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【バンドリ】羽沢さんの懺悔室
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:03:11.64 ID:rpOJnS4j0
※地の文があります。
少し百合百合してます。
羽丘女子学園の生徒会長に勝手なキャラ付けをしています。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1528326191
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:04:21.78 ID:rpOJnS4j0
「はぁ……」
薄暗く少し埃臭い教室の一角で、私は一人ため息を吐き出した。
耳を澄ますと、窓の外から微かな喧騒が聞こえてくる。今日は羽丘女子学園の文化祭だ。きっとここの生徒や外部からのお客さんが大いに楽しんでいることだろう。
だというのにどうして私は人気のない教室に――羽丘女子学園の敷地の中でも外れの方、今はほとんど使われていない古い校舎の最上階の教室にいるんだろうか。しかも、四方をペニヤ板の壁に覆われた個室のような空間の中に。
ここへやってきてから約二十分。どうにも誰も来なさそうな雰囲気だ。手持無沙汰の私は発端の出来事を回想する。
――――――――――――
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:05:04.30 ID:rpOJnS4j0
あれは確か、文化祭まであと一ヵ月に差し迫った日の生徒会会議のことだった。
「つぐみちゃんって、確か去年、シスターの衣装でライブやってたよね?」
そう言ったのは今年の生徒会長の先輩。それに「はい」という返事を返すと、彼女はニヤリとどこか悪だくみを思い付いたような笑みを浮かべた。
「そっかそっか、やっぱそうだったよね。いやーあの衣装とっても可愛かったよ」
「そ、そうですか? ありがとうございます」
「ふふ、それじゃあちょうどいいね」
「はい? なにがですか?」
「先生からさ、今年は生徒会も何か出し物をやれって言われちゃってたんだ」
「はぁ」
「でもさ、正直生徒会ってそんな暇ないじゃん? 準備期間中も、文化祭当日も」
「まぁ……そうですね。去年は千聖さんが来たからって言うのもありましたけど、みんなずっと走り回ってましたもんね」
「だよねー。大変だったよねー。……という訳で、生徒会は出し物として羽沢さんの懺悔室を行います!」
「……え?」
「空き教室の一角に懺悔室を作って、そこでシスターな羽沢さんに懺悔するって出し物! これなら作るのは簡単なブースだけでいいし、準備も簡単! 学校側には西洋宗教の研究って言えばオッケーでしょ!」
「え、え……!?」
「はい、それじゃあ生徒会の出し物はけってーい!」
その会長の声に、私を除く生徒会のメンバーは「わー」なんて言いながら拍手をしていた。
――――――――――――
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:06:21.63 ID:rpOJnS4j0
それから私の理解が追い付く前にトントン拍子に会長が出し物の詳細を決めていってしまった。気付いたらあまり人の来ない空き教室に、ダークブラウンに塗装されたペニヤ板で作られた箱型のブース――会長が勝手に名付けた『シスターTの懺悔室』が出来上がっていた。
そして文化祭当日の今日、私はそこへシスターの衣装で座らされることになっていたのだった。
「なんていうか……押しに弱いなぁ、私って……」
その中で独りごちる。ちゃんと双方の顔を見えなくするための衝立――ちょうど口元当たりの高さに、小さな穴がいくつか、円を描くように空けられている。多分声を通すためだろう――はあるけど、屋根は作られていない。漏れた言葉は虚しく教室の天井に消えていく。
「午前の二時間だけ……って言ってたっけ」
懺悔室というものの実物を見たことがないけれど、自分が今いるこのブースがお粗末な作りだということは十分に分かる。
長方形に作られた、人が四人くらいは入れそうな箱型の個室。長い方の両辺にはかなり簡素な扉が設けられていた。衝立は長方形を細長く両断するように設置されている。その衝立を挟むように置かれた何の変哲もない学校の椅子。『とりあえず形にしました』というやっつけ具合がそこかしこから感じられた。カーテンを閉めて室内を薄暗くしているのはそれを誤魔化すためでもあるんだろう。
(会長も真面目に出し物としてやるんじゃなくて、あくまで学校側へのポーズとしてこの企画を押し通したんだろうな……)
そう思って、手元にある文化祭のしおりの隅、目立たないようこっそり小さく書かれた『シスターTの懺悔室』の概要に目を通す。
午前九時から十一時まで、という開催時間の案内。それと説明には『あくまで模擬的なものです。西洋宗教研究のために行いますので、実際に教会の懺悔室で行う告解やゆるしの秘跡とは全く異なるものです。至らぬところがありましてもご了承ください。それから本気の犯罪などの懺悔もご遠慮ください。普通に通報します』とあった。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:07:41.82 ID:rpOJnS4j0
(いいのかなぁ、こんな軽い考えで催し物としてやっちゃって……)
宗教的なことには詳しくないけど、きっと厳かな儀式のようなものだろうし罰当たりなんじゃないだろうか。いや、そんなことを言ったらライブ衣装のモチーフに修道服を使うこと自体が罰当たりなんだろうけど……。
『シスターTの懺悔室』をやると言われてからずっと考えていることだったけど、未だに答えは出そうにない。私は頭を振ってその考えを脳内から追い出す。それから会長が屈託のない笑顔で言っていた言葉を思い出す。
『つぐみちゃん、去年はずーっと走り回ってたもんね? 今年はゆっくり出来るよ! それが終わったら一日目は自由にしてていいからね!』
あえて人が来ないような場所にこの催し物を出したこともきっとあの人なりの優しさなんだろう。確かに去年の今頃はあちらこちらへ走り回っていたから、それに比べれば随分と楽をさせてもらっている。
「……でも暇すぎるのもちょっとなぁ」
会長の気持ちは嬉しいけれど、なんだか仲間外れにされているような気持ちになって私は少し寂しくなる。それを紛らわすために誰かに来てほしいけど、でも懺悔室なんて何をどうすればいいのかよく分からないから誰にも来てほしくないというか、なんとも言葉にしづらい微妙な気分だった。
「んー、ここかなぁ……おねーちゃんが言ってたのって」
一応懺悔室ではどんな振る舞いをするかは調べて来たけど……なんて思っていると、教室の扉が開く音がして、そのあとにやや幼さを感じる声が聞こえた。
(ひ、人来ちゃった。……あれ、でもちょっと聞いたことあるような声の気が……)
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:08:39.94 ID:rpOJnS4j0
少し幼げな声に、おねーちゃんという単語。そこから、幼馴染の巴ちゃんの妹であるあこちゃんの顔が連想された。そうしていると、弾んだ声が薄いペニヤ板ごしに聞こえる。
「あ、ここであってるみたい! へー、これが『シスターTの懺悔室』かぁ〜!」
そういえばアフターグロウのみんなには生徒会でこの出し物を行うことを伝えていた。だから多分、巴ちゃんがあこちゃんにこの催し物を教えたんだろう。
(あこちゃん、こういうの好きそうだもんね)
顔は見えないけど、先ほどの弾んだ声と軽やかな足音を聞いて、あこちゃんの表情がきっと無邪気に輝いているだろうことは想像できた。すると不安な気持ちもどこか和らいでいくような気がした。
「すいませーん!」
元気の良い声が近くなる。衝立を挟んだ向かい、簡素な懺悔室の中にあこちゃんが入ったんだろう。私は小さく咳ばらいをして、頑張って厳かな声を出す。
「……ようこそいらっしゃいました。迷える子羊よ、神のいつくしみに信頼して、あなたの罪を告白してください」
その言葉のあと、衝立の向こう側から「おおっ……!」という感嘆の声が聞こえてくる。
事前に懺悔室での流れを調べてカンペや役立ちそうな言葉を用意してあった。実際はもっと違うものなんだろうけど、そもそも私は神様の祝福を受けた本職のシスターや神父様じゃない。失礼なことかもしれないけど、雰囲気だけでも似通わせて、それであこちゃんが喜んでくれるのならちょっと嬉しかった。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:09:49.45 ID:rpOJnS4j0
「……うむ。実は、我は神を裏切ってしまったことがあるのだ」相手が私だと気付いていないだろうあこちゃんは、声色を低くして仰々しい雰囲気で言葉を返してくる。「その昔、かけがえのない友を救うために闇の力が必要になり、我は自ら堕天の道を選んだ」
何かのゲームの話かな? と思いながら、私は黙ったままあこちゃんの声に耳を傾ける。
「かつての仲間を裏切ってしまったこと、そして……えーっと、そう、堕天という禁忌に手を染めてしまったこと……そのことがずっと我の心の中に残っておるのだ」
「なるほど……」
相づちを打ちながら、どんな言葉を返そうか少しだけ考える。あこちゃんが描いている物語の内容は分からないけど、これは燐子さんとのことを思っていそうだというのは想像が出来た。いつかに紗夜さんが「宇田川さんと白金さんのやっているネットゲームに付き合わされたことがあるのですが、やってみると意外に面白いものですね」と言っていたから、多分合っているだろう。
(なら……よし)
私は言葉にすることを一度頭の中でまとめてから口を開く。
「あなたのご友人は、その行いで救われたのですか?」
「……うむ。聖堕天使となった我の闇の力で無事に救うことが出来た」
「であれば、神様もきっとあなたの堕天をゆるされるでしょう」
「まことかっ?」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:10:24.70 ID:rpOJnS4j0
「はい。あなたの行いは、愛すべき友人のために自らを禁忌の道に落とす、いわば自己犠牲の奉仕です。己を顧みずに隣人を助けること、それは無償の愛です。神様はあなたが持つ友愛の精神を祝福するでしょう。その清い志を持ち続ける限り、真の意味であなたが邪道に落ちることはありません」
「おお……」
「私は神様と聖霊の名によって、あなたの罪をゆるします。どうか、これからも純真な心を持っていてください」
「神の御使いよ、感謝する!」
「はい。ゆるしの秘跡は以上です。あなたに神のご加護があらんことを」
「うむ! それじゃあ失礼します!」
最後の一言は仰々しく作った声ではなく、いつもの明るいあこちゃんの声だった。ついで、懺悔室の扉が開く音がして、パタパタという軽い足音が遠ざかっていった。
「……ふふ、喜んでもらえたみたい」
その足音が聞こえなくなってから、私は小さく呟きを漏らす。
あこちゃんは昔から『カッコいいもの』に憧れていて、その真似をしながら巴ちゃんの後ろをついて回っていた姿が記憶にあった。その中の姿より背丈はずっと大きくなったけど、無邪気なところはやっぱり今も全然変わっていない。それが微笑ましくて、なんだか私も元気をもらえたような気がした。
「よーし、頑張ろっ」
この催し物は学校に言われたから仕方なく出しているものかもしれないけど、あこちゃんみたいに楽しんでくれる人がいるかもしれない。そう思うと自然と気合が入る。こんなところにまで足を運んでくれた人に喜んでもらえるように、私が出来る範囲で精一杯やってみよう。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:11:15.21 ID:rpOJnS4j0
「ん〜? なんだろ、この出し物……えーっと……『シスターTの懺悔室』? へぇー、なんか面白そうっ」
そんなことを考えていると、少しハスキーな声が廊下から教室に入ってくる。これも聞き覚えのあるものだった。誰の声だっただろうか。
「すいませーんっ、お一人様、お願いしまーす!」
懺悔室の扉を開く音。次に明るい声が聞こえる。ああそうだ、この声は日菜先輩のものだ。そう思いながら、私は言葉を発する。
「ようこそいらっしゃいました。迷える子羊よ、神のいつくしみに信頼して、あなたの罪を告白してください」
「わー、本当にシスターっぽいんだね! えーっと、罪……罪かぁ……」
「うーん」と悩むような声と、椅子がギシリと軋む音が聞こえる。衝立の向こう側、日菜先輩が悩んだような顔をして椅子に腰かける姿を私は想像する。
「ねぇねぇ、懺悔ってさ、罪とかじゃなくてもいーの?」
しばらく間を置いてから、日菜先輩はそんな言葉を投げかけてきた。多分、罪にあたるものが思いつかなかったんだろう。
「ええ、大丈夫ですよ。こちらは本格的な懺悔室ではありませんし、何か心に引っかかるものがあればそれをお話しください」
「んーじゃあさ、悩み事を聞いてもらってもいいかな?」
「はい、いいですよ」
「ありがとっ。えっとね、最近……でもないんだけどさ、なんだか彩ちゃんのことがすっごく気になるんだ」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:12:17.66 ID:rpOJnS4j0
「気になる……ですか?」
「うん、そーなんだよ。最初はね、あたしには分からないことだらけの彩ちゃんが面白いなってだけだったんだけど、段々それとも違うなーって気持ちになってきてるんだ。なんていうんだろ、おねーちゃんと一緒にいる時に似てるような、でもちょっと違う気持ちっていうか……。『るんっ♪』ってするんだけどそれとも少し変わったような感じっていうか、よく分からない気持ちなんだよね。シスターさんはどう思う?」
「そうですね……」
その言葉を聞いて、私はなんて言葉を返すべきか少し悩む。日菜先輩が紗夜さんに抱いている感情は家族への情愛と尊敬……だと思う。普段の様子を見ているとそれだけで済ませられる感情なのか少し不安だけど、多分。……まぁ、そうなっちゃう気持ちはよく分かるんだけど。
さておき、それと似たようでちょっと違う感情。相手のことが気になって、やや行き過ぎているような気がしないでもない家族愛に似たような感情。となると……恋慕に近いもの、なんだろうか。
(いや、でも女の子同士だし……あ、でもモカちゃんが『アイドルが女の子同士でいちゃいちゃする売り方があるんだってさ〜』って言ってたし、そういうのなのかな……?)
その時のモカちゃんの様子を思い出す。ニヘラ、とふやけた笑顔で「だからいちゃいちゃしよーよー蘭〜」なんて蘭ちゃんにずっとくっついていた。蘭ちゃんは蘭ちゃんで「モカ、意味分かんないし鬱陶しい」なんて口では言いながらも全然モカちゃんを引き離そうとしてなかった。
それは見慣れたいつも通りの二人の姿だった。日菜先輩が彩さんに抱く感情はそういうじゃれ合いに似たものなんだろう。……自信はないけど、多分。そう結論付けて私は口を開く。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:12:47.74 ID:rpOJnS4j0
「……ご自身が抱く感情の正体が分からないというのであれば、もっとその気持ちに素直になってみてはいかがでしょうか」
「素直に?」
「はい。あなたがその人に抱いている感情は、間違いなく好意的なものであると思います。であれば、お相手の方にその気持ちをぶつけてみるのはどうでしょうか? 人ありきのお悩みですし、一人で答えを考え続けていては答えも出し難いでしょう。ですが素直な気持ちで行動をしてみれば、自ずと答えも見えてくるのではないか……と思います」
「素直な気持ちをぶつける……かぁ」
「はい。ただ、その気持ちをいきなり全力で相手にぶつけるのは――」
「よーし、分かったよ!」と、日菜先輩の威勢のいい声が私の言葉を遮る。「善は急げって言うし、ちょっと今から彩ちゃんに会いに行ってくるね! 相談に乗ってくれてありがと、つぐちゃん!」
その声の後に懺悔室の扉を勢いよく開く音。そしてバタバタと慌ただしい足音が室内に響き、それがどんどん遠ざかっていった。
「…………」
教室に一人残された私は思う。日菜先輩、私だって気付いてたんだ、ちょっと恥ずかしいな、それと勢いよく出て行ったけど懺悔室の扉が壊れてないか心配だな――なんてことよりも強く。
(彩さん……なんていうか、ごめんなさい)
今日からより一層日菜先輩に振り回されるだろう彩さんの姿が容易に想像できて、私の胸中は申し訳ない気持ちで一杯になるのだった。
……………………
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:13:30.22 ID:rpOJnS4j0
遠慮がちな教室の扉の開く音が聞こえてきたのは、日菜先輩が出て行ってから約十分後のことだった。
勢いよく開けられた扉が壊れていないか確認してから懺悔室の中に戻り、事前に用意してあったカンペや格言集に目を滑らせていた私は、音のした方へ視線を送る。
「…………」
今度の来客は何も喋らない。ゆっくりと扉を閉める音がした後、静かな足音がコツコツとこちらに近付いてくるだけだった。
(……流石に三回連続で知り合いが来る、なんてことはないよね)
そんなことを思っているうちに、懺悔室の扉が開く音がして、衝立の向こう側に人が入ってきた気配がする。
「…………」
ギシ、と椅子の軋む音が聞こえる。あちら側にも用意してある椅子に腰かけたんだろう。しかし、あこちゃんや日菜先輩のように何か話しかけてくるでもなく、その人は無言のままだった。
(もしかしたらどうすればいいのか勝手が分からないのかな)
なんて思って、普通はそうかと思い直す。付け焼刃のにわか知識だけど、私だってこういう機会がなければ懺悔室の作法を知ることもなかっただろうし。
「ようこそいらっしゃいました。迷える子羊よ、神のいつくしみに信頼して、あなたの罪を告白してください」
私は衝立の向こう側へ声をかける。しばらくの間を置いてから返事がくる。
「罪……ではないのだけど、少し話を聞いてもらえないかしら」
静かだけど芯のある、よく通る声だった。そしてまたも聞き覚えのある声だった。普段はあまり話すことがないけれど、歌声は何度も聞いたことがある人の顔が脳裏に浮かぶ。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:14:31.84 ID:rpOJnS4j0
(この声……友希那先輩だよね……?)
衝立越しで少しくぐもってはいるけど、聞き間違えるはずない。ライブハウスやCDで何度となく紗夜さんのギターと一緒に聞いているものなのだから。
知り合い来すぎじゃない? という気持ちがない訳でもないけど、恐らく友希那先輩はシスター役が私だと気付いていないだろう。得体のしれない、と表現するのはちょっとアレだけど、そんな懺悔室を頼りにしてきてくれたんだから、しっかり話を聞かなくちゃ。
「……はい。悩み事があれば、神様に代わって私が聞きましょう」
そう思って私は友希那先輩に言葉を返す。
「ありがとう。それで……」と、そこで一度友希那先輩は言葉を切る。「……何から話せばいいのかしら」
「難しく考えないで、あなた自身の素直な気持ちをそのまま話してみてください」
「分かったわ。……その、私は……バンドを組んでいるんだけど、そこではいつも自分が主導になって、みんなを引っ張っていると思っていた」
「…………」
訥々と先輩は言葉を紡ぎ始める。邪魔しないように私は口をつぐんでそれに耳を傾ける。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 08:15:08.61 ID:rpOJnS4j0
「でも……ある日、気付いたの。私がみんなを引っ張ているようでいて……その実、私はみんなに助けられてばかりいたんだって。そう気付いた時には……バンドがバラバラになりかけていた。……それもきっと私のせい、で」
「…………」
「自分の無力さが悔しかった。情けなかった。どうすればいいのか分からなくなってしまった。でも……こんな私のところにも、みんなはまた集ってきてくれた。そしてまた、私たちは前を向いて、頂点を目指すことが出来るようになった。それは、それで……みんなには感謝してもしきれないことで……私たちに必要だったことで……良いことなんだと思う……けれど……その……なんていえばいいのかしら……」
友希那先輩はそこで言葉を止めてしまう。どういう風に話せばいいのか迷ってしまっているのだろう。それでも自分の中にあるものを言葉にしなくては、と急いているような雰囲気が感じられた。
「ゆっくりで大丈夫ですよ。時間はたくさんありますから」
「……ええ、ありがとう」
私からの言葉にお礼を返して、それからまたしばらくの間が空く。自分の中の言葉をまとめているんだろう。私は黙ったまま友希那先輩の言葉を待った。
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