【たぬき】城ヶ崎美嘉「腹ぺこ悪魔とまんぷく小悪魔」

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1 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/05/29(火) 02:02:21.30 ID:EFGwLI3E0

 モバマスより城ヶ崎美嘉と莉嘉のSSです。
 独自解釈、ファンタジー要素、一部アイドルの人外設定などありますためご注意ください。

(※わかりづらいのでスレタイにたぬき付けました)


 前作です↓
鷹富士茄子「現在、未来、茄子ですよ〜」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526315837/

 最初のです↓
小日向美穂「こひなたぬき」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1508431385/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1527526941
2 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/05/29(火) 02:08:41.33 ID:EFGwLI3E0


 いつも飲んでる銘柄の缶コーヒーを買って、誰より早く事務所に入る。
 思った通りあの人はもういて、昨日別れた時と同じ格好でデスクに向かっていた。

「おはよ、プロデューサー」
「ああ、おはよう美嘉。土曜なのに早いな」
「自主トレしとこうと思って。はいこれ差し入れ」

 できるだけ自然な感じにコーヒーを差し出すと、彼は「ありがとう」と笑った。

「ねえ、ブラックって美味しいの?」
「ん? んー……そんなでもない」
「え。じゃ何でいつも飲んでるのそれ」

 書類から目を離さないまま器用にプルタブを開ける、そんな横顔をアタシは見ている。

「気分の問題かな。飲むとなんか、やるかーって感じになるんだ。パブロフのなんとかってあるだろ、あれと似たようなもんだよ」
「スイッチが入るってこと?」
「そんな感じ。美嘉も何かそういうルーチンがあるんじゃないか?」


 ある。
 今がそれ。

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/29(火) 02:09:50.15 ID:26OjhPAFo
スレタイ分かりやすくて助かります
4 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/05/29(火) 02:11:19.54 ID:EFGwLI3E0


 自主トレをしに来たっていうのは、半分は方便だった。
 レッスンルームを開けられるようになるまでもう少し時間がかかる。
 それまでこうして二人で過ごすというのが、アタシにとっての一つのスイッチ。

 他愛のない話でも別に良いんだ。
 他の誰かが来たり何か始まる前に、一度こうしてアタシ一人に向けられた言葉が欲しいだけ。


「それ、何見てるの? 履歴書?」
「次のオーディションに来る子達の資料。ちなみに刺繍封筒だ。サンキューちっひ」

 ちょっと見てみると結構分厚くてびっくりしちゃった。

「へぇ、来てるじゃん! この子達みんなプロデューサーが担当するの?」
「何人受かったか次第だな。誰がどこに配属されるかもわからないし、気の早い話だよ」


 いよいよここも大所帯になってきたよね。
 うちのプロダクションはかなり全体規模が大きくて、所属アイドルや企画の方向性ごとに幾つもの部署に分かれている。
 この部署もなんだかんだで色んな子がやって来て、社内でも名が知られるようになってきた。
 ……色んな意味で。

5 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/05/29(火) 02:12:44.27 ID:EFGwLI3E0


「いやぁ思えば遠くへ来たもんだ」

 人が増えたから、こうして二人っきりで話をする機会もめっきり減った。
 でも、ま――

「なーに浸ってんの。まだまだこれからでしょ?」
「それもそうだな。これからも頼りにしてるから、フォロー頼むぞ、先輩」

 頼りにしてる――
 言葉と期待がお腹の底に落ちて、アタシは「ん」と喉を鳴らした。

 ……うん、おいしい。

「トーゼン! まかしときなって★」

6 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/05/29(火) 02:13:30.47 ID:EFGwLI3E0


「さて、今回の分はこれで最後……おっ、華のある子だ。いるもんだなぁやっぱり」
「かわいいんだ?」

「かなりな。えーなになに、城ヶ崎……ん?」

「は?」

 プロデューサーは書面に顔を近付け、崩しの激しい文字をなんとか読み取ろうとする。

「城ヶ崎……えーと字が丸くて読みづらい、り……」
「ちょっと見せて!」

 ずずいっと顔を寄せて、ほっぺたがくっつくのにも構わず履歴書をガン見した。
 見覚えのある丸文字、あちこちに貼られてるシール、何より毎日見てる顔の写真――


「――り、莉嘉!!?」

7 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/05/29(火) 02:15:07.75 ID:EFGwLI3E0


   〇

  ―― 後日 事務所


P「えー、ということで……」

P「先日のオーディションを見事パスして、うちの部署の配属となった、城ヶ崎莉嘉さんだ」

P「みんな、先輩として色々教えてやって欲しい」

莉嘉「やっほー☆ 城ヶ崎莉嘉だよー! みんなよろしくね〜っ」

美穂「わぁ、かわいい……!」

美穂「……って、城ヶ崎?」

蘭子「城ヶ崎、とは――――」


莉嘉「おねーちゃーーーーんっ!! アタシもアイドルなれたよーーーーーーっ!!」ダキッ


美嘉「莉嘉! アンタ家じゃ何も……っ!」

芳乃「ほほー……やはりそうだったのですかー」

紗枝「そういえば、妹はんがおらはるって言うてはりましたもんなぁ」

周子「写真よく見せて貰ってたわ。いやー実物はえらい可愛いね」

莉嘉「あっ、小日向美穂ちゃん!?」

美穂「え!? あ、うん、そうだけど……」

莉嘉「わぁわぁ、ほんとだすっごく可愛いっ! ねぇねぇ狸ってホント!? 尻尾どこ!? カブトムシ好き!?」パタパタパタパタ

莉嘉「そっちは小早川紗枝ちゃん! あっ塩見周子ちゃんでしょ!? わーっ依田芳乃ちゃんだ! 神崎蘭子ちゃんもいるーっ!」チョロチョロチョロチョロ

美嘉「ちょっと莉嘉っ! あんまり騒がないの!」

8 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/05/29(火) 02:16:33.44 ID:EFGwLI3E0

   〇


 そんなこと一言も聞いてなかった。
 アタシをびっくりさせようと思って、今までずっと内緒にしていたらしい。

 今LINEでメッセージ送ったら、ママもパパも知ってたみたい。
 まんまとしてやられたわけだ。
 プロデューサーが運転する車の中で、アタシは肩をすくめてスマホを置いた。

「ちなみに100%実力だ。うちに配属されたのも完全に偶然」
「それはまあ、そうなんだろうけど」
「審査員はみんな褒めてたよ、筋がいいって。誰かさんを手本にしてたからじゃないか?」

 当然。莉嘉はやればできる子だ。

 それはいいんだけど、こっちとしてはあまりに急で、まだ心の切り替えができてないのが正直なところ。
 莉嘉が、アイドル……。
 アタシはその、同じ部署の先輩、か。

9 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/05/29(火) 02:19:12.50 ID:EFGwLI3E0


 プロデューサーは車を運転しながら、何か言いたそうだった。
 助手席から見る横顔はもうすっかり馴染みの光景で、だから小さな変化には結構敏感だったりする。

「なに? 莉嘉のこと?」
「細かいことだけどな。ほら、目とか髪の色」

 ああ。

「違うのが気になる? どっちも生まれつきだよ、アタシのはママの遺伝だし」
「それじゃ妹さんの方は?」

「莉嘉もママの遺伝」

 びっくりしてる。無理もないよね。
 これ言うと大抵驚かれるから、つい笑ってしまう。


 アタシ達は悪魔だ。

 ママが純血でパパは人。
 そういう種族の、ハーフってわけ。

10 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/05/29(火) 02:21:45.62 ID:EFGwLI3E0


  ―― 後日 事務所


「うぁ〜、レッスン疲れたぁ〜」

 莉嘉はすっかりクタクタになって戻ってきた。胸にはもふもふのうさぎ。
 うさぎはしゅたっと降り立ち、ポンッ! と戻って。

「お疲れさまですっ、莉嘉ちゃん」
「二人ともおかえり。智絵里ちゃん、莉嘉のやつ何か迷惑かけたりしなかった?」
「そんなことないです。莉嘉ちゃんすっごく頑張り屋さんで……私も引っ張ってもらっちゃいました」
「えへへ〜、智絵里ちゃんにいろいろ教えてもらったんだ!」

 そっか、智絵里ちゃんもすっかり先輩か。
 莉嘉は事務所の何もかもが珍しいみたいで、入る度に目を輝かせていろんなものに興味を示した。

「あ! 志希ちゃんだ! ハスハスの!」
「にゃはは〜。おまえもハスハスしてやろうか〜」
「それでそっちはフレちゃん! フンフンの!」
「のんのん、フンフンフフ〜ン♪ りぴーとあふたみー?」
「フンフンフフーン♪」
「オー♪ リカ、とっても上手ですね?」
「ありがとー! えっと、アーニャちゃんだよね!」

11 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/05/29(火) 02:23:03.92 ID:EFGwLI3E0


「はいはい大人しくする」
「ん゙にゅ」

 鼻をつまんでソファの隣に座らせる。
 この事務所は溜まり場みたいになっていて、手隙の子達がいつも思い思いに過ごしている。
 莉嘉にはそれが新鮮でたまらないみたいだった。

 ……無理もないかもしれない。
 テレビや雑誌でよく見る子達だし、アタシ自身、結構ここの話はよくしてたから。

「ふふ。大変ね、美嘉お姉ちゃん?」
「もー大変大変。ただでさえ家でも手のかかる子なんだから」
「きゃーっ☆」

 アタシに頭をぐりぐりやられるのが莉嘉は好きだ。
 奏の冷やかしもまあ、甘んじて受けるべきなのかも。

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/29(火) 02:23:31.05 ID:vuzwAbMxo
>>7
カブトムシはたぬきの栄養源だよ
13 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2018/05/29(火) 02:25:14.86 ID:EFGwLI3E0


「あれ? てかPくんいないの?」

 と、莉嘉は今更になって気付いた。
 確かに今は事務所にいない時間だけど。

 ……てか、早速この子はプロデューサーのことを君付けで呼んでる。
 懐っこいというか、なんというか……。プロデューサー本人が気にしてないっぽいからいいけど。

「プロデューサーなら外のスタジオじゃない?」
「なんで!?」

 なんでって。

「確か美穂の撮影についてったんでしょ。だよね、ちひろさん?」

 確認を取ると、ずっとここにいたちひろさんも頷いた。
 莉嘉はなにやら難しい顔をしていた。

「え〜っ、いつもお姉ちゃんと一緒にいるんじゃないの? それっておかしくない?」

 それは……え?
 なんかおかしいことあった?

 こっちの方こそ釈然としないアタシを見上げ、莉嘉は当然のことのように――

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/29(火) 02:26:23.46 ID:K6/CMv6Ko
今回はご飯の話……たぬき……カブトムシ……あっ(察し)
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