速水奏「よその女」

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20 : ◆u2ReYOnfZaUs :2018/06/22(金) 22:29:58.20 ID:wWXdAL2J0
「彼は辞表を提出しこのプロダクションを去った。
 新しいプロデューサーは、プロジェクト加入が正式に決まり次第通知する」

「辞表? ユニット?
 なんのことだか……」

 私は物分かりの悪い子どものふりをして、常務の言葉を遠ざけようとした。
 けれども、彼女は手加減してくれなかった。

「わからなくて結構だ。
 だが、君が知らない場所で、状況は刻一刻と動いている。

 彼はもういない。君には新しいユニットに参加する権利がある。
 君が理解すべきことは、この2点だ」

「辞めるなんて、聞いてないわ」

「知らせなかったのは彼だ。私ではない」
21 : ◆u2ReYOnfZaUs [sage]:2018/06/22(金) 22:42:18.91 ID:wWXdAL2J0
 常務はただ淡々と、事実を突きつけてくる。だから否定もできないし、反論もできない。
 それでも私は反撃がしたくて、言い返した。 

「私は、常務のつくるユニットには参加しません」

 常務は眉をひそめた。その仕草だけで、私の身体から汗が吹き出した。
 
「それは君の自由だ。
 だが、このプロダクションは君の自由を提供する場所ではない。

 私の方針が気に入らないのなら、ここから出ていくといい。
 君ほどのアイドルであれば、すぐに新しい居場所が見つかるだろう。

 話はそれで終わりか?」

 感情をはさむ余地のない、大人の対応。
 私はそれが恐ろしくて、口を閉ざした。

 プロデューサーさんはこういう世界を、私に見せたくなかったんだ。
22 : ◆u2ReYOnfZaUs [sage]:2018/06/22(金) 23:16:46.11 ID:wWXdAL2J0
 私は、頭を深く下げて部屋から出た。
 常務に屈服したわけじゃない。自分の幼稚さに、頭が重くなった。

 傷つけるためだけの信頼。甘えるためだけの冗談。
 私はプロデューサーさんが私のことを真剣に考えてくれるように仕向けたけれど、彼の心を真剣に考えたりしなかった。

 彼に思い通りにされてしまうのが、ただ悔しくて。
 でも、もう取り返しがつかない。
 
23 : ◆u2ReYOnfZaUs [sage]:2018/06/22(金) 23:31:06.86 ID:wWXdAL2J0
 私はもう一度頭を下げて、常務のプロジェクトに参加した。
 日本で……世界で一番のアイドルになるために。
 
 そしたらきっと、エンドロールに名前を書いてもらえる。
 私の名前が、彼の隣に。

 
24 : ◆u2ReYOnfZaUs [sage]:2018/06/22(金) 23:31:37.62 ID:wWXdAL2J0
おしまい
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 00:54:47.54 ID:0uDSOG7SO
>>17-19

26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 01:54:07.04 ID:Gmx5KTTDO
なんだこのオチ…
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/23(土) 10:40:29.22 ID:Baarl6gv0
こういうの割と好き
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