【艦これ】漣「ギャルゲー的展開ktkr!」2周目

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66 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:39:49.84 ID:g29J3/ci0

『……旗色は悪くない。が、長続きしそうや。これまではな』

「……? どういう」

 俺の疑問には答えず、龍驤は通信を全体に。

『全体。レ級かヲ級、どっちかをウチに寄越せ。タイマンで殺る』

 自信と確信のある言葉。

「……無茶だろ」

『無茶なわけあるかい! ウチはいま、キラキラしとんのやで!』

「そんな馬鹿な」

 俺は龍驤を見た。

 ……そんな馬鹿な。

 龍驤の言葉は嘘ではなかった。冗談ですらなかった。

 キラキラしている。輝いている。龍驤が発光しているというよりは、後光を背負っている、光に包まれているといった表現の方が正しいように思われた。

「……どういうことだ? 何が起きてる?」

『んなのウチにだってわかるか! ただ、体が軽くてしゃあない! きっとこれは激励やな、降りた船の神様が、ウチに頑張れ言うてくれとるんよっ!
 繰り返す! 全体、どっちか二隻に狙いを絞れ! 残ったほうをウチが相手する! おっさんもそれでええやろ!』

67 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:40:49.78 ID:g29J3/ci0

「いや、だが、しかし」

『大丈夫でちよ』

『……そのとおりよ。あなたは知らないかもしれないけれど』

『提督、私たちは龍驤さんを信頼しています』

『ボクも龍驤なら平気だって思うよ!』

 ……なんて信頼だ。惚れ惚れするぞ。

「そんなに自信があるのか?」

「龍驤は、ここの泊地の序列一位ですから」

 澄ました顔で赤城が言った。

「前提督の秘書艦ってだけじゃなくてか?」

 いや、練度が最も高いから、そうなったという可能性は十分にあるが。

『165』

 龍驤は『ドヤ顔で言うのは好きくないけど』と前置きして、もう一度言う。

『165。ウチの練度な。カンストしとるから、そこの経験は、おっさんも信頼してくれてええと思うなぁ』

 ……なんともはや。

「なら、俺の出る幕も、出す口も、ねぇな。
 龍驤。戦場はお前に預けた」

『あいよっ!』

 彼女の薬指の指輪がきらりと光った。

68 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:42:07.43 ID:g29J3/ci0
――――――――――――
ここまで

ちなみに赤城の練度は99、58が95くらい。
夜にもう一回くらい投下できたらいいなぁ。

待て、次回。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 18:03:25.21 ID:mpKXCGq9o

単装砲を拳でぶん殴ったシーンが何とも霧島らしくて違和感がまるでないw
70 : ◆yufVJNsZ3s [saga sage]:2018/06/07(木) 18:06:40.14 ID:g29J3/ci0
>>65
あ、雷巡棲鬼の顔面殴ったの、神通ではなく霧島ですね……。

「近接距離で雷巡棲鬼の顔面を殴ったのは霧島」に読み替えてください。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 18:25:07.88 ID:36yaDd+hO
おつ!!
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 18:40:12.89 ID:MKW926+Eo
おっつおっつ
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 21:48:30.38 ID:cSiLE75/o
おつ
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 22:36:53.43 ID:HEVYnNIz0
備えてさえいれば雷巡の攻撃を余裕で凌ぎきる扶桑に戦艦の意地を見た
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 22:51:13.45 ID:MDNV28tX0
おつです
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/08(金) 01:20:57.89 ID:7xS2pDlCo
165の龍驤…前提督はロリコンかな?
77 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:06:42.14 ID:7/wrXDok0

 体が軽い。

 式神を動かすのは、自分の体の延長線みたいなもんで、たとえばいちいち歩き方だとか箸の持ち方だとか、まぁとにかく、そんな日常のことを気にせんのとおんなじに、飛ばす、回す、着陸させる、そういうことは殆ど無意識にできる。
 勿論それは、自分で言うのもなんやけれども、境地なのだ。素人は無意識で行い、習熟してくるうちに次第に指の先まで神経を澄み渡らせて、そして一周しての無意識へまた至る。

 だけど、いまのウチは、さらにその先を行っていた。境地の先。辿りついたと思っていた高みの遥か向こう。
 無意識の果ての意識、意識を突き抜けた無意識。その先に待ち構えていたのは意識の分散。

 式神一つ一つがもうひとりのウチやった。どこの空域にどれくらい敵がおって、どういうふうに戦っているのか、事細かに理解できる。

78 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:07:14.04 ID:7/wrXDok0

 こちらの編隊を撃ち落そうと迫る悪鬼の群れ。しかしウチのキラキラは戦闘機にまで拡大し、滅多なことでは捕まらない。一機が噛み砕かれる間に、戦闘機は悪鬼を三体も打ち落とす。
 緩慢な動きで巨大な頭部が揺らめいた。杖を持った、背の高い、人型。その瞳には通常見られない青い気炎。

「……アンタが相手か。えぇよ。眼ェから青い焔出したくらいで、いい気になってるんとちゃうで。こっちはキラキラしてんのや」

 人の心を持たないバケモンには、ウチのこの気分はわかるまい。

 術式展開。

 とっておきを見せてやるよ。

「江草、友永、村田。行ってきぃ!」

* * *
79 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:07:41.32 ID:7/wrXDok0

* * *

 目まぐるしいほどの高速戦闘は、雪風と神通さんの十八番でした。
 力強く海面を蹴り上げての墳進、レ級の砲が、尾が、こちらをぽっかりと向く。恐れがないと言えば嘘になるけど、恐怖が歩みを止めれば、より死の可能性が高くなることはわかる。だから止まらない。とにかく前へ。
 セーラー服の襟を砲弾が掠めて鳥の囀りにも似た音を出す。直撃すれば怪しい。でも雪風は素早いから、そう簡単にあたったりはしないのだ。

 至近距離まで切迫、雷撃、のちの撤退。ヒットアンドアウェイは一回の効果こそ少ないけど、トータルで見れば効率はいい。深海棲艦には理性なんてまったくないんだから、多少時間がかかったとしても、安全策を取るべきだった。

 龍驤さんはひとりでヲ級を引き付けて、戦っている。

 驚くべきことだった。本人にとってはさして気負うことでもないのかもしれないけど、それは指輪をもらったあの人だから言えることで、雪風には到底真似できない。自分ひとりで相手をするなんて言うことすら難しい。
 心を冷静に保つように努める。深呼吸。あまりに上を見すぎてどうする。いま見るべきは敵。戦艦ヲ級と雷巡棲鬼。龍驤さんの真似事は、艦娘の枠でやるべきことではない。

80 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:08:18.71 ID:7/wrXDok0

 雪風は艦娘だ。

 誰かを、不特定多数を、みんなを、護るために生きているのだ。

 きっと龍驤さんのキラキラは赤城さんが生きていたことに端緒があるのだろう。あのひとたちは拗れ拗れて、拗れに拗れて、なまじ深い信頼があったばかりに、わかっているからこそ慮ってしまった。
 相手のためを想うことの先に、幸せが待っていないこともある。それを地でいくあの人たちは、それでも、いまは幸せそうだった。

 偶然か、はたまた運命か。

 あの男だ。あの男が来てから、全てが回り出した。
 それらがあいつの功績だとは信じたくなかったし、思ってもいない。それこそ単なる偶然の積み重ねに過ぎない。

 扶桑さんが雷巡棲鬼を見つけたのもそうだし、赤城さんが独断専行したのも、間に合ったのも、助かったのも、全部、きっとあいつがいなくてもそうなったに違いない。

 だけど――あぁ嫌だ、偶然も積み重なれば運命だと、雪風は思っていた。だから、もしかしたらこれも運命なのかもしれない、と肯定できるくらいには、龍驤さんの歓喜の声には力があった。
 赤城さんと龍驤さんと、そして58さん、三人が幸せな顔で笑いあえる日が近づいたことを、喜ばしく思った。

 ……雪風たちとは大違い。

81 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:08:47.46 ID:7/wrXDok0

 戦場を生き抜くには力が必要で、だけど力だけじゃだめだ。必要条件であって十分条件じゃあない。
 赤城さんが生還したのは、運命があの人をまだ必要としているからなのだ。

 魚雷を放つ。爆炎でレ級は吹き飛ばされるが、その巨大な尾がスタビライザーの役目を果たしている。見た目と言動に似合わず随分と器用なもので、空中で一回転、四肢で着地。
 同時にこちらへ突撃してきた。最上さんが砲撃を浴びせかけ、その勢いを削ぐ。それでもレ級は止まる気配を見せない。

「ぐぅあるがうぁああっ!」

「きひっ!」

「もうっ! 止まれっ、止まれよぉ、止まれって言ってるのにさっ!」

 苛立ちをぶつけるかのように最上さんが撃つ、撃つ、撃つ。硬質的な音が響いて、砲弾はレ級の肌の上で弾けた。火花が散る。全くの無力には見えなかったが、あのばかげた装甲の前では力不足。
 一際甲高い音が響いて、砲弾はレ級の顔面を滑っていった。流石にこればかりはいくらか堪えたようで、レ級は捩じ切れそうな角度に首を回し、その先の大井さんを見る。

82 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:09:29.25 ID:7/wrXDok0

「え、あ」

 脚を止めてんじゃねーです馬鹿!
 これだから、よわっちいのは!

「ったく!」

 苛々する。あぁもう、苛々するっ!

 大井さんへと跳びかかったレ級の下へと潜り込み、雪風はがつんと一発魚雷をお見舞いする。当然爆発は雪風自身も襲うけど、これくらいなら大丈夫。
 浮いたレ級の頸椎を神通さんが上から狙った。魚雷を突き立て、時間差で爆裂させる。

「がぅるごおあっ!」

「きひひっ!」

 艦載機がばら撒かれた。悪鬼は上空を飛びまわりながら、艤装にまとわりつく黒い炎をところかまわず撒き散らす。
 レ級は神通さんの一撃でその首回りの殆どの肉を持っていかれていた。外骨格にも似た金属部と、神経を模したコードがむき出しで、頭部は動くたびにぐらついている。それでもまるで動きは衰えない。それどころか凶暴さを増しているようにさえ見える。
 尾の口へと光が収束し、一筋のレーザーとなって海面を焼き払った。蒸発する海水から生まれる水蒸気。それを潜り抜けて、一瞬で神通さんへ。

83 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:09:56.67 ID:7/wrXDok0

 尾が叩きつけられる。神通さんは退かなかった。果敢に、勇敢に前へと踏み出す。
 あわせてレ級が鋭いその腕を伸ばした。しかし爪は神通さんの肌を傷つけることはなく、逆に腕の関節を極められる結果となる。
 攻防は一瞬。容赦のない、間断のない鬩ぎ合い。

 ごぎり、ぶちり。レ級の肘が完全に九十度、あらぬ方向を向く。

「最上さん」

「おっけー」

 瑞雲を踏み台にして最上さんは空を駆けあがる。

 最後に一際大きく跳んで、狙いは直下、レ級の首筋。
 細く息を吸い込んだのがわかった。

 指先を向ける。

 空間が歪む。背後に船が薄らと顕現し、震えた。敵を倒せる喜びに。
 放たれた不可視の砲弾は、レ級の頭部を完膚なきまでに破壊する。

「げひひひひぃいいいいいっ!」

 尾が脈動。奇声を発しながら神通さんへと。

「驚きました。まだ動きますか」

 即座にその半分が失われて、溶解していく。
 射線上には扶桑さんがその巨大な火砲をこちらへと向けていた。隙あらばとにらみを利かせる、一撃必殺の試製41三連装。
84 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:10:22.81 ID:7/wrXDok0

「龍驤さん! レ級は片付きました、雷巡棲鬼へと向かいます!」

『わかった! こっちは少し長引きそうやけど、じきに向かうから!』

 即座に転戦、雷巡棲鬼へと雪風たちは向かう。

 そちらを担当しているのは霧島さんと扶桑さん、そして夕張さんと58さん。雷撃はかなり威力が高いけど、戦艦二人の装甲ならば、最悪は避けられる可能性は高いとの判断からだった。

 霧島さんの足元でいくつもの爆裂が連続して起こる。それは威力こそ控えめだけど、圧倒的な手数に近づける気配はなかった。

「鬱陶しいわね!」

 一足飛びで一気に雷巡棲鬼との距離を詰めようと試みるも、対空砲火、ビットとして浮遊する二対二門の単装砲がそれを見逃さない。四つの砲口からの一斉射撃を浴び、霧島さんは砲弾のいくつかを拳で防ぐも、撃ち落としきれなかった数個が脇腹へとクリーンヒット。もんどりうちながら押し返される。
 背後から頭を出した58さんが魚雷を叩きつけた。しかし巨大な悪鬼が雷巡棲鬼本体を庇うかのように盾となり、直接攻撃は不発に終わる。ばら撒かれた魚雷を回避するために潜航、機を窺った。

 扶桑さんは変わらず三連装砲を構え、いつでも雷巡棲鬼を防御の上から叩き潰す用意。

85 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:11:15.25 ID:7/wrXDok0

「攻撃力がバカ高い。的中したら、大破確定でしょ、あんなの」

 額から血を流しながら夕張さんが言う。周囲に砲を展開させながら、霧島さんの戦いに加わるタイミングを計っているように見えた。

 九対一。大井さんを頭数に加えなかったとしても、彼我の戦力差は歴然としている。

「ゾロゾロ、ゾロゾロトォ……」

 泥濘が沸騰したかのような、忌々しい音だった。気を付けていなければそれが声だとは俄かには信じられなかったかもしれない。

「……喋った?」

 夕張さんが呟く。気持ちは雪風も同じで、ほかのみんなも、たぶんそう。

「シズミ、ニィ……キタンダァ」

 左右の悪鬼が大きく膨れ上がった。

「あ」

 思わず声が漏れる。
 これは、だめだ。やばいやつだ。
 雪風の、大して豊富ではない経験でも、一目でわかる。

 どうする? 殴りに行って止めるか? 止まるのか? 確証はない――失敗すれば死、いや、そもそも、もう時間が、

86 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:11:43.37 ID:7/wrXDok0

 悪鬼に腰かけた雷巡棲鬼は、にんまりと――北上さんが生前よくやっていたように――笑って、軽く指を振って見せた。
 魚雷が射出。数えるのも億劫になるほど大量のそれらは、深度も速度も方角も様々で、それでも共通していることは一つだけ。

 雪風たちを沈めに来ている。

 圧搾した空気が行き場を失い噴出する。
 本来、魚雷を撃ちだす音は「ぶしゅん」とか「ぷしゅっ」とかそういうもので、だけどあの悪鬼の口、そこから飛び出す魚雷発射管の数、そこから生み出される音は、

 ぶしぶしぶしぶしぶしぶしぶし
 ぶしぶしぶしぶしぶしぶしぶし

 ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ

 ぶしゅんっ!

 酸素魚雷の軌跡が波濤よりも白く染めて、嵐よりも大きく海面を荒立てて。

 向かってくるその数は百を優に超えている。

87 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:12:17.34 ID:7/wrXDok0

「みんなっ! 私たちの後ろへっ!」

 霧島さんと扶桑さんが前へ出た。賢明な判断。装甲の高さを鑑みればそうするべきで、だけど、それは諸刃の剣でもあった。最悪のパターンはここで戦艦二人が離脱すること。高火力で敵を討ち抜けなくなること。
 魚雷で応射? いや、二人が前にいてはそれもできない。ぶつけ合うなら死ぬ覚悟をしなければだめだ。

 赤城さんのように?

「このあたしと、58とっ! 魚雷で勝負を挑もうとは、いい度胸じゃねーでちか!」

 58さんが叫んだ。どこにいる? 海中?
 ――違う。上空だ。

 最上さんがやっていたように、58さんも航空機を踏み台にし、高く高く跳んでいた。

「はっちゃん直伝をくらえっ!」

 魔方陣が空中に展開される。雪風は過去、一度だけそれに見覚えがあった。
 8さんは本を媒介に魚雷を生成していた。理屈はわからない。だけど、同じ潜水艦の58さんができない理由は、見当たらない。

 四つの魔法陣から魚雷が次々と生み出され、海中へと放り込まれる。

「衝撃がくる! 備え!」

 霧島さんの言葉に雪風たちは身を寄せ合い、縮こまらせた。

88 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:12:55.16 ID:7/wrXDok0

 硬く瞑った瞼すら貫通する鋭い光、塞いだ耳すら震わせる激しい音。踏ん張っていても体は揺れる。海と、空気が、ぐらぐらぐらり、揺さぶられているから。
「――ッ!」

 戦艦二人が、歯を食いしばっているのがわかる。

 最後の最後に一際大きな衝撃が響いて、「反撃」という短い指示が飛ぶ。雪風は無我夢中で飛び出した。
 戦艦二人と58さんの状態が気になって、でも敵から意識と視線を斬るわけにはいかなかったから、一刻も早く三人のことを忘れなければだめになってしまいそうだった。
 短い指示。霧島さんのもの。どうしてあんなに端的な――そんな余裕がなかったから? それしか力がなかったから?

 考えたくない。
 考えるな!

 雪風は、だって、誰も失わないためにここにるんだから。
 みんなを護るのが艦娘なんだから。

 大爆発の後の水飛沫はいまだに雪風の服を、髪の毛を、濡らす。ばちばち降る、まるでスコール。こんなにも晴れているのに。
 手を向けた。スコールの向こうには雷巡棲鬼がいる。狙いを定めるべく指で指し、三門の火砲で撃った。悪鬼の片方が盾となり、本体までは届かない。

89 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:13:28.64 ID:7/wrXDok0

 夕張さんがおっついてきた。そのままの勢いで雷撃、悪鬼の片方を大きく揺るがせる。装甲は高くとも、何度も攻撃をし続けていれば、いずれは行動不能に持ち込めるはずだった。

「ソンナノガ、ナンダッテイウノサァッ!」

 雷撃。海を埋め尽くすほどの。

 直撃こそ避けたけど、爆風や震動はどうにもならない。体勢の崩されたところへ単装砲を打ち込まれ、大井さんが大きく吹き飛んだ。ぐったりと倒れ、動かない。
 ほら見たことか! そんなに無茶して、わざわざ前線へ出てこなくったってよかったのに!

「シズメェッ、シズメェッ、シズメェッ!」

 雷撃。回避は間に合わない。
 直撃だけはなんとか避けようと身をよじる。海面が盛り上がり火柱が高熱で、水柱が大質量で、雪風を痛めつける。
 皮膚が軒並みもっていかれる感覚。熱いという灼熱感は一瞬で消え去り、次いでやってきた切り裂かれるような痛みが全身を駆けまわる。あまりの激痛に視界がスパークし、弱音すら零しかけた。
 巨大な水の塊が雪風の腹を、胸を、顔面を強かに打つ。炎は表面を炙るけど、その重たい質量は体の芯にずしんと効いた。呼吸ができない。動かねば的になることはわかっているのに、脚がどうしても止まってしまう。

90 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:14:14.45 ID:7/wrXDok0

「雪風」

 神通さんの声。それは雪風を賦活させるには十分で。

 波濤を発射台に、雪風は前を向き、大きなストライドで駆けた。

 四門の単装砲が追尾してくる。狭叉射撃。横っ飛びで回避、海面をごろごろ転がりながら、魚雷を蒔いた。お返しだ。

「はっ、はっ、はぁっ!」

 息が荒い。心臓がうるさい。落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせても、まるで思い通りになってくれないこの体。

 爆炎から姿を現した雷巡棲鬼は、小破にすらなっていない。

 挫けそうになる。

 敵の装甲は分厚い。それを撃ち抜ける攻撃は、所詮駆逐艦でしかない雪風には、存在しない。だから連携を磨いてきた。雪風独りでは立ち向かえなくても、神通さんとなら、……響となら、敵を倒すことができる。
 あぁ、そうだ。こんなところで挫けるには早かった。まだ負けは決まっていない。負けが決まってなお挫けるつもりはない。

 だって雪風は艦娘なのだ。強いから、弱い誰かを護らなくちゃいけないから。

 違う。義務感でやってるのではなくて。
 雪風がそうしたいからそうしている。

91 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:14:41.55 ID:7/wrXDok0

『すまん、あと数分、持ちこたえてくれ』

 あの男からの通信が入る。

『間に合った』

 間に合った? なにが間に合ったっていうんだ? 赤城さんを助けたことじゃないのか?

「……間に合った。間に合いましたか。そうですか。
 ……まさか、そんな、間に合うだなんて……っ!」

 泣きそうな声の神通さん。
 一体なんだ? どういうことだ?

 雪風の知らないところで、何が起きてるって?

『響と漣がそちらへ到着する』

92 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:15:11.82 ID:7/wrXDok0



――ふざけんな。
 


93 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/08(金) 07:16:01.74 ID:7/wrXDok0
―――――――――――――
ここまで

次回は短めかな?
大井はまぁしょうがないね

待て、次回
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/08(金) 07:47:11.74 ID:bOmKYox1o
体が軽いは死亡フラグだってそれ1番言われてるから
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/08(金) 11:55:20.40 ID:3p0d59ZLO
おっつおっつ
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/08(金) 12:25:17.86 ID:G2i0xZuv0
おつ
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/08(金) 17:05:24.75 ID:VDL3o9gP0
面白いけど霧でも無いのに唐突なビームは頂けぬ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/08(金) 18:12:31.80 ID:ouHUN3xMo
おつ
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/08(金) 20:45:44.23 ID:b2rCz7uUO
おつ!
待つぞ!!
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/09(土) 19:03:28.10 ID:5w+tdg4ho
おつ。
やっと追い付いた!楽しみにしてます!
101 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 21:58:10.08 ID:VkvBeUEh0

 誤解しないで欲しいけど、別に運命論者というわけではない。雪風は特別だとか普通だとか、そんなふうに有りもしないレッテルを貼るのが嫌いだから、代わりに論理を超えた、理解の難しい結果に対して、それを運命だと呼ぶことにしているっていうだけ。

 特別なひとなんていない。
 普通なひとなんていない。

 結局そんなのは言い訳だと思うのだ。あの人は特別だから。自分は普通だから。
 「だから」できない。自分にとって都合のいい結論を導くための捨て石として、誰も彼もが自分に評価を張り付けて――悲しいことに主従が逆転する。普通だからと決めつけ、できるはずのことにも挑戦しなくなる。
 さらに厄介なことに、特別なあいつが妬ましいと、見当違いな恨みさえ抱きはじめる。

 ばかにするのもいい加減にしろ。

 特別だから生き残ったんじゃない。強かったから生き残ったのだ。
 強いのは特別だからじゃない。訓練していたからだ。

102 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 21:58:59.93 ID:VkvBeUEh0

 ……だけど、弱くても生き残ったなら?

 家族がみんな事故で死んでしまっても、「偶然」、ただ乗っていた位置のいたずらで、生き残ったなら?

 泊地が敵の襲撃によって壊滅状態に陥っても、「偶然」、独り遠征に向かわされていて、生き残ったなら?

 雪風は、それこそを運命だと信じる。

 結果は全てに先立つ。

 響が生きたのは、あんなに弱っちくても生きてこれているのは、きっと。

103 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 21:59:29.72 ID:VkvBeUEh0

「……行きます」

「はい」

 駆けた。神通さんが合わせて隣につく。
 単装砲が雪風たちを追ってくる。命中させるのではなく追い込むための砲撃。巧妙な角度から放たれる砲弾は、あと少しのところで雷巡棲鬼へと近づかせない。

「伏せてっ!」

 閃光を迸らせながら、雷巡棲鬼、その片方に座す悪鬼の大半が消失した。一拍遅れて、空気を震わせる轟音が鼓膜を突き刺す。意識していなければ思わず耳を覆ってしまうほどの音の出処は考えるまでもなかった。
 視線をちらりとやる。霧島さんが扶桑さんへと肩を貸し、砲撃体勢に入っていた。僅かに見えた二人の姿は万全とは言い難い。それこそ一人では大口径砲を放てないほどに。
 霧島さんが屈んで片膝をついている。その後ろに扶桑さんが、中腰で、霧島さんに覆いかぶさるように。つまるところはライフルと、その銃座のようなもの。

 遠目からでもわかるほどに、霧島さんは力強く扶桑さんの腕と服を掴んだ。
 ぼんやりと彼女たちの背後に艦の亡霊が姿を顕す。
 敵を倒す喜びに震える。

104 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 22:00:29.31 ID:VkvBeUEh0

 雷巡棲鬼も本能的に脅威を察したのだろう、残った悪鬼が魚雷を大量に射出、本体もまた空中に悪鬼を多数召喚し、させじと――あるいは壁にと、二人へ解き放った。
 砲弾の推進力を魚雷の爆風と悪鬼の群れが抑え込む。相克。扶桑が二発目を準備。雷巡棲鬼もまた扶桑へと意識を割かなければならない。

 好機だった。

 先ほど大破した悪鬼の片方は、既に損壊の半分以上を自己修復しつつある。巧遅よりも拙速が必要と判断、速度を上げる神通さん。そこにもちろん、雪風も続く。
 夕張さんの砲撃が加わった。悪鬼が再生する傍からそのむき出しの肉片を吹き飛ばし、押し留めていく。

「ウットウシイナァッ!」

 魚雷の斉射。同時に単装砲を繰り、こちらを可能な限り近づけないように撃ってくる。

 大量の水柱が挙がる。爆発は空気を熱し、吸気を通して喉を焼いた。乾燥した粘膜がひりつく感覚。
 頭がずきんと痛んだ。指先で触れてみれば、べっとり赤い液体。神通さんも隣で口の中に溜まった血を吐き捨てていた。

105 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 22:01:25.38 ID:VkvBeUEh0

 雪風の体が動いたのは訓練の賜物だった。咄嗟に、一瞬だけ見えた魚雷の隙間、水柱の間を抜けて、雷巡棲鬼へ切迫する。それは一見無謀にも見える吶喊、赤城さんにも似た捨て身の攻撃。
 砲撃二発で雷巡棲鬼が座す悪鬼のバランスを崩させた。その余裕そうな顔が歪む。

 単装砲の応射を避けて、神通さんが雪風の背後から雷撃を撃ち、並走するように加速。
 爆裂。しかし敵の装甲は硬く、単発の魚雷などはものともしていないようだった。
 それでも、揺らぐ。傾ぐ。雪風は既に雷巡棲鬼の懐へと潜り込んでいるのに、単装砲も、雷撃も、こちらへの狙いが定まっていない。

 悪鬼を蹴り上げながら一気に駆け上る。雷巡棲鬼が眼と鼻の先まで近づき、雪風は精一杯の敵意を籠めて、顔面へとぶっ放した。

 これはお母さんのぶん。

 雷巡棲鬼が悪鬼から陥落する。水の上を二度跳ね、波濤を掴んで制動、即座に単装砲と雷撃による反撃。その背後から神通さんが延髄を狙って、ごぎり、鈍い音とともに雷巡棲鬼の首があらぬ方向を向いた。
 魚雷を顕現。適当な一撃ではだめだ。ここで終わらせる、そう意志を強く込めた、三発。

 直撃。単装砲が赤熱して落ちていく。

 これはお父さんのぶんだ。

 お前らに殺された、二人の無念、身をもって知れ!

106 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 22:01:52.19 ID:VkvBeUEh0

「ナメルンジャナイヨォオオオオオォ!」

 黒煙の中から咆哮が響いた。絶叫といっても過言ではなかった。

 再び海面を埋め尽くすような雷撃の嵐。背筋が凍る。不思議な笑いが零れる。白い軌跡を描きながら、巨大な爆炎と水柱を生み出しながら、死が海の中から雪風へと高速で迫っていた。
 構わず突っ込む。どうせ雪風に逃げ場なんてものはないんだから。

 戦場は過酷だ。ここは弱い人間には当然不向きで、だから雪風はいつも苛々していた。どうして響が雪風の隣にいるのか、まるでわからなかった。弱いのに。おどおどしていて、へなちょこなのに。
 それは多分神通さんの優しさなのだと思う。響なんていらないはずなのだ、本当は。雪風だけでいい。雪風だけで十分。だけどあの人は優しいから、結局、響の頼みを断りきれなかった。

 そうだ。響なんていらない。雪風さえいればなんとかなる。

 なんとかしてみせる。

 そのための努力。
 そのための訓練。

 そのために雪風は強くなった。

 だから。

107 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 22:02:34.69 ID:VkvBeUEh0

「司令! 響をこっちにこさせないで! 絶対に!」

 爆風が肌を焼く。前髪を焦がす。
 食いしばった奥歯の隙間から苦痛の声が出る。うそだ、出ていない。出ていないったら出ていない!

 魚雷! 魚雷魚雷魚雷!

 白い軌跡を乗り越えて、爆炎と熱風が気管を潰して、視界がまっさらで。
 神通さんの通信だけが脳内に響く。怯むな、勇気を出せと鼓舞してくれる。

 死を抜けて、悪鬼の編隊へと砲を向けた。

 誰も彼も、みんな、なんにもわかっちゃいない! 考えていない! 雪風だけだ、雪風だけがみんなのことを考えて、想って、それなのにどいつもこいつも、雪風の計画をおじゃんにしようとする!
 嫌い! 嫌い嫌い、みんな嫌い! 大っ嫌い!

 なんで命を粗末にするんだ!

「生きてるなら生きてるでいいじゃんかっ! 駄目なの? 違う!? 雪風、なんか間違ったこと言ってますか!?」

 大きく振りかぶって魚雷を投擲。巨大な二発は、一発が逸れていき、もう一発は雷巡棲鬼の雷撃と相打つ。

108 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 22:03:09.50 ID:VkvBeUEh0

「あんな奴、まるで役に立たない! どうして生きてるのか不思議なくらい! 運が良かっただけ、そうだ、悪運が強かっただけ!」

 でも、それの何が悪いの?

「生きてるならそれは運命なんだ! 司令! 運命が響に生きろって言ってるんだ! きっと響にはまだやるべきことが未来に控えていて、そのために生きてなくちゃいけない、だから神様が、二度! 二度も!」

 響を助けてくれた。

「誰かが戦わなくちゃいけないなら、雪風がやるよ! 誰かを護らなくちゃいけないなら、それも雪風がやる! 響も、大井さんも、漣だって、弱っちいやつらはみぃんなまとめて雪風がなんとかしてあげる! 
 だからっ! だからっ、司令ッ、全部雪風がやるから、弱くても見捨てないから、最後まで護り通すから、雷巡棲鬼だってやっつけるから!」

 雪風は強いから。
 これからもっと強くなるから。
 もっともっといろんな人を護れるようになるから。

 雪風が全部やるから。

109 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 22:03:43.27 ID:VkvBeUEh0

 だから、お願い。
 お願いだから。

「響をこっちにこさせないで……」

 雪風は響に死んでほしくない。

 幸せに生きる権利が、響にはまだ残っているはずで。

 そのためなら、雪風、なんだってやってみせる。

「後生だよぉ……!」

 あの日。
 腕をギプスで固定して、包帯で首から吊るした銀髪の少女が、雪風の前に現れたとき。
 雪風は、この女の子を護ろうと心に決めたのだ。

110 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 22:04:14.71 ID:VkvBeUEh0

* * *

『……だとよ、響』

 通信の向こうで司令官は言った。喜びを抑えきれず、滲み出ている。

「そうか。……そうかっ」

 きっとそれは私も同じ。

 誰かからそこまで大事に思われることの、なんて嬉しいことか!

 だけど駄目だ。駄目駄目だ。
 否定的な文言を唱えながら、だのに拳に力は入り、脚は一秒でも早くと急く。心は嘗てないほど前向きだった。

 それじゃあフェアじゃない。

 雪風がこんなに私のことを想ってくれて、それがこんなに真っ直ぐ伝わり、私の心を震わせているというのに。
 私の雪風への想いが、まるで雪風へと伝わっていないのは、まったくフェアじゃない。これじゃあ全然対等じゃない!

『響、準備はいいか』

「もちろんさ!」

 ここにきて呼吸を落ち着けることのなんと難しいことか!

111 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 22:04:46.09 ID:VkvBeUEh0

 神様。
 私に宿る、船の神様。

 二度、奇跡的に生き残って、それ以上の奇跡を願うのは傲慢極まりないかもしれません。
 だけど、どうか、お願いです。

 お願いします。

 私の大事な人に、示してあげなければならないんです。

 伝わる言葉で、伝わるように。

 心に「響」かせてあげなければならないんです。

 もう一度、奇跡を。

112 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 22:05:13.29 ID:VkvBeUEh0

* * *

「響、改二だ」

 俺は、命じる。
113 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 22:05:43.52 ID:VkvBeUEh0

* * *

「――改二、換装ッ!」

 私は、応じた。

114 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/10(日) 22:08:14.39 ID:VkvBeUEh0
――――――――――――――
ここまで

やっとここまで書けた感。
この長いながーい物語のスタート地点は、このシーンから始まったのでした。

待て、次回。
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/10(日) 22:10:57.68 ID:ndL6DRLT0
おつおつ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/10(日) 23:04:06.94 ID:UnIfuFgfo
おつ
ついに響が響じゃなくなっちゃったか
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/11(月) 01:53:02.77 ID:iDwr054so
おっつおっつ
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/11(月) 08:48:56.02 ID:rYyMo7dXO
おつ
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/11(月) 08:51:01.87 ID:ZtqyJcID0
おつ!
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/11(月) 09:04:19.13 ID:zkj8JBXr0
堕ちてしまうか、共産面に
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/11(月) 10:33:29.52 ID:T9cMncpNo
おつー
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/11(月) 10:59:40.78 ID:3lm0mR260
同志ちっこいのキター!
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/16(土) 07:27:00.56 ID:/dgUacyb0
続き期待
124 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:23:33.60 ID:vFdriOCE0

 間に合った、と俺は思った。

 間に合ったのだ。

 決して勝負ではなかったが、それでも俺は、手をぐっと握り締めて、小さくぽつりと「勝った」と零した。
 これは賭けだった。龍驤に言ったように。
 そして俺は勝利した。

 響を旗艦から外すわけにはいかなかった。旗艦が得られる経験値は随伴艦のそれに比べて高い。たとえ響が被弾し撤退する可能性を考慮にいれたとしても、この賭けに出る場合、響が旗艦以外という選択肢は存在しない。
 無論、そのぶんだけ途中撤退の危険性は増す。二度目はない。ならば安全策をとるべきだと言われたとしたら、俺は素直に引き下がっただろう。

 ……だが。
 意外なのか、はたまたそうではないのか。雪風を除く残りの面子は、誰一人として反対をしなかった。
 しないでいてくれた。

 その時に俺は気が付いたのだ。俺もまた、彼女たちが反対するなんて思っていなかったことに。

125 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:24:02.80 ID:vFdriOCE0

 そして新たなる問題が発生した。赤城が独断専行をきめて、独りで海へと出たことだ。
 それは限りなくまずいできごとだった。赤城の性格ならばあり得るとも思ったが、しかしいくらなんでも敵陣中央へ単独で攻撃をかけるのは、イカれているとしかいいようがない。事実半分くらいイカれてはいたようだった。

 赤城の身の危険がどうこうという問題は勿論あったが、輪をかけてまずいのは、赤城が雷巡棲鬼に辿り着くまでに途中の深海棲艦を軒並み、根こそぎ、沈めてくる可能性が非常に高いという点。
 響に旗艦を任せるのは、道中でいくらか深海棲艦と敵対するだろうとあてこんでのことだ。赤城が道中の敵を倒すのであれば、雷巡棲鬼と対峙した時に、響の練度が十分に満たない場合がある。

 それだけはなんとしてでも避けなければならなかった。

 響の練度が達しないままに、最深部へと赴かせることは、自殺行為に他ならない。その部分については俺と雪風は同じ意見を持っており、他の艦娘たちもまた同様。

 苦肉の策。響と漣を、別海域へ。

126 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:24:46.47 ID:vFdriOCE0

 赤城が一人で出立したことは、事態の博打要素をさらに大きく高めたと言える。作戦会議時に神通の案――敵艦隊の殲滅――が却下されたのは、主に燃料と弾薬が道中で枯渇する危険性が高かったことが大きい。しかし、既に赤城が露払いをしてくれるのであれば、想定よりもかなりの余裕を持って雷巡棲鬼と戦えることになる。
 が、だからこそ、「諦めきれない」というリスクを負う。万事において諦めが肝心であると知った口を利くつもりはなかったが、体を張った赤城の尽力によって得た好機を、ふいにするのは彼女たちには荷が勝ちすぎると思ったのだ。
 その懸念は今でも付きまとう。許容損害範囲を超えるような戦闘は許可しがたかった。

 ……あまり考えても意味のないことではあった。指揮を振るうのは龍驤だ。少なくとも、実際的な話は置いておくとして、権限は彼女に集中しているから。
 俺が指示を出せるのは漣だけ。

127 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:25:28.73 ID:vFdriOCE0

「でも」と最上が手を挙げた。「改二への改装ったって、海の上だよ? 大丈夫なの?」

 「ボクはまだ改だけどさ」。そう続ける最上の言葉に、他の艦娘たちも頷く。この中で改二は龍驤と神通だけだが、改二への改装――改造、あるいは換装の件については、周知のようだった。

 そう。そこがもう一つの賭けなのだ。
 間に合うか間に合わないかという軸とはまったく別に、そもそもそんなことが可能なのか、という根本的な問題が存在する。
 大丈夫だ、と自信を持って言うことはできない。安心しろとも言ってやれない。ただ、根拠のない確信めいたものはあった。いけるはずだった。

 なぜなら、艦娘は科学とオカルトの融合体だから。

 理屈が全てを支配する科学ではなく。
 説明できないものが全てを支配するオカルトでもなく。

 神様を――あぁ、ばかげている自覚はあった。普段は神の存在も、それどころか艦娘という存在自体を疑わしく思うことすらあるというのに、こんなときにだけ神様を信じているのだ。

128 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:26:05.83 ID:vFdriOCE0

「神様をごまかしちまえばいい」

「ごまかす?」

「龍驤から改二へ換装する際のしきたり、儀式は確認した。結局それは、新しく神様を降ろすってことだ。それまでの装備から新しい装備に換えて、神様に誤解させて、降りてきてもらう。祝詞を挙げたり、榊を祀ったりは、結局二の次なんだろう」

「予め、響が改二になる……なんだっけ? 賠償艦? の、えっと」

「ヴェールヌイ、よ。ソヴィエトに引き渡された」

 大井の説明。当然か。響と、そしてヴェールヌイに関する俺の知識は、全て大井の資料から得たものなのだから。

「そう、その装備にしてから海へと出すって?」

「違う」

「違う?」

 いや、当たらずとも遠からず、か?

「そもそも準備ができねぇんだ」

「……あぁ、そういう」

 合点がいったような大井の言葉。やはりか。真っ先に気付くとしたら、大井、お前以外にはいないだろう。
 それ以外のみんなは全員顔を見合わせている。全てを知っている龍驤は落ち着いた様子で周囲を一瞥し、その中で神通だけが、微動だにしない。

129 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:26:33.53 ID:vFdriOCE0

「響は……実際の艦艇である駆逐艦『響』は、ソヴィエトに引き渡された。艤装を降ろして」

「そうだ」

 力強く俺は肯定してやる。

「装備を全部降ろす」

 そうして、神様を騙す。
 なんて壮大に聞こえる言葉だろう。

「雪風は弱い奴が嫌いなんだ。響は強くなりたいんだ。利害は一致している。目的は噛みあってる。
 一肌脱いでやろうじゃねぇか」

130 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:27:15.49 ID:vFdriOCE0

* * *

 どくん。心臓が跳ねた。

 私が、「響」だったものが抜け落ちて、代わりとなる「なにか」が空から降ってくる。
 頭を心臓を貫いて、血液と神経に乗って、その「なにか」は私の体を駆け巡る。循環する。馴化する。

 白い息。突き刺す冷気。凍土。氷に包まれた港。
 それら全ては幻覚で、錯覚で、だけど質感をもった現実として私の目の前にあった。

 嘗て、数十年前、巨大な連邦のもとで、彼女はそれを目の当たりにしたのだ。

「……よろしく」

 ヴェールヌイ。

 瞬きをすれば、私は元通りにトラックの海。

「大丈夫? ひび……ヴェールヌイちゃん」

「うん。ありがとう、漣」

 漣から、一旦譲渡していた艤装を受け取って、装備する。四連装魚雷と小型の電探、そして砲。これまで馴染んでいたはずのそれらは、いま、少しちぐはぐな気もした。

 目的地に向かって全速力。全体通信では、みんなの戦っている音や、声が、絶え間なく響いている。戦況はおおよそイーブン。時折どちらかに振れることもあるが、すぐに均衡を保とうと戻る。
 人数差を考えればそれは恐るべきことだ。赤城が露払いを――本人はもちろんそんなつもりはないだろうけど――してくれなければ、燃料や弾丸の枯渇は免れなかったろう。

 早く向かわなければ。
 辿り着かなければ。

131 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:27:52.69 ID:vFdriOCE0

 別に功績が欲しいわけではない。戦果なんていらない。目に見える徽章や飾緒や、目に見えない二つ名や肩書や、そんなものはどうだってよかった。

 雪風。雪風!
 私と同じくらいの体躯に、私よりも大きな責任感を詰め込んで、そうさせてしまったのは間違いなく私。私が弱かったから、そのぶんだけ彼女は強くなくてはいけなかった。勿論雪風は優しいから、決して首を縦には振らないだろうけど。
 守られるだけの立場に甘んじるつもりはない。これまでも、これからもだ。

 もう、背中を見ているだけの私はやめにしたい。

「見えた! ご主人様、見えました!」

 漣が叫ぶ。ゴマ粒のようななにかが、海上にいくつも浮かんでいる。
 体の芯から震わせるような爆裂音もまた。

 戦いがそこにあった。決して神聖ではない場所。だけど誰もが、自らにとって神聖な何かを持ち寄る場所。それは一般的には志だったり信念だったり、あるいは過去だったりもする。
 私にとっては、それは決意だった。決意。拳を握りしめるという行為そのもの。

132 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:28:29.61 ID:vFdriOCE0

 水を蹴った。ぐんぐん、ぐんぐんと加速。扶桑と霧島の背中が近づいてくる。

 銀髪が風に靡く。私はさらに走った。

 魚雷を装填――射出。射線は四。白い波を立てながら、真っ直ぐに雷巡棲鬼へと向かう私の意志の現れ。

 鳳翔の放った爆撃機が旋回、雷巡棲鬼を攪乱しながら、力づくで隙を作りだそうとしている。最上と夕張、神通に雪風が代わる代わるの接敵、ヒットアンドアウェイで応対する。
 大口径砲を構えた扶桑と、銃座よろしく扶桑を支える霧島は、一撃必殺の時をいまかと待ちわびていた。雷巡棲鬼が意識を二人から切ったそのときに、致命的な一発を加えるつもりなのだ。

 魚雷が直撃。だけど雷巡棲鬼の体は僅かに傾ぐだけで、大した効果は見られない。硬い装甲。駆逐艦一人が闇雲に撃ったところでたかが知れている。

「神通、ごめん。遅くなった」

『……立派になりましたね』

 そうだろうか。そう評価してくれるのはありがたいけど、まだ早いような気もした。

133 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:29:05.50 ID:vFdriOCE0

「これから立派なところを見せてあげるよ。指示を」

『……いつもと同じ。連携し、敵を屠る。私たちにできるのは、それが全てでしょう』

「了解」

 神通の砲撃は左右に陣取る悪鬼に防がれた。悪鬼の不気味に滑る表皮の上で火花が散り、魚雷の応射がやってくる。どしゅどしゅどしゅん、口と歯がやたらに目立つ、化け物の顔をした魚雷だ。
 夕張がそれを撃ち落す。同時に最上と雪風が、それぞれ左右に別れて突撃。最上へと単装砲、雪風へと雷撃が迫るも、雷撃の方は防げないと判断したのか回避行動。
 砲火を抜けた最上。そのまま瑞雲を展開しながら砲撃を口の中へと叩き込んだ。やはりそこは表皮に比べると装甲が薄いらしく、聞くに堪えない奇声を発しながら、悪鬼は苦しそうにのた打ち回る。

 大きく膨れた。

『回避ッ!』

 神通の号令。転進。敵から目を離すことなく後ろ向きに走って、数十本もの魚雷の射線を、紙一重で回避していく。

 衝撃波が私の体を揺さぶった。大気が、海面が、びりびりと震える。扶桑の大口径砲だ。
 それは巨大な悪鬼の上半分を魚雷発射管ごとまとめて吹き飛ばしたが、しかし、ぐちりぐちり音を立て、泥のあぶくであるかのように、その身をゆっくり再生させている。

 艤装を構える。火砲。魚雷。全ては雷巡棲鬼に向けられていた。

134 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:29:57.76 ID:vFdriOCE0

「司令官、ありがとう」

『……礼を言われる筋合いはねぇよ』

「でも」

『俺は指示を出しただけだ。響、お前こそ誇れ。ちゃんと生まれ変われた自分を称賛してやれ。それだけのことをお前はしたんだ』

 司令官の言葉は安堵の色が滲んでいた。
 誇る。そうなんだろうか。本当に、そんな行いが、私に……。

 あぁ、でも、雪風のことを想うと、体に力が漲る。どんな困難でも乗り越えてやろうという不思議な力。油や弾は使えば減るけど、その力は決して減らない。心臓が脈打つ限りにおいて私の全身を駆け巡る。
 血液ではなかったが、酷似していた。血潮だ。魂の混じった紅い液体のことを、そう呼ぶのだと私の本能は知っている。

135 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:31:13.94 ID:vFdriOCE0

『神通』

 通信で、司令官が神通の名を呼んだ。

「……はい」

 応える神通の声は震えている。嗚咽を漏らすまいとして、ぐっと下唇を噛み締めている。

『お前の行いにはちゃんと意味があったぞ』

「……はい。はいっ」

 お前が響を鍛えてくれたから。司令官は言う。

 神通が私を鍛えてくれたから、私は間に合った。あの日々が辛くなかったと言えば嘘にはなるが、あの日々が今の私を、そしてこの充足感と幸福感の基礎であるのだとすれば、途端に全て輝かしい思い出と変わる。
 もし少しでも手を抜かれていたら、あるいは私が不十分な努力をしていれば、私はここに立つことはできなかった。

 私には資格があったのだ。
 それが全て自分の力によるものと思えるほど、私は傲慢じゃない。

136 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:32:16.53 ID:vFdriOCE0

「神通、ありがとう」

『響……私は、そんな、もっとああすればよかっただとか、募る後悔は沢山あって……』

 砲撃、爆撃の音に混じって、そんな惑いの声が聞こえてくる。だけど神通はすぐに「でも」とそんな惑いを断ち切った。

『あなたが今こうして、そこにいる。それだけで、なんて心の晴れることでしょう』

 そうだ。司令官はたったいま、私に対して自らを誇れと言ってくれたが、それだけではない。私だけではない。

「司令官、ありがとう」

 だからきっと、私がこう言うのは間違っていないはずだった。

『……礼は陸で死ぬほど聞いてやる。今は敵に集中しろ』

 それは生きて陸に戻ってこい、という意味を暗黙のうちに含んだ言葉。意図してないのかもしれないけど、私は大きく頷いた。
 誰が死ぬつもりで戦場に行くものか。私は雪風の手を取って、そして降り注ぐ太陽の下で、一緒にアイスを食べたいだけなのだ。

137 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:36:29.64 ID:vFdriOCE0

「雪風」

 私の視線の先には雪風がいた。頭の電探と伝声管は根元からひしゃげ、頬には火傷のため大きな水疱ができている。脚の艤装は片方がない。左手小指が第二関節からあらぬ方向へ曲がっていた。
 頭を切ったのだろう、べっとりと額から左目のあたりまでが赤い。

「……響」

 雪風は私たちの姿を確認し、あからさまに眉を顰めた。
 なんで来てしまったのだ。よわっちいあんたらが来て、一体何になるというのだ。表情はそう物語っていた。

「もう響じゃない。ヴェールヌイ。そう呼んで欲しい」

 いまだ実感はないとはいえ、しっかり名前で呼ばれないことで、神様が離れていく可能性は多いにあった。

「なんで来たの?」

「……私も、私だって、みんなを護りたいんだ」

「だめ。生きてよ。折角生きたんだから、生きる義務がある。あんたは死にもの狂いで生きなきゃだめなんだ! 戦って、傷ついて、沈む、そんな死に方はしなくたっていい!」

「うん、そうだね」

「だったら今すぐ陸へ戻ってよ!」

「戦って、傷ついて、沈んでほしくないんだ」

「……は。なにそれ。雪風のこと心配してるの? あんたが? よわっちいあんたが!?」

138 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:38:55.09 ID:vFdriOCE0

「私だって!」

 自分のものかと思うくらいに大きな声が出た。

「雪風と並んで立てる! それを証明してみせる!」

『二人とも、合わせてください』

 一拍先行したのは神通だった。ここから先は、最早言葉などいらない。言葉になどならない。一秒が一分以上の価値を持つ濃密な空間の中では、空気の振動が鼓膜に伝わるよりも、意志が心を打つ方が早い。
 合わせて私たちも走る。雪風は真っ直ぐに前を見据えている。意識的に、私を見ないようにしているのだ。

 悪鬼の一人が大口を開けた。ぽっかりとした暗黒の中心から、数十の魚雷発射管。
 させじと鳳翔の繰る艦攻が雷撃を放った。閃光が走り、悪鬼が大きく吹き飛ぶ。

「あんまりこっちも余裕ないからねっ!」

 夕張が駆け込んだ。砲撃を加えながら、最大限加速をつけたそのままで踏みきり、踵を悪鬼の眼窩へ叩きこむ。同時に魚雷を顕現、本来の大きさまで一気に巨大化させて、無防備な敵へとそのまま一気。
 千切れた肉片や歯、魚雷発射管が海へと溶けていく。しかしまたも再生。防ぐために夕張は攻撃の手を休めない。
 絶え間ない光が顔と灰色の髪の毛を下から照らす。

139 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:39:30.57 ID:vFdriOCE0

「こっちは抑えとくけど、ずっとってわけにゃいかないよっ!」

 悪鬼と格闘を続けながら叫んだ。

『私も、撃ててあと二発、ですね』

『扶桑さん、三発、お願いします』

 神通の言葉を受けて扶桑は困ったように笑った。うふふ。でも、同時に、楽しんでいるようにも聞こえた。

『無理難題は、意地で通すしか、ないかしら』

『戦艦の意地を見せてやりましょ。年下が真正面で体張ってるんだから』

 扶桑の声は断続的だ。呼吸が長く続かないのだ。
 霧島も苦痛に奥歯を噛み締めている。荒い呼吸がこちらまで聞こえてくるようだった。

 間隙を衝く数多の雷撃。戦艦の砲弾と帳消しにしあうような数、そして威力のそれらが、真っ直ぐにこちらへと向かってくる。

「させるかっ!」

 魚雷を振りまいて最上がその身を盾にした。連鎖的に爆発が続く。最上は防御姿勢をとりながらも脱出を試みるが、立ち上る黒煙、閃光、水の大きな飛沫の連続に、華奢な体が翻る。
 思わず視線を意識がそちらへ向きそうになるのを堪え、前を見た。雷巡棲鬼を見た。

 神通が悪鬼のもう片方へと切迫する。砲弾を二回打ち込み、抵抗の弱まった隙に魚雷発射管を掴む。そのまま背負い投げの要領で海面へと叩きつけた。

140 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:40:21.02 ID:vFdriOCE0

「いくよぉっ!」

 最上の声。彼女は爆発と衝撃に煽られながらもしっかりと足で水面を踏みしめていた。腰を落とし、手を雷巡棲鬼へ向ける。
 背後に艦艇の亡霊が姿を顕す。巨大な砲塔の重厚な駆動音。

「させるもんかっ! ボクたちは戻るんだ、あの楽しかったころに、みんなで笑った毎日にっ!
 それを、邪魔すんなよぉおおおっ!」

 魂の叫びとともに、最上の撃った砲弾が雷巡棲鬼の脇腹を抉る。コールタールにも似た、一切太陽の光を反射しない、不可思議な液体。それが霧散して海へと溶ける。

『そのとおり』

 と扶桑が通信でぽつり。

『そろそろ幸せにさせなさいな』


 砲塔の向く先を理解したのだろう、雷巡棲鬼は魚雷をばら撒きながら転進を図るが、そんなことを私と雪風がさせるはずもない。漣も背後から向かっている。包囲に穴はない。
 雷巡棲鬼の魚雷が多数炸裂し、何度見たかわからない水柱と爆炎を生み出す。肌と一緒に血液さえも蒸発させそうな高熱、それは大気を巻き込んで熱風となり、容赦なく前進へと吹き付けてきた。
 口と鼻、眼の粘膜が一瞬で消える。涙が浮かぶ。それでも私は脚を止めない。雷巡棲鬼がそこにいる。

141 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:48:07.11 ID:vFdriOCE0

 単装砲が漣を襲った。漣は僅かに立ち止まり、空中を浮遊しながら狙いを定めてくる四つの単装砲を機銃で相手取る。

 雪風がついに雷巡棲鬼の首根っこを捉えた。そのまま砲塔を顕現、超々至近距離から顔面へと撃つ。
 コールタールがまたも飛び散った。しかし、やはり、依然として致命傷にはならない。

 と、その時音が聞こえた。ひゅるひゅると風切り音。普段とは比べ物にならない、ゆっくりとした軌道を描く砲弾。

「雪風!」

 私は雪風に手を伸ばした。

「曳火ッ、くる!」

「ちっ!」

 雪風もまた、私の手を握り返す。

 空中で砲弾が炸裂した。曳火破裂は目標である雷巡棲鬼のみならず、そばにいた私や雪風も強く焦がし、大きく吹き飛ばす。
 汗で手が滑る。一瞬離れかけるのを必死に力を籠め、私たちは海面へと膝と肘で受け身をとる。

142 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:49:12.61 ID:vFdriOCE0

『一、弾着、夾叉強。二、曳火破裂、距離は三十二。三、弾着いま、夾叉弱』

 霧島さんの声。
 ちきちきと測距儀の鳴動。

『扶桑』

『はい』

『弾着確認よし。第一射……』

 体勢を可能な限り低くとった。

『――てっ!』

 砲弾は音よりも早く、したがって、耳へと震動が伝わるのは全てが終わった後。
 霧島の弾着観測は他の追随を許さない。そして、それ以上に、深海棲艦の無事を許さない。

 ぐらりとバランスを崩す雷巡棲鬼。腰かけていた悪鬼は大破し、その右足、膝から下もまた根こそぎ奪われている。

 好機だった。

「――」

 雪風が私を見た。何も言っていない。言わない。言うつもりがない。だって彼女は私のことをよわっちいと思っていて、だから、そんな相手の手助けなど必要としていない。
 だけどいま、確かに彼女は私のことを見たのだ。その意味が解らないほど耄碌するには、まだまだ時間が余っている。私は中学にあがってすらいない。言外のメッセージを読み取れないような愚図ではない。

 頷いた。それだけで返事は十分だった。
 私から視線を切る雪風。発進のタイミングは全く同時――示し合せたみたいに。

143 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:49:42.43 ID:vFdriOCE0

 砲を撃った。防御される。硬い装甲の前では大した意味を持たない。だけど、それは予定調和。
 その隙に響が切迫している。一気に飛び上がり、腰かけている悪鬼へと魚雷を投擲、中空で連続的な爆発が起こる。
 背後から神通が迫っている。砲火。雷巡棲鬼の背中、腰にいくつもの弾痕が刻まれる。白い巨大なおさげが揺れて、苦しんでいるのがわかった。

 殴打を受けて神通は下がった。しかし休息の暇は与えない。雪風が魚雷を撃ち、タイミングをずらす形で私も吶喊。千切れた右足、そのために悪いバランス、その弱点を最大限に突く。

 雷巡棲鬼による魚雷の斉射。漣の援護。魚雷同士が水面下で衝突し、海が炎を生み出しながら爆ぜる。

 雪風はその水柱に乗った。
 右手を高く掲げ、そこに巨大な一本の魚雷を顕現させる。

 単装砲が狙う――鳳翔が戦闘機で撃ち落とす。

 顔面に向けて、雪風はそれを振り下ろした。

144 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:51:16.46 ID:vFdriOCE0

 花火というにはあまりにも不細工で、太陽というにはあまりにもか弱い、そんな輝き。
 限りなく無茶な攻撃だった。至近距離で魚雷を使った特攻なんて、自殺行為以外の何者でもない。
 だけど、そうしなければならない瞬間というものは確かにあって、その瞬間とは即ちこのとき。身の危険を顧みずに一歩踏み出すに値する場面。

 爆風に曝されて大きく煽られるその姿を見て、私は咄嗟に手を伸ばした。

「雪風ッ!」

 雪風の口の端が笑みに歪む。

 結果として、雪風は私の手をとることはなかった。
 反対に、彼女が私の手首を掴んで、そのまま一気にひきつけて――遠心力に任せて放り投げる。

 証明してみせてよ。口の動きは、そう言っている。

 投げ飛ばされた私の先には、いまだ爆炎に顔面を包まれ、額から顎の下まで、大きく二筋の亀裂が入った雷巡棲鬼の姿がある。
 駆逐艦程度の砲弾では、雷撃では、鬼の装甲には大した傷をつけることはできない。雪風が果敢に攻撃をしてもその程度。しかし、確かにダメージはある。蓄積している。瞬時に回復などしやしない。

 先ほどの攻撃が雪風にとって決死の瞬間であったとするのならば、いまが、いまこそが、私にとっての、

145 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:51:48.35 ID:vFdriOCE0

 魚雷を顕現。

 術式展開――巨大化させて、

「Ураааааааа!」

 その亀裂の入った顔面へと叩き込んだ。

 破壊が爪先から頭のてっぺんまで駆け上がってくる。引き裂かれるような激痛。突き刺されるような灼熱。まばゆい光が視界をいっぱいに覆って、けれど全てを上回るのは、確かな手ごたえ。
 やってやったのだという達成感と高揚感。

 息が詰まる。衝撃に体は統制を失い、どうしようもなく真っ逆さま、海へと落ちていく。

「手ッ!」

 雪風が、雪風の、あぁ、まさか、そんな。

 私は差し出されたその手を掴んで、ぐっと引き寄せるように――引き寄せられた。
 バランスを崩しながらもなんとか海へと片膝をついて、海水によって冷やされた大気が気管と肺へと侵入し、そのあまりの温度差に思わず咽る。

146 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:52:26.04 ID:vFdriOCE0

『凄い! 凄いよ二人とも!』

 通信越しに最上さんの拍手喝采。

『でも、なんか変』

 漣の言うとおりだった。顔面がぐずぐずになった雷巡棲鬼は、頭部と言わず胸部、そして防御に回した腕の先まで甚大な損傷を被っているが、他の深海棲艦に見られるような溶解の始まる気配は見られない。
 やったと喜びを感じたのは一瞬だけだった。すぐさまそれが霞のように晴れていく。

 べきりべきり、そのコントラストの激しい肌へと罅にも似た亀裂が走る。そこから覗くのは赤黒い肉。
 更なる魚雷発射管が、今度は雷巡棲鬼の全身から生えていた。肩、そして鳩尾のあたりから、一際太く、かつ悪鬼の雰囲気を残した巨大な口。背中からは細く細かく大量に生え、一見すれば翼のようにさえ見える。
 失われた手首の先からは、補うように単装砲。

147 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:54:07.77 ID:vFdriOCE0

 圧力が開放されるように、姿を第二形態へと変貌させた雷巡棲鬼は、細く悍ましい唸りを挙げた。殺意。全身に走る亀裂など知ったことかというふうに、逃走の気配を見せることさえない。
 先ほどとは打って変わった異形。壊れゆく姿の中で、なお闘志を滾らせるものは、なんなのだろう。

 重苦しい駆動音。全ての魚雷発射管が一斉にこちらを向く。

『二射用意! 早くっ!』

 天まで轟く砲火の音。雷巡棲鬼の放った魚雷は扶桑の大口径砲、その弾着射撃とさえ相打って、空中に火の玉を作り出した。
 熱風と衝撃波に息ができない。水面を強かに打ち据える衝撃波は、抵抗の余地なく私たちの脚さえも止める。踏ん張っていなければすぐさま倒れてしまいそうだ。

『三射!』

 二回目。両者がぶつかりあった地点を中心に、海の深度さえ変わりかける。

「ナメルナヨォオオオオオオッ!」

 鳩尾から突き出た口が、粘液とともに巨大な魚雷を吐き出す。狙いは扶桑。彼女が一番の高火力であることを、敵も悟ったようだった。

148 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:56:20.83 ID:vFdriOCE0

 鳳翔の艦載機が爆撃を試みるも、既に敵は射出の体勢に入っているのか、まるで微動だにしなかった。雪風に手をひかれ、私もそこでようやく忘我から立ち直って、前へ進むことにのみ意識を齎す。
 単装砲が行く手を阻む。そのうち一つを撃ち落とし、残り三つは私が対応、その隙に雪風は雷巡棲鬼へ。

 霧島が立ちはだかった。

 右手を伸ばし、人ひとりぶんほどもある魚雷を、炸薬を、一身で受け止める。
 炸裂と爆炎、閃光。轟音と熱風。おおよそ赤く、熱く、苛烈な概念の集合が、生き物となって霧島を呑みこんだ。
 受け止めた右腕は既に炭化しており、二の腕から肩にかけては大きく肉がこそぎ落とされている。体の全面はほぼ第二度から第三度の火傷、それどころか魚雷の鉄片が手足と言わず、胸、腹、首筋にまで突き刺さっている。

『大破! 霧島、大破だ! 救援を回せ!』

 司令官が叫ぶ。そんなことはわかっている!

149 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:58:11.31 ID:vFdriOCE0

 最上は砲を背後から雷巡棲鬼へ向けた。翼をいくらか砕き、逸れていく。それでも一心不乱に連射、連射、連射。
 背後でぼやけた艦艇の亡霊が唸る。うぉおおおおん、一際大きく猛って、巨大な砲塔が形作られる。
 撃った。雷巡棲鬼は殆ど自動で空中に魚雷を生成し、リアクティブアーマーの如く威力を殺す。しかし、至近距離、なにより最上の全力は、そう容易く防げるものじゃない。

 吹き飛ばされた雷巡棲鬼が周囲へと魚雷を展開、切迫していた神通と雪風を少しでも遠ざけようと、全方位へ向けての乱射。

 そのとき。

 霧島が動いた。
 獣のような息を吐いて、一歩、前へと進む。

 ありえなかった。一瞬の思考の空白。戦場に置いては本来許されないその間隙は、けれど私だけではなかったようで、雪風も、神通も――雷巡棲鬼さえも。

150 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 00:58:43.70 ID:vFdriOCE0

『四射』

 そして、同じ戦艦の扶桑だけが、霧島の意地を理解している。
 だから惑わない。躊躇わない。

 全てが止まった世界はいまだけ全て彼女のものだ。

 既に砲の準備は整っている。

『弾着観測射撃』

 意志の力の塊とでも呼称できる、不可視の砲弾。

「ダァカァラァ! ムダ、ナンダッテェエエエエエ!」

 巨大な悪鬼が水面下から隆起する。巨大な口と歯、その中から生える魚雷発射管を以て、扶桑の一撃に対する壁となった。
 火花。悪鬼は当然扶桑の一撃を受け止めきることは叶わず、だけど、威力の減衰には成功した。雷巡棲鬼は失われた膝から下、そして自らが座する悪鬼を再生させながら、また全方位へと魚雷を発射する。
 もう二度と近づくなと言わんばかりに。

『ごめん、なさい』

 扶桑からの通信が途絶。ステータスバーは中破止まり。恐らく疲労と、弾薬の枯渇。

151 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 01:00:18.31 ID:vFdriOCE0

「無駄なことなんてあるかいな」

 式神が空を覆った。
 大編隊からなる絨毯爆撃。個々の威力もさることながら、抵抗の気配さえ奪う圧倒的物量。管制能力に優れた龍驤だからこそ成し得る力技。
 有り余る熱量が雷巡棲鬼を押し潰す。

『龍驤さん、ヲ級は?』

「倒したよ。なんとかな。ただ、結構消耗したな。艦載機もなけなしや。
 おっさん、状況は」

『……霧島が大破。大井と58がともに中破。夕張、神通が小破。扶桑は燃料と弾薬が切れてる。ただ、他の奴らに余裕があるかと言われると、怪しいな』

「ほうか。ふぅ」

 龍驤は細く息を吐いた。

「……撤退するか」

「龍驤さん!?」

 雪風が驚愕に声を荒げる。

『思い切りますね。いえ、決定に異論があるわけではありませんが』

 鳳翔は反対に落ち着いていた。もしかすると彼女は、こうなる未来をある程度は予想ができていたのかもしれない。

152 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 01:01:51.78 ID:vFdriOCE0

 私? 私は……どうだろう。あと少し、本当にもう一押しで、雷巡棲鬼を倒せるところまで来たんじゃないかという実感はあった。ここで敵を倒さずしてどうするんだ、そんな気持ちがないとは言えない。
 だけど、敵の損壊状況は進んでいるとはいえ、あの堅牢な装甲はいまだ健在。その気になれば悪鬼だってまだ呼び寄せることはできるだろう。
 対するこちらは戦艦二隻を先頭不能状態にさせられて、大井と58、赤城も落伍している。彼我の戦力差は大きい。

『……いいのか?』

 慎重な姿勢を堅持して司令官が問う。いや、それは質問ではなく、確認だった。それでいいんだな、という。あくまで全ての判断を龍驤に委ねるという意志が透けて見える。

「このまま戦闘続行してもうまみは少ない。霧島を失うわけにはいかん。他のやつらも、一歩間違えれば何が起こるかわからん。ここで無理して仲間を失うくらいなら、ウチは帰るよ。帰れば、また来られる。
 レ級は倒した。ヲ級もやった。雷巡棲鬼の損壊も甚大。データも十分。これ以上何を望む?」

 目的を違えてはならない、と龍驤は言っているのだ。

 新型を倒すことは、畢竟、私たちになんら利益を齎さないから。

153 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 01:02:30.76 ID:vFdriOCE0

 近海の平和だとか、世界の安寧だとか、そんな大きな物事を考えていた私たちは死んだのだ。御国のために奉公し、挺身して前線で戦う、そんな艦娘はもうトラックには存在しない。

 自分の幸せと、みんなの幸せだけを願って生きている。

 私は雪風の手を握った。それは殆ど無意識な動きだったけど、雪風はいやなかおをせずに握り返してくれる。
 冷たい手だった。もともとのたちなのか、それとも海風で冷えたのか、判断がつかない。せめてと包み込むように握り直す。

 隣にいる雪風と、気づけば私はおなじくらいの背丈になっていた。

「……別に雪風はいいです」

 不承不承という感じはしない。雪風も、無目的な戦いを好んでやるタイプではないのだ。
 戦わなければ誰も危険に晒されず、したがって護る必要もない。

「龍驤、帰投しよう」

 私も意思を表明した。いま、雷巡棲鬼は龍驤の艦載機の爆減でなんとかおさえこめているが、それも時間の問題だろう。龍驤自身がなけなしだと言っていた。撤退するならば、その判断は早いほどいい。

「すまんな、おっさん」

『人死にがでねぇならそれが一番だろう』

「その通りやね。
 ――艦隊、帰投するよ」

154 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 01:03:22.68 ID:vFdriOCE0



『嫌です』



155 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 01:06:37.39 ID:vFdriOCE0

 全体通信。
 無所属、識別番号なし。

『……漣?』

 司令官の声がやけに上ずって聞こえた。

156 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/18(月) 01:07:49.38 ID:vFdriOCE0
――――――――――――――
ここまで

長くなった。二話ぶん以上

あと三回でおしまいです。

待て、次回。
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 01:22:42.99 ID:5HZclzTf0

ここにきて漣が怖いな
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 01:23:03.69 ID:eSXzAQyqo
待ってた、乙
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 04:37:02.53 ID:LjOfAVs60
待ってる
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 12:35:30.38 ID:+nQzkiCwO
おつ
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 12:39:54.76 ID:Tiaiy7i70
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 12:43:06.73 ID:ynPSsXf9O
すっかり最近の楽しみだ
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 12:47:21.23 ID:Fw4f/wgi0
おつ
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 17:08:09.44 ID:xHe5gAWEO
おっつおっつ
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 19:11:17.78 ID:Cm7Sqf+t0
今更新キャラはないだろうし漣…
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