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相棒×聲の形「灯台下暗し」
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446 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:38:24.00 ID:od/pvmOg0
右京達「…………」
竹内の口から語られた衝撃の事実。
さしもの八重子も、この事実に目を白黒させた。
一方、それを知った右京はまた口を開いた。
右京「なるほど……そう言う事だったのですね?」
447 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:38:56.57 ID:od/pvmOg0
「硝子ちゃんの事を想うあまり、彼女がもたらす周囲への影響を顧みなかった西宮八重子さん……」
「八重子さんに嘘を吐き尚且つ硝子ちゃんを竹内先生に押し付け、その後一切の支援を行わなかった水田校長……」
「八重子さん同様硝子ちゃんを想うあまり、6年2組の皆さんへの配慮が疎かだった喜多先生………」
448 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:39:22.00 ID:od/pvmOg0
「自分の意図や硝子ちゃんの事にばかり考え、周囲に気を配れなかった大人達の行動……」
「それらの積み重ねが6年2組に圧し掛かった事が、この問題の根源……真の原因だった」
449 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:41:03.20 ID:od/pvmOg0
竹内「ようやく分かったか?そうさ、悪いのはあの校長とアイツに騙された西宮のクズ親……」
「そして、ここをきこえの教室と混同してた喜多だ!」
「コイツらが、俺のクラスに不幸を運んできたんだ!」
450 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:44:32.05 ID:od/pvmOg0
「恨むべきは俺達じゃない!校長と、自分達の不甲斐なさを恨め!!!!」
451 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:45:07.13 ID:od/pvmOg0
今まで溜め込んでいたものを全部吐き出さんと言わんばかりに竹内は叫びに近い声をあげた。
そのせいだろう、言い放った後の彼は「はあはあ」と息を切らしていた。
452 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:46:36.97 ID:od/pvmOg0
川井「そ……そうよ!」
「これは全部、喜多先生と校長先生と西宮さんと石田君のおばさんが全部悪いのよ!」
「私らは、それを押し付けられたんだわ!」
女子生徒A「確かにその通りね!」
女子生徒B「こういうのって、大体大人が悪いもんね!」
島田「確かに、西宮のおばさんが西宮を入れなければ……」
「石田のおばさんが石田のこと叱っていれば、こんな事ならなかった!」
「俺だって、石田に責任押し付けて、いじめる必要なんかなかったんだ!」
広瀬「ホント、ひでぇ話だよな!」
八重子「な…!?」
美也子と喜多「「…………」」
竹内の言葉を皮切りに、急に八重子と美也子と喜多を責め始める生徒達。
中でも特に八重子を攻めに掛かったのは、植野であった。
453 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:48:49.51 ID:od/pvmOg0
植野「ホントよ!全くもってその通りだわ!」
「西宮さんのおばさん。知らないようだから教えてあげるけどね……」
「あたしら6年2組のみんな、1年生の頃からずっと一緒だった」
「石田の悪ふざけが過ぎること以外は、問題なかった……普通だったの!」
「竹内先生は5年生の時からの担任だったけど、本当は普通の先生だったわ」
454 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:49:15.82 ID:od/pvmOg0
「けど、西宮さんが来てから、あたしらのクラスはおかしくなった……!」
455 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:50:13.14 ID:od/pvmOg0
「あたしは西宮さんの隣の席にされてから、ずっと西宮さんの世話やらされた」
「けど西宮さん、何度教えても全然分かってくれないし、竹内先生も全然助けてくれない!」
「おかげで、授業も遅れてみんなから笑われて……!」
「だからあたし、石田と一緒に西宮さんをいじめてた……」
「すると今度は、みんなが石田に全てを押し付けて、いじめだして……!」
「あたしだって、ホントは味方したかった……けど、怒られるのが怖くて、石田のせいにしちゃって……!」
「そのせいでずっと、石田がいじめられてるのを、指をくわえて見てるしかなかった……」
八重子「だ……だから、何なの………?」
456 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:50:59.54 ID:od/pvmOg0
植野「石田が……あたしらや竹内先生がこうなったのは、全部アンタのせいだって言いたいんだよ!」
「アンタが西宮さんを入れなきゃ、こんな事にはならなかったんだ!」
「それと石田のおばさん……アンタ、石田がいじめられてるの、知ってたよな?」
「毎日いじめられて、凄くボロボロになってたから」
美也子「そ、そうだけど……それが、どうしたの?」
植野「どうしたの?じゃねえよ!」
「あんだけボロボロになった石田の姿見て、アンタ助けようとか思わなかったのかよ?!」
「アンタ、石田の母さんだろ?母さんなら、いじめられた自分の子供の1人くらい助けてやれよ!」
美也子「…………」
457 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:51:25.37 ID:od/pvmOg0
植野「これも全部、アンタら大人がいい加減だったせいだ!」
「アンタらのせいで、このクラスは普通じゃなくなっちゃったんだよ!」
「だから……返せよ!普通だったあたしらのクラス返せよぉ!!!」
持てる感情を解き放つかの如く叫ぶ植野。
この次の瞬間、他の生徒達も「そうだ!」「俺達の平和を返せよ!」と口々に八重子達を攻めた。
458 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:52:26.02 ID:od/pvmOg0
八重子「…………」
自分に向かって恨みつらみを投げつけてくる生徒達……
彼らを前にして、八重子は何も言わずに立ち尽くすしかなかった。
459 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:52:52.61 ID:od/pvmOg0
硝子を強くしたい……
自分のような弱い子にしたくない……
460 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:53:23.58 ID:od/pvmOg0
その一心で弱い自分を封印し、心を鬼にして普通学校に入れてきた。
それが、硝子を強い子に育てる方法だと信じていた。
だが、目の前に広がる現実はどうだ?
まるで、硝子への対処が出来ず、苦しみ、そして自分の事を恨む人間に溢れている。
自分は今まで、こんな所に硝子を入れていたのか……
これでは、まるで………
461 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:53:58.02 ID:od/pvmOg0
八重子「…?」
その時、頬を何かが伝うのに八重子は気付く。
正体を確かめる為、指で触れてみると、それは一滴の水……
462 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:54:25.26 ID:od/pvmOg0
否、水ではない……涙であった。
463 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:56:41.42 ID:od/pvmOg0
夫一家から硝子を押し付けられて以来、捨てたはずの涙……
どうして、今になって?
理由は……今更考えるまでもない。
464 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:58:18.74 ID:od/pvmOg0
八重子「…………」
(それだけ私は、無茶ばかりしてきたって事ね……)
465 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:58:55.92 ID:od/pvmOg0
一方、植野の言葉は美也子の心にも重く圧し掛かっていた。
自分は、確かに石田の事を助けなかった……
それはあくまで、自分のような人間が声を上げても、誰も相手にしてくれないと思っていたから……
いや、それだけではない。
自分の事を心配させまいとする息子の気持ちを、踏みにじりたくないという思いがあったからだ。
466 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 15:59:27.21 ID:od/pvmOg0
しかし……今になって考えるとこれは、一種の逃げだったのではないか?
息子の気遣いに、甘えていただけだったのではないか?
批判される事を覚悟で、言い出す勇気も必要だったのではないか?
467 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:00:08.62 ID:od/pvmOg0
石田のことを叱ることも出来ず、他人の娘にも迷惑を掛け、石田いじめのことを言い出せなかった……
それでいて、学校側の言い分を鵜呑みにしてしまった自分……
美也子はまた、これまでの自分を後悔した。
468 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:00:35.11 ID:od/pvmOg0
そして、喜多も思った。
もう少し彼らの事を考えてやるべきだった……
ここは、きこえの教室があった前の学校ではない事を、今になって思い知らされる……
学校が違えば、当然生徒への対応の仕方もある程度変わって来る。
そんな事、当たり前であったはずなのに……
469 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:02:20.88 ID:od/pvmOg0
後悔に明け暮れる2人の母親と喜多……
そして、責められる母親の姿に、硝子と石田も心を痛めている。
その様子を黙って見ている4人の警察官……
少しして、右京が八重子らの前に歩む。
470 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:03:05.62 ID:od/pvmOg0
右京「では……僕からもひとつよろしいですか?」
そう言いながら、人差し指を立てる右京。
この時、八重子らは彼からも責められるのだと覚悟した。
471 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:03:43.87 ID:od/pvmOg0
右京「……………」
472 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:10:07.33 ID:od/pvmOg0
「ふざけるんじゃないッ!!」
473 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:10:48.78 ID:od/pvmOg0
生徒達「!!」
だが、右京が怒りの矛先を向けたのは、生徒達の方であった。
いきなり怒声を上げられ、驚きのあまり黙る生徒達。
そんな彼らに、右京はこう続ける。
474 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:11:50.61 ID:od/pvmOg0
右京「八重子さんのやり方に問題があったのも確かです」
「美也子さんも、勇気を出して声を上げるべきだったかもしれない……」
「水田校長や喜多先生の配慮不足も、然るべきものです」
「しかしあなた達自身はどうなのですか?!」
「例えば竹内先生!あなたは、自分の手には負えないという理由で、自身のすべきことを生徒達に押し付けた!」
「その上、石田君が助けを求めたにもかかわらず、彼の行いを盾に一切の手助けもなし……」
「これでは、水田校長と同じではありませんか…!」
竹内「……」
指差しながら竹内を非難する右京。
一方、冠城も生徒達に冷たい目を向けながらこう言った。
475 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:12:29.82 ID:od/pvmOg0
冠城「君達もだよ」
「大人達が悪いなら、初めから硝子ちゃんをいじめる必要なんてなかったはずだ」
「それなのに彼女をいじめたのは、大人達に敵う訳がないから……」
「こんなの、ただの八つ当たりだ」
「正当性の欠片もない……!」
476 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:13:11.18 ID:od/pvmOg0
川井「けど刑事さん!私は、西宮さんも石田君もいじめてません」
「今の映像で分かるでしょ?」
島田「お前!何逃げようとしてんだよ!」
川井「失礼ね。私は本当の事言ってるだけよ」
「私はあなたと広瀬君と違って、石田君の机に落書きしたり教科書盗ったりしてないもん!」
石田「え…!?」
川井の言葉に、石田は何故か今まで知らなかった事を知らされたかのように驚いている。
その様子を右京と冠城は見逃さなかったが、今は話しを続ける事を優先する。
477 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:13:56.67 ID:od/pvmOg0
冠城「………」
「君、名前は?」
川井「川井みきよ」
冠城「川井みきちゃん……君は『犯人隠避』って知ってるかい?」
「事件の犯人を故意に隠したり、庇ったりすることなんだけど……」
「そういった行為も、法律上は犯罪の一種として扱われている」
川井「だから?」
冠城「確かに君は、いじめに直接加担した事はなかったかもしれない。けど……」
478 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:14:28.24 ID:od/pvmOg0
「君は、このクラスでいじめ問題が起きていた事を把握していた」
「それを知りながら、他の子達と一緒に『硝子ちゃんいじめの犯人は石田君だ』と主張した」
「そして今さっき、島田君達の行いも暴露した」
479 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:15:00.38 ID:od/pvmOg0
川井「えぇ……」
冠城「しかし、君は今までそのことを知りながら、誰にも話さなかった……」
「その時点で君は、いじめの共犯者や犯人を隠避したことになる」
「残念だけど、これも立派な犯罪だ」
川井「そ、そんな……!私、みんなが怖かったから仕方なく……」
480 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:16:40.73 ID:od/pvmOg0
冠城「例え悪気がなかったのだとしても、法律上犯罪と認められたものは犯罪でしかない」
「手を出さなければ悪者にはならないと思ったら、大間違いなんだ」
「まず君は、それを知った方がいい……」
そして最後に冠城は、「ここにいるみんなも、同じだけどね」と付け加えた。
彼の言い分に、川井はもちろんだが、今までいじめを黙認していたであろう生徒達も絶句した。
だが、こんな中で竹内は……
481 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:17:16.44 ID:od/pvmOg0
竹内「じゃあ、どうすれば良かったっていうんだ?アンタさっき言ったよな?」
「『一度生徒として預かった以上、そう簡単に硝子を手放す事は出来ない』と…!」
「教師として西宮を手放す事が出来なかった俺には、これ以外に方法がなかったんだ!」
「大体俺がどんな状況だったのか、その現場も見た事もない癖に何を偉そうに言ってるんだか……」
「警察は、弱い奴らの味方だろう?一般教師の俺は校長の前では弱者でしかなかった!」
「裁くべきは俺への支援を怠った校長と、そんな奴に騙された西宮のクズ親ですよ!」
と言って今度は、被害者面を始めた。
482 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:18:12.72 ID:od/pvmOg0
植野「そうよ……あたしらも、西宮さんのことどうしたらいいのか、分かんなかった………」
「筆談だけじゃ、西宮さんと付き合えなかった……」
「それに、あたしら子供だよ?大人の人達にも、太刀打ちできない弱い子供なんだよ?」
「他に……他に、どうすればよかったのよ……?」
それに続き、植野も自身の胸の内を明かす。
だが、そんな彼らに4人の警察官は同情はしたものの、あまりいい顔はしなかった。
そして、まず冠城が竹内に次のような事を聞いた。
483 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:20:10.21 ID:od/pvmOg0
冠城「竹内先生……あなたは、硝子ちゃんが聴覚障害を患う女の子である事を、事前に聞かされていたんですよね?」
「だから、水田校長に反対意見を出すことが出来た」
竹内「そうですよ。だから?」
冠城「だったら、その間に聴覚障害を持つお子様との接し方を調べようと、思わなかったんですか?」
「相手が耳が聞こえないと分かっているなら、いくらでも対処法は調べられたはずですよ?」
竹内「……!」
冠城の疑問に竹内は、まるで今まで考えた事もなかった事を突き付けられたような表情を浮かべた。
だが、すぐに首を横に振ってこう返す。
484 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:21:26.46 ID:od/pvmOg0
竹内「そ、そんな時間なかったんだよ!」
冠城「それなら、水田校長が支援を行わなかった事を教育委員会に訴えるべきだったのでは?」
竹内「したところで無理だ!理事長はアイツの昔からの親友なんだ!」
「訴えたところで、庇い立てされるに決まってる!」
右京「なるほど……彼と理事長は、そのような関係でしたか」
485 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:22:42.99 ID:od/pvmOg0
冠城「けど、他にも手段はあったはずですよ」
「硝子ちゃんに配慮して、授業時間を調整するとか……」
「それでも支障が出るのだったら、八重子さんに相談するという手もあったはずですよ」
「それで彼女が聞く耳を持たなかったのなら、児童相談所に何かしらの対処を取ってもらう手もあった」
「本当に校長と八重子さんが全ての元凶だとするなら……」
「こうなる前に、自分達の状況を周囲にはっきり伝えるべきだったんじゃありませんか?」
486 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:23:08.91 ID:od/pvmOg0
竹内「………」
冠城の問いに、竹内は何も答えられなかった。
487 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:23:56.10 ID:od/pvmOg0
右京「その様子だと、今までそのような発想はなかったようですねぇ……」
「恐らくあなたは、『八重子さんや水田校長から面倒なお子様を預かった』」
「この事実にばかり気取られていた」
「それが故に、自分に何が出来るのか……どうすれば、事態を改善出来るのか……」
「それを考えるのを、すっかり忘れていた……」
488 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:25:37.57 ID:od/pvmOg0
「教師として……」
「いえ、人として恥ずべきことではありませんか?」
489 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:27:45.54 ID:od/pvmOg0
竹内「……………」
黙ったままの竹内。一方、右京はまた生徒達の方に向き直る。
490 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:28:32.64 ID:od/pvmOg0
右京「君達も同様です」
「君達も、硝子ちゃんを押し付けられた……彼女の障害に振り回された」
「その事に気を取られ、見るべきものを見落としてしまった」
植野「ど、どういう事よ?」
植野の疑問に、右京は少し間を置いてこう答えた。
491 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:29:00.75 ID:od/pvmOg0
右京「『佐原みよこ』」
「このクラスにはもう1人、そのような名前の女の子が通っていたそうですね?」
植野「!?」
不意に出された何者かの名前に、植野は驚きの表情を見せた。
しかし、その名前に反応したのは、彼女だけではなかった。
492 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:31:25.98 ID:od/pvmOg0
喜多「佐原みよこちゃん?」
右京「ご存知なで?」
喜多「えぇ……私が西宮さんの為に手話を習わせようとした時、ただ1人だけ賛成してくれた娘です」
「けど、急に来なくなってしまって……」
右京「なるほど……やはり、そういう事でしたか」
植野「ど、どういう事なんだよ?大体、何でアイツの事知ってんだよ?」
植野の問いに対し、右京は次のような事を語る。
493 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:32:26.30 ID:od/pvmOg0
右京「実は、先程の証拠映像……初めてあれを確認した際、気になる点を見付けました」
「そこの席だけ、空いていたのです」
そう言って彼は、その席を手で指し示した。
右京の言う通りその席だけ誰も座っておらず、空席である。
494 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:35:47.01 ID:od/pvmOg0
右京「それを見て僕は……」
「『硝子ちゃんに味方をした為に、不登校にされてしまった子がいるのではないか?』と考え本来、その席に座っているはずの生徒を探しました」
「結果、佐原みよこちゃんの存在に行き着いたのです」
冠城「いじめは、ターゲット本人ばかりが狙われるわけではない……」
「ターゲットを庇った人間も同様の被害に遭い、不登校になるケースも少なくないからね」
植野「そ、それで……アイツはアンタらに何って言ったの?」
何処か動揺した色を見せ始める植野の問いに対し、右京らはこう答えた。
495 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:37:37.92 ID:od/pvmOg0
右京「根気強く聞いてみましたが、余程塞ぎ込んでいたらしく、本人から直接話しを聞く事は出来ませんでした」
冠城「その代わり、お母様から話を伺うことは出来ました」
496 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:38:08.64 ID:od/pvmOg0
〜回想〜
佐原母「娘が不登校になった理由…ですか?」
右京「えぇ……何か、それらしい事を仰っていませんでしたか?」
冠城「どんな細かい事でも構わないんで……」
佐原母「いいえ……何を言っても教えてくれませんでした」
右京「学校に相談は?」
佐原母「しましたが、原因については知らないの一点張りで……」
右京「なるほど……」
冠城「ところで……彼女が不登校になったのは、いつ頃なんですか?」
佐原母「確か……5月頃だったと思います」
右京「5月ですか……」
〜回想終了〜
497 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:41:13.01 ID:od/pvmOg0
喜多「5月?それって確か、私がみんなに手話を習わせようとした頃じゃ……」
右京「では、佐原ちゃんが不登校になったのは、喜多先生の提案に乗った後のこと……」
「何故、佐原ちゃんは喜多先生の提案に乗ったのか?恐らく、硝子ちゃんと接する為だったと思われます」
「しかし、転校から1ヶ月も経っているなら、硝子ちゃんに不満を抱いていた生徒がいてもおかしくありません」
「そうなると、考えられる事はただひとつ……」
498 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:42:39.24 ID:od/pvmOg0
「硝子ちゃんと仲良くしたが為に誰かにいじめられ、心を折られてしまったという事です」
499 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:43:26.68 ID:od/pvmOg0
植野「!!!!」
右京の推理に、植野の表情が一気に青ざめる。
何故なら、佐原をいじめた犯人は他でもない、自分自身であったからだ。
だが、すぐに首を横に振って平静さを保つ。
500 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:44:04.77 ID:od/pvmOg0
植野「け、けど……自業自得じゃん!」
「西宮さんと仲良くしてたのって、ただの得点稼ぎだった訳だし……」
501 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:44:39.42 ID:od/pvmOg0
右京「…………」
「果たして、そうなのでしょうか?」
502 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:45:29.42 ID:od/pvmOg0
植野「え…?」
右京「僕は、佐原ちゃんがどんな娘なのか、お母様に伺いました」
「すると彼女は、こう答えました……」
「『気が弱い一方で、友達想いないい子であった』と……」
503 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:46:51.13 ID:od/pvmOg0
冠城「実際彼女、今年入った女の子と仲良しになった事をよく話していたそうだよ」
「おまけに、その娘の為に手話の本を買ってきて欲しとせがまれた事すらあったとか……」
右京「その仲良しになった娘と言うのは、硝子ちゃんと見て間違いないでしょう」
植野「……」
504 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:47:35.32 ID:od/pvmOg0
右京「これらの事実から、彼女がいかに本気で硝子ちゃんと接しようとしていたのかが見て取れます」
「このような娘が、そんな邪な感情で行動していたとは考えずらい……」
「そして、一番着目すべき点は、彼女が『友達想いな性格をしている』ことです」
「彼女が硝子ちゃんと仲良くしていたのなら、君達も例外ではなかったはず……」
「そう考えると、竹内先生の押し付けにより、このクラスの空気が悪くなっていたことを憂いていたことが想像出来ます」
「無論、状況を改善する手立ても考えたはずです」
「どうやれば、6年2組の生徒達と硝子ちゃんを仲良くさせられるのか?」
「子供である彼女に、竹内先生を動かすことは不可能です」
「ならば、自分の手で両者の関係を取り持つ他ない……」
「その末に行き着いたのが……」
505 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:49:39.21 ID:od/pvmOg0
「『手話を習得し、硝子ちゃんと君達の通訳者になる』」
506 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:52:42.29 ID:od/pvmOg0
「……という答えだったのではないでしょうか?」
507 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:53:27.49 ID:od/pvmOg0
植野「………」
「ちょっと、待って……」
「それって、つまり………」
「アイツは、あたしらを助けようとしてたってこと……?」
508 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:54:03.08 ID:od/pvmOg0
右京「少なくとも、僕はそう思います……」
植野「…………」
509 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:55:49.25 ID:od/pvmOg0
「け、けど……そんなの分かんないじゃん……」
「刑事さんだって、アイツと直接話したわけじゃないんだろ?」
「勝手な妄想で、決めないでよ……」
510 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:58:07.74 ID:od/pvmOg0
右京「確かに……」
「今話した事は、これまで得た情報から組み立てた、僕の想像……君の言うように、妄想でしかないのかもしれません」
「しかし、真実かどうか分からないからこそ、彼女の真意にもっと触れてみるべきだったのではないでしょうか?」
「得点稼ぎか否かは、それから決めても遅くはなかったと思いますよ?」
植野「…………」
511 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:59:18.66 ID:od/pvmOg0
右京の言葉が、植野の心に大きくのしかかった。
確かに、あの時の自分は自分の状況ばかり考えて、佐原の考えに深入りした事はなかった。
それだけではない……
自分がいじめていた硝子の気持ちも、考えた事は一切なかった。
それを考えていたのは、黙って聞いている他の生徒達も同様である。
512 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 16:59:48.41 ID:od/pvmOg0
右京「誰が佐原ちゃんの心を折ったのか……それは分かりません」
「しかし、誰かが彼女の意思を汲んであげていれば、硝子ちゃんと君達の関係は変わっていた可能性があったのは事実です」
「その可能性に君達は見向きもせず、そして知らずして状況改善の糸口を絶ってしまった……」
「実に愚かだと思いませんか?」
513 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:00:32.02 ID:od/pvmOg0
生徒達「…………」
右京のその一言に、生徒達は言い返す言葉がなかった。
彼らの様子を確認すると、右京は冠城とアイコンタクトを取り、最後の仕上げに掛かる。
514 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:00:59.78 ID:od/pvmOg0
右京「硝子ちゃん……こちらに来て下さい」
冠城「石田君も……」
硝子「?」
石田「あ…うん……」
右京は手話で、冠城には口頭でそれぞれ名指しで呼ばれ、
硝子と石田は少し困惑しながらも、言われるがままに特命係の2人の前に来る。
そして、彼らは2人を生徒や竹内の方に振り向かせる。
515 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:01:48.10 ID:od/pvmOg0
冠城「みんな……まず、石田君の顔を見てくれ」
「傷だらけだろ?」
「これは……君達のいじめで着いた傷だ」
島田と広瀬「「…………」」
冠城の言う通り島田らの暴行により、石田の顔は絆創膏とガーゼが貼られていて、とても痛々しかった。
4日前の傷はいくつかは完全に治っているものがあったものの、それでも治りきっていないものもいくつかある。
その上、頬には昨日島田に殴られた跡もあり、未だガーゼが貼られたままだ。
516 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:02:36.12 ID:od/pvmOg0
右京「次は硝子ちゃんの耳を見て下さい……」
そう言った後、右京は硝子に耳についたものをみんなに見せるよう手話で指示すると、
彼女はいう通りに補聴器を外し、右耳の耳たぶについた『それ』を生徒達に向けた。
それは、裂傷の跡であった。
517 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:03:42.27 ID:od/pvmOg0
右京「これは、石田君が彼女の補聴器を取った際に着いた傷です」
「余程、強く引っ張たのでしょう……未だ、跡が残っている」
冠城「みんな、これを見て何か思うことはないかい?」
問い掛ける冠城。だが、彼らはどう答えたらいいのか……
どうして急にこんなものを見せられているのか分からないのか、黙ったままだ。
答えに詰まる彼らに教えるかのように、特命係の2人はこう言った。
518 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:04:18.97 ID:od/pvmOg0
右京「彼らの傷は、この一連の出来事でできたものです」
「いずれも、命に別条のないものですが……」
「もし仮に、この傷が命に関わるものだったとしたら、あなた達はどうするつもりだったのでしょうか?」
冠城「それに、彼らの受けた傷は、他にもある……」
519 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:04:50.36 ID:od/pvmOg0
「それは、心の傷だ」
520 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:07:12.34 ID:od/pvmOg0
右京「いじめというのは、人の体だけでなく、心にすら深い傷跡を刻み込んでしまいます」
「石田君の顔の傷はじきに消えるかもしれませんが、逆に心の傷はそう簡単には消すことは出来ません」
「一生分の傷として、彼らの中に残り続ける……」
「そして一生分の痛みとなって、この先も彼らを苦しめる……」
「もしそうなったら……まず最初に、人間不信に陥ってしまうでしょう」
「そしていずれは……今回の事を招いたことに尾を引かせ、苦しみ、必要以上に自分自身を責め……」
521 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:08:30.12 ID:od/pvmOg0
「やがて、自らの死を選ぶでしょう……」
522 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:10:19.86 ID:od/pvmOg0
竹内と生徒達「……!」
右京の言葉に竹内と生徒達は、ハッとした表情を浮かべた。
523 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:10:46.96 ID:od/pvmOg0
右京「ようやく……分かったようですね?」
「そう……いじめというのは、時として人の命を奪ってしまうことすらある……」
「この日本で、いじめを苦に自ら命を絶った人間は、後を絶ちません」
「あなた達は、危うく2人の人間の命を……未来を奪うところだった………」
524 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:11:39.66 ID:od/pvmOg0
「それでもあなた達は、自分達は悪くない……」
525 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:12:33.17 ID:od/pvmOg0
「悪いのは周りの人間だと断じる資格が……」
526 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:13:22.54 ID:od/pvmOg0
「ありますか?」
527 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:14:11.07 ID:od/pvmOg0
竹内「……………」
生徒達「……………」
右京の問いに、反論する者は誰もいなかった。
それを確認すると、特命係の2人は伍堂警部に向き直る。
528 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:14:39.42 ID:od/pvmOg0
右京「後は、お願いします……」
冠城「すみませんね……違う所轄の、それもこんな窓際部署のわがままに付き合わせてしまって」
伍堂警部「構いませんよ。弟の手帳の件で、借りを作ったままにしておく訳にもいきませんでしたし」
「それに……」
529 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:15:05.15 ID:od/pvmOg0
「こうやって犠牲になった子供達は、数が知れませんから」
530 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:18:54.19 ID:od/pvmOg0
そう語る伍堂警部の目には、強い意志が宿っていた。
そんな彼の意思を汲んだのだろう、右京らは無言で頭を下げるとその場から立ち去った。
531 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:20:06.70 ID:od/pvmOg0
坂木「では、改めましてこの場にいる皆さん……指紋の照合にご協力願います」
「無論、生徒さん達は保護者同伴で……」
伍堂警部「西宮さんのお母さん」
「被疑者の指紋と区別を付けたいので、残る2人の家族さんにも協力して欲しいのですが……」
「構いませんか?」
532 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:20:33.01 ID:od/pvmOg0
八重子「…………」
「好きにして頂戴……」
533 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:21:08.62 ID:od/pvmOg0
伍堂警部「ご協力、感謝します」
坂木「では、行きましょうか」
竹内「…………」
生徒達「…………」
534 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:21:39.98 ID:od/pvmOg0
―西宮家―
結絃「…………」
いと「これが、お母さんの全てだよ……」
「あなた達のお母さんは……」
「八重子はね、あなた達を守る為にずっと弱い自分を隠して生きてきたんだよ」
535 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:22:09.22 ID:od/pvmOg0
結絃「…………」
「な、何だよそれ……?」
「そんな理由あったんなら、最初から一言くらい言ってくれても良かったじゃんかよ……!」
「1人で全部背負い込みやがってよ……!」
「これじゃあ……今までバカ親呼ばわりしてたのが………」
「姉ちゃん守る為に髪まで切って……男らしく振る舞ってたのが馬鹿みたいじゃんか……!」
536 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:26:09.47 ID:od/pvmOg0
いと「………………」
「ごめんなさいね……」
「本当は、最初から全部話すべきだったのかもしれない……」
「けど……怖かったのよ。本当の事をあなた達に言ってしまえば、八重子の覚悟が無駄になる……」
「それこそ、この家族が壊れてしまうんじゃないかってね……」
結絃「…………」
537 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:26:54.71 ID:od/pvmOg0
いと「けど……それは逃げてるだけだったのかもしれないね………」
「あの娘の好きにさせておけば、あなた達が私の側に来てくれる……」
「孫に頼られるのが嬉しくて……甘えていただけだったのかもしれない」
「今のことは、もっと後になって話すつもりだったけど……」
「早め話してもいい時も、あるのかもしれないね……」
結絃「………………」
538 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:27:29.48 ID:od/pvmOg0
ピリリリ!
悟るかのようにいとが語った、その時であった。
突然、電話が鳴り出した。
539 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:29:32.36 ID:od/pvmOg0
結絃「電話?」
いと「私が出るよ」
とりあえず話を中断して、いとは受話器を手に取った。
540 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:31:23.56 ID:od/pvmOg0
いと「もしもし……西宮ですが?」
坂木『岐阜県警捜査一課の坂木です』
『突然で失礼ですが、西宮いとさんですね?』
いと「はい、そうですが」
坂木『もう1人の娘さんもいらっしゃいますね?』
いと「いますけど……」
坂木『では、至急署まで来て下さい。西宮硝子ちゃんのことで、調べたいことがあるんです』
いと「…………」
「分かりました……もう1人の娘と一緒に、今すぐ向かいます………」
そう言うと、いとは電話を切った。
541 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:32:14.94 ID:od/pvmOg0
結絃「婆ちゃん、誰から?」
いと「警察の人よ。硝子のことで来て欲しいって……」
結絃「姉ちゃんのことで?何かあったのか!?」
いと「分からないけど……とにかく、行きましょう」
結絃「うん!」
542 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:33:05.77 ID:od/pvmOg0
―水門小学校 校庭―
冠城「後は、岐阜県警が上手くやってくれるでしょうね」
右京「えぇ……」
「しかし、我々がすべき事はまだ残っています」
冠城「教育委員会理事長の所に行くんですね?」
右京「先程の事を確かめなければなりませんからねえ」
543 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:34:09.82 ID:od/pvmOg0
冠城「けど、その前にひとつ聞かせて下さい」
「硝子ちゃんの右耳に傷が残ってるなんて、どうやって知ったんですか?」
右京「補聴器は、その人に合った形のものが使用されています」
「石田君が、それを無理に外したのだとしたら、耳の一部に裂傷が生じる可能性が高い」
「無理に補聴器を取られ、消えない傷が残ったという事例はない事はありませんからねぇ……」
「もっとも、実際に気付いたのは、昨日硝子ちゃんに会った時でしたが」
544 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:34:50.01 ID:od/pvmOg0
冠城「何と言うか……もうさすがとしか言いようがありません」
右京「疑問も解消したところで、行きますよ」
冠城「えぇ、行きましょう!」
545 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/05(火) 17:36:58.65 ID:od/pvmOg0
あれから数時間後……
いとと結絃を交えた上で、6年2組の人間全員の指紋の採取が行われ、補聴器の指紋と照合が行われた。
その結果、案の定西宮家と石田以外の6年2組の生徒数名の指紋と一致。
動かぬ証拠を突き付けられ尚且つ右京に心をへし折られた事もあり、
生徒達は硝子いじめに関与した事や黙認したこと……
石田にその事を押し付け、いじめていた事を素直に認めた。
動機は、概ねこれまでの話通りであった。
石田の硝子いじめに便乗したり黙認したりしたのは、竹内の押し付けや合唱コンクールで最下位を取った事で、
硝子に対するストレスと恨みが積もった事や、彼女と関わり合いになりたくなかったからであった。
石田に責任を押し付けたのも、彼の硝子いじめで硝子が耳を負傷し、
女子生徒が保健室に運び込む事態が起こったのを見て、自分達がその事を咎められるのを恐れたのと、
島田のような黙認組が無理矢理付き合わされそうになった事に怒ったのが動機であった。
同時に植野は、硝子だけでなく、彼女に味方していた佐原みよこをいじめていた事実も告白した。
竹内も、証拠映像を再度見せられた上で、自分の行いを全て認めたのだった。
それを聞かされた生徒の保護者達は当然ながら、彼らの行いを怒った。
中には、彼らを止めなかったことを含めて、竹内を責める親も少なくはなかった。
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