【ゆゆゆ】結城友奈は極道である【極道兵器】

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1 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/14(木) 22:01:16.13 ID:+BSudOYo0
「起立!神樹様に、礼!」

神世紀300年、讃州中学校2年の教室。
そこでは今日一日の授業を終えた生徒たちがホームルームを終え、この世界を守る神樹へと祈りを捧げていた。
しかし、そんな中ただ一人、椅子に座ったまま腕組みをし、ふんぞり返っている女子生徒がいた。

「けっ、なぁにが神樹サマじゃい、アホらしい」

彼女の名は結城友奈。讃州中学の二年生であると同時に、暴力団・結城組の二代目組長でもある。
彼女の父親である結城組の初代組長は先月、敵対する暴力団との抗争の末、命を落とした。
その結果、彼の一人娘だった友奈が若干13歳にして二代目組長となったのである。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1528981275
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/14(木) 22:08:08.88 ID:EV9h8UIfO
蘭子「混沌電波第172幕!(ちゃおラジ第172回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528712430/
3 : ◆BHtXRZieJ2 :2018/06/14(木) 22:10:20.09 ID:+BSudOYo0
「友奈ちゃん、ちゃんとお祈りしないと、先生に怒られちゃうよ」

「そう堅っ苦しい事言うな東郷。わしは神頼みなんぞ大嫌いなんじゃ!」

ホームルーム終了後、友奈は彼女の親友である車椅子の少女、東郷美森と共に勇者部の部室で談話に興じていた。
勇者部。それは、友奈と東郷を含めた4人の部員で構成された部活であり、
人々のためになることを勇んで実施する事を目的としている。
部室の壁には、友奈が考えた勇者部五箇条が貼り付けられている。

勇者部五箇条
一、弾なんぞ怖いと思うから当たる!
一、ケンカは先手必勝!
一、目に見える健全さと不健全さを!
一、核が怖くて勇者は務まらず!
一、暴力は相手をブチのめしてなんぼ!
4 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/14(木) 22:18:20.42 ID:+BSudOYo0
「友奈ぁ!!友奈は来てる!?」

突如、部室のドアを乱暴に開け放ち、一人の少女が姿を現した。犬吠埼風。勇者部の部長である。
呼吸は乱れ、肩と声は震え、その顔は鬼のごとき形相である。
彼女が怒り狂っていることは火を見るよりも明らかだった。
だが、そんな風の姿を見ても友奈はまったく臆することなく、あっけらかんとした態度で応える。

「おお、なんじゃい風先輩!そないな、おっそろしいツラしてどうしたんじゃ!悪いモン食って腹でも下したか?」

「どうしたもこうしたもない!あんた、昨日自分が何したか分かってるの!?」

「お、お姉ちゃん落ち着いて…」

悪びれる様子もない友奈の態度に、風はますます怒りを露わにしながら友奈に食ってかかる。
風の背後からは、彼女の妹であり、4人目の勇者部部員である犬吠埼樹がおずおずとした様子で入室してきていた。

「もちろん分かっとる!勇者部の使命に従って、学校の風紀を乱すクソガキをブチのめしてやったんじゃ!
  なんの問題もないじゃろうが!」

友奈の言っている事は嘘ではない。友奈は昨日、同級生からカツアゲしている3人の1年生に制裁を加えたのである。
しかし問題は行為ではなく、程度の問題だった。
5 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/14(木) 22:24:00.12 ID:+BSudOYo0
「だからって全員病院送りにする事ないでしょうが!全治4ヶ月よ!少しは手加減しなさいっての!」

「じゃあかしい!勇者部五箇条ひとつ!目に見える健全さと不健全さを!
 健全さを守るためには、多少の暴力は必要なんじゃ!エンコが残ってるだけでも有難いと思わんかい!」

おたがい一歩も引かずに口論を繰り広げる友奈と風。
東郷と樹はなんとか仲裁しようと二人の様子をうかがうが、まったく入り込む余地はない。

「なにが健全さと不健全さ、よ!もっともらしい事いって、結局は自分のケンカを正当化してるだけじゃない!
 勇者なら勇者らしく、仁義を通しなさい!」

「勇者もクソもあるかい!歯向かう奴はみんなブチ殺しちゃるんじゃ!それに、どこかの偉い弁護士のセンセが言っとったぞ!
 英雄ってのは、なろうとした時点で失格なんじゃ!つまり、さっきから勇者勇者いっとるアンタが一番、勇者失格なんじゃ〜!」

「こ…このバァタレ〜〜〜!!」

怒りのあまり、友奈の口調がうつった風が、ビンタで友奈を張り倒す。

「もういい!樹、帰るよ!」

「ま、待ってよお姉ちゃ〜ん…」

風はそのまま、肩を怒らせながら部室を後にした。
樹もその後に続いて部室を出てゆく。
6 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/14(木) 22:29:50.54 ID:+BSudOYo0
「ゆ、友奈ちゃん、大丈夫?」

友奈の身を案じ、近寄る東郷。
だが、当の友奈は心身ともに傷ついている様子はまったくなかった。

「くくく…がははは!ええ、あれでええ!」

「えっと…なにがいいの?友奈ちゃん?」

「わしとケンカするからには、あれぐらい肝が据わっとらんとイカンという事じゃ!下手な極道より、よっぽど肝が据わっとるわい!
 まったく、カタギにしておくには惜しい女じゃのう!」

「友奈ちゃん…」

東郷は友奈の言葉にに呆れると同時に、友奈らしい言葉だと、内心微笑ましい気分になった。

「どれ、わしらもそろそろ帰ると…ん?」

友奈がスカートをはたいて立ち上がった瞬間、スマートフォンからアラームが鳴り響いた。
取り出して画面をのぞいて見ると、そこには「樹海化警報」の文字が刻まれていた。
東郷のスマートフォンも同様であった。さらに窓から見える風景は、時が止まったかのように停止している。
7 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/14(木) 22:36:19.37 ID:+BSudOYo0
「東郷、こりゃどうなっとるんじゃ?」

「私にも何がなんだか…」

次の瞬間、二人の周囲はまばゆい光に包まれ、思わずまぶたを閉じる。
二人がまぶたを開くと、そこは校舎ではなく、極彩色に包まれた異空間へと変貌していた。

「なんじゃこりゃ?わしら夢でも見とるのか?」

「友奈ー!東郷ー!二人とも無事ー!?」

遠方から聞き覚えのある声が響き、友奈と東郷はその方向に顔を向ける。
走ってくるのは、風と樹の二人だった。
風は立ち止まり、呼吸を整えると、神妙な面持ちで語りはじめた。

「いい?三人とも落ち着いて聞いて。私は大赦から派遣された人間なの」

「大赦?お姉ちゃんが…?」

風の言葉に、樹と東郷が驚きの表情を浮かべる。
一方の友奈は、無表情のまま黙って話に耳を傾けていた。

「私は、神樹様を守るメンバーを集めるために、讃州中学で勇者部を結成した。
 私たちはここで、神樹様と世界を守るために、敵と戦わなきゃいけないの」

「おい、風先輩!何を言ってるのかさっぱり分からんぞ!わしに分かるように説明せんかい!」
8 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/14(木) 22:37:29.36 ID:+BSudOYo0
今まで黙っていた友奈が、風の説明に理解が追いつかず、怒りを露わにしながら風の胸倉を掴む。
今にも風に殴りかかりそうな勢いの友奈だったが、突如巻き起こった爆風の衝撃により、その動きを止めた。
一斉に爆発の発生した方向を見据える四人。そこに姿を現したのは、巨大な桃色の異形だった。

「なんじゃありゃ…」

「ちょうどいい。あれが人類の敵、バーテックス。
 あれに神樹様を破壊されると、この世界は消滅するの」

しばし唖然とする友奈。しかし、状況を理解すると、その顔には悪魔のごとき笑みを浮かべていた。

「なるほど、よぉく分かったぜ。ようはアイツをぶっ殺せばいいんじゃな?」

「無理だよ友奈ちゃん、あんなのと戦えるわけない…」

好戦的な友奈とは対照的に、恐怖に震える東郷。
その姿を見た風は、ひとつの決断を下す。

「樹、友奈。東郷を連れて逃げて。ここは私が引き受ける」

しかし、二人が風の指示に従うことはなかった。

「お姉ちゃんをおいて行けない。私も一緒に戦うよ」

「わしもじゃあ!クソったれな神樹を守らなきゃいかんのは気に食わんが、
 こんな楽しそうなケンカができるなら大歓迎じゃ!」
9 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/14(木) 22:38:28.99 ID:+BSudOYo0
「二人とも…分かった、じゃあ一緒にいくよ!」

「うん!」

「おう!」

風の動作を見よう見まねでスマートフォンの画面をタッチする友奈と樹。
その直後にスマートフォンから光が発せられ、三人は神樹を守る勇者の姿へと変身していたのだった。

「ここは私と樹で引き受ける。友奈は東郷を安全な場所まで運んでから、合流して」

「了解じゃあ!東郷、しっかり捕まってろよ!」

「えぇ!?ちょ、ちょっと友奈ちゃん!?」

友奈は東郷の車椅子をお姫さま抱っこで持ち上げると、そのままジャンプを繰り返し、500mほど離れた場所へと東郷を降ろした。

「ここで待ってるんじゃぞ、東郷。すぐ終わらせてくるからの!」

東郷を安心させるべく、ニカっと歯を見せて笑顔を見せると、友奈は戦いの場へと赴いていった。
東郷はそんな友奈の後ろ姿を、顔を赤らめながら見守るのだった。

「友奈ちゃん…」
10 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/14(木) 22:39:31.64 ID:+BSudOYo0
「遅くなった!樹、風先輩、無事か?」

東郷を避難させ、樹と風の元へと駆けつけた友奈。
二人はそれぞれの精霊である木霊と犬神の協力を得て応戦しているが、苦戦しているようだった。

「友奈、いい所に来てくれたわ!いい?バーテックスは心臓部を破壊しないと、絶対に倒せない。
 まずは封印の…」

「んな、まどろっこしい事、やってられるかぁ〜〜〜!!」

「ゆ、友奈さん!?」

風の説明を無視し、バーテックスへと駆けだす友奈。
バーテックスは爆発性の弾丸を発射して攻撃するが、友奈はそれを片手で難なく跳ね返しながら突き進んでゆく。

「な、なんで攻撃が当たらないの…?」

風のつぶやきに答えるように、友奈は叫ぶ。

「勇者部五箇条ひとつ!弾なんぞ怖いと思うから当たるんじゃ〜!わしが睨みつけりゃ、地雷だろうが逃げ出すわい!」
11 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/14(木) 22:40:26.76 ID:+BSudOYo0
友奈は一気にバーテックスまで接近すると大ジャンプし、バーテックスの身体の上部へと取りついた。
そして、そのまま左右の拳を交互に突き出し、バーテックスへと鉄拳を叩き込む。

「要は心臓をぶっ壊せばいいんじゃろうが!」

次第にバーテックスの表皮に亀裂が入り、ついには粉々に砕け散った。
そして、その中から逆三角錐の心臓部が出現したのだった。

「これで仕舞いじゃ〜〜〜〜!!」

友奈がトドメの一撃を心臓部へと叩き込む。
その一撃で心臓部は四散し、バーテックスは光の粒子となって消滅したのだった。
呆気にとられた風が、ぼそりと呟いた。

「ふ、封印もせずにバーテックスを倒すなんて…」

当の友奈は勝ち誇り、高笑いをあげている。

「がはははは!勇者部五箇条ひとつ!ケンカは先手必勝じゃ!攻撃し続ければ、どんな奴でもいつかは、くたばる!!」

かくして、ここに史上最強の極道勇者が誕生したのである。
12 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/14(木) 22:42:41.30 ID:+BSudOYo0
とりあえず今日はここまで
全6話くらいの予定です
やる内容は一期のみで、樹がかなり空気になりそうです
ファンの方はごめんなさい
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 00:47:58.80 ID:wXEP0nBPO
蘭子「混沌電波第151幕!(ちゃおラジ第151回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1516011054/
蘭子「混沌電波第152幕!(ちゃおラジ第152回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1516615777/
蘭子「混沌電波第153幕!(ちゃおラジ第153回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517221252/
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1519642167/
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1525058301/
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1525687791/
蘭子「混沌電波第168幕!(ちゃおラジ第168回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526292766/
蘭子「混沌電波第169幕!(ちゃおラジ第169回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526897877/
蘭子「混沌電波第170幕!(ちゃおラジ第170回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527503737/
蘭子「混沌電波第171幕!(ちゃおラジ171回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528107596/
蘭子「混沌電波第172幕!(ちゃおラジ第172回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528712430/
14 : :2018/06/15(金) 01:32:48.47 ID:hYjsy1Ot0
獅子王凱「…」
エクスカイザー「…」
火鳥勇太郎「…」
ドラン「…」
旋風寺舞人「…」
大道寺炎「…」
ダ・ガーン「…」
デッカード「…」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 03:54:20.13 ID:wXDuDwJPo
風パイセンがヒロインポジ(主人公を改造したり脳の一部奪ったりする人)になりそう…(期待)
16 : ◆BHtXRZieJ2 :2018/06/16(土) 13:25:49.87 ID:wG5X0u+s0
どのくらいの人が見てくれてるのか分からんけど、第2話の投稿はじめます
17 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/16(土) 13:27:30.85 ID:wG5X0u+s0
友奈たちが最初のバーテックスを倒した翌日。
風は部室に勇者部のメンバーを集め、勇者システムやバーテックスに関する説明を行っていた。
バーテックスは全部で12体いる事。大赦がバーテックスに対抗するために勇者システムを開発した事。
風が勇者候補を集めるために勇者部を結成した事。戦いで結界である樹海が傷つけば、現実世界にも影響が出る事などである。
その説明を受ける中で、東郷が神妙な面持ちで口を開いた。
東郷は親友である友奈や、大事な後輩である樹が命の危機に晒されたにも関わらず、今までそれを黙っていた風が許せなかったのだ。

「どうして、もっと早く勇者部の本当の意味を教えてくれなかったんですか?
 そんな大事な事…ずっと黙ってたんですか…」

東郷はそう言い残すと、部室を後にした。
風も樹も、それを止める事はできない。
そんな中、友奈がやれやれといった表情で頭をかきながら立ち上がる。

「すまんの、風先輩。わし、ちょっくらヤボ用を済ませてくるわい」
18 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/16(土) 13:35:57.12 ID:wG5X0u+s0
「なんじゃい東郷、随分シケたツラしとるのう!」

勇者部の部室からやや離れた場所の廊下で、思いつめた表情で佇んていた東郷。
そこへ駆けつけた友奈は東郷を元気づけるべく、笑顔で語りかける。

「友奈ちゃん…ねぇ、友奈ちゃんは怖くないの?」

「ん?何がじゃ?」

「だって、あんな怖い敵と戦わなくちゃいけないんだよ?死ぬかもしれないのに…」

東郷の真っ当な質問に、友奈は呆れたように笑いながら答える。

「なにが怖いもんかい!むしろ、歯応えのあるケンカ相手が出来て嬉しいくらいじゃ!
 さぁ、こっからが勇者部の本領発揮じゃぞ!」

「…友奈ちゃんは強いね。体だけじゃなくて、心も。
 それに比べて、私は…」

昨日、戦う事もできずに怯えるばかりだった自分を思い出し、自己嫌悪に陥る東郷。
顔はうつむき、その身体は小刻みに震えている。
東郷の心境を察した友奈は、それまでとはうって変わり、静かな口調と穏やかな表情で語りかける。
19 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/16(土) 13:44:57.54 ID:wG5X0u+s0


「のう、東郷。お前はそんなに自分が弱いと思うか?」

「え?そ、それはそうだよ。だって、私はこんな体だし、記憶も曖昧だし、それに昨日だって…」

「たしかに、お前は事故の影響で足が動かんから、自由に歩く事はできん。それは紛れもない事実じゃ。
 じゃが、わしはお前が弱いなどと思った事は一度もないぞ」

「ど、どうして?」

友奈からの思わぬ言葉に、東郷は歓喜と困惑が入り混じった感情で問う。
その質問に対し、友奈から返ってきた言葉は意外なものだった。

「東郷、お前はわしを一人のダチとして見てくれたじゃろ?だからじゃ」

「それが強いって…どういう事?」

東郷の質問に、友奈はそれまで見せたことのない、物憂げな表情で語り始めた。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/16(土) 13:54:31.81 ID:wG5X0u+s0
「知っての通り、わしは極道の家の人間じゃからの。ガキの頃から周りの人間は3種類しかおらんかった。
 わしの腕っぷしや地位に釣られて、機嫌をとりにやってゴマをするハエども。
 極道というだけでわしの事を避け、近寄ろうともせん臆病者。
 わしを倒して天下を取ろうとする、身の程知らずのバカどもじゃ。
 じゃが、東郷は違った。お前は、初めてわしの事を一人の人間として、ダチとして見てくれたじゃろ?」

「そ、それは…私と違って友奈ちゃんは強いから、憧れたっていうか…」

まだ自分に自信が持てない東郷に対し、友奈はさらに言葉を投げかける。

「それにな、わしは今まで抗争でどうしようもない雑魚を腐るほど見てきた。
 よほど欲求が満たされんじゃろう、そいつらは…銃を持たせると、急に強くなりよる。
 その銃がでかけりゃでかいほど、人が変わったように相手につっかかっていき!自分を誇示したがりよる!!
 しかし、相手が自分以上の器だともうダメじゃ! ガタガタ震え、怯え……鳴きよる。鳴いたらしまいじゃ。
 本当に弱い奴っちゅうのは、自分の弱さを認めようとせず、武器を持っただけで強くなったと勘違いする奴の事じゃ。
 じゃが、お前は違うじゃろ?さっき風先輩に怒ったのも、わしや樹を心配してくれたからじゃろ?」

友奈が歯を出して東郷に笑いかける。
その笑みを見た東郷は、自分の身体が熱くなるのを感じていた。

「友奈ちゃん…」

「大丈夫じゃ東郷、お前は強い。わしが保証するわい!」

「ありがとう、友奈ちゃん…!」

地震を取り戻し、表情に明るさが戻った東郷。
その直後、昨日と同様にスマートフォンからアラームが鳴り響き、樹海化警報の文字が表示される。
バーテックス出現の合図である。

「行くぞ東郷!勇者部、出撃じゃあ!」

「うん!」
21 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/16(土) 14:01:51.52 ID:wG5X0u+s0
樹海内部。そこには蠍、蟹、射手の3体のバーテックスが出現していた。
一度に3体が出現するという想定外の事態に、風と樹は動揺しているが、友奈と東郷の様子は違っていた。

「力では勝てんと考えて、数で攻めて来おったか!
 それでええ!勝つための工夫をせえ!わしをもっと楽しませろ!」

「怖くない。友奈ちゃんと一緒なら、私も戦える」

「その意気じゃ!行くぞ東郷!」

「うん!」

3人に続いて東郷もスマートフォンの画面をタッチし、勇者の姿へと変身する。
遠距離戦闘に特化した、射撃型のスタイルだった。
東郷は精霊・青坊主から授かった狙撃銃を用い、射手座のバーテックスへと攻撃を仕掛ける。
22 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/16(土) 14:12:01.40 ID:wG5X0u+s0
「ほう!なかなかええ銃じゃ!気に入った!卵野郎!わしにも銃をよこさんかい!」

友奈の怒声に、青坊主が怯えながら銃を差し出す。
全長2m近くありそうな、巨大なガトリング砲である。

「ええチョイスじゃ!よう分かっとるのう!東郷、青いのは任せた!
 風先輩と樹はエビを頼むぞ!わしの相手は、あのカニ野郎じゃ〜!」

「まかせて友奈ちゃん!」

「エビじゃなくてサソリでしょ…」

「気にしてる場合じゃないと思うよ、お姉ちゃん」

風と樹のツッコミを気にも留めず、友奈はガトリングを乱射しながら蟹座のバーテックスへと突っ走る。

「うおおお!勇者部五箇条ひとつ!暴力は相手をブチのめしてなんぼじゃ〜〜!!」
23 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/16(土) 14:22:49.97 ID:wG5X0u+s0

戦闘開始からおよそ3分が経過した。
風と樹は蠍座のバーテックス相手に、前衛の風、後衛の樹の陣営で応戦していた。
しかし、バーテックの長い尻尾と毒針による猛攻に、決定打を打てずにいた。

「これじゃ近づけない…近づけなきゃ、封印する事もできない。どうすりゃいいのよ…」

風の表情に焦りの色が見え始めた頃、突如遠方から轟音が鳴り響いた。
轟音の正体にいち早く気付いた樹は、恐怖と驚愕が入り混じった表情で、その正体を指差す。

「お、お姉ちゃん、あれ…」

「な、何よあれ…!?」

「おりゃあ!どけどけ〜〜!!この夏、一番の波が来るぜ〜〜〜〜!」

轟音の正体は友奈だった。正確には、友奈とバーテックスである。
友奈がバーテックスの背中に乗り、サーフボードのように使いながら斜面を滑り降りているのだ。
そして友奈を乗せた蟹座のバーデックスは、その勢いのまま蠍座のバーテックスへと激突した。

「カニとエビの海鮮丼、一丁あがりじゃあ!」

激突した衝撃でそれぞれのバーテックスの体表が砕け散り、心臓部である御魂が飛び出した。
24 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/16(土) 14:31:49.58 ID:wG5X0u+s0

「ええい、こいつらチョコマカと逃げ回りおって!」

御魂を取り出すことに成功した友奈だったが、高速移動と分裂でかく乱する御魂に、トドメを刺せず手こずっていた。

「友奈、ここは任せて!」

友奈の背後から飛び出した風が、大剣を振り回す。
点や線ではなく、大剣の「面」で攻撃する事で、高速移動する御魂を破壊する事に成功する。

「こっちは私に任せてください!」

一方の樹も、分裂した御魂をワイヤーでまとめて高速することで、その全てを破壊した。
これで残るバーテックスは射手座の一体のみとなった。

「どれ、東郷の方は…!?」

友奈は思わず、驚愕で目を見開いた。
バーテックスの口から放たれた巨大な矢が、東郷へと差し迫っていたのだ。
東郷は狙撃銃を撃つために体を地面に密着させた状態であり、瞬時には回避できない。
東郷は矢を狙撃しようと試みるが、高速移動する矢には思うように狙いが定まらない。
25 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/16(土) 14:43:34.70 ID:wG5X0u+s0
(もうダメ…!)

東郷が死を覚悟し、目を閉じた瞬間、突如飛び出した桃色の影が矢を遮った。

「わしのダチに…何してくれてんじゃ〜〜〜!!」

矢と東郷の間に割って入り、右腕で矢をつかみ取った友奈が、怒りで声を張り上げる。
友奈はその怒りをそのまま矢に込めて、バーテックスへと投げ返した。
矢はそのまま発射口へと突き刺さり、バーテックスは攻撃手段を封じられた。

「樹、今のうちにいくよ!」

「うん!」

その隙に風と樹がバーテックスを囲いこみ、封印の儀を行い、御魂を取り出す。
御魂は先程以上に高速で移動しつづけるが、東郷は至って冷静であった。

「東郷、やれるか?」

「大丈夫だよ、友奈ちゃん」

東郷は焦ることなく御魂に狙いを定め、その中心を正確に撃ち抜いた。
御魂を失ったバーテックスが、砂と光の粒子となって消滅してゆく。

(友奈ちゃん。私、やれたよ…)

任務を無事遂行した東郷は、心の中で誇らしげに呟いたのだった。
26 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/16(土) 14:51:42.44 ID:wG5X0u+s0
3体のバーテックスを倒し樹海が消滅したことで、勇者部部員は全員、後者の屋上へと戻っていた。

「ようやったのう東郷!今日は勇者揃い踏みの記念じゃ!わしが全員にうどんを奢ってやるわい!」

友奈の言葉に、風と樹が顔をほころばせる。
そんな中、東郷は顔を赤らめて友奈を見つめていた。

「友奈ちゃん、今日はありがとうね」

「別にわしは何もしとらんぞ。東郷が実力を発揮した。ただそれだけの事じゃろ?」

「うん…」

友奈のさりげない気使いに、東郷はますます顔を赤らめ、顔を手で覆い隠すのだった。
27 : ◆BHtXRZieJ2 [saga]:2018/06/16(土) 14:53:59.15 ID:wG5X0u+s0
今日はここまで
今回はマジキチ分控えめでしたね
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/16(土) 21:50:29.71 ID:3Rw8DX8A0
総合スレから見に来たよー
感想とか批判を……という事だけど、多少辛口でもいいの?
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