このスレッドは950レスを超えています。そろそろ次スレを建てないと書き込みができなくなりますよ。

【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」

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195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 13:01:16.58 ID:ou0hHNaSO
アキのパソコンを使ってミカが書き込みしてんだルゥオオオオオ!?
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 13:16:41.77 ID:rjuqcQoBO
蘭子「混沌電波第160幕!(ちゃおラジ第160回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521454455/
蘭子「混沌電波第161幕!(ちゃおラジ第161幕)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1522060111/
蘭子「混沌電波第162幕!(ちゃおラジ第162回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1522664288/
蘭子「混沌電波第163幕!(ちゃおラジ第163回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523269257/
蘭子「混沌電波第164幕!(ちゃおラジ第164回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523873642/
蘭子「混沌電波第165幕!(ちゃおラジ165回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1524480376/
蘭子「混沌電波第166幕!(ちゃおラジ第166回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1525058301/
蘭子「混沌電波第167幕!(ちゃおラジ第167回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1525687791/
蘭子「混沌電波第168幕!(ちゃおラジ第168回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526292766/
蘭子「混沌電波第169幕!(ちゃおラジ第169回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526897877/
蘭子「混沌電波第170幕!(ちゃおラジ第170回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527503737/
蘭子「混沌電波第171幕!(ちゃおラジ171回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528107596/
蘭子「混沌電波第172幕!(ちゃおラジ第172回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528712430/
蘭子「混沌電波第173幕!(ちゃおラジ第173回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529353171/
蘭子「混沌電波第174幕!(ちゃおラジ第174回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529922839/
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 19:59:16.21 ID:p6M+gYVkO
ss 作品にあんま関係ないことで盛り上がるのって、スレ主的には迷惑でやめてほしい事なんじゃないのか?
そーでもないのかな?
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 20:19:29.40 ID:owOM5AbWo
その辺は荒らしだからスルーするのが正しい
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 20:40:18.84 ID:p6M+gYVkO
なるほど納得、荒らしやね。

ただ>>192って>>1よな?
乗っかっててなんかワロタ
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 22:24:47.21 ID:NV0k/h070
sagaが入ってて紛らわしかったな >>1じゃないぞ
証明できんが俺だ
でしゃばって失礼 黙って土曜を待つとするよ
201 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 19:49:50.51 ID:aIe+Rcdf0





黒森峰に入学したばかりの頃、妹は、みほはいつもうつむいていた。

そして私はそれを見て見ぬふりをしていた。

今は辛くても黒森峰の環境が、私の背中が、いつかあの子を強くしてくれるのだと信じて。

……私は長女だ。普通の家ではなく、西住流の。

だから強くあろうと誓い、強くあれとみほにも求めた。

あの子なら、みほならきっとそうなれると信じて。

学校も、副隊長の座も、贔屓などではなくあの子に相応しいものだと思ってる。

そしてその期待こそがあの子を苦しめているのだと、私は気づいていた。

だけど私は、それでもみほならきっと乗り越えられると、強くなれると信じていた。

それがあの子のためなのだと。




……それが、私の押し付けなのだとわかっていたのに。




202 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 19:51:04.86 ID:aIe+Rcdf0





まほ「みほ」

みほ「お姉ちゃん?」

まほ「少しいいか」

みほ「いいけど……この間のあれの事?」

まほ「いや、『ニゴバク』についてはお前と逸見が罰を受けた以上、もう言うことは無い」

みほ「そんな略称になってるの?もう消えない汚名だね」

まほ「お母様にはなんとか隠し通してるんだからあまり派手な行動は慎んでくれ」

みほ「二度とするつもりはないよ……それで、何の用なの?」

まほ「いや……その、最近はずいぶんと元気にというか、やる気が出てきたなって」

みほ「?」

まほ「ここに入ったばかりの頃はどこか上の空な事が多かったが、最近は学生生活を楽しんでいるように見える」

みほ「……」



正直、最初は目を疑った。

いつもうつむいて、泣きたいのに泣けないといったような表情だったみほが、まるで昔の、本当に昔の頃のように笑うのだから。



203 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 19:54:08.80 ID:aIe+Rcdf0

まほ「それは……逸見がお前を変えたのか?」

みほ「……かも」

まほ「……そうか」



逸見の事は一年の中でも抜き出た技量の持ち主だったから頭には入れていた。

同時に苛烈とも言える性格であることも把握していた。だから、みほが逸見と毎日のように昼食をとっていると知った時は

逸見がみほをいじめているのでは?と疑ってしまったものだ。



まほ「なんというか、少し意外だな」

みほ「何が?」

まほ「お前と逸見はそりが合うようには見えなかったから」

みほ「……そうだね。私もそう思うよ。だけど……エリカさんって案外優しいんだよ?」

まほ「そうなのか?」



普段の逸見の練習態度を見ると優しさなんてものは排除するタイプだと思っていたのだが。



みほ「うん。学食で一人で食べてた私に初めて声を掛けてくれたのはエリカさんなんだ」

まほ「……すまない」



そんなつもりじゃないのはわかっていても、みほの言葉に責められているかのような居心地の悪さを感じてしまう。




みほ「……あ、ち、違うよ?お姉ちゃんを責めてるとかじゃなくて……」

まほ「だがお前に寂しい思いをさせていたのは事実だ」

みほ「仕方ないよ、勉強だってあるのに2年で隊長やってるんだもの。休み時間にだってやることがいっぱいあるんだから」

まほ「……」

みほ「それに……エリカさんと会えたから。私はもう、寂しくないから」

まほ「……そうか」

204 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 19:56:33.03 ID:aIe+Rcdf0


エリカさんを待たせてるから。そう言ってみほは小走りで去って行った。

あの言葉に、あの笑顔に嘘は無いと思う。

生まれる前から一緒にいた姉妹なのだから、あの子の考えていることなんて言わなくてもわかる。

あの子の、言葉にできないSOSも。

私はひどい姉なのだろう。

大切な妹の、大切だと思っている妹が抱える苦しみをわかっていながら目を背け続けていたのだから。

もしかしたらみほが壊れるのは時間の問題だったのかもしれない。

私が西住流を、家を理由に逃げている間に取り返しのつかない事になっていたのかもしれない。

だけどそうはならなかった。

今、あの子は笑顔で学校に来ている。

戦車道に笑顔で励んでいる。

みほが言うようにそれは逸見の力によるところが大きいのだろう。

感謝してもしきれない。

……なのにどうしてなのだろうか。私の胸の内にかかった靄のような何かは未だ晴れていない。

それはたぶん、私がまだ逸見の事を知らないからだ。

みほの言葉を信じると同時に、私が良く知らない逸見をみほが信じているという事に納得できていないからだ。

ならば、するべきことは一つ。

205 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 19:59:18.43 ID:aIe+Rcdf0







まほ「すまないな。待ち合わせがあるのに急に呼び出して。」

エリカ「いえ、構いませんよ。どうせあの子が勝手に言ってることですから」

まほ「……」

エリカ「それで、聞きたいことってなんでしょうか?」

まほ「みほの事についてだ」

エリカ「……」



みほの名前を出した途端、逸見は顔をしかめる。

あまりにも露骨な態度に本当にみほはこいつと仲が良いのだろうかと心の中で首を捻ってしまう。




まほ「お前は随分みほと親しいみたいだな」

エリカ「そんな事ありませんよ」

まほ「みほはここに入学してから碌に学校での事を話さなかった。……だが、ある日を境に学校での事をよく話すようになったよ。笑顔でな」

エリカ「……」

まほ「そして、みほの話にはいつだってお前がでてくる」




今日エリカさんと

エリカさんが

エリカさんはね



みほの会話には枕詞のように逸見の名が出る。

そしてその時のみほは決まって笑顔だ。




206 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:00:18.40 ID:aIe+Rcdf0


エリカ「……あの子ったら」

まほ「それについては感謝してる。私もできるだけみほの傍にいてやりたいんだが……中々そうはいかなくてな」

エリカ「まるでお母さんですね」

まほ「……私はみほの姉だ。だから、お母様たちの代わりに私があの子を見てやらないといけないんだ」



その結果がうつ向いてばかりだったみほなのだから、口先だけの自分を笑ってしまう。



エリカ「……それだと隊長はどうなるんですか?」



自嘲している私をよそに逸見は心配そうな顔をして私に聞いてくる。



まほ「……?何故私の話が出る」




今はみほの話をしているというにいったいどうしたのだろう。




エリカ「……いえ、なんでもありません」


質問の意図が掴めずにいる私の顔を見て逸見はどこか悲しげな顔をする。

その表情にどこか引っかかるものを覚えるも、それを無視して私は逸見に問いかける。


207 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:01:41.88 ID:aIe+Rcdf0


まほ「逸見……お前はみほをどうしたいんだ」

エリカ「どうしたいって……別にどうしようとも思ってませんよ。私があの子と一緒にいるのはただ利害が一致したからです。

    あの子が持っていなくて、私が持ってるものを、その逆をお互いに教える。それだけです」

まほ「……友達じゃないのか?」

エリカ「違います」



目を見てきっぱりと言い切る。

なんというか、ここまではっきりと言われるとみほが可哀そうになってくる。

しかし、



まほ「……ん?」



言い切った逸見本人が口ごもるような、何かを言いたいような表情をしていることに気づく。

唇をモニュモニュと動かし、なんだかおもしろい表情をしているなぁと呑気に思っていると、

逸見はそっと、ため息のように言葉を吐き出した。

208 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:04:31.11 ID:aIe+Rcdf0

エリカ「……あの子は戦車道が嫌いって言ってました。あれだけ強いのに、恵まれた立場にいるのに。なのに戦車道への愛が無いあの子が私は嫌いでした」

まほ「……」



戦車道に一途な逸見の姿を思えば向上心のないみほの姿は苛立つものだったかもしれない。



エリカ「でも、この間みほは言いました『戦車道の楽しさを思い出せた』って」

まほ「……」

エリカ「みほは、あの子は強いです。ほかの何もかもがダメでも戦車道だけは強いって言いきれます。

    そんなあの子が戦車道を好きになれたのなら、その気持ちを思い出せたのなら……

    きっと、もっと強くなれる。そして私はそんなみほよりも強くなりたい」



逸見はその瞳に強い決意を秘めてそう言い切る。

たしかに逸見は強いだろう。だがそれでもまだみほの方が強い。

当たり前だ。才能が有り、それを育てられる環境にいたみほが、私たちが、弱い事を許されるわけがない。

逸見がそれを理解していないわけがない。

みほや私にとってほとんどの人間は『競争相手』ですらなかった。

だけど今目の前にいる一年生は、それでもみほの『競争相手』であろうとしている。

それがどうにも嬉しくて、私は思わず笑ってしまう。

その態度に不満を覚えたのか、逸見は唇を尖らせる。




エリカ「別に、私だって今すぐあの子より強くなる!だなんて思ってませんよ……」

まほ「ああいや、違うんだ。ただ……みほの事が嫌いと言う割には随分とあの子を評価してるんだなって」

エリカ「……あの子が嫌いだってのは本当ですよ?だからって過小評価はしません。むしろあの子には強くなってもらわなきゃ。私が強くなるために。

    あの子が私から何を学びたいのかなんて興味ありませんが、あの子の強さを間近で見られるのは私にとっても好都合です。……だから、」




逸見は私に向けて、だけどここにはいない誰かに



209 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:05:06.82 ID:aIe+Rcdf0




エリカ「今はもう少し、あの子の隣にいようかなって思います」



210 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:05:57.40 ID:aIe+Rcdf0




優しく微笑んだ



211 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:07:06.17 ID:aIe+Rcdf0

まほ「……そうか」

エリカ「これが私が考えている全てです。納得してもらえましたか?」

まほ「ああ、お前がみほに悪意を持って近づいたわけじゃないというのは良く分かった」

エリカ「別に好意を持ってるわけでもないですけどね」



その言葉を真に受けるには、私は逸見の事を知りすぎた。

どうやら逸見は自分の好意を表に出すのを嫌がるタチらしい。みほ限定で。



まほ「なんにしても、あの子に同級生の話し相手ができた事は素直に嬉しいよ。ただ……」

エリカ「ただ?」



一つだけ懸念が。



まほ「正直、心配のほうが大きい。幼いころから一緒に育ってきた妹が不良と交流しているというのはな」

エリカ「……え?」

まほ「どうした」

エリカ「不良?誰がですか?」


無言で指をさす。

エリカは誰かいるのかと後ろを向く。

その顔を前に向き直らせ、再度指を突きつける。



エリカ「………………違いますっ!?私はそんな、アナーキーな人間じゃありませんよっ!?」

まほ「入学早々、人事への反発。その後もはや恒例となってしまっている期末の決闘。加えてこの間の戦車無断使用の上、学外での戦闘行為からの損傷。……1年にしては随分と経歴を積んでると思うが?」

エリカ「うっ……」


普段の練習では規律や命令に厳格であろうとしている逸見だが、どうもその場の考えで動く癖があるようだ。

その結果が期待の悪童(ホープ)の異名なのだから、逸見が良く分からなくなる。


212 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:08:09.15 ID:aIe+Rcdf0

まほ「……まぁ、そのほとんどに妹が関わってる以上、私も無関係だとは言えないか」

エリカ「あの、誤解しないで欲しいんですが、私は伝統と格式ある黒森峰の戦車道に憧れて、ここに来たんであって……」

まほ「建前は立派だな。実力もあるのがタチが悪い」

エリカ「あのですね……」

まほ「だいたい『榴弾姉妹』って何なんだ。実の姉を差し置いて姉妹呼ばわりはちょっとムッとするぞ」

エリカ「ですからっ!?」

まほ「だが……現状、お前が一番みほと親しいのは事実だ」

エリカ「……私は別に」

まほ「……みほは、あの子は自分の意見を表に出すのが苦手だ。だから、逸見のような人間と一緒にいることでそれを克服できるのなら……もうしばらく様子を見させてもらう」

エリカ「……ご自由に。私は、あの子に良くなってほしいとかこれっぽちも思ってませんから」

まほ「構わないさ。たぶん、それがみほにとっては嬉しいのだろうから」



西住流の娘なのだから

強くあれ

勝て

導け




沢山の期待を背負わされてきたあの子にとって、自分に期待をかけてこない逸見の存在はきっと、とても大きく、それでいて心を軽くしてくれるものなのだろう。

そのぐらいは今の私でもわかる。

ただ、それでも逸見の口から聞きたいことがある。

213 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:11:11.96 ID:aIe+Rcdf0


まほ「逸見、最後に一つだけ教えてくれ。……お前からみて、みほはどんな人間だ?」

エリカ「……何を言っても怒りません?」

まほ「ああ、率直な意見を聞かせてくれ」

エリカ「…………本当に?」

まほ「嘘は言わない」



逸見は口を開いてまた閉じてを繰り返し、ようやく意を決したように口を開く。



エリカ「……臆病で傲慢で、他人の顔色を窺ってばかりで、そのくせ変なところで我を通してくる。一言でいうなら……めんどくさい子ですね」

まほ「……」

エリカ「……お、怒らないんですよね?」

まほ「ん?ああ、もちろんだ。しかし……逸見」

エリカ「はい」

まほ「……みほがお前に関わろうとする理由がなんとなくわかったよ」

エリカ「え?」



不相応な期待をかけてこず、並び立って競い合ってくれて、自分の欠点を真正面から言ってくれる。

逸見は認めようとはしないが、これを友と言わずになんと言うのか。

なのに逸見は友ではない、嫌いだという。

素直ではないその態度に私の中でちょっとだけ悪戯心が芽生えてしまったのを誰が非難できるだろうか。



まほ「なあ、後学のために聞いておきたいんだが、私の嫌いなところはどんな部分だ?」

エリカ「は?え?な、何言ってるんですかっ!?」

まほ「いや、思えば私は隊長らしくあろうとはしてきたが、私個人に対する客観的な意見は聞いたことが無かったからな。

   どうやら逸見は人の欠点を見つけるのが得意なようだから一つ聞いておこうかと」

エリカ「なんか言い方にトゲが……だ、大体隊長に嫌な所なんてありませんよっ!!完璧ですっ!!」

まほ「……本当に?」

エリカ「本当ですってばっ!!それが真実ですっ!!隊長は、隊長の思うようにしてくださいっ!!」

まほ「……そうか。呼び止めてすまなかったな」

エリカ「い、いえ」

まほ「それじゃあまた明日訓練で会おう」

214 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:13:27.44 ID:aIe+Rcdf0





エリカ「……何だったのかしら」

みほ「あ、エリカさんいたいた。もう、待たせすぎだよ」

エリカ「だから帰れって言ったじゃない……」

みほ「エリカさんと一緒に帰りたいんだよ。いいでしょ?」

エリカ「嫌」

みほ「……私帰りにコンビニ寄りたいなー!!エリカさんもどう?」

エリカ「いやだから嫌だって」

みほ「…………そうだね、暗くなる前にさっさと行こう」

エリカ「え、ちょっと何、引っ張らないで。ちょっみほ?みほってばっ!?」

みほ「大丈夫大丈夫コンビニにそんな長居しないから」

エリカ「そういう事じゃなくてっ!?」





遠くから聞こえる二人の会話

まだ出会って一年も経っていないというのにずっと前から一緒にいたように見えて、

背格好の似た二人が隣り合っているとまるで姉妹のようにも見えて、

私の胸にまた別の、どうしようもないざわつきが生まれる。





215 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:15:30.07 ID:aIe+Rcdf0






『でも、この間みほは言いました『戦車道の楽しさを思い出せた』って』






かつてはみほも戦車道を楽しんでいた。しかしそれはもう遠い過去の話だった。

西住流の娘であることを求められた日から、あの子にとって戦車道は重荷でしかなかった。

それは近くにいる私が一番わかっている。

だけど、そのみほが戦車道を楽しいと、そう言ったのであるのなら、

逸見は、私とみほが過ごした十数年を一年足らずで塗り替えてしまったというのか。

うつむいてばかりだったあの子を前に向かせ、

辛い顔ばかりだったあの子を笑顔にさせ、

あまつさえ戦車道の楽しさを思い出させた。



まほ「私は……」



みほがどんな子なのか理解している。

逸見が悪い奴ではないと知ることができた。

それでも、みほの固く閉ざしていた心を開けるのは私以外にいないと思ってた。

あの子がこの学校で私以外に心を開ける人間を見つけられるとは思わなかった。

一期一会だなんて言葉があるが、だとしたらあの子にとって逸見との出会いは間違いなく一生に一度の出会いだったのだろう。


216 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:16:43.75 ID:aIe+Rcdf0

まほ「……」





驚きと嫉妬が入り混じっていた胸の内はいつの間にか穏やかになっていた。

そうだ。私にとってみほが笑顔でいてくれるのならそれ以上はない。たとえそれが私以外の誰かによるものであっても。

あの子が元気に、笑っていてくれるのであれば。

逸見に笑いかけるみほを、それを素っ気なく、だけど隠しきれない優しさで受け止める逸見を、

私は温かい目で見守ろう。

それが、姉として多忙なお母様たちの代わりに私ができる最善だと思うから。
217 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:17:13.95 ID:aIe+Rcdf0




『……それだと隊長はどうなるんですか?』



218 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:17:52.88 ID:aIe+Rcdf0

……私は、一人で大丈夫だ。

西住流の娘として、どんなときでも強くあるために。

頼られる事はあっても、命令することがあっても、決して誰かに寄りかかったりしない。

いつだって私は私として『西住』まほとして。

私は、

私は、

私は、

私は、私は、私は、私は、私は――――――――






―――――なんで私の隣には、




219 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:18:28.33 ID:aIe+Rcdf0





まほ「誰も、いないの……?」




220 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:19:06.56 ID:aIe+Rcdf0





夕日が差し込む廊下に私は一人で、映し出される影は、うずくまっても一つのままだった




221 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:20:59.11 ID:aIe+Rcdf0







夕暮れは過ぎ、空には月がかかっている

私はスイーツの入った袋を手にコンビニから出ると、

後から出てきたエリカさんに向き直る。



みほ「エリカさん付き合ってくれてありがとう」

エリカ「あなたねぇ……暗くなる前に来たのにもう夜よ?なんでそんな長時間居座れるのよ」

みほ「だって、見たいものがいっぱいあるし……」



コンビニはいつだってキラキラしてる。

その季節に合わせた色とりどりの商品が所狭しと並んでいる風景が私は大好きで、

だから商品一つ一つを見て、買いたいものを吟味する。

出来ることなら毎日コンビニで買い物したいぐらいだけど、仕送りは限度があるし健康にも気を使わないといけないからたまにしか来れない。

だからこそ、来た時にはしっかり時間をかけて選びたいんだよ!

そう力説するも、



エリカ「ウィンドウショッピングは休日にしかるべき場所でやりなさい」



バッサリと切り捨てられてしまう。

むぅ、お姉ちゃんと同じことを言う……

今日だってホントはもっといたかったけどエリカさんに怒られしぶしぶ切り上げたのに……



エリカ「まったく、あなた私との今度の決闘忘れないでよね」

みほ「えー……あれまだやるのー?」

エリカ「当たり前でしょ!!私はもっともっと強くなりたいんだから!!」



期末の決闘。最初はお互いが納得するためにやったものだったが、いつの間にか恒例となってしまっていた。

とはいえ、エリカさんにとって私と戦える機会というのは貴重なもので、エリカさんが強くなるために必要な事なのだというのなら、

私もその挑戦を真っ向から受けようと思う。



みほ「……そっか。なら、まだまだ負けてられないな」

エリカ「あら?随分やる気ね」

みほ「だって、私はまだまだエリカさんから教わりたいことがいっぱいあるから。エリカさんに勝たれたら困るの」


222 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:22:39.19 ID:aIe+Rcdf0



『私らしさを見つける』だなんて大口を叩いておきながらいまだにそんなものは見つかってない。

私には確固たる自分なんかなくて、戦車道だって家が大きな流派の家元だから始めただけで、

だから、それを押し付けられた物だと疎み、不相応な期待と重圧にうつ向いてばかりだった。

だから、戦車道が嫌いだった。嫌いになってしまった。

……だけどそれはもう過去の話で、私は今、戦車道が好きだって胸を張って言える。

エリカさんにぶたれ、

エリカさんにこっぴどく叱られ、

エリカさんに手を取ってもらい、

お互いを知り合い、

一緒の戦車に乗って、

それで――――救われた

私にとってエリカさんとの出会いはかけがえのないものだった。

その幸運を私は噛みしめ、誓った約束を決して裏切らないように、

前を向いて、感謝を込めて、本気で向き合う。



みほ「だから、次も本気で勝ちに行くよ」

エリカ「……そ。楽しみにしてるわ」



未来がどうなるかなんてわからない。

私らしさが見つかるかなんてわからない。

でも、今私がエリカさんの隣にいることは間違いなく私の意志で選んだ事であって、

彼女が隣にいることを許してくれるのが嬉しくてたまらなくて。

思わずその手を握ってしまう。



エリカ「何よ」

みほ「私、エリカさんが言うようにドジだからさ。暗い中一人で歩いてたら転んじゃうかも。それに手袋してないから寒いでしょ?」


223 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:24:21.09 ID:aIe+Rcdf0



だから、離さないで。



エリカさんは握られた手をじっと見つめるも振りほどこうとせず、

「仕方ないわね」とため息交じりに呟くと、そのまま私の手を引いて歩きだす。

寒さで澄んだ空気がいつも以上に月明かりを煌めかせ、それを受けるエリカさんの姿もまた、輝きに満ち溢れて見える。

もう何度見惚れたかわからないその姿に、一日の終わりにその姿を見ることができる幸せに、出会いに、

私は神様の存在を信じたくなってしまう。



エリカ「なにニヤニヤしてるのよ」

みほ「ん?……神様っているのかなーって」

エリカ「いたとしても期待するようなもんじゃないわよ。欲しいものがあるのなら自分で手に入れなさい」

みほ「……そっか。……うん、そうだね」



誰かに期待するんじゃなく、自分で。

やっぱりエリカさんは素敵な人だ。



私が彼女と出会えた幸運は、選んだ運命は、神様にだって渡さない。

……なんて恥ずかしい事を思いながらエリカさんの隣をおいてかれないように歩く。

今は、これだけでいい。

伝えたいことも、やりたいこともたくさんあるけれど、

それでも今は、こうやって手を繋いで一緒に帰れるだけで私は満足だ。

エリカさんの冷たい手から伝わる温もりを、優しさを、私は忘れない。

それに救われたことを。

思えばエリカさんと出会ってからまだ一年もたっていない。

なのに、私は自分でも笑ってしまうほど変わった。

前進したか後退したかなんてわからない。

私らしさなんて何も見つかっていない。それでも。

うつむいてばかりだったかつての私とは変わった。

エリカさんには感謝してもしきれない。まぁ、感謝したところで気色悪いと一蹴されるのがオチだろうけど。

だから、


224 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:25:29.16 ID:aIe+Rcdf0




みほ「エリカさん」

エリカ「何よ」

みほ「これからもよろしくね」




今伝えられる精一杯の感謝を伝える。

エリカさんはそれに対していつもの様にあきれたような笑みを浮かべて、

それでも、ちゃんと私の目を見て、



エリカ「……はいはい、よろしくね」

みほ「……うんっ!」



その言葉に私は一層強く繋いだ手を握る。

離さないように、離されないように。

隣にいられるように。



225 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:25:56.42 ID:aIe+Rcdf0




月明かりが照らす帰り道に二人の影がある。



繋いだ手が二人の影を一つにしていた。



226 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:26:25.21 ID:aIe+Rcdf0





私は、一人じゃなかった




227 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/06/30(土) 20:27:07.04 ID:aIe+Rcdf0
ここまで。やっと中1編が終了です。
中2編はさっさと終わらせる予定なのであしからず。
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 20:50:21.68 ID:6XZmEp8wo
乙です!
眩しい灯りもいつかは途絶えるから、その一瞬の瞬きを楽しみにしてますよっと
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 21:28:36.48 ID:MRwy2Hbuo
おつー
黄金時代やねー
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 23:21:55.29 ID:5MB8nyF1O
こっから落とされると思うと正直素直に股が濡れます
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 23:29:42.25 ID:SDn05bZEo
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 23:53:50.81 ID:jj/xc9YL0
これ中1だったな!まほの救済と怒りも描かれそうね
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 00:46:50.07 ID:YoPMTyJz0
>>1ーシャ
滅びの美学とでもいうのか 落ちるの分かってる前日譚はなんとも言えない良さがあるよね
エリみほ分も補給できた
今週も戦えるぞ
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 00:49:14.94 ID:NZnLdvrs0


黒森峰ネームドキャラみんなして不器用すぎ問題
そら一度瓦解したら立て直し大変よな 小梅さんはよぅ
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 03:21:44.70 ID:SWJZGocjo
乙ー
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 06:15:56.54 ID:nQnYgk2z0
もしかしてお姉ちゃんが激おこなのって、単純にエリカが大好きだから的な?
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 08:06:09.88 ID:yow25qKM0
エリカを失った後、みほが彼女の想いに応えられず折れてしまったのがまほには悔しかったのだろうか・・・
ともあれあの怒りとも憎しみとも感じられる激情ぷりはタダ事じゃないなぁ・・・
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 10:53:12.36 ID:WIGV4SeTO
乙ー
来週が待ちきれないぜ
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 15:20:59.21 ID:8Pf8IZIj0

まほの心情を思うと切ないな
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 16:28:54.68 ID:SWWwXCDx0

誰がまほちゃんの隣にいたげてよぉ!
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 21:12:09.52 ID:iF/qWUc9o
挟め挟めエリカを挟めww
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 21:25:37.77 ID:pmCX3mH60
みほエリウム吸収
今週も戦える
しかしこの後の鬱展開を思うと心穏やかでいられないな
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 21:51:31.99 ID:EUJ3n1IH0
他の展開省いてエリみほ結ばれるとこだけやってくれてもいいんじゃよ(期待のまなざし
最終的にエロい関係になるとこまでは最低限やるべし
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 03:36:26.81 ID:gcKrDhsSO
>>243
気持ち悪いね^^
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/02(月) 13:24:08.29 ID:sUBHpSdqO
中2、中3、高1とまだまだみほエリが楽しめるな
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 13:24:52.93 ID:sUBHpSdqO
sageミスすまん
247 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 18:58:08.15 ID:2/8GF8DP0




〜中等部二年 4月〜



休み明けの新学期、学年が一つ上がった私は、クラス分けが張り出された掲示板の前ではしゃいでいた。

その理由はただ一つ。


みほ「エリカさん、よろしくねっ!!」

エリカ「テンション高いわね……」

みほ「だってエリカさんと同じクラスなんだものっ!!」


そう、一年の頃は別のクラスだったエリカさんと同じクラスになったからだ。

これでもう一緒に帰ろうと伝えたのに先に帰られる事はない。

私は飛び跳ねんばかりに喜びをあらわにする。



エリカ「小学生じゃないんだから……いい?私と同じクラスになったからには授業中に居眠りはもちろん、忘れ物だって許さないんだから。規則正しい生活としっかりした態度を徹底しなさい」

みほ「お母さん?」

エリカ「……」

みほ「痛い痛いっ!?手の甲つねらないでエリカさんっ!?」





小梅「……」






248 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 18:59:18.73 ID:2/8GF8DP0






みほ「待ってよエリカさん、一緒に帰ろう?」

エリカ「嫌」

みほ「連れないなぁ……」

エリカ「勘違いしないでよね。同じクラスになったからって友達になっただなんて思わないように」

みほ「……うん」

エリカ「……そんなしょげた顔するんじゃないわよ」

みほ「あ痛っ」



エリカさんの細い指から放たれるデコピンは無駄に高い威力を誇る。

赤くなった額をさすっている私を無視して、エリカさんは話を続ける。




エリカ「わざわざチームメイトの名前覚えたぐらいなんだから、新しいクラスの面子ぐらい覚えておきなさい。……一人くらい、あなたの友達になるようなのがいるかもよ」

みほ「……それは、エリ――――」



小梅「あのっ!!」



突然横からかけられる声。

私とエリカさんが声をしたほうを向くと、そこには一人の少女が立っていた。



エリカ「あなたは……赤星さん?何の用よ」



声の主である小柄な人影は、戦車道チームの仲間にして同じクラスメイトである赤星小梅さん。



小梅「すみません急に……私、その……みほさんの事で話があるんです」

みほ「私?」

小梅「そのっ……逸見さんっ!!もう、西住さんをいじめないでくださいっ!!」

みほ「………………………………え?」

エリカ「…………………………はぁ?」


249 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:04:04.96 ID:2/8GF8DP0



突然の事に私もエリカさんも反応が遅れてしまう。

そんな私たちをよそに、赤星さんは辛そうな面持ちでぎゅっと、手を胸の前で握る。



小梅「逸見さん、みほさんにいつも意地悪言ってて……あんなの、みほさんが可哀そう……」

エリカ「そんなに言ってるっけ?」

みほ「とりあえずこの間言われたのは『箸の使い方が下手くそ。サルでももうちょいきれいに食べるわ』、『人と話してる時に考え込んでほかの情報をシャットダウンするのはやめなさい。鶏の方がまだ話をきいてくれるわ』、

   あと訓練で私が戦車の操縦をミスして一輌だけバックしちゃった時に『ハァー!!さすが副隊長サマね!後ろに目がついてるみたいに綺麗な後退よ!』って言ってきたね」

エリカ「めっちゃ言ってるわね……って、それを言わせるあなたが悪いんでしょ」

みほ「まぁ、それはそうかもだけど」



私からすれば日常茶飯事なエリカさんの嫌味。

最初の頃ならともかく、今となっては挨拶みたいなものだと思っているんだけど。

どうやら赤星さんにとってはそう思えなかったらしい。



小梅「違いますよみほさん!それは逸見さんがただ意地悪なだけです!!この間の『ニゴバク』だってあなたが無理やり巻き込んだんでしょっ!?」

エリカ「その略称定着してるのね」

みほ「赤星さんそれは……………………うん、半分以上エリカさんが勝手にやった事だけど」

エリカ「ちょっ!?」



突然の裏切りにエリカさんは動揺する。

いやだって早朝に呼び出して、U号に乗れ、でなければ帰れ。みたいに言ったくせに後始末を何も考えてなかったのだから不満の一つもでよう。

私の言葉に赤星さんは確信を得たようにつぶやく。



小梅「やっぱり……逸見さん、みほさんは真面目で優しい人なんです。だから、これ以上いじめるのはやめてくださいっ」

エリカ「……なんで今言ってきたの?そう思うなら、いじめられているとわかっていたならもっと早く言ってくれば良かったのに」


250 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:07:40.26 ID:2/8GF8DP0



赤星さんの言葉にエリカさんが返す。

その表情は、声色は、かつて私に対して向けたものとよく似ていて、少し背筋が寒くなる。

だけど赤星さんはその言葉に対して、自分を恥じるようにうつ向いた。



小梅「……逸見さんの言う通りです。私は、みほさんがいじめられてるのに気づいてた。でも、見て見ぬふりをしてた」



罪悪感と後悔が入り混じった声で話す赤星さんの姿に、なんだかこちらまで申し訳なくなってくる。

別にいじめられてるわけじゃないんだけどな……



エリカ「そう。なのに今さら良い子面?ずいぶん太い神経ね。私が一番嫌いなタイプよ」

みほ「エリカさんっ!」



そんな赤星さんの態度などどこ吹く風と言わんばかりに追い打ちをかけるエリカさんを私はいさめる。

実態はどうであれ、赤星さんは私を心配してくれているのだ。それを悪く言うのはやめて欲しい。

エリカさんの指摘を受けた赤星さんは苦しそうに唇を噛みしめる。



小梅「……正直、最初の頃のみほさんは私たちの事なんて気にも留めてないと思ってました」

みほ「え……」

小梅「名前を憶えてくれてても、ミスを優しく諭してくれても……どこか、上の空みたいな……私たちの事なんて気にも留めてないんじゃって……」

エリカ「……よく見てるじゃない」

みほ「うぅ……」



エリカさんの耳打ちに、私は頭を抱えてうずくまりたくなってしまう。

だって赤星さんの言葉は紛れもない事実で、エリカさんが私に対して激怒した理由の一つなのだから。

そんな私に目もくれず赤星さんは前を向くと、強い覚悟を込めた瞳で私たちを見つめてきた。



小梅「だけど、それは私が弱いから、練習が足りないからだって。だから追いつけるように、みほさんに迷惑をかけないように頑張ってきました」

エリカ「……」

小梅「逸見さん、あなたがみほさんを嫌いなのはわかります。だけど……私にとってみほさんは憧れなんです。

   たとえ偽善者と言われようとも今動かなかったら、私はもう一生自分を誇れないっ!」
251 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:08:09.02 ID:2/8GF8DP0



赤星さんの言葉にエリカさんが返す。

その表情は、声色は、かつて私に対して向けたものとよく似ていて、少し背筋が寒くなる。

だけど赤星さんはその言葉に対して、自分を恥じるようにうつ向いた。



小梅「……逸見さんの言う通りです。私は、みほさんがいじめられてるのに気づいてた。でも、見て見ぬふりをしてた」



罪悪感と後悔が入り混じった声で話す赤星さんの姿に、なんだかこちらまで申し訳なくなってくる。

別にいじめられてるわけじゃないんだけどな……



エリカ「そう。なのに今さら良い子面?ずいぶん太い神経ね。私が一番嫌いなタイプよ」

みほ「エリカさんっ!」



そんな赤星さんの態度などどこ吹く風と言わんばかりに追い打ちをかけるエリカさんを私はいさめる。

実態はどうであれ、赤星さんは私を心配してくれているのだ。それを悪く言うのはやめて欲しい。

エリカさんの指摘を受けた赤星さんは苦しそうに唇を噛みしめる。



小梅「……正直、最初の頃のみほさんは私たちの事なんて気にも留めてないと思ってました」

みほ「え……」

小梅「名前を憶えてくれてても、ミスを優しく諭してくれても……どこか、上の空みたいな……私たちの事なんて気にも留めてないんじゃって……」

エリカ「……よく見てるじゃない」

みほ「うぅ……」



エリカさんの耳打ちに、私は頭を抱えてうずくまりたくなってしまう。

だって赤星さんの言葉は紛れもない事実で、エリカさんが私に対して激怒した理由の一つなのだから。

そんな私に目もくれず赤星さんは前を向くと、強い覚悟を込めた瞳で私たちを見つめてきた。



小梅「だけど、それは私が弱いから、練習が足りないからだって。だから追いつけるように、みほさんに迷惑をかけないように頑張ってきました」

エリカ「……」

小梅「逸見さん、あなたがみほさんを嫌いなのはわかります。だけど……私にとってみほさんは憧れなんです。

   たとえ偽善者と言われようとも今動かなかったら、私はもう一生自分を誇れないっ!」
252 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:10:04.47 ID:2/8GF8DP0

力強い決意の言葉。

さっきまでの弱々しい姿が嘘のように確かな意志と、一歩も退かない覚悟を感じる。

……ここで止めておかないともっと面倒な事になる。

確信に近い予感を抱いた私は、赤星さんの誤解を解こうと声を上げる。



みほ「あ、あの赤星さんっ!?あなたは誤か――――」

エリカ「あーら?まーた余計なことを話そうとしてるの?そんな悪い口はこうしてやるわっ!!」

みほ「いははっ!?いはいよえいあしゃんっ!?」



突如エリカさんに両頬を引っ張られ、私の声は遮られる。

それを見た赤星さんはさらに瞳の炎を燃え上がらせる。



小梅「っ……やめてくださいっ!!」

エリカ「赤星さん。私がこの子をどうしようと私の勝手よ」

小梅「そんなことっ……」

エリカ「それでもどうにかしたいのなら、私と勝負しなさい」

小梅「え……?」



突然の提案。

それは赤星さんはもちろん私にとってもいきなりの事であった。

ていうかいつまで私のほっぺ引っ張ってるの……

そう思っていると、エリカさんは私の頬をパッと放し赤星さんに向き直る。



エリカ「あなたが勝ったらこの子に手を出すのはやめてあげるわ」

みほ「えー……?」

エリカ「そこは喜ぶポーズぐらいしなさいよ……」



露骨に不満げな私を見て、エリカさんはまた耳打ちをしてくる。

いやだって、別に私は不満も何もないんだもの。



小梅「……逸見さんが勝った場合は」

エリカ「そうね……その時考えさせてもらうわ」

小梅「それは……」

エリカ「白地小切手って事よ。私のケンカ、買う気ある?」

小梅「……それで構いません」

エリカ「……そう。いい覚悟してるじゃない。そういうの好きよ」



エリカさんは楽しそうに笑う。

その笑顔に何かがあると感じたのか、赤星さんは警戒するように後ずさる。

だけど、赤星さんは先の言葉を撤回しない。強い決意をもって決闘すると決めたのだろう。

……私が賞品なのに私の意志が微塵も介入していないのはどうかと思うな。

253 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:11:09.57 ID:2/8GF8DP0





「えー……副隊長と逸見進級早々また決闘?」

「いや、今回は副隊長じゃなくて、赤星らしいよ?ほら、副隊長審判やってるし」

「うっそ、あの子も大概おとなしい子だと思ってたんだけど」

「逸見は好き嫌いはっきり分かれる性格だからねー恨みの一つや二つ買ってたんじゃない?」

「悪い奴じゃないんだけどなぁ」

「そんなの知ってるよ。なんにしても、決闘で白黒つけるつもりなら見守るしかないでしょ」

「うーん……うちって最近副隊長と逸見の二人に引っ掻き回されてない?」

「骨のある子が2人もいるって思いなさい」

「ものは言いようだな……」


254 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:12:00.33 ID:2/8GF8DP0






小梅(一対一の戦い。この前のみほさんとの試合の事を考えれば、絡め手を使わず真正面からくるはず……なら、こちらは動かず焦らず撃ち抜けばいい……)

エリカ「向こうも準備できたっぽいわね。それじゃあみほ、お願い」

みほ『はい。それじゃあ、始めっ!!』





エリカ「っ!!」

小梅「やっぱり真正面からっ……動かないで、落ち着いて……」


ダァンッ!


エリカ「……」

小梅「っ……怯まない、でもっ!!」


ダァンッ!! ガァンッ!!



小梅「当たったっ!!……っ!?まだ生きてっ……この距離はまずいっ!!下がってっ!!?」





エリカ「赤星さん。あなた思ってたよりやるわね。でも……私のほうが上ねっ!!」




ダァンッ!! シュポッ



255 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:12:42.21 ID:2/8GF8DP0




「お、終わった。早かったなー」

「いやいや、逸見の真っ向勝負を赤星が受けたからでしょ。障害物を盾に持久戦を挑めば……」

「最後に下がろうとして隙を突かれたね」

「うーん、気圧されたって感じかな」

「そうね」

「副隊長に敗けてばっかだけど、やっぱり逸見強いなぁ」

「将来が楽しみね」

「その言い方、年寄臭い」

「うっさい」


256 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:14:34.91 ID:2/8GF8DP0







小梅「っ……私は……」


試合が終わり、転がり落ちるように戦車から出てきた赤星さんに慌てて駆け寄る。


みほ「赤星さん大丈夫!?」

小梅「みほさん……私、ごめんなさい……」

みほ「いや、あのね……?」



己の無力さに打ちひしがれるような瞳で私に謝ってくる赤星さんにこっちまで申し訳ない気持ちになってくる。



エリカ「あら、いいわねその表情。私が勝者だってことを実感できるわ」



そんな赤星さんとは対照的に上機嫌なエリカさんの声。

赤星さんは悔しそうに唇を噛みしめ、だけど何も言い返すことができずただ、体を震わせるだけだった。

流石にこれ以上は見てられない。

私はまだまだ何かを言おうとするエリカさんを手で制し、しゃがみ込む赤星さんに目線を合わせて語り掛ける。



みほ「……あのね、赤星さん。私、エリカさんにいじめられてなんかいないよ?」

小梅「え……?」

みほ「確かにエリカさんは意地悪だし、嫌味っぽいし、強引で後先考えてない時があって、そのせいで私まで怒られて何でこんなことに……ってなったことはあるけどさ」

エリカ「なんか色々こもってない?」



エリカさんの言葉は無視する。


257 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:16:32.47 ID:2/8GF8DP0

みほ「でも、悪い人じゃないよ。優しくて、まっすぐで、何より一緒にいると楽しいの」

エリカ「……」



意地悪なのも、嫌味っぽいのも、強引で後先考えないのも本当だけど、

それ以上に真面目で、優しくて、強い人だって事を私は知ってる。

私がエリカさんと一緒にいるのは誰かに強制されたとかじゃなくて、間違いなく自分で選んだ事なのだから。



小梅「そ、それじゃあ私勘違いで……」

みほ「……でもね、嬉しかったよ。赤星さんが私のために動いてくれて」

小梅「みほさん……」



そう、勘違いとは言え赤星さんが私のために動いてくれたのは紛れもない事実だ。

以前の私は赤星さんやエリカさんの言う通り優しくしているだけで、目の前の人の事なんて知ろうともしなかった。

自分の境遇を悲観するばかりで他人に対して本気で向き合おうとしていなかった。

でも、赤星さんはそんな不誠実な私を慮り、助けようと奔走してくれた。

その結果は赤星さんが思ったものと違ったかもしれないが、かつてエリカさんがしてくれたのと同じことだった。



みほ「だからあんまり落ち込まないで。元をたどればエリカさんが悪いんだし」

エリカ「あなたねぇ……まぁいいわ。赤星さん」

みほ「エリカさん?」


今度はエリカさんが私を押しのけて赤星さんの前に出る。

その表情は先ほどまでのあざ笑うような表情とは打って変わって真面目なものになっていた。



エリカ「約束、守ってもらいましょうか」

みほ「約束って……」

小梅「……なんでもいう事を聞く」

エリカ「覚えてくれてて何より。二度手間は嫌いだもの」

みほ「エリカさんやめようよ。そういうの良くないって」

エリカ「あなたは黙ってなさい。……赤星さん」

小梅「……」



私の抗議はピシャリと制され、沙汰を待つ罪人の様になっている赤星さんに向かってエリカさんは告げた。


258 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:18:20.05 ID:2/8GF8DP0



エリカ「あなた、この子の友達になりなさい」



小梅「え?」

みほ「え?」



先ほどまで満ちていた場の空気とはまるで違うエリカさんの言葉に私と赤星さんはあっけにとられてしまう。

そんな私たちをよそにエリカさんは人差し指を立てた手をリズムよく振りながら得意げに話す。



エリカ「前から思ってたのよ。みほ、あなたはちゃんと友達を作るべきだって」

みほ「えっと……どういう事?」

エリカ「あなた言ったじゃない、自分が何なのか知りたいって。だってのにあなたこの一年で私と隊長以外にまともに関わった人間いる?戦車道以外で」

みほ「えっと……こ、コンビニの店員さんかな?顔覚えられてるし」

エリカ「そりゃ来るたびに30分は最低でも居座る奴の顔は覚えるわよ……」

みほ「うぅ……」



この前行った時は1時間47分56秒(エリカさん計測)居座ってしまったせいでエリカさんに激怒され、店員さんに二人で謝る事態になってしまった。

仕方なかったんだよ……色とりどりの商品が私の心を刺激してやまなくて、全部吟味しない事には買うものなんて選べなかったんだよ……



エリカ「みほ、色んな人からの客観的な意見が今のあなたには必要なのよ」

みほ「それは……うん。そうかもしれないけど、いきなり友達になれってのは……」

エリカ「あら?赤星さんとは仲良くなれないっての?」

みほ「その言い方はズルいよ……」

エリカ「なら決まりね。一応聞いておくけど赤星さん、この子と友達になってくれる?」


その言葉にあっけにとられたままだった赤星さんは我に返り、今度はその表情がぱっと明るくなる。



小梅「は、はいっ!私でよければ是非っ!」

みほ「よ、よろしくお願いします……」

エリカ「はい!お友達条約締結!!」



私と赤星さんの手を掴み固く握手させると、エリカさんは満足そうに腕を組んで頷く。

そんなエリカさんをみた赤星さんは握手をしたままそっと私に耳打ちをする。



小梅「……逸見さんってこんな人だったんですね」

みほ「あはは……まぁ、キツイ時はあるけど、意外と愉快な人でもあるよ?」



真面目だけどいきなり突飛な行動をするエリカさんといると飽きないというのは紛れもない事実だ。

……それに巻き込まれた結果面倒なことになったのも事実だけど。


259 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:19:41.54 ID:2/8GF8DP0



小梅「……あの、みほさんと逸見さんってお友達なんですか?」



小さく手を挙げた赤星さんがエリカさんに質問する。

その質問にエリカさんは露骨に顔をしかめて、



エリカ「はぁ?何言ってるのよ。そんなわけないでしょ」

小梅「違うんですか?」

エリカ「全然違うわ。私はね、この子の事嫌いだもの」

小梅「えー……」



納得できないという表情で私とエリカさんを交互に見る赤星さん。

まぁ、いじめられてるわけじゃないのであれば、普段から一緒にいる私たちを友達だと思うのは当然だと思う。

……エリカさんもそう思ってくれるといいのになぁ



小梅「じゃあみほさんは?」

みほ「私?私はエリカさんの友達だよ」

小梅「えぇ……」



ますます困惑する赤星さん。

エリカさんがどう思っていようとそれはそれとして、私はエリカさんを友達だと思ってる。

その気持ちだけは誰にも否定させない。



エリカ「この子が勝手に言ってるだけ。私は友達じゃないわ」

みほ「あはは……そういう事だから」

小梅「私、なんか疲れてきた……」


色々あって心身ともに疲労している赤星さんはぐったりとうなだれる。

そんな赤星さんを無視して、エリカさんはくるりと向きを変えると更衣室へと向かおうとする。



エリカ「それじゃあ私は着替えて帰るわね。あとは若い二人で仲良くしなさい」



ひらひらと手を振りながらさっさと帰ろうとするエリカさんの歩みは後ろから伸びてきた二つの手によって止められる。



260 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:20:26.16 ID:2/8GF8DP0


エリカ「……何?」

小梅「逸見さん、それはないんじゃないですか?」

みほ「そうだよ。言い出しっぺはエリカさんなんだから」



元をたどれば誤解を招いたのも、それをここまで引きずる事になったのもエリカさんが原因なのだから。

散々振り回した挙句に目的果たしたので帰ります。はないでしょう。

私と赤星さんの気迫にたじろいだのか、エリカさんは何も言い返さず、私と赤星さんはあれやこれやと話し出す。



小梅「とりあえず、クラスメイト同士、交流を深めましょう?」

みほ「お腹減ったしご飯でも」

小梅「いいですね」

エリカ「……あなた達、もう仲良くなってるじゃない」


ため息交じりのエリカさんの言葉に私と赤星さんは思わず吹き出してしまう。

とりあえず、クラスメイト3人の交流の場は今回の騒動の原因にして、最大の立役者であるエリカさんの希望を聞こうと思う。

まぁ、エリカさんが食べたいものなんて聞くまでもないと思うけど。



みほ「エリカさん、ほら早く着替えて行こう?」

小梅「逸見さん、待たせないでください」

エリカ「ったく……めんどくさいのがまた増えたわね」

261 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/07(土) 19:21:18.38 ID:2/8GF8DP0
ここまで。また来週。
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 19:33:05.02 ID:IVhzMSDz0

遂に小梅きた!
263 : ◆eltIyP8eDQ [sage saga]:2018/07/07(土) 19:56:29.63 ID:2/8GF8DP0
>>248 小梅「そのっ……逸見さんっ!!もう、西住さんをいじめないでくださいっ!!」
                   ↓
    小梅「そのっ……逸見さんっ!!もう、みほさんをいじめないでくださいっ!!」

上記の通り訂正いたします。
264 : ◆eltIyP8eDQ [sage saga]:2018/07/07(土) 20:03:53.57 ID:2/8GF8DP0
>>250>>251がかぶってしまいました。>>251は無視で。
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 20:18:08.38 ID:1KRnX8fM0
最近回想が続くから、エリみほが熱い友情を築き上げ、様々な困難を乗り越えて行く黒森峰黄金期ルート、素晴らしいなあって思ってたけど、ふと現在パートを思い出して鬱になる…
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 22:53:22.38 ID:hWHjNx/O0
瓦解させるために積み上げる楽しさってね……
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 23:48:48.67 ID:l8liHBjDO
乙 小梅まで掘り下げるのか、素晴らしいな
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 23:51:26.33 ID:/kBzWLADO
仲良くなればなるほどそっから墜ちるわけだからね、1、何というサディストッ、恐ろしい子!!
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 12:37:17.00 ID:smhdNLXqo
ここ意外でも話はあるの?
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 12:53:22.79 ID:muXjVJCnO
ここの話は前スレの過去編だよ
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 13:40:03.18 ID:smhdNLXqo
>>270
前スレ教えて
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 14:03:10.76 ID:V75cMH0U0
さすがに書いてあるんだから自分で見ろよ
273 : ◆eltIyP8eDQ [sage saga]:2018/07/08(日) 14:17:26.38 ID:ok28dUAr0
>>271

【ガルパン】エリカ「私は、あなたを救えなかったから」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1514554129/

↑前スレです。よければどうぞ。
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 14:44:55.51 ID:Zjv5eAkzO
これから前スレを見るなら覚悟してからみーや
このスレの気分でおったら血反吐をはかされるで
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 19:31:08.15 ID:o7rO+66Ho
ママ逸見のかほり……

先輩たちもいい奴多いなww
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagd]:2018/07/09(月) 11:57:31.06 ID:8HCX3pj1O
E■□□□□□□F

E■■■■■■■F
ミホエリウム充填完了!!!
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 19:54:56.48 ID:L/u7CChQo
>>273
見てきた
引き込まれたわ
更新楽しみにしてる
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 00:03:21.94 ID:O/Mf/YV80
もっと濃厚なエリみほ求ム
双頭ディルド使うくらいまで
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 02:25:40.07 ID:5/YESBnwo
キモ
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 20:40:36.52 ID:KUQN/MgSO
流石に278と243は同一人物やろ…
気持ち悪すぎる。
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 20:41:04.29 ID:KUQN/MgSO
流石に278と243は同一人物やろ…
気持ち悪すぎる。
282 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:15:49.83 ID:ZxPhTSO60



大好きな戦車道を、憧れの場所で学ぼうと思い黒森峰に入った。

ここでなら強くなれると、自分の戦車道ができると思って。
 
そして、身の程を教えられた。

自分より強い人なんていくらでもいて、努力で巻き返そうとしても強い人たちは私なんかよりずっと努力を重ねていた。

才能も、努力でも敵わないのなら、私は何のためにここに来たのだろうか。

自分がすべきことも、できることも、やりたかったこともわからなくなり、私はいつの間にか戦車道を楽しめなくなっていた。

そんな人間は他にもいて、私はいつの間にかその人たちと同じように日々が過ぎ去るのを祈るばかりになった。

そんな私たちを頑張っている人たちは見下す。口には出さずともその視線が、表情が、私たちはダメだと伝えてくる。

何も思わなかった。だって、何よりも自分が一番良く分かっているから。

自分が一番、自分を見下しているから。

だけど、無為な日々を過ごす中で、それでも優しくしてくれる人がいた。




『頑張ることは無駄なんかじゃない。最初から強い人なんて誰もいないんだから』




その言葉に勇気づけられ、私は再び頑張ろうって思えた。

その言葉に強い感銘を受けたとか、そんなんじゃない。

ただ、ダメな自分を見捨てていない人がいてくれるのが嬉しかったから。

たとえ今はダメでも頑張って努力して、少しで前に進もうとした。

出遅れた私に実力の差は大きくのしかかってきた。

それでも、毎日少しずつ、できる事からやっていった。もう立ち止まらないために。

あの人に少しで近づくために。

そしてある日気づいてしまった、この人は私の事を見てなんかいない。いや、自分の事すらどうでもいいと言わんばかりにその瞳に何も映してないのだと。

あんなにも強く、優しい人が何故あんな瞳をしているのか私にはわからなかった。

だとしても、あの日かけてくれた言葉に私は勇気づけられた。たとえその言葉に何の意味も込められていなくても、去って行く人たちがいる中でそれでも踏ん張ろうと思えたのはあの人の言葉があったからだ。

私は足掻き続けた。私が一歩進むごとにあの人の正しさを証明できると信じたかったから。

そうすれば、いつかあの人が困難に遭った時に手を差し伸べられると思ったから。



283 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:17:58.48 ID:ZxPhTSO60







小梅「……その結果がこれですか」

みほ「エリカさんまたハンバーグ?」

エリカ「はぁー?あなたの目は節穴?よく見なさい」

みほ「え?……何か違うの?」

エリカ「忘れたの?学食に追加された新メニュー。美容と健康に気を使いつつも、

    食べたいものはガッツリ食べたいと思う少女たちの悩みに答えた期待の一品。

   ―――――豆腐ハンバーグよ」

みほ「やっぱりハンバーグじゃん……」



騒がしさが最高潮な昼食時の学食。

その端にあるテーブル席に私はいた。

正確には私と、みほさんと、逸見さんが。

私の隣に座っているみほさんは、苦笑しながら向かいの逸見さんと話している。

本日のお題目は逸見さんのランチについて。
284 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:21:08.87 ID:ZxPhTSO60

エリカ「何言ってるの豆腐ハンバーグよ?いわば焼き豆腐よ」

みほ「豆腐ハンバーグってひき肉使ってるんじゃ……」

エリカ「四捨五入すれば0になる割合よ」

みほ「何言ってるの……」

小梅「馬鹿ですか」



思わず罵倒してしまうも、食堂の喧騒にかき消されたのか逸見さんは気づいてないようだ。

……みほさんの話からちょくちょく聞いてはいたけど、逸見さんって本当にハンバーグが好きなんですね。

本人は好きじゃないって否定していたが、楽し気に本日のランチについて講釈を垂れている姿を見るとまさしくどの口が、と思ってしまう。

なので私は逸見さんの屁理屈がこれ以上白熱する前に「冷めないうちに食べましょう」と促す。

逸見さんは「そうね」と落ち着きを取り戻し、切り分けた豆腐ハンバーグを一口ほおばる。



エリカ「……」



しかし、先ほどまであんなにウキウキだった逸見さんは途端に無表情になる。


285 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:22:23.75 ID:ZxPhTSO60

みほ「エリカさん?」

エリカ「……やっぱりハンバーグは100%肉じゃないとだめね」



お口に合わなかったようで……



みほ「さっきの演説はなんだったの……」

エリカ「そもそもハンバーグに健康面を求めるのが間違いなのよ。こんなの食べて『ヘルシーなのにしっかりお肉の味がするー!』

    とか言ってる輩は一生大豆でもむさぼってればいいのよ」

みほ「今さら過ぎるし暴論すぎる……」



馬鹿ですか。

二度目の暴言はさすがに胸の内に収める。



エリカ「赤星さん、そのから揚げ二個とハンバーグ4分の一を交換しない?」

小梅「精々美しく健康になってください」


286 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:24:19.57 ID:ZxPhTSO60

エリカさんの提案を固辞し、私はから揚げを食べながら黙々と考える。

みほさんたちと共に行動するようになって早一か月。

現状、私と逸見さんの関係は友達の友達といったとこか。

まぁ逸見さんはみほさんの友達じゃないとの事なので友達の知り合いかもしれない。

とにかく、私は逸見さんと友達ではない。

一緒に行動するようになったとはいえ、実のところ私はまだ逸見さんに対して一線を引いている。

今さらみほさんをいじめてるだなんて勘違いをしてるわけじゃない。

ただ、なんというか私は逸見さんと反りが合わないと思う。

悪口軽口は当たり前、みほさんがあんなにも逸見さんと友達になりたがっているのに、

知ったこっちゃないと素っ気ない態度をとる姿に良い印象を覚えろと言うほうが無理がある。

他でもないみほさん本人が特に気にしてないのだとしてもそれはそれ。

私が逸見さんに対してあまり踏み込まないのはそう言った事情があっての事だ。

……とはいえ、これ以上はお互いのためにならない。

みほさんが逸見さんを信頼している以上、後から来た私があれこれ言ったところでみほさんを惑わせるだけだし、

そのせいで私と逸見さんが険悪になってしまったらみほさんは自分を責めてしまうかもしれない。

私の取れる選択肢は2つ。このまま何食わぬ顔でみほさんたちといるか、逸見さんを置かず、あくまでみほさんとのみ友人関係を続けるか。

決めあぐねているのは私自身の意志の弱さ故だ。

それでも、このままなぁなぁにしていてはいつか禍根を産むことになってしまうかもしれない。

それならば




私は自分の選択肢を決めるため行動することにした。




エリカ「あ、赤星さん私の食器もついでに片づけてくれる?」

小梅「美容のために動きましょう」



とりあえず逸見さんへのマイナス評価が一つ。


287 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:27:06.92 ID:ZxPhTSO60
―逸見さんの事をどう思いますか?



『うーん……気難しい奴?悪い奴じゃないってのはわかるし、真面目で努力しているのは伝わるけど、

 反面それを人にまで求めるのは悪い癖だと思うなぁ。好き嫌いがはっきり分かれる感じ。私は好きだけど』

                                       (3年 匿名希望)



『逸見先輩ですか?私もまだ入学したばかりだから良く分からないですけど……とりあえず綺麗な人ですよね。

 美しい銀髪に碧眼、透き通るような白い肌。遠くからでも見惚れちゃいます。性格だって厳しいって言う子が多いけど、

 それは先輩が何よりも戦車道に真面目だからだし、それに戦車道の授業の時の先輩ってとってもカッコいいんです。

 きりっとした表情と、鋭い言葉にドキドキしちゃう時があって……ほんとに、黒森峰に来て良かったなーって

 あ、先輩って確か逸見先輩と同じクラスでしたよね?その、今度写真撮ってきてもらえませんか?

 逸見先輩がクラスでどんな風なのか知りたいんですっ!!』

                                       (1年 匿名希望)




『……嫌いよ。大嫌い。あいつ、私の事を負け犬って……違う、私は負け犬なんかじゃない。

 負けたくないから、強くなりたいからここに来たの。言われっぱなしなんて我慢できない。

 ……もういい?練習したいんだけど』
                                  
                                      (2年 匿名希望)


『エリカさん?エリカさんは良い人だよ!!そりゃあ厳しいし、嫌味っぽいけどその裏にはいつだってエリカさんの優しさが隠れてて、
 
 叱ってくれるのだって私の事を思ってくれてるからなんだって。それにね、一緒に帰ろって誘うと毎回嫌だって言うんだけど、私が隣を歩いても何も言わないし、

 帰るのが遅くなった日なんか月明かりに照らされておとぎ話に出てくるお姫様みたいに輝くエリカさんを見られて……もう、いっぱい話したいことがあったのに何も言えなくなっちゃって……

 こないだだって――――(その後30分ほど続いたためカット)』


                                     (2年 匿名希望副隊長)




『逸見か?悪い子ではないと思う。ちょっと直情的なところはあるが実力もあって努力も欠かしていない。学業だっておろそかにしていない。

 学生の理想のような人間だ。……まぁ、それはあくまで一面であって私はまだ逸見の事をよく知ってるとは言えないが。

 ただ、妹と仲良くしてくれているのは素直に嬉しい。不良とはいえ私以外にあの子の隣に立ってくれたのは逸見だけだったからな。

 それにちょっと話した感じだと案外愉快な性格をしているな。からかうとなかなか面白い反応を返してくれる。

 そしてそれもまた一面に過ぎないのかもな……私も、もっと逸見の事を知っておくべきか』

        
                                      (3年 匿名希望隊長)





288 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:33:28.11 ID:ZxPhTSO60




小梅「うーん……」



自室の机に広げられた様々な意見が書かれたレポート用紙。

私はそれに向かって頭を悩ませていた。

自身の意志だけで決められないのであれば他人の意見も求める。

そういったわけで私は逸見さんには内緒でその印象を聞いて回ってみた。

その結果わかったのが、逸見さんは上級生からの覚えが良く、加えて二年生以下の隊員の間ではみほさんと二分するほどの人気の持ち主だという事だ。

みほさんの人気は、高い実力とそれの驕らぬ優しさにあふれた言動、対して逸見さんはみほさんには一歩劣るも同級生、上級生を相手にしても一歩も退かない実力の持ち主。

その厳しく、時には苛烈とも言える言動に反発を覚える者も多いが、逆にその力強い姿に惹かれるものも多くいる。

特に逸見さんの容姿はまだ入学したばかりの一年の間ですでにファンクラブ(非公認)なるものができるぐらいには見惚れる者が多いという事だ。

まぁ、私も逸見さんの見た目が良い事については否定の余地はないと思う。まさしく日本人離れした姿はいやでも人の目を惹くだろう。

ちなみに関係ない事だが、逸見さんファンクラブの会員第一号に良く知ってる副隊長の名前があった気がするが気のせいとしておこう。



小梅「なんていうか思ったより好感持たれてるな」



そう、結果だけを見れば逸見さんは隊内でもかなり人気があるのだ。

もちろん全員に聞いたわけではないので多少の偏りはあるだろうが。



小梅「……やっぱり逸見さんは悪い人じゃないのかな」



わざわざ足で稼いだ逸見さんへの個々人が持つイメージ。

その中にはもちろん、逸見さんへの否定、嫌悪感を表す意見もある。


生意気

融通が利かない

副隊長に敗けたくせに偉そう


他にも色々あるが、大体一理あるとは思う。

プライドが高いのも、融通が利かないのも、みほさんに敗けたのも事実だ。


289 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:34:51.89 ID:ZxPhTSO60

小梅「でも、そこが好きって人もいるんだよなぁ……」



生意気なのはやる気があるから

融通が利かないのは真面目だから

負けたのにへこたれないのは根性があるから

ものは言い様と言えばそれまでだが、誰かにとっての短所は他の誰かにとっての長所という事なのだろう。

でもそれを言い出したらますます判断材料が無くなってしまう。



小梅「ていうか私、何で逸見さんの事でこんなに頭悩ませてるんだろ……」



嫌いなら離れればいい。誰とでも仲良くだなんてのは理想としては結構だろうが、

相手が同じ人間である以上どうしても相性というものは存在してしまうのだ。

私が毎日のように逸見さんと顔を合わせているのは友達であるみほさんが逸見さんにベッタリだからだ。

だからと言ってそれに私まで付き合う必要はない。

みほさんと過ごす時間が減るのは残念だが、別に休日とかにいくらでもみほさんと友達らしい事をすることはできる。

なのに私は決断できない。優柔不断な我が身を呪うばかりだ。

結局私は散々頭を悩ませた挙句



小梅「とりあえず……今日はもう寝よう」



明日の自分に期待することにした。


290 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:37:27.19 ID:ZxPhTSO60





翌日の放課後、私は夕日の差し込む廊下を自分の教室に向かって歩いていた。

本来ならもう帰っている頃だが、先生に今日の授業について質問していたためこんな時間になってしまった。



小梅「早く帰ろっと……」



外から聞こえる運動部の掛け声が誰もいない廊下の寂しさを余計に引き立て、私は思わず早歩きになってしまう。

ようやく教室につきその扉に手をかけようとすると中から話声が聞こえてきた。




エリカ「遅いわねぇ」

みほ「赤星さん真面目だから。きっと沢山聞きたいことがあるんだよ」

エリカ「私はちゃんと授業内で理解してるわよ。大体、何で私まで待たされるのよ。あなた達二人で帰ればいいじゃない」




声の主は最近仲良くなれた人と、現在距離感を図りかねてる人。

どうやら二人は私を待っていてくれているらしい。

みほさんには遅くなるから先に帰っててと伝えていたのに。

相変わらずみほさんは優しい人だ。



小梅「でも逸見さんまで……」



普段のみほさんへの態度を見るに、私を待つだなんてせずにさっさと帰ると思っていたのだが。

現に用事があって逸見さんを待たせた挙句さっさと帰られて半泣きになっているみほさんを何度か目撃しているし。


291 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:39:38.32 ID:ZxPhTSO60



みほ「もうちょっとだけ。お願い」

エリカ「あなたねぇ、友達作れとは言ったけどだからといって必ず一緒に帰りなさいとは言ってないでしょ」

みほ「それはそうだけど……」

エリカ「……はぁ、あと5分だけよ」



さっさと入ればいいのに、私の手は扉にかからない。

二人の会話がなぜか気になってしまうのだ。

もしかしたら人目のないところではまた別の逸見さんが見られるかもしれない。

それが良い部分なのか悪い部分なのかはわからないが、停滞した現状を打破する一手になることを期待しよう。

なんだかストーカーみたいになってしまうが二人の会話に集中できるよう、私は静かに教室の前に座り込んだ。



エリカ「あなた勉強はちゃんとしてるの?」

みほ「も、もちろん」

エリカ「説得力無いわねぇ……得意科目を伸ばすのもいいけど、進学するならちゃんと苦手科目もある程度なんとかしなさい」

みほ「うぅ……エリカさんに心配されなくても自分でちゃんと何とかするよ……」

エリカ「出来てないから私にぐちぐち言われるんでしょ。言われたくないならちゃんとしなさい」

みほ「そ、それいったらエリカさんだって色々言われてるでしょ」

エリカ「え、何それ」

みほ「えっと……確か、『ガミガミうるさい』『小姑』『所詮は西住に敗けた敗北者』『ハンバーグばっか食べてるから血気盛んなのかもね』」

エリカ「そいつら全員ぶっ飛ばしに行くから名前教えなさい。ていうか最後のはあなたでしょ」

みほ「情報源の秘匿を条件に教えてもらったんで……」

エリカ「まったく……言われっぱなしは癪だから、見返してやらないと」

みほ「うん、頑張って」

エリカ「あなたもよ」

みほ「え?」

エリカ「あなた、未だに陰でコソコソ言われてるのに気づいてないわけじゃないでしょ?」



……確かに逸見さんの話を聞いて回る中で、みほさんへの陰口をちらほら聞くことがあった。


292 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:40:42.90 ID:ZxPhTSO60


エリカ「家が、姉が。そんな言葉を付けないとあなたを評価できないような人達を見返してやりなさい」

みほ「……」

エリカ「私はあなたに勝ちたいの。そのあなたが馬鹿にされてるのは我慢できないわ」

みほ「……うん」

エリカ「……ならいいわ」



……今のはたぶん、逸見さんなりの励ましなのだろう。

みほさんなら、みほさんの力で他者からの評価を勝ち取れると。

逸見さんはそう伝えたかったのだろう。

そしてみほさんもそれを感じ取ったようで、先ほどよりも少し高くなった声で逸見さんの名を呼ぶ。



みほ「エリカさん」

エリカ「何よ」

みほ「ちゃんと、見ててね」

エリカ「……ええ。見ていてあげるわ。あなたが腑抜けたらまたひっぱたけるようにね」

みほ「あははっ、なら気を付けないと」

エリカ「まったく……」


293 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:43:47.39 ID:ZxPhTSO60


僅かに開いた扉の隙間から教室を覗いてみる

みほさんは笑っていた。心から嬉しそうに。

エリカさんはほほ笑んでいた。あきれたように、小ばかにしたように。だけど、優しさを隠しきれない表情で。

……私は、何を見てきたのだろう。

周りの意見なんかどうでもよかった。あの二人を見ていれば、逸見さんを穿ってみていなければ。

二人の輝きにすぐに気づけたのに。

……いや、気づいてたんだ。



小梅「私、嫉妬してたんだ」



みほさんに認めてもらえるよう、力になれるよう努力し続けて、ようやくその時が来たと思ったらみほさんの隣には誰よりも心強い人がいた。

気づいてしまった。

何も見ていないような瞳だったみほさんが、前を向いている事に。

そうしたのは逸見さんだって事に。

だけど認めたくなかった。

私のやってきたことが無為になった気がして、今まで動いてこなかった私をあざ笑ってるような気がして。

みほさんのためだなんて言いながら、私はみほさんから目を逸らしてた。その隣にいる逸見さんを穿った目で見る事しかしていなかった。

むしろ逸見さんが良い人だとわかっていたからこそやり場のない嫉妬が芽生えてしまったのかもしれない。



小梅「私……全然弱いままだったんだなぁ」



強くなろうと努力してきたのに私は結局弱いままだった。

いくら戦車道が上手になったって、その根っこである心が弱いままだった。

だから、自分で自分の選択肢を決められず誰かの意見を求めた。

情けなくて、恥ずかしくて、頭を抱えてしまいそうになる。

しかしこれ以上二人を待たせるわけにはいかない。

私は両足に力を込めて無理やり立ち上がり、未だ話声の途絶えない教室の扉を開ける。

教室に入った私を見て、一人は嬉しそうに私の名前を呼び、

もう一人はムッとした表情で自分を待たせた事を咎めながらも、次の瞬間にはさっさと帰ろうと出口に向かう。

私ともう一人は颯爽と去って行く背中を追いかけていく。




私はようやく、自分の選ぶ道を決める事ができた



294 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/07/14(土) 22:56:01.31 ID:ZxPhTSO60





夕暮れの校舎裏。昨日と同じように校庭から運動部の掛け声が聞こえてくる。

だけど、昨日と違って私は寂しさを感じていない。

というか、そんなものを感じる余裕なんてない。

今私は緊張と後悔で色々大変なのだ。



小梅「……なんであんな事しちゃったかな」

エリカ「何が?」

小梅「うおおおおおおおおおっ!?」



いきなり横合いからかけられた声に私は乙女をかなぐり捨てた声で叫んでしまう。



エリカ「びっくりしたわね……で?いきなり呼び出すだなんてどうしたのよ」



逸見さんは私の奇声に一瞬驚いたようだったがすぐにいつもの澄ました表情に戻り、本題に入ってくる。

心の準備ができたとは言い難いが、こういう事は勢いも大事だ。

私は胸の高鳴りを抑え込んで逸見さんに用件を伝える。



小梅「ちょっと二人だけで話したいことがあって」

エリカ「そ。手短にね」

小梅「はい。……エリカさん」



大きく息を吸う。

大事なことだから、噛まないように、上ずらないように。

真っ直ぐ目を見つめて。




小梅「私と友達になってください」

エリカ「ええ、いいわよ」




私の決意を込めた告白はあまりにも軽く、あっさりと受け入れられてしまった。



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