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和久井留美「明るい未来の話を」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/24(木) 00:38:04.11 ID:0Wv/HTop0
就職先を東京の企業に決めたことに然したる意味はなかった。
ただ漠然と都心への仄かな憧れを抱いていた、地方の田舎娘特有の単純な気持ちからだ。
もちろん、決めたからには努力は惜しまなかった。
面接予定の企業情報をリサーチし、求められている人材たる対象となるよう準備をした。
受け答えの際に広島弁が出ないよう、標準語を体に叩き込む訓練もした。
元々何かを調べたり、まとめたりといった作業は嫌いではない。
そうして無事に内定を勝ち取り、東京で新社会人としての生活が始まった。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1527089883
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/24(木) 00:39:15.67 ID:0Wv/HTop0
入社してからは覚えることが多く苦労した。
学生のころは要領が良いと褒められもしたけれど、井の中の蛙だったと痛感する。
専門的な知識やジビネスマナー等々……自分に足りないものが次から次へと出てくる。帰宅後はビジネス書を熟読したり、仕事で使えそうな資格取得に向けての勉強に時間をあてた。
研修期間を終える頃には『同期の中で一番仕事のできる新入社員』と評されるようになる。
実務に入ることを心待ちにしていた。
だけど……実際は。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/24(木) 00:40:38.73 ID:0Wv/HTop0
………
……
…
「和久井くん、ちょっとお茶を頼むよ」
今日も部長からお決まりの台詞をかけられる。
私は「お待ちください」と返事をするといつもの給湯室に向かう。
部長は女性社員はお茶くみとコピー取りが仕事だ、と言わんばかりの人だった。
研修期間を終え希望した部署に配属されたが、簡単な事務作業や雑務しか任されていない。
急須に茶葉とお湯を入れて少し待つ間に、何をやっているんだろうと思案せずにはいられなかった。
部長の元についた同期でも男性と女性で与えられた仕事に差があるのは明白だ。
もっと出来る筈なのに。性別だけで力量を鑑みられない現状に悔しさが溢れた。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/24(木) 00:42:26.30 ID:0Wv/HTop0
「お待たせしました」
「ありがとう……うん、和久井くんの入れたお茶が一番美味いな」
くっくと下品に喉を鳴らす部長の笑い声が耳に付く。
他の女性社員にも同じことを言ってることは知っている。
部長なりのリップサービスなのかもしれないが、それが部屋に響くような声量では意味がない。
「部長……他に任せて頂ける案件はありませんか?」
「あー、いま任せている資料作成が終わってから指示する」
「お言葉ですが、そういったことではなく……同期でも男性社員はもっと実務的な内容を任されていますよね」
「いま和久井くんに振っている内容も大事な仕事だ。彼らをサポートする意味でね」
「ですから、サポートではなく私自身も――」
「君は私の指示に不満があると?」
低くなった部長の声が刺さる。
それでも、振り上げた拳はもう引けない。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/24(木) 00:43:29.49 ID:0Wv/HTop0
「……その通りです。適正を見ないまま女性だからという理由での指示内容な気がしてなりません」
背後から小さくざわめき声が聞こえた気がした。
「そうか……君の言い分はわかった。後日改めて指示を出すから、本日は引き続き資料作成を頼む」
部長は吐き捨てるようにつぶやくと席を立ち部屋から出て行った。
事の一部始終を目撃していた同じフロアの人の視線が残された私に向けられる。
目を合わせようとすると顔を背けられたので、自分のデスクに戻り作業を再開した。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/24(木) 00:44:51.12 ID:0Wv/HTop0
それから仕事内容は改善され、自分の求めているものを任されることとなった。
ただ、それでも以前のような雑務を指示されることも減らなかった。
中には新人に任せるべきでないような、比較的重要度の高い案件も舞い込んでくる。
恐らく、私が出来ませんと泣き付いてくるのを見越しての指示だろう。
事実、投げ出したくなるようなときもあったが、それだけは絶対にしたくないと躍起になり、誰にも泣き付くことなく黙々と仕事をこなした。
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