【ラブライブ】穂乃果「さぁ、お前の罪を数えろ!」【仮面ライダーW】

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1 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 19:20:06.40 ID:BcbKkMa20
更新遅め。
前作あり。
【ラブライブ】海未「罪と罰」【仮面ライダーW】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1518272152/

以上のことが大丈夫な方はぜひお付き合いください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1524997206
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 19:21:42.09 ID:JB4JzZ9vO
きっも
ハルカスかよ
3 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2018/04/29(日) 19:40:07.60 ID:BcbKkMa20
ーーーーーー




私は大バカだ。



海未ちゃんを止めるために。
ことりちゃんを助けるために。
そう思って、走り続けてた。

でも、その結果がこれだ。
目の前の悲劇は、私が……高坂穂乃果が起こしたものなんだ。




「ごめん……ごめんなさい」




答える声はない。
それが当然だ。



だって、もう、誰もいない。



海未ちゃんも。
ことりちゃんも。
凛ちゃんも。
花陽ちゃんも。
真姫ちゃんも。
絵里ちゃんも。
希ちゃんも。
にこちゃんも。

みんな……いなくなっちゃったんだよ。
4 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 19:47:38.57 ID:BcbKkMa20



『貴女のせいよぉ?』




俯く私にかけられるのは、その人の声だけ。



「っ、おまえ……」



憎くて、憎くてたまらない。
きっと今の私の表情は、決して元アイドルがしていいものではないんだろう。
にこちゃんがいたら、注意されたんだろうな。

けど、



「私は……おまえを……許さないッ」

『…………なら、どうするのかしら』

「…………私はッ」



手に力を入れる。
『それ』を持つ手に。



『……そうねぇ。それしかないわよねぇ』

「……あ、あぁぁッ!!」



穂乃果は、もうどうなってもいい。
この『力』で仇が討てるならッ!!



「あぁぁぁぁぁっ」



ーー カチッ ーー




『     』




ーーーーーー
5 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 19:48:58.81 ID:BcbKkMa20
『最後のE/       』
6 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 19:59:24.05 ID:BcbKkMa20
ーーーーーー




穂乃果「海未ちゃんっ!!」



声が掠れるのが自分で分かった。
そのくらい、必死で。

でも、




アームズ『あ、う……アァ……』



海未ちゃんは言葉にならない声を呟くだけ。
穂乃果の声は届いて、ない。



穂乃果「っ」

にこ「穂乃果……逃げなさいっ……」

穂乃果「っ、なら、にこちゃんも!」

にこ「にこのことは置いて……きなさい……」



にこちゃんはそう言った。
けど、穂乃果をかばったせいで、攻撃を受けて倒れてるにこちゃんを置いて、なんて!



穂乃果「っ、でも!」

にこ「あんた、だけでもっ、逃げるのよっ!!」

穂乃果「い、いや、だよ……」



そんなの、いや……。
いやだよっ!!
7 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 20:42:36.38 ID:BcbKkMa20



真白「フフッ」

穂乃果「っ、なに笑ってーー」



茶化すような笑い声。
それがすごく嫌で、彼女を睨む。

彼女ーー『亜坂真白』
ことりちゃんや海未ちゃんをドーパントにした人。

彼女はこっちの視線なんてお構い無しで、また笑う。



真白「フフッ。いい顔ね」



いい顔?
なにを言ってるの?



真白「絶望で歪んだ表情よぉ」

真白「この二人、幼馴染みなのでしょう? それが怪物になるのを、貴女は二度も見ることになって」

真白「二度とも何もできなかった」

真白「フフッ、ねぇ……」




真白「それを絶望と言わずしてなんと言うのかしらねぇッ!」



8 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 20:48:33.17 ID:BcbKkMa20


穂乃果「っ」



何もできなかった。
その言葉が、突き刺さる。

っ、それはーー。



にこ「っ、穂乃果……聞くんじゃないわよっ」

穂乃果「にこ、ちゃん……」

にこ「あいつは、狂ってるわ……あんなのに耳を貸しちゃダメよ」

穂乃果「っ、うん……」


にこちゃんの言葉に頷く。

そう、だよね。
こんな人の言うことなんて聞く必要、ない。
9 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2018/04/29(日) 21:58:02.55 ID:BcbKkMa20


真白「あら、冷たいのね」



そう言って、クスクスと笑う。
本当に可笑しそうに。
それを見て、また背筋が寒くなる。
この人、本当にーー。



アームズ『あ……うぁ……ァァァ……』

穂乃果「っ」

真白「……そろそろ、馴染んできたかしら? あの強化アダプタはメモリの出力が上がるのはいいけれど、馴染むのには時間がかかるのが難点ねぇ」



さて。
それじゃあ、

海未ちゃんの肩を軽く叩き、彼女は笑顔でこう言った。




真白「殺してしまいましょう」

真白「貴女の親友を」



10 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 22:51:12.94 ID:BcbKkMa20



アームズ『……ほ、のか……』



一歩。
また一歩。
穂乃果に近づいてくる海未ちゃん。



穂乃果「海未ちゃんっ! 目を覚ましてよっ」

アームズ『………………』

真白「無駄よぉ……今、海未ちゃんの頭にあるのはあなたを手にかけること。それだけだもの」

穂乃果「……うみ、ちゃん」

アームズ『………………』



呼び掛けには、答えてくれない。
その代わりに、海未ちゃんはその手を大きく振り上げた。
音もなく精製していたその刀で、今度は躊躇せずにーー




ーー ブンッ ーー



11 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 22:51:58.94 ID:BcbKkMa20




『ジェット』




12 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 23:03:14.35 ID:BcbKkMa20




ーー ガキィィィィィン ーー



穂乃果「………………え?」



何が起こったのか分からなかった。
理解できたのは、



『…………怪我はないな』



その声がしてから。
声の主を確かめるために振り返る。

そこにいたのは、真っ赤な仮面ライダー。
機械の大剣を片手で持ち、顔には青く光る大きな複眼。
ジョーカーやサイクロンとはまったく違う外見の仮面ライダーだった。



『君が依頼人、という訳だな』

穂乃果「え……あ」

『君を……いや、君たちを助けに来た』

にこ「あんた……一体……」

『………………』



『俺に質問をするな』



赤のライダーはそう言って、穂乃果とにこちゃんの前に立つ。
そして、亜坂真白と海未ちゃんに剣先を向け、構え、言い放つ。





『さぁ、振り切るぜ!』


13 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 23:10:53.56 ID:BcbKkMa20




真白「……………………止めよ」




突然だった。

止め、と。
彼女は言った。

その仮面ライダーを見てから。
狂気を隠しもせずに、今まで笑っていた亜坂真白の顔からは表情が抜け落ちていた。



真白「………………行きましょう」

アームズ『…………は、い』

穂乃果「っ、待って!!」

真白「……………………」



穂乃果の制止の声は届かず。
海未ちゃんは、彼女の作り出した霧の中に消えていった。
14 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 23:15:20.29 ID:BcbKkMa20



穂乃果「っ! 海未ちゃん!」



返事はない。

静寂。
私は、また目の前で大切な人をーー。




穂乃果「っ」

穂乃果「うぅ、うぅぅぅぁぁぁぁぁぁッ!!!!」




ーーーーーー
15 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/29(日) 23:16:29.02 ID:BcbKkMa20
本日はここまで。
前作の終わりのせいで誤解を与えてしまった節がありましたが、続きます。
というかこれで完結予定です。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 23:28:38.32 ID:MTttg+xe0
そうか、好きなシリーズだったからちと悲しいがとりま乙
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 23:42:38.30 ID:RruWpDByo
まーたラブライブキャラの皮を被せたオリキャラか
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/30(月) 12:45:15.12 ID:PUBMeYnkO
マジで待ってた!
だがこれがラストか
19 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 20:20:45.57 ID:fDR7qD7z0
ーーーーーー



照井竜。
変身を解いたその人はそう名乗った。
お隣の風都の刑事さんなんだって。

その人に連れられ、音ノ木坂の理事長室へ。
そこには理事長と、



花陽「穂乃果ちゃん! にこちゃん!」

凛「…………」



花陽ちゃんと凛ちゃん。
それに、



希「にこっち……ぼろぼろやん……」

絵里「無事、というわけではないようね……」

真姫「…………にこちゃん、こっち。治療するから」



絵里ちゃんに、希ちゃん。
真姫ちゃんもいた。

ここにいないのは、海未ちゃんとことりちゃんだけ。



穂乃果「……っ」



20 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 20:32:44.13 ID:fDR7qD7z0


花陽「穂乃果ちゃん……その……」

穂乃果「……ごめん」

花陽「ううんっ、その、こっちこそ……ごめんね」



そんな会話を交わす。
なにがごめんなのか自分でも分かんないけど、口をついで出るのはそんな言葉……。




理事長「……二人が帰ってきてくれたこと、それが一番よ」

絵里「そうよ。二人のおかげで亜里沙は助かったんだもの」

にこ「……っ、亜里沙ちゃんは?」



真姫ちゃんの応急処置を受けながら、にこちゃんがそれを訊ねた。

そうだ。
亜里沙ちゃんはあの後……?



絵里「……ええと」



絵里ちゃんが視線を送る。
その先にいたのは、照井さん。
ひとつ頷き、口を開いた。



照井「絢瀬亜里沙は風都の警察病院に搬送させてもらった。治療と保護をするためだ」

にこ「……そう」

絵里「その方が安全だって話らしいわ」

照井「俺の仲間も警察病院で警護に当たっている。心配は無用だ」

にこ「まぁ、なら、そっちはもう安心していいってわけね」

照井「あぁ」

21 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 20:38:17.10 ID:fDR7qD7z0



希「…………それで、海未ちゃんたちは?」



穂乃果「っ」



希ちゃんの質問に、体が跳ねた。

……そう、だよね。
ちゃんと話さなきゃ、だよね。



穂乃果「え、えっとね……その」

にこ「………………」

穂乃果「海未ちゃんは…………っ、そのね……」



にこ「穂乃果、いいわ」



穂乃果「っ……にこちゃん?」

にこ「にこが話すから」

穂乃果「………………ごめん」



それだけを言って、俯く。
ほんとは、穂乃果が話さなきゃいけないことなのに……ごめん。




にこ「……にこが見た全部を話すわ」

にこ「とりあえず聞いて」


22 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 20:47:11.07 ID:fDR7qD7z0
にこちゃんが話したこと。

亜里沙ちゃんが海未ちゃんに狙われたこと。
それを穂乃果たちが説得したこと。
海未ちゃんと和解したこと。

そして、あの人が現れたこと。

全部話してくれた。
そして、




にこ「…………もうにこは仮面ライダーにはなれないわ」



そう言って、にこちゃんは壊れたドライバーを理事長の机の上に置いた。



理事長「……そうですか」

にこ「壊してしまってすみません」

理事長「いえ。にこさんが謝ることではありません」



先程も言いましたが、二人が帰ってきてくれたことに比べたら。
理事長はそう言った。



照井「……聞いてはいたが、こんな子どもが……」

にこ「これでもにこ二十歳なんだけど?」

照井「………………」

理事長「……事実です」

照井「……そうか。すまない」

にこ「ふんっ」



にこ「とにかく」

にこ「今、手元にあるのは、凛から預かった『サイクロン』のメモリと……」チラッ

凛「…………凛の、ドライバーだよね」

にこ「えぇ。そしてーー」



にこ「穂乃果の持ってるメモリだけよ」

穂乃果「っ、うん」


23 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 21:00:13.37 ID:fDR7qD7z0
理事長「それに対して、向こうには亜坂真白という人物がもつメモリ。それに、海未ちゃんと…………ことり」

希「人質……ってこと?」

絵里「でしょうね」

にこ「……しかも、海未は今まで以上に高い戦闘能力を持ったってことなのよね」


にこちゃんの言葉に、静かに頷く照井さん。



照井「ガイアメモリの『強化アダプタ』」

照井「一時期、俺たちが追っていた組織が流通させていた代物だ。その組織自体は壊滅したが、闇ルートで高値で取引されているらしい」

照井「それを使えば、メモリの出力を通常の3倍まで引き出すことができる」



凛「っ、3倍って……」



それに反応したのは凛ちゃん。
……そっか。
凛ちゃん、海未ちゃんと戦ってるんだもんね。



照井「聞いた話によると、園田海未の『アームズ』メモリとの適合率は低くない。その状態で使えば……確かに脅威だろうな」

にこ「…………『サイクロン』だけで倒せる相手じゃないわ」

凛「っ」ビクッ

24 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 21:23:21.67 ID:fDR7qD7z0

凛「…………凛、は……」ブルッ

花陽「凛ちゃん……」



『サイクロン』を使うなら彼女しかいないだろうね。

穂乃果の協力者からはそう言われていた。
『サイクロン』のメモリと適合率が高く、身体能力も高い凛ちゃんならば……って。

でも、今の凛ちゃんに戦わせるなんてーー。



にこ「誰もあんたに戦えって言ってないわよ」

凛「………………え?」



にこちゃん?
それって



にこ「……凛、ドライバー貸しなさい」

凛「!」

穂乃果「にこちゃん、それはっ!」



そう。
にこちゃんはまだ戦おうとしてるんだ。

もちろん穂乃果はそれを止める。
いくら海未ちゃんたちを助けたいからってーー




ーー バンッ ーー



真姫「バカじゃないのっ!!」




にこ「!?」
25 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 21:32:50.50 ID:fDR7qD7z0
穂乃果が止めるより前に、真姫ちゃんが声をあげた。
その声に、この場にいる全員が唖然としてしまって。



にこ「えっと……真姫ちゃん……?」



相当怒ってる、よね?
にこちゃんを睨み付けながら、真姫ちゃんは続ける。



真姫「こんなに、ぼろぼろなのよっ?」

真姫「確かに、海未やことりは大切よっ! でも、だからと言って……」



真姫「にこちゃんが傷ついていい訳ないじゃない!」



にこ「……でも、それじゃーー」

真姫「っ、照井さん!」

照井「……なんだ」

真姫「手錠、貸してください」

にこ「な!? 手錠って……!?」

真姫「そうでもしないと、にこちゃんとまらないんでしょっ!?」

にこ「っ、あんた……」

26 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 21:38:10.65 ID:fDR7qD7z0
目に涙を溜めて、それでもにこちゃんを睨み付ける真姫ちゃん。
仲間が傷ついてくのが耐えられない。
穂乃果たちもそれは同感で。
だけど、たぶんお医者さんを目指す真姫ちゃんだから、その想いは一層強いんだと思う。



希「……ウチも真姫ちゃんと同意見やね」

にこ「希……」



真姫ちゃんの言葉に同調するように、希ちゃんがそう言う。
それに、



花陽「わたしも……」

にこ「花陽まで」

花陽「にこちゃんが傷つくの、いやだよ」

にこ「っ」

絵里「そうね」



絵里ちゃんも頷く。
それを見て、流石のにこちゃんも諦めたみたい。
ため息を吐いて、



にこ「分かったわよ」



そう言った。
27 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 21:47:19.72 ID:fDR7qD7z0


にこ「でも、実際どうするわけ?」



戦える人、にこ以外いないでしょ?

そう聞くにこちゃんに答えたのは、



理事長「そのために、彼に協力を依頼したのよ」



理事長だ。

……そっか。
照井さん、仮面ライダーだったんだよね。



理事長「えぇ。あなたたちよりずっと前から戦ってるそうよ」

照井「あぁ。ここからは俺が戦おう。幸い風都にはあいつらがいる。事件解決の間くらいはどうにかなるだろう」



首謀者も分かっていることだしな。

照井さんはそう言った。
確かに、『亜坂真白』が首謀者だってことは分かってる。
だから、きっと刑事さんである照井さんの力があれば、隠れているところもすぐに分かるんだと思う。

だけど…………。



穂乃果「…………っ」



なんだろう。
嫌な、胸騒ぎがする。




ーーーーーー
28 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 21:48:10.46 ID:fDR7qD7z0
ーーーーーー
29 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 21:55:25.09 ID:fDR7qD7z0
ーーーーーー



「…………俺だ」

『どうやら無事そっちに着いたようだね』

「あぁ。だが、無事、というわけではない」

『園田海未の件か。それは……僕の落ち度だった。まさか『亜坂真白』が『強化アダプタ』を入手しているとは……』

「流石に検索だけでは分からないこと、か」

『あぁ。いつもそういう部分は、相棒の勘に頼ってる部分があるからね』



「…………それで『亜坂真白』の動機だが」

『まだ検索はできていないよ。キーワードが足りない』

「…………彼女の経歴についての検索はしたか?」

『? したけれど、特に有益な情報は……』

「なら、このキーワードを追加だ」




「『井坂深紅郎』」




『!』
30 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 21:58:18.58 ID:fDR7qD7z0

『……………………』

「どうだ?」

『…………あぁ、彼女がやろうとしていること。南ことりを利用した動機は検索できた』

「教えろ。それは一体……」

『………………あの男のーー』




『『井坂深紅郎』の復活さ』




ーーーーーー
31 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/04/30(月) 21:59:10.66 ID:fDR7qD7z0
短いですが今日はここまで。
レス感謝です。
32 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 20:30:33.37 ID:A1MflIiE0
ちょい更新。
33 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 20:31:28.09 ID:A1MflIiE0
ーーーーーー
34 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 20:40:37.45 ID:A1MflIiE0
ーーーーーー



にこ「…………」



照井さんに後のことを任せる。
その判断をした後のこと。

にこは、なぜか病院のベッドの上にいた。
…………まぁ、なぜって、あの後すぐに倒れたのが原因だけど。
話を聞いたら、丸1日眠り続けたらしい。

ちなみに、話を聞いた相手っていうのは、



にこ「…………ねぇ」

真姫「なによ?」

にこ「いつまであんたん家の病院にいればいいわけ?」

真姫「戦いが終わるまでよ」



このお嬢様である。
今日はずっとにこのベッドの脇で、イスに座って文庫本に目を落としている。



にこ「……にしても、暇ね」

真姫「本でも読めば?」

にこ「………………遠慮しとくわ」

真姫「そ」



……1日眠ってたんだから、もっとなにかあってもいいんじゃない?
まぁ、口には出さないけどさ。
本人なりに心配してくれたんでしょうし。
35 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 20:47:00.71 ID:A1MflIiE0



にこ「………………」

真姫「………………」

にこ「…………」

真姫「…………」



長めの沈黙に気まずくなってきて。
散歩でもしてくるフリをして抜け出そうかと考え始めた頃、




真姫「ねぇ、にこちゃん」




真姫ちゃんが口を開いた。
パタン、と本を閉じて、こちらを見つめてくる。
そして、問う。




真姫「なんで、そんなに無理するのよ……」




そこで、気づいた。
真姫ちゃんの目が少しだけ潤んでることに。



にこ「…………」

真姫「…………にこちゃんだって、辛いはずでしょ?
なのに、なんでそんな……」

にこ「…………」

真姫「ぼろぼろになってまで戦うのよ……」

にこ「………………」


36 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 20:58:47.08 ID:A1MflIiE0
なんで、ね。

真姫ちゃんの言うことは、間違ってない。
実際、戦うのは辛くて。
怪我をすれば痛くて。
正直、にこだってぼろぼろになってまですることじゃないと思うわ。
まして、にこはアイドルで、今回のことで事務所にも迷惑かけてるし。



真姫「だったらっ!」



そうね。
だったら、戦う必要なんてない。
誰かに任せてしまえばいい。
ドライバーは壊れてしまったけど、それこそ今までだってあれを理事長に返せばよかったはず。

でも、そうしなかったのはーー


37 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 20:59:56.01 ID:A1MflIiE0





にこ「『笑顔』にしたかったから、かしらね」




38 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 21:04:10.73 ID:A1MflIiE0
うん、そう。
にこの想いは変わらない。
最初からずっとそれだけを思って戦ってきた。



真姫「…………」



まぁ、でも。
こうやって後輩泣かせちゃってるんだから、世話ないわね。



ーー ナデナデ ーー



真姫「っ、な、なによっ!」

にこ「……別にぃ?」



にこはここで退場するべきね。

照井さんに戦いは任せたし。
それに、





ーー コンコン ーー




39 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 21:15:17.88 ID:A1MflIiE0

真姫「っ、だ、だれ!?」

にこ「入りなさい」



「……うん」



真姫「なんで……?」

にこ「来たわね」



病室のドアを開けて入ってきたそいつ。
彼女が来るのは、朝来たメールで知ってはいたけど。

…………うん。
あの時とは違う。
いい目してるわ。



にこ「照井さんのこと手伝うことに決めたのね?」

「うん」

にこ「そ。でも、本当に大丈夫なわけ? また心折れたりしない?」

「だいじょぶだよ。もう、大丈夫」

にこ「…………そ。それじゃーー」



にこは『それ』をバックから取り出し、机の上に置く。
そして、彼女は『それ』を受け取った。



にこ「……にこはもう戦えない。だから、頼んだわよ」



「……うん。分かってる」

「海未ちゃんも、ことりちゃんも絶対に助ける」

「全部、全部!」





凛「凛が守るよっ!!」





ーーーーーー
40 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 21:15:57.80 ID:A1MflIiE0
ーーーーーー
41 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 21:16:46.34 ID:A1MflIiE0
短いですが本日はここまで。
GW中にまた書きます。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/06(日) 17:15:43.38 ID:3GnfHEEvO
おつ
まってる
43 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:04:12.00 ID:McJFotcD0
GW中に書けませんでしたので、少しだけ更新します。
44 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:13:26.01 ID:McJFotcD0
ーーーーーー



にこちゃんが病院に運ばれた日の夜。
凛はかよちんの家に泊まることにした。
かよちんが不安そうだったから。


お風呂に入って、かよちんの部屋へ。
いつものお泊まり会と同じように、かよちんのベッドの隣に布団を敷いてから、すぐに電気を消す。



凛「………………」

花陽「………………」



普段はそこから色んなことを話すんだけど、今日はずっと静かで。

たぶんだけど。
今を逃したら、聞けなくなってしまうんだろうなって、そう思ったから。
凛は、



凛「ね、かよちん」



小さな声で、名前を呼んだ。
45 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:16:40.51 ID:McJFotcD0

花陽「なに?」



穏やかな声で、答えるかよちん。
トロンとした少し眠そうな声だ。



凛「ひとつ、聞いてもいいかな?」

花陽「うん」

凛「かよちんは……さ……」



だから、申し訳なく思う。
だって、これを聞いたらーー




凛「なんで、あのサイトを作ったの?」




ーーたぶん、この穏やかな雰囲気を壊しちゃうから。
46 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:20:46.05 ID:McJFotcD0



花陽「…………」



あのサイトっていうのが、どれのことかはかよちんもきっと分かってるはず。
だけど、凛の質問への答えはなかなか返ってこなかった。



花陽「…………」

凛「かよちん?」



ねぇ、なんで?

凛の問いかけ。
それに、かよちんは時間をかけてこう答えた。



花陽「なんとなく、だよ」


47 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:24:47.16 ID:McJFotcD0
なんとなく?



花陽「……うん」

花陽「不思議なことに興味があったから……」



こんなことになっちゃったのは申し訳ないなって思ってるけど。
かよちんはそう言う。



凛「……………………」

花陽「…………」



凛「ウソ、だよね」

花陽「!?」



うん。
かよちんの癖を知ってなくても、それを見なくても分かるようなウソだ。
だって、かよちん、




凛「声、震えてるよ」

花陽「っ」



48 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:32:37.69 ID:McJFotcD0
慌てて黙るかよちん。
その行動がもう、ウソだってしょーめいしてる。

……うん。
なんとなく、凛は気づいてたよ。
確かにかよちん、探偵ものとかは好きだけど、それで凛や真姫ちゃんを巻き込むのは変だなって思ってた。
かよちんらしくないなって。


じゃあ、かよちんが凛たちを巻き込む理由はなんだろう?


気のせいかも?
そう思ったりもしたけど、今のかよちんの様子を見てハッキリした。



凛「ねぇ、かよちん」

凛「おしえてよ」




凛「かよちんは、なんで『ガイアメモリ』に関わろうとしたの?」




花陽「…………」
49 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:36:26.20 ID:McJFotcD0

凛「…………」

花陽「…………」



待つ。

凛が聞きたいことは言った。
あとは凛は待つだけ。

かよちんが話してくれるのを。
かよちんの中の言葉がちゃんと整理されるのを。



花陽「………………」

凛「………………」

花陽「…………」

凛「…………」

50 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:46:46.38 ID:McJFotcD0
部屋に入ってくる月明かり。
それだけで回りの様子が見えるようになってきた頃。
待っていた言葉が、




花陽「たすけ、たかったの……」




降ってきた。
ポツリと、消えそうな声だったけど、凛の耳にはたしかに聞こえた。

助けたかった、って。



凛「助けたかった……?」



それは、誰を?



花陽「海未ちゃんとことりちゃん」



51 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:56:25.32 ID:McJFotcD0



凛「え……?」



返ってきたのは意外な名前。

海未ちゃんとことりちゃん?
二人を助けたかった、って……?
……あ、あれ?



凛「ちょ、ちょっと待ってよ!」

凛「かよちんがあのサイトを作って、『ガイアメモリ』の事件に関わろうとしたのって、穂乃果ちゃんから話を聞く前のはずでしょ!?」



うん。
そのはずにゃ。
穂乃果ちゃんから、ことりちゃんがドーパントにされて、海未ちゃんがドーパントになった話を聞いたのは……そう。
凛が仮面ライダーになった後だったはず。

でも、かよちんがサイトを作ったのは、ちょうど部室が破壊されて、かよちんが襲われたあの事件のすぐ後だった。

…………え?
え?
へん、だよね?
かよちんの話がほんとならーー




花陽「うん」

花陽「……花陽は知ってたの」



知ってた?
知ってたって、海未ちゃんたちのことを?
な、なんで!?




花陽「それはっ、花陽が、海未ちゃんを呼び出したからっ!」

花陽「『あの人』の指示でっ!」

凛「え? そ、それって!?」




花陽「花陽が、海未ちゃんをドーパントにしちゃったのッ!!」



52 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:03:41.68 ID:McJFotcD0
気づけば、かよちんは起き上がっていた。
月明かりが陰を作って、その表情は見えない。

だけど、泣いてる。
それだけは分かる。



花陽「あの日、花陽は『あの人』に……会ったんだよっ」

花陽「顔は見てないけど、声をかけられてっ」

花陽「そこで、見せられたのっ! 悪い夢、だった……っ」



かよちんはそう言って俯く。

悪い夢。
悪夢。
その中身を思い出してるのかもしれない。

どんなものかは……聞けない。
聞いたら、それを口にしたら、かよちんが壊れてしまいそうで……。

だから、続きを待つ。
凛にできるのはそれだけ。
53 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:11:00.82 ID:McJFotcD0




凛「…………かよちん……」

花陽「っ、ごめんね……」

凛「ううん……でも、辛いならーー」



花陽「……ううん。話す。話さなきゃ……だもん」

凛「……うん」



うん。
分かったよ。
凛、聞くから。



花陽「…………それで、『あの人』は花陽に迫ってきた」

花陽「今すぐ海未ちゃんに電話をかけなさいって。ことりちゃんがいる場所を海未ちゃんに伝えなさいって」

花陽「そうすれば……」



花陽「この悪夢が『未来』になることはないから」



なにを見せられたのかは分からない。
けど、たぶんそれは最悪の光景なんだろうってことは簡単に想像できる。
だから、かよちんは、



花陽「電話しちゃったんだ……」

花陽「海未ちゃんが危険になるかもって分かってたのに……っ」



凛「…………かよちん」


54 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:18:10.75 ID:McJFotcD0

結果として。
海未ちゃんはドーパントになって、ことりちゃんも救われてない。


…………そっか。
だから、かよちんはあのサイトを作ったんだ。

少しでも怪事件の情報を集めて、『あの人』……『亜坂真白』を探し出すために。
そして、海未ちゃんやことりちゃんを助けるために。




凛「…………戦おうとしてたんだね」



ポツリと。
出てきた言葉。
ふっと出てきた言葉だったけど、しっくりきた。

かよちんも戦ってたんだ。


55 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:23:22.49 ID:McJFotcD0

花陽「でも、ダメだったっ!」

花陽「花陽には、なにもっ、出来なくてっ」

花陽「海未ちゃんを助けることも、ことりちゃんを助けることもできないんだよっ」



凛「…………」



かよちんの想いが伝わってくる。

海未ちゃんを売ってしまったっていう後ろめたさも。
何もできなかったっていう悔しさも。
戦えない歯痒さも。

全部、全部伝わったよ。



凛「…………」

花陽「はなよ……はっ…………わたしは……っ」

凛「…………」



大丈夫。
伝わったから。
だから、
56 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:24:07.18 ID:McJFotcD0






ーー ギュッ ーー





凛「泣かないで、かよちん」




57 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:30:51.21 ID:McJFotcD0

抱きしめる。

大丈夫だよって。
自分を責めないでいいんだよって。
言葉にしなくても伝わるくらいに。



花陽「りん、ちゃん…………?」

凛「…………だいじょぶだよ」

花陽「でもっ、わたしはっ……わたしのせいで……っ!」



うん。
もうだいじょぶだから。

かよちんの想いは、凛が受け取ったよ。
凛が受け継ぐよ。



凛「……凛がやる」

花陽「………………え?」

凛「かよちんの代わりに、凛が戦うから」

花陽「っ、それは……でもっ!」




凛「大丈夫」




今度は戦える。
全部、凛が守るんだ。

亜里沙ちゃんも。
海未ちゃんも。
ことりちゃんも。
かよちんの想いも全部っ!

もう、折れない。




ーーーーーー
58 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:31:36.07 ID:McJFotcD0
ーーーーーー
59 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:32:19.29 ID:McJFotcD0
本日はここまで。
更新遅れてすみません。
レス感謝です。
60 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 19:37:24.18 ID:mnK6QAWp0
本日更新予定です。
61 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 19:57:35.83 ID:mnK6QAWp0
ーーーーーー




にこちゃんのお見舞いからの帰り道。
ふとバイクを停め、立ち寄ったのは音ノ木坂学院。
日曜日ということもあり、残念ながら校門は閉まってる。



穂乃果「はぁ……」



思わずため息が出る。
それは色んなことを考えてのもので。

例えば、にこちゃんの怪我とか。
例えば、凛ちゃんの決意とか。

穂乃果のせいで、二人には色んなものを背負わせちゃった。
……ううん。
今もまだ背負わせちゃってる。

それに比べてーー




穂乃果「わたしは……なにもできない……」



62 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 20:05:42.39 ID:mnK6QAWp0

「この二人、幼馴染みなのでしょう? それが怪物になるのを、貴女は二度も見ることになって」

「二度とも何もできなかった」

「フフッ、ねぇ……それを絶望と言わずしてなんと言うのかしらねぇッ!」



穂乃果「っ」



あの人の言葉を思い出して、胸が痛くなる。
ズキズキと。
穂乃果の胸になにかが突き刺さるみたいな痛みだ。

きっと、それはその言葉が的を得ているから、だと思う。

海未ちゃんが目の前でドーパントになったのに。
ことりちゃんがドーパントにされたのに。
穂乃果は何もできなかったから。

穂乃果がしたことといえば、にこちゃんと凛ちゃんにドライバーとメモリを渡しただけ。
二人に助けてもらおうとしただけ。



穂乃果「…………情けないや」



うつむき、呟く。
63 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 20:22:41.13 ID:mnK6QAWp0



穂乃果「…………」ギュッ



ふと、それを握る。
ポケットの上から、それの存在を確かめるみたいに強く握る。
穂乃果の協力者から渡されたもの。


ことりちゃんを救うためのガイアメモリ。
その能力はメモリの効果を完全に無効化する力。

これを使えば、ことりちゃんをメモリから解放して助けることができる。
ただし、



穂乃果「使えるのは1回だけ」



それ以降は起動できないようになっている。
彼からはそう言われた。
原理はよくわかんなかったけど、そのくらい強力なものだって話だった。
64 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 20:28:27.68 ID:mnK6QAWp0
問題は、



穂乃果「これ、穂乃果には使えない……よね」



ことりちゃんを助けるには、これを確実に当てなきゃダメ。
でも、あの人も、メモリに呑まれた海未ちゃんも倒して、ことりちゃんの元へ行く力は、穂乃果にはない。
あるわけない。



穂乃果「…………」

穂乃果「……照井さんに渡さなきゃ、かな」


……うん。
その方が絶対にーー




ーー prprprprprpr ーー



穂乃果「っ、と!」



メモリがない方のポケットから鳴り響く音。
連絡と護衛用に渡されたスタッグフォンの音だ。



穂乃果「は、はい!」



慌てて出る。
電話口から聞こえてきたのは、



『やぁ、高坂穂乃果』



穂乃果の協力者の声だった。
65 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 20:37:41.67 ID:mnK6QAWp0


穂乃果「こ、こんにちは。どうかしたんですか?」



世間話をするような仲じゃないから、たぶんなにかあったんだと思って、そう聞く。
って……あれ?


穂乃果「なんだか、息切れしてませんか?」

『っ、あぁ、少しトラブルが発生してね』

穂乃果「トラブル……?」



ざわつく。
何故か嫌な感じがする。
理事長室でも感じたあの感覚だ。



『あぁ、照井竜にはもう連絡はしてあるが……っ』

『君たちにも連絡すべきだと思ってね』

穂乃果「……あ、あの……それって……?」



あぁ、本当に。
残念なことに、穂乃果の嫌な予感は、




『絢瀬亜里沙が連れ去られた』

『園田海未の手によって』




的中してしまった。



ーーーーーー
66 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 21:01:40.20 ID:mnK6QAWp0
ーーーーーー



照井「一体何をしていたんだ!」

『……すまねぇ。入口は完全に見張ってたはずなんだ』

照井「…………それでも侵入された、そういうことか」

『あぁ。前に俺達が戦った『アームズ』にはそんな能力はなかったはずなんだが……』

照井「『強化アダプタ』でメモリの能力が強化された可能性はないか?」

『それはないはずだ。相棒がそれについては検索済みだからな』

照井「…………ならば、考えられるのは……」

『『もう一人』の能力だろ。そっちは情報が少なすぎて検索できてねぇんだ』

照井「…………とにかく追跡を続けろ。俺もすぐに追いつく」

『言われるまでもねぇ! あの子をこのままむざむざ拐われたんじゃ、探偵失格だ!!』ブツッ



照井「…………まったく美原の件といい、警察病院の警備も考え直す必要があるな」

照井「…………」スッ



照井「…………照井だ」

照井「君の後輩が拐われた。こちらの落ち度だ。すまない」

照井「……あぁ。巻き込むようなことはしたくないが、念のためだ」

照井「……………………場所が分かり次第連絡をする」



ーーーーーー
67 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 21:10:31.01 ID:mnK6QAWp0
ーーーーーー



凛「穂乃果ちゃん!」



協力者の彼からの連絡の後、すぐに凛ちゃんから電話があって。
凛ちゃんには照井さんから電話がきて、亜里沙ちゃんのことを知ったみたい。

すぐに合流しよう。
そう言われて、穂乃果も頷いた。
幸い、凛ちゃんも音ノ木坂の近くにいたようで、すぐに会うことができた。



凛「穂乃果ちゃんの方には?」

穂乃果「ううん、まだ」

凛「そっか」



あの後、連絡はない。
亜里沙ちゃんを連れ去った先が分かったら、連絡をくれるはずなんだけど……。



穂乃果「…………大丈夫、かな」



口を突いて出るのは、そんな言葉。

もし、逃げた先が分からなかったら?
もし、亜里沙ちゃんに例のメモリが使われちゃったら?
そう考えると、



穂乃果「っ」



血の気が引く。
それは、最悪の想像だった。

いやいやいや。
そんなことあり得ない!
こんな想像しちゃダメだよっ!

必死に頭を振って、その考えを頭から追い出す。
でも、やっぱり、どうしてもそれは頭から拭えなくて……。
68 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 21:17:58.47 ID:mnK6QAWp0




凛「だいじょぶにゃ!!」




穂乃果「っ、凛……ちゃん」


見れば、凛ちゃんは笑っていた。
なんで、笑えるの?
こんなに絶望的な状況なのに……?



凛「凛たちだけじゃないから」

穂乃果「え……?」



凛「皆を助けようと戦ってるのは、凛たちだけじゃないよ」



凛「照井さんも、穂乃果ちゃんの協力者の人も」

凛「穂乃果ちゃんも、凛も、かよちんも、にこちゃんも」

凛「きっと他にもたくさんの人が戦ってる」



そう言う凛ちゃん。
穂乃果を安心させるように、続ける。



凛「それに、凛たちが諦めたらダメだよ!」

凛「凛たちは信じるの!」



信じるって?
なにを?



凛「またみんなで笑いあえる未来を!」


69 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 21:26:00.46 ID:mnK6QAWp0


カッコいい。
そう、思った。



穂乃果「ふふっ」

凛「にゃ? どうかした?」

穂乃果「ううん。なんでも!」



ただ、凛ちゃん、とっても強くなったんだなって思っただけだよ。



凛「?」

穂乃果「…………うん。信じて、待とっか」

凛「うん!」




ーー prprprprprpr ーー



穂乃果「!」ピッ

穂乃果「はい!」

穂乃果「! 分かりました! すぐ向かいます!」ピッ



凛「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「うん! 行こう!」



凛ちゃんを後ろに乗せて。
すぐにキーを回す。

待っててね!
亜里沙ちゃん!



ーーーーーー
70 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 21:27:57.85 ID:mnK6QAWp0
今日はここまで。
ここまで付き合ってくださってる方はどのくらいいるのか不安はありますが……。
もうしばらくお付き合いください。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/10(木) 23:12:30.07 ID:0b2PzGxw0
見てるぞ
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/11(金) 13:02:14.03 ID:R+IIjl2T0
俺らはお前が頑張ってるのを見てるぞ。
(応援してます)
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/11(金) 18:54:40.58 ID:ENCTrxTgO
見てるよ
凛ちゃん戻ってきてくれて嬉しい
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/13(日) 12:47:40.03 ID:4GJzLyR8O
見てるぞ!
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/13(日) 20:56:49.99 ID:C+gpoNy6O
見てるからはよつづきかいて
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/17(木) 12:42:29.54 ID:5m6ol+pw0
マッテルノヨ
77 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 15:05:27.31 ID:I9Zxu1KGO
レス感謝です。
本当にありがたいです……。
本日更新予定。
78 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 18:56:30.90 ID:iYRe5ASE0
ーーーーーー



バイクを走らせて5分。
電話で聞いた場所に着くと、そこには照井さんがいた。



穂乃果「お待たせしましたっ!」

照井「来たか」

凛「亜里沙ちゃんは!?」

照井「この中だ」



照井さんの視線の先。
そこにあったのは、電話で聞いた通りーー



穂乃果「病院……ですよね」

照井「あぁ。開業医もいなくなり、もう使われなくなった病院だ」

穂乃果「…………」



真姫ちゃんのお家とは違って、大きな病院ではなく町のお医者さんって感じの場所。
でも、なんでだろう。
なんだか嫌な感じがするところだ。


照井「……ここで開業していた医者は、ろくでもない男だったからな」



ポツリと、照井さんは言った。



穂乃果「その人を、知ってるんですか?」

照井「俺に質問をするな」



過去のことだ。

それだけを言って、照井さんはその病院の方へ鋭い眼光を向けた。
そして、



照井「入るぞ。俺の後ろを離れるな」


79 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:01:06.40 ID:iYRe5ASE0

病院のなかは思ったよりきれいだった。
勿論、使われている形跡はない。
だけど、なんだろう……?



凛「人が住んでる……みたい」

穂乃果「うん」



穂乃果の前を歩く凛ちゃんの言葉に頷く。

長い間放置されてた様子じゃなくて、今でもここに人が住んでるような印象を受ける。
それは匂いとか、雰囲気とか。感覚的なことなんだけど……。



照井「狂信者か」

穂乃果「え? 今、なんてーー」




ーー ガタンッ ーー




80 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:04:50.78 ID:iYRe5ASE0
物音。
それは入口の方から。



凛「穂乃果ちゃん! 凛の後ろに!」

穂乃果「っ、うん!」



凛ちゃんと入れ替わって、二人の間へ。

ここまでは一本道だったはず。
でも、音がした。



照井「……ドライバーをつけろ」スッ

凛「はいっ」スッ



ーー ガチャッ ーー

ーー ガチャッ ーー


81 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:13:10.16 ID:iYRe5ASE0
勿論電気はついていない。
そのせいで、昼でも建物の中は薄暗かった。

だから、



「……………………」



入口、穂乃果たちの後ろから現れたその人物が、




海未「……………………」




海未ちゃんだって気づくのが遅れた。



穂乃果「海未ちゃんっ!」

凛「海未ちゃん!」



反射的に、名前を呼ぶ。
でも、海未ちゃんはそれに答えてはくれなくて。
その代わりにーー



照井「構えを解くなッ!」

凛「っ!?」

照井「来るぞ!!」



ーー バシュッ ーー



照井「くっ!?」グイッ

穂乃果「!?」



ーー ザクッ ーー



後ろに押し飛ばされた。
それを理解したのは、照井さんが咄嗟に飛ばしたビートルフォンに突き刺さっているナイフを見た後だった。
82 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:24:38.52 ID:iYRe5ASE0

穂乃果「っ、う、海未ちゃん……」

海未「………………」



照井「姿は変わっていない……だが、この能力は……」

凛「海未ちゃんは姿を変えずにメモリの力を使ってた!」

照井「リリーと同じ、か。やはり、亜坂という女……!」



照井さんが、海未ちゃんと私たちの間に立つ。
その手には、真っ赤なガイアメモリがあって。



照井「…………君たちは先に行け」

穂乃果「え……?」

照井「彼女は俺が助ける」

穂乃果「っ、でも!」



このまま進んでも……!
まだ!



照井「時間がないっ!!」

穂乃果「っ!?」



絢瀬亜里沙にメモリを使われれば終わりなんだろう!!

照井さんの言葉に、はっとした。
そうだった。
亜里沙ちゃんにメモリを使われたら……っ!




照井「それに君の持っているメモリでしか、南ことりは救えない」

照井「優先順位を間違えるな」



穂乃果「っ、は、はい!」
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