姉「ここにたわわに実った果実が二つあるじゃろ?」 男「……は?」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:08:32.56 ID:J86KBfoY0

姉「そんで、ここに腐りかけのバナナがあるじゃろ?」

男「……」

姉「腐りかけのバナナは甘さが増して美味しいとよく言われるのじゃが、あんまり黒くなりすぎてもちょっとアレなのじゃ」

男「……」

姉「すこーし黒い斑点がプツプツっと……」

男「……」



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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 00:09:12.26 ID:J86KBfoY0

姉「……」

姉「あの」

姉「無視はダメです。わたし悲しくなっちゃいます」

男「……あ、うん」

姉「こほん」

姉「男くん。ちゃんと返事するのじゃぞ」

男「はいはい」

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 00:09:44.57 ID:J86KBfoY0

姉「はいは一回じゃ」

男「はい」

姉「はいじゃないが」

男(何言ってんだこいつ)

姉「聞き流す程度でもいいのじゃが、できれば返事をしてくれるとな、わたしの気分が高翌揚して話しやすくなるのじゃ」

男「はい」

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 00:10:11.09 ID:J86KBfoY0

姉「じゃがこれはダメかもわからんね……」

男「……なにが?」

姉「こっちの話じゃ」

男「そうですか」

男(わけわかんねえ……)

姉「そういえばこの前、駅前のスタバでMacBook Airを開いて周囲を威嚇してたんじゃが」

男「ああうん」

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 00:10:55.83 ID:J86KBfoY0

姉「そしたら、見るからに倦怠期のカップルが喧嘩しておったのじゃ……」

男「うん」

男(前の話はどこに行ったんだろう)

姉「くたびれたリーマン風の彼は『おまえの話は井戸端会議と変わんねぇ。俺じゃなくたって誰とでも話せる話題だろ』と言っておって……」

男「ほう」

姉「気が強そうな彼女は『あなたにしか話せない話題なんてあると思ってるの? そんなに自分が特別な存在だと思ってるの?』と言ってたのじゃ……」

男「ほうほう」

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 00:11:26.39 ID:J86KBfoY0

姉「彼氏は激昂じゃ……。『特別なのが恋人ってものじゃねえのかよ!』などと言っておった」

男「なるほど」

姉「……」

男「……」

男「……それで?」

姉「終わりじゃ」

男「そっすか」

姉「そっすじゃ」

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:12:01.04 ID:J86KBfoY0

男(なんか今日の姉ちゃんおかしすぎるな……いつもおかしいけど今日はいつにも増して)

男(ていうか、さっきから服をたくし上げて胸をテーブルの上に置いてるのはなんなんだろう)

男(あっなんか目が合った…………逸らされた)

姉「ときに男くんや。しばらく見ないうちに彼女でもできたかね?」

男「はい?」

姉「むっ……どうなのじゃ?」

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:12:29.73 ID:J86KBfoY0

男「できてないけど」

姉「けど?」

男「……」

男「……できてないよ」

姉「なっ、なんじゃその間は」

男「いや……」

男(どうして慌ててるんだろう)

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:13:07.03 ID:J86KBfoY0

姉「男くん……」

姉「まさかお姉ちゃんに黙ってかわいい彼女を作って毎日学校でイチャイチャしてるとかそんなことありえないですよね?」

姉「男くんに限ってそんなのないですよね。お姉ちゃんが一番ですよね? お姉ちゃん以外は何もいらないってくらい好きですよね? どうしようもなく愛してくれていますよね?」

男「……はあ? 愛してるって」

姉「いやちょっと待ってください。待ってください、心の準備とかありますし今考えてますし」

姉「ん……もっ、もしかして」

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:13:53.81 ID:J86KBfoY0

姉「もしかして学校でイチャイチャするどころか普段使ってないお姉ちゃんの部屋に連れ込んで『ぐへへ……姉貴はいっつもここで寝てたんだぜ』とか言って大人の体操ごっこをしてたりするんですか?」

男「……は?」

姉「『姉貴の使ってたペンがペンじゃなくなっちゃったな(暗黒微笑)』とか言ってませんか?」

男「いやいやいやいや」

男(ほんとに何言ってんのこの人……)

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:14:31.30 ID:J86KBfoY0

姉「相手は誰ですか? わたしの知ってる人ですか? 知らない人ですか? 将来のお嫁さん候補ですか? ただの思春期特有のお遊戯ですか?」

姉「子供は何人欲しいんですか? わたしは二人がいいかなって思ってます。上が男の子で下が女の子。でもそうするとお部屋がいっぱい必要なので二階建ての一軒家に住みたいです。もし男くんくんが養ってほしいっていうならお姉ちゃんもっともっと頑張ります」

男「姉ちゃん落ち着いて」

姉「わたしは落ち着いてますよ」

男「どう見ても落ち着いてない!」

姉「ワタシ オチツイテ イマス」

男「なぜカタコト」

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:15:44.75 ID:J86KBfoY0

姉「ワタスィー オティツイティー マス」

男「めんどくせえ……」

姉「いま面倒くさいって言いましたね! 面倒くさいって!」

男「だって絡みがいつもよりだるいし……」

姉「だるいって…………」

姉「だるい、だるい……そうですか……」

男「……」

男(そんなあからさまに悲しそうな顔されるとな。シンプルに心が痛む)

男「いや……」

13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:16:23.08 ID:J86KBfoY0

男「ごめん。面倒ではないよ」

姉「ほんとですか?」

男「うん」

姉「ふふふ、そうですよね。男くんはお姉ちゃんのことを面倒だとは言いませんよね。もしほんとに言っていたとしたらあまりの悲しみで眠れぬ夜を過ごしてしまうところでした」

姉「今年の春休みは忙しくてなかなか帰ってこれませんでしたからね。この連休が待ち遠しくて待ち遠しくていろいろなものが手に付かなくて大変だったんですよ」

男(あっやっぱ面倒くさいわ)

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:16:50.39 ID:J86KBfoY0

姉「さてと、お腹が空いてきたのでコンビニにでも行きましょうか」

男「いまもう夜の十一時なんだけど」

姉「一人で晩酌でもしようかなー、と思ってて。あっもちろん男くんはダメですよ、未成年ですからね」

男「わかってるよ」

男「つーか姉ちゃんお酒飲むんだ」

姉「わたしはもうハタチになりましたし、お酒自体も嫌いじゃないので」

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:17:25.65 ID:J86KBfoY0

男「どれくらい飲むの?」

姉「まあ…………ほんの少しです」

男「へえ……」

男(嘘だな)

姉「なにか買ってほしいものがあるならお姉ちゃんが買ってあげますよ」

姉「でもこの時間に揚げ物はダメですよ。体に悪いと思います」

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:18:19.15 ID:J86KBfoY0

男「いや、まず行くとは言ってないし」

姉「ええっ……」

姉「そうですか。お姉ちゃんは男くんと二人きりで夜道を歩けるかもしれないと期待していたのですが……」

姉「そうですよね。こんな時間にわたしたちのようなカップルが手を繋ぎながらコンビニに行ったりでもしたら店員さんに勘違いされてしまいますよね」

姉「『女の方はお酒を買って、男の方はその様子を見ている。カゴの奥底にはきっとアレがあるはずだ』」

姉「『あれっ? ……ない? ってことはもう家に準備してあるのか。あ、財布のお札を入れる部分からチラッとホログラムが見えた。なるほど……』」

姉「……なんてなっちゃいますよね。男くんはそういうふうに思われたくないですもんね」

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:19:12.86 ID:J86KBfoY0

男「はあ……」

男(ツッコミどころが多すぎて何も言えないんですけど)

男「……まず姉ちゃん」

姉「はい」

男「俺たちカップルじゃないよね? ていうか普通に姉弟だよね?」

姉「えっと、わたしは普通の姉弟でありたくはないです」

18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:19:42.21 ID:J86KBfoY0

男「んで次だけど、姉ちゃんと手を繋ぐとかありえないからね」

姉「スルーですか!?」

男「……で、ホログラムどうのこうのっていうのが何を指してるのかは知らないんだけど」

姉「あ、あの。わたしと手を繋ぎたくないってどういうことですか」

男「いや一旦それはおいといて」

姉「わたしの手がすぐ汗ばんでしまうのは前々から自覚してはいますけど、昔はよくふたりで手を繋いでお出かけしたじゃないですか」

19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:20:13.36 ID:J86KBfoY0

姉「二人きりに緊張するあまりついつい手汗が出てしまうのは、実はかなりのアドバンテージなのではないかと一人でいるときに考えて空気を握って感触を確かめていたのですが、それはダメだったのですかね」

男「……ちょっと静かにしてて」

姉「『上の口は静かでも下の

男「静かに」

姉「え、あっ……はい静かにします」

男「よろしい」

姉「えへへ、ありがとうございます」

男(かわいい)

20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:21:04.98 ID:J86KBfoY0

男「そんで最後にだけど、こんな休み期間にバイトをしてる人は絶対に疲れ切ってるからお客さんのことを考えてる余裕はないと思うんだよね」

男「姉ちゃんの財布に何が入ってるかも正直どうでもいいけど、店員さんがそんなまじまじと確認してくるのはさすがに不審すぎるし」

姉「お姉ちゃんの財布にそんな不審なものは入っていないです」

男「不審なものなんだ……」

男(知らないふりをしとこう)

姉「……」

姉「えと、違いました。わたしたちの将来にとって大切なものです」

男「将来?」

姉「…………」

姉「しょ、将来……です」

男(なぜ顔を赤らめる)

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:21:36.23 ID:J86KBfoY0

姉「と、とにかく! お姉ちゃんはお買い物に行ってきますからね!」

姉「さっきも言いましたけど、なにか欲しいものを思い出したらメールしてください。ちゃんと買ってきますから」

男「ああうん。てか俺も暇だし行くよ」

姉「えっ? だってさっきは……」

男「いや行かないとは言ってないし」

姉「あう……」

姉「こ、こんなふうにお姉ちゃんをからかって楽しいですか?」

男「姉ちゃんが勝手に早とちりしただけだと思うよ」

姉「…………」

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:22:09.31 ID:J86KBfoY0

姉「手を出してください」

男「どうして?」

姉「前言通りに手を繋いで行きましょうと言っているのですが」

男「え、やだよ」

姉「そう言われたとしてもわたしは無意識のうちに男くんの手を取ってしまうんですけどね」

男(うわ熱っ!? ていうか声に出してるんだからそれはもう無意識じゃないでしょ)

男「ほんとに汗ばんでるね」

姉「て、ててててててててを握ってる……」

男「いきなりどうしたの」

23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 00:22:39.56 ID:J86KBfoY0

姉「おとこきゅ……んん゛っ」

姉「お、男くんの手がひんやりしてて気持ちいいです。姉弟でどうしてこうも違うのでしょう」

姉「二十四時間握っていればわたしと中和されていい感じの温度になると思うほどです」

男「さすがに気持ち悪いよ?」

姉「またまた〜」

男「……」

姉「ま、またま……ごめんなさい」

男(結局あっさり離しちゃうのね)

男(まあなんか面白そうだし俺から握ってみるか)

男「姉ちゃん」

姉「はい、なんで……って、え?」

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