相棒×聲の形「灯台下暗し」

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378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:30:30.72 ID:od/pvmOg0
右京「あなたも、彼ら同様石田君が梢子ちゃんをいじめている事実を把握していたんですよね?」

「それなのに何故、こんな事になったのでしょうか?」

「このクラスで一番の力を持っているのは、担任であり大人でもあるあなたです」

「あなたがもっと積極的に動いていれば、石田君を止める事は出来たでしょうし……」

「生徒達もそれに便乗し、石田君を止めるよう動けるようになったはずだと思います」

「なのにどうして……?」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:30:57.66 ID:od/pvmOg0
竹内「な、何言ってるんですか?」

「私は石田が西宮をいじめているのを、何度も注意しました。それでも彼は止めなかったんです!」

右京「それは確かですか?」

竹内「えぇ…職員室にいた他の教員……」

「例えば、そこにいる喜多先生が見ているはずですよ!」

喜多「え!?」


いきなり竹内に指をさされ、喜多は少しばかり驚く。
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:34:14.33 ID:od/pvmOg0
右京「喜多先生……それは本当ですか?」

喜多「えっと……」


「………あ!」


「そ、そう言えば確かに、竹内先生が石田君に何か言っているところを見たことがあります」

右京「なるほど……あなたが見たと仰るのなら、そうなのでしょう」


納得の言葉を発する右京に、竹内の表情は一瞬緩んだが……
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:35:43.82 ID:od/pvmOg0
右京「しかし竹内先生。あなたが彼にしたという『注意』ですが………」

「本来この言葉は、他者が犯した誤りを指摘する行為を指します」

「いわば、口頭による忠告……その場で仲裁するのとは、わけが違う」

「石田君は普段からお母様に叱られた事がなく、無茶をすることも多かったそうです」

「そのような子が、口で忠告しただけで止められるとは思えません」

「そうなると、別の手段が考えられたはずです」

「例えば、石田君の行動を頻繁に監視し、硝子ちゃんに手を出しそうであれば阻止するか……」

「お母様に、石田君が問題行動を止めない事を相談するか……」

「とにかく、止める手段はいくらでもあったはずなんです」

「しかし聞いてみれば、石田君のお母様はあなたの電話を受けるまで、息子さんが硝子ちゃんをいじめていた事を知らなかったそうですし……」

「あなたご自身の口からも、注意したという言葉は出ても直接的に止めたといった表現は出てきていない」

「つまり………」
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:36:49.69 ID:od/pvmOg0



「あなたは、石田君のいじめそのものを止めるのに、消極的だった事が認められるんですよ」


383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:39:25.09 ID:od/pvmOg0
竹内「!」


右京の指摘に竹内は表情を曇らせたが、それでも引き下がらない。


竹内「そ……そんなのデタラメだ!」

「大体、何の得があって、そんないい加減な事しなくちゃならないんです?」

右京「それは、硝子ちゃんいじめの原因に、思い当たる節があったからです」

「2人のお母様に全ての事実を伝えなかったのも、それが大きく絡んでいる……」
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:40:52.61 ID:od/pvmOg0
竹内「え…?!」

美也子「それは、どういう事ですか?」

八重子「そうよ!硝子がいじめられた原因を知ってるのに、どうしてその事を隠す必要があるの?!」


当然の疑問を投げ掛ける2人の母親。

彼女らに対し、右京は少し間を置いてある事を問う。
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:41:19.24 ID:od/pvmOg0
右京「お二人は、硝子ちゃんいじめが起こった原因は何だと思いますか?」

美也子「そ、それは……」

八重子「石田君が硝子の障害を馬鹿にしたからに決まっているじゃないですか!」

右京「確かに……それもあると思います」

「しかし、石田君に共犯者がいたとなると、原因はそれだけではなかったと思われます」

八重子「それだけじゃない?」


首を傾げる八重子。それは美也子も同様だ。

そんな彼女らに対し、右京はこう続ける。
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:41:57.73 ID:od/pvmOg0
右京「仮に石田君の共犯者がここにいる生徒達だったと考えると、その理由は何なのか?」

「石田君と思想が一致したからと考えるのが自然ですが……」

「そう考えると、何の理由があってその様な思想を抱くに至ってしまったのかという疑問が生じます」

「そこで考えられるのが、『硝子ちゃんが難聴であり、それが元で確執が生じた』と言うものですが……」

「それだと、また別の疑問が生じます」


そこまで言いながら、右京は竹内の方を向き直し……
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:42:40.02 ID:od/pvmOg0
右京「何故、竹内先生がいながらこんな事になったのかです」

「通常、教員は障害を持つお子様とそうでない子が衝突しないよう、障害のあるお子様への理解を深めるよう配慮しなければならなかったはず……」

「しかし、現にこのクラスでは、硝子ちゃんへのいじめが発生している……」

「教員が場を取り持っていれば、起こり得ない事態です」

「これは、どうしてなのでしょうかねぇ……?」


わざとらしい喋り口調で、右京は竹内に疑問を投げつけた。
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:43:16.27 ID:od/pvmOg0
竹内「今度は何を言いたいんですか?」

右京「…………」


疑問を投げ掛ける竹内。

そんな彼に対し、右京は唐突に手を使ったジェスチャーを見せる。
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:43:44.76 ID:od/pvmOg0
竹内「な……何ですか?」

右京「なるほど、そうですか……」

竹内「だ、だから……何なんですか?!」

右京「今のは手話なのですが……」

「竹内先生……あなた、手話の知識がありませんね?」
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:44:13.66 ID:od/pvmOg0
竹内「……………」

「当たり前じゃないですか。普段から、西宮のような子と接する機会もありませんでしたし……」

「そもそも、西宮は筆談で会話していました。出来なくても問題ない」
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:44:55.93 ID:od/pvmOg0
右京「確かに、硝子ちゃんは筆談でコミュニケーションを取っていたそうですが……」

「筆談は手話のような高度な知識を必要としない反面、文字を書く作業を挟むが故、互いの意思を表示するまでに時間が掛かるという欠点がある」

「場合によっては、手話を用いた方が効率よくコミュニケーションを取れる場面があったはずです」

「硝子ちゃんはどちらかというと、手話での会話が得意な娘です。その上、筆談用ノートも紛失したようですからねぇ……」

竹内「……………」
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:46:02.76 ID:od/pvmOg0
右京「ちなみに、今のは『この手話、分かりますか?』と言う内容だったのですが……」

「それを理解する事が出来ず、尚且つ障害のある子と接する機会もなかったというあなたが」

「硝子ちゃんに対応しきれるものなのでしょうかねぇ……?」

竹内「は…!」


その瞬間、竹内は右京にはめられた事に気付くが、それももう後の祭り……

彼の反応を右京は見逃さない。


美也子「刑事さん、どういう事なんですか?」

八重子「そうよ!さっさと説明して頂戴!」
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:46:29.26 ID:od/pvmOg0


説明を求める2人の母親に対し、右京は「事件の全容は、恐らくこうです」と言って、いよいよ事件の核心に迫る推理を始める。

394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:47:09.69 ID:od/pvmOg0
右京「八重子さんの意向により、硝子ちゃんはこの学校に転校し、このクラスの生徒となった」

「ところが、竹内先生は硝子ちゃんに対応する術を持たなかった。そんな彼にとって、硝子ちゃんは重荷でしかない……」

「しかし一度生徒として預かってしまった以上、そう簡単に手放すことは出来ません。それこそ、職務放棄を咎められる危険性がある」

「自身が西宮硝子と言う重い荷物から逃れるには、荷物持ちが必要だった」

「そこで彼が取った行動は、6年2組の生徒達に硝子ちゃんの世話を任せる事でした」

「生徒が他の児童にフォローを入れることは違法ではない」

「それどころか、健常な子供達が障害あるお子様を手助けしていると言う構図が出来上がる……」

「そうする事で、『自分は何のダメージを負わないまま、硝子ちゃんから逃れられる』と考えたのでしょう……」

竹内「…………」
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:48:43.32 ID:od/pvmOg0
右京「しかしそれは、生徒達も同様でした」

「彼らも普通学級の人間であるが故に、障害あるお子様へ対応する術を持たなかったのです」

「そのような人間が、果たしてまともに授業を受ける事が出来るでしょうか?」

「常識的に考えて、難しいと思います」

「そこで本来ならば、教師が対策を取るところですが、硝子ちゃんと関わりたくなかった竹内先生は現状維持を貫いた」

「障害を持つお子様と対応出来ず、教師からの助けも得られない……」

「このような状況に、彼らは酷くストレスを感じたはずです」

「その最中、石田君は硝子ちゃんを頻繁に手を出し、日に日にそれが悪質な方向へエスカレートしていった」

「梢子ちゃんの世話でストレスを感じていた彼らは、それを見てどう思ったでしょうか?」

「恐らくは………」
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:49:13.53 ID:od/pvmOg0



「『石田君がストレスの元凶に制裁を与えてくれている』」


397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:50:03.67 ID:od/pvmOg0
「そう感じたと思います」


そう言いながら生徒達に目を移す右京。
彼に目を向けられた生徒達は、全員焦った様子で目を反らした。

一方美也子は、何かに気付いたのか「ま、まさか……!」と声を上げる。
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:50:49.86 ID:od/pvmOg0
右京「そのまさか……」

「こうして彼らは、いつしか石田君の硝子ちゃんいじめを肯定し、共謀するようになったのです」

「共謀しなかった生徒も、硝子ちゃんいじめを見て見ぬふりをしていたと考えられます」

「一方、自分達の行いがバレた時の事も考えたはずです」

「ストレスの発散が出来たところで、事が明らかになればそれこそ大きなダメージを負う事になる……」

「それから逃れるには、『誰か』に自分達の罪と責任を持って行ってもらう他ありません」

「その誰かと言うのが……」
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:51:32.57 ID:od/pvmOg0
と言って右京は、石田に目を向ける。


右京「石田君、君だった…」

石田「…………」
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:52:05.04 ID:zmfi6qkR0
相棒とひぐらしのクロス書いてた人か?
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:52:18.11 ID:od/pvmOg0
右京「君は、彼らよりも先に硝子ちゃんに手を出し、それでいて積極的にいじめていた……」

「責任を押し付けられても、文句は言えないだろうと彼らは踏んだのでしょう」

「そしてそれは、竹内先生も同じだった……」

「万が一、石田君の硝子ちゃんいじめが外部に漏れれば、硝子ちゃんの世話を生徒達に押し付けた事が芋ずる式で明らかになる可能性があった」

「そうなれば、教師として大きなダメージを負う事は免れません。退職させられるかもしれないとも、考えたのでしょう」

「そう……これこそが、竹内先生が石田君を止めるのに消極的で、あなた方保護者に全ての事実を明かさなかった理由です」

「しかし、口先の忠告だけで石田君が止まるはずがなく、事態は深刻化……」

「そこで彼が最後に取った手段が、石田君に犠牲になってもらう事でした」

「石田君が全て悪い事にしてしまえば、梢子ちゃんやいじめ問題への対応の不備を有耶無耶に出来る……」

「そう考えたのでしょう」
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:52:51.46 ID:od/pvmOg0

冠城「そして、彼らの目論見は見事成功……」

「校長もあなた方も、石田君一人が犯人だと信じてしまった」
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:54:58.18 ID:od/pvmOg0
美也子「そ、それじゃあ!私達は……」

八重子「コイツらの隠蔽に協力してしまったってことなの!?」

右京「結果的に言うと……」
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:56:28.16 ID:od/pvmOg0



「そうなります」


405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:56:55.14 ID:od/pvmOg0
八重子と美也子「「!!」」


右京の言葉に愕然とする2人の母親と、彼の推理に焦りの色を隠せないでいる竹内。

そんな竹内に、美也子は問う。
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:57:24.22 ID:od/pvmOg0
美也子「た、竹内先生……今の話し、本当なんですか?」

竹内「そ……それこそデタラメだ!」

「大体、証拠は?証拠はあるんですか?」

「警察なら、証拠を見せて下さいよ!証拠を!!」

冠城「…………」

「なんて言ってますが……どうします?」
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:57:50.05 ID:od/pvmOg0
右京「これだけ証拠の提出を望んでいるのです……見せてあげて下さい」

冠城「分かりました」

竹内「な…!?」


特命係の2人のやり取りに、竹内は心底驚く。

それを気にせず、冠城は懐からスマホを取り出した。
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:58:38.64 ID:od/pvmOg0
冠城「皆さん……今から流す映像をしっかり見ていて下さい」


そう言って、冠城は昨日青木に撮らせた映像を流した。

教科書の朗読を硝子に指示する竹内の姿や、授業の事で硝子に手を上げ、悪魔と罵る植野の姿……

そして、彼女の行いを側で見て笑ったり、無視したりしている川井や生徒達の姿が映った、あの映像を……
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:59:33.41 ID:od/pvmOg0
竹内「…………!」

植野「……………!」


一連の映像を見て、竹内と植野らの顔が青ざめた。
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:00:33.25 ID:od/pvmOg0
冠城「これは、昨日俺が同期の奴に無理矢理撮らせたものですが……」

「これ、どういう事なんでしょうかねぇ?」

伍堂警部「竹内先生……あなたは、硝子さんが耳が不自由で声を発するのも難しい身である事は、把握済みだったはずだ」

「なのに何故、教科書の朗読を指示したんですか?」

右京「君も、随分と手荒い真似をしていたんですねぇ……」

植野「………」

坂木「ちなみにこれ、無編集である事は鑑識課が確認済みです」

竹内「……………」
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:01:06.26 ID:od/pvmOg0
右京「それと、疑わしい物は他にもあります」


そう言いながら、右京は懐からビニールに入れられたある物を取り出した。

それは、昨日岐阜県警に鑑定に出した、壊れた補聴器……


八重子「それは……!どうして、あなたが?」

右京「実は昨日、あなたや硝子ちゃんが出掛けている間に、いとさんから借りさせてもらったもので……」


右京が八重子の疑問に答えた後、今度は伍堂警部が口を開く。
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:01:54.65 ID:od/pvmOg0
伍堂警部「この事からもお分かりの通り、この補聴器は西宮硝子さんの所持品です」

「我々岐阜県警は、こちらのお二人の頼みを受け、これを鑑識課に調べさせました」

「その結果、奇妙な事実が判明しました」

八重子「奇妙な事実って…?」

伍堂警部「西宮さん……あなたのお宅は、あなたと梢子さんを含めた4人家族だと聞きましたが、間違いありませんか?」

八重子「もちろんですけど」

伍堂警部「なるほど……」

「では、この補聴器には少なくとも、あなた方家族4人とこれに手を出した石田将也さん……」

「計5種類の指紋が付着していなければなりません」
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:02:38.63 ID:od/pvmOg0
坂木「ところが鑑定の結果、この補聴器には5種類以上の指紋が付着しているそうなんですよね」

伍堂警部「ちなみに、内ひとつは硝子さんの指紋である事は確認済みです」

右京「おやおや…それは妙ですねぇ……」

「耳の不自由な硝子ちゃんにとって、補聴器は生活に必要なもの……」

「それを何の理由もなく外出先で外し、身内以外の人間それも複数に触らせたとは考えずらい」

「これは、どういう事なのでしょうかねぇ?」

生徒達「…………!」


右京の問い掛けに生徒達は、何も言えなかった。

まさか、補聴器が今も残っていてそれを調べられるとは思わなかったのだろう。
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:04:26.55 ID:od/pvmOg0
右京「……………」

「いずれにせよ、ここにいる皆さんの指紋を調べれば、分かることです」

伍堂警部「そう言う訳です……この場にいる皆さん全員、指紋の採取にご協力願えませんか?」

竹内「ちょっと待って下さい!私達もですか!?」

伍堂警部「当然でしょう。学校内で破損させられたのです……あなた方教員が、破損させた可能性がないとは言い切れません」

右京「特に竹内先生、あなたには十分動機がありますからねぇ……」

竹内「いいえ!私は西宮の補聴器の破損には、一切関与していません!」

右京「それは本当ですか?」

竹内「えぇ!」

右京「絶対にですか?」

竹内「絶対です!」

右京「そうなんですかねぇ……?」

冠城「本当は硝子ちゃんの事で色々あったせいで腹が立って、つい……なんて事あるんじゃありません?」

竹内「ふざけないで下さい!私はそんなこと断じてやっていない!」

「他の生徒の指紋がちょっと付いていたというだけで、疑うのは止めてもらいたいものですね!」
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:06:22.92 ID:od/pvmOg0
右京達「……………」


と竹内が言った途端、急に4人の警察官は睨むように彼に視線を集中させた。
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:06:57.97 ID:od/pvmOg0
竹内「な……なんですか?」

右京「竹内先生……あなた今、なんと仰いましたか?」

竹内「『疑うのは止めてもらいたいものですね!』」

右京「そのひとつ前」

竹内「………」

「『他の生徒達の指紋がちょっと付いていただけで……』ですが?」

右京「………………」

「竹内先生、あなた……」
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:07:25.31 ID:od/pvmOg0



「何故この補聴器に、石田君以外の生徒の指紋が付着していると分かったんですか?」


418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:09:09.26 ID:od/pvmOg0
竹内「え…?」

冠城「俺達、確かに西宮さん一家と石田君以外の指紋が付着しているとは言いましたが……」

「それがこのクラスの生徒のものである事はおろか、子供の指紋であるという事すらまだ言っていないんですよ?」

右京「この場において、生徒さんの指紋が付着している事を知る人物は限られます」

「実際に手を出した本人とそれを目撃した人物……」

「どうしてあなたは、犯人と目撃者しか知り得ない情報を知っているのですか?」
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:09:53.50 ID:od/pvmOg0
竹内「そ、それは…あなた達が彼らを疑うから……!」

伍堂警部「いくら疑わしいからと言って、照合もなしにその指紋が彼らのものだと断定する事は我々にも出来ません」

「いじめとは関係ない別の誰かが、何かの偶然で触れたものであるという可能性も僅かながら残っているんですよ」

冠城「つまりあなたは、我々が生徒さん達に疑いを掛けているというだけの理由で、石田君以外の生徒の指紋が付着していると決め付けたわけですか」

坂木「さっきまで、生徒さんを庇ってた人のする事とは思えませんね」

竹内「……!」


4人の警察官に畳み掛けられる竹内。

その時、彼は気付いた。
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:10:53.35 ID:od/pvmOg0



『またしてもはめられた』と……


421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:11:19.93 ID:od/pvmOg0
竹内「……………」

右京「竹内先生……そろそれ、全部話してくれませんか?」

冠城「黙っているだけ、立場が悪くなるだけですよ」


特命係の2人に自供を促される竹内。

すると、竹内は……
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:11:58.47 ID:od/pvmOg0
竹内「まさか……撮られていたばかりか、二度もこんな手に引っ掛かってしまうなんて………」

「なんて間抜けなんだか!」

右京「お認めになるんですね?」

竹内「えぇ……全部、あなたが話した通りですよ!」

「私は……いえ、俺は西宮をどうしたらいいか分からなかった!」

「彼女の事があまりにも手に余ったから、生徒にそれを押し付けた!」

「そしたら、石田の西宮いじめが悪化して、生徒達も協力するようになった……」

「その事を咎められるのが嫌で、石田に全部押し付けたんです!」
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:13:00.99 ID:od/pvmOg0
右京「やはり、そうでしたか……」

冠城「他にも、何かありますかね?」
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:13:28.50 ID:od/pvmOg0
竹内「…………」

「そこにいる島田が中心になって、石田と西宮両方をいじめていました」

「けど俺は、これ以上関わるのが嫌だったから、止めなかった……」
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:15:06.74 ID:od/pvmOg0
島田と広瀬「「……」」


竹内は島田達が石田をいじめ、硝子いじめを継続させていた事実も暴露した。

これに八重子と美也子は驚きを隠せなかった。


八重子「今度は、コイツらが……硝子を!?」

美也子「それじゃあ……将也がいじめられていたのは……」

冠城「硝子ちゃんいじめの報復ではない……」
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:15:34.63 ID:od/pvmOg0



「彼らの責任の押し付けの一環として、いじめられていたんです」


427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:16:02.42 ID:od/pvmOg0
美也子「!!!!」


目の前に突き付けられた事実に、美也子はショックを受けた。

今まで、信頼して息子のことを預けていた学校……

それが、ここまでずさんな対応を取っていたなんて……

この瞬間、美也子の水門小学校に対する信頼は、音を立てて崩れ落ちた。

そして、もっと早く気付いていれば……と後悔した。
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:20:00.29 ID:od/pvmOg0
一方、この学校への信頼が崩れ落ちたのは、八重子も同様であった。


八重子「教師の癖に、人様の娘がいじめられているのを見て見ぬふりしてたなんて……」

「アンタ最低ね!」

竹内「最低だと……?」

八重子「えぇ、最低よ」

「アンタだけじゃない……アンタらガキどももよ!」

「今までの学校もそうだったけど、普通学校ってアンタ達みたいなクソみたいな奴らしかいないのかしら?」

竹内「俺達がクソだと……?」
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:20:26.84 ID:od/pvmOg0


「ふざけるな!」

430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:21:31.64 ID:od/pvmOg0
八重子「はあ?」


突然声を荒げる竹内に、八重子が首を傾げる。

彼女の様子に竹内は、まるで無知な人間を見るような目を八重子に向けながら問い掛ける。
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:22:00.00 ID:od/pvmOg0
竹内「西宮の母さん……何故彼女を、西宮をこの学校に入れた?」

八重子「そんなの決まっているでしょ!強い娘に育ってもらう為です!」

竹内「つまりアンタは、自分の子供が育てばそれで良かった……」

「他はどうなっても構わなかったってことか?」

八重子「な、何を言ってるの?!」

竹内「アンタがしたのはそれだけ勝手だってことだよ!!」

八重子「勝手ですって!?」
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:23:35.51 ID:od/pvmOg0
竹内「あぁそうだよ!」

「アンタ、普通学校に障がい者を入れると、周囲にどれだけ負担がかかるのか……」

「どれだけの確執が生まれるのか、一度も考えた事ないだろ!」

「仮に、自分が手の付け方がわからない人間をいきなり差し出されてみろ?」

「アンタ、そいつのお守りがちゃんと出来るのか?」

八重子「無理に決まってるでしょう!」

竹内「そう、無理なんだ!俺の置かれた状況はまさにそれだったんだ!」

「こんな手の掛かるガキを押し付けやがって……!」

「障がい者だからって、どんなに迷惑かけてもいいと思ったら大間違いだぞ!」
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:24:47.01 ID:od/pvmOg0
八重子「あ、アンタ!硝子の事何も知らない癖に、よくそんな口が利けるわね……!」

竹内「あぁ、知らねぇよ!俺は……」

「いや、俺達はアンタの家族でも何でもない!赤の他人だ!」

「そんな奴らの所に、普通と違うガキ放り込んだところで理解されないなんて、入れる前から分かるだろ!」

「それともアンタは、一度でもそう言う事を考えて西宮を学校に入れた事があるのか?!」

八重子「そ…それは……」


竹内の問いに、八重子は自分でも驚くほど動揺した。

昨日、いとに言われた事がまた頭の中を過ったからである。
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:25:13.79 ID:od/pvmOg0
八重子「…………」

竹内「ほら……やっぱりそうだ!」

「結局アンタは、自分の子供だけが良ければそれでいいような、自分勝手な馬鹿親だったんだ!」
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:25:42.64 ID:od/pvmOg0



「俺達がクソなら、アンタはクズだよ!!」


436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:26:14.54 ID:od/pvmOg0
八重子「……!」


竹内に罵倒され、更に動揺の色を見せる八重子。

そしてまた頭の中を過る、いとの言葉……
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:33:37.24 ID:od/pvmOg0


『所詮彼らは赤の他人……自分達さえよければ、他人の事情はどうだっていい』


『硝子の事を理解出来る人間がいなければ、どんなに硝子を強い娘に育てようと望んでも無意味……』

438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:34:04.93 ID:od/pvmOg0
まさか、ここにきてその言葉の意味を実感させられるとは、さしもの彼女も思ってみなかった。

そんな中、竹内の怒りの矛先は美也子にも向けられる。
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:34:50.64 ID:od/pvmOg0
竹内「それと石田の母さん!」

「どうして日頃から石田を叱らなかった?」

「アンタがちゃんと叱っていれば、石田はこんな厄介事起こさなかった!」

「2人揃って出来の悪いガキを入れやがったもんだ!」

「子も子なら親も親だよなあ?」

美也子と八重子「「…………」」


竹内に罵倒され、2人の母親は何も言い返すことが出来なかった。

彼の豹変ぶりに、喜多は動揺する。
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:35:17.87 ID:od/pvmOg0
喜多「た、竹内先生!いくら何でも言い過ぎじゃ……」

竹内「フン!そんな事が言えた立場じゃない癖に何を言うか!」

喜多「ど、どう言う事です?」

竹内「どう言う事だあ?そんなのアンタが一番良く知ってるだろ!」

「アンタ、やたらと西宮の事をひいきしてたよな?」

「俺や生徒達が、アイツのせいで苦しい思いをしていたと言うのに……!」

喜多「け、けど……私がしっかりしないと、西宮さんが可哀想だから………」

竹内「西宮が可哀想だと思うなら、彼女への対応の仕方も分らず、四苦八苦している俺達も可哀想と思わなかったのか?」

「おまけに、俺が何度も警告したにもかかわらず、西宮を校内の合唱コンクールに入れて……」

「おかげで、6年2組は最下位という大恥!そのせいで、俺のクラスは余計ギスギスした空気になった!」

「その上、生徒達に無理矢理手話なんか教えようとして……」
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:35:45.10 ID:od/pvmOg0
喜多「…………」

竹内「アンタがした事は、俺のクラスを余計滅茶苦茶にしただけだ!」

「西宮の事ばかり考えて、俺達に対する配慮は一切無し……」

「そう言う点においては、アンタも西宮のクズ親と同類だ!」


今までの鬱憤を晴らさんと言わんばかりに、喜多をこき下ろす竹内。

そんな彼に対し、喜多も痛いところを突かれたと言わんばかりに、何も言い返せなかった。
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:36:13.26 ID:od/pvmOg0
八重子「け……けど、この学校は障がい者を受け入れる学校なんでしょ!?」

「これじゃあ話が違うじゃないの!」

「ふざけるのもいい加減にしなさいよっ!!」


だがここで、八重子は何とかして反論してみせた。

今、言い放った通り、八重子がこの学校に硝子を入れる事を決めたのは、
この学校が障がい者を受け入れる所があると、『ある人物』から聞かされたからであった。

だが、それを聞いた竹内はと言うと……
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:36:43.95 ID:od/pvmOg0
竹内「はあ?」

八重子「はあ?じゃないわよ!私はね、校長先生からそう聞かされて、それで硝子をここに……」


ここに硝子を入学させる事を決めるに至った理由を説明する八重子。

しかし、それを聞いた竹内は、またしても無知な人間を見るような目で
今度は「ふふふ……」と不気味に含み笑う。
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:37:15.72 ID:od/pvmOg0
八重子「何がおかしいのよ!?」

竹内「…アンタ、本気でそんな事信じてたのか?」

「本当に馬鹿な奴だ!」

「けど、おかげでようやく分かったよ……」

「あの校長が何を考えて俺にこんな事をしたのかが……!」

八重子「…?」

冠城「それ……どういう意味ですか?」


冠城に聞かれると、竹内は警察官4人にも無知な人間を見るような目を向ける。


竹内「アンタ達も哀れなもんだな。自分達が、トカゲの尻尾切りに利用されたとも知らないで……!」

坂木「僕達がトカゲの尻尾切りに利用されてるだって?」
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:37:41.38 ID:od/pvmOg0
竹内「あぁ、そうさ…!」

「この学校は、障がい者を受け入れた事なんて一度もない普通の学校だ!」

「そこの喜多が、前の学校できこえの教室の教師をやってた事があったらしいが……」

「それは前の学校の話……ここではただの音楽教師だ」

「そうだよ……ここには、障がい者用の教室もサービスもありゃしない!」

「大体俺はな、西宮がこのクラスに入ると聞かされた時、校長に反対したんだ」

「『耳の聞こえない子供の世話なんて、俺には出来ない』とな!」

「だがあの校長は、『もう既に決めた事だから、どうしようもない』とか言って、俺に西宮を押し付けて来やがった!」

「その後も俺は、西宮の事でアイツに抗議を続けた……」

「だがアイツは、『西宮を預かった君が何とかすべき事だろう』と言って、全く取り合わなかったんだ!」

「アンタ達をけし掛けたのも、俺を悪者にして自分のした事を有耶無耶にしようと考えたんだろうよ!」

八重子「……!」
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:38:24.00 ID:od/pvmOg0
右京達「…………」


竹内の口から語られた衝撃の事実。

さしもの八重子も、この事実に目を白黒させた。

一方、それを知った右京はまた口を開いた。


右京「なるほど……そう言う事だったのですね?」
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:38:56.57 ID:od/pvmOg0


「硝子ちゃんの事を想うあまり、彼女がもたらす周囲への影響を顧みなかった西宮八重子さん……」


「八重子さんに嘘を吐き尚且つ硝子ちゃんを竹内先生に押し付け、その後一切の支援を行わなかった水田校長……」


「八重子さん同様硝子ちゃんを想うあまり、6年2組の皆さんへの配慮が疎かだった喜多先生………」


448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:39:22.00 ID:od/pvmOg0
「自分の意図や硝子ちゃんの事にばかり考え、周囲に気を配れなかった大人達の行動……」

「それらの積み重ねが6年2組に圧し掛かった事が、この問題の根源……真の原因だった」
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:41:03.20 ID:od/pvmOg0
竹内「ようやく分かったか?そうさ、悪いのはあの校長とアイツに騙された西宮のクズ親……」

「そして、ここをきこえの教室と混同してた喜多だ!」

「コイツらが、俺のクラスに不幸を運んできたんだ!」
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:44:32.05 ID:od/pvmOg0


「恨むべきは俺達じゃない!校長と、自分達の不甲斐なさを恨め!!!!」

451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:45:07.13 ID:od/pvmOg0
今まで溜め込んでいたものを全部吐き出さんと言わんばかりに竹内は叫びに近い声をあげた。

そのせいだろう、言い放った後の彼は「はあはあ」と息を切らしていた。
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:46:36.97 ID:od/pvmOg0
川井「そ……そうよ!」

「これは全部、喜多先生と校長先生と西宮さんと石田君のおばさんが全部悪いのよ!」

「私らは、それを押し付けられたんだわ!」

女子生徒A「確かにその通りね!」

女子生徒B「こういうのって、大体大人が悪いもんね!」

島田「確かに、西宮のおばさんが西宮を入れなければ……」

「石田のおばさんが石田のこと叱っていれば、こんな事ならなかった!」

「俺だって、石田に責任押し付けて、いじめる必要なんかなかったんだ!」

広瀬「ホント、ひでぇ話だよな!」

八重子「な…!?」

美也子と喜多「「…………」」


竹内の言葉を皮切りに、急に八重子と美也子と喜多を責め始める生徒達。

中でも特に八重子を攻めに掛かったのは、植野であった。
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:48:49.51 ID:od/pvmOg0
植野「ホントよ!全くもってその通りだわ!」

「西宮さんのおばさん。知らないようだから教えてあげるけどね……」

「あたしら6年2組のみんな、1年生の頃からずっと一緒だった」

「石田の悪ふざけが過ぎること以外は、問題なかった……普通だったの!」

「竹内先生は5年生の時からの担任だったけど、本当は普通の先生だったわ」
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:49:15.82 ID:od/pvmOg0


「けど、西宮さんが来てから、あたしらのクラスはおかしくなった……!」

455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:50:13.14 ID:od/pvmOg0
「あたしは西宮さんの隣の席にされてから、ずっと西宮さんの世話やらされた」

「けど西宮さん、何度教えても全然分かってくれないし、竹内先生も全然助けてくれない!」

「おかげで、授業も遅れてみんなから笑われて……!」

「だからあたし、石田と一緒に西宮さんをいじめてた……」

「すると今度は、みんなが石田に全てを押し付けて、いじめだして……!」

「あたしだって、ホントは味方したかった……けど、怒られるのが怖くて、石田のせいにしちゃって……!」

「そのせいでずっと、石田がいじめられてるのを、指をくわえて見てるしかなかった……」

八重子「だ……だから、何なの………?」
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:50:59.54 ID:od/pvmOg0
植野「石田が……あたしらや竹内先生がこうなったのは、全部アンタのせいだって言いたいんだよ!」

「アンタが西宮さんを入れなきゃ、こんな事にはならなかったんだ!」

「それと石田のおばさん……アンタ、石田がいじめられてるの、知ってたよな?」

「毎日いじめられて、凄くボロボロになってたから」

美也子「そ、そうだけど……それが、どうしたの?」

植野「どうしたの?じゃねえよ!」

「あんだけボロボロになった石田の姿見て、アンタ助けようとか思わなかったのかよ?!」

「アンタ、石田の母さんだろ?母さんなら、いじめられた自分の子供の1人くらい助けてやれよ!」

美也子「…………」
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:51:25.37 ID:od/pvmOg0
植野「これも全部、アンタら大人がいい加減だったせいだ!」

「アンタらのせいで、このクラスは普通じゃなくなっちゃったんだよ!」

「だから……返せよ!普通だったあたしらのクラス返せよぉ!!!」


持てる感情を解き放つかの如く叫ぶ植野。

この次の瞬間、他の生徒達も「そうだ!」「俺達の平和を返せよ!」と口々に八重子達を攻めた。
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:52:26.02 ID:od/pvmOg0
八重子「…………」


自分に向かって恨みつらみを投げつけてくる生徒達……

彼らを前にして、八重子は何も言わずに立ち尽くすしかなかった。
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:52:52.61 ID:od/pvmOg0


硝子を強くしたい……


自分のような弱い子にしたくない……

460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:53:23.58 ID:od/pvmOg0
その一心で弱い自分を封印し、心を鬼にして普通学校に入れてきた。

それが、硝子を強い子に育てる方法だと信じていた。


だが、目の前に広がる現実はどうだ?


まるで、硝子への対処が出来ず、苦しみ、そして自分の事を恨む人間に溢れている。

自分は今まで、こんな所に硝子を入れていたのか……

これでは、まるで………
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:53:58.02 ID:od/pvmOg0
八重子「…?」


その時、頬を何かが伝うのに八重子は気付く。

正体を確かめる為、指で触れてみると、それは一滴の水……
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:54:25.26 ID:od/pvmOg0


否、水ではない……涙であった。

463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:56:41.42 ID:od/pvmOg0
夫一家から硝子を押し付けられて以来、捨てたはずの涙……

どうして、今になって?


理由は……今更考えるまでもない。
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:58:18.74 ID:od/pvmOg0


八重子「…………」

(それだけ私は、無茶ばかりしてきたって事ね……)

465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:58:55.92 ID:od/pvmOg0
一方、植野の言葉は美也子の心にも重く圧し掛かっていた。

自分は、確かに石田の事を助けなかった……

それはあくまで、自分のような人間が声を上げても、誰も相手にしてくれないと思っていたから……

いや、それだけではない。

自分の事を心配させまいとする息子の気持ちを、踏みにじりたくないという思いがあったからだ。
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 15:59:27.21 ID:od/pvmOg0


しかし……今になって考えるとこれは、一種の逃げだったのではないか?

息子の気遣いに、甘えていただけだったのではないか?

批判される事を覚悟で、言い出す勇気も必要だったのではないか?

467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:00:08.62 ID:od/pvmOg0
石田のことを叱ることも出来ず、他人の娘にも迷惑を掛け、石田いじめのことを言い出せなかった……

それでいて、学校側の言い分を鵜呑みにしてしまった自分……


美也子はまた、これまでの自分を後悔した。
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:00:35.11 ID:od/pvmOg0
そして、喜多も思った。

もう少し彼らの事を考えてやるべきだった……

ここは、きこえの教室があった前の学校ではない事を、今になって思い知らされる……

学校が違えば、当然生徒への対応の仕方もある程度変わって来る。

そんな事、当たり前であったはずなのに……
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:02:20.88 ID:od/pvmOg0
後悔に明け暮れる2人の母親と喜多……

そして、責められる母親の姿に、硝子と石田も心を痛めている。


その様子を黙って見ている4人の警察官……

少しして、右京が八重子らの前に歩む。
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:03:05.62 ID:od/pvmOg0
右京「では……僕からもひとつよろしいですか?」


そう言いながら、人差し指を立てる右京。

この時、八重子らは彼からも責められるのだと覚悟した。
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:03:43.87 ID:od/pvmOg0



右京「……………」


472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:10:07.33 ID:od/pvmOg0







「ふざけるんじゃないッ!!」






473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:10:48.78 ID:od/pvmOg0
生徒達「!!」


だが、右京が怒りの矛先を向けたのは、生徒達の方であった。

いきなり怒声を上げられ、驚きのあまり黙る生徒達。

そんな彼らに、右京はこう続ける。
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:11:50.61 ID:od/pvmOg0
右京「八重子さんのやり方に問題があったのも確かです」

「美也子さんも、勇気を出して声を上げるべきだったかもしれない……」

「水田校長や喜多先生の配慮不足も、然るべきものです」

「しかしあなた達自身はどうなのですか?!」

「例えば竹内先生!あなたは、自分の手には負えないという理由で、自身のすべきことを生徒達に押し付けた!」

「その上、石田君が助けを求めたにもかかわらず、彼の行いを盾に一切の手助けもなし……」

「これでは、水田校長と同じではありませんか…!」

竹内「……」


指差しながら竹内を非難する右京。

一方、冠城も生徒達に冷たい目を向けながらこう言った。
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:12:29.82 ID:od/pvmOg0
冠城「君達もだよ」

「大人達が悪いなら、初めから硝子ちゃんをいじめる必要なんてなかったはずだ」

「それなのに彼女をいじめたのは、大人達に敵う訳がないから……」

「こんなの、ただの八つ当たりだ」

「正当性の欠片もない……!」
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:13:11.18 ID:od/pvmOg0
川井「けど刑事さん!私は、西宮さんも石田君もいじめてません」

「今の映像で分かるでしょ?」

島田「お前!何逃げようとしてんだよ!」

川井「失礼ね。私は本当の事言ってるだけよ」

「私はあなたと広瀬君と違って、石田君の机に落書きしたり教科書盗ったりしてないもん!」

石田「え…!?」


川井の言葉に、石田は何故か今まで知らなかった事を知らされたかのように驚いている。

その様子を右京と冠城は見逃さなかったが、今は話しを続ける事を優先する。
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:13:56.67 ID:od/pvmOg0
冠城「………」

「君、名前は?」

川井「川井みきよ」

冠城「川井みきちゃん……君は『犯人隠避』って知ってるかい?」

「事件の犯人を故意に隠したり、庇ったりすることなんだけど……」

「そういった行為も、法律上は犯罪の一種として扱われている」

川井「だから?」

冠城「確かに君は、いじめに直接加担した事はなかったかもしれない。けど……」
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