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【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」

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1 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:14:02.11 ID:Zu52MeK10


もしも私が黒森峰に行かなければ

もしも私が戦車道をしていなければ

もしも私が西住の家に生まれていなければ

もしも、私が生まれていなければ






貴女はまだ、いてくれたのだろうか







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2 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:14:40.56 ID:Zu52MeK10






『みほ』





3 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:15:21.96 ID:Zu52MeK10


必死に掴む手を繋ぎ留められなかった

大切な人を救えなかった

なのに、私だけが残ってしまった

在りし日はもう遠く、貴女の声の音色は、手のぬくもりは、笑いあった日々は、私の中から消え去っていく




それでも



4 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:16:03.48 ID:Zu52MeK10





貴女の輝きだけは、忘れられない




5 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:19:01.12 ID:Zu52MeK10





〜黒森峰女学園中等部1年 4月〜


―食堂―





みほ「……」




「あの人、また一人で食べてる……」

「いいんじゃない?天才副隊長は孤高が好きなんでしょ」

「かもねー」





もう何度聞いたかわからない言葉が耳に入ってくる

私の事を話しているのは明らかなのに、まるで私がいないかのように



6 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:23:34.68 ID:Zu52MeK10



みほ「……なら、私と変わってくれればいいのに」



だから私も誰に向けているかわからない呟きをする



みほ「……あと、6年」



中等部を卒業してもそこからさらに高等部が3年。

あんまりにも長い道のりだ



7 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:26:10.10 ID:Zu52MeK10


みほ「……本当に、黒森峰を卒業したら終わりにできるのかな」



戦車道をやめたい。その言葉を誰かに話したことは一度もない

それが許されるとも思ってないから

きっと黒森峰を卒業してもやめられないのだろう

進学するのか、あるいは実家での修行になるのかはわからないが、私はきっと戦車道から、西住流から逃げられない




みほ「仕方ないんだよね。私は……西住みほなんだから」


8 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:29:14.21 ID:Zu52MeK10




「あら、一人でテーブルを使うだなんてさすが副隊長さんね?」



9 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:30:44.36 ID:Zu52MeK10
みほ「……」

「……無視?意外といい度胸してるのね」

みほ「え……?」

「ふんっ……」

みほ「あ、あの……」

「……何?このテーブルは副隊長様じゃないと使えないとでも言うつもり?悪いけどごはん冷めるから移動するつもりは無いわよ」

みほ「それは……別に。私の場所じゃないから……」

「ならいちいち驚くんじゃないわよ」

みほ「そうじゃなくて、さっきのは無視とかじゃないんです。私に話しかけてるとは思わなくて……」

「……はぁ?あなたの事を言ってるのになんであなたに話しかけてないって思うのよ」

みほ「……そうですね」

「あとね、あなたさっきから何うつむいてるのよ。人と話すときはちゃんと目を見て話せって教わらなかった?」

みほ「あ、ごめんなさ――――」
10 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:31:44.08 ID:Zu52MeK10




煌めくような銀髪、見つめると吸い込まれそうな碧眼

自分と同じ人間だと思えないほど整った容姿に私は思わず目を奪われてしまった



11 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:34:31.08 ID:Zu52MeK10

みほ「…………」

「……何よさっきから」

みほ「え、あ……ごめんなさい。えっと、その……逸見、さん」

エリカ「あら、私みたいな下っ端の名前を憶えてくれているだなんて、さすが副隊長さんね。器が広いわ」

みほ「ち、違うよ。チームの同級生の名前はみんな覚えてるの。……友達に、なれるかなって」

エリカ「……はぁ?何甘い事言ってるのよ」

みほ「え……?」

エリカ「いい?他の子ならいざ知らず、私とあなたは敵同士よ」

みほ「え……な、なんで?同じチームなのに」

エリカ「はっ、さすが入学してすぐ副隊長になった人は言うことが違うわね?私なんて相手にならないって事?」

みほ「ち、違うよ……」

エリカ「私は、まほ隊長にあこがれてここに入ったのよ。なのに、副隊長の席は同じ一年のあなたが座っていた」

みほ「……」

エリカ「あなたがそれに足る人物なら何も言わないわ。だけどね、あなた練習が始まってからまともにメンバーをまとめられたことある?」

みほ「……ごめんなさい」

エリカ「多少は腕に覚えがあるみたいだけれど、強いだけで統率の取れない人間が上にいても軋轢を招くだけよ」

みほ「……」

エリカ「私はあなたを認めてない。まほ隊長を支えるのは私よ。たとえ妹だろうと情けないあなたが副隊長だなんて我慢できないわ」

みほ「……」

エリカ「……何も言い返さないの?」

みほ「逸見さんの言う通りだから……」

エリカ「……そう。本当に情けないのね」

みほ「……」
12 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:42:59.27 ID:Zu52MeK10


彼女の言葉は正しく、しかしそれを理解した上でも面と向かって言われると辛いものがある。

結局、私は何も言葉を紡げないまま黙々と食事を続け、逸見さんもそんな私を無視するかのように学食のハンバーグを口元に運んでいった




エリカ「……ちょっとあなた」

みほ「……何?」

エリカ「口元、ついてるわよ」

みほ「えっ、あっ……」

エリカ「ちょ……もう、袖で拭おうとしないのっ!……ほら、ティッシュ。そのぐらい持ってなさいよ……」

みほ「ご、ごめんなさい……」

エリカ「……ふん、いい?あなたがコネで手に入れた副隊長の座なんて脆いものよ。私が実力ですぐに奪ってあげるから」



逸見さんはそう言い残すと食べ終わった食器を持ち席を立った



みほ「……」


今のやり取りだけで逸見さんがどんな人間かなんて偉そうな事を語ることはできないけれど、

少なくとも、普段練習で受けるとげとげしい印象とはまた違ったものを感じ取れた


みほ「……逸見さんって、案外優しい人なのかも。……それに」


13 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:43:29.63 ID:Zu52MeK10




みほ「……初めてだったな。お姉ちゃん以外の人と学校でご飯食べるの」




14 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2018/05/27(日) 22:45:03.40 ID:Zu52MeK10



少しだけ、頬が緩んだ


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