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相棒×聲の形「灯台下暗し」
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578 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/06(水) 18:51:37.40 ID:2/I9ouOR0
乙です
いじめが人殺しに直結する、教育上のトラブルよりも桁外れに悪質で危険な人権蹂躙、犯罪的行為である事
それぞれに被害者の面があっても、責任が無い弱い立場である硝子を精神的に虐待した時点で何の正当性もない事、
元々右京さんはこの辺りの事をきっちり口に出す人ですが、
右京さんよりも若いGTO冠城が硝子をいじめた児童達に、竹内に押し付けられた只の腹いせだとはっきり伝えた事。
一見傍若無人な右京さんが、最終的には警察官としての公的な対処、解決を一番大事にしている事
責任と原因の分担、分析が丁寧になされているため、
何より頭脳明晰な「正義の警察官」である特命係の物語として好感が持てました。
備考)近年の少年法改正で少年院送致の下限は「概ね12歳」となりましたが、
小学生の犯罪に適用するのは直接殺しでもしない限り実務的には難しいです。
このお話なら、児童自立支援施設(旧教護院)が現実的な上限でしょう。
正直、他にもありますが、メインの筋道が通っているので
そういう事を大事にする「相棒」、右京さん達とのクロスオーバーとして楽しめました。
なんか上からの書き方になってしまって失礼しました。
579 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/06(水) 19:58:54.54 ID:eRIJKW/H0
呪怨とぬ〜べ〜のクロスオーバーも読みたいです、次回もし書いてくれる気があるならよろしくお願いします
580 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/06(水) 20:57:53.33 ID:9JaJgZfq0
>>578
感想とご指摘、どうもありがとうございます。
またしても、私めの調査不足が露呈してしまいましたね……
上の件も併せて、下調べって本当に大事なんだなと痛感しております……
>>579
申し訳ありません……
一応それなりに知っている作品ではありますが、書く予定はありません。
それに私の場合、自分の書きたい作品は自分で決める方針でいきますので、
リクエストにお答えする事はできないことをご了承下さい……
581 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 20:58:29.49 ID:9JaJgZfq0
そして時間が出来たので、昨日に引き続いて続きを投下です。
いよいよ、完結でございます……
582 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 20:59:41.33 ID:9JaJgZfq0
相棒×聲の形 〜最終日〜
あれから更に数日後……
特命係は再び水門市の西宮家を訪れた。
右京「お邪魔します」
結絃「あ……母さん!婆ちゃん!あの時の刑事さん達が来たよー!」
こうして、結絃の案内により特命係の2人は居間へ案内された。
居間にはいとだけではなく、八重子と硝子も待っていた。
八重子「あなた達また来たの?」
冠城「申し訳ありませんね。当事者として、解決後の被害者の様子も確認しなくちゃならないんで………」
八重子「ふん……用が済んだらさっさと帰ることね」
ぶっきらぼうに返す八重子であったが、不思議と棘のある感じはしなかった。
なので冠城は、「そうさせてもらいます」と笑顔で返した。
583 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:01:20.32 ID:9JaJgZfq0
いと「硝子の件は、本当の感謝しています……」
「まさか、まだいじめられていたなんて、思ってもみませんでした」
結絃「ホントだよ。いきなり指紋取らせてくれとか言われたと思ったら……」
「あの先生や石田以外の連中も犯人だとか聞かされて、ビックリしたよ」
いと「八重子もこれに懲りて、今度からは硝子を入れる学校の事をちゃんと考えてくれると言ってくました」
「そして、孫達と八重子の関係も以前より良くなりました」
「これも全部、あなた達のおかげです……」
584 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:02:07.10 ID:9JaJgZfq0
結絃「それ……どういうこと?」
右京「あなた方に、会わせたい方達がいます」
八重子「会わせたい人達?」
結絃「誰それ?」
冠城「もう、お連れしています」
右京「入ってきて構いませんよ!」
右京が玄関に向かって呼び掛けると、それを合図にとある母子が玄関から居間に上がって来る。
585 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:04:13.29 ID:9JaJgZfq0
>>584
順番をミスりました……
本来の
>>583
の後に来る内容は、以下の内容です……
586 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:04:42.77 ID:9JaJgZfq0
右京「僕は、あくまで思ったことを口にしただけですよ……」
冠城「ま、何はともあれ平和そうで安心しました」
結絃「ホントだよ!刑事さん達のおかげで、いい事だらけだよ」
「ひょっとして刑事さん達……神様かなんかじゃねぇのか?」
右京「おや……神様ときましたか」
冠城「俺達、むしろ疫病神だと思うんですけどねぇ……」
と言いつつも、冠城は満更でもない様子であった。
しかしすぐに表情を改めて
「さて……我々がここに来た目的は、単純にこの家の状況を確かめる為だけじゃないんです」と言った。
587 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:08:42.49 ID:9JaJgZfq0
そして、このままだと話の流れが成立しないので、
>>584
の内容を再度書き込みます。
588 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:09:21.13 ID:9JaJgZfq0
結絃「それ……どういうこと?」
右京「あなた方に、会わせたい方達がいます」
八重子「会わせたい人達?」
結絃「誰それ?」
冠城「もう、お連れしています」
右京「入ってきて構いませんよ!」
右京が玄関に向かって呼び掛けると、それを合図にとある母子が玄関から居間に上がって来る。
589 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:10:36.55 ID:9JaJgZfq0
美也子「お邪魔します……」
石田「お、お邪魔します………」
それは、石田美也子と袋を持った石田将也であった。
590 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:11:17.85 ID:9JaJgZfq0
硝子「…!」
結絃「お、お前…!」
八重子「誰かと思えば、硝子をいじめた子供とその親じゃない!」
「一体、どの面下げてウチに上がってるのかしら?」
2人の姿を見るや否や、あからさまに嫌そうな表情を見せる結絃と八重子。
いとも何も言わなかったが、あまりいい顔はしていなかった。
硝子「…………」
しかし、硝子だけは違った。石田の事を心配そうに見ていた。
だが、家族の人間はその事に気付かず、結絃は石田に歩み寄る。
591 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:12:40.82 ID:9JaJgZfq0
結絃「おいお前…!今までよくも姉ちゃんのこといじめてくれたなあ?」
石田「…………」
結絃「お前のせいで、姉ちゃんどんだけ傷付いたと思ってんだ?え?」
石田「そ、それは……」
結絃「それは?何だよ!」
「『姉ちゃんの耳聞こえないのが馬鹿みたいだからいじめました〜』だろ?」
石田「………」
結絃「しっかしいい気味だよな……他の奴らに裏切られちゃって………」
「姉ちゃんをいじめたから罰が当たったんだよ!」
石田「……………」
結絃「例えお前が裏切られていじめらたところで、オレ達はお前のこと絶対許さないからな!」
結絃に辛辣な言葉の数々をぶつけられる石田であったが、彼は何も言い返すことが出来ない。
592 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:14:10.09 ID:9JaJgZfq0
結絃「何だよ?さっきから黙りこくりやがって!逆にムカつくな…!」
冠城「まあまあ……そこまでにしときなって」
結絃「けど、刑事さん……!」
八重子「というか、何でこんな奴らを連れて来たんです?事件は解決したんじゃないんですか?!」
右京「確かに、事件そのものは解決しました」
「しかし、この事件にはまだ謎が残されています」
「それを明らかにしなければ、完全に終わったとは言えないんですよ……」
八重子「謎…?」
結絃「何だよそれ?」
八重子らが疑問符を浮かべると、右京は話を切り出す。
593 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:15:26.96 ID:9JaJgZfq0
右京「残された謎は、2つ……」
「1つ目は、筆談用ノートの行方です」
冠城「実は、同期の奴には証拠映像以外に、石田君が池に捨てたという筆談用ノートも回収させようとしました」
右京「筆談用ノートも、酷くいたずらされたようでしたからねぇ……」
「犯人の筆跡や指紋を取れると思い、回収を命じたのです」
594 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:17:13.52 ID:9JaJgZfq0
冠城「ところが、池からノートは見付からなかった」
「同期の奴は、学校側が回収して処分したんじゃないかと言っていましたが……」
「後で水田門木を始めとした学校職員に確認してみたところ、誰もそのようなノートは拾っていなかった」
「つまり、学校側はノートに全く手を付けていなかったんです。捨てられていた事実すら知らなかった」
右京「そこで、硝子ちゃんいじめに関与した生徒が回収した線で調べを進めてみました」
「その結果、島田一旗と広瀬啓祐が心当たりがある一件があったと証言してくれました」
595 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:18:54.47 ID:9JaJgZfq0
冠城「彼らは一度、石田君をあの池に突き落とした事があったそうです」
「しかも、時期は石田君のお母様が賠償金を持ってきた日……」
「つまり、石田君が筆談用ノートを捨てた後の出来事だった」
結絃「ちょ、ちょっと待てよ!それじゃあ………」
何か感付いた結絃。彼女の反応を確認すると、
冠城は「ほら……出しな」と言って、石田に紙袋の中身を出す事を促す。
促されるまま、石田は持っている袋から『ある物』を取り出した。
596 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:21:00.20 ID:9JaJgZfq0
結絃「あ……!」
出されたものを見て、結絃は驚いた。
彼女だけではない……西宮家の人間全員もだ。
何故なら、袋の中から出てきたのは、
落書きだらけで尚且つ水を吸って若干の歪みが生じた、硝子の筆談用ノートだったからである。
597 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:22:13.19 ID:9JaJgZfq0
石田「…………」
結絃「お……お前、何でそれを!?」
右京「突き落とされた際、偶然目に留まったので自宅に持って帰っていたそうです」
冠城「本人曰く、何か思うところがあったそうで……」
ちなみに、あの時冠城に石田がこの事を話さなかったのは、
その事を知れば、自分の手で硝子に返せと言われると思ったからであった。
自分に対するいじめの事でこれ以上、彼女と顔を合わせたくなかったのである。
右京らに筆談用ノートを持っている事を看破された際も、
頑なに拒んでいたが、彼らの根気強い説得もあって今こうしてこの場にいるのである。
598 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:23:30.77 ID:9JaJgZfq0
結絃「でも、そいつにそれ持って来させて、どうする気なのさ?」
「まさか……姉ちゃんに返させて、『そいつのした事これで全部水に流して下さい〜』なんて言うんじゃねぇよな?」
石田「……………」
八重子「残念だけど、そんな事であっさり許すほど、私達は都合良く出来ていないわ」
「大体、そこまでされたノート、今更いらないわよ!」
599 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:24:33.36 ID:9JaJgZfq0
冠城「待って下さい奥さん……僕達別に、彼への許しを乞いに来たんじゃないんですよ」
右京「確かに硝子ちゃんに返すべきだと提案はしましたが、ただそれだけです」
「そもそも、そうしたところで許してもらえるとは、我々も思っていませんよ……」
冠城「というか、これはあくまで前座……本題はここからなんです」
八重子「どういう事なの?」
彼らの言うことに、八重子を始めとした硝子以外の西宮家の人間は小首を傾げた。
それを確認しつつ、右京はまた話しを始める。
600 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:26:25.03 ID:9JaJgZfq0
右京「ここで、2つ目の謎について話さなくてはなりません」
「2つ目の謎は6年2組へ立ち入った際、川井みきが発した一言……」
601 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:27:39.02 ID:9JaJgZfq0
『私はあなたと広瀬君と違って、石田君の机に落書きしたり教科書盗ったりしてないもん!』
602 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:28:36.86 ID:9JaJgZfq0
右京「これを聞いた時の石田君の反応です」
「石田君……君はこれを聞いて驚いている様子でしたが、あれは何故ですか?」
石田「……」
「島田の奴らがそんな事までしてなんて、知らなかったから…………」
右京「なるほど……やはりそうでしたか」
結絃「それの何がおかしいんだよ?単に今まで気付いてなかっただけだろ?」
603 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:29:41.68 ID:9JaJgZfq0
冠城「それが、おかしいんだよ」
「万が一自分の机に落書きされていたり、教科書がなくなっていたりしていたら」
「自分の席に戻ったり、授業に入った時に気付いていなくちゃならないんだ」
右京「ところが、川井みきのあの言葉を聞くまで、石田君はこの事を知らなかった……」
「妙だと思いませんか?」
冠城「ちなみに、彼女の証言が事実であることを島田達は認めています」
結絃「確かに、変かもしれないけど……」
八重子「それが何だって言うのよ?」
604 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:30:10.96 ID:9JaJgZfq0
右京「つまり、石田君を密かに助けていた人物がいたのです」
「恐らく、その人物が机の落書きを消し、隠された教科書を見付け、彼の机に戻していた……」
605 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:30:56.34 ID:9JaJgZfq0
結絃「こんな奴を助けてた奴がいるなんて……そんな馬鹿な事があるのか!?」
右京「世の中には、様々な方がいます」
「石田君の所業を知りながらも、助けようとする方が存在しないとは限りませんよ」
冠城「しかし問題は、その人が一体誰なのかです」
「まず最初に考えられるのは、石田君いじめに後ろめたさを感じていた、植野直花ですが……」
「石田君いじめを指をくわえて見ていることしか出来なかったそうだから、彼女の線は薄い」
右京「そこで次に考えられるのは、友達想いな性格の佐原みよこちゃんですが……」
「石田君いじめが起こるよりもずっと前から不登校になっていた彼女にも、石田君を助ける事は不可能です」
「となると、この2人は石田君を助けていた人物から、除外されることになります」
606 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:32:15.66 ID:9JaJgZfq0
結絃「何だよそれ?結局、コイツに味方した奴なんていないじゃんかよ」
「ま……まさかとは思うけど、幽霊がやったとか言うんじゃないよね?」
右京「幽霊の仕業ですか……」
「確かに、石田君の守護霊が現われたという可能性も無くはないですが………」
「それにしては、範囲が限定されています。残念ながら、その線も薄いでしょう」
結絃「は…はぁ……?」
八重子「あの……ふざけないでくれませんか?」
607 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:32:44.18 ID:9JaJgZfq0
右京「?」
「僕は、普通に考えたことを述べただけだったんですが……」
「何かおかしなところでもありましたか?」
八重子「え…?」
冠城「……………」
こんな場面でもオカルト好きを全開にする右京に結絃は困惑し、
八重子も珍しくあからさまに困惑の表情を見せた。
そんな上司に、冠城は冷ややかな視線を送っている……
608 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:36:08.13 ID:9JaJgZfq0
だが、当の本人はそんな事などお構いなしに、話しを続ける。
右京「しかし……まだ1人だけ、思い当たる人物がいます」
いと「それは、一体誰なんですか?」
右京「その前に結絃ちゃんといとさん……」
「最初に僕達がこの家に来た目的を、思い出して頂きたい」
いと「あなた達がここに来た目的?」
結絃「う、うーんと……」
そうして、特命係の2人がやって来た目的を思い出そうと、自身の記憶を探るいとと結絃。
そして……
609 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:39:53.05 ID:9JaJgZfq0
結絃「…あ!思い出した!」
「石田がいじめられてるの見て、その事を姉ちゃんに聞きに来たんだったよね?」
右京「そうです。しかし……」
「肝心なのは理由の方です。そちらも、思い出せましたか?」
結絃「あ……うん!」
「確か……姉ちゃんが、石田がいじめられてるところを見てたから………だよね?」
右京「その通り。それで?」
結絃「それで……?」
いと「何でしょうか?」
右京「何か、引っ掛かりませんか?」
いと「引っ掛かる?」
結絃「うーん……」
610 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:43:15.09 ID:9JaJgZfq0
「…………」
611 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:43:44.18 ID:9JaJgZfq0
「あれ?」
612 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:50:31.75 ID:9JaJgZfq0
右京に問われ、しばし考え込んだ結果、結絃が何かに気が付いた。
右京「どうやら、気が付いたようですねぇ……」
「そう……我々は、硝子ちゃんが石田君がいじめられている現場を覗いているのを目撃しました」
「しかも、一度だけではありませんでした。竹内に追い払われている現場などにもいたのです」
「だから僕達は、彼女の後を追ってこの家に辿り着いた……」
「僕達が今回の事件を知り、解決出来たのはある意味、硝子ちゃんの存在があったからとも言えるかもしれません」
「しかし……ここでひとつ疑問があります」
「何故彼女は、石田君の事を見ていたのでしょうか?」
「何故彼女は、石田君の現状をあなた方に話そうとしなかったのでしょうか?」
613 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:51:57.17 ID:9JaJgZfq0
「まるで、彼の事を心配していたかのようです……」
614 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:54:13.47 ID:9JaJgZfq0
結絃「…………」
「お、おいおい…ま、まさか……!」
右京「…………」
「えぇ、そのまさか……」
と言いながら右京は、硝子の前に歩み寄る。
そして、今までの会話の内容を、
手話で一通り伝えたのち、また手話を交えてこう続けた。
右京「石田君を助けていたのは、君ですね?」
615 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:54:54.80 ID:9JaJgZfq0
「西宮硝子ちゃん……」
616 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:55:44.96 ID:9JaJgZfq0
硝子「…………」
右京の一言に、西宮家・石田家双方が驚愕した。
八重子「そ……そんな馬鹿な!」
結絃「そうだよ!何で姉ちゃんが、自分をいじめた奴なんか助けないと………」
617 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 21:59:55.60 ID:9JaJgZfq0
石田「……あ!」
「自分をいじめた奴なんか助けないといけなんだよ!」
結絃がそう言おうとしたのを遮るかのように、石田が何かを思い出したかのような声を上げる。
618 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:00:50.04 ID:9JaJgZfq0
冠城「どうしたんだい?」
石田「そ、そう言えば……西宮の奴、最近俺の机掃除したり、中に手ぇ突っ込んで何かやってたんだ……」
「あれは、ひょっとして……!」
右京「…………」
「……どうやら、僕の考えは正しかったようですねえ」
619 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:01:26.28 ID:9JaJgZfq0
結絃「ちょ……ちょっと待ってくれよ!これって一体どういう事なんだ!?」
八重子「そうよ!どうして硝子が彼を助けなくちゃならないの?」
「相手は、自分をいじめた子ですよ!」
620 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:02:16.92 ID:9JaJgZfq0
右京「…………」
「『罪を憎んで人を憎まず』……という言葉は、ご存知ですね?」
「詳しく説明すると長くなってしまうので割愛しますが、簡潔に言うと」
「『犯した罪は憎むべきだが、罪を犯した本人そのものは憎んではならない』という意味のあることわざです」
「確かに硝子ちゃんは、石田君からいじめられた事自体は辛く感じていたと思います」
「しかし、それを理由に彼を恨む気はなかったという事です」
「それどころか、あの学校のいじめ問題の原因は、自分にあるのではないかとすら思っていたのかもしれません……」
621 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:04:53.27 ID:9JaJgZfq0
八重子「自分のせいだと思っていた?」
右京「今日までの間、彼女は自身の障害が周囲の人間に影響を与えてしまった現場を、何度も目の当たりにしてきたはずです」
「そのような考えに至ってしまう可能性は、充分考えられます」
「また、自身の欠点が周囲に影響を及ぼしてしまったという点は、石田君にも当てはまる部分がある……」
「そういう意味では、彼女と石田君は似た者同士だった」
「そこに彼女は、シンパシーを感じたのかもしれません」
冠城「後は島田達の思惑にも、何となく気付いていたのかもしれませんね」
622 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:05:35.14 ID:9JaJgZfq0
八重子「そ…そんな!そんな馬鹿げたことある訳ないわ!」
右京「では、本人に確かめましょう」
そう言って右京は、先程の推理の内容を一通り手話で話すと、
「僕の推理に間違いはありませんか?」と言いながら手話で尋ねた。
623 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:08:19.22 ID:9JaJgZfq0
硝子「…………」
聞かれた本人は、自分の家族の人間や石田母子の様子を確認すると、
急に石田の前まで行き、筆談用ノートを見ながら両手を差し出す。
さすがの石田も、それが筆談用ノートを渡してくれというアピールである事に気付き、
硝子にノートを手渡すと、硝子は足早に自室に入り、消しゴムと鉛筆を持ってすぐに戻って来る。
そして、まだ字を書けそうなページを開くと……
624 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:10:15.80 ID:9JaJgZfq0
「はい、そうです。ぜんぶ刑事さんの言うとおりです」
と書いて全員に見せた。
625 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:11:48.33 ID:9JaJgZfq0
八重子「しょ、硝子……!」
結絃「う…嘘だろ……?」
いと「………………」
硝子の見せた一言に、八重子と結絃は愕然とした。
あれだけ自分達が憎たらしいと思っていた、石田将也……
まさか、いじめられた当人は、真逆な事を考えていたなんて……
いとも、硝子が自分の障害が周りに影響を与えている事を思い悩んでいること自体は勘付いてはいたが、
まさかそれが、石田を助ける事に繋がっていたとは思っておらず、複雑な表情を浮かべている。
だが、一番驚いているのは、石田本人であった。
626 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:14:38.62 ID:9JaJgZfq0
石田「そ、そんな……西宮が、そんな事、思ってたなんて………」
「俺、一度も考えたこと、なかった……」
冠城「確かに……僕も、予想外だったよ」
「硝子ちゃんが君を見ていたのに、そんな意味があったなんて……」
「でも、良かったじゃないか」
627 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:15:56.09 ID:9JaJgZfq0
石田「良かった…?」
冠城「いじめられている間、君は自分に味方する人なんていない……そう思っていたんだろう?」
石田「あ…あぁ……」
冠城「けど、本当はこんなにもすぐ近くに、君の味方は存在していた」
「それだけじゃない……硝子ちゃんは、君を恨んですらいなかった」
「そして……結果的ではあるけれど、僕達をいじめ問題の存在まで導いてくれた」
「彼女の存在が、君をいじめから救ってくれたんだよ」
石田「に…西宮……」
628 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:16:45.58 ID:9JaJgZfq0
「そうなのか?」と口で言おうとしたが、相手が耳が不自由である事を思い出し、
石田は先程硝子がしたのと同じように、筆談用ノートと鉛筆と消しゴムを渡すよう頼む。
硝子は、それに応じてノートや鉛筆、消しゴムを手渡すと、石田は冠城が自分に言った事を書き、
その最後の部分に改めて「そうなのか?」と書いて、鉛筆と消しゴムごとノートを硝子に返す。
629 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:17:15.18 ID:9JaJgZfq0
硝子「…………」
すると硝子は、「はい、そうです」に加え……
630 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:18:55.80 ID:9JaJgZfq0
「私のせいで、あなたやみんなを悪者にしてしまいました……」
「ごめんなさい……」
とも書いて見せた。
631 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:19:23.43 ID:9JaJgZfq0
石田「…!」
それを見た瞬間、石田の頭の中に硝子にして来た事が蘇る。
転校して早々からかったこと……
合唱コンクールで最下位を取った事で腹を立て、散々いじめたこと……
せっかく「友達になろう」と書いて見せてくれた筆談用ノートを、池に捨てたこと……
皆と共に調子に乗って補聴器を奪って壊したりしたこと……
とにかく、色々な出来事が彼の頭の中を駆け巡り、やがてそれは罪悪と懺悔の感情へと変わっていく。
632 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:19:52.09 ID:9JaJgZfq0
石田「!」
石田は今度はバッと硝子からノートと鉛筆を取ると、ある事を書いて硝子に見せた。
それは……
633 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:20:44.08 ID:9JaJgZfq0
「違う!悪いのは俺なんだ!」
「俺は、お前の事を退屈しのぎの道具として見ていた。女とすら見ていなかった」
「お前の気持ちも考えていなかった」
「おまけに、周りの奴らがそれを喜んで……それが嬉しくて、調子に乗って、お前に酷い事をしてしまった」
「お前は悪くない、悪いのは俺なんだ!」
「俺の方が、よっぽど最低な野郎だよ!」
「だから……」
634 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:21:13.74 ID:9JaJgZfq0
「ごめんなさい!」
635 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:23:04.29 ID:9JaJgZfq0
という、彼女に対する謝罪の文章であった。
636 :
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[saga]:2018/06/06(水) 22:23:31.55 ID:9JaJgZfq0
硝子「……」
石田「ごめん……!ホント、ごめん………!!」
筆談だけでは伝えきれないと思ったのだろう、
石田はそう言いながらノートに書いた内容を見せながら、土下座した。
硝子達側からは見えなかったが、土下座している彼の目には涙が滲んでいる……
637 :
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[saga]:2018/06/06(水) 22:24:19.13 ID:9JaJgZfq0
美也子「西宮さん!」
「今……この場において、改めて謝罪させてもらいます!」
「息子が……将也が、お宅の娘さんを傷付けてしまい、誠に申し訳ございませんでした!!」
「今すぐにでも許してはくれないとは思います……」
「しかし!母として……将也の親として、息子の非礼を心からお詫び申し上げます!」
638 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:25:02.26 ID:9JaJgZfq0
「本当に……本当に申し訳ありませんでした……!!」
639 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:25:49.01 ID:9JaJgZfq0
息子に感化されたのだろう、美也子も涙ぐみながら息子の横で土下座して謝罪した。
謝罪する彼らを、硝子は優しい顔で見つめている。
彼女の祖母も母も妹も、目の前の光景をただ黙って見るしかなかった。
今まで、自分達は目の前の石田を硝子を傷付けた人物として、憎悪し続けていた。
自分達がそう思っているのだから、硝子もきっと同じだろうと、勝手に決め付けている節があった。
だが、蓋を開けてみれば事実は全くの逆であった。
硝子の考えている事を全て理解していたつもりが、
実はそうではなかった事を今この場で、思い知らされたのだ。
だからこそ、何を言えばいいのか……
どんな言葉をかければいいか、全く分からなかった。
640 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:29:08.36 ID:9JaJgZfq0
西宮一家の様子を確認すると、特命係の2人は石田の側に歩み寄り、
冠城が背中をポンポンと叩いて、顔を上げさせる。
冠城「ちゃんと、謝れたな……」
石田「あ……!」
「け、けど……こんなんだけじゃ………」
冠城「いや……今はこれでいい。今の君に出来るのは、これで精一杯のはずだから……」
石田「…………」
641 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:31:41.86 ID:9JaJgZfq0
右京「石田君……」
「今こうして君は、硝子ちゃんの真意を理解し、その罪を認めて悔いることが出来ました」
「これは、人として大きな一歩だと僕は思います」
「しかし……これで終わりではありません」
「何故なら、この事件の終わりは『新たなる試練の始まり』でもあるからです」
石田「新たなる試練の始まり……?」
642 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:32:18.81 ID:9JaJgZfq0
右京「今回の一件で、君のしたことはより多くの人間に知れ渡る事になると思われます」
「君に同情する一方で、非難する人間も大勢現れることでしょう」
「これから君は、そのような人々の目に曝される日々を送ることになる……」
「恐らくこれが、これ以上法で裁かれることのない君に与えられた、罰なのかもしれません……」
石田「俺への、罰……」
643 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:35:08.21 ID:9JaJgZfq0
右京の言葉に石田は胸が締め付けられた。
確かにそうだ……
いくら硝子が許しても、世間の人々がすぐに許すとは限らない。
先程の八重子と結絃の物言いからも、それは明らかだった。
そんな自分は、どうすればいい?
右京は、まるでその考えを見透かしたかのようにこう続けた。
644 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:35:58.85 ID:9JaJgZfq0
右京「だからこそ、硝子ちゃんの為に生きて下さい……」
「生きて……自身の罪と向き合いながら、彼女と手を取り合い、前を向いて歩き続けて下さい……」
「それが、君がこれからすべき償いです」
「硝子ちゃんも、恐らくそれを望むでしょう……」
そう言って右京は、硝子の方に目を向け、石田もそれに続いて彼女の顔を見た。
硝子は、未だ優しい顔を自分達に向けている。
645 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:36:24.18 ID:9JaJgZfq0
冠城「そうだ石田君……君は、生きるんだ」
「生きて、今度は君が硝子ちゃんを助けてあげるんだ」
「硝子ちゃんも君を助けたんだ。今度は、君の番だ」
646 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:37:51.34 ID:9JaJgZfq0
石田「け、けど……俺なんかに、そんなこと………」
冠城「なに弱気になってるんだ……」
「佐原ちゃんだって、みんなと硝子ちゃんの為に自分の出来ることをしようとしたんだ」
「結局それは、上手く行かなかったけど……」
「女の子だって頑張ろうとしたんだ、男の君が頑張ろうとしないでどうする?」
「それに、今回僕達に協力してくれた伍堂警部……」
「あの人も、僕達に作った借りを返す為に頑張ってくれたんだ」
647 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:41:19.03 ID:9JaJgZfq0
「警察官が出来たんなら、君にも出来るよな?」
648 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:42:11.43 ID:9JaJgZfq0
真摯な言葉を石田に投げ掛ける冠城。
その言葉に、石田は何も返さなかったが、自分の中で何かが動き出したのを感じ取る。
それを確認すると、特命係の2人は両家族に目を向ける。
649 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:43:01.28 ID:9JaJgZfq0
右京「我々は……これで失礼させて頂きます」
冠城「色々と、お世話になりました」
右京「ここから先は、あなた方が解決すべき事です。そこに我々が関わる余地はありません」
「なので、最後にひとつだけ言わせて下さい」
650 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:43:47.23 ID:9JaJgZfq0
「どうか、今回の出来事を忘れないで下さい……」
651 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:44:37.05 ID:9JaJgZfq0
右京は、彼らの心に刻み付けるかのように言うと、冠城と共に一礼したのち西宮家から立ち去った。
特命係がいなくなり、西宮家にはこの家に住む4人家族と石田母子だけが残された。
彼らは、お互い何と言えばいいか分からず、どぎまぎした様子を見せる。
652 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:45:26.38 ID:9JaJgZfq0
硝子「………」
だが、少しして硝子はまた石田が持つノートを取ると、あるページを開き石田に見せる。
それは、「友達になろう」と書かれたページ……
石田が、このノートを捨てる直前に見せられた、あの言葉であった。
石田「…………」
その文字をジッと見る石田。
653 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:47:14.02 ID:9JaJgZfq0
今この瞬間、石田将也と西宮硝子……
そして、石田家と西宮家の何かが変わり始めた……
654 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:48:44.68 ID:9JaJgZfq0
―水門市内―
冠城「さて……石田君、上手くやっていけますかね?」
右京「この先は、僕達にも予想が付かない事です。後は、彼らの気持ち次第ですよ」
冠城「俺達に出来るのは、あれで限界か……」
「……ん?」
その時、何やら騒がしい声が聞こえるので彼らはその方向に目を向けると、
門前にたくさんの人だかりがある水門小学校が見えた。
報道関係者だろうか?
何故、彼らが集まっているのか……
理由は、言うまでもないだろう。
655 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:49:52.64 ID:9JaJgZfq0
冠城「水田門木の思惑通りになりましたね」
「硝子ちゃんを入れた事により、この学校は一躍有名になった……」
右京「彼の望む形ではありませんでしたがねえ」
冠城「哀れなものですね」
皮肉を込めて言ってみせたのち、冠城は少し間をおいてこのような事を言い出す。
656 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:50:58.71 ID:9JaJgZfq0
冠城「右京さん……人はどうして、すぐ側にあるものに気が付かないんでしょうか?」
右京「何ですか?藪から棒に……」
冠城「今回の件に関わった人達の事思い返したら、そう感じたんですよ」
657 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:51:26.91 ID:9JaJgZfq0
「硝子ちゃんの事を思うあまり、周囲の影響を顧みる事が出来なかった八重子さん……」
「この学校の今後を思うあまり、何の準備もなく硝子ちゃんを入れる事のリスクを考えられなかった水田門木……」
「水田門木から硝子ちゃんを押し付けられた事実にばかり気を取られ、解決策を模索できなかった竹内………」
「硝子ちゃんの事ばかり考え、他の生徒への配慮が足らず、結果彼らとの間に溝を作ってしまった喜多先生……」
「佐原ちゃんという解決の糸口があった事に気付かなかった6年2組の生徒達……」
「学校側の言い分に疑念を持てなかった、美也子さんと八重子さん……」
「そして、今まで硝子ちゃんが味方している事に気が付かなかった石田君……」
658 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:53:25.99 ID:9JaJgZfq0
「とにかく、挙げ出したらキリがありませんが……」
「どれも、少しでも視野を広げれば違った見方が出来たかもしれないし、解決の糸口にもなったかもしれない……」
「なのに『どうしてみんな、それに気が付かなかったんだろう?』って思いましてね」
659 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:54:09.25 ID:9JaJgZfq0
右京「それが、人間なんですよ……」
「冠城君……もし君が、真っ暗闇の中で灯明台(とうみょうだい)の灯りを見付けるとします。そしたら君は、どうしますか?」
冠城「そりゃ、真っ暗闇ですからね。迷いなくその灯りの方に目を向けますよ」
右京「しかしその時、灯明台の下にある暗がりに警察手帳を落としてしまったら?君は、すぐに気付けますか?」
冠城「真っ暗だし、警察手帳も黒い色をしてますから、すぐには気付かないと思います」
660 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:55:59.01 ID:9JaJgZfq0
右京「そう……人間、暗闇の中で一際大きな光に目を奪われれば、その下の暗がりに隠れたものを見落としてしまう……」
「例えそれが、すぐ側にあったものであってもです」
「今回関わった方達も、それぞれ自分の目の前にある大きな光に目を奪われ、暗がりに落ちていたものに気が付かなかったという事ですよ……」
661 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:58:14.31 ID:9JaJgZfq0
「正に『灯台下暗し』です」
662 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:59:03.79 ID:9JaJgZfq0
冠城「灯台下暗し……この事件を一言で表すのに、ピッタリなことわざですね」
「俺達は、彼らの足元の暗がりに落ちていたものを拾ってあげた訳ですか」
右京「そうしなければ、この学校や当事者達はおろか」
「世間の人々もあの学校で起きた事の真実に気付かないまま、全ては灯明台の下に広がる闇に飲まれていた事でしょう……」
「今回は我々の目に留まったから良かったものの……」
「そうでなかったら、どうなっていたでしょうかねえ?」
663 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 22:59:34.85 ID:9JaJgZfq0
冠城「考えるだけでゾッとします……」
上司の問いに冠城は身震いする物真似をしながら答えた。
青木の言うように彼らは竹内の背中を見て、汚い大人に育ってしまう……
そして、将来は違う場所で同じことを繰り返してしまう……
そんな未来が思い浮かんだからだ。
今この時、冠城は最悪の事態を回避できたことを実感した。
例えこれが、日本にはびこる事件の一端に過ぎないのだとしても……
未来ある子供達に一条の光を指せたのなら、充分だろう。
一方で、不安も残る……
664 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 23:00:26.41 ID:9JaJgZfq0
冠城「しかし……生徒達や竹内、水田門木達はこれからどうするんでしょうね?」
「乗り気で罪暴いといて、こんな事を言うのもなんですけど……」
「今回の件で彼らも石田君同様、世間から冷たい視線を向けられる事になるでしょう」
「ある意味、法的な罰よりもつらい目に遭うかもしれません」
右京「彼らは、それ程の事をしてしまったということですよ……」
「自らと異なる存在を認めず、他者の罪を利用して自身の罪をなかった事にしようとした……」
「これだけでも、彼らの犯した罪は大きいと思います」
「だからこそ、彼らもこれから戦わなくてはならないのです」
665 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 23:00:59.20 ID:9JaJgZfq0
「自分自身の犯した罪と……」
666 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 23:01:39.09 ID:9JaJgZfq0
冠城「…………」
彼の言葉を聞き、冠城は悟った。
石田同様、後は彼らの気持ち次第であること……
そして、自分達に出来ることはもう何もないことを…………
667 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 23:02:32.89 ID:9JaJgZfq0
冠城「それじゃあ……帰りますか?東京に」
右京「えぇ、帰りましょう……」
役目を終えた杉下右京と冠城亘は、水門小学校に背を向け、帰っていく。
自分達が本来いるべき場所……
668 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 23:03:07.07 ID:9JaJgZfq0
警視庁特命係へ
669 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 23:03:38.46 ID:9JaJgZfq0
〜このクロスオーバーSSは、二次創作です〜
670 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/06(水) 23:04:57.45 ID:bLJ/Wy680
乙。その後のエピローグまで見たい作品です。
671 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 23:04:59.18 ID:9JaJgZfq0
以上を持ちまして、相棒と聲の形のクロスオーバーSSは完結となります。
冒頭にもありました通り、聲の形を始めとしたその他もろもろの知識が疎く、
聲の形側に小ネタを仕込むことがあまり出来なければ、誤った知識
(実際、色々とミスや矛盾をやらかしてしまいました……)
他者のSSと被ってしまう部分もあったと思いますが、それでも楽しめたというのなら幸いです……
672 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 23:05:30.85 ID:9JaJgZfq0
最後の補足ですが、
>>667
、
>>668
のくだりは、
右京さんと冠城君が聲の形の世界での役目を終えたので、
相棒ワールドへ帰還したという意味があったりします。
また、時系列がシーズン16真っ只中であるという設定から分かる通り、
高校生編を書く予定はありません。
他作者さんの作品との差別化もありますが、
想像を膨らませる余地を持たせた感じにした方がいいとも思い、
今回のような形になりました。
という訳で、特命係が関わった事で、
石田達のその後がどう変わったのかは、皆さんの想像次第でございます……
673 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/06(水) 23:06:09.13 ID:9JaJgZfq0
本作は以上となります。
しばし様子見してからHTML化の依頼を出そうと思いますので、
それまで感想等がございましたら、どうぞお気軽に……
674 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/06(水) 23:14:03.50 ID:bLJ/Wy680
残念です。高校生編見たかったです。
675 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/06(水) 23:32:18.17 ID:to6wHuB/O
佐原さんとかその後どうなったのかな。立ち直ることができたのだろうか。乙。
676 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 00:06:46.66 ID:IS4+N/Is0
丁寧に描かれて良かったとは思う
けどこんな小学生のイジメ問題に特命係が5日近くも付き合うのは時間掛かり過ぎ
こんな日数掛けなくてもすぐ硝子の補聴器を調べればいいし
それが出来なくても右京さんが小学生たちと竹内に補聴器調べると脅せばすぐに観念して自白まで持っていけるでしょ
677 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/07(木) 00:45:04.91 ID:pIIUznkt0
安価579の者です、あ、お気にさらずにあれは要望です、出来るなら書いて欲しいな程度のものですので
今回も面白かったです、丁寧に書いていると分かる作品でした
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