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まゆり「トゥットゥルー!」岡部「・・・え?」
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2 :
1
:2018/06/04(月) 17:39:44.52 ID:oMtdo1oj0
10月――
ダル「ちょ、オカリン!」
岡部「ん?」
ダル「手元見ろし!ドクペこぼれてるお!」
岡部「ッ!我が混沌より生み出されし千枚敷が・・・!」
ダル「カーペットにこぼれただけだろ常考」
岡部「ええい、ダァルよ!ふきんを持って来い!」
ダル「[ピザ]のケツの重さはハンパじゃないお」
岡部「まゆりーっ!!」
3 :
1
:2018/06/04(月) 17:40:39.40 ID:oMtdo1oj0
まゆり「なぁにオカリン?」
岡部「ふきんをもってきてくれ!」
まゆり「嫌なのです☆」
岡部「えっ・・・」
まゆり「嘘だよオカリン。すぐ持ってくるね」
岡部「あ、ああ・・・頼む」
4 :
1
:2018/06/04(月) 17:41:18.86 ID:oMtdo1oj0
まゆり「はい、オカリン」
岡部「さぁすがは我が人質ッ!エロゲ三昧のメタボハッカーとは訳が違うな」
ダル「大学生の中二病患者に言われたくないお」
まゆり「・・・」
岡部「・・・まゆり?」
まゆり「・・・」
ダル「まゆ氏?だいじょぶ?」
まゆり「えっ?あ、あは、まゆしぃ疲れてるみたいなのです。今日は帰るね?じゃあね、オカリン、ダル君」
5 :
1
:2018/06/04(月) 17:42:05.55 ID:oMtdo1oj0
ダル「・・・」
岡部「・・・ダルよ、なぜこちらを睨む」
ダル「オカリン、まゆ氏となんかあったん?」
岡部「心当たりはないが・・・」
ダル「まゆ氏アメリカから帰ってきてからずっとあんな調子でない?」
岡部「そうか?確かに元気がないように感じないこともないが」
ダル「・・・原因はオカリン。間違いないお」
岡部「なにっ!?ッ俺だ、我がフェイバリット・ライト・アームが機関からの精神攻撃を受けている!くそッ奴らめ、」
ダル「とりあえず謝っといたほうがいいと思われ。んじゃ僕も帰るお」
岡部「なっ!?おい待てダル、」
ラボのドアが、静かに閉まる音がした。
6 :
1
:2018/06/04(月) 17:42:37.88 ID:oMtdo1oj0
アメリカでの、正確に言うとそれ以上の紆余曲折を経て、俺と紅莉栖は結ばれた。
告白の後、ホテルに戻った俺たちはラボメンに事の経緯を説明した。
紅莉栖は恥ずかしがっていたが、俺はラボメンに隠し事をする気などさらさらなかったのだ。
フェイリス「ニャニャーッ!?凶真、ひどいニャン!フェイリスと凶真は前世からの誓い合った仲ニャのにィーッ!!」
るか「わ、わ、おめでとうございます、おか・・凶真さん、牧瀬さん」
ダル「もしもし、俺だ、今機関の精神攻撃を受けている。作戦名はオペレーション・リアジュウバクハツシロだ」
紅莉栖「あ、ありがとう・・・。で、でも勘違いしないでね!?まだキス以外のことは・・・」
フェイリス「もうキスしちゃったのかニャ!?凶真っ、だいたーんッ!」
ダル「その話kwwwwsk」
紅莉栖「あ、あうう・・・」
まゆり「・・・」
7 :
1
:2018/06/04(月) 17:43:11.98 ID:oMtdo1oj0
岡部「シャーラップッ、ラボ・メンバーズよ!このメァァーッドサイエンティスッの鳳凰院凶真がキスなどするはずがなかろう!」
ダル「オカリン、顔が真っ赤なのだぜ」
フェイリス「つよがっちゃってかわいいニャ♪」
るか「岡部さん・・・かわいいです」
岡部「やかましいっかわいくなどはない!!こ、この鳳凰い・・・ん?メールか?」
まゆり「あ、萌郁さんにまゆしぃが送っておいたのです☆」
岡部「まゆりいいーッ!!」
8 :
1
:2018/06/04(月) 17:43:44.46 ID:oMtdo1oj0
その日はまゆりとルカ子の部屋に全員集まり、深夜まで騒いだ。
まゆりが寝てしまったのでそろそろおひらきにしようか、と紅莉栖が言い、各自の部屋へ戻った。
フェイリス「凶真はクーニャンとおんなじ部屋がいいんじゃないかニャン♪シングルベッドでニャンニャン♪」
ニャンニャンが別の意味に聞こえたのは言うまでもない。そこは紅莉栖の照れ隠しの断固拒否で、俺たちは別々の部屋で眠ることになった。
9 :
1
:2018/06/04(月) 17:44:47.65 ID:oMtdo1oj0
部屋に戻るとダルがその巨体でベッドを占領しており、大きな寝息を立てていた。
俺は白衣を脱いでハンガーにかけると、なんとなく夜風に当たりたくなったので部屋を出た。
古びた手すりに腕をかける。
風が俺の髪を静かに揺らし、月は優しく俺に笑んでいた。
幸せすぎる。
そう、思った。
10 :
1
:2018/06/04(月) 17:45:23.81 ID:oMtdo1oj0
今でも目を閉じれば、額から血を流すまゆりが。血まみれになって倒れている紅莉栖が、脳裏に蘇る。
そして、その傍らで何もできず、ただバカみたいに突っ立っている自分も。
それだけじゃない。
父親を失うことを決意したフェイリスの、眼。
女になりたいという願望がかなったのに、まゆりのためにそれを捨ててくれるといった、るかのあの笑顔。
どちらも涙が頬を伝っていた。
MR.ブラウン。桐生萌郁。天王寺綯。阿万音鈴羽。
なかったことには、してはいけない。
なかったことには、してはいけない。
11 :
1
:2018/06/04(月) 17:46:00.99 ID:oMtdo1oj0
「オーカリン♪」
気が付くと、横にまゆりが立っていた。
岡部「まゆりか。お前寝たんじゃなかったのか」
まゆり「えへへ〜まゆしぃはお腹がへったのです」
岡部「まったく・・・熊かお前は」
まゆり「がおー」
岡部「ッフフ」
まゆり「オカリン」
岡部「なんだ?」
まゆりはてすりに腕をかけ、俺と同じ方向を向いた。
まゆり「オカリン、なにかつらいことあったのかなぁって、まゆしぃは思うのです」
12 :
1
:2018/06/04(月) 17:46:34.77 ID:oMtdo1oj0
少し、――ドキッとした。
岡部「何を言っているのだ。客観的に見れば、俺は今幸せの絶頂に・・・」
まゆり「ちがう、ちがうよオカリン」
岡部「違うことなど、あるものか・・・」
まゆり「まゆしぃはよくわからないけど、オカリンはなにか悩んでいる気がするのです」
岡部「そんなものは、ないっ!!」
まゆり「!」
まゆり「オカ、リン・・・?」
13 :
1
:2018/06/04(月) 17:47:21.89 ID:oMtdo1oj0
岡部「はぁ、はぁ・・・すまない」
まゆり「・・・うん」
俺は、俺は、わかっていたはずだ。
この世界線は、SG世界線。もちろん俺が何度もタイムリープを繰り返したα世界線の影響を一切受けていない世界。
ここでは、るかは女ではない。フェイリスの父は死んでいる。阿万音鈴羽はまだ生まれていない。
そして牧瀬紅莉栖は、運命に抗おうとして共に戦った相棒、ではない。
微弱なリーディングシュタイナーが働いているとはいえ、所詮おかしな夢としか認識されない。
口げんかをしたことも、プリンを勝手に食ったことも、一緒にIBN5100を運んだことも、
――――キスしたことも。
覚えてはいない。
14 :
1
:2018/06/04(月) 17:47:52.81 ID:oMtdo1oj0
もちろん同じ状況になったとしたら、今の紅莉栖も俺を助けてくれるだろう。それは断言できる。
だが彼女にとって俺は、ただの命の恩人であり、実質二週間程度を一緒にのんびりとすごしただけの存在なのだ。
不安なのだ。記憶と経験の違いが、やがて二人に齟齬を生むのではないかと。
15 :
1
:2018/06/04(月) 17:48:25.48 ID:oMtdo1oj0
岡部「・・・まゆり、部屋にもどってくれ。俺はひとりで考えなければならないことがあるのでな」
まゆり「いやだよ」
岡部「まゆり?」
まゆり「いやだっていったの」
まゆりが、こんなに強く感情を露にするとは。
俺は思わずたじろいだ。
岡部「ま、まゆり・・・」
まゆり「オカリン。ずっと前まゆしぃに、全部終わったらお話してくれるって言ってくれたよね?」
岡部「な、」
まゆり「今がそのときだと思うのです」
16 :
1
:2018/06/04(月) 17:48:52.67 ID:oMtdo1oj0
岡部「待て!俺はそんなことは言っていないぞ!?」
言った。確かに言ったが、それはまゆりが死ぬ世界、β世界線での話だ。
なぜまゆりがその記憶を?まさか、リーディングシュタイナーが――
まゆり「ううん、オカリンは言ったよ。こうやってまゆしぃの手をぎゅーってにぎって」
岡部「まゆりお前・・・」
まゆり「そのあとまゆしぃはしんじゃうんだけど・・・でも、ちがうよ。夢なんかじゃない」
岡部「違う・・・それはゆ」
まゆり「オカリン!!」
岡部「ッ!」
17 :
1
:2018/06/04(月) 17:49:19.42 ID:oMtdo1oj0
俺は辺りを見回した。幸いにも、起きてくる宿泊客はいなかった。
まゆり「話してよ・・・まゆしぃに・・・」
まゆりの眼には涙が溜まっていた。
まゆり「オカリンの力になりたいよ・・・」
岡部「あ、あ・・・」
もう頭の中はぐちゃぐちゃだった。震える唇で、追い詰められた俺が出した答えは、
岡部「ふ、フゥーハッハッハッハ!!俺は稀代のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真っ!!誰の力も借りず世界を混沌に陥れる、孤独な支配者なのだァ!!」
設定に逃げることだった。
18 :
1
:2018/06/04(月) 17:49:50.40 ID:oMtdo1oj0
まゆり「オカリン・・・」
岡部「ではな、まゆり!風邪を引くことのないよう、頭まで布団をかぶって寝るのだぞ!!」
まゆりから遠ざかり、角を曲がった瞬間俺は走り出した。
なにがマッドサイエンティスト。
なにが鳳凰院凶真。
まゆりを守るために作り出したものが、今、まゆりを傷つけている。
岡部「うう、っうおおおおおぉぉ」
その日はホテルに帰らなかった。
路上でずっと、月を眺めた。
19 :
1
:2018/06/04(月) 17:50:16.36 ID:oMtdo1oj0
このことはまだ、ダルには言っていない。
だが気のつく奴だ。今日のまゆりを見る前から、どうも感づいていたらしい。
紅莉栖にも言っていない。アメリカで頑張っているあいつに、なるべく負担はかけたくない。
まゆりに、すべてを話そうか。
そんな想いがふと胸をよぎった。
岡部「だめだ」
俺はラボの電気を消した。
20 :
1
:2018/06/04(月) 17:50:46.93 ID:oMtdo1oj0
翌日――
岡部「ごきげんようぅぅッ!ラボメン諸君っ」
ダル「僕しかいねーお」
岡部「ぬぁにぃッ!?平日だからといってたるんでいるな。たるむのはダルの下腹部だけで十分だというのに」
ダル「屋上にいこうぜ・・・久々に・・・切れちまったよ・・・」
岡部「むっ!!ドクペが切れているではないか!!ゆくぞダル!」
ダル「無視ですねわかります」
スーパー――
岡部「ふむ・・・これくらいでよかろう」
ダル「買いすぎだろ常考。今は牧瀬氏いないんだから・・・これくらいでよくね?」
岡部「なっ・・・ダル貴様、我がラボの知的飲料がこれだけ必要なのがわからんのか!?」
ダル「おしえて!岡部先生!」
岡部「ふむ・・・仕方がない教えてやろう。あれは7000万年前の地球・・・」
ダル「すいませーんこれだけお願いします」
岡部「レジに出すなぁぁぁッ!!」
21 :
1
:2018/06/04(月) 17:51:13.46 ID:oMtdo1oj0
岡部「まったく、とんでもない右腕だ貴様は」
ダル「フヒヒ、サーセン」
岡部「こんなにダイエットコカコーラばかり買って・・・俺はどうすればいいのだ」
ダル「オカリンはそろそろダイエットコカコーラのうまさに気づくべきだお!こんなにおいしいのに痩せられる、これこそ最高の知的飲料だお!」
岡部「やせとらんではないか」
ダル「・・・」
岡部「やせとらんではないか」
ダル「・・・てへぺろ☆」
岡部「ラボの資金は無限ではないんだぞ?今だって俺は毎日MR.ブラウンから恐るべき脅しを受けているのだ」
ダル「MR.ブラウン。またの名を?」
岡部「タコハゲ坊主。ロリコン」
ダル「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
22 :
1
:2018/06/04(月) 17:53:01.64 ID:oMtdo1oj0
天王寺「おお、岡部に橋田じゃねぇか」
岡部・ダル「!?!?」
天王寺「昼間っからこんなとこほっつきあるきやがって。大学生ってのは気楽でいいなぁおい」
ダル「・・・い、いえ」
岡部「MR.ブラウンこそ・・・ごきげん麗しゅう・・・」
天王寺「いいや、それがそうでもねぇんだよ」
岡部「え?」
天王寺「どっかのバカふたりがよぉ、俺のことをハゲだのロリコンだのいいやがってよォ〜」
ダル「」
岡部「走れダルぅぅ!!」
天王寺「てめえら綯の前でいいやがったら、ボッコボコにすっからな!!!」
23 :
1
:2018/06/04(月) 17:54:08.22 ID:oMtdo1oj0
公園――
岡部「ぜぇー、ぜー」
ダル「はぁー、はあ、死ぬかと思ったお・・・」
岡部「くそっドクペさえ飲んでいれば」
ダル「妄想乙・・・」
その後俺たちは言葉を交わさずに、ふたりでダイエットコーラを飲んだ。
いつの間にか時間がたち、太陽がしずもうとしていた。
ダル「オカリン」
そんな静寂を、ダルは唐突に破った。
24 :
1
:2018/06/04(月) 17:54:36.94 ID:oMtdo1oj0
ダル「オカリンは牧瀬氏の、どこが好きになったん?」
岡部「急だな。なぜだ」
ダル「なんとなくだお」
岡部「そうか。・・・では聞かせてやろう、奴と俺は幾多の世界を戦い抜き、共に愛を誓い合ったプァァートゥナァなのだ!!結ばれることは必然!!それこそがシュタインズゲートの・・・」
ダル「選択、か。そうかもわからんね」
岡部「え?」
25 :
1
:2018/06/04(月) 17:55:16.86 ID:oMtdo1oj0
いつもならため息をついて妄想乙、というはずなのだが。
今日のダルはどこか遠い目をしている。
岡部「ふ、フゥーハッハッハ!!ようやく我が崇高なる知識を読み取ることができたか、我が右腕よ!」
ダル「そんなんじゃないけど。二人は何度も何度も話し合って、まゆ氏を救うために助け合ってたんだから不思議はないかなって」
岡部「・・・!?」
ダル「なんて顔してんだよ、オカリン。夢の話なのだぜ?」
岡部「ダル・・・」
ダル「でも、夢じゃない気がする・・・」
26 :
1
:2018/06/04(月) 17:55:44.80 ID:oMtdo1oj0
岡部「何を言っているダルよ。とうとう夢と現実の区別もできなくなったか?」
ダル「・・・オカリン。おしえてくれよ。さっきの表情から見てするに、何か知ってるんだろ?」
岡部「それはただの夢だ。お前は疲れているのだ」
ダル「・・・まゆ氏が死ぬんだ。ラボに変な奴らが入ってきて、まゆ氏を撃って、僕は大声を上げるんだけど、何もできなくて、」
岡部「ダルッッ!!!」
ダル「す、鈴羽、・・・鈴羽が、僕のむす」
岡部「!!・・・ッつ」
俺は力の限り、ダルの頬を打った。
27 :
1
:2018/06/04(月) 17:56:11.14 ID:oMtdo1oj0
ダル「・・・」
岡部「・・・すまない」
ダル「いや、ありがとう。今日はもう、帰るお。またな、オカリン」
ダルは帽子を拾ってから暗がりに消えた。
公園には、苦渋の表情を示す俺だけが残された。
28 :
1
:2018/06/04(月) 17:56:40.20 ID:oMtdo1oj0
数日して、ルカ子、フェイリスも同じようなことを匂わしてきたが、軽く流した。
岡部「なんでだよ」
ラボの床にねっころがって、ひとりつぶやいた。
岡部「シュタインズゲートは、みんなが幸せになれる世界線なんじゃないのかよ・・・」
電話レンジ(仮)は、なんでこの世に生まれてしまったんだろう。神様はよっぽど俺のことが嫌いなのだろうか。
あんまりだ。あんまりじゃないか。苦労して苦労して、やっとここまできたっていうのに。
その結末が、これか。
岡部「どうすれば、いいんだよ・・・言えばいいのか、洗いざらい?」
だめに決まってる。言ったってみんなを苦しめるだけだ。
岡部「くそ・・・」
ラボのドアが、開く音がした。
29 :
1
:2018/06/04(月) 17:58:25.67 ID:oMtdo1oj0
岡部「誰だ、深夜二時だぞ?まゆりか?それともダル」
???「おっじさァーん!!いる?オカリンおじさぁーん」
岡部「!?」
まさか。そんなはずはない。あいつが、あいつが――
鈴羽「あっいた!!オカリンおじさん!」
岡部「やはり・・・鈴羽!? お前なぜここに、まさか・・・まさか第三次世界大戦が、もしくはディストピアがっぐぇ!!」
鈴羽「はーい詳しい話はあとあと。いくよ!」
岡部「どどこへいくのだ!?」
鈴羽「タイムマシンのあるところだよ」
岡部「タイムマシンだと!?なぜっぐをあ!!」
鈴羽「まずは車に乗って!!案内しながら説明するから!!」
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/04(月) 18:02:13.46 ID:mZD3qGYf0
期待だ
31 :
1
:2018/06/04(月) 18:05:13.85 ID:oMtdo1oj0
岡部「鈴羽・・・お前車に乗ったことあるのか」
鈴羽「あるにきまってんじゃん!」
岡部「ではぬァァんだこの蛇が通るようなデュライビングはッ!!」
鈴羽「あはは、未来では自動運転でさ、この時代の車って大変だねっ・・・と!」
瞬間、体験したことのないGが俺を襲う。
岡部「ふぁぁぁ、ちょっ、ま・・・おろせ!!」
鈴羽「ちょっとおじさん!暴れちゃだめだってば!!」
岡部「スピード出しすぎではないか!?」
鈴羽「奴らが来るからね」
岡部「奴ら?」
鈴羽「・・・きた」
32 :
1
:2018/06/04(月) 18:10:36.60 ID:oMtdo1oj0
窓の外を見ると、銃を持ったバイクの男が並走していた。
鈴羽「邪魔くさいなぁ」
鈴羽はハンドルを豪快に回し、車の横っ腹をバイクにぶち当てた。
岡部「おわァーお!!!!」
バイクは派手に転倒し、窓の景色から消えていった。
岡部「おおーーい!! ま、まずいんじゃないのかァこれぇ!?」
鈴羽「いきてるよ多分。着いたよっ」
ラジ館の屋上にはタイムマシンが突き刺さっていた。
岡部「な・・・」
冷や汗が、一気に噴き出すのがわかった。
33 :
1
:2018/06/04(月) 18:18:45.33 ID:oMtdo1oj0
震える足で車を降り、ラジ館の階段を上る。
間違いない。
何度も何度も見てきた。そして、実際に乗り込んだ。これは――
岡部「タイムマシン・・・」
なんとか鈴羽に目を向けると、神妙な面持ちでタイムマシンをにらんでいた。
岡部「な、ぜ・・・」
鈴羽「・・・岡部倫太郎。よくきいて」
鈴羽「ここは、シュタインズ・ゲート世界線じゃない。」
34 :
1
:2018/06/04(月) 18:30:46.42 ID:oMtdo1oj0
岡部「・・・」
岡部「何を・・・何を言っている・・?」
鈴羽「・・・」
岡部「シュタインズ・ゲート世界線じゃあない・・・?」
岡部「冗談はよせ・・・ふざけるのもいい加減にしろ!!!!」
岡部「何人もの仲間の思いを犠牲にして・・・やっと、やっと辿り着いたんだぞ。どれだけ、どれだけ・・・!!」
鈴羽「おじさん」
岡部「ここではまゆりは死なない。紅莉栖は生きていける。そうだろう。そう言われたから跳んだんだ!!!!」
岡部「ここへ来たんだ!!!!」
鈴羽「おじさん!!!!」
鈴羽「説明するよ・・・すべてを。だからまずは、このタイムマシンに乗って」
岡部「・・・っ」
35 :
1
:2018/06/04(月) 18:33:31.40 ID:oMtdo1oj0
鈴羽「結論から言う」
鈴羽「未来ではディストピアが形成された。自由が無くなった」
岡部「なぜ・・・なぜだ。タイムマシン理論は燃えたし、俺はDメールを送っていない!! そもそも電話レンジ(仮)が無いこの世界線で、SERNや大国がどうやって・・・」
鈴羽「違うよおじさん。SERNも大国も、未来では力を持っちゃいないよ。ディストピアを形成したのは、世界で唯一完璧なタイムマシンを作り出すことのできる人物――わかるよね?」
・・・ダルは。
この世界線では、タイムマシンを、見ていない。
紅莉栖?いや、奴のタイムマシン理論は、封印するように俺が言った。
岡部「俺・・・?」
36 :
1
:2018/06/04(月) 18:48:20.96 ID:oMtdo1oj0
岡部「そんなばかなことがあるものか! 俺がディストピアを形成するなんて、そんなことが」
鈴羽「おじさん。私たちはこれから、過去のある期間へ跳ぶの。なぜなら、その期間こそが、すべてを狂わしている原因だから」
岡部「・・・まさか」
-------------------------------------------―--------------------------------――――――-----------------------
まゆり『オカリン。ずっと前まゆしぃに、全部終わったらお話してくれるって言ってくれたよね?』
まゆり『話してよ・・・まゆしぃに・・・』
まゆり『オカリンの力になりたいよ・・・』
-------------------------------------------------------------------------------------------−−−−−−−−−‐‐
岡部「10月14日のアメリカ・・・!?」
鈴羽「正確には、10月14日から15日のアメリカだけどね」
鈴羽「おじさんはあの日をきっかけに、ラボメンをだんだん信じられなくなって、溝が出来てしまった。すごく私のこともかわいがってくれたんだよ?でもある日突然、ラボを解散して飛び出した」
鈴羽「おじさんはある研究機関と政治家を抱き込んで、タイムマシン製作をもちかけた。一方でラウンダーを募って自分の軍団を完成させると、研究者と政治家を全員殺した」
鈴羽「おじさんは刃向かう者、出し抜こうとする者を利用するだけ利用して全部殺した。権力者を裏で動かし、世界情勢を意のままにしようとした。そんなおじさんをとめるために父さんと紅莉栖さんはタイムマシンを開発したんだ」
37 :
1
:2018/06/04(月) 18:49:27.52 ID:oMtdo1oj0
鈴羽「そしてあたしが過去へ跳んだ。もう完全にリーディングシュタイナーを発現してた二人は、原因もわかっていたんだ」
岡部「やはりあいつらは・・・すべてを思い出すのか・・・?」
鈴羽「そうならないようにするんだよ!オカリンおじさん!!」
鈴羽が俺の手をぎゅっと握った。
鈴羽「みんなが何も思い出さなければオカリンおじさんがつらい思いをすることは無い!つらい思いをしなければラボは解散しない!そうすればディストピアは形成されないの!おねがいおじさん・・・もうみんなのあんな顔、見たくないんだよ」
38 :
1
:2018/06/04(月) 19:01:05.31 ID:oMtdo1oj0
岡部「ふ、フゥーーハッハッハ!!この鳳凰院きょう・・・」
鈴羽「それ」
鈴羽「未来のおじさんは、鳳凰院凶真として崇められてる」
岡部「・・・鈴羽よ。そんなものは紛い物にすぎん」
岡部「本物の孤独の科学者、狂気のメァァッドサイエンティストはこの俺一人!!」
岡部「この鳳凰院凶真がお前の未来を救ってやる!!」
紅莉栖の時とは違う。
あの時は未来の俺が過去の俺を助けてくれたが、
岡部「作戦名はオペレーション・スクルド・・・」
未来の俺が立ちふさがるというのなら―――この俺がその野望を、打ち砕くッ!!
岡部「リバァァーースだッ!!!!!」
真実のSG世界線へ跳ぶため――
仲間と、もう一度心から笑いあうため――
運命を、変えてみせる。
39 :
1
:2018/06/04(月) 19:04:00.68 ID:oMtdo1oj0
10月14日、アメリカ――
鈴羽「おじさん! まずは原因を掴むために、色々なところを調べてみて」
おう
岡部「うむ」
鈴羽「じゃ、また例の場所で!」
岡部「ああ。幸運を祈る。お互いに、な」
鈴羽が行ったあと、俺は雷ネットの会場を目指した。
ここからならばそう遠くは無い。時間もまだある。
そうわかっていても、俺の歩調は速かった。
40 :
1
:2018/06/04(月) 19:10:21.50 ID:oMtdo1oj0
五分前、タイムマシン移動中――
鈴羽『椎名まゆりは、岡部倫太郎のことを深く愛していたの。どういうかたちであれ、ね』
鈴羽『なのに唐突に岡部倫太郎に恋人ができた。その発表を聞いて、誰よりも傷ついたのは椎名まゆりだよ』
岡部『そういえばあいつ、妙に口数が少なかったな……それに』
まゆり《話してよ、オカリン!》
まゆり《オカリンの力に、なりたいよ……》
岡部『・・・・・・』
鈴羽『椎名まゆりは、必死だったんだと思う。おじさんがとられちゃうって思ったんだと思う』
鈴羽『でもそんな感情が、椎名まゆりに強い強いリーディングシュタイナーを発現させたんだ』
41 :
1
:2018/06/04(月) 19:11:56.14 ID:oMtdo1oj0
鈴羽『おじさんがとられてしまう。でも自分には紅莉栖さんに勝るものは何一つない。そう思った椎名まゆりが無意識に引き出したもの……それが』
岡部『別の世界線の、記憶……』
鈴羽『そう。そしてリーディングシュタイナーは身近にいる者と共鳴することも、未来で紅莉栖さんと父さんが研究済み』
岡部『共鳴……?』
鈴羽は頷いて、リュックから紙とペンを取り出した。
鈴羽『まずタイムトラベルをしたことのない一般人でも、リーディングシュタイナーは持っている。生物は多数の世界線があって初めて成り立てるもの。ここまではいいよね?』
岡部『ああ』
鈴羽『リーディングシュタイナーは、友達とか、恋人とか親とか、身近にいる者に共鳴して強さを変えるんだ。強ければ強いほど別の世界線の記憶が色濃く蘇り、弱ければ何も思い出さない』
岡部『なるほど。つまり元々リーディングシュタイナーが弱い一般人がいくら交わっても、別の世界線の記憶は引き出せないということか』
鈴羽『そういうこと。でも稀に、感情が激しく動いたときに別の世界線の記憶が蘇る人がいるんだ。一瞬よぎる程度だから問題はないけど』
42 :
1
:2018/06/04(月) 19:12:47.08 ID:oMtdo1oj0
岡部『それが、まゆりか』
鈴羽は黙って頷いた。
鈴羽『それだけじゃないよ。一般人より強力なリーディングシュタイナーを持ったオカリンおじさんが、常にそばにいたんだよ?ラボメン全員に言えることだけど、椎名まゆりは特にそうじゃないかな』
そうだ。α世界線でも、フェイリスとルカ子は記憶を取り戻しかけていたことがあった。
だが俺は二人に毎日会っていた訳ではない。
それに比べて、まゆりは――
43 :
1
:2018/06/04(月) 19:13:19.34 ID:oMtdo1oj0
鈴羽『椎名まゆりが元々記憶を引き出しやすい体質であったこと。強いリーディングシュタイナーを持つおじさんが常にそばにいたこと。この二つが、おじさんの発表によってお互いに強く作用したんだ』
鈴羽『おじさんだけならラボメンのみんなも、別の世界線の記憶は《夢かな》くらいで済むんだけど、椎名まゆりのリーディングシュタイナーは強力すぎる』
鈴羽『まずは父さん、そしてフェイリスさん、るかさん、今は桐生さんにも発現しているかもしれないよ』
岡部『それは夢ではなく、経験として、か』
鈴羽『…………うん』
44 :
1
:2018/06/04(月) 19:27:23.02 ID:oMtdo1oj0
俺にはわかる。
リーディングシュタイナーは、決して素晴らしい能力などではない。
仲間とどんなに楽しい、苦しい経験を共にしたとしても、世界線が変わってしまえば、それはもう分かち合えない。
厳密にいえば目の前にいるその人は、確かにその人だが、俺が愛した、俺を愛してくれた人ではないのだ。
そんな孤独。
それがリーディングシュタイナー。
このままいけば最悪の結末、ラボメン全員のリーディングシュタイナーの発現が現実になってしまうということだ。
未来の俺はそれを経験した。
狂うのも、頷ける。
止めなければならない。
あんな思いをするのは、俺だけで充分だ・・・!
45 :
1
:2018/06/04(月) 19:36:00.62 ID:oMtdo1oj0
雷ネットの会場につくと、ちょうど鈴羽とその母、阿万音由季が車に乗ったところだった。
奴は奴で、何かを掴もうとしているのだろう。
木陰に隠れて見ていると、すぐに焦った過去の俺がタクシーを捕まえその後を追う。
まてよ。
鈴羽が俺が紅莉栖にした告白を阻止すれば、まゆりがリーディングシュタイナーを発現することは無いのではないか。
そうだ!
岡部「告白を・・・、阻止すれば」
紅莉栖に告白をするとまゆりが傷つき、ディストピアが形成されるということは、
俺は永遠に、紅莉栖に好きだと言えないではないか。
46 :
1
:2018/06/04(月) 19:36:27.59 ID:oMtdo1oj0
紅莉栖に、厳密には誰かに好きだと伝えればまゆりが傷ついてリーディングシュタイナーを発現し、別世界線の記憶を持ったラボメンたちに俺はやりきれなくなり、ディストピアを形成する。
紅莉栖もまゆりも選ばなければ、まゆりが孤独を感じてリーディングシュタイナーを発現し、俺がディストピアを形成するだろう。
まゆりがリーディングシュタイナーを発現しても俺がラボにいなければ良いのだが、きっとラボメンでない俺はロクな末路を辿らない。
やりきれなくなっている点では同じなので、結局ディストピアを形成する結果になるかもしれない。
つまり俺は、まゆりのそばに居続けるしかないということになる。
岡部「なんだよ、それ……」
47 :
1
:2018/06/04(月) 19:38:48.73 ID:oMtdo1oj0
二時間後――――
鈴羽「あ、オカリンおじさん!こっちだよ!」
岡部「…………」
鈴羽「どうだった!?何か、」
岡部「鈴羽」
鈴羽「え?何?」
岡部「…………」
鈴羽「おじさん、どうしたの?」
岡部「帰るぞ」
鈴羽「おじさん……?」
岡部「…………」
48 :
1
:2018/06/04(月) 19:39:51.82 ID:oMtdo1oj0
タイムマシン内――――
鈴羽「…………」
岡部「…………」
鈴羽「…………っ」
岡部「俺は」
鈴羽「!」
岡部「何もしなかった。ただぼーっとして、二時間を浪費した」
口端から、胸糞悪い自嘲の笑みがこぼれる。
岡部「ここに来るときもゆっくりと、ダラダラと歩いてきた。バイクにひかれそうになったぞ。フフ」
鈴羽「…………」
岡部「分かったんだ。世界は、神様は俺のことが嫌いなんだ。だからこんなに苦しめるんだ。まゆりも、紅莉栖も、俺の大切な人なのに――――やっと助けられたのに――――愛そうとすると、ッ…………」
岡部「ディストピアを創った俺の気持ちも、今なら分かる。愛したい人を、愛すことすら許されない。愛せば世界が終わる。意味が分からない…………意味が分からないッ!!」
49 :
1
:2018/06/04(月) 19:40:32.33 ID:oMtdo1oj0
岡部「何でだ!何でだよ!!紅莉栖を好きになっちゃいけないのかよ!!俺は絶対に、まゆりを愛し続けなければならないっていうのかよ!!まゆりが嫌いな訳じゃない……まゆりを嫌いな訳がない!!けど俺は、ずっと支えてくれた!……一緒に、……戦ってくれた……!牧瀬紅莉栖が、好きなんだよ!!何でそれがダメなんだよォ!!!」
岡部「何で俺なんだ……何でまゆりなんだ!何で紅莉栖なんだ!!他の誰かじゃダメだったのか!!何で俺たちなんだよ!!…………くそ。電話レンジなんか作らなければ良かった。牧瀬紅莉栖とも出会わなければ良かった!!」
鈴羽「!!!!」
岡部「ラボなんか、作らなければ――――!!」
狭い空間の中に、甲高い音が鳴り響いた。
50 :
1
:2018/06/04(月) 19:41:09.13 ID:oMtdo1oj0
岡部「――――ッ」
鈴羽「岡部倫太郎ッ!!!!」
岡部「ぐ……」
鈴羽は泣いていた。
溢れる涙はぬぐわれることもなく、ただ頬を伝って床に落ちた。
鈴羽「キミはっ……キミは思ってるはずない!!そんなこと絶対思ってるはずないんだ!!牧瀬紅莉栖と出会わなければなんて……ラボを作らなければなんて!!」
岡部「……いや、こんなことになるくらいならば」
鈴羽「だって二人は!!あんなに幸せそうだったもん!!」
岡部「!?」
鈴羽「おじさんはいつも紅莉栖さんを変なあだ名で呼んで!紅莉栖さんが怒って!それでぷいって顔を背けたら……少し笑って優しく『紅莉栖』って声を、かけて……ッ」
岡部「あ……」
51 :
1
:2018/06/04(月) 19:41:42.90 ID:oMtdo1oj0
鈴羽「あたしはその時凄く小さかったけど、その記憶だけにははっきり覚えてる……父さんと母さんが笑ってて、周りにも人がいたんだ。多分ラボメンの皆だと思う」
岡部「ラボ、メン……」
鈴羽「でもだんだん、おかしくなっていったんだ……、だんだん、おかしく、なっていった」
鈴羽「ちがうよおじさん……こんなの、おじさんが望んだ未来じゃない。おじさんはディストピアを作るためなんかに、世界線を行き来してきたんじゃない」
鈴羽「みんなが笑って…………」
岡部「鈴羽……」
それから沈黙の時間が、何分か流れた。
鈴羽が鼻をすする音を聞くたびに、俺の中の頑なになっていた何かが、熱く溶けていく気がした。
52 :
1
:2018/06/04(月) 19:42:18.26 ID:oMtdo1oj0
鈴羽「きっとあるはずなんだ」
鈴羽は勇敢にも、沈黙を自ら破った。
鈴羽「SG世界線は絶対ある。…………運命は、受け入れるものじゃない。自分の手で変えていくもの。それはおじさんが、誰よりも分かってるはずだよ」
岡部「俺は、」
鈴羽「おじさんは、一人じゃない。あたしがいる。あたしも一緒に、運命に立ち向かう。だから一人じゃない」
岡部「そうだ鈴羽……!俺は、諦めない!!」
53 :
1
:2018/06/04(月) 19:42:51.89 ID:oMtdo1oj0
岡部「必ずあるはずだ!紅莉栖を愛したまま、世界を継続させる方法が!」
岡部「諦めてはいけないのだ。何度も、やってきたはずだ!未来を変えるのに一番大切なことは諦めないことだというのに……俺は絶望に打ちのめされていた!」
岡部「しかぁーし!この鳳凰院凶真はその名のごとく何度でも蘇る、不死鳥のような心を持つ狂気のマッド・サイエンティストどぅあ!!機関に打ち勝つためにはこれしきのことなど……」
鈴羽「……へへっ」
鈴羽は涙を袖で拭って、悪戯っぽく微笑んだ。
鈴羽「そうだよおじさん、その意気だよ!絶対成功させるよ!オペレーション・スコンブ・リバース!」
岡部「スクルドだ!……ああ、俺に任せてお……いや」
岡部「共に運命に打ち勝つぞ!!鈴羽!!」
鈴羽「うん!!」
54 :
1
:2018/06/04(月) 19:44:18.92 ID:oMtdo1oj0
鈴羽「でも具体的にはどうすればいいのかな……」
岡部「ふむ……鈴羽よ」
鈴羽「何?オカリンおじさん」
岡部「共に戦うとは言ったものの、やはり俺たち二人では限界があると思うのだが」
鈴羽「えー?ひどいなぁ……って言いたいところだけど確かにそうだね」
岡部「残念ながらお前と俺の脳味噌では打開策に限界がある。ならば……我がラボのブレインを使うしかあるまい?」
鈴羽「……父さんに全てを話すってこと?」
岡部「そうだ。こうなった以上なりふり構ってられんからな。おそらくダルも、リーディングシュタイナーの発動によって深刻な状態が続いているはずだ」
――――それでも未来の俺は、言わなかったのか。
仲間が記憶に侵され、苦しんでいることを知っていながら。
いや。
奴には奴なりの配慮があったのだろう。
記憶を真実として理解させたらもっと仲間を苦しめることになる、と。
だがそれでは――――、未来は変わらないんだ。
55 :
1
:2018/06/04(月) 19:45:25.38 ID:oMtdo1oj0
現在――――
鈴羽「じゃあおじさん、あたしはもう一度確実に未来にいけるように、なんとかタイムマシンを弄くってみるよ。おじさんはラボで父さん、に……」
岡部「……不安か?」
鈴羽「うん、……ちょっとだけ」
岡部「鈴羽。お前はお前の、やるべきことをしろ。俺は俺のやるべきことをやる」
鈴羽「うん……」
岡部「……しっかりな!」
俺は景気づけにぽん、と鈴羽の肩を叩いてやった。
鈴羽「オーキードーキー!任せてよ!」
岡部「よし。では行ってくる。終わったらラボへ来るがいい。ドクペをたらふく飲ませてやろう」
鈴羽「あははっ、楽しみにしてるよ!」
56 :
1
:2018/06/04(月) 19:46:16.89 ID:oMtdo1oj0
ラボ――――
ドアを開けると、キーボードのカタカタという音が聞こえた。
岡部「ダル」
ダル「お、オカリンじゃん」
岡部「なんだか随分久しぶりではないか?」
ダル「あ〜、実家に溜まったエロゲ消化してた。嫁が多すぎるのも困りものだお!」
岡部「それで大学も来てなかったのか。まったく……仕方のない奴だ」
ダル「フヒヒ、サーセン」
岡部「ダル」
ダル「ん?なんぞ?オカリン」
岡部「嘘だろ」
ダル「へ……?」
57 :
1
:2018/06/04(月) 19:46:45.06 ID:oMtdo1oj0
ダル「う、嘘ってなんだお!?言いがかりにも程がある件について!謝罪と賠償を要求する!」
岡部「ダル……お前は俺に聞きたいことがあるはずだ。俺に話して、確かめたいことがあるはずだ」
ダル「この間のことなら、もういいお……」
岡部「本当にいいのか?」
ダル「う……」
岡部「SERNにハッキングしたこと……タイムマシンが出来たこと…………まゆりが死んだこと」
ダル「やめ、ろよ……」
岡部「お前の娘鈴羽!!そしてその、末路を……!!」
ダル「やめろよぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ダルは俺の胸ぐらを掴んで勢い良く押し上げた。
58 :
1
:2018/06/04(月) 19:49:27.92 ID:oMtdo1oj0
ダル「どうして思い出させるんだ!!オカリンが夢だって言ったから夢だ夢だって思おうとしてるのにっ!!そんなことあるはずがない!!全部悪い夢なんだって思おうとしてるのに」
ダル「な、なのに…………なのに…………」
ダル「……日に日に、鮮明になっていくんだ。そのせいで皆との関係が、ぎこちなくなって……」
岡部「ダル。すまなかった。全て俺の責任だ。この間お前を殴ったことも全て……本当にすまなかった」
ダル「…………」
ダルは俺の胸元から手を離した。
ダル「言ってやれなかったんだ……」
岡部「……?」
ダル「……鈴羽が娘だって分かって、びっくりして、気が動転してて……。親らしいことも言えなくて……抱きしめてやる手も不器用で」
ダル「それでやっと思い付いたのが、『がんばれ』って言葉だったんだ。でもそれが言えたのは…………タイムマシンが言ってしまった後で……」
岡部「ダル……」
ダル「いって、……やれなかったんだ……!『がんばれ』って……言葉すら……!!」
ダル「そのあと手紙がきて……鈴、羽は、失敗した、失敗した、って、うぐッ、うっ」
59 :
1
:2018/06/04(月) 19:55:25.88 ID:oMtdo1oj0
岡部「ダル、大丈夫だ」
岡部「この世界線の鈴羽は、自殺などしていない」
岡部「細身でアクティブないい奴だぞ」
ダル「…………」
ダル「……細身は余計だろ、常考…………」
そのあと俺はゆっくりと、ダルに全てを話した。
リーディングシュタイナーのこと。まゆりのこと。紅莉栖のこと。未来のこと。
ダルは鼻をすすりながら、たまに頷いて話を促してくれた。
最後にお前の力が必要なんだ、と言うと、ダルは黙って頷き、明日は必ず来る、今日は帰ると言って立ち上がった。
ダル「ありがとな、オカリン。話してくれて」
うつむきがちで、顔は見えなかった。
60 :
1
:2018/06/04(月) 19:56:22.34 ID:oMtdo1oj0
休憩
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/04(月) 21:43:44.85 ID:prtau7sPo
いいね
支援
62 :
1
:2018/06/04(月) 22:08:16.50 ID:oMtdo1oj0
再開
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/04(月) 22:12:25.78 ID:o2NRFOXcO
面白いんだけど、メール欄にはちゃんとsagaと入力してほしい
64 :
1
:2018/06/04(月) 22:15:03.10 ID:oMtdo1oj0
ダルがラボを出た数分後、鈴羽が息を切らせて飛び込んできた。
鈴羽「おっまたせーオカリンおじさん!!ごめんねー、充電用の携帯プラグつないでたら遅く……どうしたの?」
岡部「……ん?」
鈴羽「おじさん、なんだか凄く嬉しそうな顔してる」
岡部「……鈴羽よ」
鈴羽「なに?」
岡部「……なんでもない」
鈴羽「なんだよ気になるなぁー。教えてよ」
岡部「内緒だ。フフ……ではドクペでもごちそうしようか」
鈴羽「ほんと? 飲んだことないから楽しみだよ! おいしいの?」
岡部「もちろんだ」
夜は静かに更けていった。
65 :
1
:2018/06/04(月) 22:15:42.12 ID:oMtdo1oj0
次の日――――
ダル「おっはー!ダルしぃだお☆」
岡部「やめろ気色悪い。そういえばダル、まゆりと最近会ったか?」
ダル「まったく。オカリンは?」
岡部「あの日から会ってない。一応携帯に連絡をいれたのだがな……。返事は、無しだ」
ダル「ま、しょうがないよな。むしろ、アメリカの一件の後でもラボに来るまゆ氏の健気さに驚き」
岡部「家にも行ってみたが友達の家に泊まりに行っているらしく、会うことはできなかった……」
ダル「避けられてるんですねわかります」
岡部「…………」
ダル「ちょ、マジでへこむなオカリン。悪かったお」
66 :
1
:2018/06/04(月) 22:16:14.44 ID:oMtdo1oj0
岡部「リーディングシュタイナーの件は話したよな?」
ダル「それなんだけど……まゆ氏は今、誰よりも強力なリーディングシュタイナーを発現してるんよね?」
岡部「ああ、そうだ」
ダル「それって凄くキツいことなんじゃないかな。僕ですら夜はなかなか眠れなかったくらいだし」
岡部「だから心配なのだ……。まゆりはラボメンの中で誰よりも残酷な経験をしている。精神が崩壊しても、おかしくはない……」
ダル「そだね。早いとこ作戦たてて、まゆ氏を救ってあげないと」
67 :
1
:2018/06/04(月) 22:25:10.72 ID:oMtdo1oj0
ダル「てか、僕たちだけなん?鈴羽は?」
岡部「鈴羽なら朝早くに怪訝な顔をして出ていったぞ?なにやら小さな機械を眺めていたな」
ダル「…………オカリン」
岡部「どうしたダル。いつになく顔が険しいぞ?」
ダル「昨夜は、ラボに泊まったん?」
岡部「?そうだが」
ダル「……鈴羽と一緒に、寝たのか…………?」
岡部「ッぐわっ我が混沌より誘われし虚無を封印した右腕がーああーーあッ早く逃げろダルッ奴が…奴がk」
ダル「YESととるぜッ……!」
岡部「おわったったった!!待て!待て!」
68 :
1
:2018/06/04(月) 22:28:30.34 ID:oMtdo1oj0
岡部「お、お前、そんなことあるわけないだろうが!!俺には紅莉栖がいるんだぞ!?」
ダル「ならば勿論、二人の部屋は別々だったんだよな?」
岡部「…………うん」
ダル「…………貴様」
岡部「いやっ、待てダルッ!ほんと、ほんとだって!!」
ダル「で、本当は?」
岡部「部屋はーいっしょでしたハイ」
ダル「光り唸れ、僕の右腕……!!」
岡部「ちょっ…待て!!話を聞け!!」
69 :
1
:2018/06/04(月) 22:29:18.32 ID:oMtdo1oj0
岡部「落ちつけダル!部屋が一緒だったのは理由があるのだ!」
ダル「聞く余地はない」
岡部「聞けよ!!ていうかお前誰だよ!!キャラ変わりすぎだろ!」
ダル「人の娘に手を出したなら、それ相応の覚悟はあるんだろうなぁ……?」
岡部「だから出しとらんって言ってるだろうが!カーム!カームダウゥーン!ダルゥー!」
ダル「……さっさと話せ」
岡部「よ、よし……落ち着いて聞け?」
70 :
1
:2018/06/04(月) 22:31:38.67 ID:oMtdo1oj0
岡部「まず、最初は部屋が別々だった」
ダル「うん」
岡部「一時間くらいしてうとうとしてると、布団を持った鈴羽が入ってきた」
ダル「うん」
岡部「そして『あっはは、ごめんオカリンおじさん、なんか寂しくなっちゃって……横で寝てもいいkへぶぅっ!!」
ダル「オラァァァァァァァ!!!!」
岡部「ちょっ待てダルゥ!!布団くっつけて寝ただけだから!同じ布団ではないからセーhぐふぉゥっ!!」
ダル「ドラァァァァァァ!!!」
71 :
1
:2018/06/04(月) 22:35:19.45 ID:oMtdo1oj0
ダル「オカリン……アンタってやつぁ……平気でやってのけるねぇ」
岡部「そこに痺れるか?憧れるkうぶぅッ」
ダル「ま、手を出してないならいいお。鈴羽もそんな未来じゃ寂しかったんだろうし」
岡部「いいなら殴るなよ……」
ダル「なんぞ?」
岡部「いえ……なんでもないです」
ダル「でもそっか、鈴羽はいないのか。会って話をしてみたかったんだけど」
岡部「作戦を練るまでまだ時間はある。期間内に会うことはできるだろう」
ダル「どれくらいで跳ぶん?タイムマシンで」
72 :
1
:2018/06/04(月) 22:37:48.76 ID:oMtdo1oj0
岡部「こちらでいくら時間が経とうと、タイムマシンで跳ぶ日時は変わらない。よって少し時間がかかってでも、完璧な作戦を練っていくのが望ましいだろう」
ダル「要するに具体的な期限は無いってことでおk?」
岡部「そういうことだ。それに、跳ぶ前に一度、まゆりに会っておきたいしな」
ダル「そか。でもやっぱ牧瀬氏必要じゃね?あの子がいたらかなり違うと思われ」
岡部「紅莉栖ならばもう呼んである。昨日ラボに来る途中に電話した。明日には着くだろう」
ダル「そいえば、オカリンって牧瀬氏のどのへんを好きになったん?」
岡部「またその話か」
73 :
1
:2018/06/04(月) 22:38:59.21 ID:oMtdo1oj0
ダル「今回は単純な好奇心だお」
岡部「そうだな……やはり俺が苦しんでいる時に共に戦ってくれたというのは大きい」
ダル「弱ってる時に優しくされたら好きになっちゃう!ってやつですね。オカリンマジ乙女」
岡部「やかましい」
ダル「じゃあ、もしその経験が無かったら好きになってなかったん?」
岡部「ん?むぅ……どうだろうな」
ダル「外見の話をしようじゃないか、オカリン……」
岡部「……お前なんだかんだでそういう話好きだよな」
ダル「おにゃのこが気になるお年頃だお☆」
岡部「キモい」
74 :
1
:2018/06/04(月) 22:52:36.87 ID:oMtdo1oj0
岡部「逆に聞くが、お前は気になる人はいないのか?ダルよ」
ダル「嫁ならたくさんいるが何か?」
岡部「三次元の話だ」
ダル「ん〜……あんまりラボメンの女の子をそういう眼で見たことないからなぁ」
岡部「それも凄いな。あれだけHENTAI発言するくせに……あ、フェイリスはど」
ダル「フェイリスたんはフェイリスたんっすなわち神!!天使!!悪魔!!そういう対象として見ることがもうおこがましい件!! ああでももしひとつ望みがかなうのならあの美しいおみあしで顔を踏んでもらえたら……う、ううううヴゥぅぅあああああああああああ!!!!!!!高まって!!!!!!キタ!!!!!!!!!!!!!」
岡部(……鈴羽がいなくてよかった)
75 :
1
:2018/06/04(月) 22:53:53.76 ID:oMtdo1oj0
秋葉原某所――――
鈴羽(タイムマシンは充電がもうすぐたまる……明日にはもう跳べる状態に戻ってるはず)
鈴羽(それはもういいとして。問題はこれ)ゴソ
鈴羽(過去で未来人の数を計測する、父さんが開発した未来ガジェット)
鈴羽(これに表示される赤く点滅するマークは、この世界線における未来人の数を指すんだけど)
鈴羽(点滅するマークは全部で5つ。1つはあたしとして、おそらく残りは全てラウンダー)
鈴羽(ラウンダーの反応が4つ……)
鈴羽「おかしいよね、これ……」
76 :
1
:2018/06/04(月) 22:54:53.93 ID:oMtdo1oj0
鈴羽(昨日おじさんを連れ出したときの反応は6つ。バイクに乗った奴も含めてラウンダーは5人だった)
鈴羽(でも今日は、5つに減ってる。これって)
鈴羽「あっちゃ〜……バイクに乗ってた奴、死んじゃったのかな……」
鈴羽(い、いやいや!そんなわけないよ、加減はしたはず!)
鈴羽(でももしかして打ち所が悪かったりして……)
鈴羽(…………いやでも、死んでも反応は消えないって言ってたから違うか)
鈴羽「だとしたら…………」
77 :
1
:2018/06/04(月) 22:55:32.53 ID:oMtdo1oj0
ラボ――――
ダル「電話誰だったん?」
岡部「鈴羽からだ。今日は戻れないと言っていた」
ダル「残念だお。まぁ明日会えるか」
岡部「というかダル、さっきからうるさいのはお前の腹の音か?」
ダル「僕のお腹もフェイリスたんに会いたくなったみたいだね」
岡部「つっこまんぞ。では久しぶりにメイクイーンにいくとするか」
岡部「フェイリスも俺に会いたくなってきた頃だろうしな!!フゥーハッハッハッハ!!!」
ダル「あるあ……ねーよ」
78 :
1
:2018/06/04(月) 22:56:21.40 ID:oMtdo1oj0
メイクイーン――――
ダル「――フェイリスたんが休み!!?」
メイド「そうなんです。まゆりちゃんも休みで、もう困っちゃって」
岡部「ほう、珍しいな。あのフェイリスが休みとは」
ダル「オカリン。帰ろうぜ」
岡部「はぁぁ!?お前本当にフェイリス以外眼中にないな!!」
ダル「フェイリスたんの〈眼を見て混ぜ混ぜ〉がしてもらえないなら生きてる意味ねーお」
岡部「メイド喫茶の客の鑑だな。だが帰るのは許さん。俺は腹が減って仕方がないのだ」
ダル「わりとメイド喫茶が好きな件」
岡部「ち、違うわ!!」
79 :
1
:2018/06/04(月) 22:56:57.63 ID:oMtdo1oj0
ダル「フェイリスたん、なんかあったんかなー」
岡部「潔く諦めろ」
ダル「いやいや良く考えてみ、オカリン?あのフェイリスたんがメイクイーンを欠勤してるのだぜ?」
ダル「フェイリスたんはメイドであると同時にこの店のオーナー。彼女がどれだけこの店を大切にしてるかはオカリンも知ってるっしょ?」
岡部「まぁな……」
ダル「そんなフェイリスたんが休み、おまけにまゆ氏も休み……何か気にならん?」
80 :
1
:2018/06/04(月) 23:05:35.81 ID:oMtdo1oj0
確かに。
フェイリスは勿論、まゆりがバイトを休むことなど今まで無かったはずだ。
岡部「言われてみれば……」
ダル「だろ?まゆ氏は友達のところに泊まってるって言ってたけど、それもしかしてフェイリスたんのところじゃね?」
岡部「そうか……!ならば早く」
立ち上がって店を出ようとすると、ダルは後ろから俺の腕を引っ張った。
ダル「落ち着けってオカリン。まゆ氏が今ヤバい状態なら、ふとした言葉で僕たちみたいに喧嘩になるかもしれんだろ。取り返しつかなくなるかもだぜ」
岡部「……ではどうすればいいのだ」
俺はダルの促すままに、椅子に座り直した。
ダル「……今のまゆ氏の様子が分かれば、下手なこと言う可能性は下がると思われ。誰かいないかな?まゆ氏の今の様子わかる人」
岡部「今の……か」
81 :
1
:2018/06/04(月) 23:08:49.92 ID:oMtdo1oj0
今の様子……普段のまゆりは……
学校に行っている!
岡部「よし。ダル」
ダルを見る。こいつもわかったみたいだ。
ダル「オッケー。柳林神社に行くんだね?」
岡部「ああ、まゆりの様子を知る必要がある。同じクラスのルカ子ならば完全とはいわずとも、少しは……いや、どうだろうな。分からんが」
ダル「でも行って損はないと思うお。まゆ氏にいきなり話をするのは危険と思われ」
岡部「そうだな。それはそうと会計の話だが」
ダルの右肩がぴくりと上がった。
82 :
1
:2018/06/04(月) 23:09:31.33 ID:oMtdo1oj0
岡部「……」
ダル「…………オカリン」
岡部「…………ダルよ」
岡部・ダル「「ゴチ」」
岡部「むぁぁぁてぇぇこのピザオタがァァ!!この間の支払いは俺が持ったのだから次はお前の番だろうが!」
ダル「こまけぇこたぁいいんだよ!」
岡部「良くないわ!我が右腕よ……主に逆らうというのか!?」
ダル「母さんが病気で……莫大な治療費が必要なんです!!だからここは……」
岡部「本当は?」
ダル「エロゲ最高です」
岡部「またか!!」
83 :
1
:2018/06/04(月) 23:10:28.85 ID:oMtdo1oj0
岡部「無理だ。今日は無ー理ーだ」
ダル「いやマジで財布に金が入ってない件」
岡部「本気かお前……なのにそんなにでかいハンバーグ食ったのか」
ダル「むしゃくしゃしてやった。反省はしている。後悔はしていない」
岡部「はぁー。……ドクペ2本。俺と、紅莉栖の分」
ダル「合点承知の助!」
俺はダルの手に、千円札を叩きつけた。
84 :
1
:2018/06/04(月) 23:55:22.40 ID:oMtdo1oj0
柳森神社――――
るか「……あ、おか、ええと、……凶真さんっ。あ、橋田さんも」
ダル「そう。いつだって僕は二番目の男なんだお」
岡部「フゥーハッハッハッハ!!!ルゥカ子よ、修行ははかどっているか!!?五月雨は数日所有者が使用しない、ただそれのみで清心斬魔翌翌翌流の呪われし力を解放してしまう恐ろしき妖刀なのだ!!さぁぁー今すぐに持ってこいルカ子よ、今日の修行を始めるぞォォ!!」
るか「は、はい!」
ダル「いきなりとばすねーオカリン」
ダル(まぁでもいいか)
ダル(色々ストレス溜まってたみたいだし……僕は実際に体験したわけじゃないから分からないけど)
ダル(オカリンの性格からして絶対僕には見せない……。でもきっと、想像もつかないほど辛い目に合ってきたんだ)
ダル(そんなオカリンが僕の力が必要だと言った)
ダル(僕はもう逃げない。怯えない。オカリンの力になってみせる)
ダル(最高の未来のために。――――鈴羽のために。)
るか「いち、にぃ、さん……」
岡部「前のめりになっているぞルカ子!もっと腰を入れるのだ!!」
岡部「ダァルよーお前もルカ子を見習いたまには鍛錬にはげんだらどう、だ」
ダル「[
ピザ
]のケツの重さなめんじゃねーお。オカリンもたまには振ればいいじゃん」
岡部「おっ、俺は妖刀の力をすでに最大に引き出しているからだな」
るか「凶真さんが振っているところ、ぼく、見たいです」
岡部「なっ」
85 :
1
:2018/06/05(火) 00:02:24.65 ID:pSJ8SQZq0
岡部「だはぁー! だはぁーっお、俺だっ我が弟子と右腕が結託して俺に苦難を強いてく…何ィ!?機関の催眠電波が町中にッ」
ダル「まだ十回も振ってない件」
るか「凶真さん、がんばってください!」
岡部「そういうわけで、俺は町を救わなければならない……ではさらばだ」
ダル「どこいくんだおオカリン。本題忘れてるっしょ」
岡部「……あ」
86 :
1
:2018/06/05(火) 00:03:03.46 ID:pSJ8SQZq0
るか「まゆりちゃん……ですか?」
岡部「ああ。まゆりは今、学校でどんな様子なのか教えてくれ」
できる限り優しい口調でそう言うと、ルカ子は目線を反らし、口をつぐんだ。
岡部「頼む、ルカ子」
るか「……でも岡部さん、いつもまゆりちゃんといっしょに……」
岡部「俺は今、とある事情によりまゆりと接触することができん」
るか「…………」
岡部「頼む、ルカ子。現時点でまゆりの様子を聞くことが出来るのは、お前だけなんだ。まゆりの学校での様子を、教えてくれ……」
ダル「僕からも頼むお。ルカ氏」
るか「岡部さん……橋田さん……あ、あの」
るか「まゆりちゃん、どうしちゃったんですか……?」
87 :
1
:2018/06/05(火) 00:03:40.07 ID:pSJ8SQZq0
岡部「…………」
俺は迷った。
今のまゆりについて話すということは、全ての事情をルカ子に話すということになる。
ルカ子は、ラボメン。記憶も取り戻しかかっている。
だがこれ以上、人を巻き込んで良いものか――――。
次の言葉を探していると、意外にもルカ子の方が先に口を開いた。
るか「まゆりちゃんは今、学校には来ていません」
岡部「やはり、そうか……」
ダル「やっぱまゆ氏はフェイリスたんのところに……」
るか「でも」
岡部「?」
るか「最後に学校に来た日は、その、……女の子にこんなこと言っちゃいけないんです……でも」
るか「ひどい、顔でした」
88 :
1
:2018/06/05(火) 00:04:08.46 ID:pSJ8SQZq0
秋葉原某所――――
鈴羽(あたしの勘が当たってなければいいんだけど……)
鈴羽(でも、もし当たってるとしたらマズイ)
鈴羽(とりあえず今は様子を見ながら、ラボと距離を置く)
鈴羽(それでいてラボに何かが起こった時は迅速に駆けつけることができる場所……このへんかな)
鈴羽(人気もないし身を潜めるには最適…………ッ)
鈴羽(誰かくるっ!!)
89 :
1
:2018/06/05(火) 00:05:37.58 ID:pSJ8SQZq0
鈴羽(一体こんなところ、誰が…………あっ)
鈴羽(るみ姉さんだ!)
鈴羽(若いなァ〜この頃からこんな恰好してたんだ。……ん?)
鈴羽(なんか、すごく浮かない顔してる……何かあったのかな)
鈴羽(それよりも!彼女なら椎名まゆりのこと、何か知ってるかもしれないよね!)
鈴羽(おじさんは椎名まゆりがどこにいるかも知らないだろうし、あたしが聞いてみよう)
鈴羽「るみ姉さーん!」
90 :
1
:2018/06/05(火) 00:07:17.05 ID:pSJ8SQZq0
フェイリス「ニャッ!?何者ニャ?」
鈴羽(あちゃ、この時代では面識無くて当たり前か)
鈴羽「あたしははし……鈴羽。ラボメンだよ!」
フェイリス「キョーマのお友達かニャ?」
鈴羽「うん!」
フェイリス「じゃあ、はじめましてだニャ!メイクイーンニャンニャンのネコミミメイド、フェイリス・ニャンニャンだニャン!よろしくニャッ!」
鈴羽(ニャが多い……)
鈴羽「よろしく!ところでる…フェイリスさん、聞きたいことがあるんだけど……」
フェイリス「何かニャースズニャン?」
91 :
1
:2018/06/05(火) 00:07:55.48 ID:pSJ8SQZq0
鈴羽「椎名まゆりって、知ってるよね?」
フェイリス「…………」
フェイリス「もちろんニャ!マユシィはフェイリスの前世からの親友兼戦友なのニャ〜」
鈴羽(今、ピクッて……)
フェイリス「マユシィがどうかしたのニャ?」
鈴羽「あ、うん、今どこにいるかとかって……分かったりするかな?」
フェイリス「…………分からないニャ」
鈴羽(また……)
フェイリス「マユシィとはすっごく仲がいいけど、まだ全てを知ってるわけでは無いのニャン。お家に行ってみれば何か分かるかもしれないニャン♪」
92 :
1
:2018/06/05(火) 00:12:20.03 ID:pSJ8SQZq0
鈴羽こ(この人……何か知ってる)
鈴羽(でも追及しても、無駄か)
鈴羽「分かったよ!ありがとうフェイリスさん」
フェイリス「お役に立てなくてごめんなさいニャン!またラボに行った時は仲良くしてニャ♪」
鈴羽「もっちろん!じゃあまたね、フェイリスさん!」
フェイリス「さよならニャースズニャン!」
鈴羽「…………さて、と。」
鈴羽(もちろん、椎名まゆりの家になんて行っても意味はない)
鈴羽(フェイリスさんのあの眼……)
鈴羽(どうやら確かめる必要がありそうだね)
フェイリス「もしもし、黒木……?」
93 :
1
:2018/06/05(火) 11:22:04.83 ID:pSJ8SQZq0
再開
94 :
1
:2018/06/05(火) 11:28:40.59 ID:pSJ8SQZq0
フェイリスの家(高層マンション)――――
鈴羽「……バレてないよね、多分」
鈴羽(ここがフェイリスさん家……でっかいなー。たしか秋葉原の地主なんだっけ?セキュリティも頑丈そう)
鈴羽(どうしようかな。全部勘違いで、おじさんがもう椎名まゆりを見つけちゃってる、なんてことも……、いや!)
鈴羽「迷ったら攻める!それがあたしのモットーだよ!」
鈴羽(レッツ潜入!)
入口――――
鈴羽「と、と、と……ありゃりゃ」
黒木「…………」
鈴羽「フェイリスさんの友達なんだけど……」
黒木「申し訳ありませんが、あなたをお通しすることはできません。お帰りください」
鈴羽「なぜ?」
黒木「お嬢様の、ご命令ですので」
鈴羽「ふぅん……」
鈴羽「椎名まゆりが、ここにいるんだね?」
黒木「……お帰りください」
95 :
1
:2018/06/05(火) 11:30:11.93 ID:pSJ8SQZq0
鈴羽(居場所が分かっただけでも、良しとするか……。これ以上はおじさんに迷惑かかっちゃうし)
鈴羽(とりあえず後はおじさんに任せるとして、あたしは一旦退こう)
「……!……ッ……!!…………!……」
鈴羽「ん?」
鈴羽(なんだろ、自動ドアの後ろの方で……)
鈴羽(フェイリスさんの声……?)
フェイリス「…………めだよ……ちゃん!……そんな…………!」
黒木「?お嬢様、どうされました」
フェイリス「黒木!まゆりちゃんを…………あぁッ!」
96 :
1
:2018/06/05(火) 11:33:18.58 ID:pSJ8SQZq0
柳林神社――――
岡部「ひどい顔?まゆりがか」
るか「あっ、ち、ちがうんです!ぼ、ぼくそんなつもりじゃなくて!そういうのじゃなくて、まゆりちゃんはかわいいんですけど、あの、だからこそ余計っていうか……」
ダル「もちつけルカ氏」
岡部「ひどい顔……ひどい顔とは具体的にどういうことだ?」
るか「あ、あの…………だから、その」
―――ーーー―――ーーー―――――ーーー―――ーー――ーーーー――――――ーー―――ー‐‐―ーー―‐――‐‐ーーーー‐‐―
るか『まゆりちゃん……眼が、真っ赤で』
―――ーーー――――ーーーー――――――‐‐ーーーー‐‐―――‐ー‐―ーー――‐‐ーー‐‐―‐‐ーーー‐‐――――
鈴羽「…………!!?」
まゆり「あなた……誰?」
――――ーーーー―――ーーーー――――ーーー――――ーー‐――‐‐ーーー‐‐‐―――――ーーー――――‐‐―‐―‐ーー‐‐――
るか『何日も寝てないなんてほどじゃないくらいに…………くまもひどくて』
―――ーーーー―――――ーー―――ーーーーーー――――――‐‐ーーー‐‐‐――‐‐ーーー‐――‐ー‐――――ーーー―‐‐‐――ーー――‐‐ーーー‐‐―
鈴羽「あ、……」
まゆり「まゆしぃに、なにか用ですか?それとも」
――――ーーーー―――ーー――ー―――ーーー―――――――‐ーーー‐‐―――‐‐ーー‐‐―――‐‐ーーー‐‐‐――‐‐‐―――‐‐
るか『瞳が、瞳の中が……すごく…………すごく真っ暗だったんです』
―――ーーー――――ーーー――――ーー―――ーーー―――――ーー―――‐‐―――‐―‐‐‐ーーー‐――ーー―――‐‐
まゆり「女の子だね〜、じゃあオカリンのお友達かなぁぁぁ?ふふふふ、あはははははははは!!!!」
97 :
1
:2018/06/05(火) 11:34:44.96 ID:pSJ8SQZq0
鈴羽「あ、……あ、」
フェイリス「ダメだよまゆりちゃん!!落ち着いて!!」
まゆり「離して!オカリンは、オカリンは!まゆしぃのなの!!誰にも渡さないの!!あなたなんかのところに、行くわけないんだよ紅莉栖ちゃん!!!」
フェイリス「黒木ィ!押さえて!まゆりちゃんを、止めてぇ!!」
黒木「はっ……まゆり様、どうか落ち着いて下さいっ」
まゆり「オカリンはいつもまゆしぃに優しかったの!オカリンだけがまゆしぃのことを大切に思ってくれたの!いつだって助けようとしてくれたし、ほんとの自分を見せてくれたの!!」
まゆり「ありえないよ!!認めないよ!!紅莉栖ちゃん、私は認めない!!オカリン、いかないで!いかないで!いかないで!いかないで!!」
まゆり「オカリンを返してぇぇぇぇ!!!!!」
98 :
1
:2018/06/05(火) 11:36:23.04 ID:pSJ8SQZq0
気付いたら、あたしは駆け出していた。
後ろから椎名まゆりの叫び声が耳を突き刺したけど、決して振り返らなかった。
嫌、厭、いや。
怖い。恐い。こわい。
ようやく足を止めたのは、フェイリスさんと最初に会った元の場所に戻ってきてからだった。
鈴羽「はぁ、はぁ、はぁ」
大した距離じゃない。
鈴羽「……っ、ふう、はぁ、はぁ、」
この汗は、疲労のものじゃない。
この息切れも、疲労のものじゃ、ない。
99 :
1
:2018/06/05(火) 11:37:45.09 ID:pSJ8SQZq0
鈴羽(…………椎名まゆりを前にした瞬間)
鈴羽(頭がギュッてなって……苦しくなった)
鈴羽(きっとどこかの世界線の記憶を引き出されかけたんだ。だって……だって、)
鈴羽(色んな寂しさとか、こわさとか……申し訳なさが、頭の中に流れこんできた)
鈴羽(失敗した、失敗した、失敗した、……)
鈴羽(あたしは失敗した、失敗した、失敗した、失敗した!!)
鈴羽「やめて!!」
鈴羽「……うぅ、…………おじ、さん……」
100 :
1
:2018/06/05(火) 11:42:41.99 ID:pSJ8SQZq0
柳林神社――――
るか「ぼく、こわくって」
岡部「むぅぅ……」
ダル「予想以上に、ヤバそうだお……オカリン」
るか「それとまゆりちゃんと眼があった瞬間、急に頭が痛くなったんです……その日から変な夢…を」
岡部「……!」
眼が合った瞬間、他人の別の世界線の記憶を呼び起こそうとする。
まゆりに発現したリーディングシュタイナーの影響が、それほど強くなっているということなのだろうか……。
…………危険だ。危険すぎる。
るか「凶真さん、まゆりちゃんに何が起こってるんですか……?」
岡部「ふん。フゥーハハハハ!!!ルカ子よ、案ずる事はない。すぅぐに全てにケリを着けてみせよーう。まゆりの事も、お前の夢にもだ!」
るか「は、はい……」
岡部「んむぅ?この俺を信じられないのくぁ、我が弟子よ?」
るか「い、いえ、そんなことありません!ただちょっと心配、で……」
岡部「…………ふぅー」
俺はルカ子の頭に軽く手を置いた。
岡部「俺を信じろ。ルカ子」
るか「!……」
るか「……はい。凶真さんがおっしゃるなら……ぼく、信じます」
101 :
1
:2018/06/05(火) 11:49:11.84 ID:pSJ8SQZq0
岡部「それでいい」
頭を撫でてやると、ルカ子は眼をぎゅっと瞑って身体を緊張させた。
岡部「さて。そろそろ行くとするか。ダル」
ダル「オーキードーキー」
岡部「迷惑をかけたな、ルカ子」
るか「いえ、そんなことありません……」
岡部「今度礼でもするとしよう。鍛錬を怠るなよ?」
るか「は、はい!」
岡部「ではさらばどぅあ!!」
るか「あの、きょ、岡部さん!」
岡部「俺は鳳凰院凶真だっ」
るか「ぁ…………」
岡部「…………」
るか「…………」
岡部「…………どうかしたの、か」
るか「……い、いえ、何でも、ありません」
岡部「?そうか。ではな」
るか「はい。お気をつけて……」
るか「ぼくは、女の子じゃないから……男の子だから……」
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