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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」
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478 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/17(日) 18:14:11.07 ID:R/s+Uw8ko
潮「やっぱり、提督さんがいると落ち着かないんですか?」
陸奥「そんなことはないわ……あの鎮守府に比べたら天国と地獄みたいだもの」
潮「そ、そんなにひどかったんですか」
陸奥「ええ、いつ迫られるか、気が気じゃなかったから……」
陸奥「でも、准尉はなにかするときに必ず声をかけてくれるし……今ここで過ごすこと自体は、全然苦痛じゃないから」
潮「陸奥さん……」
コンコン
大淀「大淀です。失礼します」チャッ
大淀「提督、そろそろ昼餉に致しましょう。比叡さんからお弁当をいただいてきました」
提督「弁当?」
大淀「はい、今日は屋外で作業している方が多いので、お弁当を作ってみたそうです」
大淀「ポットにお茶も入っています、今ご用意しますね」
提督「弁当か……比叡の飯は向こうでも大好評だったんだよな」
潮「む、向こうって……朧ちゃんや初雪ちゃんがいた鎮守府ですか?」
提督「ああ。からあげとか一口ハンバーグとかあったんだけど、あっちの卯月と望月がすっげー勢いで全部食いやがってな」
479 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/17(日) 18:15:18.44 ID:R/s+Uw8ko
提督「そのあと、こっちに来た鳳翔が比叡に作り方を教えてもらってたから、今頃向こうでも流行ってるんじゃねーかな」
潮「おいしいですからね……!」ニコニコ
大淀「提督、どうぞ。こっちが潮ちゃんと陸奥さんのぶんです」コトッ
提督「おう、ありがとな」
潮「ありがとうございます……!」
陸奥「……」
提督「……相変わらず手が込んでるな。今日は由良と如月が手伝ってたんだっけか」カパ
大淀「はい。如月さんからは味わって食べてくださいと言伝を預かってますよ」
提督「そうか」
潮「そ、それじゃ、いただきます! ……もぐ、もぐ……んん……っ」ニコー
提督「相変わらず幸せそうに食べるな……」
大淀「ですね」ニコニコ
陸奥「……」
提督「……陸奥? どうした」
陸奥「……」
潮「陸奥さん……?」
陸奥「……ぅ、ぐ……!」グラッ
ドタッ
提督「陸奥!」ガタッ
潮「む、陸奥さん……陸奥さんっ!?」
提督「おい! しっかりしろ! 陸奥! おい!!」ユサユサ
陸奥「ぅ……」
提督「……大淀! 明石に連絡だ!」
大淀「は、はいっ!!」
480 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/17(日) 18:15:55.67 ID:R/s+Uw8ko
* 工廠 入渠ドック *
提督「龍驤も倒れただと!?」
明石「はい、真っ青な顔をして倒れてしまって……!」
提督「飯は食ったのか?」
明石「食べたんですけれど……」
提督「けれど?」
明石「尋常じゃなく早食いだったんですよ。余程お腹が減っていたのか、雲龍さんのために用意した重湯まで食べたいと言い出して……」
提督「……」
明石「陸奥さんは食べる前に倒れたんですよね?」
提督「そうだ。腹を抱えていたから胃痛の類だと思うが……明石はなんともないのか?」
明石「は、はい。同じお弁当を食べたんですけど、私はなんともないですよ」
提督「じゃあ、弁当が原因じゃねえんだな……」
明石「そ、そうですね……!」
提督「……もしかして、どっちも摂食障害ってやつか?」
明石「え?」
481 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/17(日) 18:19:12.30 ID:R/s+Uw8ko
提督「俺も急に食生活が変わった時に経験したんだが……仮説として聞いてくれ」
提督「龍驤と陸奥は、前の鎮守府で大食いを強要されていた」
提督「無理矢理胃袋をでかくさせられて、ある日いきなり普通の量の飯を出されたら、それは足りなく感じるよな?」
明石「え、ええ……」
提督「龍驤の場合は空腹で倒れたんだろう。食べ過ぎても、必要な栄養分だけ吸収するように体が順応したとしたら……」
提督「食べる量が減れば、その分吸収できる栄養も減って、栄養失調になる。それで倒れた、って考えられる」
明石「……!」
提督「陸奥は背負ってドックへ連れてくるときに、頻りに気持ち悪いと訴えていたし、酸っぱい匂い……多分胃液だな、それが出過ぎてる」
提督「大量の飯を食べるのに慣れたせいで胃酸過多になって、胃を壊したように思えるな」
明石「よ、よくそこまでわかりますね!」
提督「適当だけどな。どっちにしても、俺はいきなり食事量が変わったせいで起きたことだって推測してる」
482 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/17(日) 18:20:02.33 ID:R/s+Uw8ko
提督「そういう観点で、なにか治療法はねえのか」
明石「そんなこと言われても、私はどちらかと言えば外科医みたいなものですし……!」
提督「これは内科医の仕事か……」
明石「い、いったいどうしたら……」
提督「……」
明石「……」
提督「そうだ……おい明石。バケツは今どのくらいある」
明石「へっ?」
提督「あれの中身を……修復剤をあいつらに食わせたら、体の内側を直せないか?」
明石「え、ええええ!? あ、あれ、食べられるんですか!?」
提督「N大尉の鎮守府の厨房にあのバケツが置いてあったのを見たんだ。鳳翔に聞いたら、料理に混ぜてくれってリクエストが来るらしい」
提督「どういう理屈か知らねえが、修復剤は怪我とかを直すんだろう? 胃袋に直接流し込んでやれば、効果あるんじゃねえか!?」
明石「……私はやったことありません。でも、試してみる価値はあると思います!」
明石「その話が本当だとしたら、大発見ですよ!!」グワッ
提督「お、おう……」
483 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/17(日) 18:20:52.39 ID:R/s+Uw8ko
* ドック内 病室 *
潮「陸奥さん、しっかりしてください!」
長門「龍驤も倒れただと!?」ダダッ
大淀「な、長門さん落ち着いて!」
長門「し、しかし……!」
利根「気持ちはわかるが静かにするんじゃ」
ガチャバーン!
明石「みなさん! 治療のご協力をお願いします!」
大淀「明石!?」
潮「な、なんですかその脚立!?」
提督「おい明石、このバケツはどこに置くんだ!」ガシャガシャ
長門「提督も来たのか!?」
明石「とりあえずここにお願いします! 陸奥さんから治療を始めましょう!」ガシャッ
潮「え? ど、どういうことですか!?」
484 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/17(日) 18:21:37.60 ID:R/s+Uw8ko
明石「話はあとです! 提督、陸奥さんの上体を起こして、顔は上に向けてください!」
提督「こ、こうか!?」グッ
陸奥「……う、うう……」ムクッ
明石「はい! そのまま、口を開けさせてください!」
提督「わかった」グイ
ガポッ
陸奥「……もが?」
潮「な、なんですか、あれ。漏斗?」
大淀「ろうと、というより、じょうごですかね……サイズ的に」
明石「よし、それじゃ行きますよ!」キャタツノウエデバケツカマエ
提督「え」
陸奥「!?」ギョッ
潮「!?」
大淀「!?」
利根「!?」
485 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/17(日) 18:22:36.20 ID:R/s+Uw8ko
長門「明石!?」
明石「修復剤、投入!!」バケツザバーー
陸奥「もぼがばごぼっ!?」ゴボボボー
潮「む、陸奥さあああああん!?」
大淀「な、なにをしてるんですかああああ!?」
明石「修復剤を胃袋に直接流し込んでいるんです!」ドヤッ!
長門「そんな無茶苦茶な流し込み方があるかああああああ!!」
陸奥「……も……! ごぼ……っ! お……!」ジタバタ
提督「おい明石、大丈夫なのかこれ!?」
明石「提督は動かないで! もう少しです! もう少しで終わりますから!」
陸奥「……っ……っ!」プルプル
潮「あわわわ……!」
利根「……」アングリ
提督(……俺、余計なこと言わなきゃ良かったか?)タラリ
486 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/17(日) 18:23:33.34 ID:R/s+Uw8ko
明石「よし! これでオーケーです!」バケツカラッ
陸奥「」チーン
長門「何がオーケーなものかあああああ!!」
潮「む、陸奥さん? 陸奥さぁぁん!」オロオロ
明石「今回陸奥さんが倒れた原因は消化器系の問題と思われます! だとしたら修復剤を直接お腹に入れるのが一番効果的です!」
大淀「だとしても、やり方に問題があるとしか言えませんよ!?」
明石「次は龍驤さんですね!」
大淀「話聞けよ!」ゴォッ
潮(提督さんそっくり!?)ビクッ
提督(誰だ今の!?)ビクッ
龍驤「う、うう……なんや、騒がしいなあ……」
陸奥「」シロメ
龍驤「」
明石「提督、さっきと同じように龍驤さんを抑えててください! 早く!!」ギラッ
提督「あ、ああ」ガシ
利根(あの提督が気圧されておる……)タラリ
487 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/17(日) 18:25:26.07 ID:R/s+Uw8ko
龍驤「ちょっ、な、なにするん!?」
明石「大丈夫、龍驤さんのお腹の治療です! 治療ですよ!」ギラギラッ
龍驤「あ、明石! その血走った眼はなんやねん!?」
明石「いいから口を開けてください!」ガポッ
龍驤「がぼっ!?」
明石「はい、上を向いてぇ! 投入うう!!」バケツザバー
龍驤「ごぼがばぼべーーーー!?」ゴボボボー
潮「」シロメ
大淀「」シロメ
利根「なんなんじゃこの地獄絵図は……」
提督「これで治らなかったらどうする気だ……」タラリ
長門「陸奥! しっかりしろ、陸奥ーーーー!!」
488 :
◆EyREdFoqVQ
:2019/03/17(日) 18:26:16.33 ID:R/s+Uw8ko
今回はここまでー。
どうしてこうなった……。
489 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/17(日) 21:19:09.13 ID:efJPCC1Ko
乙!
490 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/18(月) 13:50:12.06 ID:lzg+TCAP0
ワロタww
491 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/22(金) 14:12:10.72 ID:qvk9sm/A0
乙
ちりょう(治療)+し(タヒ)= ちしりょう
492 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:06:14.44 ID:Qs9vb849o
それでは続きです。
493 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:08:05.09 ID:Qs9vb849o
* 工廠 *
明石「あいたたた……どうして長門さんからげんこつをもらわなきゃいけないんですか」タンコブ
提督「お前ノリノリだったじゃねえか、目が怖かったぞ。つーか、お前のせいで俺までげんこつ食らったんだからな?」タンコブ
明石「発案者は提督じゃないですかー」
提督「そうだけど、あんな治療法あるかよ。もうちっとスマートにできなかったのか?」
明石「カテーテルでもあればできたでしょうけど、そう都合よく持っていませんでしたし!」
明石「とにかく、小一時間もすれば胃腸に浸透して効果も出てくるでしょうから、お茶の時間にでも見に行きますよ」
提督「……うまくいくといいがな」
明石「そうですね。雲龍さんにも少量ですが似たように処方しましたし、これでうまくいかなかった人はまた別の方法を試してみましょう」
494 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:08:59.79 ID:Qs9vb849o
提督「……無理はさせんなよ?」
明石「ええ」ニマー
提督「なんつうか不安になる笑顔だな……まあいい、俺は執務室に戻る。陸奥を連れてきて昼餉を食べ損ねたからな」
明石「はい、こちらはお任せください! それにしても、修復剤を料理にですか……どんな味がするんでしょうね」
提督「修復剤自体は無味無臭だったな。水あめみたいな感じだった」
明石「……え」
提督「? どうかしたか」
明石「い、いえいえ!」ブンブン
提督「? ……とりあえず俺は執務室に戻るぞ」
明石「はい!」
パタン
明石「……提督が、修復剤を食べたってこと……!? そ、それこそ大丈夫なの……!?」
495 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:09:59.66 ID:Qs9vb849o
* その日の1530 食堂 *
龍驤「……うまいなあ、このパンケーキ」モギュモギュ
陸奥「本当……」モグモグ
龍驤「比叡が作るっちゅうから、どうなるんかめっちゃ不安やったけど……」モギュモギュ
陸奥「見ただけでお腹が鳴ったものね……」モグモグ
龍驤「それに、好きな分だけ食べられるて、ええな……」ポロ
陸奥「そうね……幸せだわ」ウルッ
龍驤「食事までトラウマになったら、うちらどうしたらいいかわからんし」ポロポロ
陸奥「もう……泣きながら食べたらしょっぱくなるわよ」グスッ
龍驤「陸奥やってそうやんか」グシグシ
提督「……よう」
陸奥「!」ビクッ
龍驤「な、なんや!?」ビクッ
496 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:10:58.21 ID:Qs9vb849o
提督「あー……その、昼間は悪かったな。修復剤の件、明石に持ちかけたのは俺だが、考えてた以上に荒っぽいっつうか……」
龍驤「そーやなあ! 無理矢理やったなあ!」
提督「……」
龍驤「な、なんや、文句あるんかい」
提督「いや。すまなかった」ペコリ
龍驤「……!」
陸奥「……!」
龍驤「い、いや、いつまでも怒っとるわけやない。やり方は考えて欲しいんや! な!?」オタオタ
陸奥「そ、そうね……」オロオロ
龍驤「結果オーライやったけど、同じことを起こしたらあかんねん! な?」
提督「そうだな。次がないのが何よりだが、もしあったらもっといい方法を考えなきゃな……明石にも相談する」
龍驤「……ところで、雲龍には修復剤を少ししか飲ませんかったって聞いたけど、なんでや?」
提督「龍驤たちは食べさせられすぎて胃拡張気味だったと思うが、雲龍は逆に飲まず食わずだからな。胃縮小を心配したんだ」
龍驤「うちらにがぶ飲みさせたんは、大食いしてたからなんか……」
提督「つっても、あそこまでやる気はなかったがな……」
497 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:11:59.14 ID:Qs9vb849o
陸奥「雲龍には、普通の食事は駄目なの……?」
提督「しばらくは重湯やおかゆで食べ物に慣れてからだな。余所じゃ修復剤を混ぜて食べさせてる例もある」
提督「お前たちがこんなに早く回復したんだから、雲龍もすぐにここに来られるようになるんじゃないか?」
龍驤「……だとええなあ」
提督「しばらくは様子見だ。お前たち自身も、落ち着く時間が必要だろ」
龍驤「そうやね……」
提督「それでだ。今なら、死にたいとは言わないよな?」
陸奥「……!」
龍驤「……まあ、せやね。やっとまともな生活できそうやし、考えたほうがええかなあ」
陸奥「そうね……」
山城「有耶無耶に、そうね、じゃなくて、はっきり言っておいたほうがいいわよ」ズイ
龍驤「!?」
提督「山城……!」
山城「私よりも薄幸そうなオーラを放ってる一団だもの、この辺で決意表明でもしておいて、腹を括ったほうがいいんじゃない?」
提督「まあ確かにな。そうすりゃ出撃とかも任せるつもりだ」
陸奥「……出撃……」
498 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:13:02.68 ID:Qs9vb849o
提督「どうする?」
龍驤「……そうやなあ。うちは、ここで人生始め直しても、ええかもしれんなあ。陸奥はどうするん?」
陸奥「そうね……出撃、させてもらおうかしら」
陸奥「いろいろ、たまってたのかもしれないわ。外で思いっきり、鬱憤を晴らすのもいいかも、ね……!」
提督「……陸奥もやっと笑ったか。これなら一安心だ」
陸奥「!」
山城「なにそれ。ナンパでもしてるつもり?」
提督「してねえよ。やけに突っかかってくるな、お前」
山城「あなたの態度に納得いかないだけよ。私や扶桑お姉様には踏ん反り返って上から目線だったくせに」
提督「ああ? 踏ん反り返った記憶はねえぞ」
山城「は? だったらどうしてこの二人には、私たちのときよりペコペコ頭を下げてるのよ! 弱みでも握られたの!?」
提督「いや……明石が二人にやらかしたことを聞いたら納得すると思うが」
山城「はぁ? いったい何をしたのよ……」
499 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:14:03.19 ID:Qs9vb849o
龍驤「うちらの口にじょうご突っ込んで、高速修復剤を流し込んだんや。ダバーって」
提督「それもバケツ一杯分な」
山城「……はあああ?」ドンビキ
提督「な? そういう顔になるだろ?」
山城「鬼畜」ジリッ
提督「それは明石に言えよ、俺は修復剤を食わせたらどうだって言っただけだぞ」
山城「部下に責任転嫁するの? 鎮守府を預かる提督のくせに、逃げるなんて最悪ね」
提督「そうじゃねえよ。お前も口が減らねえな、明石といい勝負だ」
山城「あなただってそうでしょ、ああ言えばこう言うし……!」
提督「……負けん気が強すぎるぞ、お前」
山城「まだ言うの!?」
龍驤「仲ええなぁ」ニヤァ
陸奥「そうね」フフッ
山城「ちょっと!? そ、そういうのとは違いますから! そもそも着任して日も浅いし!」
500 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:15:03.05 ID:Qs9vb849o
扶桑「そうかしら? 山城、そう言う割に提督ととっても仲が良く見えるわよ? ふふふっ」ニコニコ
山城「」シロメ
山城「」シロメ
山城「」ヒザカラクズレオチ
山城「不幸だわ……」ガクーッ
提督「なにやってんだよこいつは……」
龍驤「一人上手やなー」ケラケラ
扶桑「ところで……二人はもう体調はよろしいんですか?」
龍驤「!」
提督「扶桑……お前、いつから異常に気付いてた?」
扶桑「何度か食事で近くに座っただけですが、その時に。龍驤さんは食べるスピードが異常に速かったですし……」
扶桑「陸奥は食べるのを怖がっていたように見えましたので。潜水艦の子から病気に関する本をお借りして、調べていました」
扶桑「過食症ですとか、拒食症ですとか……当てはまりそうな症状にあたりを付けてから、ご報告するつもりでいましたが」チラッ
扶桑「必要、なかったみたいですね」ニコ
提督「いや、そういうことなら早めに教えて欲しかったぜ。結局二人とも倒れたわけだしな」
501 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:15:58.07 ID:Qs9vb849o
提督「実際今はどうなんだ? 食べてて違和感ないか?」
龍驤「嘘みたいに調子ええよ。前は食べても味もせんかったし、こう……食べ物がちゃんと喉を通ってお腹に収まる感触がなかったしなあ」
陸奥「私もよ。何か口にすると胃液の味がして気持ち悪かったんだけど、今は全然そんなことないわ」
提督「……もしかして修復剤、効果あったのか?」
陸奥「認めたくないけど……」メソラシ
龍驤「あれはあれで別のトラウマになるで……」トオイメ
提督「もうあんな使い方はしねえよ、コップで飲むようにするか医療用の細い管でも取り寄せるかするさ」
提督「とりあえず、正式な着任の手続きは大淀が受け付けてる。そろそろこっちに来るだろうから、各々適当に申請してくれ」クルッ
扶桑「提督、どちらへ?」
提督「執務室。まだやることがあるんでな」
スタスタ…
扶桑「……」
龍驤「なあ扶桑? あんた、うちらのことよう見てたなあ」
扶桑「ええ、なんでも、ちゃんと見て、向き合うことにしているの。今までは、この世の全てから、目を逸らしていたから……」
502 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:16:56.75 ID:Qs9vb849o
龍驤「あんたも、なにかあったんやな?」
扶桑「……ええ、いろいろと」フフッ
扶桑「山城? そろそろ立ち直って? 一緒におやつにしましょう?」
山城「……はっ!? ふ、扶桑お姉様!? 私はいったいなにを!?」
扶桑「そこまでショックを受けてたなんて……さすがに少し心配よ?」
龍驤「……」
陸奥「嬉しそうね、扶桑……ずっとにこにこしてて」
龍驤「そうやなあ……なあ、陸奥、どうなん? あの提督、信用できそうか?」
陸奥「……まだ、乱暴は受けてないから……何とも言えないけど」
陸奥「でも、あんなふうに、男の人に頭を下げられたのは初めてだわ」
龍驤「そういえばそうやなあ……」
503 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:18:06.30 ID:Qs9vb849o
* 一方その頃 *
* 海軍本営近くの病院 *
(ギプスで全身を固められたN大尉がベッドに寝かされている)
N大尉「……艦娘が羨ましいな。俺にも高速修復剤が使えたら良かったのに」
妙高「安静にしててくださいね。焦ってもいいことはありませんから」
N大尉「わかってるよ。とにかく、以中佐の艦娘の体調不良はなんとかなりそうなんだな?」
妙高「はい。高速修復剤を体内に取り込むことで、お食事の異常を直せることが実証できました」
N大尉「もと部下たちがごはんに高速修復剤を混ぜてたのも、あながち無意味じゃなかったんだな」
妙高「入渠時間が惜しい子たちから、良く依頼されていたと鳳翔さんが仰っていました」
妙高「それから、N大尉の立てる計画はいつもカツカツでしたので、ストレスを感じていた子が結構いたみたいですよ」チラリ
N大尉「ぐ……」
妙高「確かに『時は金なり』と申しますが、無駄がないというのは余裕がないとも言い換えられます」
妙高「その時その時の最大効率を出したいのはわかりますが、適度に息抜きも必要でしょう」
504 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:18:57.86 ID:Qs9vb849o
妙高「せめて食事くらいは、ゆっくりとれる時間を持ったほうが良いと思いますよ」
N大尉「……ああ」ムスッ
妙高「N大尉?」
N大尉「許してくれ。この年にもなると、自分の続けてきたことに合わない説教をされると、こういう顔になるんだ」
N大尉「妙高の言うことは理解できる。ただ、長年自分が信じていたものを否定されるのはきつい」
妙高「ええ、そんなことだろうと思っていました」
N大尉「……」
妙高「新しいもの好きの割に、そういうところは頑固ですよね」
N大尉「妙高……少し性格がきつくなったんじゃないか」
妙高「長いこと構ってもらえていませんでしたので」ニコリ
N大尉「んぐ……」
妙高「仕方ありませんよね、提督准尉のような世捨て人ならまだしも、世の中の男性は胸の大きい女性に目が行くのは当然なんでしょうね」
N大尉「みょ、妙高! 俺は別にそんなつもりは……!」
妙高「でしたら、私より愛宕を重用するようになったのはどうしてなんでしょうね」ジトッ
N大尉「」
505 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:19:57.56 ID:Qs9vb849o
妙高「駆逐艦の子たちも、あからさまにぱんぱかぱーんな趣味が出ているようですし?」
N大尉「い、いや、それはその……」
妙高「この件ばかりは、以中佐のことを言える立場にないと思いますが、いかがでしょうか」
N大尉「……か、返す言葉もなく……!」
妙高「はぁ……こういう感情を、やれやれと言うのでしょうね」
N大尉「だ、だが、この場合、俺の趣味というか、好みはあまり関係ないと……」
妙高「ええ。あなたがこれまで私たちに対して、節度を持って接しておられたことは間違いありません」
妙高「ですがそれ以上に、あなたは、あまりに事を性急に進めようとしていました。ご自身の余裕を削ってまで」
N大尉「……仕方ないだろう。俺は、ただただ、父さんや母さんの生き甲斐が消えていくのを防ぎたくて……」
妙高「だからこそでしょうね。今思えば、あなたとこんな風に雑談すること自体、なかったような気がします」
N大尉「俺が戦えれば一番良かったんだ。多少無理をしても、戦果を挙げれば誰にも文句を言われない」
N大尉「だが、お前たちしか戦えないのなら、俺はそのバックアップを完璧にやらなきゃいけない」
N大尉「ゆとりなんか持ってる場合じゃないと思っていたんだ。いつの間にか、お前たちにもそれを押し付けていたわけだがな……」
506 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:20:58.85 ID:Qs9vb849o
妙高「それでツールに手を出したんでしたね。時間設定で艦娘に指示ができるからと」
N大尉「あ、ああ……それから、胸が大きい艦娘ばかり選んでたのは本当に無意識だった」
妙高「どうだか? 胸の小さな子たちを軽視していたのでは?」ツーン
N大尉「そ、それはない! 誓って本当だ! その……母さんがそうなんだ。だから軽んじたりはしていない!」
妙高「それでも胸の大きい女性が好きなんですか」
N大尉「……その、隣の家に住んでた姉さんがな、あー……憧れてたというか……な?」
妙高「そうですか……」ハァ
N大尉「……そ、それに……少し、お前に似ていて……」ポ
妙高「!?」
N大尉「お前にあのイヤホンを渡すのをためらったのも、その、深い理由はないんだが……」
N大尉「付けさせたら、どこかへ消え去ってしまいそうで……その、あのときは、なんとなく……そう思ったんだ」メソラシ
妙高「……」
N大尉「……」
妙高「そんな嘘で誤魔化せるとお思いですか」ジトッ
N大尉「嘘じゃないよ!」ガーン
507 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/23(土) 14:22:12.47 ID:Qs9vb849o
妙高「本当ですか? 話が出来過ぎですよ」
N大尉「本当だよ! ……滅茶苦茶恥ずかしかったのに、こんなことまで茶化されるのか……ぐううう」
妙高「今までやってきたことのツケが回ってきたと思ってください」
N大尉「ぐぬ……今の俺は何を言っても三枚目ってことか」ガックリ
妙高「序二段あたりではないでしょうか」
N大尉「辛辣だな!! しかも意味が微妙に違わないか!? うまいこと言ったと思ってるだろう!?」
妙高「いいえ?」シレッ
N大尉「笑顔が白々しいぞ! ったく……お前に、そんな冗談を言われるとは思わなかった」
妙高「真面目一辺倒では疲れますから。N提督も、執務から離れて一休みしても良いでしょう?」ニコ
N大尉「……厳しいんだか、優しいんだかわからないな」ハァ
妙高「ところで……あの駆逐艦隊に初雪さんを加入させたのはどうしてです?」
N大尉「……勘でしかないんだが、あの初雪、絶対何かを隠してると思ってな……!」
N大尉「育てたらいい線行くんじゃないかと思ってたんだ」
妙高「それでは、島に行ったときに連れていた磯波さんは」
N大尉「彼女も期待ができると思う」
妙高「それは胸部装甲的な意味でですか?」
N大尉「そちらは更に期待できる」キラッ
妙高「……げんこつ一回分、ツケておきますね」ピキッ
N大尉「!?」
508 :
◆EyREdFoqVQ
:2019/03/23(土) 14:22:50.78 ID:Qs9vb849o
今回はここまで。
509 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/25(月) 09:32:02.28 ID:XBw54/yS0
胸なんて飾りなのです、偉い人にはそれがわからないのです。
510 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/03/25(月) 11:41:22.06 ID:Z386oyuAO
>>509
じゃAカップ以下の女の子の胸しか見たらあかんで
511 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:40:41.46 ID:KnApYcbEo
続きです。
512 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:41:53.17 ID:KnApYcbEo
* それからさらに3日後の朝 *
* 墓場島鎮守府 食堂 *
提督「雲龍の回復もあっという間だったな」ウドンズルズル
明石「はい、予想以上でした」ソバズルズル
提督「やっぱり、高速修復剤入りの食事が効いたのか?」
明石「だと思います。あとは、食べて寝てを短いサイクルで繰り返したので、回復を促すことができたのが大きいかと」
提督「食っちゃ寝してたってことか」チラッ
明石「身も蓋もない言い方をすると、そうですね」チラッ
雲龍「……」モグモグ
明石「おかげで食べるのがすっかり楽しみになっちゃったみたいで、今朝も早く食堂に行きたいって言ってましたよ」
提督「仕込みの最中からここに来てたらしいな?」
明石「どんなふうに作ってるのかを見たいし、時間をかけてゆっくり食べたい、とも言ってましたからね」
提督「そうか……それにしても、やっぱ目立つな。あの胸は」
明石「ああ、そーですねー……提督でも目が行きますか」
提督「今まで見たことねえサイズだからな。神通やはっちゃんが口開けて驚いてるとこも初めて見たぞ」
513 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:42:47.09 ID:KnApYcbEo
明石「那珂ちゃんも笑顔のまま目を見開いて固まってましたからねー」
提督「神通もそうだが、那珂のトレーニング風景見たことあるか?」
提督「あいつら、アスリートでも目指してるのかって感じにハードでストイックだからな」
提督「胸ってのは脂肪の塊らしいから、那珂にせよ神通にせよ、今のトレーニング続けてたら絶対大きくならねえぞ」
明石「……すいませんねえ、脂肪の塊で」
提督「当て付けのつもりはねえぞ。っつうか、相手によっちゃあその一言も嫌味に聞こえたりするんだろ? 本っ当、面倒臭えな」
明石「まあ、そうですねー……気にするなって言われても、どうしても気になることですよ」
提督「難しいもんだな……」
金剛「Good morning, テートクゥ!!」
比叡「司令、おはようございます!」
榛名「おはようございます!」
提督「おう」ズゾゾ
514 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:43:48.80 ID:KnApYcbEo
榛名「お、お二人とも、朝から麺類ですか!?」
明石「……驚かれるようなことですかね?」モギュモギュ
提督「別に珍しくねえだろ?」クビカシゲ
榛名「そ、そうなんですか?」
比叡「うん、司令はたまに厨房借りて作ってたりするよ?」
金剛「ンー、 balance の良い食事を心掛けないとよくありまセン……ヨ……」
提督「?」
榛名「どうかなさいましたか、金剛お姉さ……」
比叡「何を見てるん……」
明石「あ」
比叡「ひええええ! おっぱいでっか!!」
提督(声がでけえし感想がどストレートすぎる)
金剛「……テートク……あの White haird big breast はいったい誰デース……」ハイライトオフ
提督「雲龍だ。少し前に戦艦棲姫のいる海域で見つけた、飢え死に寸前の艦娘がいたろ?」
515 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:44:53.40 ID:KnApYcbEo
比叡「えええ!? あの骨みたいな人が、あんなにおっぱいおっきくなったんですか!?」
金剛「比叡……おっぱい連呼するのははしたないデース……」
比叡「でも良かったですね、元気になって!」
提督「ああ、まあな……って、榛名?」
榛名「……」ボーゼン
明石「榛名さん、大丈夫ですか?」
榛名「……」
榛名「榛名は……」
榛名「榛名はだいじょばないです……」ヒザカラクズレオチ
比叡「は、榛名ーー!?」
金剛「榛名!? 榛名、しっかりするデース! 傷は浅いデスヨ!?」ダキカカエ
提督「落ち込むのはあとにして、とりあえず飯にしてこい」
金剛「Yes...行きマスヨ、榛名ー」ズリズリ
榛名「ハイ……ハルナハダイジョウブデス……」ズルズル
比叡「金剛お姉様も元気を出してください!」
516 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:45:49.38 ID:KnApYcbEo
提督「……比叡は大丈夫そうだな」
明石「他人に悪意を向けたり、嫉妬したりするタイプじゃないですからねー」
明石「それをさておいても、比叡さんもそれなりにあるほうですから。そこまで羨ましいと思ってないんでしょう」
提督「まあ、とにかく……しばらくすりゃあ見慣れると思うんだが、それは楽観視しすぎか?」
明石「大半の人はそれで大丈夫だと思いますが……この件で致命的にショックを受けてる人がいますからね」
提督「……それ、もしかして龍驤か?」
如月「ええ、そうみたいよ?」スッ
提督「如月……?」
如月「お隣失礼しますね、司令官」ニコ
陸奥「……おはようございます」
提督「陸奥も一緒か。顔色も悪くなさそうだな」
陸奥「え、ええ……おかげさまで、ね」
提督「飯もまともに食えてるようなら、あとは鎮守府の雰囲気に慣れてもらうだけだな」
陸奥「……」コク
517 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:47:09.21 ID:KnApYcbEo
如月「……陸奥さん、大丈夫?」
提督「緊張してんだよ。陸奥と龍驤も前の鎮守府でひどい目に遭わされたからな」
如月「そういうことなら大丈夫ですよ? 司令官は、私たちに意味もなく手をあげたりしないもの」ニコ
提督「そこは理屈じゃねえよ。刷り込みみたいなもんだから、ゆっくり時間をかけて馴染んでもらうしかねえさ、マイペースにな」
明石「ひどい目に遭わされた、という点では私たちも同じですから。力になれることがあれば相談に乗りますよ」
陸奥「そ、そうなの?」
提督「まあな。ところで陸奥、今日は龍驤と一緒じゃないのか」
如月「それなんだけど、龍驤さんが部屋から出ようとしなくって……陸奥さんにどうしたらいいかって声をかけられたの」
提督「もしかして、それが雲龍絡みか?」
陸奥「……」コクン
如月「陸奥さんは潮ちゃんにお願いするつもりだったんだけど、今朝は大和さんと厨房に入る予定だったし……」
如月「ショックを受けてる理由が雲龍さんのそれだとしたら、潮ちゃんも……ね?」
518 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:47:49.65 ID:KnApYcbEo
提督「なるほど……思ったより深刻だな。とりあえず朝餉済ませて龍驤を訪ねてみるか」ズズッ
如月「私たちも一緒にいいかしら?」
提督「……そうだな、頼む」
如月「ええ」ニコー
提督「それで、龍驤は部屋にいるのか?」
陸奥「え、ええ、そうよ」
ズイッ
雲龍「少し、いいかしら」ヌッ
提督「うお……!? ど、どうした」
雲龍「龍驤が、部屋から出てこないって聞いてるんだけど」
提督「……ああ、そうだが」
雲龍「私も、話がしたいの。できれば、工廠で」
提督「……工廠?」
519 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:48:47.19 ID:KnApYcbEo
雲龍「そう。もし、話ができるなら、工廠で待ち合わせをお願いしたいのだけれど」
提督「……明石。場所、借りられるか?」
明石「うーん……わかりました。そういうお話なら、片付けてきますので少々お時間ください」
雲龍「ええ。よろしくお願いね」スッ
スタスタスタ…
提督「……雲龍は何考えてんのか、いまいち掴めねえな」
明石「……」
如月「……」
提督「どうした?」
明石「い、いや、まあ……間近で見ると迫力ありますね」
提督「あー……そうだな、いきなり視界にでん、と入ってくるからな。正直、俺もびびった」
如月「……」ムニムニ
提督「……」
如月「気にしてないつもりだったけど、やっぱりちょっとショックね……」ガックリ
提督「どうやって龍驤を立ち直らせるかねえ……骨が折れるぞ、これ」ハァァ
陸奥「……」
520 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:49:38.12 ID:KnApYcbEo
* 工廠 *
龍驤「うちを呼び出すとか……なんなん」
提督「四の五の言わずに付き合え。雲龍がお前と話をしたいんだとよ」
龍驤「用があるんはあんたやないんか」
提督「なくはねえ。が、俺は後でいい」
龍驤「さよか」
如月「……明石さんと雲龍さんはどこへ行ったのかしら?」
明石「何をしてるんですか!!」
(のこぎりや電動の丸鋸を抱えて奥の部屋から出てくる明石)
如月「明石さん!?」
提督「そんなもの抱えて走ると危ねえぞ」
明石「それどころじゃありませんよ! 雲龍さんが自分を切ろうとしてるんですから!」
提督「なに?」
雲龍「明石。それを貸して」ヌッ
明石「嫌です! 貸せません!」
521 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:50:30.37 ID:KnApYcbEo
雲龍「……そう。なら、厨房で包丁を借りるわ」
提督「おい待て雲龍。お前、自殺でもする気か」
雲龍「自殺? 違うわ。私は、この胸を切り落としたいだけよ」
提督「なに?」
陸奥「胸を……って、のこぎりで!?」
雲龍「別に道具はなんでもいいわ」
雲龍「私は胸を切り落とせるなら、それでいいの」
龍驤「!?」
如月「何を考えてるんですか! そんなことしたら、大怪我どころの話じゃすみませんよ!?」
提督「雲龍、どうしてそんなことをする」
雲龍「龍驤が悲しんでるから」
龍驤「……!!」
522 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:51:24.34 ID:KnApYcbEo
雲龍「私を助けてくれた龍驤が、私を見て俯くの」
雲龍「だから、私は彼女が気にしているところを、なくしたいだけ」
雲龍「それの何が悪いの?」
如月「……そ、それは……!」
明石「別にそう思うのは構いませんけど、そういうことになら私の道具は貸せませんし、協力もできません!」
雲龍「それはどうして?」
明石「成功するビジョンが見えないからですよ。治療ならまだしも、体形をいじる手術なんて私の専門外です」
提督「厨房の包丁も無理だな。比叡や暁なら、包丁は料理を作るものであって、人を怪我させるものじゃない、って言い張るだろうさ」
雲龍「……そう。なら、それ以外の刃物がどこかにないか……」
龍驤「……けんな……!」
如月「!」
龍驤「ふざっけんなやああ!!」
雲龍「!?」ビクッ
523 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:52:34.58 ID:KnApYcbEo
龍驤「馬鹿にしとるんか!? それとも、うちを憐れんでるつもりなんか!! 舐めんのも大概にしいや!!」ブワッ
龍驤「そんなもんぶった切ったところで、うちが喜ぶ思たんか!! うちが満足する思たんか!!」ボロボロボロ
龍驤「思い上がんなや! このドアホ!!」ダッ
雲龍「え!? え……!?」オロオロ
如月「龍驤さん……!」
提督「やめとけ。下手に刺激しないほうがいい」
如月「……」ウツムキ
雲龍「なんで……!? ……どう、して……!?」オロオロ
提督「どうして? 胸を切ったところで満足するのはお前だけじゃねえか」
提督「龍驤は自分の体にコンプレックスを持ってるんだ。お前のやることは、それの解決に繋がらねえ」
提督「下手すりゃ、お前以外の胸がある奴が、お前と同じように切らないといけないのか、と悩むようになったり……」
提督「最悪、龍驤は雲龍の胸を切除するように迫ったひどい奴、なんて噂が立つかもしれねえな」
雲龍「そ、そんなこと……!!」
提督「他人がどう見るかはお前がコントロールできる話じゃねえよ」
524 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:53:43.10 ID:KnApYcbEo
提督「龍驤はお前を助けたくて、うちの連中と揉めて喧嘩別れしたのを土下座して謝ってきた」
提督「そこまでしてお前を助けたいと思ってた奴が、お前が傷付くのを容認できると思うか?」
雲龍「……」
雲龍「だったら」
雲龍「だったら、私はどうすればいいの……」ヘタッ
雲龍「私は……」ウツムキ
雲龍「助けてもらったお礼をしたかっただけなのに」
明石「……」カオヲ
陸奥「……」ミアワセ
提督「礼をしたいなら最低でも自傷行為はやめとけ。胸を切ったお前を見るたび、龍驤が罪悪感に苛むかもしれねえからな」クルッ
明石「提督!? どこに行くんですか!」
提督「この話、今の俺じゃ、これ以上首を突っ込んでも役に立てねえよ」スタスタ
如月「司令官……」
525 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/31(日) 14:54:43.57 ID:KnApYcbEo
陸奥「……仕方、ないのかしら」
明石「まあ……デリケートな問題ですからね」
雲龍「……」ウナダレ
陸奥「……雲龍、気を落とさないで」
雲龍「……」
陸奥「あなたは龍驤にお礼を言いたかったんでしょう?」
雲龍「……」コクン
陸奥「とにかくまずは謝ってきましょ? それから、あなたの思いを、真剣に伝えればいいわ」
雲龍「でも……」
陸奥「許してもらえるかどうかわからないけど……それでも、あなたは龍驤を傷付けるつもりなんかなかったんでしょ?」
陸奥「それだけは伝えないと。大丈夫よ、龍驤は面倒見がいいの。きっとあなたを見捨てたりしないわ」ニコ
雲龍「……」
526 :
◆EyREdFoqVQ
:2019/03/31(日) 14:55:46.72 ID:KnApYcbEo
今回はここまで。
527 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/31(日) 23:10:30.81 ID:+Jj9/1yrO
更新乙です
毎回の更新お待ちしています
528 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/01(月) 11:57:28.82 ID:JSna9MLhO
あまりにもデッカいとやっぱ単純に衝撃的だよねぇ
529 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/02(火) 01:28:46.70 ID:QtcpBdfgo
ずっと楽しみに読んでます。
530 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/20(土) 01:08:53.92 ID:PrqfVsBs0
保守
531 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:36:52.12 ID:03VeN8f5o
ローソン山雲に2回くらい心臓を止められてました
続きです。
532 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:37:55.37 ID:03VeN8f5o
* 龍驤の私室 *
(龍驤が自分のベッドの上で、うつぶせになって枕に顔をうずめている)
コンコン
龍驤「……」
チャッ
雲龍「……龍驤」ソロッ
龍驤「……」
雲龍「……」
(龍驤のベッドのそばの床に正座する雲龍)
雲龍「……ごめんなさい」ペコリ
龍驤「……」
雲龍「……」
533 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:38:53.32 ID:03VeN8f5o
龍驤「……なにしとん」モゾ
雲龍「……」
龍驤「土下座なんかされたって、なんにもならんで」
雲龍「……」
龍驤「別に雲龍が悪いわけやないんやし」
雲龍「え……!?」ミアゲ
龍驤「うちが勝手に嫉妬して、醜態さらしとるだけやろ」
龍驤「……まあ、雲龍がアホなこと言い出したのも気に入らんのは確かやけどな」
龍驤「うちに同情してあんなこと言うたんやろうけど、うちにとっては屈辱や」
雲龍「……本当に、ごめんなさい」ションボリ
534 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:39:53.76 ID:03VeN8f5o
龍驤「もうええねん……うちがうじうじしとったのが悪いんや」
雲龍「でも……」
龍驤「少し前に扶桑が言うとったんやけどな。扶桑は、うちが羨ましいんやて」ムクッ
雲龍「……?」
龍驤「うちが雲龍を助けたこと、立派やと。もっと胸を張るべきや、って言うんよ」
雲龍「……」
龍驤「扶桑は、前の鎮守府で冷遇されてて、自暴自棄になっててな。そのあと、そこの司令官に嵌められて轟沈させられたんや」
龍驤「扶桑はそれを受け入れたらしい。夢も希望もありゃしない、やから、それに乗じて沈んでしまおうとしたんや」
龍驤「だけど扶桑は、この島に流れ着いて助かった。逆に扶桑を心配した友達が、扶桑を探して追いかけたせいで轟沈したんやって……」
雲龍「……!」
龍驤「扶桑は、自分がつらい現実から目を背けて逃げたせいで、大事な友達が沈んだのを、めっちゃ後悔してる」
龍驤「だから扶桑は、もうどんなことからも逃げたくない、目を逸らさんで、何にでも向き合う……そう、決めたんやて」
雲龍「……」
龍驤「さっきまで腐ってたんやけど、扶桑が言ってたこと思い出してな」
龍驤「なんや、うちも逃げてるだけやなあって……」
535 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:41:10.35 ID:03VeN8f5o
龍驤「変わりたくても変われなかったんが現実で。雲龍に当たり散らしたってしゃあない。なんの解決にもなってへん」
龍驤「それどころか、うちの心配してくれる雲龍にこんなことさせて……我ながら情けなくて涙出てくるわ」
雲龍「情けなくなんかないわ」
龍驤「そんなことないねんて」
雲龍「いいえ、あなたがあなたを蔑むのはおかしいと思うもの。きっと、おかしくなっていたのよ」スクッ
龍驤「……さよか」
雲龍「……」
龍驤「……」
雲龍「ねえ、龍驤」
龍驤「うん?」
雲龍「私はあなたに助けてもらった。私は、あなたの力になりたいの」
雲龍「さすがに体を取り換えることはできないけれど……そうね」
雲龍「龍驤。私の体、好きにしていいわ」ニコ
龍驤「……うん??」
536 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:42:21.84 ID:03VeN8f5o
雲龍「私は、あなたのものになる。だから、何をしてもいいの」
龍驤「……雲龍、何を言うてるん???」
雲龍「うん。それがいいわね」ズイ
雲龍「龍驤。私のことは、煮るなり焼くなり好きにして」
龍驤「だからさっきから何言うとんねん!!?」
雲龍「私は本気よ?」ズズイ
龍驤「お、おう……って、そうじゃなくて!」
雲龍「!」
龍驤「……ど、どしたん?」
雲龍「声が出てる。元気になったみたいで良かった」ニコ
龍驤「な、なんか調子が狂うなあ……そんなにうちのことが気になるん?」
雲龍「ええ」
龍驤「なんでそんなにうちのことばかり気にするんよ? もう少し、自分のこと心配したほうがええんちゃうか」
雲龍「私はいいわ。あなたのことが大事。それだけよ」
537 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:43:01.05 ID:03VeN8f5o
龍驤「うちに酷いこと言われてもか?」
雲龍「私があなたに嫌われるのは、それなりに原因もあるし、受け入れるわ。でも、だからと言って私はあなたを嫌いになりたくないの」
龍驤「……はぁ、かなわんな。どうやったら嫌いになれるねん、こんなお人好し」
雲龍「……」
龍驤「な、なんや、急に黙りこくって」
雲龍「良かった」ポロ
雲龍「本当は嫌われたくなかったから」ダキツキ
龍驤「わぷ!?」モニュ
雲龍「本当に良かった……」ニコ
龍驤(あー……あかんわ。こんな泣きながら子供みたいな笑顔向けてくる相手、憎むようになったら終わりや)
雲龍「……♪」スリスリ
龍驤(それにしても……)
龍驤「……ほんまに、でかいなこれ……」モミ
雲龍「触ってみる?」
龍驤「……ええんか?」
雲龍「ええ」
538 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:43:31.06 ID:03VeN8f5o
龍驤「うちに酷いこと言われてもか?」
雲龍「私があなたに嫌われるのは、それなりに原因もあるし、受け入れるわ。でも、だからと言って私はあなたを嫌いになりたくないの」
龍驤「……はぁ、かなわんな。どうやったら嫌いになれるねん、こんなお人好し」
雲龍「……」
龍驤「な、なんや、急に黙りこくって」
雲龍「良かった」ポロ
雲龍「本当は嫌われたくなかったから」ダキツキ
龍驤「わぷ!?」モニュ
雲龍「本当に良かった……」ニコ
龍驤(あー……あかんわ。こんな泣きながら子供みたいな笑顔向けてくる相手、憎むようになったら終わりや)
雲龍「……♪」スリスリ
龍驤(それにしても……)
龍驤「……ほんまに、でかいなこれ……」モミ
雲龍「触ってみる?」
龍驤「……ええんか?」
雲龍「ええ」
539 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:44:08.54 ID:03VeN8f5o
龍驤「うちに酷いこと言われてもか?」
雲龍「私があなたに嫌われるのは、それなりに原因もあるし、受け入れるわ。でも、だからと言って私はあなたを嫌いになりたくないの」
龍驤「……はぁ、かなわんな。どうやったら嫌いになれるねん、こんなお人好し」
雲龍「……」
龍驤「な、なんや、急に黙りこくって」
雲龍「良かった」ポロ
雲龍「本当は嫌われたくなかったから」ダキツキ
龍驤「わぷ!?」モニュ
雲龍「本当に良かった……」ニコ
龍驤(あー……あかんわ。こんな泣きながら子供みたいな笑顔向けてくる相手、憎むようになったら終わりや)
雲龍「……♪」スリスリ
龍驤(それにしても……)
龍驤「……ほんまに、でかいなこれ……」モミ
雲龍「触ってみる?」
龍驤「……ええんか?」
雲龍「ええ」
540 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:46:19.62 ID:03VeN8f5o
龍驤「なら、遠慮なく……」
フニッ
龍驤「……」
モニュ
龍驤「……」
モニュモニュモニュ
龍驤「……」
龍驤「なんやこれ……」
龍驤「なんやこれえええええ!!」
龍驤「めっちゃやわっこい! なんやのこれ!!」ワシッ
龍驤「うわ、ぽよんぽよん跳ねるくせにめっちゃ重た!」
龍驤「発見や……こんなもん胸にぶら下げてたら洒落にならんわ」タラリ
龍驤「な、なあ雲龍、その……もう少し触っててもええか?」ドキドキ
雲龍「ええ」コク
* * *
* *
*
541 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:47:53.94 ID:03VeN8f5o
* 執務室 *
提督「……」ウーム
大淀(提督、また考え事をしてるみたいですね)
提督「なあ大淀、ちょっと聞いていいか」
大淀「はい。なんでしょうか」
提督「もし、嫌いな相手とどうしても話をしなきゃならないとき、お前ならどうする?」
大淀「嫌いな相手……ですか?」
提督「ああ」
大淀「そうですね……できるだけ余計なことを言わないで、用件だけを事務的に接すると思います」
提督「そうか……大人の対応だな」
大淀「私は、人の好き嫌いを言えるような立場ではありませんから」
提督「そういう話かよ。いくら役割とはいえ、健全じゃねえな」
大淀「そうでもありませんよ。ここに来てからは、それなりに言いたいことを言わせていただいてます」
提督「そうか? まあ、ストレスになってなきゃいいんだが……」
542 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:49:46.74 ID:03VeN8f5o
提督「こう言っちまうとなんだが、うちの艦娘はほぼ全員まともな配属のされ方してねえからな」
提督「難しい境遇の艦娘同士、衝突もあって当然だと思ってたから、ここまで内部分裂起こしてねえのが奇跡だと思ってる」
大淀「お互いの立場を慮れる人たちばかりですから」
大淀(ここを追い出されたら行く当てがないと言うのもあるかもしれませんが)
大淀「それに案外、居心地がいいと思ってる人も少なくないと思いますよ」
大淀(提督のそばにいたいって人、それこそたくさんいますからね……)
提督「なんか一言二言言いよどんでる気がするが……」
大淀「気のせいです」ニコー
提督「……本当かよ」
大淀「それより、どうしてそんな質問を? 嫌いな相手と話さなければならなくなったんですか?」
提督「俺じゃねえよ。龍驤と雲龍だ」
大淀「ああ……」
提督「龍驤が雲龍を身体的特徴で敵視しちまうのはどうしようもねえと思う。少なくとも俺が口を挟んでどうこうできると思うか?」
大淀「デリケートな問題ですし、下手に口を出すべきではないかもしれませんね」
提督「そうなるよなあ……」
543 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:50:48.62 ID:03VeN8f5o
大淀「提督こそことあるごとに人間を嫌ってますが、これまではいったいどうなさってたんですか?」
提督「開き直って無視してただけだ。まあ、妖精がいたから孤独じゃあなかったし、一人のほうが楽だったしな」
提督「嫌われる側はそれでいいんだが、龍驤に好意を抱いてる雲龍にそれをさせるのは酷だ」
提督「嫌う側の龍驤だって、これから毎日雲龍と顔を突き合わせることになりゃあ、否応なしにストレスたまっちまう」
大淀「ですが、あの二人を引き離しても大丈夫でしょうか……」
大淀「餓死寸前の雲龍さんを、絶対助けると息巻いていたのは、ほかでもない龍驤さんですよ?」
提督「そうかもしんねえけど今回のケースはなあ……助けた相手が親の仇、みたいなもんだろ?」
提督「だとしたら、血を見る前に隔離したほうがいいと思わねえか?」
大淀「雲龍さんを余所の鎮守府に異動させるということですか」
提督「そうするしかないんじゃねえかな……」
提督「龍驤がこの島に送られてきた罪状を考えると、龍驤がこの島を出たとしても受け入れてくれる鎮守府はないだろ」
大淀「雲龍さんも邂逅した状況が複雑ですよ?」
提督「そりゃあな……」
コンコン
龍驤「ちょっとええか?」ガチャ
提督「……龍驤!?」
544 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:51:35.22 ID:03VeN8f5o
龍驤「あー、なんかうちらのことで揉めとるん?」
雲龍「失礼するわ」
大淀「雲龍さんも……!」
提督「もしかして聞いてたのか、今の俺たちの話」
龍驤「うーん、まあ……聞こえてきてもーたなあ」ポリポリ
雲龍「私を余所の鎮守府に、ってあたりからね」
龍驤「でも、あれや、大丈夫や。もう心配あらへんよ」
提督「なに?」
龍驤「うちと雲龍は和解できたから。気を遣わんてくれて大丈夫や」ニコ
大淀「え?」
雲龍「一応聞くのだけれど、私と龍驤が仲良くなれば、どちらかがこの島を離れる必要もなくなるのよね?」
提督「あ、ああ……そうだな」
雲龍「いらない心配をさせてしまって、ごめんなさい」ペコリ
大淀「い、いえ、そういうことでしたら何よりです……ね、提督?」
提督「そう……だな」
545 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:52:45.47 ID:03VeN8f5o
龍驤「ほな、工廠に行ってくるわ。明石たちにも謝らなきゃなあ」
雲龍「ええ」コク
提督「……」
大淀「……」
パタン
提督「……」
大淀「……」
提督「なにがあったんだ?」
大淀「……さあ……」
提督「……」
大淀「……」
提督「わけわかんねえ。なんでこんなにうまく回ってんだこの鎮守府!?」
大淀「て、提督……?」
提督「おかしいだろ!? あんなに取り乱してたやつが、簡単に心変わりするもんか!?」
大淀「提督、落ち着いてください!」
546 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:53:41.93 ID:03VeN8f5o
提督「俺が見てきたやつらに、あんな風に理解のある連中なんか……!!」
提督「……人間じゃあ、ないからか?」
提督「艦娘だから……だからここまで、諍いがすんなりおさまるのか?」
大淀「提督……?」
提督「……」
大淀「……」
提督「やっぱ人間は一度滅んだほうがいいな」ハイライトオフ
大淀「て、提督!? 何を言い出すんですか!?」
提督「あぁ? だってそうだろうが。あんな下らねえ連中がのさばっていい理由がどこにある」
大淀「いけません! そのような発言は控えてください!」
提督「なぜだ? お前だって人間から拒絶されたクチじゃねえか、なんであいつらを庇う」
大淀「そうじゃありません! どこで誰が聞いているかわからないんですから、口を慎んでください!」
提督「……」
大淀「それに提督、その思想は危険です」
提督「俺の偽らざる本音だぞ」
大淀「そうであっても! そう言うのをやめてほしいと私は言っているんです!」
547 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:54:39.07 ID:03VeN8f5o
大淀「いつその不用意な発言が誰かの耳に入って、あなたの身を脅かすようになったらどうするおつもりですか!」
提督「そうなったらそうなった、だ」
大淀「先日! 吹雪さんが何と訴えていたか、もうお忘れですか!」ツクエバシッ
大淀「自殺をほのめかすようなことを言うなって泣かれたこと、もうお忘れになったんですか!」
提督「……忘れちゃいねえよ」プイ
大淀「吹雪ちゃんだけじゃありませんよ……! 私だって同じ思いです」
大淀「任務管理役として役立たずになった私を……私の我儘を受け入れて、私に役割を与えてくださったのは、提督です」
大淀「提督の……あなたの代わりはどこにもいません。あなたがいなければ、私の居場所もきっとどこにもありません」
提督「……」
大淀「提督。どうか、ご自愛ください」
大淀「私には、あなたが必要なんです」
提督「……」
大淀「……」
提督「……お前もそこまで言うのかよ」アタマガリガリ
提督「わかったよ、自重する。だから、そんな泣きそうな顔すんのはやめてくれ」
大淀「そ、そんな顔してません!」カオマッカ
548 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/04/21(日) 17:55:34.65 ID:03VeN8f5o
提督「え……お前自覚ないのかよ。滅茶苦茶落ち込んで泣きそうだっ」
大淀「そんなことありませんっ!!」ツーン!
提督「いや、おま」
大淀「だいたい! 提督はご自身を軽んじすぎておられます!」クワッ!
大淀「少しはご自身の立場というものをご理解ください! いいですね!?」ズイッ
提督「……わかった。わかったよ」ハァ
大淀「また同じようなことがあったらお説教ですからね! まったくもうっ!」プンスカ
提督「散々だな今日は……まあ、大淀の言うことも尤もだ」
提督「妖精たちもその辺で聞き耳立ててるし、迂闊なこと言って心配させねえほうがいいか」
大淀「……!?」
島の妖精たち「」コソコソッ
大淀「」
提督「まあ、自嘲はできるだけ言わないようにするが……人間への文句は言いたくなる時があるから、そっちは勘弁してくれ」
大淀「……」カオマッカ
提督「どうした?」
大淀「なんでもありませんっ!!」プイッ
提督「……なんなんだ、いったい」
549 :
◆EyREdFoqVQ
:2019/04/21(日) 17:56:31.22 ID:03VeN8f5o
>538-539は書き込みミスのため無視をお願いします。
なんで連投になっちゃったんだろう……。
今回はここまで。
550 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/22(月) 14:14:49.94 ID:+uRgqd9OO
乙です、提督自分からめんどくさい奴オーラ出していたせいで
ぼっちになった可能性がある?
551 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/25(木) 01:39:05.51 ID:5joR2FSqo
ハーレムまだー?
552 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/11(土) 23:42:08.41 ID:K4wJA/Ja0
ほしゅ
553 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:38:41.59 ID:tgIYhLP7o
お待たせしました、続きです。
今回はその、ぼっちになった理由をば。
554 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:40:09.93 ID:tgIYhLP7o
* 工廠 *
古鷹「そうですか、二人とも仲良くなれたんですね!」
雲龍「ええ」ニコニコ
龍驤「まあ……うちが大人になれへんかっただけや。いらん気ぃ遣わせてごめんなあ」ペコリ
明石「いえいえ、身体的なコンプレックスはなかなか根深いですから、仕方がないですよ」
古鷹「本当に良かったです!」ニコニコー
長門「……」
如月「……」
陸奥「それにしても……」
龍驤「うん?」
雲龍「なぁに?」
陸奥「ちょっとくっつきすぎじゃない?」
(雲龍の膝の上にちょこんと座る龍驤)
龍驤「そう?」クビカシゲ
雲龍「私は構わないわ」
555 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:41:08.02 ID:tgIYhLP7o
如月(雲龍さんの胸が枕みたいになってるわ)
長門(潮にもしてあげたら喜ぶだろうか)ウーム
陸奥「……まあ、二人がいいならいいんだけど」
古鷹「良いことばかりだと思います!」パァッ
古鷹「陸奥さんも仰ってましたよね、龍驤さんは前の鎮守府でも練度の高い航空母艦として、みんなから信頼されていたって!」
古鷹「そんな良い先生がすぐそばにいれば、雲龍さんもすぐに強くなれそうですね!」ニコニコー
雲龍「そうなりたいわ」ニコ
龍驤「先生なんて、そんなたいしたことあらへんて」テレテレ
長門「いや、たいしたことはあるぞ。何といっても、この鎮守府の航空戦力はお前たちだけだ」
明石「この鎮守府、空母が長らく不在だったせいで、艦載機の妖精さんたちは暇を持て余してましたからねえ」
島妖精A(流星改)「まったくだ」ウンウン
島妖精C(彗星)「やっと私たちが腕を振るえる日がきたねえ」ウンウン
556 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:42:35.18 ID:tgIYhLP7o
長門「これから頼りにさせてもらうぞ?」
如月「私たちも頑張って護衛するわね」
龍驤「おおきにな、うちも頑張るわ」ホロリ
雲龍「私も頑張るわ」
龍驤「ところで……」チラリ
妖精「……」ションボリ
龍驤「なんでキミはそんな風にしょげてるん?」
妖精「提督がね……」ハァ
明石「まーたなにか碌でもないこと言い出したんですか」
島妖精A「人間は一度滅ぶべきだ、と言っていた」
古鷹「!?」ギョッ
557 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:43:42.92 ID:tgIYhLP7o
* 執務室 *
朧「大淀さんが珍しく怒ってると思ったら」
由良「そんな滅多なこと、口にするべきじゃないわ」
大淀「ですよね!」
提督「わけわかんねえ。どうしてお前らが人間を擁護するんだよ」
朧「気に入らないことは確かですけど、それをアタシたちが口にしたらダメだと思います」
由良「そうよ。仮にも私たちは国民を守るため、国を守るために働いた軍艦の生まれ変わりよ?」
由良「かつて私たちに乗っていた人たちだって、親しい人たちと一緒に生きたくて、生きて帰りたくて戦ったのよ」
朧「戦争に負けたらどうなるかわからない。みんな必死だったんです」
提督「それで死んだ先人たちの無念を知る艦娘を、生き残った人間どもはどんな風に扱ってるんだ?」
提督「お前らこそ悔しくねえのかよ、俺は呆れてるくらいだ。そうでなくても、俺はあいつらを信用できねえ」
由良「良い人だっているじゃない。どうしてそこまで人間を敵視するの?」
558 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:44:23.06 ID:tgIYhLP7o
* 工廠 *
妖精「わたしのせいで提督は、提督の両親と険悪になっちゃったんだ」
陸奥「どういうこと?」
妖精「提督は、小さいころからわたしの姿が見えてたんだ。それを両親に話したらとんでもないことになっちゃって……」
龍驤「そんな長い付き合いなんか。キミたちもそうなん?」
島妖精A「残念だが、わたしたちは提督の幼少のころの話は知らないぞ」
島妖精C「こっちの子は提督が島に来る前から一緒だったけど、わたしたちは提督とはこの島で初めて出会ったからね」
妖精「わたしが提督と出会ったとき、提督は4つか5つだったと思う。素直でいい子だったんだ」
明石「素直……」
長門「いい子……?」
龍驤「いやいや、さすがにそんな歳から歪んどったら可哀想やろ」ビシッ
559 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:45:09.00 ID:tgIYhLP7o
古鷹「でも、そこまで話を遡るってことは、そのころから問題があったんですね?」
妖精「うん。提督の両親……っていうか、お父さんはオカルトが大嫌いでね」
妖精「提督がわたしを見つけて、その話を提督のお父さんに話したの。そうしたら、すごい剣幕で提督を詰りだして……」
妖精「話を合わせるわけでもなく、優しく諭すわけでもなく、いきなり怒鳴り始めたんだ」
長門「子供相手にか……!?」
妖精「うん、まるで関係なかったみたい。そこまで毛嫌いするのかって、わたしもびっくりしたよ」
妖精「提督も見えたことは事実だから、嘘じゃないって主張するんだけど、そうすると火に油を注いでるような感じで」
妖精「わたしの存在を否定するだけじゃなく、提督のことまで非難し始めて……そのうち暴力も振るわれて」
如月「……!」
妖精「それからかな。提督の言うことを、周囲の人に信じてもらえなくなったのは……」
妖精「提督の前に姿を見せた、わたしが悪かったの……」ションボリ
島妖精たち「……」
艦娘たち「……」
560 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:46:08.09 ID:tgIYhLP7o
* 執務室 *
提督「悪いのは聞く耳も持たずに俺の話を全否定した父親だ。妖精に罪はねえよ」
朧「お母さんとか、信じてくれる人がいなかったんですか」
提督「いなかった。なまじ父親が社会的に権力を持ってたせいでな」
提督「外面も良かったし、そんな父親だから母親も妄信してた」
由良「……信じられない。幼稚園児くらいだったんでしょ?」
提督「俺だって信じられなかったさ。確かに今思えば我ながらメルヒェンな寝言をほざいてたとは思うが……」
大淀「ですが子供の言うことですよ? せめて、見間違えじゃないか、くらいの言葉をかけられても良いはずです」
提督「……お前らは優しいな」
提督「そういう言葉をかけてくれるやつが一人でもいたんなら、妖精にもつらい思いをさせずに済んだはずなんだがな」
朧「提督と一緒にこの島に来たっていう、あの妖精さんですか」
提督「ああ。俺に見つかりさえしなきゃ、こんな島に来ることはなかったのによ。あいつには迷惑かけっぱなしだ」
561 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:47:16.89 ID:tgIYhLP7o
* 工廠 *
妖精「提督はわたしに迷惑をかけたって言うけれど、わたしは迷惑だなんて思ってないよ」
龍驤「キミもえらいお人好しやなあ。この島に来る前に、提督と別れることだってできたやんか」
妖精「さっきも言ったけど、見られないと思って姿を見せちゃったわたしが悪いんだ」
妖精「単純に心配だ、ってところも多いけどね。提督は人付き合いっていうか、他人が苦手だし」
長門「まあ……そうだな」
妖精「提督と小さいころから過ごしてきて、土壇場でわたしは行かない、なんて言ったら不義理じゃないか」
妖精「提督はわたしを信頼してくれてるし。離れ離れになったら、提督が心配でわたしが大丈夫じゃないよ」
陸奥「それで一緒にここに来たのね」
妖精「本当はすごく優しい人なんだ。以前はわたしたち妖精にもにこにこ笑ってくれてたんだよ」
妖精「でも、何もないところを向いて微笑んでいるところを、何も知らない人たちが見たらどう思うか、わかるよね」
妖精「提督が小さい頃……学生になってからもかな。それで提督はずっと後ろ指を指されていたんだ」
如月「司令官……」
妖精「提督が普段殆ど笑わないのも、そのせいなんだと思う」
562 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:48:12.71 ID:tgIYhLP7o
* 執務室 *
提督「妖精に向かって何を喋っても、馬鹿にしてくるクソどもがいねえってのは本当に快適だぜ」
提督「海軍の内部ですら、ひそひそしてくる奴がいたからな」
大淀「……提督。妖精さんが見えると言う話、警察やお医者さんには話さなかったんですか?」
提督「うん? そう言やあ、話した記憶はねえな。つっても、村中で噂になってたから、知らない奴はいなかった気がするが」
朧「村……ですか?」
提督「おう。俺の生まれは山奥のど田舎だ。海とは無縁の農村だよ」
大淀「私が知る限り、警察やお医者様には、妖精さんが見える人がいたら海軍へ連絡するように連絡が行っているはずなんです」
提督「そうなのか?」
由良「……ねえ、大淀。もしかしてその話って、提督が小さいころは広まってなかったんじゃない?」
大淀「提督の話を聞くと、そうかもしれませんね……」
大淀「それと、妖精さんの目撃情報が海沿いに集中していましたから、内陸部にはその連絡が広まっていなかったのかも」ウーン
提督「かもな。実際、山奥の妖精は珍しいぞ」
朧「そうなんですか?」
提督「小学校のときは田舎の分校だったが、中学からは学校も町中になって、それ相応に妖精も増えてたな」
提督「そもそもあの妖精も、気まぐれで俺の村に来たとか言ってたし」
由良「それなら、提督さん以外にも妖精さんが見える人がいてもおかしくないわよね。ね?」
提督「いや、生憎と俺以外で妖精が見える奴には、お目にかかれなかったな」
563 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:49:11.46 ID:tgIYhLP7o
* 工廠 *
妖精「ほかの子たちにも聞くと、提督以外にもわたしたちの姿が見えていそうな人はいたみたいなんだ」
妖精「でも、提督が妖精と話ができる、という話が『良くない噂』として知れ渡っていたせいで……」
妖精「見えることを秘密にしちゃう人ばかりだったんだよね」
長門「なるほど、もし誰かが妖精さんを視認できていたとしても、とても言い出せない環境だったわけか」
如月「ちょっと待って、それじゃ司令官は、その学校にいる間ずっと『良くない噂』で何かされてたってことなの!?」
妖精「うん……たとえば、からかわれたり、無視されたり……いじめに近いと言えばそうだったね」
龍驤「今のいじめって陰湿なのが多いからなあ……」
陸奥「でも、提督が子供のころだと、そこまで陰湿ないじめってなかったんじゃ……?」
妖精「最初はからかわれるほうが多かったよ。でも、それを提督が無視して、無視し返されて……」
妖精「そのうち喧嘩になったんだけど、提督が全部返り討ちにしてね。それからは腫物扱いされてたよ」
雲龍「提督って強いの?」
明石「間違いなく強いはずですよ。計ったことはありませんが、握力がとんでもないですから」
如月「アイアンクローもすごいけど、でこぴんもすっごく痛いの」
古鷹「そういえば、吹雪さんをでこぴん一発で気絶させたこともありましたね……」
妖精「あったね、そんなこと……」ハァ
564 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:50:17.01 ID:tgIYhLP7o
* 執務室 *
提督「最初は腕力を鍛えてたさ。けど、あの父親のげんこつはそれじゃ止められなかった」
朧「それで握力を鍛えてたんですか」
提督「とにかく向こうの攻撃を防ぎたかったからな。殴れないように腕を抑えればいい、って考えたのがきっかけだった」
由良「それにしたって、小学生相手に暴力をふるう父親ってどうなの!?」プンスカ
提督「俺が折れないせいで頭に来たんだろ。俺も俺で妖精が見えることを嘘だと言いたくなかったからな」
朧「でもそれで提督は怪我してるわけですよね。周りの大人が提督を庇ったりしなかったんですか」
提督「あー……あいつ、一応は県議だったからな。村の連中にしてみれば超エリート、村の英雄みたいなもんだ」
大淀「権力でもみ消したんですか?」
由良「スキャンダルになるんじゃないの!?」
提督「国会議員になる話もあったからな。議員と話をする機会もあって、お巡りも町医者も委縮してやがった」ケッ
提督「誰に言っても無駄だとわかってからは、誰に頼らずにも済む方法を模索し始めたのは確かだ」
提督「出来のいい弟のおかげで、俺のことはなかったことにしようとしてたくらいだからな」
由良「提督さん、弟がいたんですか」
提督「あいつらの英才教育のおかげで、そりゃあお利口さんに育ったぜ」
朧「絶対に皮肉ですよね、それ」
提督「おうよ」
565 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:51:08.05 ID:tgIYhLP7o
* 工廠 *
妖精「最初は提督も弟さんのことは可愛がってたよ。それこそ小っちゃいころの話だけど」
妖精「でも、提督がわたしたちの姿を見えると言った途端、提督に近づけちゃいけない、って完全に隔離されちゃってね」
長門「理解のない親だったとは言え、そこまでするのか……!」
妖精「あのお父さん、潔癖なくらいわたしたちの存在を否定してたからね」
妖精「その甲斐もあって、弟さんはお父さんと同じエリートコースに乗ってるみたい」
妖精「兄である提督に対する態度は、お父さんよりひどいものがあるけど」
明石「なにそれむかつく! 当然、因果応報があったんですよね!?」
妖精「むしろ逆かなあ……」
陸奥「逆?」
妖精「提督が海軍に入って提督業に就いたことが、提督の家族にとってはプラスに働いたみたい。エリート家族の箔がついたって」
明石「うわ、そうくるの!?」
古鷹「で、でも、そうなったら、お父さんたちも提督に感謝して……」
妖精「あの人たちは、提督に対して感謝はしないと思うなあ」
古鷹「ど、どうしてですか!?」
566 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:52:12.93 ID:tgIYhLP7o
* 執務室 *
提督「俺がこの島に来る前に、中佐が父親たちに金を渡したって言ってきたんだ」
由良「ど、どうして!?」
提督「俺の身に何があっても口出しするな、ってことだろうさ」
朧「……!」
提督「随分と神妙に受け取ったらしいが、あいつらのことだ。体よくごみを処分できたと喜んでるだろうよ」
由良「そ、そこまで言い切るの!?」
提督「妖精が見えるなんて血迷ったことを言う問題児。表に出れば問題行動を起こして迷惑をかける大馬鹿者」
提督「一族の面汚し、ってのが俺の評価だろうな。それを破格の値段で売っ払ったんだぜ? 笑ってないわけがねえ」
朧「笑えませんよ……!」
提督「そういうわけなんで、俺は奴らを家族だなんて思っちゃいねえ」
提督「その俺を見捨てないで、根気よく相手してくれたのは妖精だけなんだ」
提督「人間からは……誰からも救いの手を差し伸べられなかった。いくら妖精がいると訴えても、信じてもらえなかったんだからな」
提督「だから俺も人間は信じてねえし、信じられねえ」
567 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:53:07.71 ID:tgIYhLP7o
* 工廠 *
妖精「……でもね。あの時は嬉しかったかなあ」
明石「あの時?」
妖精「N中佐に啖呵を切ったときのあの言葉だよ」
妖精「俺にとって大事なのは、この鎮守府にいる艦娘たちだ、って」
明石長門「「!」」
如月「そうね……すごく嬉しかったわ、あの時は」ニコ
妖精「あ、そうか、如月はあの時あの場所にいて、一緒に聞いてたんだよね」
如月「だからこそ、その後、自分の命を粗末にするようなことを言うのが許せなかったけど」ザワッ
明石長門((怖っ!?))ビクッ
龍驤「お、落ち着きや! なあ!?」
如月「あ、ごめんなさい。うふふっ」ニコ
陸奥「……信頼されてるのね、ここの提督は」
龍驤「陸奥?」
568 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:54:19.81 ID:tgIYhLP7o
陸奥「あの鎮守府にいたときは、以中佐に怒りを覚えることはあっても、以中佐のために怒るようなこと、絶対になかったもの」
長門「陸奥……」
陸奥「私、少しだけ頑張っちゃおうかしら」
龍驤「まあ、無理せんでええよ。徐々に慣らしてき」
明石「それにしても……提督の昔話は、聞けば聞くほどひどくなってません?」
如月「まだ話してない過去もありそうね……」
妖精「そうだね……いじめの話もいろいろあって。だいたいはわたしたちが提督に告げ口するから、すぐ解決するんだけど」
龍驤「例えばどんなん?」
妖精「嫌がらせで物を隠されても、妖精ネットワークですぐに犯人も探し物も見つかるし……」
妖精「大勢での待ち伏せやだまし討ちなんかも、わたしたちが見つけて事前に対策できちゃうんだよね」
龍驤「あー……偵察機飛ばすのに似てるなあ」
如月「妖精さんたちとは、いい関係が築けてたのね」
妖精「提督が、危険を知らせてくれたお礼に、って、お菓子やアイスをわたしたちに買ってくれたのも大きかったかなー」
妖精「スーパーに並んでるお菓子を勝手にとっていくのは、さすがにわたしたち的にもアウトだからね」
龍驤「お金はどうしてたん?」
妖精「結構落ちてるよ? 自販機の裏とかに」
龍驤「そういうことかいな!」
569 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:55:13.62 ID:tgIYhLP7o
* 執務室 *
提督「妖精に助けてもらってばかりいたが、図書館以外でゆっくりできた場所がなかった気がするな」
提督「親は親で、育児放棄を疑われたくないから飯だけは出してくれたが、会話なんてなかったぜ」
朧「それで提督は、家族なんかいない、と仰るわけですか」
提督「ああ。あいつらは中佐に俺を金で売ったんだ。そうでなくても、俺は中学で父親に勘当されてる」
朧「勘当したくせにお金は受け取るんですか」ムスッ
提督「不服そうだな?」ニヤリ
朧「当然ですよ。そんなの家族なんて呼べません」
提督「ああ、俺もそう思う。けどな、忌々しいことに俺はそいつらの血を引いちまってるんだよな」
朧「!」ハッ
提督「そんなばつの悪そうな顔すんな。むしろ俺と同じ不満を口にしてくれたんだから、これでも嬉しいんだぜ?」
朧「提督……」
大淀「大和さんたちからの求愛を拒んだのも、そういうことですか」
提督「こういう血筋だからな。とっとと途絶えちまえ、って思ってる。結婚なんてもってのほかだ」
由良「それに加えて提督さん……その、えっちなのも、嫌いなんでしょ?」ポ
提督「確かにそれもあるな」アタマガリガリ
朧「あー……吐いてましたね、そういえば」
570 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:56:56.48 ID:tgIYhLP7o
* 工廠 *
如月「司令官は、このまま独身を貫くつもりなのかしら……」
龍驤「……もしかして、ここの提督って童貞なん?」
妖精「うん、そういうことになるね」
龍驤「そういうのって、タガが外れた時の反動とか怖ないんかな?」
明石「そういうお話はよくありますけど、あの提督の性欲のなさは本当に異常ですよ」
明石「大和さんが隣で寝てようが、恥ずかしがるだけで絶対に手を出してこないそうですから」
長門「提督のほうが抱き枕にされてるくらいだと聞いてるな」
雲龍「その調子だと、生涯不犯でいる気なのかしら」
古鷹「ふぼん、ってなんですか?」
雲龍「僧侶の戒律ね。異性との交わりを断って禁欲することよ」
古鷹「そこまでするなんて……」
如月「有り得るわ……それに、男性向けの大人の雑誌を見て、拒否反応を起こして気分を悪くしたくらいだもの」
如月「もしかしたら司令官、そういうこと自体受け付けないっていうか、できないんじゃないかしら……」
長門「明石。確か、近々提督に健康診断を受けさせる話があったな?」
明石「はい、大淀から本営に申請したって聞きましたよ」
長門「提督には、一度カウンセリングにかかってもらったほうが良いと思うんだが、どうだろうか」
明石「うーん、今からじゃ、ちょーっと遅いと思いますよ」
571 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:57:54.58 ID:tgIYhLP7o
* 執務室 *
扉<コンコン
不知火「失礼します」チャッ
提督「不知火か」
不知火「ご報告いたします。司令の健康診断の日程が決まりました。詳細はこちらの書類に」スッ
不知火「この島へ向かっている医療船もすでに出港しております。診察前日の夜から飲食は控えるようにとのことでした」
提督「そうかい。はー……面倒臭えなあ」
不知火「面倒がらずに準備をお願いいたします。何もなければ面倒もなくすぐに済む話ですから」
提督「ああ、わかったわかった」
朧「不知火も結構世話焼きだね」
不知火「司令はご自身のことに頓着しませんから」
提督「……世間じゃあ、こういうのと母親みたいだって言うんだろうな」
大淀「提督……」
提督「気にすんな、ちょっと思うところがあっただけだ。ガキのころなら嫉妬してたがな」
572 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:58:45.92 ID:tgIYhLP7o
提督「それに、お前たちこそ『親』とかいねえじゃねえか。今の発言、無神経なのは俺のほうだろ」
由良「言われてみれば不思議よね。提督さんが言うまで、親がいないことを何とも思わなかったわ」
朧「……アタシも、鳳翔さんがいたから……」
提督「……いろいろ、おかしいよな」
不知火「……司令」スッ
提督「ん?」
不知火「不知火は、司令とは家族のようなものだと考えております」
提督「……」
不知火「司令はこれまで、不知火や如月、そしてこの鎮守府に流れ着いた艦娘たちを、救ってくださいました」
不知火「血縁でもないのに、体を張って、私たちを守ってくださいました」
不知火「それはさながら、親や兄弟のためであるかのように」
提督「……」
573 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/05/19(日) 22:59:33.71 ID:tgIYhLP7o
不知火「いえ、今のお話を伺うに、親や兄弟以上の……」
提督「そのくらいにしとけ」スクッ
不知火「!」
提督「……冗談じゃねえ」スタスタスタ
扉<パタン
朧「行っちゃった……」
由良「提督さんったら、何を考えているの!?」
大淀「……し、不知火さん」ハラハラ
不知火「……」
* 埠頭 *
提督「……」
提督「不知火に本音を言うのは間違いだったかな」
提督「……」ハァ
提督「ったく、やめてくれよ。俺に優しくしないでくれ」
提督「……離れられなくなるじゃねえか」ウツムキ
574 :
◆EyREdFoqVQ
:2019/05/19(日) 23:01:08.38 ID:tgIYhLP7o
というわけで、今回はここまで。
575 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/20(月) 22:05:33.50 ID:i6eOxzN3o
早く艦娘に堕ちれば良いのにw
576 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/21(火) 00:11:43.38 ID:mOAtKXzqo
>>575
その未来はもう一個のシリーズでワンチャンないかどうかくらいだから……
577 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/23(木) 13:43:59.32 ID:wmPrf4H2o
>>576
まじかー悲しみ
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