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相棒×聲の形「灯台下暗し」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:15:58.62 ID:YOGuTys40
初投稿になります。
以下は、この作品を読む前に把握していただきたい事でございます。
1.この作品は、相棒と聲の形のクロスオーバーSS。
時系列は相棒側は、シーズン16第1・2話が終了してから
第8話までの間の11月という設定で、右京さんの相棒が冠城亘君です。
聲の形は、小学生編になります。
2.世界観は相棒寄り。聲の形の年代も相棒側に合わせた形になります。
3.ストーリーの都合で、双方の原作に登場していないオリキャラや独自設定が出て来ます。
苦手な方はご注意して下さい。
最後に、私は聲の形そのものは未見です(そもそも、見る勇気が…)
一応ネタバレ情報等は見ていますが、それでも原作と合わない部分が出てくるかもしれないことをご了承下さい……
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1526886958
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:16:24.68 ID:YOGuTys40
―2017年 11月―
岐阜県のとある市で『ある事件』が起きた。
それは、『見落としてはならないもの』を
見落としてしまった者達が犯してしまった大きな過ち……
これは、そんな彼らと関わった2人の刑事の物語である。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:16:52.46 ID:YOGuTys40
〜相棒シーズン16 オープニング〜
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:17:18.33 ID:YOGuTys40
相棒×聲の形 〜1日目〜
ある日、東京から岐阜県水門市を2人の男が訪れた。
1人は眼鏡を掛け、スーツを着た初老の男。
もう1人は、彼より若い男。
初老の男の名は『杉下右京』
警視庁の陸の孤島にして人材の墓場とも言われる『特命係』の係長で、
数々の難事件を解決してきた、本庁きっての切れ者にして変わり者で有名な人物だ。
もう1人の若い男は『冠城亘』
かつては法務省事務次官『日下部彌彦』の下にいたキャリア官僚で、
当初は出向という形で特命係を出入りし、何かと右京に絡んできていたが、
1年前に起きたある事件をきっかけに法務省をクビになり、警察学校に入学。
その数ヶ月後、紆余曲折合って杉下右京の現在の相棒となった。
ちなみに、彼が本格的に特命係入りを果たして、今年で早二年目である。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:17:48.95 ID:YOGuTys40
冠城「ここですね」
そんな窓際部署の2人は、とある一軒家に辿り着く。
表札には『伍堂』と書かれてある。
早速、その家の呼び鈴を右京が鳴らすと、中から若い風貌の男性が姿を現した。
若い男性「はい…どちら様でしょうか?」
右京「東京の警視庁から来ました、特命係の杉下右京です」
そう言いながら警察手帳を見せる右京に続いて、
冠城も「冠城です」と名乗った。
右京「交番巡査の伍堂圭三さんですね?」
「警視庁からの命令で、あなたが東京への旅行の際に落とした、警察手帳をお届けに上がりました」
と言って、スーツの中から自分の物とは別の警察手帳を差し出す右京。
それを見て「あぁ、間違いない!僕のですよ!」と言って手帳を受け取る伍堂と呼ばれた男。
今回、特命係に下された命令は、この伍堂刑事に警察手帳を届ける事だったのである。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:18:25.07 ID:YOGuTys40
伍堂刑事「ありがとうございます!」
「見付からなかったらクビだと部長から言い渡されて、どうしようかと思っていたところで……」
「本当に、助かりました!」
冠城「お礼は、届けてくれた方に言って下さい」
右京「今度からは気を付けて下さいよ?」
「念押しで常に持ち歩くのは構いませんが、警察手帳は我々警察官の命のようなもの」
「今回は、善良な市民が拾ってくれたから良かったものの、万が一犯罪者の手に渡りでもしたらそれこそ大変です」
伍堂刑事「以後、気を付けます!」
右京の注意を受け、びしりと敬礼する伍堂刑事。
そんな彼に見送られながら、特命係の2人は家を後にした。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:19:06.44 ID:YOGuTys40
冠城「しっかし、旅行先で警察手帳落とすなんて、間抜けにも程があると思いませんか?」
右京「もっともな意見です。後は、気を付てくれるようになる事を祈るしかありません」
冠城「それにしても、内村刑事部長も面倒なお使いを頼んだものですね……」
「いち早く届けなければならないものだったとはいえ……」
「何も、東京から離れたこんな所に、わざわざ俺達送り込む必要ないんじゃないですかね?」
「持ち主も分かってるんだし、郵送で送ればいいのに」
右京「あの方の事ですから、恐らくそれすら面倒だったのでしょうねぇ…」
冠城「ところで…ちょっとお腹空きません?」
右京「言われてみると……」
冠城「じゃあ、早速近場の店でも探しましょうか?」
右京「構いませんが、出来る限り安いお店をお願いします。
僕達は、観光に来たわけではありませんからねえ」
冠城「ホント、真面目ですね。少しくらい羽目を外しても罰は当たりませんよ」
と言いつつ、冠城はスマホを取り出して、近場の安い店を探し始めた。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:19:56.84 ID:YOGuTys40
右京「…?」
その時であった。右京がふと、側にあった小学校の裏門目を向けてみると、
門の向こうで小学6年程度の3人の少年の姿が目に留まる。
それ自体は、特に何でもなかったが、問題は少年達の様子……
3人の内2人が、1人の少年に暴力を振るっていたのだ。
右京「冠城君…!」
冠城「どうしたんで……あっ!」
右京の声掛けで目の前で起こっている事に気付いた冠城は、店を探すのを中断。
すぐさま2人の少年に向かって「君達、何してるんだ!」と叫ぶ。
その声に反応した2人の少年は、まずい…!と言った様子でその場から逃げ出した。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:22:08.02 ID:YOGuTys40
少年「………」
一方、暴行を受けていた少年は、その場からフラフラと立ち上がりながら、
門の向こうにいる右京達にゆっくり顔を向ける。
右京「大丈夫ですか?」
冠城「酷い怪我だね…一度保健室で診てもらった方がいいよ」
右京「僕達も一緒に行って先生に相談してあげますよ」
少年「……」
優しく声を掛ける特命係の2人であったが、少年は何も言わずにフラフラと立ち去った。
予想外の反応に、冠城は不思議がる。
右京「?」
一方、右京はある事に気付く。向こうにある体育館らしき建物の陰から、
限りなくピンク色に近い茶色の髪をしたショートボブカットの少女が覗き込んでいたのだ。
だが、その少女は右京に見付かったのに気付いたのか、すぐに建物の陰に姿を消してしまう。
冠城「どうしました?」
右京「いえ……何も」
冠城「それにしても今の……ただ事じゃありませんでしたね」
右京「そうですねぇ……」
冠城「腹ごしらえの前に、立ち寄りますか?ここ……」
問い掛ける冠城。
右京の答えは、言うまでも無くYESであった。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:23:21.80 ID:YOGuTys40
―水門小学校 校長室―
水田校長「私が、校長の水田門木です」
校長室に招き入れられた特命係の2人に自己紹介をし、お辞儀をする水田校長。
それに対して、特命係の2人もお辞儀し返し、水田校長に促されて椅子に腰かける。
水田校長「警察の方が、何のご用でしょうか…?」
右京「実は、少しばかり確認したい事がありましてね…」
水田校長「確認……ですか?」
右京「つい先程、校舎内でこちらの学校の生徒さんが、別のクラスか同じクラスかは分かりませんが……」
「2人の生徒さんから、暴力を振るわれているところを見掛けました」
「そこで、この学校で何が起こっているのか、確かめようかと……」
冠城「申し訳ありませんね。細かい事が気になる方でして」
水田校長「…………」
右京の問いに、水田校長は顔を曇らせた。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:23:54.23 ID:YOGuTys40
冠城「……?」
その様子に冠城は怪訝に思う。
一方、校長はそれに気付かないままこう答えた。
水田校長「多分……喧嘩か何かでしょう」
右京「喧嘩?」
水田校長「はい…当校では、生徒が他の児童に暴力行為を行ったと言う事実は、確認されていません」
「しかし、年頃の子供も多いですからね……ちょっとした事で、衝突を起こすといった事はあると思いますよ」
右京「なるほど…ちょっとした衝突による喧嘩ですか………」
冠城「となると、思いの外大した事ではなかったって訳ですね?」
冠城の言葉に水田校長は「はい…」と答えた。
右京「お忙しい所、お時間を取らせてしまいました…」
水田校長「いえ構いません。これも、あなた方の仕事でしょう……?」
冠城「そうですね。じゃ、行きますか?」
右京「えぇ…これで、失礼します」
こうして右京は、冠城と一緒に校長室を後にしようと立ち上がったが……
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:24:59.36 ID:YOGuTys40
右京「あ…!最後にひとつだけよろしいですか?」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:25:36.40 ID:YOGuTys40
と言って、また校長にある事を聞いた。
右京「この学校で、他に何かしらのトラブルがあった事はありませんでしたか?」
「例えば、先程の男の子の件とは別に、いじめもしくはそれに相当する事案があったとか……」
水田校長「…………いいえ」
右京「そうですか…」
一言そう答えると、右京は冠城を連れて校長室を後にした。
それを確認すると、水田校長は自分以外誰もいなくなった室内で
「ふぅ……」と、まるで肝が冷えるような状況から脱したかのように、安堵の表情を浮かべていた。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:31:51.78 ID:YOGuTys40
―水門小学校 廊下―
校長室を後にした特命係の2人が、外に向かって歩いていたその時であった。
???「だから何度も言ってるだろう!お前にアイツらを糾弾する資格は無い!」
右京と冠城「「?」」
突然、向こうから誰かの怒鳴り声が聞こえる。
何事かと思いその先に向かい、覗き込んでみると、
そこには先程の少年が、教師と思われる眼鏡を掛けた男性と向かい合っている。
一応、少年は手当てを受けたらしく、顔中絆創膏だらけ。
だが、教師らしき男性は彼に対し、何故かあまりいい顔をしていない。
それだけにとどまらず、こうも言い放った
教師「これはお前がまいた種だ!自分でやった事は、自分でどうにかしろ!」
少年「け、けど……」
教師「何だ?文句があるなら、言ってみろ」
少年「…………」
教師「無いならさっさと教室に戻れ!次の授業に間に合わんだろ」
教師に吐き捨てられ、少年は何も言い返さずに教室に戻っていく。
その一部始終を、特命係の2人は隠れて静観する。
そして……
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:32:33.74 ID:YOGuTys40
少女「……………」
右京「……」
右京はまた、あの少年の姿を心配そうに見ている少女の姿を目撃するのであった。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:34:51.23 ID:YOGuTys40
その後、校舎から離れた特命係の2人は、近場に飲食店で食事をとる事になった。
冠城「どうです?あなたのご注文通り、近くて安いお店を探してあげました」
右京「確かにそうですが……」
冠城「そうですが……何か?」
右京「この料理…明らかに君好みのものではありませんか?」
冠城「別にいいじゃないですか。パイナップル入りの酢豚がある訳じゃあるまいし…」
右京「そういう問題ではないですがねぇ……」
そのようなやり取りを交わしつつ、淡々と料理を口にしていく特命係の2人。
その途中、冠城はいきなり「右京さんは、どう思います?」と問い掛けた。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:37:16.96 ID:YOGuTys40
右京「何がですか?」
冠城「何がって…さっきの事ですよ」
「率直に言って、俺はあの校長は怪しいと考えています」
右京「怪しい、ですか……」
冠城「えぇ……」
「あの2人の少年が彼にしていた事は、喧嘩にしては明らかに度が過ぎてる感じだったし…」
「何しろあなたに問い掛けられた時、あの校長の顔色は明らかに変わっていました」
「そこで俺が考えたのは、『学校があの少年へのいじめを知りながら、見て見ぬ振りをしているではないか?』ということなんですが……」
右京「確かに、色々と気になる点があるのは事実です。しかし、ひとつ分からない事があります」
冠城「分からない事って?」
右京「先程の少年の担任と思われる教師の言葉です」
「あの時彼は、『これはお前がまいた種だ!自分でやった事は、自分でどうにかしろ!』と言っていました」
「それも、あんなに傷だらけな少年を前にしてです」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:38:35.95 ID:YOGuTys40
冠城「確かに、なんか引っ掛かりますね」
右京「いずれにせよ、あの学校が何か隠しているのは、間違いないでしょう」
冠城「それをはっきりさせないと気が済まない」
右京「えぇ…」
冠城「そう来なくちゃ、面白くありませんね」
右京「冠城君…遊びではありませんよ?」
右京の突っ込みに、冠城は「分かってますっ!」と返す。
冠城「で?次は何処当たるつもりですか?」
右京「その事ですが、もう決めてあります」
冠城「何です?」
右京「それはですねぇ……」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:42:15.48 ID:YOGuTys40
数時間後……
水門小学校は下校時間になり、生徒達が次々と正門から出て家路に就く。
その様子を、特命係の2人が遠くから隠れて覗いている。
冠城「どうして、下校中の子供達を見張らなくちゃならないんです?」
右京「…………」
冠城「ここで待ち構えて、さっきの少年を捕まえて話を聞き出すという算段ですか?」
右京「………………」
冠城「まあ確かに、方法としてはありかもしれませんが……」
右京「君……少し黙っててくれませんか?」
冠城「すみません……」
と言って頭を下げる冠城。
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:42:54.34 ID:YOGuTys40
右京「…来ましたよ」
冠城「え…?」
その直後、目当ての子供が学校から出てくる。
それは、先程少年の様子を見ていた少女であった。
少女は、特命係の2人が見張っている事に気付かないまま、家路に就く。
冠城「女の子?」
右京「行きますよ」
冠城「あ…はい!」
予想外の相手に戸惑いつつも、冠城は右京と共に彼女を尾行する。
一見すると、普通に歩いて帰っているように見えるが……
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:48:39.65 ID:YOGuTys40
冠城「………あの娘、やけにキョロキョロしてません?」
冠城の言う通り、少女はやたらと周囲を気にしながら歩いている様子であった。
右京「確かにそうですねぇ……」
冠城「まさか、俺達の気配に勘付いたとか?」
早くも尾行がバレたと考える冠城。その時、彼の横を自転車に乗った男性が走り抜ける。
運が悪い事に、男性の行く先には、尾行中の少女がいた。
しかし、男性は曲がるのが面倒なのか、
避ける気配がなく代わりにベルを鳴らして自分の存在を知らせている。
少女「…」
だが、何故か少女は振り返らず、まるで何事もないかの如く前進している。
冠城「危ない!」
冠城の声と共に特命係は助けに出ようとしたが、
尾行の為に距離を取っていたせいだろう、間に合わなかった。
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/21(月) 16:52:28.39 ID:YOGuTys40
キキ――ッ!
が、男性の方が寸での所で急ブレーキを掛けた為、衝突は避けられた。
少女「!!」
そして、ようやく自分の後ろに自転車が来ていた事に気付いたのだろう、
少女は男性の方に振り返り、驚いている。
その際、右京は彼女の耳に注目したのだが、この時誰も気が付いていない。
男性「馬鹿野郎!何であんだけ鳴らしたのに避けねぇんだよ!今度から気を付けろ!!」
怒鳴り付けてくる男性に対し、少女は無言で頭を下げている。
そんな彼女の様子を確認すらしないまま、男性は走り去った。
彼が走り去るのを確認すると、少女は再び歩き出す。
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