相棒×聲の形「灯台下暗し」

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24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:00:05.47 ID:YOGuTys40
そんな事がありつつも、2人は少女の尾行を続けた。

尾行の末、彼らは一件のマンションに辿り着く。
彼女の入っていったマンションを前に、冠城が「ここがあの娘の家ですか…」
と呟く一方、右京はマンションに向かって歩き出す。


冠城「あ、ちょっと待って下さいよ!」


自分を置いて先に進む上司の後を、冠城は急いで着いて行く。
彼らが向かったのは、マンションの管理人室。

そこで、マンションの管理人と対面する。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:01:20.06 ID:YOGuTys40
管理人「私が管理人の者です」

右京「どうも…警視庁特命係の杉下右京です」

冠城「冠城亘です」


特命係の2人は、名乗りながら警察手帳を管理人に見せた。


管理人「警察の方が、ウチに何のご用で…?」

右京「実は、お会いしたい方がいらっしゃいましてねぇ……」

管理人「お会いしたい方?どちら様で?」

右京「こちらのマンションに、『西宮さん』と言う方は住んでいらっしゃいますか?」

管理人「西宮……えぇ、確かに住んでますよ。何か、御用で?」

右京「大した事ではありません。少し、確認したい事があるだけです」

冠城「何はともあれ、西宮さんのお宅に案内してくれませんか?」

管理人「分かりました」


こうして、特命係の2人は西宮家の前に案内された。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:02:02.73 ID:YOGuTys40
管理人「こちらです」

右京「どうもありがとう……」

冠城「今回の事は、我々が本部に直接お伝えしますので、後はお任せ下さい」

管理人「分かりました。どのような事情があるのか知りませんが、お仕事頑張って下さい」


そう言い残して、管理人は立ち去った。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:02:41.91 ID:YOGuTys40
冠城「……さて、そろそろ話してくれませんか?」

右京「何をですか?」

冠城「とぼけないで下さい」

「何で急に、あの娘を尾行しようなんて話しになったんです?」

「おまけにあの娘の名前……いつ知ったんですか?」

「俺達、まだ一度もあの娘と会ってないはずなんですが」

右京「実は、先程あの少年の様子をあの娘が覗いているのが見えましてねぇ……」

「彼女が何か知っているのではないかと思ったんです」

「その上、胸のところに名札をしていました。名前はそこから…」

冠城「本当に細かい所に目が行きますね」

「とはいえ……目の付け所はいいと思いますよ?」

「隠し事をしようとしている人や被害者本人をつつくより、目撃者に当たった方が情報を得られる確率は高いですからね」

右京「分かったのならば、行きますよ」

冠城「はい」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:03:20.36 ID:YOGuTys40
ピンポーン!

一通り話しを終えると、特命係の2人は西宮宅の呼び鈴を鳴らす。
すると、1人の老婆が玄関の扉を開けて顔を出す。

この家に暮らす少女の祖母『西宮いと』である。


いと「はい?」

右京「西宮さんですか?」

いと「そ、そうですが…あなた方は?」

右京「東京の警視庁から来ました、特命係の杉下右京です」


伍堂刑事の時と同じ要領で名乗りながら警察手帳を見せる右京と、
それに続いて「冠城です」と名乗る冠城。

唐突な警察官の訪問に、いとは目を丸くした。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:12:06.85 ID:YOGuTys40
いと「あの…警察の方が、どうして?」

右京「お宅にいらっしゃる娘さんに、用がありましてねぇ…」

冠城「もう学校も終わってる時間ですし、戻られていますよね?」

いと「え、えぇ…しかし孫に何のご用が?」

右京「大した事ではありません。少し、お話しを聞きたいもので…」

いと「とにかく、外で立ち話も何ですので、中へどうぞ…」

右京「お心遣い、感謝します」

冠城「お邪魔させて頂きます!」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:13:32.70 ID:YOGuTys40
いとに案内され、西宮宅に上がり込む特命係の2人。
すると今度は、黒髪のショートヘアーのボーイッシュな出で立ちの少女が待っていた。

少女の3歳年下の妹『西宮結絃』である。


結絃「婆ちゃん、その人達誰?」

いと「警察の方よ。ウチの娘に用があるみたいなのよ」

結絃「それって……ひょっとしてオレ?」

右京「残念ながら違います。君より3歳くらい年上の娘の方で……」

結絃「それって姉ちゃん?」

冠城「そんな所だね……」

結絃「それじゃあ、オレ呼んでくるから、その間そこで婆ちゃんと一緒に待ってなよ」


結絃はそう言って姉を呼びに向かっていった。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:14:21.26 ID:YOGuTys40
いと「やれやれ、気が早いね……」

冠城「いえ…むしろ大助かりですよ」

右京「それにしても、随分とボーイッシュなお孫さんですねぇ…」

いと「おや…ゆずが女の子だと分かるんですか?」

右京「えぇ……」

「髪も短く服装も男性的で、パッと見た感じ男の子に見えますが」

「目元や唇、顔の輪郭等に少女としての特徴が見えたものでして……」

いと「これはまた、随分と細かいところに目を付けたこと……」

右京「そういう所を気にしてしまう性分でして……」

冠城「しかし…あの娘、あれですよね?今時で言うその、僕っ娘……的な、そういうのですよね?」

いと「………」


冠城の言葉に、いとは何故か表情を曇らせた。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:15:50.68 ID:YOGuTys40
いと「それだけなら、まだ良かったんですがね……」

冠城「え…?」

いと「何でもありません。こちらの事です……」

「ゆずが、もう1人の孫を連れて来るまで居間の方で待っていて下さい」


こうして特命係の2人は居間に案内され、自家製のしそジュースを振る舞われる。
それから少しすると、ショートボブカットの少女が結絃の手で彼らの前に連れて来られる。

彼女こそ、暴行を受けた少年を見つめていた少女だ。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:16:35.33 ID:YOGuTys40
結絃「ほら、これがお姉ちゃんに用事がある刑事さんだよ」

右京「どうも初めまして。特命係の杉下右京です」

冠城「冠城亘です」

少女「…………」


自己紹介をする特命係の2人に対し、
少女は何も喋らず、代わりに両手で何かしらのジェスチャーを見せた。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:17:46.91 ID:YOGuTys40
冠城「?」

結絃「刑事さん、手話分かんないかな?」

冠城「ごめんね…こう言う子とは、筆談でしか会話した事なかったから……」

「ちなみに…何て言ってたの?」

結絃「『始めまして、私の名前は西宮硝子です』だよ」

右京「西宮硝子ちゃんと言うのですか…」

冠城「硝子ちゃんは、喋る事も出来ないんですね」

いと「全く喋れない訳ではありません」

「しかし、生まれ付き耳が不自由だったことが祟って、正しい声の出し方が分からないもので……」

結絃「だからさ、刑事さん達には悪いけど、オレが通訳やるから、お姉ちゃんに何聞きたいのか話してくれない?」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:18:48.20 ID:YOGuTys40
右京「その必要はありませんよ」

結絃「え?」


予想外の答えに結絃はキョトンとする。

そんな彼女をよそに、右京は硝子の前に立ち目線を合わせると、
笑顔を浮かべながら手話で


「僕は特命係の杉下右京。あちらにいるのは、冠城亘君…」

「今日は、君にお話しがあってここに来ました」


と伝える。

極々自然に手話を使う右京の姿に結絃は驚いた。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:19:17.10 ID:YOGuTys40
結絃「す、凄い!刑事さん、手話出来るの?」

右京「彼と違い、いかなる相手ともコミュニケーションを取れるよう、必要最低限のスキルは身に着けているもので……」

冠城「右京さん……今、さり気なく僕の事けなしませんでした?」


と冠城は突っ込んだが、右京は無視して手話で硝子との会話を始める。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:22:58.86 ID:YOGuTys40
右京「硝子ちゃん……今から僕の質問に、正直に答えて下さい。いいですね?」


手話を交えながらの指示に梢子は「分かりました」と手話で伝える。


右京「今日、君の通っている学校でいじめられている男の子を見かけました」

「君は、その男の子の事を心配そうに見ていましたね?」


右京の問い掛けに、硝子は少し表情を濁しながら「はい…」と手話で答えた。


右京「一体彼は何故、あんな事になってしまったのですか?

「彼の事を見ていた君なら、何か事情を知っていますよね?」


更なる質問を掛ける右京。
だが、硝子は複雑そうな表情を浮かべ、手話をやる手が止めてしまう。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:25:20.64 ID:YOGuTys40
誤字がありました…

×手話をやる手が止めてしまう。→〇手話をやる手を止めてしまう。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:25:57.33 ID:YOGuTys40
いと「おや…どうしたんだね?」

硝子「………」


中々その先を話そうとしない硝子。
その様子は、心を痛めているように見える。

一方、右京の手話を見ていた結弦は、何かに気付いたかのように右京にある事を聞く。


結絃「刑事さん……横から悪いけど、そのいじめられていた男の子ってどんな奴だった?」

右京「そうですねぇ…黒く、ボサボサした髪をしていて、少しばかりつり目な印象受けました」

結絃「ボサボサ頭のつり目……」


「もしかして……『石田』かな?」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:26:25.86 ID:YOGuTys40
右京「石田?」

結絃「石田将也……お姉ちゃんをいじめてた野郎さ」

「ひょっとして刑事さん達、お姉ちゃんが学校でいじめられた事、調べてるの?」

右京「はいぃ?」


結絃の言葉に、右京らは疑問の表情を浮かべた。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:27:28.36 ID:YOGuTys40
結絃「違うのか?」

右京「確かに、僕達が調べているのは、あの学校で起こっているいじめの事ですが…」

冠城「僕達は、男の子がいじめられている事実を確認しようと、硝子ちゃんに話を伺いに来ました」

「だから、硝子ちゃんがいじめられていたという話しは、初耳です」

右京「一体、どういう事なのでしょうか?差し障りがなければ、お教え頂けませんか?」

いと「えぇ…」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:27:58.80 ID:YOGuTys40
そう言っていとは、事の経緯を語り始める。


梢子があの学校の6年2組へ転校したのは、今年の4月頃……

その時は、特にこれと言った異変はなかったのだが、6月頃から何かがおかしくなり始めた。
硝子がずぶ濡れで帰ってきたり、筆談用に持たせたノートや靴を紛失したり……
挙句の果てには補聴器の紛失と故障が8回、それに伴って耳を負傷するという事態が発生。
そこで硝子と結絃の母親が、学校側を問い質したのだという。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:30:06.53 ID:YOGuTys40
いと「そこで開かれた生徒会で、石田君が犯人である事が判明したんだそうです……」

右京「そうでしたか…」

冠城「しかしその石田君、どうして硝子ちゃんをいじめたんですかね?」

「8回も補聴器に手を出すなんて、さすがにやり過ぎだと思いますよ」

結絃「決まってんじゃないか。お姉ちゃんが耳悪いから、その事バカにしてたんだよ!」

「オレも、アイツが姉ちゃんの補聴器捨ててるとことか見たし!」


結絃の一言に特命係の2人は、硝子の身に何が起きたのか大体把握できた。

人は、自分と大きく異なるものを見ると、
珍しがってちょっかいを出したり、排除しようとしたりするもの。

要するに、石田は硝子の聴覚障害をネタに彼女をいじめていたのだろう。

そう思う一方で、右京の脳内に『ある疑問』が渦を巻き始める……
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:31:02.30 ID:YOGuTys40
いと「ゆず……落ち着きなさい。その事はもう終わったんだから………」

結絃「け、けど……」

冠城「終わったって?」


結絃をたしなめるいとの一言に、疑問を呈する冠城。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:31:28.41 ID:YOGuTys40
???「ただいま」


その時であった。1人の女性が部屋にこの家に入ってきたのである。
彼女こそ、梢子と結絃の母親である『西宮八重子』だ。


結絃「……!」

いと「おや八重子、今日は随分と早かったねぇ」

八重子「今日は色々とあってね…あら?あなた達は?」

右京「どうも…警視庁特命係の杉下です」

冠城「冠城です…諸々の事情があって、お邪魔させてもらっています」

八重子「ふーん……?」


特命係に対して無関心そうに振舞う八重子であったが、硝子がこの場にいる姿を見て顔色を変える。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:33:39.45 ID:YOGuTys40
八重子「硝子!アンタ、宿題は終わったの?」

硝子「あ……ぅ………」

八重子「その様子だとまだなようね。さっさと部屋に戻りなさい!」

冠城「あ…あの、奥様?僕達、彼女に用事がありましてね……」

八重子「うるさいわね!アンタ達には関係ないことよ!」

結絃「ちょっと母さん!この刑事さんの話しも聞いてやりなよ!」

八重子「アンタもうるさいわね!」

「大体、何で警察がウチに上がってるのよ?ウチは、何もやましい事やってないわよ!」

「ほら硝子!部屋に戻りなさい!」


そう怒鳴り散らした末、八重子は硝子を無理矢理自室に引っ張っていった。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:34:31.83 ID:YOGuTys40
結絃「クソ!アイツめ……!」

いと「これ、ゆず……」

「刑事さん、娘の八重子が不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません……」

冠城「いやいやいや!不快だなんてとんでもない!」

右京「いきなり上がり込んだのは、事実ですからねぇ…早々に退散させてもらいます」

「硝子ちゃんも、少しばかり話すのを躊躇っている様子でしたし、無理強いは出来ません」

「また、日を改めてお伺いします……」

いと「え、えぇ…」


こうして、申し訳なさそうないとを背に、特命係の2人は西宮宅を後にする。

その後、いとは心配そうに……

結絃は恨めしそうに……

それぞれ違う表情で、母親に無理やり連れていかれた
硝子の部屋の扉を無言で見つめるしかなかった。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:38:39.60 ID:YOGuTys40
―水門市内―


冠城「まさか、あなたに手話の心得まであったとは驚きです」

「あなたの事ですから、耳の不自由な人間が関わった件がいくつかあってもおかしくないとは、思っていましたが……」

「その手の方と直接会話する術を、きちんと持っていたんですね?」

右京「かくいう君は元はキャリア官僚だったんですから、手話のひとつくらいは出来なくてはならないと思うんですがねぇ……」

冠城「申し訳ありませんね。あなたと違い、幽霊やプリキュアに関心を持てる程の多趣味性がないものでして……」

右京「冠城君……前者はともかく、後者はあの時の捜査に必要だったから調べただけであって、大して興味があった訳ではありませんよ」

冠城「大して興味がないのなら、シールになっている人物が何のアニメのキャラクターなのか特定するのに、結構時間が掛かるはずです」

「しかし、俺の記憶が正しければ、あなたは写真に映ったあのシールを見てから」

「あのキャラクターがプリキュアである事を特定するのに、あまり時間が掛からなかったような気がするんですが……」

「そこのところ、どうなんです?」

右京「…………」


冠城の問いに、右京は何も答えなかった。

黙秘を実行した上司に、冠城は先程けなされた仕返しが出来たような気分になるが、
「まあ、その事はともかく……」と言って気持ちを切り替える。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:40:45.45 ID:YOGuTys40
冠城「右京さんはどう思いました?硝子ちゃん達のお母様の態度……」

「確かに唐突に上がり込んだのは俺達だし、2人の刑事2人がいきなり上がって来たと知ったら」

「最初のお婆様みたく自分達が疑われてるんじゃないかと勘ぐってしまうのは、まあ分かりますが……」

「だからといって、あんなに言うことないと思いませんか?」

右京「確かにあまりにも辛辣ではないかと、僕も思います。ただ……」

冠城「ただ?」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:41:15.03 ID:YOGuTys40
右京「あのお母様からは、何かしらの『意思』を感じました」

冠城「意思ですか?」

右京「ご本人は、厳しい顔のままでいるつもりだったようですが、僕には彼女の目から強い意思が宿っているように見えました」

「それが何なのか、現段階では見当が付きませんが、障害を持つお子様がいらっしゃる家庭です。何か複雑な事情があってもおかしくはない……」

冠城「ああいう家庭は、デリケートな面が多いですしね」

「ただ、それなら何で硝子ちゃんは、あの学校に通ってるんでしょう?」

「あの水門小って学校、見た感じ普通の学校ですよね?」

右京「その点も気になりますが、今重要なのはそちらではありません」

冠城「あの少年の事ですね」


冠城の言葉に右京は「えぇ…」と答えると、こう続ける。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:44:53.76 ID:YOGuTys40
右京「この一連の調べで、あの子の身に起きた出来事の背景が少しずつ見えてきました」

「結絃ちゃんの話しが正しければ、あの少年の名前は石田将也……当初彼は、西宮硝子ちゃんをいじめていた」

「最初はただちょっかいを出しているだけだったのか、それとも始めからいじめに相当する行為だったのか……」

「いずれにせよ、石田君は硝子ちゃんが難聴である事を理由に嫌がらせを行った」

「その行為が積みに積み重なり、とうとう彼女の補聴器を8度に渡って故障・紛失させ、その上耳を負傷させる事態にまで発展させてしまった」

「恐らく、昼間彼の担任と思われる方が言っていたのは、この事を指していたのでしょうねぇ……」

冠城「この事から石田君は硝子ちゃんをいじめた事で、クラス内から報復を受けている可能性が高い。」

「となると、あれは石田君の自業自得と言う事になりますが……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:47:01.88 ID:YOGuTys40
右京「そうだった所で、あのようなやり方が許されると思いますか?」

「それに、今日我々が知ったのは、硝子ちゃんと石田君がいじめを受けていたと言う大まかな事実だけ……」

「詳しい状況を把握した訳ではありません」

「硝子ちゃんいじめの報復と断定するのは、あまりにも早過ぎる」

冠城「俺達、まだ石田君本人に話を聞いていませんしね」

「それに、『もう終わった』という西宮さん達の言葉も気になるし……」

「……ん?」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:48:11.87 ID:YOGuTys40
その時であった。噂をすれば何とやらか、向こうの道を昼間見た少年……
即ち、石田将也がトボトボ歩いている姿を特命係の2人は発見する。

昼間の暴行の跡である、顔の絆創膏が相変わらず痛々しい。

そんな印象を彼らが抱いていると、石田は一件の店に入っていく。

それは『HAIR MAKE ISHIDA』と書かれた看板がある床屋であった。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:48:56.37 ID:YOGuTys40
冠城「HAIR MAKE ISHIDA(ヘアメイクイシダ)……」

右京「恐らく、ここが彼の自宅でしょう。そして、看板にイシダとあると言う事は……」

冠城「やはり、彼が石田将也君で間違いない…」

右京「…冠城君」

冠城「何ですか?」

右京「至急、今夜泊まる宿を探して下さい」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:50:25.60 ID:YOGuTys40

「東京に帰るのは、まだ少し先になりそうです」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:53:14.44 ID:YOGuTys40

冠城「了解……」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:55:42.03 ID:YOGuTys40
1日目(第1話)はここまでになります。
次回は、石田周りを攻めて行きます。

以下は補足


その1.伍堂圭三。

本作のオリジナルキャラクターです。名前の元ネタは特にありません。
当初は伍堂啓介にする予定でしたが、広瀬啓介と被るので現在の名前に変更したという経緯があります。
ちなみに彼、今後もストーリーに絡んできますのでお忘れなく。

その2.水門小学校の校長。

聲の形公式のキャラクターですが、原作アニメでは名無しの権兵衛でした。
当SSでは、名前が無いと少し不便かなと思い、勝手に名前を追加させてもらいました……
ちなみに、水田門木と言う名前にこれと言った元ネタは無く、
水門小学校の水門の響きから適当に着想したものです。

それと、右京さんが手話できるのはシーズン5元日スペシャルで披露された公式設定です。
また、聲の形側の月数はネットで調べた考察を参考にしているので、
原作と違うかもしれません事をご了承ください……
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:56:16.26 ID:YOGuTys40
とりあえず、今日の更新は以上です。
今後、不定期に更新していく予定でございます。

初投稿ゆえに色々と不慣れなところがありますが、どうぞよろしくお願いします…
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/21(月) 19:17:10.46 ID:Mny47cvFO
乙。別の人が同じネタを使っていたけどどう変わっていくのか気になりますね。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/27(日) 11:51:51.01 ID:1GsLvrze0
>>59
遅ればせながら……

問題はそこなんですよね……
一応、冠城時代設定にするなど差別化は図ってはいるのですが、ちゃんと出来ているかどうか……

とはいえ、既に一通り書き溜めてあるし、一度投下しちゃった以上、最後までやらせて頂く所存ではあります。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/27(日) 11:53:22.33 ID:1GsLvrze0
改めて見てみると細かいミスが……

>>23

×冠城「けど…何であの娘、ベルの音に気付かなかったんでしょうか? → 冠城「けど…何であの娘、ベルの音に気付かなかったんでしょうか?あれだけ鳴らされたら、普通誰だって気が付くのに……」
あれだけ鳴らされたら、普通誰だって気が付くのに……」

>>51

×冠城「この事から石田君は硝子ちゃんをいじめた事で、クラス内から報復を受けている可能性が高い。」→ 冠城「この事から石田君は硝子ちゃんをいじめた事で、クラス内から報復を受けている可能性が高い」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:56:05.69 ID:1GsLvrze0
そして、続きです。

今回不快な話が出てくるので、苦手な方はご注意を……
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:56:44.37 ID:1GsLvrze0
相棒×聲の形 〜2日目〜


翌日の朝……

西宮宅では硝子は朝食を終え、服を着替えて学校に行く時間になっていた。


硝子「………」


だが、硝子は1人気乗りしない表情を浮かべている。
そんな彼女が自身の脳裏に浮かべているのは、昨日いじめられたり、
教師に突き放されたりしていた石田の姿……

そして、その事を調べに来た右京の顔であった。


八重子「硝子!学校に行く準備は出来たの?!」


それを遮らんと言わんばかりに、怒鳴るような声と共に八重子が姿を現す。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:57:13.85 ID:1GsLvrze0
八重子「もう出来てるじゃないの!早く行きなさい、遅刻するわよ!」

硝子「………」

八重子「何よその顔は!あの事はもう終わったのよ?」

「そんな顔をしてると、またあのクソガキに舐められるわよ!」


娘の表情に苛立つような表情を浮かべる八重子は、彼女の腕を無理矢理引っ張り、玄関へ連れて行く。
それを結絃は見逃さない。


結絃「母さん!ちょっとは優しくしてやれよ!」

八重子「うるさいわね。ほら!行きなさい硝子!」


反論しようとする結絃を無視して、八重子は硝子を押す。
八重子の強い押しに硝子は素直に従うしかなく、学校へと出掛けて行った。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:57:40.01 ID:1GsLvrze0
八重子「さて…私も早く仕事に行かなくちゃね」

「母さん!私がいない間結絃を甘やかさないで頂戴」

結絃「ちょっと…婆ちゃんはオレらのこと甘やかしてなんか……」


バタン!

だが、結絃の言葉を無視して、八重子も仕事に出て行ってしまった。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:58:52.22 ID:1GsLvrze0
結絃「またシカトかよ!」

いと「ゆずや、仕方ないよ……」

「それに、石田君の事ももう終わったんだから………」

結絃「石田の事……か」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:00:11.58 ID:1GsLvrze0
いと「……どうしたんだい?」

結絃「いや、昨日の刑事さんの言ってた事が少し気になってさ」

いと「石田君がいじめられている……確かそんな事言ってたねぇ」

結絃「アイツがいじめられようが、知った事じゃないけどさ…」

「『何でそれを、刑事さんが調べてるんだろ?』って思って……」

「しかも、姉ちゃんがそれを見てたっていうし……」

「一体、何が起きてるっていうんだ?」

いと「…………」

結絃「とにかく、学校が終わったら姉ちゃんに聞いてみるよ」

いと「そうね……そうするのが一番かもね………」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:00:39.65 ID:1GsLvrze0
―石田宅―


石田「母ちゃん…俺、行ってくるから」


一方、石田もまた学校へ登校しに行く所であった。


美也子「行ってらっしゃい……ショーちゃん」


そんな彼を、母親の『石田美也子』は見送る。

しかし、玄関を出る石田の後ろ姿は、とても暗く映った。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:03:27.04 ID:1GsLvrze0
美也子「…………」


何故彼は、あんなに暗いのだろうか?

そう言えば昨日、傷だらけで学校から帰ってきた。

いや、昨日だけではない。

本人は、また学校ではしゃぎ過ぎたといっていたが……

その割には、あまりにも傷の具合が酷過ぎる。


美也子(やっぱり……あの子………)
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:04:01.04 ID:1GsLvrze0
いじめられているのか?

そう考え、美也子は首を横に振った。

もし仮にそうであったとして、自分に何が出来る?
彼が硝子をいじめたのは紛れもない事実……

いじめの加害者の母親の自分がいくら言った所で、
よその子をいじめた母親が何を言うのかと断じられるのは目に見えている。


美也子「ショーちゃん……」


それでも彼女は、これ以上何もしてあげられない自分に、歯がゆさを感じた。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:06:22.77 ID:1GsLvrze0
―水門小への通学路―


小学校低学年・高学年が自身の母校へと向かう道。

その途中で、石田と硝子が出くわした。


石田「あ…」

硝子「…………」


目が合ってしまう2人……

石田はとても複雑そうにしている一方、硝子は彼の顔をジッと見ている。
彼の顔には、未だに昨日の傷の手当てをした跡である、絆創膏が貼られてある。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:06:51.50 ID:1GsLvrze0
石田「な…なんだよ?」

硝子「…………」

石田「なに人の顔ジロジロ見てんだよ!」

硝子「……………」

石田「あぁ…そういやお前、耳聞こえなかったんだっけ?それでいて、凄く音痴で……」

硝子「……………」

石田「大体、俺がこうなったのは全部お前のせいだ!お前なんか来なかったら…!」


まるで、今の自分の状況に対する苛立ちをぶつけるかのように言い放つ石田。
しかし硝子は、表情を崩さず彼を見続けている。

そんな彼女に、石田は余計苛立ちを募らせた。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:07:22.20 ID:1GsLvrze0
石田「ンな顔されても分かんねぇよ!なんか言いたきゃはっきり言えよ!このぉ!」


当たり散らすように硝子を軽く押し飛ばすと、石田はさっさと先に行ってしまう。
それでも梢子は、怒らずに彼の後ろ姿をジッと見つめていた……
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:07:57.56 ID:1GsLvrze0
―旅館の前―


冠城「さあて…右京さん、今日は何処から行きますか?」


そう言いながら旅館から出て来つつ、「やっぱり、石田君のお宅ですか?」と冠城は隣を歩く上司に尋ねた。


右京「そうするつもりですが、今日は別行動と行きましょう」

冠城「別行動ですか。それは面白い……」

右京「…………」


面白がっている様に振る舞う冠城に対し、右京は冷ややかな目を向けた。


冠城「冗談です!だから、何をすればいいか教えてくれません?」

右京「………それはですね」


右京は、冠城に何をして欲しいのかを説明した。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:09:40.82 ID:1GsLvrze0
冠城「分かりました。出来る限りやってみましょう」

右京「お願いします。僕は、石田君のお宅を当たります」


こうして、2人はそれぞれ別の場所へと向かって行った。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:13:35.97 ID:1GsLvrze0
一旦切ります。何とか今日中には終わらせたいです
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:13:20.56 ID:1GsLvrze0
―HAIR MAKE ISHIDA―


店内には客がおらずガラガラであった。

石田の硝子いじめが発覚して以来、こんな調子なのだ。

あんな出来事が起きたのだ、何処からか噂が流れて石田家に不信感を抱かれてもおかしくない……


???「お邪魔します」


だがその時、誰かが店に入って来る。


美也子「いらっしゃいませ…」


美也子が店の出入り口に目を向けると、そこには眼鏡とスーツ姿の男が1人……

言うまでもなく、特命係の杉下右京だ。

右京は、「どうも初めまして。こういう者です……」と言いながら警察手帳を見せた。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:14:30.44 ID:1GsLvrze0
美也子「警察?」

右京「東京の警視庁にある特命係から来ました、杉下右京です」

「あなたが、石田将也君のお母様ですか?」

美也子「は、はい。母の石田美也子ですが………」

右京「少々お話があります。お時間頂いても、よろしいですか?」

美也子「…………」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:15:55.70 ID:1GsLvrze0

「はい、構いません……」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:16:44.17 ID:1GsLvrze0
警察がウチに来た……

この事実に、美也子はある確信を抱き、右京を自宅の居間に案内した。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:19:14.94 ID:1GsLvrze0
―石田家の居間―


右京「本当にいきなり押し掛けて、申し訳ありませんねぇ……」

美也子「そんな事ありません。最近めっきりお客様が減ってしまって、暇でしたから…」


最近、客が減っている……


何故、そうなっているのかについて、右京はあえて言及しなかった。
石田の硝子いじめが関連している事は、今までの調べで明らかであったからだ。

一方、美也子は恐る恐るこう尋ねた。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:20:31.54 ID:1GsLvrze0
美也子「ところで、刑事さん……お話と言うのはもしかして、息子の……」

「ショーちゃ…じゃなくて、将也のことで来たのでは……?」

右京「そんな所です」

美也子「じゃあ目的は……」

右京「彼が、西宮硝子ちゃんに対して行ったいじめについて、詳しい話を伺いに……」


右京の一言に、美也子の表情が一気に重苦しくなる。

それだけ、息子の所業を憂いているという事なのだろう。

息子が硝子をいじめた事実に対する
強い責任と自任の念を美也子から感じつつ、右京は話しを続ける。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:21:07.63 ID:1GsLvrze0
右京「ご察しであると思いますが、我々はとある事情から息子さんのした事を調べました」

「結果、西宮硝子ちゃんの事をいじめていた事実が判明した……」

「しかし、動機の面が未だ不透明でありましてねぇ……」

「硝子ちゃんの妹さんは、硝子ちゃんの難聴の事を馬鹿にしていたのではないかと仰っていましたが……」

「実際のところ、どうなのでしょう?」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:22:32.24 ID:1GsLvrze0
美也子「…多分、その娘の言う通りだと思います」

「ショーちゃんは、友達とつるんで度胸試しとか言って河に飛び込んだり、自分より体の大きい人に喧嘩を売ったり……」

「親の私が言うのも何ですが、やんちゃ過ぎる悪ガキでした」

右京「随分と無茶をなさっていたのですねぇ……」

「しかし、止めなかったんですか?」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:24:33.34 ID:1GsLvrze0
美也子「…………」

「はい……」

「数年前に夫が出て行って以来、1人で店を切り盛りしていて忙しかったですし……」

「何より、変に叱るより、好きにさせておいた方がいいと思っていました」

「一番上の娘も、しょっちゅう恋人をとっかえひっかえに連れて来てたので」

「尚更、子供達は自由にしておくべきだと……」

「けど、それがこんな事になってしまうなんて……」

右京「普段からやんちゃが過ぎていたという事は、硝子ちゃんへのいじめもそれの延長線上のようなものだったと?」

美也子「恐らくは…………」

「それに、今年に入ってから、お友達の子とつるむ事がなくなってきたので、それも関係しているのかもしれません」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:25:04.63 ID:1GsLvrze0
右京「………」

「ところで、息子さんが硝子ちゃんをいじめた事で、学校から他に何か聞いていませんか?」

美也子「いいえ…将也が西宮さんのお子さんをいじめていたこと以外、なにも……」


彼女のその言葉に、右京は「なるほど……そうですか」と納得してみせる。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:26:41.40 ID:1GsLvrze0
美也子「あの…聞きたいのは、それだけですか?」

右京「えぇ……何か?」

美也子「…せっかくお伺いしてくれた所、こんな事を言うのは申し訳ありませんが……」

「出来るなら、もう息子の事で来ないで欲しいんです……」

右京「…………」

「…息子さんの事で色々とお辛い事はご察しします」

「しかし、警察としてこの問題に目を瞑る訳には……」

美也子「違うんです」


これ以上、石田の事で責められるのが
嫌なのだろうと思って言った右京であったが、美也子はそれを否定した。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:27:57.81 ID:1GsLvrze0
右京「違う?それは、どういう事で……?」

美也子「………」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:28:23.80 ID:1GsLvrze0


「実は…………」

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:29:08.13 ID:1GsLvrze0
―水門小学校―


6年2組の教室では、いつも通りの授業が行われ、いつも通りの時間が過ぎていた。

ただ1人、石田を除いては……
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:29:37.42 ID:1GsLvrze0
石田「……………」


昨日特命係の2人に見付かった事があったのか、向こうがそう言う気分なのかは不明だが、
今日は肉体的苦痛を与えるようないじめは行われはしなかった。

だがその代わり、誰からも無視され、一部の生徒からはケラケラと笑われている……
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:30:17.64 ID:1GsLvrze0
石田「ん…?」


その時であった。石田は自分の席に目を向けると、そこには梢子がいた。
一体彼女は何をしているのかと言うと、彼の机を雑巾がけをしている。

本来ならば、自分の机を誰かが掃除してくれる事は喜ばしい事であるはずなのだが、
相手がよりによって自分がいじめた相手……

石田は、それが不愉快に感じた。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:31:04.35 ID:1GsLvrze0
石田「おい!何勝手に人様机拭いてんだよ!あっち行け!」

硝子「あ……」


彼は怒鳴りながら梢子を机から突き放すと、もう手を出されまいと言わんばかりに席に腰掛ける。
それでも硝子は心配そうな目を向けるが、「何見てんだよ?さっさと行けよ!」と結局突き放されてしまう。

耳がはっきりと聞こえないとは言え、彼の様子からそう言われていると察したのだろう、
硝子はシュンとしながら彼の席から離れるしかなかった。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:32:18.47 ID:1GsLvrze0
石田(たく…何なんだよ!)


そう言えば、この前も勝手に机の中を漁っていた事もあったっけ……?

と、硝子の行動を思い出したが、今の状況の事で頭が一杯な石田は、
その理由まで考える余裕はなかったのであった……
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:33:57.92 ID:1GsLvrze0
その頃、校長室ではある男が水田校長に呼び出されていた。
石田がいる6年2組の担任教師である。


担任「校長…いきなり呼び出して、何でしょうか?」

水田校長「竹内君。実は昨日、警察の方が私のとこに来てね……」


校長の問いに、『竹内』と呼ばれた6年2組の担任は「警察が?」と少しばかり驚く。


竹内「一体、何の用で来たんで?」

水田校長「…………」

「『この学校の生徒が、暴力を振るわれている現場を見た』と……」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:35:00.48 ID:1GsLvrze0
竹内「……………」

水田校長「一応、喧嘩と言う事にはしておいたんだが……」

竹内「…………」

「あなたが喧嘩だと思っていらっしゃるのなら、そうなのでは?」

水田校長「んーまあ…そうだと思いたいんだが……」

「向こうは『いじめか何かがあったのではないか?』と疑っているみたいでね」

竹内「それに対しては、何と答えたんです?」

水田校長「『特に何もなかった』と……」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:36:01.65 ID:1GsLvrze0
竹内「……………」

「だったら、問題ないじゃないですか」

「西宮いじめの犯人は石田……そういう事で話しは付いたはずです」

「あれ以来、私のクラスも平和です。今更聞くような事じゃないでしょう?」

水田校長「それも、そうだな……」

「すまんね……西宮君のいじめ問題があったばかりだから、少し心配になって………」

竹内「本当に、要らない心配ですね」


呆れた風に返すと、竹内は「では、業務に戻らせてもらいます」と言って退室する。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:37:34.28 ID:1GsLvrze0
竹内「ふぅ…………」


そして、校長室の外で安堵するかのように息を吐いた。
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:39:56.24 ID:1GsLvrze0
―放課後―


石田はいじめられる前にさっさと家に帰ろうと、足早に学校を出ようと歩いていた。


???「おい…!」


だが、正門を出た辺りで、彼は後ろから誰かに呼び止められる。
その声に石田は反射的に反応し、振り返ってしまう。


???「お前……さっさと帰って逃げようとか思ってるんじゃねぇよな?」


振り返った先には、昨日自分に暴力を振るっていた2人の少年……

名前は、『島田一旗』と『広瀬啓祐』
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:41:18.59 ID:1GsLvrze0
石田「な……なんだよ?何の用だよ?」

島田「インガオーホーの続き……」

石田「え…?」

島田「だから、昨日のインガオーホーの続き」

石田「…!」


島田の言葉に石田の表情が青ざめた。

要するに、昨日特命係に中断させられた暴行の続きを、今から始めようと言われたのだ。
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:42:19.98 ID:1GsLvrze0
石田「お、おい……こんな所で続きやるの、まずいんじゃねぇか……?」

島田「だから、今から場所移すんだよ……広瀬!」

広瀬「おう!」


島田に命令され、広瀬は石田を押さえつける。


石田「や、止めろよ…!明日でもいいだろ?!」

島田「そうやって逃げようたってそうは行かねぇよ」


考えを見透かしたかのように返す島田。

そして抵抗虚しく、何処かに連れて行かれそうになる石田。


だが……
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:45:17.35 ID:1GsLvrze0


???「ちょっと、そこの君達ぃ〜」

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:45:48.54 ID:1GsLvrze0
突然、自分達以外の男性に呼び止められ、彼らはその声がした方向を振り返る。


島田と広瀬「「!」」


振り返った瞬間、2人は驚きの表情を見せる。
何故ならそこには、昨日自分達の石田へのいじめを止めてきた冠城亘がいたからだ。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:46:26.62 ID:1GsLvrze0
冠城「その子を何処へ連れて行く気かな?」

島田「え…あ……」

広瀬「そ、それは……その………」

冠城「もしかして、昨日僕達のせいで出来なかった喧嘩の続きかな?」

島田と広瀬「「………」」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:48:18.68 ID:1GsLvrze0
冠城「駄目だなぁ……」

「君達みたいな年頃になると色々あるのは分かるけど、だからって喧嘩は良くないよ?仲良くしなきゃ〜」

広瀬「お、おい…!島田……」

島田「に…逃げろ!」


何でまた邪魔が……!

と悔しさを感じたものの、今この場で捕まっては元も子もない。

そう言う訳で、広瀬と島田は一目散に逃げて行った。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:48:58.03 ID:1GsLvrze0
冠城「…………」


この場から立ち去る彼らを見た後、冠城は「大丈夫かい?」と石田に声を掛ける。

彼らから解放された石田は、何も言わずにさっさとその場から立ち去ろうとした。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:50:49.77 ID:1GsLvrze0
冠城「石田将也君だね?」


石田「!?」


だが、冠城に自分の名前を呼ばれ、石田は驚き、足を止めて彼を見た。

何故、彼は自分の名前を知っているのだろうか?

昨日、少し顔を合わせただけで、一言も会話していないのに……
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:51:27.52 ID:1GsLvrze0
冠城「やっぱり……君が石田君なんだね?」

石田「あ…アンタ、一体……?」

冠城「話したいのは山々だけど、ここだとちょっとまずい……場所を移そう」

石田「あ…あ、あぁ……」


冠城の提案に流されるままに乗っかる石田。

こうして、彼を連れて移動を開始しようとする冠城であったが……
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:53:59.95 ID:1GsLvrze0
冠城「?」


その時、後ろの方を見ると、硝子が遠くからこちらを見ている事に気付く。
しかも良く見てみれば、彼女の目線は石田の方にも向けられているようにも見えた。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:55:26.48 ID:1GsLvrze0
冠城「…………」


冠城はその様子が少し気になったものの、
今は石田の方が優先であった為、その場を立ち去るしかなかった。

こうして冠城は、石田を連れて近場のファミレスに入り、
そして隠れるのに最適そうな席に腰掛けた。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:56:46.01 ID:1GsLvrze0
冠城「ここなら、向こうの席からはすりガラス越しで君の姿は良く見えないし」

「外からも、僕の陰になって君の姿は誰にも見えない」

「唯一の目撃者は店の人とそこの監視カメラだけど……」

「店員が他の客に君の事を話すわけないし、監視カメラの映像だって一般人が見れるものじゃない」

「そもそもこんな店、子供だけで入れやしない……」

「どうだい?彼らから身を隠すには、打って付けだろ?」


そう言ってウインクしてみせる冠城。
だが、石田は彼に対する不信感を拭いきれなかった。

そんな中、店員の女性が冠城が注文したオレンジジュースを石田に持って来る。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:57:33.87 ID:1GsLvrze0
冠城「ほら……喉乾いただろ?」

石田「け、けど……」

冠城「僕からのおごりだ。遠慮しないで飲めって」

石田「………」


冠城にそこまで言われると、石田は半ば仕方なしにオレンジジュースに口を付ける。

そして、彼が全部飲みきったあたりで、冠城は表情を切り替える。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:58:48.84 ID:1GsLvrze0
冠城「自己紹介がまだだったね。僕はこういう者だ……」


そう言って冠城は、自分の手帳を見せる。


冠城「警察手帳……一度くらいは見た事あるだろ?」

石田「! じゃ…じゃあ、アンタは……!」

冠城「僕は、東京の警視庁から来た刑事だ」

「名前は、冠城亘……」

石田「冠城亘……」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:59:50.19 ID:1GsLvrze0
冠城「さて、どうして僕があそこにいたのかだけど……」


身分を明かした冠城は、昨日島田達のいじめを止めた後、
右京と共に色々と調べて回った事を石田に明かした。


冠城「そうして君の事を調べていく内に、君が西宮硝子ちゃんをいじめていた事が分かったという訳だ」

「だから、あそこで君を待っていたんだ。その事を詳しく聞く為にね」

石田「…………」


事情を聞かされた石田の表情は重かった。

当然だろう、自分の所業がこんな形で警察に知られるとは、思ってもみなかったのだから。

そして、冠城がその事を咎めに来たのだろうとも考えた。
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:01:58.60 ID:1GsLvrze0
冠城「言っとくけど、僕は君を咎める為に話しを聞こうってわけじゃないんだ」


予想外の言葉に石田は「え…?」と疑問符を浮かべる。


冠城「君、今いじめられているでしょ?」

石田「い、いや…それは……」

冠城「隠さなくたっていい。昨日のあれは、どう見ても喧嘩なんかじゃない」

「無抵抗な相手をリンチにして痛めつける……立派ないじめだ」

「さっきだって、そうなり掛けていたんじゃないのかい?」

石田「……」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:03:47.09 ID:1GsLvrze0
冠城「しかし、何故硝子ちゃんをいじめる側だった君が、今度はいじめられる立場になったのかっていう疑問があってね……」

「僕は最初、硝子ちゃんをいじめた事に対する報復だと思ったんだけど……」

「ウチの上司は、他の可能性も疑ってるみたいでね……君に直接聞いて来いって言われたんだ」

石田「…………」

冠城「だから…正直に話して欲しい」

「今君がいじめられているは、硝子ちゃんをいじめた事に対する報復なのか?そうじゃないのか?」


真剣な面持ちで、石田と顔を合わせながら冠城は問い掛ける。
一方石田は、そわそわした様子で答えようとしない。

答えるべきかどうか迷っているようだ。

そこで冠城は、次のような事を言った。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:04:22.81 ID:1GsLvrze0
冠城「話したくないのなら、それで構わない」

「一般人……それも子供から強引に事情を聞き出すなんて、警察のする事じゃないからね」

「けど……それでいいのかい?」

石田「え…?」

冠城「君は今、担任の先生からの助けも得られない状況に陥っているんじゃないのかい?」

石田「どうして、そのことを?」

冠城「昨日、学校でたまたま見たんだよ。君が、先生に相手にされていない現場を……」

石田「…………」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:06:22.25 ID:1GsLvrze0
冠城「それに、被害者が被害に遭ったと認めてくれなければ、僕達警察も手の出しようがない。事件性が、認められないからね」

「しかも僕らは違う所轄の刑事だ……この市には長くはいられない。いつ、警視庁に呼び戻されてもおかしくないんだ」

「そうなったら、君を助ける大人はいなくなるだろうね」

「それでも乗り切れる……後悔しないという自信があると言うのなら、僕達は引き下がるつもりでいるけど」

石田「……!」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:07:23.90 ID:1GsLvrze0
冠城の言葉に、石田は表情を曇らせる。

少しばかり脅すような真似をして冠城は心を痛ませたが、間違った事は言っていないつもりだ。

このまま石田が何も話さなければ……救いを求めてくれなければ、意味がない。

6年生と言えども、彼はまだ子供……大人の助けがなければ生きていけない年頃だ。

だから尚更、彼自身が自分達大人に救いを求めてくれなければ、その時点で終わってしまう。

それこそ、昨日今日といじめから救ったことすら無意味になる。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:08:10.17 ID:1GsLvrze0
冠城「大丈夫……君から聞いた事は、上司以外には誰にも話さない」

「僕の上司も、同じ対応を取ってくれるだろう」

石田「ほ、ホント……か?」

冠城「僕達は警察だ……秘密は守るよ」


秘密は守るという冠城の言葉……

この一連の流れで、石田の心は揺れ動く。

そして……
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:08:38.75 ID:1GsLvrze0


石田「じ、実は……」

122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:09:30.31 ID:1GsLvrze0
―西宮家―


結絃「姉ちゃんお帰り」

硝子「おきゃ…えり……」


学校から帰って早々、待ち構えた結絃に硝子は呂律の回らない声で「お帰り」と返してみせる。

ランドセルも下ろし、手も洗い、少し落ち着いた頃合いを見計らい、
結絃はいよいよ、気になることを聞き出そうと動く……
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 16:10:07.09 ID:1GsLvrze0
結絃「姉ちゃん…ちょっと聞きたい事あるんだけど」


手話を交えて聞いて来る妹に、硝子は「なに?」と手話で返す。


結絃「昨日、刑事さんが石田がいじめられてて、姉ちゃんがそれ見てたって言ってたけど……」

「一体、どうしてそんな事してるんだ?石田に何が起きてるんだ?」

硝子「…………」


その事を聞かれた途端、硝子はまた昨日の時の様に手話をする手を止めて黙ってしまう。
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