香澄「燃やしちゃった!」

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1 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:20:59.39 ID:08bDOXteO


香澄「蔵が……」


沙綾「あちゃー……めっちゃ燃えてるねぇ」

有咲「ぅおおおぉぉぉ!?!!」

香澄「ごめんっ、ごめんねっ! 有咲っ!」

有咲「ごめんじゃねぇーっ!! 明日の朝刊載ったぞ香澄てめぇーっ!!」

香澄「わざとじゃないんだよーっ、有咲ぁー!」

有咲「わざとじゃないつったっておまえっ!」


りみ「今日は風が強いから火の手が早いね」

たえ「焼きいも食べたかったなぁ」

香澄「おたえが焼きいも焼こうって言ったから」

たえ「私はりみが焼きいも食べたいって言ってたのを聞いて提案してみただけだよ?」

りみ「た、たしか……お芋を用意してくれたのは沙綾ちゃんだったよね?」

沙綾「うん。商店街の人たちに分けてもらったんだ」

りみ「沙綾ちゃんすごい」

香澄「さすがさーや!」

たえ「また言ったら分けてもらえるかな?」


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2 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:24:25.52 ID:08bDOXteO

香澄「すごい! どんどん火が燃え移ってる!」

沙綾「もう母屋の方も駄目そうだねぇ」

有咲「わ、私の家が…………ど、どうしてくれんだ香澄てめぇぇぇぇーーっ!!」

りみ「お、落ち着いてっ……有咲ちゃん」

沙綾「あれ? そういえばおたえは?」

香澄「さっきまで一緒にいたはずなのに。おーい、おたえー!」

りみ「あ、あれっ…!」


たえ「うぅ……」


香澄「おたえが燃え盛る蔵から!?」

りみ「なんでわざわざ火の中に……?」

たえ「はぁ……死ぬかと思った」

有咲「だ、大丈夫か!? おたえ! 怪我は!?」

たえ「うん。平気だよ」

沙綾「何してたの……? おたえ」

たえ「これ。回収してきた」

りみ「わぁ! 焼きいもだぁ!」

たえ「ほくほくだよ。この4つ以外は炭になっちゃってたけど」
3 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:26:13.18 ID:08bDOXteO

りみ「あ……でも4つじゃ」

沙綾「私と香澄とりみりんとおたえ……これだと有咲の分が」

有咲「い、いや、私はべつに焼きいもなんか」

たえ「もう一回探してくるっ」

有咲「待て待てっ! おまえ自殺願望でもあんのかっ!? さっきはたまたま運が良くて助かったけど今度は確実に死ぬぞっ!?」

たえ「もしかして心配してくれてる? 有咲」

有咲「し、心配とかじゃねーしっ…! わ、私の家の蔵から死人が出るのは、やっぱ良い気持ちはしねーし? だから……」

沙綾「正確にいえば、蔵“だった”場所だけどね」

たえ「さらっと残酷なこと言うよね。沙綾って」

りみ「じゃあ有咲ちゃんの焼きいもは…」

有咲「い、いやっ……だから私は別に最初から焼きいもなんて欲しく」

香澄「私の半分あげるね、有咲。はいっ」

有咲「え?」

香澄「有咲の分。一緒に食べよう」

有咲「べ、別に、欲しいなんて一言も…」

香澄「えぇー! いらないのー?」

有咲「い、いらないとも、言ってない……」
4 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:27:40.59 ID:08bDOXteO

香澄「んぅーっ! ほくほくでとろとろでおいひぃーっ!」

沙綾「良い焼き加減。うちのパンもここで焼いたらもっと美味しくなるかな?」

たえ「ピザも焼きたい」

りみ「んー、めっちゃおいひぃ」

沙綾「りみりん、それ何かけてるの?」

りみ「チョコソースだよ? 沙綾ちゃんもかける?」

沙綾「合うのかなぁ……んじゃ試しに」

香澄「私も!」

たえ「私にもちょうだい。りみ」

りみ「うん、いいよ」



有咲「はぁ……もぐもぐ……」


たえ「家が燃えちゃって可哀想だし、私のも有咲に半分あげる」

りみ「私のも半分あげるから、これで元気出して。有咲ちゃん」

沙綾「じゃあ私のも食べていいよ」

有咲「わ、わるいな……ってこれ全部チョコかかってんじゃねーかっ!!」

香澄「おぉっ、やっと元気出てきたね! それでこそ有咲だよ!」
5 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:29:10.98 ID:08bDOXteO

たえ「私、目の前でこんなすごい火事を見たの初めて」

りみ「間近で見るとすごい迫力だね」

沙綾「熱気が直に伝わってるからなんかこう生きてるって実感が……って、あっ!」

たえ「沙綾?」

沙綾「蔵が燃えたってことは、それってつまり…」

りみ「もうあそこで練習出来ないね…」

たえ「また建てればいいよ。今度は蔵じゃなくて宮殿とかどうかな?」

有咲「おまえら完全に他人事だと思ってんだろーっ!?」

沙綾「違う違う、有咲。そうじゃなくて」

有咲「はぁ?」

沙綾「蔵が燃えちゃったってことは、あそこに置いてた私のドラムは…」

りみ「あ……私たちは普段持ち歩いてるから楽器無事だったけど、沙綾ちゃんは」

たえ「私、ちょっと様子見てくる」

有咲「ちょっ、だからおまえは軽々しく命をベットしようとすんじゃねぇーっ!!」

たえ「でもこのままじゃ沙綾のドラムが」

有咲「今更おたえが行ったところで状況は何も変わらねーだろっ!」

沙綾「あれ高かったのになぁ……蔵が燃えちゃうから……」

有咲「おまえらが燃やしたんだろっ! 主に香澄っ!」
6 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:31:04.92 ID:08bDOXteO

有咲「っておい香澄! 聞いてんのかっ!?」

香澄「ふふふふ〜」

有咲「さてはおまえまったく反省してねーな?」

香澄「こんなこともあろうかと」

たえ「ん?」

りみ「香澄ちゃん?」

香澄「じゃーん! 実は芋パを始める前に外に避難させておきましたー! ほら、あっちに沙綾のドラム置いてるよー!」

沙綾「え? あっ、ホントだ! あんなところに私のドラム!」

たえ「香澄の危険察知能力すごい」

香澄「えへへー」

有咲「そんな能力あるならもっと他に気にするところあるだろっ!? 大元のところでおまえにはそれが激しく欠落してねーか!?」

香澄「心配しないで。有咲」

有咲「は、はぁ?」

香澄「有咲のキーボードも無事だから!」

有咲「ま、まじでか!?」


りみ「有咲ちゃーん! 有咲ちゃんのキーボードもこっちに避難されてるよー」


有咲「お、おぉ……サ、サンキュー、香澄」

香澄「えへへー」
7 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:36:20.00 ID:08bDOXteO

たえ「ねぇ、有咲」

有咲「ん? なんだー? おたえ」

たえ「みんなの楽器も無事だったことだし、そろそろ練習始めたいんだけど」

有咲「今にも襲ってこんとするあの業火を前にしてよく平然とそんなことが言えるな、おまえ」

たえ「うん?」

りみ「そうだよ、おたえちゃん。いくらなんでも炎の中で練習するのはちょっと……新しい練習場所を探さなきゃ」

有咲「気にするところはそこじゃねぇーっ!!」

沙綾「練習場所っていっても、ここ以外だとスタジオくらいしか」

たえ「ここにスタジオを建てる……?」

沙綾「あっ、それいいかも!」

有咲「よくねぇーっ!!」

香澄「有咲、バンドが嫌になっちゃったの……? 私たちとやるの楽しくなくなっちゃった……?」

りみ「有咲ちゃん……」

沙綾「有咲…」

たえ「有咲」

有咲「い、いや、そうは言ってない、けど……」
8 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:38:49.81 ID:08bDOXteO

たえ「なら早く建てよう。チューニングして待ってるね」

香澄「私もー」

有咲「……は? いやいや待て待て」

たえ「どうしたの? 有咲。早く宮殿買ってきて」

有咲「どこに売ってんだよそんなもの! つーか買ったからって一瞬で建つわけじゃねーからなっ!?」

たえ「え? でも私のやってるリズムゲームでは」

有咲「ゲームで噴水や足湯を買うのと一緒に考えてんじゃねーっ!!」

たえ「ふふ、冗談だよ。さすがに足湯と宮殿とじゃ規模が全然違うからね」

有咲「足湯もすぐには建たねーぞ……それに建てるにしても費用とかの問題が…」

たえ「費用? それいくらくらいなの?」

沙綾「あたしも建てたことないからよくわからないけど、結構しそうだよね」

有咲「知らねーけど、たぶん1000万とかじゃね?」

りみ「い、いっせんまん!? いっせんまんあったら沙綾ちゃんちのチョココロネが1000個買えちゃうよっ!」

たえ「香澄、1000万持ってる?」

香澄「えーと……あ、1000円しかない」

たえ「残念。ちょっと足りないね」

有咲「まったく足りてねーからな!?」
9 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:40:29.46 ID:08bDOXteO

たえ「どうしよう。困った」

香澄「焼きいも売っちゃう?」

たえ「香澄、天才なの?」

香澄「えへへー」

有咲「どこがだよ!? このアホコンビっ!!」

りみ「ほとんど炭になっちゃってるし、私たちが持ってるこの食べかけだと1000万で買ってくれる人を探すのは難しそうだよね」

有咲「アホがもう一人いた!?」

沙綾「まぁすぐに1000万を作るのはさすがに無理だと思うよ? だから有咲は地道にバイトでもするしかないんじゃない?」

有咲「は、はぁ!?」

有咲(なんで私がおまえらが燃やした家のためにバイトしなきゃいけねーんだよっ!!)

有咲(……ってツッコミたいところだけど、あの3人の後だと沙綾がめちゃめちゃまともなこと言ってるようにも聞こえるんだよなぁ)


沙綾「あ、でもうちは無理だよ? 人雇う余裕とかたぶん無さそうだし」

りみ「おたえちゃん、SPACEは?」

たえ「どうだろ? 今度聞いてみる」

有咲(え? マジで私がバイトする流れになってんのか……?)
10 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:42:37.99 ID:08bDOXteO


有咲「はぁ……この先、私はどうやって生きていけば……」

たえ「人生に答えは無いって誰かが言ってたよ」

有咲「私はそんな深いところで悩んでんじゃねー……未来のことより今日明日だ……」

りみ「家が無くなっちゃったら寝るところとか困るよね」

たえ「野宿? あ、ホームレスだ」

香澄「ちょうど良い機会だし、みんなキャンプとかしちゃう?」

有咲「自ら火を放っといて良い機会とか言ってんじゃねーぞ香澄!!」

たえ「じゃあうちに泊まる?」

有咲「え…?」

りみ「うちも有咲ちゃんなら大歓迎」

沙綾「あたしと一緒の部屋で良ければ歓迎するよ? 有咲」

香澄「有咲ー! うちに来なよー!」

有咲「お、おまえら……ぐすっ……」


有咲(でも他人の家にお泊まりなんて……とか言ってる状況じゃねぇよな……)

有咲(つーかおたえの家ってうさぎを飼ってること以外に情報が無さすぎてマジで謎だ……嫌な予感しかしねぇ)

有咲(りみの家は……あ、たしかりみってあの姉ちゃんと一緒の部屋とか言ってたような……てことは私も同じ部屋に……? りみだけならともかくそんなの無理すぎんだろっ!)

有咲(……となれば一番無難なのは沙綾の家か。まぁ一度行ったことあるしな……家族も良い人そうだったし)
11 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:44:38.93 ID:08bDOXteO

有咲「……じゃ、じゃあ、沙綾」

沙綾「あ、ごめん。有咲」

有咲「へ?」

沙綾「今、家から電話かかってきてさ。母さんが調子悪くなっちゃったって」

有咲「だ、大丈夫なのか!?」

沙綾「うん。この大火事のこと聞いて心配したって。みんな無事なの伝えたら安心してたから」

沙綾「でも今日のところは安静にって」

有咲「そ、そうだよな……そんな時にお邪魔するわけにもいかないよな」

有咲「…なら、りみ」

りみ「ごめんね。有咲ちゃん」

有咲「…え?」

りみ「今、思い出したんだけど……今日はお姉ちゃんの友達が泊まりにくる日なのすっかり忘れてて。しかも3人」

有咲(3人ってまさかあの人たちか……それはさすがに無理だ……つーか嫌だ)

有咲「そ、そっか……」

有咲(しょーがねぇ……今日のところはおたえの家で我慢するしか)

たえ「今日はうさぎの換毛期なんだ」

有咲「……は?」

たえ「換毛期」

有咲「お、おぉ……」

有咲(意味わかんねーコイツ! 今日はってなんだよ!? 期っていうくらいなら単日なのおかしくねーか!?)

有咲(……いや、ちょっと待て! てことは……)

香澄「ふふー♪」

有咲「……」
12 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:46:00.81 ID:08bDOXteO

香澄の家


香澄「着いたよー! 有咲ー!」

有咲「お、おう……」

有咲(ふーん……ここが香澄の家か……燃やしてやろうかな)


有咲「んじゃお邪魔しま」

香澄「おかえり! 有咲!」

有咲「…………おじゃまします」

香澄「違うよーっ、有咲ー! おじゃましますじゃなくてただいま! 今日からここが有咲の家なんだから」

有咲「はぁ? ち、ちげーしっ…! おまえがあまりにもしつこいから、今日だけ仕方なく泊まってやる、って…」

香澄「でも有咲の家って無くなっちゃったよね?」

有咲「よ、よーくわかってんじゃねーかっ……おまえが燃やしたんだからなっ!? おまえがっ!!」

香澄「そうだよー。だから責任取らなきゃって。有咲、好きなだけここにいていいからね!」

有咲「泊めたくらいで家を全焼させた罪が消えると思うなよっ!?」

香澄「まぁまぁ、そう言わずにー。おかえり、有咲」

有咲「お、おまえ」

香澄「おかえり」

有咲「た、ただい、ま……////」
13 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:50:39.78 ID:08bDOXteO

香澄「じゃじゃーん! ここがリビング!」

有咲「いや、見りゃわかるし」

香澄「えへへー。今、お茶でも淹れるから座って待っててねー」

有咲「お、おう……」


有咲(うわぁ……やっぱ他人の家って落ち着かねぇ……)

有咲(ここに今日泊まるんだよな……今日だけじゃないのか、明日も明後日も、ずっと……)

有咲(帰りてぇ……でも他に行くあてないし、沙綾やおたえやりみの家でも同じだろうし……我慢するしかない、か)


香澄「お待たせー! ん? どうしたの? 難しい顔して」

有咲「……別に」

香澄「遠慮しないでくつろいでいいからねー?」

有咲「あー、うん……」

有咲(そう言われてくつろげたら苦労しねーよっ!!)


香澄「有咲。お菓子食べる?」

有咲「……お構い無く」

香澄「有咲、もしかして緊張してる?」

有咲「…っ、べ、別にそんなんじゃ」
14 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:52:30.74 ID:08bDOXteO

香澄「そんな緊張しなくてもいいのに」

有咲「う、うるせ……だから緊張なんかしてねーって」

香澄「ねー、有咲」

有咲「……なんだよ」

香澄「明日からはずーっと一緒だねぇ。家から学校まで行きも帰りも」

有咲「うぜー……マジで勘弁してくれ……」

香澄「えぇー! 有咲は楽しみじゃないのー?」

有咲「家燃えたのに楽しめるわけねーだろ……」

香澄「それはそれ、これはこれじゃない? せっかくなんだし、もっと楽しまなきゃもったいないよー」

有咲「おまえ私が通報したら一発で監獄行きだからな!?」

香澄「え……私、監獄に入れられちゃうの……? もう有咲やみんなとバンドできないの?」

有咲「い、いや、それはあくまで私が通報したらの話で…」

香澄「通報するの……? 有咲」

有咲「し、しない、けど……」

香澄「有咲ぁー!」

有咲「ああもうっ、うぜぇうぜーっ!」
15 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 21:54:27.20 ID:08bDOXteO

有咲「ったく……あんまベタベタしてくん」

香澄「あーっ!!」

有咲「うぉっ!? こ、今度はなんだよ!?」

香澄「用事思い出した! ちょっと行ってくるね!」

有咲「…え? あ、ちょ、香澄」

香澄「そんなに遅くならないから有咲はここで待ってて!」

有咲「い、いや、ちょっ……」



有咲「…………は?」


有咲「マ、マジでどっか行きやがったアイツ……」


有咲(う、嘘だろ……ちょっと待て、嘘だろ……え、なんで……香澄がいなくなったら、私は他人の家で一人で……)


有咲「…………」


有咲(いや、無理無理無理無理っ……!!)

有咲(マジで勘弁してくれよ……香澄ーっ!! おまえマジで最悪なやつだなおいっ!!)

有咲(初めて来た他人の家でひとりぼっちにされるやつの気持ち考えたことあんのかあいつ……!!)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/24(木) 22:32:42.09 ID:JLCjeAKzo
なんだか、けいおんみたいだと、おもいました
17 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 23:22:51.03 ID:08bDOXteO


有咲「…………」


有咲(つーかマジでどこ行ったんだよアイツ……すぐ帰ってくるよな? 結構待ってる気がするぞ)

有咲(ってまだ10分しか経ってねーのかよ……体感では3時間くらい経過してるってのに)

有咲(うぅ、落ち着かねー……)


ガチャ…


有咲(玄関が開く音……やっと帰ってきたか……)

「ただい」

有咲「おせーよっ!! 何やってたんだよっ!! 私をほったらかしにしていきなり消えてんじゃねーっ!!」

妹「えっ」

有咲「え?」

有咲(や、やっちまったぁーーっ!! 全部おまえのせいだからな香澄ーーっ!!)

妹「あ、あの……」

有咲「ご、ごきげんよう……」

妹「お、お姉ちゃんは……?」

有咲「さ、さぁ?」

有咲(そんなのこっちが聞きてーよっ!!)

妹「え、えーと……市ヶ谷さん、ですよね? お姉ちゃんと一緒にバンドやってる」

有咲「そ、そうですが」

妹「どうしてうちに?」
18 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 23:24:00.48 ID:08bDOXteO

有咲「え……?」

有咲(まさかとは思ってたけど、やっぱ言ってねーんだな香澄っ! 私を泊めるなら泊めるで事前に家族に伝えとけよっ!)

有咲(これじゃ私が不審者みてぇじゃねーかっ!!)


有咲「こ、こほんっ……実はいろいろありまして、今日はここに泊めてくれるって香澄…ちゃんが」

妹「あ、そうだったんですね。それで、お姉ちゃんは?」

有咲「……」

妹「……?」

有咲「え、えーと、もうすぐ戻ってくるとか言ってたような……ちょっと聞いてみますね」
ピッ

妹「は、はぁ……」

有咲「……っ」


有咲(…………出ろ、早く電話に出ろ、香澄。そしてこの妹におまえの口から事情を説明してくれ、香澄)


有咲「…………っ」


有咲(なんで出ねぇんだよっ!! マジでふざけんなアイツっ!!)
19 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 23:25:45.11 ID:08bDOXteO

妹「あの…」

有咲「ど、どうしちゃったんですかねぇ……香澄ちゃん……着信に気付いてないのかなぁ? おほほほほ」

有咲(つーかおほほほほってなんだ!!)

妹「……」


有咲「あ、私のことはお構い無く。香澄ちゃんもすぐ戻ってくると思いますし。……たぶん…………すぐに」

妹「……」

有咲(し、死にてぇ……帰ってきたらただじゃおかねーぞ、香澄ぃぃっ!!)

妹「じゃ、じゃあ私、宿題あるんで部屋に行きますけど……もし何かあったら呼んでください」

有咲「あ、ありがとうございます…」



有咲(はぁ……マジで疲れた……)


ガチャ…


有咲「マジでぶっ殺すぞてめぇーーっ!!」

母「あら?」

有咲「……」
20 : ◆hjwFaAU9TE [saga]:2018/05/24(木) 23:27:34.45 ID:08bDOXteO


有咲(……香澄が戻ってきたのは、それから1時間以上が経ってからだった)


香澄「たっだいまー!」

有咲「かーすーみー……てめぇ……っ」

香澄「あれ? どうしたの? 有咲。怒ってる?」

有咲「たりめぇーだろっ!! ふざけんなっ!!」

香澄「ごめんね。もしかして退屈だった? くつろいでていいって言ったのに」

有咲「そう言われてくつろげるわけねーだろっ!! 人間が全員おまえと同じメンタルの持ち主だと思うなよっ!?」

有咲「つーか電話にも出ねーで今まで何やってんたんだよっ!!」

香澄「これだよ、これ!」

有咲「ん? なんだそれ……ってこれ私のキーボードじゃん!」

香澄「あのまま外に置いとくのも危ないかなって」

有咲「お、おぉ……サンキュー……」

香澄「えへへー」

有咲「つーか運ぶなら私も連れていけよっ!」

香澄「だって有咲、疲れてそうだったし」

有咲「……おまえの気遣いは悪いようにしか働かねーんだからマジでやめろよな」

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