【シュタインズ・ゲート】紅莉栖「既成概念のメタフィクション」

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1 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 15:54:48.13 ID:zf1EiWAw0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527695784/

上のSSの続編。前作見てなくてもおK。
書き終わっているので順次投下。
分量増えたのでマターリとみていただければ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1527922487
2 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 15:56:24.85 ID:zf1EiWAw0
どうして今まで思い至らなかったのだろう。

私は“私”に問いかける。

トップダウン記憶検索信号が正常に働いていなかった?

あるいは。

海馬支脚に何か不具合が?

いいえ、重要なのは“想起”できなかった理由ではない。

脳なんてまだまだ未解明のことだらけなのだから。

とにかく今、重要なのは――――。

紅莉栖「私の服装が菖蒲院の制服しかない……!」

ホテルの衣装棚の前で立ち尽くす紅莉栖。

彼女の前には菖蒲院の制服を改造したものが何着も吊るされていた。

3 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 15:58:19.90 ID:zf1EiWAw0
*

つい一、二週間前のことだ。日本では、テレビや新聞、SNS等で例年を超える猛暑が予測されることが騒がれていた。

予報通り、連日暑さを増していく状況に牧瀬紅莉栖は慣れていなかった。

なぜなら彼女は日本生まれ、アメリカ育ち。基本的には今彼女が過ごしてい秋葉原よりも、寒い地域や研究室での冷房が効いた環境での生活のみだった。

故に、彼女の思考は“クール”を求めていた。

行動は早く、“髪、切っちゃおう”と長年自分を形成してきたファクターであるロングヘア―へとあっさり別れを告げた。

付け加えると、それによって恋人である岡部倫太郎の興味が自分に向いてくれることを期待しての行動でもあった。

結果は成功。

しかし常人であれば、ここで満足してしまうところを彼女はしなかった。

なぜなら、彼女は牧瀬紅莉栖。

弱冠17歳にして『サイエンス』に論文が載った才媛。

気づいてしまったのだ。髪をいじるのになぜ服装はそのままなのか?と。

紅莉栖「原因としては菖蒲院の制服が汎用性が高いせいよね……フォーマルとカジュアルどちらでも使えるから効率的だし。
一応他にもあるけど部屋着の“ヽ(*゚д゚)ノTシャツ”だけだし……
でも、さすがにこのまま女子高の制服だけってのは大人としてどうなのって話しよね……」

紅莉栖「よし、決めた」

紅莉栖「まずは電話ね」
4 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 15:59:21.93 ID:zf1EiWAw0
*

岡部「MAGEZです。お願いしますー」

8月某日。容赦なく照りつける日光がアスファルト、ビルの壁面、ガラスに反射されて秋葉原駅を焼き尽くさんとしていた。

「あっ、オカリーン」

そんな秋葉原の駅前で額に汗を滲ませ、ティッシュを配る白衣の青年。そんなシュールな人物に声をかける人影があった。

岡部「まゆり、来てたのか」

まゆり「うん! えっへへ〜、しっかり働いとるかね〜」

岡部「無論だ。これも我がラボに“二ヴルヘイム”を再現するためのもの……手など抜いてられん」

まゆり「にぶるへいむ?」

岡部「北欧神話の……。いや、いい。それで、これからラボか?」

まゆり「うん、もうすぐコミマだからねー、衣装を完成させなきゃなんだー。あ、そうそう、これオカリンに差し入れだよー」

まゆりがカバンからペットボトルを取り出す。

岡部「おお! ドクペではないか!」

まゆり「これ飲んでバイト頑張ってほしいのです」

岡部「助かる! さすがはまゆりだ!」

まゆり「オカリンに喜んでもらえて、まゆしぃは嬉しいよ〜」

岡部「よし、じゃあ俺はバイトに戻る」

まゆり「うん! じゃあ、またあとでね」

岡部「ああ」

5 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 15:59:51.55 ID:zf1EiWAw0
*

紅莉栖「出ない」

紅莉栖「バイトかしら……」

紅莉栖「まあ、いいわ。ラボにはいるだろうからRINEだけしておきましょう」

紅莉栖『話しがあるの。今からラボに行くから確認したら返事をくれる?』

6 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 16:00:50.22 ID:zf1EiWAw0
*

ダル「ふぃー、あちぃー」

まゆり「トゥットゥルー♪」

ダル「お、まゆ氏。今日も早いね」

まゆり「もうすぐコミマだからね〜。ダルくんは徹夜?」

ダル「うん。スズたんルートを攻略してたお」

まゆり「もう、ちゃんと寝ないと駄目だよ?」

ダル「徹夜には慣れてるから大丈夫だお」

まゆり「由季さんも心配してたよ? ダルくんがエッチなゲームばっかりやってるから将来が不安だーって」

ダル「まゆ氏、それマジ?」

まゆり「うん」

ダル「はい、以後気をつけます。もうしません。ラブリーマイエンジェル由季たんに誓って!」

まゆり「ダルくんもすっかりリア充さんだねー」

7 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 16:02:35.29 ID:zf1EiWAw0
*

紅莉栖「さて、もうすぐラボだけど返信は……来てないわね」

天王寺「お、助手の姉ちゃんじゃねーか。日傘なんて珍しいな」

紅莉栖「助手じゃありません」

日傘を畳んで声をかけてきた人物と向き合う。

天王寺祐吾????岡部たちはミスターブラウンと呼んでいる。

彼は未来ガジェット研究所の入っている大檜山ビルの一階で『ブラウン管工房』を構えている。

見た目は禿頭、コワモテ、筋肉質、加えて大檜山ビルのオーナー―――つまり大家であるため岡部や橋田は頭が上がらない存在だった。

天王寺「そういえば、最近岡部バイト始めたんだってな?」

紅莉栖「ええ、エアコンをラボに付けたいからって、ティッシュ配りを」

天王寺「あいつがティッシュ配りねえ……ってなに?」

紅莉栖「似合わないですよね。私も驚きました」
8 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 16:03:13.24 ID:zf1EiWAw0
天王寺「そうじゃなくて、エアコンを付けたい? 俺はそんな話し聞いてないぞ」

紅莉栖「え、そうなんですか?」

天王寺「ああ、別にあいつが金出すんってなら構わないが筋は通してもらわないとな」

紅莉栖「すみません。あいつには私からも言っておきますので」

天王寺「ああ、いいって、いいって助手の姉ちゃんが謝ることじゃねえよ。どうせ、またあいつが勝手に言い出したんだろ?」

紅莉栖「ええ、まあ……」

天王寺「まったく……バイトの件だって言ってくれりゃ雇ってやったのによ。似合わねえ、ティッシュ配りなんてやりやがって」

紅莉栖「それはそれで似合わないような……」

白衣の上に『I ? CRT』や『ブラウン管 ? 萌』の描かれた前掛けを着用した岡部を想像する。

天王寺「ま、とにかく、暇ならいつでも雇ってやるからって岡部には言っといてくれよ」

紅莉栖「わかりました」
9 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 16:04:33.70 ID:zf1EiWAw0
ラボの階段を駆け上がる。返信は依然ない。もう、来ているだろうか?

紅莉栖「ハロー」

まゆり「紅莉栖ちゃん、トゥットゥルー」

ダル「牧瀬氏、おはよう」

紅莉栖「まゆり、RINE見てない?」

まゆり「RINE? あ、ごめん、見てなかったよー」

まゆり「どうしたの?」

紅莉栖「ちょっとね……。橋田」

ダル「うん?」

紅莉栖「悪いけど席を外してくれるかしら?」

ダル「まさか……百合展開ktkr!? 牧瀬氏が攻めでまゆ氏が受けで……
“駄目! マイスプーンをそんな使い方しちゃ!”
“大丈夫、私はあなたのことを愛してるから痛い思いはさせないわ”なんて……ハァハァ」

紅莉栖「それ以上キモイ想像垂れ流したら海馬に電極ぶっ刺すぞHENTAI」

ダル「それだけはやめてください」

まったく、こんなやつに彼女ができるんだからまだまだ世界には不思議なことだらけね……
10 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 16:05:17.64 ID:zf1EiWAw0
ダル「ま、いいけど、終わったらRINEしてお」

紅莉栖「恩に着るわ」

ダル「報酬はダイエットコーラでいいのだぜ」

紅莉栖「調子に乗るな」

橋田が出て行ったのを確認してから口を開く。

紅莉栖「まゆりにお願いがあるの」

まゆり「なあに?」

紅莉栖「私の服を見繕ってほしい」

途端。まゆりの表情が喜びのそれへと変わった。

11 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 16:09:54.80 ID:zf1EiWAw0
まゆり「紅莉栖ちゃん! コスプレやる気になってくれたんだね!」

紅莉栖「ちがっ」

まゆり「まゆしぃねえ、ずっと考えてたんだ」

紅莉栖「何を?」

まゆり「紅莉栖ちゃんに似合うコス! やっぱりブラチューのセイラちゃんかなってまゆしぃは思うんだけどどう思う?」

紅莉栖「ぶ、ブラ……?」

まゆり「それとも雷ネットのきらりちゃん……ってあれはルカくんがやってたねえ、えへへー」

紅莉栖「まゆり、ストップ」

このままでは話しの腰を折られかねない。

まゆり「あ、ごめんね」

紅莉栖「服を見繕ってほしいってのは、私服を一緒に買いにいってほしいって意味なの」

まゆり「そういうことか〜」

まゆり「オカリンのため。だね」

紅莉栖「ふぇっ!? どうして!?」

急に論理が飛躍したものの核心を当ててきたまゆりに焦ってしまう。

まゆり「まゆしぃの目は誤魔化せないのです」

――――後にまゆりに、あの時私の考えていることがなぜわかったの?と聞いた。

答えは、“オカリンと関係のある話しをしてる時の紅莉栖ちゃんって目がキラキラしてるんだ〜”

なんて綿菓子のようにふんわりしたものだった。しかしまゆり、恐ろしい子!

12 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 16:11:03.23 ID:zf1EiWAw0
紅莉栖「お願い! 橋田には言わないで!」

まゆり「どうして?」

紅莉栖「だってあいつ私が、服買いに行くなんていったら岡部に話すに決まってるわ」

まゆり「んー考えすぎじゃないかな」

紅莉栖「とにかく! このことは私とまゆりだけの秘密にして!」

岡部にだけは、知られるわけにはいかない。
 
というか、今まで最低限の服装で済ませてきた私が人のために―――岡部を喜ばせたいがために隠れてオシャレをする。

それがなんだか自分自身気恥ずかしかった。

まゆり「わかったー」

13 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 16:11:35.01 ID:zf1EiWAw0
紅莉栖「じゃあ、いつにしましょうか?」

まゆり「まゆしぃはコミマが終わったらバイトの日以外は空いてるよー。あ、でも紅莉栖ちゃんアメリカにはいつ帰るんだっけ?」

紅莉栖「その件は9月の予定だから8月中は大丈夫。そうね……この日はどう?」

まゆり「うん! 大丈夫!」

紅莉栖「OK じゃあこの日で。場所はまゆりに任せるわ」

まゆり「わかったー。 一緒にオカリンが驚くような可愛い服を選ぼうね!」

紅莉栖「ちょっ、まゆり声大きい!」

まゆり「えへへーごめん」

14 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 16:12:10.83 ID:zf1EiWAw0
*

ダル「行くあてがないお」

ダル「メイクイーンは……今日はフェイリスたんのシフトじゃないし」

ダル「由季たんは何してるんだろう」

尻ポケットから携帯を取り出すダル。

ダル『由季たんヾ(☆´3`)ノシ⌒chu♪』

由季『どうしました?Σ(´Д`○)』

ダル『ラボにいたんだけど、牧瀬氏に席を外してほしいって言われてさ。暇だお(´・ω・`)』

由季『また、牧瀬さんに失礼なことを言ったりしてませんか(´・ω・)?』

ダル『ギクゥ!Σ(゚◇゚ノ)ノ』

由季『もう、駄目ですよ? 至くんの癖なのは理解してるけど、誰でもわかってくれるわけじゃないですからね(*´・д・)アン?』

ダル『それはつまり由季たんには言いたい放題でもおkってことですね。
わかります(`・ω・´)』

由季『違いますからね?』

ダル『冗談だお』

由季『ところで至くん、暇なら今から出かけませんか?』

ダル『もしかしてデートですかーッ!?』

由季『YES! YES! YES! ですよ』

ダル『ちょっと準備するから待っててほしいお。場所はいつものとこでおk?』

由季『はい、準備できたら連絡くださいね』

15 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 16:13:15.37 ID:zf1EiWAw0
*

岡部「あれは……ダル?」

ダル「あ、オカリン。バイト終わった?」

岡部「ああ。ところで外に出てどうした? どこかに出かけるところだったか?」

ダル「うん、これから由季たんとデートなんだお。ただ牧瀬氏に席を外してほしいって言われて今はラボの外」

岡部「なんだ、またHENTAI発言でもしたのか?」

ダル「僕の信用なさすぎて、全俺が泣いた!」

岡部「違うのか?」

ダル「違わないけど。とにかく今から牧瀬氏に、事情を話して入れてもらえるようにするからオカリンも入らない方がいいと思われ」

岡部「わかった」

天王寺「おう、岡部!」
16 : ◆aPZUlJLxaE [sage saga]:2018/06/02(土) 16:14:30.78 ID:zf1EiWAw0
岡部「ヒィ」

岡部「な、なんだ? ミスターブラウン、家賃の値上げなら応じないとこの前言ったばかりだぞ!」

天王寺「お前、エアコンを部屋に付けたいそうじゃねえか」

岡部「え? ええ……なぜそれを?」

天王寺「助手の姉ちゃんから聞いたぞ。お前、大家であるこの俺に一言もないとはどういう了見だ?」

岡部「そ、それは金が貯まってから申し上げようと思っていたのだ」

天王寺「なんだ、岡部にしてはちゃんと考えていたのか」

岡部「うむ。断られる話しとも思わなかったしな。ならば用意してからでもいいだろうと」

こんなオンボロビルのことだ。仮に俺たちが出て行ったとしてもエアコンは設備として付けられたままだろう。

もっとも、そうしても人が来るとは思えないが。

天王寺「まあ、いい。けどよ、今度からは早めに相談しろや。
     俺がオーナーじゃなければ、付けることができなかったってことも考えられるんだからよ。
     それに、バイトの件だって言ってくれれば雇ってやったんだからな」

岡部「いえ、それは結構です」

とてもじゃないがこの坊主頭と萌郁と小動物と一緒に働くなんて考えられなかった。

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