このスレッドは950レスを超えています。そろそろ次スレを建てないと書き込みができなくなりますよ。

【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

829 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/02(土) 22:11:52.14 ID:fXHa/LYp0
ここまでー
髪生え変わるの早くね?って思う方がいるかもしれません。
私もそう思います。
たぶんこのSSにおける人類は私たちと比べて髪が伸びるスピードがめっちゃ速いのかもしれません。
そういう事でご納得お願いします。

また来週。
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 22:38:11.78 ID:CrrNEa07O
乙でした。
やさぐれてるなぁみぽりん。小梅ちゃんの奮闘に期待。
誰かお姉ちゃんにも救いの手を…
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/03(日) 00:59:01.88 ID:e5ysYx7Ro
おつー
マリーアントワネットとか一晩だし平気平気ww
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/03(日) 01:13:05.99 ID:GQlDCzEA0
乙ですー
そういえばみほまほだけじゃなくて赤星さんも少なからず病んでるんだよな…
なんにせよ毎週楽しみに待ってます
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/03(日) 05:53:11.93 ID:tYHdSjdwo
>>831
まぁマジレスするとあれはあり得ないらしいけどね
逆に言えばマリー・アントワネットの投獄生活期間の2ヶ月で真っ白になる可能性はある。相当なストレスを感じれば。
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/03(日) 13:24:34.63 ID:HQe++GaR0
惑星ガルパンの話だからOK
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/03(日) 14:36:58.15 ID:ossf4eG+0
>833
一度生えたあとの髪は脱色・染色しなければ色が変わる事はないし
一ヶ月で伸びる長さは1cm前後だから2ヶ月あっても無理やで

>834
いくら軽戦車つーてもランクルより重いのに
女子高生数人でひっくり返った状態から元に戻せるとか
わしらの世界だったら超人やな
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/03(日) 16:28:02.40 ID:XwZRdDw20
更新乙
段々と過去編(!?)が時系列本編につながりつつある
いつもありがとう!
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/03(日) 17:04:11.99 ID:xPLGwZMZ0
乙ですいつも楽しみに見ています
作者様がこれをいつ目にするのかはわかりませんが、毎週の更新を楽しみに待っているというファンの一人として、この素晴らしい作品を書いてくださってありがとうという感情をお伝えしたくてコメントします
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/04(月) 13:38:20.31 ID:v26/Zja/O
地毛だったのか、染めていないと思い込んでるだけだと思ってた
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/06(水) 21:42:05.35 ID:FL7p9tJE0
早くして
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/09(土) 03:46:26.15 ID:fsX5+B8w0
やばい、みぽりんにシンクロして泣きそうになってきたわ
1番慕ってた人を助けられずに目の前で死なれたりしたらそらこうなるわな
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/09(土) 15:12:39.21 ID:xfGLSgEk0
毎週の楽しみ
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/09(土) 16:44:58.65 ID:V6mFoo7D0
ageカスに楽しむ権利はないぞ
身の程を知れ
843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/09(土) 20:11:53.74 ID:XqJwsQoc0
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/09(土) 20:32:34.17 ID:pZcxkURu0
作者以外はメール欄にsage入力がマナー
845 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/09(土) 21:12:31.14 ID:5zdhLM0A0

みほ「ごめんね、驚かせちゃって。染めようとは思ってるんだけどさ」

小梅「あ、いえ……私こそすみません。それじゃあこっちに」


これ以上私の姿について触れるのをためらったのだろう。赤星さんは話を打ち切ると私を促す。

私はその後に続き、久しぶりに、本当に久しぶりに校門をくぐった。


小梅「こっちです。昼の内に外に出して隠しておいたんですよ」


赤星さんこちらを振り向かずそのまま学校の裏にある練習場、そのさらに奥にある林の中に入っていく。

その後をついていくと、いつの間にか赤星さんの手には懐中電灯があり、街灯はもちろん、月明かりすら雲でおぼろな林の中を頼りない光で進んで行く。

そして、20メートルほど行ったあたりだろうか。赤星さんが立ち止まり、こちらを振り向く。


小梅「みほさん、これですよ」


懐中電灯の小さな光がその車体を映し出す。全体ははっきりとは見えないが、それでもその戦車が何なのか一目でわかった。


みほ「赤星さん、これ……」

小梅「……はい」



暗い林の中にたたずむそれは――――U号戦車だった。



『私は楽しかったわよ。あなたの実力の一端を垣間見れた気がするわ』



『……楽しかった。本当に、楽しかった』



あの日の夕焼けが笑った記憶が、泣いた記憶が、彼女の笑顔がよみがえる。

その奔流で心が一杯になって、私はその場にしゃがみ込んでしまう。


小梅「みほさん……やっぱり、辛いのなら……」


赤星さんの心配そうな声。私はそれにすぐには答えず、ゆっくりと立ち上がり目を閉じて深呼吸をする。

大きく吸った息を、大きく吐く……よし。


みほ「……大丈夫だよ。……うん、大丈夫」


大丈夫だ。少なくとも、今は。


小梅「……わかりました。それじゃあ私が操縦しますから指示お願いします」

みほ「うん。それで、目的地は?」


赤星さんはそれに言葉ではなく懐中電灯で答える。

その光が示す先は――――――


小梅「学校の裏山。山頂、目指しましょう」


846 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/09(土) 21:13:39.54 ID:5zdhLM0A0




ガタガタと揺れる戦車。

当たり前だが学校の裏山の道は舗装なんてされておらず、道も戦車が一輌通れる程度の幅しかない。


みほ「赤星さんもっとゆっくり」

小梅「ごめんなさいっ久しぶりだから……」


ただでさえ視界の狭い操縦席にこの曇った夜空が加わってしまうと戦車のライトなんて大した意味を持たない。

だから車長である私がしっかりと周囲を見て、操縦手に的確に指示を飛ばさないといけない。


みほ「落ち着いて。赤星さんの代わりに私がちゃんと見てるから」

小梅「はいっ!」


私も内心慌てたり焦ったりしている。

いくらなんでもこんな闇夜に戦車を走らせる経験なんて無いから。

けれどそれを声には出さずに指示を出す。


みほ「この坂、急だから気を付けて」

小梅「はい!」


曲がって、登って、曲がって、時たまガクンとなって。

半年以上碌に動かしていなかった体が悲鳴を上げて、それでも踏ん張って。


みほ「あと10メートル進んだらふもとまで真っ逆さまだよ」

小梅「は、早く言ってください!?」


手探りの中、少しずつ私たちは山頂を目指していく。

そして――――道の終わりが来た。

847 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/09(土) 21:25:04.01 ID:5zdhLM0A0





山頂よりちょっと下のあたりだろうか。依然戦車の前には道が続いているものの、それはふもとへ下りるための道、ここは折り返し地点という事か。

私の視線の先には山頂まで続いているであろう階段がある。


みほ「……ここが目的地、かな」

小梅「……はい。でも、もうちょっと」


赤星さんは戦車から降りると再び懐中電灯を手に階段を上り始める。

明りを持ってない私は慌ててその後をついていく。

そして今度こそ、私たちは山頂へとたどり着いた。


小梅「……どうですか?」

みほ「……綺麗だね」


山頂から見下ろす夜の街は点々と、明りがまるで星のように輝いている。

黒森峰の学園艦が大きいのは知っていたが、こうやって一望するとその大きさを実感できる。

私は地べたに座り込んでじっと、その景色を見つめていた。

すると、同じように隣に座っていた赤星さんが口を開く。


小梅「私、ここに結構来てたんですよ」

みほ「そうなの?」


山登りが趣味だなんて聞いたことがなかったけど。私の疑問に赤星さんは直ぐには答えずじっと街明りを見つめる。


小梅「……昔、私が不貞腐れてた頃。何もかも忘れたくてこの山を登ったんです」

みほ「ずいぶん体育会系だね」

小梅「あはは。戦車道やってるんですからその通りでしょう?」


言われてみればその通りだ。赤星さんも、私も。……あの人も。毎日のように体を動かして、冬でも汗まみれになってた。

昨日のように思い出せるその光景。その思い出に意識が遠のきそうになるのを頭を振って耐える。


小梅「……夕方から登り始めて、登り切ったころにはもう真っ暗で、代わりに街と星と月がキラキラと輝いていました」


「残念ながら今日は街明りだけですけどね」赤星さんはそう言って苦笑する。


小梅「別に、この夜景を見たから奮起したとか、そんなドラマチックな事は無いですけど。

   それでも。あなたの優しさに救われるまで私が逃げ出さなかったのは、この景色があったからかもしれません」


あなたの優しさに救われた。赤星さんはそう言うものの、私はその事をよく覚えていない。

あの頃の私は赤星さんも気づいていた通り自分の事しか見てなくて、上っ面の言葉しか人にかけていなかったから。

だから、救われた。だなんて大仰な事を言われても私はどう返せばいいのかわからない。

それは多分赤星さんも察しているのだろう。私の返事を待たずに話を続ける。


小梅「人間、もう駄目だ。なんて思ってても、なんてことない事でとりあえず明日も頑張ってみようってなるのかもしれません」


さっきより少しだけ薄くなった雲がそのベールを通してわずかに月光を降ろす。

暗闇に慣れた目で辛うじて見える赤星さんの横顔は真剣で、辛そうだった。

848 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/09(土) 21:33:58.70 ID:5zdhLM0A0

小梅「……みほさん」


その瞳が、私を見つめてくる。


小梅「……事故の事、エリカさんの事。忘れろなんて言いません。……忘れる事なんてできません」


潤んだ声はけれども決意を込めた力強さを伝えてくる。


小梅「だけど、黒森峰(ここ)には私たちがいます。隊長が、私が、皆が」


赤星さんは痛みをこらえるかのように胸元を掴み、涙をこらえるかのように大きく目を見開く。


小梅「だから……少しだけ、少しだけで良いんです。前を向いていきませんか?」



『ちゃんと前を向きなさい』



赤星さんの言葉に、かつて交わした約束を思い出す。

強い人だ。エリカさんも、赤星さんも。

私なんかよりもずっと。

今日も私のためにここまでしてくれたのだろう。赤星さんだって辛いだろうに、傷はまだ癒えていないだろうに。

それよりも、私をと。


小梅「みほさん……?」


私は立ち上がって街を見下ろす。星の代わりに輝く街並み。そのあちこちが、私にとって大切な場所だった。


みほ「赤星さん、あそこ。いつも一緒に帰ってた道」


私が指をさすと、隣に立つ赤星さんが懐かしむように目を細める。


小梅「……はい。エリカさんは『あなたたちが勝手についてきてるだけよ』なんて言ってましたけど」

みほ「ほら、たぶんあそこのコンビニかな?私がいつまでも居座ってるからエリカさんに怒られたのは」

小梅「さすがに、私もあれには呆れましたよ」


赤星さんが潤んだ声でクスクスと笑う。

一緒に学んだ学校が。一緒に歩いた帰り道が。一緒に食事したレストランが。一緒にはしゃいだ部屋が。

たくさんの『一緒』が、この街には溢れている。

そして、

849 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/09(土) 21:35:26.44 ID:5zdhLM0A0


みほ「……赤星さん」

小梅「はい」


わかっていたのにずっと拒み続けていた事実がストンと、私の中に落ちてくる。

私以外の人はとっくに理解していたのに、私だけが逃げ続けていた。

でも、もう逃げられない。


みほ「エリカさんは――――もう、いないんだね」

小梅「……はい」

みほ「……そっか」


ああ、そうか。この艦に、この街に、この世界に。エリカさんはもういない。

どれだけ私が泣いても、どれだけ悔やんでも、どれだけ認めなくても。

逸見エリカはもう、過去なんだ。それを、私は理解した。


小梅「みほさん……みほさんっ……」


赤星さんがとうとうこらえきれなくなり泣き出す。

きっと、彼女も思い出したのだろう。エリカさんがいた日々を。

そして、また理解してしまったのだろう。エリカさんがもういないという事を。


みほ「ごめんね、赤星さん。あなただって辛いはずなのに」

小梅「いいんですっ……私は、私は……あなたが、元気になってくれれば……きっとそれを、エリカさんも……」


泣きじゃくる赤星さんに私はこれ以上何も言わなかった。

代わりに、じっと見下ろす。

夜空の代わりに輝く街を。

貴女がいた、貴女といた街を。



私の、『世界』を


850 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/09(土) 21:38:06.22 ID:5zdhLM0A0
ここまで。

>>744であと5,6回で終わるって言いましたけどあれは嘘になりました。

多分あと3回、多くても4回で終わるのでもうちょっとだけ過去編に付き合ってください。

また来週。
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/09(土) 22:20:33.20 ID:ZdUVYjaa0

いっそスレ跨いで過去話を続けてもええんやで?
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/09(土) 23:52:02.88 ID:wdfRRyLK0
乙でした
次スレに跨いでも良いんですよー

なんか、回復しかけてるけど、なぜこれからエリカ(偽)になったんだろう?
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/10(日) 00:08:29.39 ID:eJlQXkKP0
あと数回で明らかになるんやから楽しみに待てばええ
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/10(日) 01:08:54.59 ID:mdEP/TzUO
乙でした。
ここからが本当の地獄…になるのかなぁ。戦車道やる資格がないとまで言われる何があったのか。
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/10(日) 11:44:36.33 ID:XEpyBOoN0
なんか立ち直ってきてない?大丈夫?エリカさん化する?
856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/10(日) 22:36:23.00 ID:LwqYGnblO
まだまほの態度が硬化してないんだな
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/11(月) 01:11:56.41 ID:Tfo1HeEC0
乙!続きも期待して待ってる。
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/11(月) 01:30:32.02 ID:kyN+SCTDO
ここからまたみほを突き落とすような出来事があるんだな…
何にせよ楽しみに待ってます
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/12(火) 14:11:37.89 ID:F6EtRm/S0
カチューシャのことこ,ろしに行きそう
860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 21:54:46.08 ID:NCslEOZb0
おい!続きはまだか!
早くエリカさん化する過程を見せてくれ!!
861 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/16(土) 22:02:19.26 ID:S0bhx1iI0





学校裏の林に戻ってきたのは11時をいくらか過ぎた頃だった。


小梅「戦車しまってきちゃうんで先に帰っててください。風邪、ひかないように」


赤星さんの気遣いをありがたく受け、私は一人U号から降りる。

そして、ハッチから顔を出してる赤星さんに向き直る。


みほ「赤星さん、ありがとう。私、あなたのおかげで大事なことがわかった」


そう。大事なこと。きっと、赤星さんが今日私を呼んでくれなければ気づけなかった事。

部屋にこもっていたらきっと見つけられなかった事。


みほ「まだ、それを言葉には出来ないけど……ちゃんと、考えようと思う。これからの事を」


そう言って赤星さんに向けて口角を上げる。

赤星さんは感極まったように口元をおさえると、目元をそっと拭って笑いかけてくる。


小梅「っ……はい。急がなくていいですから、ゆっくりでいいですから。私も、一緒に考えますから」

みほ「赤星さん……またね」

小梅「はいっ!!またっ!!」


嬉しそうに手を振る赤星さんに背を向け、私は校門へと歩いていった。

私の顔から、表情は消え去っていた。

862 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/16(土) 22:10:25.94 ID:S0bhx1iI0




ここは決勝前日の夜、私とエリカさんが二人で話した広場。

赤星さんと別れた後、私は部屋に戻らずここでじっと海を見つめていた。

冷気を伴った潮風は痛いほどで、けれど、今の私にとってそんなのは大した事ではなかった。


みほ「寒いね」


そのつぶやきは誰に向けたものなのだろう。

自分でもわからないまま、私の意識は先程の山頂に戻る。


雲に覆われた夜空の下、街の明かりが星のように輝いてて。

その星空のあちこちに私達はいた。

遊んだり笑ったり怒ったり泣いたり悔やんだり。

様々な景色が、あそこにはあった。

そこに、いつだってエリカさんがいたことも。

そして、だからこそ。私はようやく理解できた。

エリカさんはもう、いないのだと。


みほ「赤星さんには迷惑かけちゃったなぁ」


わかりきったことをいつまでも引きずっていた挙げ句、迷惑をかけ続けてきたのだから。

ただ、今は謝罪の気持ちよりも感謝の気持ちのほうが強い。

赤星さんのおかげで、私はエリカさんの死をようやく理解できた。

どれだけ泣き叫ぼうとも、焦がれようとも、エリカさんはもう、帰ってこないのだと。

私が、赤星さんが、お姉ちゃんが、エリカさんが。

共にいた日々はもう、遠い過去になったのだと。


みほ「あーあ。バッカみたい」


そんな簡単なことを半年以上も引きずり続けていたのだからどうしようもないと自嘲する。


みほ「とりあえず。今後のことを考えないと」


まず学校には行かないと。

勉強はお姉ちゃんが持ってきてくれた課題である程度は進んでいるが、それでも学校の授業に追いついていけるとはとても思えない。

予習復習はちゃんとしないと。

特に理系科目。中でも物理はしっかりとやらないと。早急に。


部屋の模様替えもしないと。今の部屋は派手すぎるし可愛すぎる。もっとシンプルに。

ボコは捨てるか実家に送ろう。あ、でもエリカさんがくれたやつは残しておかないと。


料理もちゃんと出来るようにならないと。ハンバーグって結構難しそうだしね。


それと髪。長さはどうしようも無いけれどせめて毛先は整えないと。


まぁ、そこまですれば後は―――――『私』だけだ。


863 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/16(土) 22:13:57.58 ID:S0bhx1iI0


みほ「……くっ、ふふっ……」


閉じた口の端から笑い声が漏れてくる。

ああ、もうすぐだ。もうすぐ、もうすぐ。

早く早く。


『黒森峰(ここ)には私たちがいます。隊長が、私が、皆が』


うん。そうだったんだね。知ってたよ。忘れてたけど。

おかげで、こんなにもスッキリとできた。

皆がいるなら大丈夫だから。お姉ちゃんも赤星さんもエリカさんの事が大好きだったんだから。


『だから……少しだけ、少しだけで良いんです。前を向いていきませんか?』


うん。大丈夫だよ。もう、うつむかないよ。

そんな弱い人はいなくなるから。

そんな弱い私はいなくなるから。


みほ「っ……あはっ、わた、私はっ、くふっ」


こらえきれない。おかしくってたまらない。

赤星さんが教えてくれた、いや、理解させてくれた。

『西住みほ』の本質を。私の『中身』を。

ああ私は、私の中には――――――


みほ「何にもっ、無かったんだぁ」


乾ききった声。

それが引き金となり、はじける様に私は声を上げて笑い出す。


みほ「あはははははッ!!私、何もないっ!!私にはッ!!何もなかった!!」


そう、何もない。


あの瞬間、エリカさんが私にとって過去になった瞬間。

私の中の価値観は崩れ去った。


864 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/16(土) 22:17:42.77 ID:S0bhx1iI0


戦車道への情熱、辛さも楽しさも、確かにあった。

友達への友情も家族への愛情も間違いなくあった。

大切なものは、私の中にあった。

でも、今の私にとって何の価値も無かった。

まるで路傍の石ころのように。好きだったはずの戦車でさえ、ただの鉄くずのように思えた。


あの山の頂上で、私の全ては『エリカさんありき』だったのだと、ようやく気付いた。

黒森峰(ここ)に来る前に持っていたものも、黒森峰(ここ)に来てから得たものも。

全部、等しく、エリカさんがいたから大切だったんだ。


いつだって私はエリカさんと共に在ろうとした。

辛い時も、悲しい時も、楽しい時も。

黒森峰に来てからの4年間。それは、私の人生の半分にも満たない。

でもそれで、私の人生は変わった。

間違いなく、私の人生で最も幸せな日々だった。

エリカさんと出会ったあの日から私の世界は、エリカさんの優しい銀色で彩られていたんだ。

その色が輝きをくれた。その世界が私に未来をくれた。

だから、そのエリカさんがいなくなったから。私の世界にはもう、色なんて無いんだ。


乾ききった音が曇った夜空に響く。

笑い声と慟哭が入り交じり、いつのまにか涙がとめどなく流れ、

悲しみと歓喜が入り混じる。

『西住みほ』という人間が過ごしてきた今日までは何の意味も無かったとわかったから。

私にとってエリカさんがどれだけ大きな存在なのかがわかったから。


みほ「エリカさんッ!!大好きっ!!大好きだったよッ!!」


記憶に残る貴女はいつだって美しくて、それはもう、永遠に過ぎ去った姿(シルエット)で


みほ「貴女のいない世界なんて、貴女のいない私になんて、何の価値もないッ!!」


どれだけ手を伸ばそうとも届かなくなって


みほ「エリカさんっ、貴女の言う通りだったッ!!貴女は、私の友達なんかじゃなかったッ!!」 


そんなものじゃ断じてなかった。そんなちっぽけな存在では決してなかった。

そう、貴女は





みほ「貴女は私の―――――全てだったんだッ!!」




865 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/16(土) 22:23:38.02 ID:S0bhx1iI0


『エリカさんありがとう。私はあなたのおかげで戦車道に、自分に誇りを持てるようになりました』



ごめんなさいエリカさん。そんなもの、私は持てていなかった。

私の誇りは、貴女と共に在ることだったから。

貴女がいたから、私は『私』でいられたから。


みほ「貴女がいたから、私の世界は輝いていた」


何もない虚空に向けて、愛おしさと感謝を込めて伝える。


エリカさんがいないなら私が生きている理由なんて無い。ううん、私は生きていちゃダメだったんだ。

エリカさんが私の全てで、エリカさんがいたから私が生きている意味になってたんだから。

でも、私は、生きないといけない。

貴女の最期の言葉を守らないといけない。

生きていちゃいけないのに、生きないといけない。


相反する命題は、けれどもあまりにも単純で、簡単な解決策で成立する。


私に生きる意味が無くて、私が生きていたくなくて、

エリカさんに生きていて欲しいのなら。


その時、視界がふっと明るくなる。

見上げると先ほどまで曇り切った夜空が僅かにひらけ、連なった月明かりが私を照らしていた。

偶然というにはあまりにも出来すぎている。

その月明かりに運命を見出すのはあまりにもロマンチックなのかもしれない。

神様なんていないのだから。誰も私を祝福するわけがないのだから。

それでも、この気持だけは嘘でも空っぽでもないから。


みほ「エリカさん。私は、西住みほは、貴女のことが大好きでした」


降り注ぐ月光に向かって両手を広げる


みほ「だから、私の全部を貴女にあげます」


全てを失い、生きているだけの私であっても、貴女の器くらいにはなるかもしれない

私なんかよりも、貴女が生きていたほうがきっと、未来は輝いていて、私はそれを誰よりも望んでいるから。


雲が晴れていく。揺らめく月光がゆっくりと広がっていく。

その輝きが私の『世界を』照らしていく。

そこに、もういなくなった貴女を見た。

だからこれは、『私』の最期の言葉。

『私』が貴女に贈る祝福の言葉。



「おかえりなさい」



866 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/16(土) 22:24:16.82 ID:S0bhx1iI0




ごめんなさい




867 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/16(土) 22:28:14.36 ID:S0bhx1iI0
ここまでー

あー!!あー!!あー!!なっがいなっがい!!めっちゃ長くなりました!!
このSSは私が今回投稿分を書きたくなったがために無理やり延命してきましたが、ようやく目的が果たせました。

これなければ>>95あたりで過去編さっさと終わらせて本編に入る予定だったのに思いついたからには書かないと…となった結果ここまで来てしまいました。

もうちょっと、もうちょっとで終わるんでもうちょっとだけお付き合いください。

また来週
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 22:42:22.24 ID:eF0YnkzS0
あんたスゲーよ、おつ
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 22:44:02.38 ID:mbYgIXHqo
乙!
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 22:44:29.79 ID:xaAo1yvm0
乙でした!
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 22:48:18.70 ID:k+KMJ6Leo
毎週待ってるからゆっくりやってくれ
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 23:21:31.05 ID:iW6rIEWkO

漸くここまで来た、待った甲斐があったよ
とはいえそうなるのもおかしくないよなぁ、エリカいないと本当に何も変わらず変えずに過ごしてただろうし
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/17(日) 00:44:54.03 ID:LOzK0lxH0
お疲れ様です、毎週楽しみにしてます!

あぁ、みぽりんが壊れていくぅ…
874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/17(日) 00:50:38.53 ID:s9sP+7QT0

来週も楽しみです
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/17(日) 01:09:13.06 ID:SexHg4oX0

最初立ち直ったように見えてあれっ?って思ったら開き直って狂っただけだった
876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/17(日) 01:12:46.86 ID:Mc4mC+UFO
乙でした。人が壊れる場面をこれほど美しく感じたのは初めてだ、素晴らしすぎる。
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/17(日) 01:21:42.67 ID:K9OYxJLZ0
乙!
依存と言うのすら生温いレベルの……まぁ、文字通りみほの全てだったもんなぁエリカ
そしてこれ、最後の一押しをしてしまった小梅の胸中を思うと……
こんなとこで見捨てられるか、もちろん完結まで付き合うぜ
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/17(日) 13:43:49.03 ID:E7+5hcfQ0
話の展開がうますぎる
こんなに面白いss久しぶりだ
エタらないようにだけ祈ってます
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/17(日) 13:46:11.24 ID:SlXIVAQe0
乙でしたー
880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/17(日) 15:13:24.05 ID:c+NvnzQqO
前回吹っ切れて、まだこれから堕ちるのか…って思ってたらもう手遅れだった…
881 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/17(日) 23:16:03.65 ID:tzDl0Z480
開き直ったって言うか、余計自覚しちゃった訳よな
小梅は前向いてほしかったのに悲しいわ
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/18(月) 19:33:03.16 ID:HaAXRT2x0
もうそろそろスレの書き込み上限に達しそうなんだから、
毒にも薬にもならないくだらない感想書いてレス数を消費するな。
作者に気遣いもできないカス共が。
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/18(月) 19:37:34.96 ID:lcpBHtQe0
句読点ageカスに比べたら幾分かマシだろうよ
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/18(月) 23:59:12.42 ID:SFMjy95v0
( ´ー`)y━・~~~
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 04:51:10.54 ID:BHjp/1MGO
>>882
良識ある人ほど、こーいうバカなレスに反応してしまうので、合えてつっこんどくが、
ほとんどの書き手側からすれば「雑談」ですら嬉しいんだからな。
「自分の作品のスレにそれだけ人がいるんだ」、「読んでくれる人がいるんだ」って感じられるんだから。
んでこの作者さんはそのほとんどに入らないんとは思えない程度に社交的な人だからな。
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 07:48:50.48 ID:/4wsix1U0
>>883-884
ageカス云々の指摘とその直後のage煽りって他のスレでもよく見るけど全部同一人物?
887 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 22:08:09.60 ID:1CEh+uxe0
>>886
同じようなレスが何個かあるし、このスレにおいては同一人物なんじゃねーの
888 :888 [888]:2019/02/20(水) 00:35:26.78 ID:XThcE0nR0
888
889 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 14:37:17.32 ID:dCgwhtP2O
むしろ雑談してくれるなら喜んで迎え入れるわ。
自分の作品投稿以外なんのレスもないスレッドの寂しさと言ったらもうね
人がいつくくらい面白いSSかけよっちゅー話なんだけどさ
誰しもがこんな面白いSSかけるわけじゃねーっちゅーの。
このSSの終わりが近いと思うとつらたん
890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 16:07:56.73 ID:D5Fze8PS0
>>1が言うならまだしもお前は誰なんだよwwwwww
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/21(木) 08:08:13.89 ID:IjFPypirO
誰ってそりゃ読者でしょ

ここまで書き続けて来てくれてありがとう
二年前からずっとおっかけてるぜ
892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesage]:2019/02/23(土) 13:22:57.06 ID:u/zuRrm7O
何なんだよこの勝手な解釈w
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/23(土) 18:01:40.69 ID:OC5mAu7o0
え、二次ってそういうもんだろ?
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/23(土) 19:06:21.56 ID:Ym2xybmOO
...まあ、そうかもな。悪かったよ。
更新を待とう。そのために集ったんだ。
それは間違いない(キリッ
895 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/23(土) 22:00:31.94 ID:mQ6adVH+0





朝の冬空は彩りが薄く、どこか寂しそうに見える。

道を歩く人はそのほとんどが黒森峰へと向かう生徒たちで、私もまたその一人だった。

いつもなら纏ったコートでも防ぎきれない寒さに身を震わせながら歩いているが今日は違った。

寒さなんて気にならないぐらい心が温かく、歩みは淀みない。

けれども、私はどんどんと道を行く生徒たちに抜かされていく。

それは私の歩幅がいつもより狭くなっているから。

そして、そうしている理由はただ一つ。みほを待っているから。


妹は、みほはあの事故以来一度も学校には来ていない。

学生寮の部屋に閉じこもり、誰とも会おうとはしなかった。

無理やり会おうとしたところであの子を傷つけるだけだから、ただ待つ事しか出来ず、そんな状況に歯がゆい思いを感じていた。

そうして何も進まないまま日々が過ぎ、年が明け、もうすぐ黒森峰ではもうすぐ3学期が始まると言った時、突然みほから電話が来た。


『お姉ちゃん、私ね。学校、また行くよ』


その言葉を一瞬理解できず、私は言葉を失ってしまった。

そしてそれが幻聴や聞き間違いでないと理解した途端、私の両目から涙がこぼれだした。


まほ「……そうか、そうか」


声に喜びと泣き声が同居する。

あの事故以来ずっと塞ぎ込んでいたみほがようやく立ち直ってくれたのだと。


『だから、もう部屋に来なくて大丈夫。ちゃんとご飯も食べてるから』


言いたい事はたくさんあったけど言葉に出来ず、私は嗚咽交じりの吐息で返事をした。



そして待ちわびていた新学期の日が来た。

出来る事なら迎えに行ってあげたかったが、みほには断られたし何より自分一人で部屋を出る決意があの子には必要なのかもしれない。

そう思い私はみほの言葉に従って先に通学路を歩いている。


まほ「まだ、か」


先ほどから何度も後ろを振り返っては小さくため息を吐く。

みほの姿はいまだ見えず、その度に胸の中に小さな疑念が生まれてしまう。


みほは、こないんじゃないかと


そう思うたびに頭を振って疑念を散らす。

私があの子を信じないでどうするのだ。

あの子は、自分で決意したんだ。だから、私はあの子を信じる。

そう思いなおしてまた小さな歩幅で歩み始めると、ふと周囲の様子がおかしい事に気づく。


さっきまで通学路に満ちていた生徒たちの和やかなざわめきが小さくなり、代わりに動揺や驚きの混じった囁きが通学路を満たしていく。

先ほどまで前を向いていた生徒たちの視線が後ろを向いていく。
896 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/23(土) 22:03:10.49 ID:mQ6adVH+0

どうしたのだろう。

つられて私も振り返る。

先ほどまで通学路いっぱいに広がっていた人波の真ん中が、まるで道のように開けて、その最奥に一つの影があった。


まるで今にも消え去ってしまいそうな真っ白な輪郭。

それが誰なのか気づけなかった。

間近まで来てようやく、その影が私の欲しっている、待ち望んでいた人なのだと気づくことができた。


まほ「みほ……」

「……久しぶりですね」


赤星から聞いてはいたが、実際に見るとみほの変貌ぶりにどうしても言葉を失ってしまう。

あの鈴の音のような可愛らしい声は、掠れ切って低くなり、

あの穏やかで、見ていると和んでしまう栗毛はまるで雪のように、燃え尽きた灰のように真っ白になっていた。


私の動揺を見て取れたのか、みほは真っ白な前髪を少し不思議そうにいじる。


「赤星さんもですけど、流石にこれには驚きますか」

まほ「その、すまない。聞いてはいたんだが実際に見るとな……」

「別に謝らなくてもいいですよ」

まほ「あ、ああ」


ぎこちない私を置いてみほは颯爽と学校へと向かい歩き出す。

私も慌てて追いかけてその隣を並んで歩く。

やはり今のみほの姿は目立つのだろう。周囲の視線がチクチクと刺さるが、そんな事よりも妹との久しぶりの会話の方が大事だ。


まほ「それにしても……本当に良かったよ。赤星も喜ぶ」


あの事故が残した傷は未だ癒えてはいないのだろう。

それはみほだけではなく私も、赤星も、エリカの家族も。事故の関係者の心には未だに傷が残っているのだろう。


「あの子には迷惑かけてばっかでしたから。ちゃんとそのあたりお礼言っておかないと」

まほ「別に赤星はそんなの求めたりしないさ。友達なんだから」


あの子も事故の当事者なのに、心に負った傷はみほと変わりないはずなのに、誰よりもみほの事を心配していた。

乗員が学校を去っても、一人残って戦車道を続ける決心をするのは決して並大抵のことではない。

その姿は、その精神は、かつてエリカが評した『強い人』という言葉を証明していた。

そんな友達が、みほを想ってくれていることに心から安心する。


「そうだ。隊長、今日は練習あるんですか?」

まほ「……一応、始業式の後に練習はあるが。別に、今日は休んでも良いんだぞ」

897 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/23(土) 22:04:54.69 ID:mQ6adVH+0


正直、今のみほにはまだ戦車道をさせたくない。

あれだけの事故があって、大切な人を失って、それでもまた立ち直った強さは本物だと思う。

けれど、まだ自分では気づいていない『傷』があるのかもしれない。

見えない傷は、だからこそ厄介だ。

私はもう二度とみほが悲しむ姿を見たくない。あんな、泣き叫ぶ姿を。

それが心配だから、今はまだゆっくりと普通に学生生活を送って欲しい。

しかしみほは何の憂いも心配も無いといった様子で、


「いえ、参加します。ブランクを早く取り戻さないと」


躊躇いなく言い切ったその声に戦車道への忌避感は感じない。

心配も憂いも私の中にあるが、それでもみほが望むのであれば、本人の意思を尊重してあげようと思う。

戦車道をまた始めてくれる事自体はとても嬉しいのだから。


まほ「そうか。でも無理はしないでくれ」

「はい。お気遣いありがとうございます隊長」


その礼儀正しい返事に私は押し黙ってしまう。

声の事も、髪の事ももう気にしてはいないが、みほと会ってからもう一つ気になっていることがあった。


まほ「なぁ、そんなかしこまらなくてくれ。別に今は試合中でも練習中でもないのだから」

「そうはいかないですよ。体面ってものがあるんですから」


確かに以前私の事は隊長と呼ぶように言った事がある。

でもそれは妹だからといって贔屓はしないという事を周りに知らしめるためと、みほ自身にその事を理解してもらうためのやったことだ。

通学路での何気ない家族の会話にまで持ち込んで欲しいとは思わない。

みほもプライベートでは普通にしていたというのにどうしたのだろうか。


まほ「体面……いや、私たちは姉妹なんだからそんなの気にする奴はいないさ。なぁみほ――――」

「隊長」


みほがその歩みを止める。私が振り返ると、みほはまっすぐこちらを見据え、






「私は、逸見エリカです」






898 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/23(土) 22:09:01.38 ID:mQ6adVH+0


まほ「……は、ははっ。何を言ってるんだ」

「私は、あなたの妹の西住みほではありません」


冗談というにはあまりにも唐突すぎるその言葉に、私は乾いた笑いしか返せない。

そんな私を、みほは心底心配したような目で見てくる。


「隊長こそどうしたんですか。私をみほなんかと間違えるだなんて」

まほ「冗談にしては、ちょっと悪ふざけがすぎないか?」

「冗談……いえ、私は冗談なんか言ってませんよ」


どうやらみほの冗談はまだ続いているようだ。いくら事故をひきずらないで欲しいと言っても流石にこれはいけない。

私は咳払いをして、少し声のトーンを落とす。あまり責めすぎないように。説教臭くならないようにしないと……


まほ「……みほ、前向きになるのは良い事だ。必要な事だ。だが……エリカを馬鹿にするような真似はやめるんだ」


いくら事故の当事者であろうとも、いくらみほと親しかったとしても、死者を冒涜するような事を許すわけにはいかない。


まほ「お前がエリカの事で辛い思いをしたのは良く知っている。だけど、だからといって冗談でも言っていい事と悪い事があるだろう?」

「私が逸見エリカであることは嘘でもなければ冗談でもないですよ」


まるで悪気のない、後ろめたさを感じないみほの声に少し、本当に少しだけ苛立ちを覚える。

言葉に、棘が生えていくのを実感してしまう。


まほ「……なぁ頼む。はっきりいって不愉快だ」

「そんな……どうしたんですか隊長」


まるで反省する素振りの見えないみほに私はため息をつく。


まほ「どうかしてるのは、お前だろ……みほ、いい加減にしてくれ。辛い事があるならちゃんと話してくれ」

「ですから私はみほじゃなくて」


まだ言うのか。いくらなんでもこれ以上は私も怒ってしまうかもしれない。

ああでもしかし、みほにも何か事情があって……いや、けれどこんな事許されるわけがない。

でもここでみほを叱責したらまたみほが……落ち着いて、冷静になるんだ。


まほ「みほ……やめてくれ」

「隊長こそいい加減にしてください。私は、逸見エリ―――――」

まほ「やめろッ!!!」


突然、弾けるような声が通学路に響き渡る。

先ほどまでのざわめきは吹き飛んで、沈黙が広がっていく。

怒声の張本人である私もまた、自分が突然放った声に驚き、言葉を失っていた。


周囲の視線が私たちを突き刺してくる。


「隊長……?」

まほ「っ……こっちにこいッ」


それに耐えられなくなった私は無理やりみほの手を引き、逃げるように校門をくぐっていった。

899 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/23(土) 22:14:37.67 ID:mQ6adVH+0




みほの手を無理やり引き、私は人気の無い体育館裏にやってきた。

いきなり怒鳴られた挙句こんなところに連れてこられたのを不満に思っているのか、みほは怪訝な様子でこちらを見つめている。


「隊長、急にどうしたんですか。始業式始まっちゃいますよ」

まほ「そんなのより、今はお前の事だ」


始業式なんてどうでもいい。

とにかく、今は目の前のエリカを名乗るみほと話さなければならない。

どうして自分がエリカだなんて言いだしたのか。

それをちゃんと聞きだしてやめるよう諭さなければならない。

隊長だとか姉だとかの前に、人として、私はみほと話さなければならない。


私の様子に逃げられないと悟ったのかみほはふっと、息で笑う。


「……やっぱり、いきなりは難しいか」


みほの声が、いや、話し方が、以前のような柔らかく可愛らしい調子になる。

少なくとも、先ほどまでやっていたエリカの真似はやめてくれたようだ。


まほ「いったい、何のつもりなんだ」

「お姉ちゃん、私はね、西住みほはもういないんだよ」


みほの声は嬉しそうで、楽しそうで、それでも私の混乱を取り去ってはくれない。


まほ「……わからない。何を言っているのか全然わからないぞ」

「だからね、あの事故で死んだのはみほなの。で、エリカさんは生きているの」

まほ「頼む……わかる言葉で言ってくれ」


私の懇願にみほは困ったように笑うと、まるで聞き分けのない子供に話すかのように淡々と語り掛けてくる。


「西住みほなんかよりも、逸見エリカの方が価値があるんだよ。だから、西住みほじゃなくてエリカさんに生きてもらう事にしたの」

まほ「みほ……そんなの、出来るわけないだろ」


何を、何を馬鹿な事を言っているんだ。

子供だって騙せない理屈をまるで世界の真理かのように語ってくる。

その瞳には何の後ろめたさもなく、かつての、エリカがいた時のみほのままで、

ずっとその瞳が戻ることを願っていたのに、今は恐怖すら感じてしまう。


「大丈夫。何も心配することなんてないよ。これからはエリカさんがいるから―――――大丈夫ですよ隊長。これからは私がいますから」


みほの声が再び低く落ちる。

姿勢を正し、先ほどまでの柔らかな雰囲気が消え去って、凛と、張り詰めたような表情になる。

それがみほの言う『エリカさん』なのか。そうだと言うのなら、


まほ「違う……お前は、エリカじゃない」


900 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/23(土) 22:24:40.77 ID:mQ6adVH+0

その口調も、立ち姿も、雰囲気も、きっとみほが間近で見たエリカを模倣したものなのだろう。

でもそれは所詮真似でしかなく、私から見たそれはひどく歪で、気持ちの悪いものだ。

どれだけ真似をしようとも、その真似が真に迫れば迫るほど、違和感が、いや、嫌悪感が増していく。


「私はエリカです。エリカになってみせます」

まほ「なあみほ。ちゃんと話そう。今日はもう学校は休んで、私も休むから。一緒にちゃんと話そう」

「大丈夫です。私が、逸見エリカがみほの分も頑張りますから」


みほは、私と会話をしようとはしていない。ただ、自分の言い分を伝えているだけなのだ。

納得してもらおうだなんて思っていない。だってみほは事実を言っているつもりなのだから。


まほ「お前の辛さがわかるだなんて言うつもりは無い。だから、相談してくれ。

   辛い事、悲しい事、ちゃんと話してくれ。誰かを責めたいのなら私を責めるんだ。

   そんな、そんなやり方で自分を責めてはいけない」


みほがエリカを侮辱しようと思ってるわけがない。

だってみほは誰よりもエリカの事を大事に思っていたのだから。


「別に私は自分を責めてなんかいませんよ。悪いのは全部みほなんですから」


なのに、なのになんでそんな事を言うんだ。

エリカはそんな事を言わないなんてこと、分からないわけが無いのに。

みほは、私よりも長くエリカといたのだから。


まほ「……やめろ。エリカだって、そんな事望んでない」

「……望んでますよ」


その言葉には確信めいたものがあった。

みほはそっと微笑む。


「元々あの子に副隊長は荷が重かったんです」

まほ「やめてくれ……」


お前はみほなんだ。エリカはもう、いないんだ。

そんな事をしたって何にもならないんだ。


「というより、あの子に戦車道なんて無理だったんですよ」

まほ「お願いだ……みほ……」


お前はエリカの事を誰よりも知っていたのに。なんで、なんでそんな事を。

エリカはお前の事を大切に思っていたのに。


「だってそうでしょう?あの子は、みほには何も無いんですから。」


その表情が微笑みから、嘲るようなものに変わる。


「何もない癖に人一倍傲慢で、何でもできるって思ってた。あの事故だってみほがいなければ起きませんでした」
901 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/23(土) 22:25:32.13 ID:mQ6adVH+0


お前とエリカは友達で、そこに赤星もいて、怒ったり、泣いたり、笑ったりして、

毎日のように、一緒にいて。

エリカは、口ではお前を嫌いだなんて言ってたけど、そんなの嘘だって、わかってるのに。

だってエリカは、私よりもお前と一緒にいる事を選んで、

お前は、エリカのおかげて前を向けるようになったって、

戦車道が、楽しいって、

お前は、お前は、お前は、




「だから……あの子が死んで良かったんですよ」



『だから、今はもう少し、あの子の隣にいようかなって思います』






私が、一番欲しかったものを持っていたのに





902 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/23(土) 22:27:37.60 ID:mQ6adVH+0


気が付くと、みほが呆然と頬を押さえてこちらを見つめていた。

私の息は荒くなっていて、いつの間にか握りしめた拳がじんじんと痛んでいて、

自分が何をしたのか分からなくて、

だけど、


「……隊長?」


みほが口を開いた瞬間、私は再び殴りつけていた。


「ど、どうしたんですか西住隊長っ!?」

まほ「やめろッ!!」


みほは何が起きたのかわからないといった目で私を見つめる。

構わず胸倉を掴み上げ頬を殴りつける。

誰かを殴るなんて初めてで、殴り方なんてわからなくて、それでも、胸の奥底から這い出てくるどす黒い感情のまま、私は拳を打ち下ろす。


「まほ、さん……」

まほ「エリカをッ侮辱するなッ!!お前が、エリカなわけあるかッ!!」


そうだ。お前がエリカなわけない。

そんな無様なやつが、エリカなわけがない。

何もかも投げ出して、あまつさえ死者の名を騙るようなやつがエリカなわけが無い。


だから、何度も、何度も殴りつける。

歯にでもあたったのか、拳が裂け、血が出る。

どうでもいい。今はただ、こいつを。


まほ「お前はッ!!エリカじゃないッ!!」

「わ、私は……エリカです」

まほ「っ……だったらっ!!」


だったらどうしようとしたのだろうか。

その終点を理解しないまま、私は再び拳を振り上げて、


小梅「やめてくださいっ!!」


何度目かの殴打は、みほに届くことは無かった。

表での騒ぎを聞きつけたのか、いつのまにかやってきた赤星が私にしがみつき、必死でみほから引き離そうとしていた。


まほ「離せっ!!こいつはッ!!こいつだけはッ!!?」

小梅「お願いです落ち着いてくださいっ!!?みほさんっ、なんで、何があったんですかっ!?」


小柄な赤星のどこにそんな力があったのか、胸倉を掴んだ手はみほから引きはがされ、

その場でへたり込んだみほは、呆然と私をみつめていた。

その様子に構わず私は拳の代わりに怒声を叩きつける。


まほ「ふざけるなッ!!ふざけるなッ!!なんで、なんでッ!?お前は、エリカの友達だったのにッ!!」

小梅「隊長ッ、隊長ッ!!っ……まほさんッ!!」


903 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/23(土) 22:30:12.49 ID:mQ6adVH+0


赤星の必死の制止は私の怒りを抑える事は出来ない。

私はただ、目の前のあいつに痛みを与えないといけない。

義憤なんて綺麗なものではなく、憎悪なんて生易しいものではない。

タールのように真っ黒でドロドロとした感情が、私の中から溢れだしてくる。


小梅「まほさんッ!!みほさんもッ!なんで、何があったんですか!?なんでこんなことにっ!?」


赤星が何かを言っている。

でも、私の耳はそれを認識する余裕はない。

許さない。絶対に、許さない。


まほ「エリカは、お前の事をッ、大切に思ってたのに!!


私の絶叫を聞いたみほは、口の端から零れる血をそっと拭うと、また先ほどのように姿勢正しく立ち上がる。

そして先ほどのようにエリカのつもりで、どこまでも歪で、気持ちの悪い模倣で、


「私は、そんな事思ってませんよ。私は――――みほが大嫌いでしたから」


その瞬間、私は赤星を突き飛ばし、みほの胸倉を掴みあげる。

私の怒りを前にみほは無表情なままで、その姿が余計に私の怒りを燃え上がらせる。

だから、


まほ「お前はッ!!なんで、なんでッ!!」


私は『言いたくなかった』事を言ってしまう。




まほ「なんでお前が生きているんだッ!?」




小梅「まほさんッ!!」


突き飛ばされ、倒れこんだままの赤星が悲痛な叫びをあげる。

その声に私はハッとして、自分が言った言葉の意味を理解して、

後悔が津波のように押し寄せようとした時、

みほが、まるで救いを得たかのように微笑んだ。


「……私も、そう思ってるよ」


たぶん、その瞬間、私の妹は死んだのだと思う。


まほ「ッ……ああああああああああああああああああッ!!!!」


赤星の縋りつくような制止でももう止められず、騒ぎを聞きつけた先生たちに止められるまで、

私は怒り狂いながら、泣き叫びながら、ひたすらその『偽物』を殴り続けていた。

904 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/02/23(土) 22:31:48.62 ID:mQ6adVH+0
ここまでー

たぶん来週で終わりになると思います。

もしかしたらもう一回追加されるかもしれません。

まぁどちらにしろもうすぐ終わるのでお付き合いください。

また来週。
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/23(土) 23:01:28.83 ID:8+p1pmV9O
お姉ちゃん激おこの理由がついにきたか
確かにまほさんがみほを嫌悪するに十分な理由だと思う
まるで四苦八苦じゃないか
個人的にはもっと拗れろ思う いいぞコレ
906 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/23(土) 23:07:00.93 ID:2cZt5Ju3O
乙でした!
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/23(土) 23:30:03.79 ID:QUA+zzPmO

お姉ちゃん・・・
みほに対して"嫉妬"しちゃったんだろうなぁ
とはいえみほにとっても好きな人にストレートな好意を持たれててそれに相応しい振る舞いが出来るまほの存在は羨ましかっただろうに・・・
908 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/23(土) 23:48:01.46 ID:HvM7hthR0
乙でした
来週も楽しみにまってます。
909 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/23(土) 23:50:14.30 ID:EFaH6+yM0
乙!
こりゃまほもキレるわ……でもみほも心底からの行為だろうからなぁ
……って、来週かその次で終わり?こっから一体どうまとめるんだ……楽しみだ
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/24(日) 00:06:40.60 ID:2tM9wONs0
いつも楽しく見てます。
過去編が終わったら、その先もあると嬉しいです!
911 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/24(日) 00:44:42.43 ID:D/zCive+0
ものすごく苦しいのにニヤニヤしてしまう

ああ……
912 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/24(日) 00:51:43.90 ID:TuTUuLIDO
あああどうしてもまほの方に感情移入してしまう
妹がどんどん壊れていくばかりか死人に成り済ますとかそれを間近で見せられるのはキツいものがあるなあ…
ほんとこの1は素晴らしい、これからも楽しみに待ってます乙です
913 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/24(日) 17:56:31.83 ID:zewgaK1A0
最後のセリフこそ問題ではあるけどまほを応援するわこんなの…
914 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/24(日) 18:18:07.72 ID:XmpXG5+8O
乙でした。
あぁお姉ちゃん言うてはならんことを…本心からではないにせよキツイ言葉だわ。エリカの方が価値があるを認めた訳だし。
915 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/24(日) 19:33:45.26 ID:H68SLZYbO
この先は何よりみほの自己に対する致命的な自己嫌悪が解けなければならないが
エリカになりすまし憎んでるんだ
まほさんはそれが我慢ならない
沙織さんもそのみほの一面に触れて困惑していたんだね きっとその時もこの今以上に拗らせた残酷な表情をしていたんだろう
いや 長い伏線 たまらんなあ
916 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/24(日) 19:49:46.36 ID:xI3lmVC0O
しほが気になる
917 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/24(日) 20:02:14.76 ID:NhAYNCwV0
そもそもこうなった根本原因しほさんでは
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/25(月) 10:56:02.24 ID:YusLAIFsO
西住流として接するばかりで個人や親子としては話し合ってすらなさそうだからね
反抗でもいいからやり取り出来れば少しは違う結果に出来たかもしれないのに・・
919 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/25(月) 11:55:13.16 ID:3pS73X/6O
エリカの振りをするだけではなく、エリカの姿でみほを貶めるのが何より許せなかったと言うのは凄く良い落とし所だと思う。まほが2人共をとても大事に思っていたからこそって感じで
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/25(月) 23:56:32.86 ID:MPvuC5OGO
...あれ?そういえばこれは治るのか?
もはや精神障害者や人格障害者レベルだぞ?
脳がすでに破壊されてる可能性が大。
そもそも人間性を無視して育てられいる時点でだいぶ、いや、かなり危ないのだが...
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/26(火) 03:35:59.36 ID:92T3fJI3o
解離性同一性障害の脳が破壊されてるような表現は如何なものかと思いますがね
922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/26(火) 08:07:23.72 ID:2R6+CUgOO
エリカはそんなこと言わない
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/26(火) 12:00:24.16 ID:lNuuMNoaO
すまんかった
だがこれは解離性人格障害ではなくなんか別のものなような気が
924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/26(火) 22:35:23.91 ID:fsew8ZQT0
脳が破壊か 他意は無しにあながち間違ってない表現だと思うよ
強いストレスによる変質って、伝え聞くだけの健常者には理解できない感覚を覚えるみたいだし

みぽりん可哀想に
周りもエリカはそんなこと言わないよって言ってあげればああまでにはならなかったかも知れないのに
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/27(水) 00:20:58.34 ID:veoLnxNco
>>923
愛やぞ
926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/27(水) 10:42:27.55 ID:YmAG5IZqO

Wow!!それは素敵ねッ!!trueloveだわ!!
アリサもあやかりなさいよ!!hey!?
...どうしたのかしら??
927 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/02(土) 13:28:56.98 ID:874YpsSDO
もう一週間たったのか
ああ楽しみじゃああ
928 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/03/02(土) 22:15:08.61 ID:d4D1O6AS0





2月も半ばを過ぎたある日の夜、みほは学園艦ではなく陸に、もっというのならみほにとって実家『だった』西住邸の応接間にいた。

そしてそこで彼女の母『だった』しほとテーブルをはさんで向かい合っていた。


しほ「みほ、あなたには転校をしてもらいます」


そう言ってしほはテーブルに一冊のパンフレットを差し出すように置く。


「大洗女学園……?」


聞いたことも無い学校名が書かれたパンフレットにみほは訝し気な表情をするも、何も言わずパラパラとそのページをめくりだす。


「……え?」


突然、あっけにとられたような声がみほの口からもれる。

何度も手元のパンフレットに目を落とし、一通り読み終わったはずなのにまた一から読み直し、そして呆然と呟く。


「なんで……ここ、戦車道が無い……」


何かの間違いではないか。そんな視線をしほに向ける。しかし、しほの表情は揺るがず、それが答えだった。


しほ「……あなたは、少し戦車道から離れるべきです。ちゃんと病院に行って、ゆっくりと学生生活を送って、自分を……労わりなさい」

「そ、そんなっ!?どうしてですか師範っ!?」

しほ「私は、あなたの母です」


取り乱し声を荒げるみほに対して冷静な、けれども絞り出したかのように掠れた声。

みほは一瞬喉が詰まったように呻くも、ゆっくりと深呼吸をして冷静さを取り戻す。


「……師範、考え直してください。今私を失うことが黒森峰にとってどれだけ打撃を与えるか」

しほ「私は、あなたのほうが大事です」


それは西住流の師範の言葉ではなく、ようやく口に出せた母としての言葉だった。


しほにとって家族は大切なものであった。しかし、流派もまた大切なものであった。

未だマイナースポーツでこそあるものの、戦車道の流派として日本最大の規模である西住流。

その実質的なトップであるしほはその一挙手一投足に立場と責任を求められる。

自分の言葉が、行動が、門下生はもちろん数多の関係者たちの未来を変えてしまう事をしほは良く知っている。

だから、常に自分を厳しく律し、娘にもそうあるべしとしてきた。

たとえ冷たいと、親として失格だと思われようとも。

しかしどれだけ冷徹であろうとしようとも、どれだけ冷徹に振舞う事が出来ても、心はそうはなれなかった。

去年の決勝で起きた悲劇。それを忘れた日なんて無かった。

失われた命があった。心身ともに傷ついた生徒がいた。その中に娘たちがいた。

嘆き悲しみ、塞ぎ込む娘たちに何を言えばいいのかわからなかった。

しほに出来たのは後処理と、自らに責任があると事故の当事者たちに伝える事だけだった。

引きこもり、誰とも会わなくなったみほを扉越しに呼びかけても帰ってくる返事は無かった。

結局、またしてもみほの事をまほに任せて、報告を受けるだけだった。


そして、娘は自らを捨てた。

708.34 KB Speed:0.4   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)