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【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」
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70 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 21:52:48.43 ID:SKxrM6UB0
・
・
・
夕焼けの差し込む更衣室。
私とエリカさんは無言で着替えていた。
みほ「……」
エリカ「……」
みほ「……逸見さん」
エリカ「……何?」
お互い、背中合わせで会話を続ける。
みほ「お姉ちゃ……隊長に私からもう一度言うよ。逸見さんが副隊長にふさわしいって」
エリカ「……」
みほ「逸見さんは私に勝ったんだから当たり前だよ。お姉ちゃんもお姉ちゃんだよ、逸見さんに戦車道をやめるだなんて言わせておいて……あんな風に引き下がらせて……」
エリカ「ねぇ、なんでわざと負けたの?」
私の声を遮るように投げかけられた問いに、私は一瞬言葉に詰まってしまう。
エリカ「気づかないと思った?だとしたら……馬鹿にするのも大概にして」
みほ「……違うよ。私はただ、逸見さんの言葉が正しいと思ったから」
エリカ「……」
みほ「逸見さんの言う通りだよ。私に副隊長だなんて荷が重いよ」
71 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 21:57:30.02 ID:SKxrM6UB0
みほ「それに、逸見さん負けたら戦車道やめるって……そんなの、おかしいって――――」
瞬間、頬に衝撃が走る。
それに遅れて痛みが広がっていく。
何が起きたかわからず呆然とする私の前で、エリカさんは目を潤ませ、息を荒げながら私をにらみつけていた。
みほ「……逸見さん?」
エリカ「……なんでっ……なんでなのよっ!?あなたはホントは強いのにっ!!私を見下して楽しいっ!?」
みほ「ち、違っ……私、そんなつもりじゃ……」
エリカ「同じよっ!!あなたは仲間を軽んじて、私の覚悟を踏みにじったっ!!」
みほ「ねぇっ聞いて逸見さん私は……」
エリカ「私を哀れんだつもり……?私を救いたいとでも思ったのっ……?そんなのッあなたの自己満足じゃないッ!!」
みほ「そうじゃないの逸見さん、私は」
72 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:00:59.11 ID:SKxrM6UB0
エリカ「いいわよね西住流の家に生まれた人はっ!?幼いころから戦車道を仕込まれて、充実した設備と環境で強くなることを定めてもらえるからっ!!」
みほ「っ!?」
エリカ「『持ってる』あなたからすれば、『持たない』私はさぞかし滑稽でしょうねっ!?」
何回も、何十回も、いやそれ以上に言われてきた言葉。
なのに、逸見さんから放たれたその言葉は、知っているはずなのに今まで聞いたどんな言葉よりも深く、私の何かに突き刺さった
73 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:03:08.01 ID:SKxrM6UB0
みほ「……あなたに、何がわかるの?」
エリカ「……」
『お前は西住流の女なんだ。強くあることは私たちの義務なんだ』
みほ「西住流の家に生まれた私の、何がわかるのっ!?強くならなきゃ、勝たなきゃいけないって言われ続けることがどれだけ辛いか―――」
エリカ「あなたの事情なんか知ったこっちゃ無いわよッ!!あなた、一度でも自分の事を話したっ!?」
みほ「それ、は……」
エリカ「そうよねっ!?あなたはいつも謝ってばっかで、自分の事しかみてないっ、西住流で、隊長の妹で、副隊長だからほかの子が近寄りづらいと思ってたの?
優しくすれば友達ができると思ってたの?……違うわ。全部全部っ、あなたの問題よッ!!」
みほ「……違、う。私は、ただ……みんなと楽しく戦車道がやれればって……」
エリカ「……みんな黒森峰の戦車道チームに入った時点で覚悟していたはずよ。たとえその覚悟が甘かったとしても、厳しい訓練の中で理解をしたはず。
あなたはただ、傷の舐めあいにあの子たちを巻き込んだだけっ。あなたのしている事は、優しさですらないのよっ!!」
みほ「違う、私は……」
74 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:04:13.09 ID:SKxrM6UB0
誰だって上手く行かない事がある。
ただ無理を強いるだけが上達への道じゃない。
間違ってないはずなのに、私の口はなぜかそれを言い出せない。
エリカ「あなた以前言ったわよね?『チームの子の名前は全部覚えてる』って。でもあなたが知ってるのはそれだけよ。
あの子たちの悩みも、苦しみも、上っ面で受け止めて優しい振りで返してるだけ―――――あなたの言葉には何もないわ」
みほ「っ……」
エリカ「私は、弱さを理由に馴れ合う奴らが嫌い。……だけど、それ以上に……今のあなたが大っ嫌いよ。誰かの弱さを利用して自分を慰めようとするあなたが」
みほ「違う……」
私はただ、落ち込んでいるあの人たちを元気づけたかっただけで
あの人たちがもっと戦車道を笑顔でできるようになればって
75 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:08:06.14 ID:SKxrM6UB0
エリカ「あなた、家柄や環境を引き合いに出されるのが嫌みたいね?……そのくせ、自分からはなにも変えようとしない」
みほ「そ、それはっ……」
エリカ「あなたはずっとそう、知って欲しいって思ってるくせに、察してもらいたがってる。……ムカつくのよ、かまってちゃん」
みほ「……だったら、だったら私はどうすれば良かったのッ!?何をすればみんなと一緒になれたのッ!?」
ナイフのような鋭い言葉に、自分でも驚くほど感情的に言い返す。
だけど、いつのまにか呼吸を整えていた逸見さんは眉一つ動かさず冷静に言葉を返してくる。
エリカ「……ならまず、その上っ面の優しさをやめなさい」
みほ「違うっ!!私は、私はちゃんとみんなのっ事をッ!!」
エリカ「だったらなんでわざと負けるような事をしたのっ!!?あなたを勝たせるために頑張ったあの子たちの努力を無視したくせに、何がみんなの事を思ってるよっ!?」
みほ「っ……」
エリカ「……あなたがどんなに強くったってそのままじゃ誰もついてこない、友達なんてもってのほかよ。……『優しくしているだけ』のあなたを、誰が信頼すると思うの?」
みほ「……きっと、きっといつか知ってくれるはずだよっ、西住流や、戦車道関係なく私を、西住みほをっ!!」
エリカ「……それが、あなたの本音なのね」
みほ「え……」
76 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:09:41.32 ID:SKxrM6UB0
エリカ「思ったとおりね。上っ面の優しさも、何を言われようとペコペコ謝るだけなのも……下手に出て構ってほしかっただけ
『私はこんなに優しくしてるんだから、みんなも私に優しくして』って事?」
みほ「……なんで、なんでそんな酷い事言うのっ……」
私は間違ってなんかないはず
エリカ「言ったでしょ。私はあなたが嫌いなの。あなた、情けない上に卑怯なのね」
みほ「……やめて」
だって、みんなと友達になりたいのは私の本心のはずだから
エリカ「言い返せるものなら言い返してみなさいよ、否定できるものなら否定してみなさいよ」
みほ「わた、私はっ……」
そうだよ。みんなと楽しく、優しく、私はそれが大事だって
77 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:14:38.09 ID:SKxrM6UB0
エリカ「……ねぇ、知ってる?―――――『優しくされたい』から『優しくする』あなたみたいな人間をね、偽善者って言うのよ」
その言葉は、私が一番目を背けていたものを引きずり出した
みほ「――――っうあああああああああああああああっ!!」
エリカ「……」
絶叫と共に逸見さんの胸倉を掴みあげる。
勢いのあまり逸見さんの体がロッカーに音を立ててぶつかる。
78 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:17:42.48 ID:SKxrM6UB0
みほ「うるさいっ、うるさいよ……だって私は、みんなと仲良くなりたくって……だけど、ここじゃ私は強くないといけなくって……」
エリカ「……」
みほ「あなたに、何がわかるのっ……戦車道が好きで、本気になれるものを持ってるあなたに私の何がわかるのッ!!?」
エリカ「……」
逸見さんは表情一つ変えず私をじっと見つめていて、
その余裕を持った姿が眩く、憎らしくて、私は一層声を張り上げる。
みほ「そうだよっ!?私は強いよっ!?あの人たちより、あなたよりっ!!」
エリカ「……」
みほ「なのに、なのになんで……あなたはそんなに真っ直ぐなの……私は、私はこんなにも、無様なのに……」
だんだんと声が小さくなる。それに合わせて、逸見さんの胸倉を掴んだ手から力が抜けていき、私は膝から崩れ落ちるようにへたり込む。
何かを掴もうと手を上げることもできず、
逸見さんを見つめ返すこともできず、
私はただ、俯いて泣きじゃくるしかできなくなった。
79 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:19:16.86 ID:SKxrM6UB0
みほ「ぐすっ、酷いよ……私は、私だってあなたみたいに、エリカさんみたいに……自分らしく、いたいのに……」
エリカ「……」
みほ「……なんで」
ポツリと呟く
みほ「……なんでみんな私に期待するの……」
そんなもの、いらないのに
みほ「私は、西住流も、黒森峰も、副隊長も関係なくただ……」
誰かの期待を背負えるほど私は強くないのに
80 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:21:19.84 ID:SKxrM6UB0
みほ「なのに……私にはそれ以外何もなくて……私の、私だけの物なんて……」
エリカ「……」
『流石西住流の娘さんね』
『1年で副隊長だなんて期待のホープだね』
『なーんか、思ってたより地味だね』
『どうせコネでしょ』
みほ「嫌だよ……辛いよ……期待されて、失望されて……それでも期待されるのは……」
エリカ「……どうあがいたってあなたは西住家の人間よ。そこから逃げ出すか留まるか。どちらにしたって、あなたは選択を強いられるわ」
81 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:25:53.20 ID:SKxrM6UB0
エリカ「だから答えなさい。あなたはどうしたいの――――どうしてほしいの」
みほ「わかんないよっ……」
エリカ「……」
みほ「わかんないよ……私がどうしたいかなんて……だって、私は戦車道しか……西住流しか知らないんだもの……」
エリカ「……なら、ずっとそうやってなさい」
振り返ることもなく出口へと歩いていく背中
私はその背中に縋りつこうとした
立ち上がれなかった
その背中に手を伸ばそうとした
伸ばせなかった
叫んだ喉が痛みを訴える
嗚咽が、呼吸を乱す
それでも、乾ききった雑巾をさらに絞るように
僅かに振動が乗った呼気で
82 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:28:15.60 ID:SKxrM6UB0
みほ「助けて……」
83 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:30:04.90 ID:SKxrM6UB0
エリカ「……」
みほ「……」
エリカ「………………最初からそう言いなさいよ」
みほ「え……?」
踵を返した逸見さんは、再び私を見下ろす
エリカ「あなたがどんなに辛くったって、苦しくたって、それを言わなきゃ伝わらないわ」
みほ「……」
エリカ「私はね、戦車道に人生を捧げるつもりでこの学校に来たの。前進も後退もできないような中途半端なあなたに、構ってる時間はない」
みほ「っ……」
エリカ「……だけど、動き出すなら話は別よ。進む先が前か後かなんて自分で決める事なんだから」
みほ「……逸見さんは私の事嫌いじゃないの?」
エリカ「嫌いよ。何考えてるかわかんなくて、情けないあなたを見ているとイライラするわ」
みほ「……」
84 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:32:30.87 ID:SKxrM6UB0
エリカ「……それでも、助けを求める人をそのままにするほど薄情なつもりはないわよ」
みほ「……逸見さん」
エリカ「……何?」
みほ「ごめんなさい……わざと負けるような事して……あなたの気持ちを踏みにじって……」
エリカ「……良いわよもう。私こそ……悪かったわね、いきなりぶったりして。ちょっと感情的になりすぎたわ。……あと色々言ったりして。家の事とか、そのあたり」
みほ「うん……痛かった。どっちも……」
エリカ「そう、なら良かった。痛くなかったらもう一発かましてたわ。今度はグーよ」
みほ「あはは……酷いなぁ。……逸見さん」
エリカ「……」
大きく息を吸って、逸見さんを見上げる。
今度はちゃんと、言葉にする。
85 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:35:37.16 ID:SKxrM6UB0
みほ「私を、助けてください」
エリカ「……偉そうな事言ったけど、私は何もできないわよ?あなたの家の事情に口を出す気はないし、あなたの甘い考えに付き合う気もないわ」
みほ「……でも、逸見さんは私が持ってないものをもってるよ」
エリカ「……」
みほ「私は、西住流以外何も知らない。何もできない。……だから、それ以外を私に教えてほしい」
エリカ「……私だって戦車道くらいしか誇れるものを持ってないわ」
みほ「そんな事ないよ。だってあなたは……こんなにも真っ直ぐだもの」
エリカ「……」
みほ「別に知識や技術を教えてほしいんじゃない。ただ、あなたを知りたいの」
エリカ「……そういうのは気になる殿方に言うセリフじゃない?」
みほ「うーん、まぁ、気になってるってのは間違ってないしいいんじゃない?」
エリカ「あのねぇ……大体、私になんの得があるっていうのよ」
みほ「……私には戦車道しかない。だから、それを教えてあげる」
エリカ「……随分な言い草ね。あなたに教えられるの?」
みほ「うん。だって少なくとも私は――――逸見さんより強いよ?」
エリカ「……全く、言ってくれるわね」
みほ「え……?」
逸見さんはそっと手を差し伸べる。
86 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:36:53.58 ID:SKxrM6UB0
エリカ「ほら、いつまでもへたり込んでんじゃないわよ」
それに戸惑う私にじれたのか、無理やり私の手を引き立ち上がらせた。
みほ「わわわっ……」
エリカ「びしっとしなさい副隊長」
みほ「う、うん……」
エリカ「……空っぽのあなたに私の何が必要かなんてわからないわ。……正直、あれだけ強いのに戦車道に不満があるってのがムカついてしょうがないけど」
みほ「……ごめんなさい」
エリカ「謝らなくていいわよ。だけど、3つ約束して」
みほ「え……?」
87 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:40:56.18 ID:SKxrM6UB0
エリカ「まず一つ。もう、勝負に手を抜かないって」
みほ「……」
エリカ「誰かの本気に、本気で答えないのは侮辱以外の何物でもないわ。どれだけ実力に差があろうと、向かってくる意志を無碍にする権利は誰にもないのよ」
みほ「……うん」
エリカ「それともう一つ。誰かに感謝を伝える時に『ごめんなさい』はやめなさい。聞いててイライラするわ」
みほ「うん」
エリカ「最後に―――――ちゃんと前を向きなさい。内気なくせに目線まで下げてるなんて辛気臭くて仕方ないわ」
みほ「……うん。わかったよ」
エリカ「ならいいわ。もう帰りましょう」
言いたいことは言ったからと、逸見さんは再び出口に向かっていく。
私はその背中にもう一度声を掛ける。
みほ「……ねぇ逸見さん」
エリカ「何よ」
みほ「もし、私が本気で戦って……逸見さんに勝ってたらどうしてた?」
エリカ「……そしたら、戦車道をやめてたでしょうね」
みほ「人生を賭けるつもりでここに来たのに……?」
エリカ「あの戦いに、それだけの価値があるって思っただけよ」
みほ「……」
88 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:45:23.56 ID:SKxrM6UB0
エリカ「……冗談。ほんとはカッとなって勢いで言っただけよ」
みほ「逸見さん、私の事言えないじゃん……」
肩をすくめる逸見さんに私はあきれてしまう。
逸見さんはそれにムッとする。
エリカ「うるさいわね。……まぁ、もし負けてたら……転校して、別の所でやってたんじゃない?」
みほ「え……?」
エリカ「あれよあれ。『戦車道をやめる』って言うのは『黒森峰での戦車道をやめる』って事よ」
みほ「そ、それはいくらなんでも……」
エリカ「書面に残してるわけでもなし。そもそも学校の授業なのにやめるやめないもないでしょ」
みほ「えぇ……?それいったらおしまいじゃ……」
その戦いのせいでさっきまで散々言い争いをしていたのに……
不満げな私に気づいたのか、逸見さんは咳ばらいを一つする。
89 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:50:12.71 ID:SKxrM6UB0
エリカ「いいのよっ!結果的に私はやめなくて済んだんだから。思う存分、黒森峰で戦車道をするわっ!!」
みほ「……ふふっ」
自分勝手な言い分だけど、前を向いて、胸を張って言い切る逸見さんの姿はとても頼もしく、
私はつい笑ってしまう。
みほ「逸見さん」
エリカ「ん?」
みほ「……ずるい人」
エリカ「……あなたも大概よ。私、今日の試合の事一生根に持つから」
みほ「あはは……うん、そうだね。私もずるいよ」
エリカ「それと」
みほ「?」
エリカ「エリカで良いわよ」
みほ「え……?」
エリカ「さっき、そう呼んだでしょ?」
『私は、私だってあなたみたいに、エリカさんみたいに……自分らしく、いたいのに……』
90 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:51:48.06 ID:SKxrM6UB0
みほ「あっ……あれは、感情的になってつい……」
エリカ「別に呼びたくないならいいわよ」
みほ「えっ!?ううんっ!!エリカさんエリカさんエリカさんっ!!」
エリカ「連呼するのは違うでしょ……ほら、行くわよ。……みほ」
みほ「……」
エリカ「……何も言ってくれないと恥ずかしいんだけど」
みほ「え、あ……えっと、ちょっとびっくりしちゃって」
エリカ「西住さんじゃどっちの事かわからないでしょ?それに、あれよあれ、私はあなたが西住流の娘だなんて認めてないから」
みほ「……」
エリカ「だから……みほ、って呼ぶわ。……嫌なら考えるけど」
みほ「……あははっ!エリカさんって思ってたより可愛い人なんだね?」
エリカ「はぁ?ケンカなら買うわよ?」
みほ「違うよ。……エリカさん」
91 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:52:24.61 ID:SKxrM6UB0
みほ「西住みほです。……よろしくお願いします」
エリカ「……逸見エリカよ。ま、よろしくね」
92 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:53:32.31 ID:SKxrM6UB0
みほ「……ふふっ」
エリカ「何笑ってんのよ」
みほ「なんだか友達みたいだなって」
エリカ「はぁ?んなわけないでしょ。私とあなたは良くてライバルよライバル。怨敵と書いてね」
みほ「そっか。まぁ、今はそれでいいよ」
エリカ「今も何もずっとそうよ」
みほ「エリカさん」
エリカ「……何」
みほ「ありがとう」
エリカ「……ふんっ、さっさと帰るわよ」
みほ「あ、待ってよっ」
93 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:54:25.74 ID:SKxrM6UB0
貴女との思い出の中で最も強い記憶。頬と胸の内に残る痛みと共に、窓から入る夕日が私の心に焼き付いている
何もなかった私の手を取ってくれた人
私を見てくれた人
そして――――『初めて』出会った人
『初めて』私を伝えた人
94 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:54:59.23 ID:SKxrM6UB0
貴女が私の道を照らしてくれた
貴女が私の手を引いてくれた
貴女がいたから私は前を向けた
貴女は
95 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:55:29.01 ID:SKxrM6UB0
私を包み込んでくれる柔らかな光だった
96 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/09(土) 22:55:55.50 ID:SKxrM6UB0
ここまで。また来週。
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/09(土) 23:02:51.57 ID:gUewaHBhO
乙 見応えがある内容だ
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/09(土) 23:07:12.75 ID:Ucs+EMDfo
思わず見いってしまった
乙ー
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/10(日) 01:16:21.87 ID:TzaI0NEOo
乙でした
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/10(日) 09:50:55.38 ID:iQBFQPv10
引き込まれる
乙です
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/10(日) 18:25:19.21 ID:A6QP7L/J0
乙
相変わらず超面白い
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/10(日) 23:30:54.62 ID:9kD/gl0qO
助けた戦車にわにが乗ってたってルートは公式でもやってたけど、これでいくと本当にヤバいな
銀髪は染めたんじゃなくて白髪なんだろうな……
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/11(月) 11:46:26.44 ID:2xNahqck0
>>1
の文章で、このまま友情を育みつつ紆余曲折ありながらも、あのプラウダ戦でも勝利して卒業の時も一緒にいる、全体的に見れば文句無しのハッピーエンドのエリみほが読みたい。
だってこのエリカ死んじゃってるから…
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/06/11(月) 12:43:49.56 ID:v3yDbr4rO
>>103
それ大洗的にバッドエンドなんすよ…
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/11(月) 13:18:08.41 ID:+hBLfdye0
更新乙
大洗のバッドエンドか黒森峰のバッドエンドか…
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/06/11(月) 15:23:22.56 ID:IvF1gulr0
バタフライ効果で大洗には愛里寿が入学するんやで
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/11(月) 15:26:01.28 ID:EEHs24bSO
>>104
大洗が廃校にならないルートでいいじゃん(いいじゃん)
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/11(月) 16:08:46.20 ID:2xNahqck0
大洗ルートは隠しルートみたいなもんだと思えば…
正規(黒森峰)ルートでは画面の隅の方の新聞に大洗廃校危機って書いてある程度で、複雑なフラグ管理が成功すれば進めるよ的なもんだと思えば気にならないかな(白目
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/11(月) 22:33:03.15 ID:o9D1VU9RO
週一更新とか大人のテクニックすぎるよぉ……三日おきくらいの更新にしてくれぇ
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/11(月) 22:41:18.86 ID:L5d5Ni/oo
贅沢言うなよ
週一でもかなり早いペースなのに
111 :
◆eltIyP8eDQ
[sage saga]:2018/06/11(月) 22:49:43.24 ID:0YP86RpC0
すまねぇ……ホントは現在投稿分で過去編終わらせる予定だったんですが、
やっぱもっと掘り下げとかないと……ってなった結果、プロットの段階で過去編の文量が当初の5倍くらいになってしまって
それを整えるのに週一じゃないと追いつかない状態なんです……
なんでたぶん、このスレじゃ終わらせられません。もうしばらくお付き合いください。
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/11(月) 22:54:08.43 ID:c/P2RiPMo
ゆっくりでいいよー
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/12(火) 00:14:40.69 ID:BtXv+0/Bo
>プロットの段階で過去編の文量が当初の5倍くらい
やったぜ
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/12(火) 00:38:10.73 ID:sQM4Cik2O
やっぱこういう大作を書く人はプロットからしっかり練ってるんだな、さすがだわ、、、。
贅沢言うなら三日でも辛い、物理的な限界を突破して毎日更新してほしいもゆだぜ。精神と時の部屋はよ。
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/06/12(火) 09:28:18.52 ID:T4ae/i7HO
個人的にどうやってプロット作っているのか、気になる…
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/06/12(火) 09:29:06.11 ID:T4ae/i7HO
個人的にどうやってプロット作っているのか、気になる…
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/12(火) 10:33:34.55 ID:/cDE4RePO
どうやってってのは漠然としてた難しい質問じゃなかろうか、、、
パソコンでとか、手書きノートだとか言う方法論的な問いなのか、
あるいはストーリーの質を向上させる為に日頃どんな努力(物語構造認識系の本読むとか、色んな人と努めて会話するとか)してるのかを聞く問いなのか、
限定してあげたほうが
>>1
さんも答えやすいのでは
横槍ゴメン
118 :
◆eltIyP8eDQ
[sage saga]:2018/06/13(水) 01:52:28.73 ID:HAs+Ypo/0
>>115
、
>>117
折角質問してくださったので私なりの回答をさせていただきます。あと深夜のせいでテンション高いので。
プロットの作り方については、テキストファイルを2つ作り、片方には箇条書きで全体の流れを書いて、
もう片方にはそれを元に台本形式でシーンを構成。その上で、齟齬や矛盾があったら修正。地の分を入れるのであれば、それに合わせて会話を修正しつつ挿入って感じです。
ただ、箇条書きのプロットは今やってるスレのようなよっぽど長いSSじゃないとめったに作りませんね。
50〜200レス程度のSSで、台本形式ならそのまま直接テキストに書き込んで、ちょっと直して投稿です。
ストーリーの質については……あくまで参考程度に留めておいて欲しいのですが、
『話の作り方』的な本はほとんど読んだ事がありません。
その上で自分の作劇の源が何かと問われたら、映画と昔読んだ数多のラノベと漫画かなぁ。って感じです。
小手先の話になりますが、表現力や、細かい言い回し、漢字、熟語、ことわざなんかはラノベや漫画でも十分学ぶことができます。(自分ができているかは別として)
正直、ことわざや漢字なんかはそれこそネットで調べればすぐに出てきますが、それらの存在自体を知らなければ調べることもできず、
逆に詳細は忘れていてもそういった表現の存在さえ知ってればいくらでも調べようがあります。
なので、読みやすい漫画、ライトノベルは表現の幅を広げるのに役に立つという事です。
無論、昔の小説や硬い文章のものを読むのは決して無駄じゃありませんし、むしろ読むべきだとは思いますが、
昨今、一般小説においてもラノベに近いような文体が見受けられる中、2次創作、あるいは同人作品であるならばそこまで考える必要は無いと思います。
私自身、SSやラノベを読んでいるときに文章力をどうこう思う事はほとんどなくて、やっぱり創作物で一番大事なのはストーリーって考えています。
ていうか、商業作品でもないのに文章力をどうこう言われる筋合い無いわって思っていますし。
119 :
◆eltIyP8eDQ
[sage saga]:2018/06/13(水) 01:59:04.17 ID:HAs+Ypo/0
話の作り方についてですと、
大事なのは色んなストーリーを自分に収納することで、
漫画でもラノベでも一般小説でも、自分が知らない表現やストーリーを知ることで、
ありきたりですが自分の感性を育てることができるんじゃないかなって思ってます。
その上で、個人的によくやってるのが映画や舞台鑑賞ですかね。
漫画やラノベって一巻完結じゃない場合大抵何冊か読まなきゃいけませんが、
だからと言って一巻完結の一般小説だと読むのに時間がかかるし、自分に合わないジャンルだとめっちゃ疲れます。
けれど映画の場合、どんなに長くても2、3時間ぐらいで1つのストーリーが完結しますし、
何より多少内容が合わなくてもこちらから読み進める必要がなく、勝手に話が進んでくれます。
舞台については映画と同じく勝手に話が進んでくれるというのと、舞台作品の性質上、表現が大仰になるものが多く、
そういった部分はアニメや漫画の二次創作、あるいはオリジナル作品を書く場合において結構参考になったりします。
2.5次元舞台なんかはアニメ漫画の表現と、そういった舞台の表現が噛み合った結果人気がでているんじゃないかなって思いますし。
ただ、舞台作品は大きいところだとチケット代が高い場合が多く、加えて地方から見に行くとなると交通費もバカになりません。
そういったわけで、手っ取り早くストーリーの幅を広げたいため私は映画ばっか見てます。安い時ならポップコーン含めても2000円以内でおさまりますし。
まぁ、私の場合は普通に映画が好きだから見ているだけですが。
最後に、キャラの性格については出来る限り把握するよう心がけてます。
二次創作でキャラ崩壊なんかいくらでもありますが(現にこのスレもそうですし)、そのうえで原作からキャラを変えるのであればそれ相応の理由を用意しようってのが私の考えです。
読んでいる人がそのキャラ崩壊に納得しているかも大事ですが、何よりも書き手自身がそのキャラ崩壊に納得していないと本当に支離滅裂になるんで。
最悪描写不足と言われようとも、自分が納得できる理由を用意すると少なくとも書く側は納得と整合性をもってストーリーを書けます。
まぁ、ギャグ系の場合完全に勢いで押し通しても良いと思いますが。ていうか私がそうですし。
長々と語ってしまいましたが、上記のはあくまで私個人のやり方であって、それこそ作劇法なんて人の数だけあるものだと思っています。
なのでこうすればいい!!って思わず、好きなようにやればいいかと。
このスレにしてもあくまで『ガールズ&パンツァー』という大本の作品があって初めて成立する二次創作です。
原作が一番大事という事を忘れずに、崩したいところはごめんなさい!しつつ少しずつ書いています。
長文失礼しました。
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/13(水) 03:05:27.17 ID:2Q3em7WXo
長文過ぎて荒らしと勘違いしたわ
次期待
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/13(水) 04:04:54.85 ID:BqgqYH23O
おもしろい話を書く人の話なら長文でも問題なしさ
質問したやつgjやぞ。
>>1
さんも解説ありがとうございます。
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/06/13(水) 10:49:51.11 ID:Mw0zaIN7O
115の者です。ありがとうございます、こんな丁寧な答えを頂いてもらって。将来何かストーリーを作りたいと思っていてでも左も右もわからないので色々参考になります!117さんも横槍ありがとうございます!
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/13(水) 16:03:04.46 ID:sVokkJ3SO
横槍ありがとうの喧嘩売ってる感
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/13(水) 16:14:43.54 ID:4k2bFmRl0
覚えたての言葉を使いたいんでしょ
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/13(水) 22:35:26.64 ID:w9AtTc/y0
そっちもだけど 頂いてもらっても軽く衝撃
ともあれ
>>1
の真摯な対応には頭が下がる
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/16(土) 11:42:23.19 ID:Cj6QmGOCO
毎日が日曜日になぁーあれっ
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/16(土) 11:43:31.81 ID:Cj6QmGOCO
間違えた、土曜日になーれ、だ、、、
毎日が日曜日だったら永遠に続きこないやん、、、
128 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 22:46:27.58 ID:oBFJBq/H0
・
・
・
「練習終わったってのになんであいつらまた戦ってるの?しかも一騎打ちで」
「なんか副隊長から挑んだらしいよ?」
「え?あんなおどおどしてるのが?」
「逸見の態度がよっぽど腹に据えかねたのかな……」
「うわーあの子可愛い顔して意外と根に持つタイプなんだな……」
まほ「……」
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/16(土) 22:48:53.33 ID:BXjPbabFo
始まったー
130 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 22:50:11.67 ID:oBFJBq/H0
―――――
――――
―――
エリカ『……』
みほ『隊長』
まほ『なんだ?』
みほ『明日、逸見さんともう一度戦わせてください』
まほ『どういう事だ』
みほ『私も逸見さんも、あの結果に納得がいきません』
まほ『……ダメだ。すでに決まったことを何度も蒸し返すわけには――――』
みほ『勝った逸見さんが引き下がり、負けた私がそのままというのは示しがつかないと思います』
まほ『みほ、お前……』
みほ『だから今度は私から、副隊長の座をかけて逸見さんと戦います』
まほ『……意味のない戦いだ。認めるわけにはいかない』
みほ『隊長。いえ、お姉ちゃんは言ったよね?強くあることは私たちの義務だって』
まほ『……ああ』
みほ『私は、私の強さを伝えたいの。みんなに、エリカさんに』
まほ『だが……』
エリカ『グラウンド30周』
まほ『逸見……?』
エリカ『負けたらグラウンド30周でどうでしょう?今回は副隊長からの再戦希望なんですから、私の時のように戦車道を辞めるだなんてする必要はないかと』
みほ『30周かぁ……うちのグラウンド400メートルだからちょっときついかも』
エリカ『楽じゃ意味ないでしょ』
まほ『まて、私はまだ許可を出しては……』
みほ『お姉ちゃん、私はエリカさんと戦ってしっかりと決着を着けたい。なあなあで済ませるわけにはいかないの』
エリカ『隊長、お願いします』
まほ『……わかった』
131 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 22:52:21.00 ID:oBFJBq/H0
―――
――――
―――――
まほ「みほ、お前が進んで誰かと競いたがるだなんてな……」
「副隊長凄いなぁ……あれでホントにこないだまでランドセル背負ってたの?」
「それについてけてる逸見も大概だな」
「逸見さん頑張って―っ!!」
「みほさーんっ!!負けないでーっ!!」
「……おっ?そろそろ決まりそうだな」
ダァン! ダァン!
シュポッ!
「……副隊長の勝ちか」
「やっぱりこの間は調子が悪かったのかもね」
「みほさん、さすがです……」
まほ「……」
132 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 22:53:38.88 ID:oBFJBq/H0
・
・
・
みほ「……」
エリカ「っ……だぁもうっ!!」
みほ「エリカさん」
エリカ「……何よ、敗者になんか用?」
みほ「……私の勝ちだよ、エリカさん♪」
エリカ「……言ってくれるじゃない」
みほ「エリカさんどうだった?しっかりと私に負けた気分は」
エリカ「そうね……なんて言うか―――――うっさいバーカッ!!」
みほ「あ、エリカさんどこ行くのーっ!?」
エリカ「『負けたほうがグラウンド30周』っ!!私が言い出したんだからやってやるわよコンチクショーっ!!」
みほ「せめてジャージに……行っちゃった」
まほ「みほ」
133 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 22:55:35.42 ID:oBFJBq/H0
みほ「お姉ちゃん?」
まほ「教えてくれ、なぜ逸見と戦おうと思ったんだ」
みほ「……私が、初めてちゃんと話をしたいって思った人だから。そのためにはちゃんと本気でエリカさんと向き合わないといけなかったから」
まほ「……」
みほ「お姉ちゃん。エリカさんは、私の嫌いなところを全部嫌いって言ってくれたんだ」
まほ「え……?」
みほ「……お姉ちゃんの妹で、西住流の娘だから色んなことを言ってくる人がいて、だけど、私に敵わないってわかるとみんな面と向かって何も言わなくなる」
まほ「……」
みほ「だけどね、エリカさんは私のほうが強いって理解して、それでも私に真正面から突っかかってくれるの」
まほ「……」
みほ「お姉ちゃん、私ね……最初にエリカさんと戦った時手加減したの」
まほ「……ああ、知っている」
みほ「だよね。私、エリカさんに怒られたんだすっごく、すっごく」
まほ「……」
134 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 22:56:52.60 ID:oBFJBq/H0
みほ「『あなたは自分の事しか考えてない』って。……その通りだった。私は、嫌な事から逃げてるだけだった」
まほ「……」
みほ「だから、今度は本気で戦った。エリカさんの本気を、本気で迎え撃った」
まほ「そしてお前が勝った」
みほ「うん、だって私の方が強いから」
まほ「……お前がそんな事を言うなんてな」
みほ「あはは、そうだね。……お姉ちゃん、私は、私がなんなのか知りたい」
まほ「それは……どういう意味だ?」
みほ「……お姉ちゃんはさ、もしも自分が戦車道をやってなかったら何をしていたと思う?」
まほ「……考えた事もないな」
みほ「私も。小っちゃいころから当たり前のように戦車に乗って、当たり前のように戦車道を初めて、当たり前のように勝利を求められてきた。……そして勝ってきた」
まほ「……」
みほ「だけど、それは私が『西住』だからであって、『みほ』のものじゃない。私は……『西住みほ』を知りたいの」
まほ「……」
みほ「別に戦車道を辞めるとかそんなんじゃないよ。ただ……戦車道関係ない、私らしさを知りたくなったの。エリカさんといればそれが分かるかもしれないから」
まほ「……」
みほ「…それじゃあ私は行くね。エリカさん、水も持たずに行っちゃったからさ」
まほ「ああ」
みほ「お姉ちゃん」
まほ「なんだ?」
みほ「私、黒森峰に来て良かったかも♪」
まほ「……久しぶりだな。みほの笑顔を見るのは」
135 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 22:57:37.20 ID:oBFJBq/H0
まほ「逸見エリカか……」
136 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 23:04:09.56 ID:oBFJBq/H0
・
・
・
みほ「エリカさん、30周お疲れ様」
エリカ「あなたわざわざ待ってたの?もう暗いのに」
みほ「だって私達が言い出したことなんだから。ちゃんと最後まで付き合うよ」
エリカ「……そう」
みほ「エリカさん」
エリカ「……何?」
みほ「その、一緒に帰ろう?」
エリカ「嫌」
みほ「うぅ……で、でも私の寮もそっち方向だから……あと、夜道で女の子一人は危ないし……」
エリカ「学園艦で何の危険があるっていうのよ……大体、あなたそこらの男性より体鍛えてるでしょうに」
みほ「で、でも……」
エリカ「……はぁ、別にあなたがどんなルートで帰ろうと文句言わないわよ」
みほ「……なら、私は私のルートで帰るね」
エリカ「はいはい、好きにしなさい」
137 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 23:05:54.04 ID:oBFJBq/H0
・
・
・
エリカ「ちょっと、隣歩かないでよ。一緒に帰ってると思われるじゃない」
みほ「私は私の好きなルートで好きなように帰ってるだけなんで」
エリカ「あなた急に言うようになったわね……」
みほ「誰のせいかな?」
エリカ「……誰のせいでしょうね」
みほ「ふふっ。……エリカさん、今日はありがとう」
エリカ「何の事よ」
みほ「私ともう一度戦ってくれたこと」
エリカ「……あれは私が一番納得がいってなかったからよ。お礼を言われる筋合いなんて無いわ」
みほ「それでも。今日の試合が無かったら私はたぶん、あなたを知る事ができなかったから」
エリカ「へぇ?あなたが一体私の何を知ったっていうの?」
みほ「うーん、とりあず意地悪で、怒りっぽくて、あと意地っ張りってところかな?」
エリカ「そういうあなたはドジでおっちょこちょいで臆病で卑怯で泣き虫でポンコツな副隊長ね?」
みほ「うぅ……倍返しだよ……」
エリカ「……みほ」
みほ「エリカさん?」
エリカ「約束、守りなさいよね」
みほ「……」
138 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 23:07:58.34 ID:oBFJBq/H0
『本気には本気でぶつかる事』
『厚意には感謝で返すこと』
『しっかりと前を向く事』
夕焼けが差し込む中、誓った約束。
月の光が辺りに満ちる中、思い返す。
そして今一度、深く頷く
139 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 23:11:53.01 ID:oBFJBq/H0
みほ「……うん。絶対に守るよ」
エリカ「そ、なら……まぁいいわよ」
エリカさんはそう言うと、数歩前に出てこちらに振り返る。
みほ「エリ、カさん」
140 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 23:17:16.01 ID:oBFJBq/H0
月明かりが私達を、彼女を照らす
儚さを感じる白い肌、じっとこちらをとらえて離さない碧眼、そよ風になびく銀髪が月光を反射してきらきらと、まるで光の粒子を放っているかのように煌めいている
まるで、自分がおとぎ話の世界に入ってしまったかのような錯覚をしてしまうほど幻想的な姿。
そして、何よりも私の目を惹いて離さないのは
エリカ「精々頑張りなさい」
初めて見た彼女の微笑み
いつも私に見せてくる意地悪な笑顔とは違う
透き通るような表情に、姿に、全てに、
私は一瞬言葉をなくしてしまう。
141 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 23:20:22.04 ID:oBFJBq/H0
みほ「……」
エリカ「みほ?」
みほ「……綺麗」
エリカ「……はぁ?何言ってんのよ気色悪い」
みほ「……え?あ、ち、違うの!!月が綺麗だなって!!」
エリカ「あのねぇ……どっちにしてもそういう事は殿方に言いなさい」
みほ「……?どういうこと?」
エリカ「あなた国語が得意なんじゃなかったっけ?……まぁ、知らないならいいわよ後世の創作らしいし。それに私、月って嫌いなのよ」
みほ「え、なんで?」
私の問いにエリカさんはしまった、と言いたげな顔をすると気まずそうにそっぽを向く。
エリカ「……内緒よ」
みほ「ええ……そこまで言っておいて……」
エリカ「……いつか、話すかもね」
みほ「なら、いつか聞かせて」
エリカ「……」
それっきりエリカさんは何も話してくれず、
けれども、私が隣を歩いていることにも何も言ってこなかった。
それがどうにも嬉しくて、エリカさんに認められたような気がして、
なんとなく、歩幅が広くなった
142 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/16(土) 23:21:24.90 ID:oBFJBq/H0
ここまで。
みぽりんにはまだまだ笑顔になってもらいます。
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/16(土) 23:24:55.65 ID:BXjPbabFo
乙です
ここからの喪失感は堪えるだろうな……
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/16(土) 23:42:12.51 ID:CDk9Jm3nO
エリみほに付き纏う滅びの美学好き
また来週まで待たないといかんのか、、、ハァン
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/17(日) 00:13:07.78 ID:0cUPT7RRo
こいつらいれば十連覇は確実だな
なお
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/17(日) 02:29:26.64 ID:96McRzJro
乙ー
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/17(日) 04:00:46.41 ID:RyKeSPr10
このままエリカが死なずに黒森峰10連覇するルートがみたい。
大洗なんて高校は無かった(白目
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/17(日) 18:12:06.98 ID:IkNCsOxl0
みほエリ尊い…
また一週間頑張れる
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/17(日) 19:55:16.13 ID:eSJ3kYulO
また一週間頑張って生きねばならぬという苦行、、、早くしなせてよぉ!
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/17(日) 21:38:08.08 ID:c7AlEXs10
乙
俺の見たかったエリみほはまさにここにあったって感じだぜ素晴らしいな素晴らしい
既に結果が確定してる未来がある分、尊さと悲しみでメンタルダメージが酷いことになってるんですがそれは
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/18(月) 01:47:32.73 ID:iRfoCs/oo
落とす前にあげれるだけあげるドSの所業
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/18(月) 11:57:54.18 ID:nL+yiqtIO
このドS!
>>1
乙!
誰かになりきる精神症ってなんか病名とかあんのかな
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/18(月) 16:46:23.97 ID:gy9klDXiO
中等部の3年間があったとするとグッと重みを増すよなぁ
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/22(金) 22:03:13.02 ID:0FFzTxn7O
質問しつもーん(沙織風)
>>1
さんはその週に投稿する分をいつも何曜日ころに書き上げてるんですか。
書き上げてからの手直しは結構綿密にやるほうですか。誰か人にみせたりしてますか。
書き始めて思わぬところで話につまったりしたことはありますか。
あるとしたらどうやってそれを解消していますか。
ぶしつけな質問ですはありますが、もしよろしければ、教えてほしいです。
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/22(金) 23:30:26.84 ID:pg7opeS60
聞いてどうするの?
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/22(金) 23:35:08.29 ID:0FFzTxn7O
どうするのと聞かれると困りますが、このSSが好きなので!
こういうことに興味もつのはあまり良くないでしたか?
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/23(土) 10:17:19.89 ID:lIANeyS70
なんか変な奴らが湧いてきたな。黙って見てろ。
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/23(土) 11:18:54.54 ID:9GzN41gKO
初々しい中学生かあるいは外人さんだったのだろう。
今晩ようやく続きかー、長い一週間だったよ。
159 :
◆eltIyP8eDQ
[saga]:2018/06/23(土) 22:06:31.00 ID:JwHr3bg+0
・
・
・
〜中等部1年 8月〜
まほ「そこまでっ!!次のチームっ!!」
夏の日差しが最高潮な8月の昼下がり、大会が終わっても少しの休みを挟めば黒森峰はまた、来年に向けて練習を始める。
副隊長とはいえ、私はまだ一年生。ただみんなを指揮するだけじゃなく今やっているような基礎訓練もしっかりやらなくてはいけない。
必要な練習なのはわかるし、現にまだまだ私は体力不足だという認識は持っているけれど、
みほ「暑い……」
だからと言って、わざわざこんな猛暑日にやらなくてもと思うし、学園艦なんだから涼しいところに移動してくれないかな、なんて考えながら木陰で膝を抱え込んでしまう。
160 :
◆eltIyP8eDQ
:2018/06/23(土) 22:09:07.09 ID:JwHr3bg+0
エリカ「日陰で体育座りだなんて、虫じゃないんだからやめなさい」
みほ「エリカさん……」
エリカ「いくら自分の番じゃないからって練習中にそんなボケっとしてるんじゃないわよ」
みほ「あはは……大会終わったのにエリカさんはやる気満々だね」
エリカ「何舐めた事言ってるのよ。所詮中学生大会での優勝よ?気を抜いてる暇なんてないんだから」
みほ「それは……そうかもだけど」
エリカ「まったく……副隊長として優勝に貢献したくせに他人事みたいな態度ね。そういうところ嫌いだわ」
みほ「……エリカさんだって頑張ってたよ」
エリカ「頑張るだけなら誰だってできるのよ。大事なのは結果を出すこと。そして、一番わかりやすい結果は勝利なのよ」
みほ「……そっか」
エリカ「……やっぱり黒森峰に来てよかったわ。戦車の質も、練習の質も他校とは比べ物にならない」
みほ「そうなの?」
エリカ「……そう思ってる」
みほ「知らないんだ……」
161 :
◆eltIyP8eDQ
:2018/06/23(土) 22:16:52.12 ID:JwHr3bg+0
エリカ「いいのよ。住めば都って言うでしょ?自分の場所が一番だって思うのが大事なの」
みほ「……うん、そうだね」
エリカ「それに、先輩たちの熱気に中てられて一年もやる気出てるみたいだしね。……もっとも、大会終わってからなんて遅いけど」
みほ「それでもさ……みんな、凄いよね。あんな風に熱中できて。私は……」
エリカ「……ねぇ」
みほ「何?」
エリカ「あなた、戦車嫌いなの?」
みほ「……違うよ、戦車は好き。……だけど、戦車道は楽しいって思えないな」
エリカ「なら、戦車道を好きになる素質はあるわよ」
みほ「……そうかな」
エリカ「私は好きよ、戦車も戦車道も。戦車に乗れることが楽しいし、その上で負ければ悔しいし、勝てば嬉しいわ」
みほ「……」
エリカ「でも、一番好きなのは……競い合ってる時。相手が本気で向かってきて、こちらが本気で迎え撃つ時
戦車と乗員と一体になったような瞬間、私は最高に楽しいわ」
その言葉が本心なのであればなるほど、私のした事が彼女の逆鱗に触れるのも納得だと思う。
そしてそれを理解できたからこそ、私はエリカさんに一種の尊敬のような気持ちを抱いていた。
同時に、それを持っていない自分への劣等感も。
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/06/23(土) 22:21:04.76 ID:JwHr3bg+0
みほ「……エリカさんは凄いね。ちゃんと、みんなと一体になれるんだから。……私は、そんな風にできないよ」
エリカ「なら、今度一緒の戦車に乗りましょう?」
みほ「え?」
エリカ「たしかうちってII号戦車があったわよね。あなたが車長兼砲手で、私が操縦でいいかしら?」
みほ「で、でも……」
エリカ「あくまで練習の一環よ。あなたの手腕、間近で見せてもらうわ」
みほ「……うん」
エリカ「どう?少しは戦車道楽しめそう?」
そう言ってエリカさんは微笑む。
みほ「……うんっ!」
だから私も微笑み返す。
エリカさんと出会ってたった数か月でこんな風に笑いあえる関係になれるとは思ってもいなかった。
163 :
◆eltIyP8eDQ
:2018/06/23(土) 22:24:19.59 ID:JwHr3bg+0
エリカ「なら、そんなヘタレてないででびしっとしなさい」
みほ「あ……ごめんなさい。でも、なんだか今日のエリカさん優しいね」
エリカ「はぁ?」
みほ「だって、私が戦車道楽しめるようになるために、一緒の戦車に乗ってくれるだなんて」
エリカ「聞いてなかったの?あくまで練習の一環よ」
みほ「それでもだよ。私は、それがすっごくうれしいから」
エリカ「……そ。なら勝手に喜んでなさい」
みほ「そうするね」
エリカ「……あなた、初めて会った頃よりずいぶん図太くなったわね」
みほ「そう?ならそれは……誰のせいかな?」
エリカ「……ふん。あーあ、なんかお腹空いたわ。今日のランチどうしようかしら」
みほ「エリカさん、大体ハンバーグセットじゃないっけ?」
エリカ「……そうだったわね」
みほ「たまには別のも食べるといいんじゃない?つくねとか」
エリカ「別にひき肉料理が好きなんじゃないわよ……」
いつのまにか、暑さなんて気にならなくなっていた。
だって、エリカさんと話すことの方が私の胸の内を満たしてくれるのだから。
164 :
◆eltIyP8eDQ
:2018/06/23(土) 22:36:47.26 ID:JwHr3bg+0
・
・
・
「西住さん、今日もごめんなさい……」
「私たちが上手くできないせいで足引っ張っちゃって……」
「もっと行けると思ってたんだけど……」
ある日の練習後、私は目の前にいる3人に頭を下げられていた。
彼女達がしたのは簡単なミス。
だけど場合によっては致命的になりかねないものだった。
とはいえあくまで練習での事。責める気は無いし、むしろ練習で欠点が見つかること自体はとても良い事だと思う。
だから、私は『いつもの様に』彼女たちを傷つけないよう、語り掛ける。
みほ「練習中でのミスなんだから謝るほどの事じゃないよ。ほら、元気出してっ!!」
「怒ってない……?」
みほ「いいよ、誰だって上手く行かない時はあるんだから」
「そ、そうだよね!」
「私たちだって頑張っていればそのうち……」
みほ「……でもね、」
エリカ「あら?どこの負け犬かと思ったら副隊長とその取り巻きじゃない?」
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/23(土) 22:38:03.61 ID:tG3Mg9Eio
わにわに
166 :
◆eltIyP8eDQ
:2018/06/23(土) 22:38:52.35 ID:JwHr3bg+0
みほ「エリカさん……?」
「い、逸見さん……」
「なんでここに……」
「……何、今の」
エリカ「聞こえなかったの?負け犬って言ったのよ。雑魚集団って言ったほうがわかりやすかった?」
みほ「え、エリカさん?」
鋭く、突き刺すような言葉に彼女たちはたじろぐ。
私はまるで初めて会った時のように私たちを睨みつけるエリカさんに戸惑いを隠せなかった。
「っ……なんであなたにそんな事……」
エリカ「あなたに言い返す資格があると思う?強い奴の優しさに甘えているような奴が一端の戦車乗り気取るんじゃないわよ」
「なっ……ひ、ひどい……」
エリカ「何が?ここは黒森峰女学園、戦車道の強豪。その機甲科に入って戦車道をやってるくせにぬるい環境でとどまっているような奴に居場所なんてないわ」
「わ、私たちだって頑張って……ねぇ!?」
「う、うん……」
「そうだよ!」
「だよね!!西住さんだって私たちの頑張りを認めて――――」
エリカ「黙りなさいッ!!」
167 :
◆eltIyP8eDQ
:2018/06/23(土) 22:42:53.76 ID:JwHr3bg+0
突然の怒声、それを叩きつけられた彼女たちは今度こそ動けなくなる。
私にはわかる、エリカさんは今、本気で怒っている。
……経験者だから。
エリカ「あなたたち……自分の努力すら誰かの同意がないと誇れないの!?そんなの……努力なんて言わないっ!!」
「あ、あなたにそんな事言われる筋合いはないっ!!
「そうだよ!!あなただって、西住さんに負け――――」
みほ「やめて」
その言葉を自分でも驚くほど冷たい声で遮る。
先ほどまでエリカさんを見ていた三人の瞳は今度はこちらに向く。
だから、私も彼女たちを見渡す。
一人一人その瞳に語り掛ける
168 :
◆eltIyP8eDQ
:2018/06/23(土) 22:48:32.45 ID:JwHr3bg+0
みほ「エリカさんは努力をひけらかしたりしてないよ。そして、誰よりも努力してる事を私は知ってる……」
「西住さんっでもっ……」
みほ「少なくとも、今のあなた達にエリカさんをどうこう言う資格はないと思う……けど」
最後に言い切れない辺りまだまだエリカさんを見習わないとなぁ……
それでも、私の気持ちは彼女たちに伝わったようで、唇を噛みしめ俯いてしまう
それを見届けたかのように黙っていたエリカさんが口を開く。
エリカ「……散りなさい。あなた達みたいな雑魚にこの子の時間を奪う権利は無いわ」
「……わ、私だって強くなるためにここに来たのにっ」
「え、ちょっ……」
「ま、待ってってば!?」
エリカ「……」
みほ「……ごめんね」
呟いた言葉は、どちらに向けたものだったのだろうか。
169 :
◆eltIyP8eDQ
:2018/06/23(土) 22:52:09.53 ID:JwHr3bg+0
みほ「……エリカさん聞いて、みんなは別にやる気がないとかじゃなくて……ただ、急に変わった環境に着いていけてないだけで」
エリカ「……あれは、あなたが招いた事態よ。もっと早くに切り捨ててれば、あの子たちは今日まで無駄な時間を過ごさなくて済んだわ」
みほ「エリカさん……」
エリカ「環境は関係ない。堕ちる奴はどんな場所でも堕ちる。……あなたまでそれに付き合ってどうするの?」
みほ「……私は、そんな事無いと思う」
エリカ「……」
みほ「誰だって苦手な事、弱いところがあるとおもう。それは技術だけじゃなくて、心にも。……私がそうだから」
エリカ「……」
みほ「私、みんなともう一度話してくる。今度はちゃんと、私の考えを伝える」
エリカ「……今さら本気になれると思う?誰かさんに甘やかされて周りとの差が目に見えてついてしまった今、あの子たちがあなたの言葉に耳を傾けると思う?……逆恨みされるのがオチよ」
みほ「……だとしても、このまま放っておけない。エリカさんの言う通り私にも責任があるんだから」
エリカ「……」
みほ「それにね、私たちまだ中学1年生なんだから。こんなところで諦めるなんてもったいないよ」
エリカ「あら?さすがは天才副隊長さん。説得力あるわね?」
みほ「あはは……」
みほ「だからさ、もうちょっと待ってほしい。……ううん。先に行ってて。あの人たちだってきっと戦車道が好きだから、強くなりたいからここに来たはずなんだから」
エリカ「……元よりそのつもりよ。強くなりたいなら、勝手になればいいのよ」
その言葉は彼女たちにも、私にも、エリカさん自身にも言っているように聞こえた。
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