撃するのも、みーんな艦娘がやってくれるし、普通にみんなのほうが優秀だもん」

波大尉「どこにでもいるよーな元OLが、いきなり海軍に誘われて入ったって、やることなーんにもないんだもん……」イジイジ

千歳「提督……」

波大尉「そんで気が付いたらあたしもいい齢で、そろそろ結婚しなきゃーってときに、気付いたらあたしだけ独り身で……」

波大尉「年賀状にドレス姿とか赤ちゃんの写真とか、地味にくるのよねー……話題にもついていけなくなっちゃってさあ」ハイライトオフ

波大尉「いいとこ勤めてるんでしょー? いい男ばっかりでしょー? って言われるけど」

波大尉「そんな男が売れ残ってるわけねーじゃん!!」クワッ!

波大尉「しかも今の海軍、艦娘がいっぱいいて、その部下の艦娘といい雰囲気になってる人ばっかりなのよね!!」

波大尉「見た目も能力も並以下のあたしが、美女美少女揃いの艦娘と比較されて勝てるわけねーじゃんよー……」ブツブツ

千歳「提督……そんなこと考えてらしたんですか」
586 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:42:11.04 ID:WB2fCxgbo

波大尉「そーよー? 今更言いたくないけどさー……ちーちゃんっていい奥さんになれそうだよねえ」ジトォ

千歳「……っ」タジッ

波大尉「聞き上手だし、あたしのこと立ててくれるし、弱音吐いたら慰めてくれるし、お肌ぴちぴちだし、おっぱい大きいし」

千歳「ちょっ」

波大尉「あたしが男だったら絶対飛びついてる。お嫁さんがあーちゃんかちーちゃんなら、絶対幸せになれるって確信してる」

波大尉「だからこそ……今のあたしが、みじめすぎて……うああああ……」

千歳「て、提督! しっかりしてください!」

波大尉「もうしっかりなんかしたくないよう……ちーちゃん養ってぇ」

千歳「もう、提督ったら、いくらなんでも崩れすぎですよ!」

波大尉「ふぇぇ……」

 コンコン

足柄「提督ー、入るわよー」

波大尉「!」

足柄「お邪魔するわね。霞ちゃん、入って」

霞「……失礼するわ」スッ
587 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:43:08.17 ID:WB2fCxgbo

波大尉「あら、いらっしゃい。なにかあった?」シャキッ

千歳「……」

霞「いいえ、何かあったわけではないんだけど、お礼を言いそびれてたから」

波大尉「お礼?」

霞「ええ。ここへ来た時に緊張でがっちがちに凝り固まってた朝潮姉さんに、冗談で緊張を解いてくれたことと……」

霞「すっ転んだ五月雨に絆創膏貼ってくれたこと。ちゃんとお礼を言いたくて」

波大尉「いいのよそんなこと! あたしがやりたくてやったんだから」

波大尉「あたしはあなたたちと違って戦えない。あなたたちが全力でお仕事してるんだもの、あたしだって全力で持て成してあげないと、ね」

霞「……いい司令官ね」

足柄「うふふ、ありがと」ニコ

霞「うちのクズも、もう少し愛想良ければいいんだけど」フゥ

霞「それじゃ、休憩に入らせてもらうわね。ありがと、大尉さん」

波大尉「ええ、どういたしまして。ゆっくり休んでね」

 パタン
588 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:44:15.84 ID:WB2fCxgbo

波大尉「……いい子だったわねえ……」

千歳「……ほんと、借りてきた猫みたいでしたね」

足柄「今まで出会ってきた霞ちゃんの中でも、トップクラスに素直な霞ちゃんだわ」ウンウン

波大尉「そうね……誰彼かまわずクズ連呼する、ギザギザハートな子もいたから。あれはショックだったわ」

足柄「ギザギザ……?」

波大尉「え!? 知らないの!? すっごいショックなんだけど!」

千歳「私は提督の変わり身のほうがショックでしたけれど」

波大尉「いくらあたしでも駆逐艦娘みたいな小さい子にみっともない姿は見せられないわよ……ましてや手伝ってもらってる立場なのに」

足柄「なぁに? また腐ってたの?」

波大尉「そうよ……ああ、思い出したら嫌になってきちゃった」ズーン

足柄「ほら、しっかりしてよ。提督でしょ?」

波大尉「……あーちゃんもちーちゃんも立派すぎだよ……もうしっかりしたくなーい」グテー

足柄「これはいつになく重症ねえ……」

千歳「ちょっと、甘やかしすぎたかしら……」
589 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:45:08.39 ID:WB2fCxgbo

足柄「提督、とりあえず××島にはそろそろ到着しますから。身なりは整えておいてくださいね」

波大尉「……うあーーい……」ダレー

千歳「駄目みたいねえ……」

足柄「ほら、××島で霞ちゃんたちとはお別れなんだから。びしっとする!」

波大尉「そんなこと言ってもさあ……」

千歳「そんなもこんなもありませんよ」

波大尉「そうじゃなくて。××島って、ほぼ無人島みたいなとこでしょ?」

波大尉「それに、その島の責任者、っていうか、司令官の階級が准尉でしょ? 士官に毛の生えた下っ端じゃない……」

波大尉「その辺でスカウトされて提督になったあたしより階級が下って、普通いないわよね? 何か問題ある人なんじゃないの?」

足柄「そうかしら。あの霞ちゃんがあんなに素直なんだもの、いい提督さんだと思うわよ?」

波大尉「そうかなあ……その鎮守府、憲兵とかがいないって話でしょ? ドの付く外道だったりしないわよね?」

千歳「そんなことはないと思いますけど……」ペラリ

波大尉「? ちーちゃん、何を見てんの?」

千歳「提督准尉の履歴書です。家族構成とかも書いてありますが、特に問題がありそうな感じではありませんよ」テワタシ

波大尉「ふーん……」ウケトリ
590 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:46:21.60 ID:WB2fCxgbo

足柄「問題があるんだったら、私たちがとっちめてあげないとねえ」

千歳「ちょっと、あまり問題起こしちゃ駄目よ。××島の後にパラオ泊地とブルネイ泊地へ医療船を届けなきゃいけないんだから」

足柄「ところで、どうして××島に寄り道することになったの?」

千歳「聞いてないの? ××島の提督准尉の健康診断のためよ? 離島勤務だからって、体調管理を疎かにさせられてたみたいで……」

千歳「それで今回医療船を輸送するついでに、提督准尉の健康診断をしましょうって話になってたの」

足柄「ごめん、初耳なんだけど……」

千歳「……そうね、あなた護衛の話しか聞いてなかったものね……」ハァ

波大尉「……この人……!」

千歳「提督? どうかしました?」

波大尉「なんか……提督准尉のお父さんの名前、聞いたことあるかも」

足柄「……誰?」

波大尉「スマホで検索かけて……あった。ほら、野党シンミン党の若手のホープだって」

足柄「地方遊説で大人気……予算委で歯切れの悪い与党幹部を圧倒……」

千歳「与党議員の醜聞に鋭く切り込み……政権交代のキーマン……」

波大尉「へー、期待されてるんだ……准尉、弟さんもいるんだね。何やってんのかな……検索検索っと」
591 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/05/26(日) 23:47:43.53 ID:WB2fCxgbo

足柄「なにこれ? ブログ?」

波大尉「フェー○ブックだねー。自分がどんな活動をしてるか、名刺代わりになるページって言えばいいかな」

千歳「○○省勤務ですって。官僚じゃないですか」

足柄「すごいわね、エリート一家じゃない」

波大尉「……あれ?」

足柄「提督?」

波大尉「もしかして、これってものすごいチャンス……?」

千歳「提督?」

波大尉「官僚とか、議員二世とか、有名人候補じゃない! もしかしてお金持ちの家系!?」

足柄&千歳「!?」

波大尉「っていうか、提督准尉の顔写真、そんなに悪くないじゃない! 年齢も……うん、いける!」

足柄&千歳「」

波大尉「狙ってみる価値はありそうね……! よおし、待ってなさい!」ジュルリ

波大尉「あ、ちょっとお化粧直してくるから。二人は引き続き任務をお願いね」ニコッ

波大尉「よーし、ちょっと気合い入れますかあ!」ギラリンッ!

足柄「……」カオヲ

千歳「……」ミアワセ

足柄&千歳「はぁ……」アタマカカエ
592 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2019/05/26(日) 23:49:24.47 ID:WB2fCxgbo
今回はここまで。

というわけで、前スレ444に出てきた女性提督が波大尉として登場です。
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 00:49:03.56 ID:mY630Gmro
乙乙。やべーぞ逆レ○プだ!
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 06:52:33.22 ID:hbnjEaUL0
全身ダイナマイト巻き付けて地雷原にダイブして行くスタイルかな?
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 17:16:43.93 ID:rsjdXEz70
爆発物満載の火薬庫に火種が投下されるのか……

花火の予感っ!!
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/05/27(月) 22:02:23.97 ID:kHPNRMu+O
大和のアイアンクローで空中ブラブラしてる姿が…
597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 05:35:26.18 ID:gbR9vuDjO
オイオイオイ
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/29(水) 03:44:16.34 ID:wBJ7vANJo
おつおつ
この提督は、良さを感じ取れるのかな。たのしみ
>>578
さんきゅー。読んでみる。
599 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/06/01(土) 21:20:25.35 ID:7gLvN1Axo
それでは続きです。
600 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/06/01(土) 21:21:23.84 ID:7gLvN1Axo

 * 一方その頃 墓場島 執務室 *

提督「っくしゅん! くちゅん!」

吹雪「! 司令官、大丈夫ですか?」

提督「……なんかしらんがゾワッときた。風邪じゃねえと思うんだけどな」

伊8「熱はないですか?」

提督「大丈夫だって、そこまで大袈裟じゃねえ」

大淀「折角ですから健康診断で一緒に診ていただきましょう」

提督「しかし、波大尉だっけか? そこの鎮守府にうちの遠征部隊が突撃かまして大丈夫だったのかよ」

大淀「殴り込みみたいな言い方しないでください。ちゃんと事前に連絡してから向かわせました」

朧「……」ジー

大淀「? 朧さん? どうかしました?」

朧「あの、提督。どうして提督は、そんな風に小さくくしゃみするんですか?」

大淀「そういえばそうですね……?」

提督「……これもきっかけは父親のせいだな。くしゃみがうるせえって八つ当たりされたせいだ」チッ
601 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/06/01(土) 21:22:19.33 ID:7gLvN1Axo

吹雪「ええ!? なんですかそれ! そんなことでも暴力振るわれてたんですか!?」

提督「……なんで吹雪が父親の暴力のこと知ってんだ」

吹雪「みんな知ってますよ? 明石さんと由良さんから聞きました!」

提督「……」アタマカカエ

朧「朧は、潮と長門さんにしか話してないですよ」

提督「十分だよ」ハァ

伊8(大淀さんも結構いろんな人に話してた気がするけど)チラッ

大淀(秘密ですよ?)シー

吹雪「あ、それから大淀さんに聞いたんですけれど」

大淀「」ガクッ

伊8「」ズルッ

朧「?」

吹雪「提督のお父さん、国会議員になってるみたいですよ」

提督「なに? どういうことだ」
602 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/06/01(土) 21:23:10.32 ID:7gLvN1Axo

大淀「こほん。それに関しては気になる記事がありまして」

提督「記事?」

大淀「国会の予算委員会で、防衛費……その中でも、主に艦娘に関する予算ですね、それを見直せと言う声が野党から上がったんです」

大淀「私たちが言うのも本末転倒ではありますが、艦娘が何者なのか、深海棲艦同様まだまだわからない部分が多く……」

大淀「そのため国民には説明できないので、私たちの存在に関して公表できないというのが与党の現状です」

提督「……まあ、確かになあ。二の句に困るなら下手に喋らねえほうがマシか」

大淀「そのため野党からは、深海棲艦とは何者なのか、目的は何かを調べろ。そして戦争回避のための努力をしろ、という無茶振りと……」

大淀「国を守るためという名目で、得体の知れないものに金を突っ込むな、という、ある意味真っ当な意見で責められています」

大淀「それを切り出したのが……」」

提督「俺の父親だ、ってことか?」ジロッ

大淀「はい……!」コクッ

提督「……あの野郎。縁を切ったっつうのに、まだ俺の邪魔をしやがんのか……!」ギリギリッ

吹雪「司令官……」
603 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/06/01(土) 21:24:22.87 ID:7gLvN1Axo

朧「……んー?」クビカシゲ

伊8「どうしたの?」

朧「ええっと……提督が海軍に入った時、中佐が提督のお父さんにお金を渡したんでしたよね?」

朧「提督のことに口を出させないために……」

提督「ん? ああ、そうだが」

朧「中佐も艦娘を部下に持つ『提督』なのに、どうして艦娘運用の予算を削ろうとする人にお金を渡すのかな、って」

提督「……そういやそうだな……?」

全員「……」

吹雪「これって、賄賂……ですよね?」

朧「……どう、なのかな。なんて言うんだろう、こういうお金」

伊8「でも、そのお金って政治には関係なくて、単に提督をどうするってお金でしょ?」

朧「頭に来るけど、そういうことだよね」

吹雪「政治的には敵対するけど、提督に対しては利害が一致してる感じ?」

提督「……」イライライラ

伊8(提督の顔が般若みたいに……)タラリ
604 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/06/01(土) 21:25:32.30 ID:7gLvN1Axo

大淀「……もしかしたら、ですが……」

提督「なんだ?」

大淀「中佐は、艦娘の存在を公表したがっているのかもしれません」

朧「どういう意味ですか?」

大淀「国会での野党は、艦娘と深海棲艦について説明ができない与党を攻めて、政権の奪取を狙っています」

大淀「ですが今、艦娘を海から撤退させようものなら、深海棲艦による被害が拡大し、それこそ国家転覆に繋がります」

大淀「与党としては艦娘についての情報を公表するしかないのですが、そうなると……」

提督「今度は艦娘の人権がどうの、って話になんのか?」

大淀「それもありますが、なにはともあれ単純に、海軍そのものに注目が集まります。おそらくそこが問題なんです」

大淀「海軍本営では、艦娘の情報公開について賛成派と反対派が綺麗に分かれていまして」

大淀「賛成派は、艦娘の活躍をもっと前面に出して、海軍の活動の支持者を増やしたい意図があります」

大淀「一方の反対派は、提督が懸念した人権問題や、女性差別などの問題に発展するのを恐れている人たちと……」

大淀「艦娘という得体の知れない存在に、日本の未来を託しているという不安極まりない現状への批判を恐れる人たち……」

大淀「女性を前面に出して媚を売るのが好かない! という、昔ながらのお堅い人たちですね、そういう人たちが難色を示しています」
605 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/06/01(土) 21:26:39.99 ID:7gLvN1Axo

大淀「おそらく中佐は賛成派でしょう。国会で野党が情報開示を求めるのは好都合……」

提督「そうか……野党の連中をけしかけて、藪をつついて蛇を出させるわけか」

吹雪「??」

大淀「深海棲艦に対する抑止力は、艦娘しかいません。それが公にも認められれば、海軍が今いかに重要な組織かを宣伝できます」

提督「そうなりゃあ、国家予算を海軍につぎ込むことが悪いと言えなくなる」

朧「そっか……予算を削るつもりが、逆に出さなきゃ、って雰囲気に持っていかされるんだ……」

大淀「違法ですが、資産家が個人的に出資する可能性もありますね」

提督「中佐にしてみりゃあ、それこそが一番の狙いなんだろう。個人的なコネやパトロンを増やすためのいい宣伝だ」

大淀「与党議員が艦娘について公表しない一因には、海軍が力をつけすぎるのを恐れているところもありますね」

大淀「海軍の反対派にも、軍事政権が誕生してしまいかねない状況になっていることを危惧している方もいらっしゃいます」

吹雪「真面目に考えてる人もいるんですね……」

朧「いなかったら困るよ……」
606 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/06/01(土) 21:27:38.07 ID:7gLvN1Axo

提督「ったく、狸爺どもの化かし合いだな、巻き込まれるほうはいい迷惑だ。考えてたら胃がむかむかしてきたぜ」

不知火「司令。健康診断では胃カメラを撮る予定ですので、できるだけ平常心でお願いします」ヌイッ

提督「うお!?」ビクッ

吹雪「いつからいたの!?」ドキドキ

不知火「海軍の国家予算がどうのこうのという辺りからです」

朧「全然気付けなかった……」

不知火「本営にいると、耳を澄ませば良くない話があちこちから聞こえてきますので、そのための護身術です」

伊8「どんな環境なの……」

提督「そういうのは護身術って言わねえだろ……」

大淀「永田町には鵺が住む、と言いますが、本営もそんな感じなのでしょうか……」
607 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/06/01(土) 21:28:52.20 ID:7gLvN1Axo

 * 後日 太平洋上 護衛船内 *

士官1「えー……提督准尉と会うんですか?」

士官2「悪いことは言いませんから、やめておいたほうがいいですよ……」

波大尉「え、なにその反応」

士官2「あ、でも、会うだけならまあ……」

士官1「そうだな……あの島に近づかないなら、いいか?」

波大尉「?? あの島に行くのがそんなに駄目なの?」

士官1「大尉は御存知ないんですか。あの島、墓場島って呼ばれてるんですよ」

波大尉「なにそのいかにも何かありそーな名前」

士官2「いやまあ、そのまんまなんですけどね。この辺の海域、潮の流れがちょっと変わってまして」

士官2「このあたりで艦娘が轟沈すると、あの島の海岸に打ち上げられるくらい潮が強いんですよ」

士官2「で、あの島に住んでる准尉が、その砂浜に流れ着いた艦娘を、みんな埋葬してるそうなんです」

波大尉「えっ、准尉ってばいい人じゃない」
608 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/06/01(土) 21:30:06.00 ID:7gLvN1Axo

士官2「それだけならいいんですが、提督准尉は島に生きて流れ着いた艦娘を、そのまま運用してまして……」

波大尉「え……!?」

士官2「それがどれだけやばいことか、大尉も知ってますよね?」

波大尉「うん……轟沈した子は、そのうち深海棲艦になる、って話だったよね? もしかして霞ちゃんたちもそうなの!?」

士官2「いや、それはわかりませんけど……俺だってあの子たちが深海棲艦になるとか、思いたくないですよ」

士官1「でも、ああいう性格になったのが轟沈を経験したからだとしたら、そういう可能性が高いのは否定できないですよね」

波大尉「そんなあ……」

士官1「まあまあ、まだそうと決まったわけじゃ。轟沈した艦娘が流れてくるところを見てるからああなったって可能性もあります」

士官2「とにかく、島への上陸はやめたほうがいいですよ。実際、立ち寄った提督はみんな災難に遭ってるらしいですから」

波大尉「災難って、例えば?」

士官2「降格させられたり、僻地に左遷させられたり……あの島のもと管理者だった中佐ですら大怪我してたりしてますね」

波大尉「中佐、ってあの中佐? あの気持ち悪い奴」ヒソッ

士官1「ええ、そうです。大尉が嫌いなそいつです」ヒソッ
609 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/06/01(土) 21:31:14.52 ID:7gLvN1Axo

波大尉「元の持ち主なのに大怪我したって、どういうことなのよ……」

士官1「わかりません。大和が関わってるって言いますけど、あんな島に大和がいるなんて思えませんし……」

波大尉「大和!? 大和ってあの戦艦大和!?」

士官2「そうです。その大和です。信じられないですよね」

波大尉「うん、横須賀でもまだ2、3人くらいしかいないのに、さすがにちょっとねえ……」

士官2「それから他にも、あの島じゃ幽霊騒ぎも起きてるらしいですよ」

波大尉「幽霊!?」

士官2「だって轟沈した艦娘が流れ着いてる島ですよ、その手の話の一つや二つ、あってもおかしくありません」

士官2「……もしかして、中佐が大怪我したのって大和の幽霊の仕業だったりして」ウラメシヤー

波大尉「ちょっとやめてよ!!」バシッ

士官2「いてっ! じょ、冗談ですよ!」

波大尉「なんでそんな問題ありありの不吉な島に私が行くことになったのよぉ……知ってたら断ってたのにぃ」

士官1「しょうがないですよ。我々だって、××島って聞いてすぐあの墓場島だって思い至らなかったんですから」

士官2「その××島からの依頼の話も、今回の遠方の鎮守府への医療船配備の予定がたまたま重なったから行くことになったわけですし」

士官2「こればっかりは間が悪かったとしか言いようがないですよ」
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