剣と魔法と運送業

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684 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 19:00:22.43 ID:hL49BO6h0
修道女「ど、どうですか??」

同僚ナビ「し、知らなかった…」ワナワナ

同僚ナビ「口の中を駆け抜ける"香り"」

同僚ナビ「滑らかな"舌触り"」

同僚ナビ「そして豊かな"味わい"…」

同僚ナビ「食事というものがこんなに素晴らしいものだったなんて…!」ウルウル

修道女「よ、良かったです…」ウルウル

同僚ナビ「さ!そうと分かればどんどん頂きましょう!!」クワッ

修道女「ですね!私もいただきまーす!!」

685 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 19:01:05.40 ID:hL49BO6h0
修道女「いやー美味しかったです!」マンプクー

同僚ナビ「初めての食事…堪能させて頂きましたわ」ツヤツヤ

修道女「ふわぁ…お腹いっぱいになったらなんだか眠く…」

同僚ナビ「話には聞いてましたが…ホントなのですね…ふわぁ」

修道女「ん…なんだか…変…で」zzzz

同僚ナビ「意識が…ぅ…」zzzz

686 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 19:01:42.20 ID:hL49BO6h0
本日ここまでとします
ありがとうございました
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/09(水) 19:47:09.31 ID:BOfZaq+xO
乙!やっぱオリジナルは面白いな

あとこういっちゃなんだが、ナビはもう一人の男のようなものでしょ?
つまり自分自身を好きになった、ようはナルS(飛ばされる音)
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/09(水) 20:58:51.41 ID:5qbairqFo
689 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:35:47.24 ID:H/U81EIU0
投下します
690 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:36:32.21 ID:H/U81EIU0
ザッザッ…ガラガラ…

同僚「わりぃっすねw台車まで貸してもらっちゃってwww」ガラガラ

ローブの老紳士「20年前、この大岩が出現した時」

ローブの老紳士「世は大きな戦いの最中であった」

ローブの老紳士「お前達がやって来たという荒野の国…そこに埋まっていた魔法石が、その力を暴発させ」

ローブの老紳士「辺り一帯の土地を丸ごと、この場所に転移させたのだ」

女「それまでこの場所には何があったんですか?被害を受けた方とか」

同僚「そうだな、いきなりこんな大岩が降ってきたら」ガラガラ

ローブの老紳士「案ずるな、ここには何も無い」フルフル

同僚「何もない?」

691 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:37:15.60 ID:H/U81EIU0
-??? 暗い坂道


ザッザッ…ガラガラ…

ローブの老紳士「見ろ」

女「坂道を下りきった先は…崖?」

同僚「だな…暗くてよく見えねーけど」

ローブの老紳士「見えぬのではない、存在しないのだ」パァァァァ

同僚「んなっ!?体が…!」フワッ

女「これは…飛行魔法!?」フワッ


スススーッ…


ローブの老紳士「見えるか」フワフワ

女「暗闇の中に大岩がポツンと…浮いてる??」フワフワ

同僚「なんだこりゃ…何なんだここは??」ポカーン

ローブの老紳士「ここは亜空間。お前達の住む場所とは理が異なる」

ローブの老紳士「土地は空間の中に点在し、魔法によって行き来をする」

ローブの老紳士「通常、お前達がここに入ってくる事はない」

ローブの老紳士「必要がないからだ」


692 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:38:01.23 ID:H/U81EIU0
同僚「俺達には用事があったんです」フワフワ

ローブの老紳士「理解出来る」コク

ローブの老紳士「我々には無い習慣だが、お前達が亡骸を埋葬する事は知識として知っている」

ローブの老紳士「それで、用事は済んだのか?聞きたい事があるなら聞くがいい」

女「亜空間…飛行魔法…点在する土地…そして」ブツブツ

同僚「女ちゃん、どした?」

女「…あ、あの」ガタガタ

ローブの老紳士「何だ?」

女「暗闇に点在する土地…うんと遠くに見える、一際大きなあの場所」ユビサシ

女「あそこに見える建造物は…?」ガタガタ

同僚「女ちゃん?震えて…?」

ローブの老紳士「あの場所は我らが頂」

スッ スルスル…

老ガーゴイル「我々魔族を統べる者、魔王様の城だ」

693 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:39:30.08 ID:H/U81EIU0
-白亜の城 応接間-


修道女「っ!!」パチ

同僚ナビ「っ!!」パチ

修道女「あれ…私達…眠って…?」グシグシ

同僚ナビ「…初めての事とは言え、あそこまで強烈な眠気に襲われるものなのでしょうか?」

修道女「いえ、さすがにあそこまでは」フルフル

同僚ナビ「となると、何かを盛られたという可能性が高いですわね」

ガチャ

「お目覚めになりましたか?」

694 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:40:55.41 ID:H/U81EIU0
女王「おはようございます」ニコッ

修道女「あ、おはようございますー」ペコッ

同僚ナビ「この度は素敵なおもてなしを賜り恐縮ですわ」キッ

女王「…私達の身を守る為、眠っている間に所持品を改めさせていただきました」

女王「島のみんなを守る為なの、気を悪くなさらないで頂戴」

同僚ナビ「分かりましたわ、では私達が危険な存在ではないとご理解頂けまして?」

女王「えぇ勿論、無礼をお詫びします」ペコッ

修道女「そ、そんな!分かって頂けたなら!」アワアワ

女王「…。」ジーッ

修道女「な、何でしょう」ドキドキ

女王「…あの子達の言った通りね」ジーッ

修道女「へ??」ドキドキ

女王「あなた、人間の匂いに混じって…私達と同じ匂いがするわ」

修道女「…そ、それって」

695 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:42:25.59 ID:H/U81EIU0
かくかくしかじか

修道女「私の出生についてはこんな所ですねー」

同僚ナビ「そうだったんですの…では修道院のシスター長さんが」

修道女「はい!血は繋がっていませんけど、私のお母さんです」ニコッ

女王「…。」

修道女「あ、あの、それが何か…?」

女王「…。」

女王「…20年前の戦乱の最中、私達の同胞の一人が人間の男性と恋に落ちました」

女王「当時はまだこの島も人間の世界との行き来がありましたからね」

女王「彼女は男性と共に島を去り、子を成しました」

修道女「…。」

696 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:42:56.00 ID:H/U81EIU0
同僚ナビ「その後はどうなったんですの?」

女王「元々彼女は体が弱く、加えて人間の世界の空気が合わなかったのでしょう」フルフル

女王「娘を出産した直後、亡くなったと聞いています」

修道女「そ、そんな…!」

女王「その後時を置かず、行商人をしていた男性も行方が分からなくなりました」

女王「戦乱の世です、珍しい事ではありませんでした」

女王「取り残された筈の娘がどうなったのかは、誰も知りません」

697 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:43:32.83 ID:H/U81EIU0
修道女「そ、それじゃ…私が…??」ポカーン

女王「…そちらの妖精さん、私達が使役する妖精とは違いますね?」

同僚ナビ「私は精霊ナビと言って、魔法石に人間の心を写し取った存在なのですわ」

同僚ナビ「今は何故か実体化して、食事まで出来ましたけれど」

女王「成る程」コク

女王「それは恐らくこの島に満ちている魔力と、修道女さんの魔力が共鳴した結果でしょう」

女王「あなたの中に流れる、エルフの血がそれを成したのでしょう」

698 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:45:08.68 ID:H/U81EIU0
修道女「私の中の…エルフの血…」

同僚ナビ「突然何の話をなさるのかと思えば…」

同僚ナビ「いきなりそのような話を聞かされて、彼女の気持ちをお考えでして!?」キッ

女王「驚かせてしまってごめんなさい」ペコッ

修道女「だ、大丈夫です…」フルフル

女王「ただ、分かって頂きたいの」

女王「もう二度と会う事はないと思っていた…私達の血を分けた仲間」ジワッ

女王「私は嬉しいのです…あなたが生きていてくれた事が」ポロポロ

修道女「…。」

同僚ナビ「…。」

女王「神よ…」ポロポロ

699 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:47:00.81 ID:H/U81EIU0
-北西地方 小さな集落-


ブロロロ…キキッ

先輩「小型カーゴも運転ラクでいいな」ガチャ

先輩「さて…噂の真偽や如何に」ザッザッ

先輩「すんませーん!」

老人「む?なんや物流協会か」

先輩「はい!ちょっと届け物で、最近この辺りに越して来た男性いますよね?」

老人「あぁ、あの偏屈な野郎な」フンッ

老人「そっちの林の近くにある家やな」

先輩「林の近くですね?ありがとうございます!」

老人「ん?でもあんた荷物らしいモンを持ってるようには見えへn先輩「そーだ!教えてくれたお礼に!」サッ

先輩「東の港名産!帆立の燻製です、スコッチと合うんですよー」ニコッ

老人「おぉこりゃ美味そうやな!なんや悪いなぁ」ニコニコ

先輩「いえいえ!ほんのお礼ですから」

先輩「それでは!」ソソクサ

700 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:47:52.89 ID:H/U81EIU0
-林の近く 小さな家-


先輩「いかにもって感じだな」

先輩「こんにちはー!物流協会でーす」コンコンッ

ギィィ

「何だ?荷物など届く覚えは…」

ガシッ

先輩「…お元気そうで何よりです、賢者殿」グイッ

賢者「っ!お前は巨石の間にいた…!」

先輩「俺はただのドライバーですよ」

先輩「もちろんあなたを逮捕する権限なんて有りませんからご安心を」ニコッ

賢者「…何の用だ?」ギロリッ

先輩「教えて下さい、あなたが何をしようとしているのかを」

701 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:48:39.83 ID:H/U81EIU0
-小さな家 ダイニング-


賢者「ウィッタードでいいか?」コポポ

先輩「まさか賢者殿にお茶を淹れて頂けるとは」

賢者「自分の置かれた状況くらい理解している、お前を追い返したところでデメリットしかない」コトッ

先輩「頂戴します」ズズッ

賢者「…。」ズズッ

先輩「…ふぅ。それで、ここでは何の研究をなさってるんですか?」

賢者「私の使命はただ一つ、魔王を討つ事だ」

先輩「…その為に、人の血で手を染める事になってもですか?」ギロッ

賢者「…神の雷と同じ威力、同じ規模の攻撃を人力のみで賄おうと思ったら」

賢者「陸軍など全員突っ込んでもまるで足りないのだ」フンッ

先輩「だからってあんたは勇者さんや男を…!」

賢者「…。」ズズッ

賢者「そして陸軍を全員投入するという事は、その全員の命を危険に晒すことだ」

賢者「遠隔攻撃である神の雷とは違い、戦う者全てを死なせる事になるやも知れん」

賢者「お前達の言っている事は、所詮甘っちょろい正義感や上っ面の理想論でしかないのだ」

先輩「そ、それは….!」ギリッ

702 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:49:19.12 ID:H/U81EIU0
賢者「質問に答えよう」

賢者「現状、巨石の力は沈黙したままだ」

賢者「勇者という強い心を持った、いわば"核"が欠落しているからだ」

賢者「私は新たな"核"を生み出す為にこの地で研究を続けている」

先輩「核…それは人の心という事か?」

賢者「それに限りなく近いものだよ、お前もよく知っているだろう」

先輩「まさか…ナビシステムか!?」

賢者「左様。それこそがナビシステム開発の当初の目的だったのだ」

賢者「人の心を写し取り、魔法石に封じ込める…」

賢者「勇者が巨石に取り込まれたのとは逆のプロセスだな」

先輩「じゃあ、あの巨石をそのままナビシステムとして使うって事か」

賢者「あぁ。だが、簡単な事ではない」

賢者「20年前のあの日、この地に落ちた涙の欠片…」

賢者「そういった、心を増強する何かが必要なのだ」

先輩「心を増強する何か…」

703 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:52:39.25 ID:H/U81EIU0
-亜空間 赤土の大岩付近-


同僚「いぃっ!!?ま、魔族!?」ゾクッ

女「やっぱりね…」ビクビク

老ガーゴイル「それが分かったとて、さて何とする?」

同僚「何とするって…ここでやるしかねぇのか?」

女「無理よ…今私達はあの魔族の飛行魔法で宙ぶらりんなのよ」フワフワ

同僚「確かにこの状態じゃ戦うっつってもな」フワフワ

女「そういう事。喧嘩にすらならないわ」

老ガーゴイル「考える事の出来る人間は嫌いではない」

老ガーゴイル「お前達はお前達の用事を済ませる為にここへ来た」

老ガーゴイル「そしてその用事は、無事に済ませた」

同僚「それに関しちゃ感謝してるぜ」

女「ど、同僚くん…」

老ガーゴイル「ここには我々の家があり、同胞があり」

老ガーゴイル「秩序があり、生活がある」

同僚「なんだ、人間と変わんねぇじゃねーか」

老ガーゴイル「そうだ。そして、お前達が我々に対して剣を抜くつもりがないのならば」

老ガーゴイル「私はこのまま、お前達を荒野の国へ送り届けよう」

704 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:53:29.06 ID:H/U81EIU0
女「っく…ど、同僚くん、どうする?」ヒソヒソ

同僚「どうしようもなくねww喧嘩にならねぇって言ったの女ちゃんじゃんww」ヒソヒソ

女「そりゃそうだけど」ヒソヒソ

同僚「分かったよオッサン」クルッ

同僚「俺と彼女はここでアンタに剣を抜かない、それは約束する」

老ガーゴイル「そうか」

同僚「だけど他の人間は分かんないぜ?アンタらをぶっ飛ばしたくて仕方ない奴がいっぱいいるんだ」

老ガーゴイル「どうしても戦争がしたいというのならば相手になろう」ギロリッ

女「っ!」ビクッ

老ガーゴイル「だが、わざわざ同胞の亡骸を拾いに来たお前達を蹂躙するような趣味はない」

パァァァァ

老ガーゴイル「帰ってよく話せ。意味のある選択とは何か、と」



バヒューーーーーン

705 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:02:26.97 ID:H/U81EIU0
女王「取り乱してしまってごめんなさい」ペコッ

修道女「い、いえいえ!」アセ

女王「人間の男性との間に生まれたとは言え、あなたが私達の同胞である事に変わりはありません」

女王「同胞…いえ、家族ですね」

修道女「か、家族…」

女王「私達はあなたを家族として迎える準備があります」

女王「あなたがもし望むのであれば、この島で一緒に暮らしましょう」

修道女「え、えぇっ!!?」

女王「勿論今すぐここで決めろ、とは言いません」

女王「ゆっくり考えて決めて下さい、私達はいつでも歓迎します」ニコッ

706 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:03:39.33 ID:H/U81EIU0
-白い砂浜-


ザッザッ…

女王「私達がこの島を結界により封じ込めたのは」

女王「人間と魔族との戦が激しさを増してきた頃です」

女王「私達エルフは魔法詠唱に長けていますが…主に回復や祝福、蘇生といった類に限られます」

女王「攻撃の手段を持たぬ私達は、ただその身を潜めるしか生き延びる術がなかったのです」

修道女「…。」

同僚ナビ「…。」


ザッ


女王「ここでお送りします」

修道女「…色々と、お世話になりました」ペコッ

同僚ナビ「…。」ペコッ

女王「最後にこれを渡しておきます」スッ

修道女「これは…ペンダント?」

女王「この島は通常の方法では行き来が出来ません」

女王「このペンダントを身につけて、転移魔法を詠唱すれば外からまた訪れる事が出来ます」

707 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:04:16.53 ID:H/U81EIU0
修道女「あ、ありがとうございます」ギュッ

女王「シスター長さん…あなたのお母様によろしくお伝え下さい」

修道女「…はい」コク

女王「ではお二人共お気を付けて、またお会い出来る事を望んでいます」ニコッ


パァァァァ…

バヒューーーーーン

708 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:06:51.09 ID:H/U81EIU0
-夜 王都郊外 煉瓦橋-


リンゴーン リーンゴーン…

男「」シュボッ スゥ

スパァ…

男「…ふぅ」

テクテク

同僚「どったのwこんな所で黄昏ちまってよwww」ニカッ

男「そんなんじゃないよ」フフッ

男「ここから見る時計塔が好きなんだ」

同僚「王国の象徴だかんなーw今日もビシっとキマってるぜwww」

男「…吸うか?」スッ

同僚「珍しいじゃんかwwじゃ付き合いましょーww」シュボッ スゥ

スパァ…モクモク

同僚「…えほっw」ゴホゴホ

男「おい大丈夫か?無理して吸わなくても」

同僚「いーんだよww同じ味吸ってたらよwww」

男「?」

同僚「同じ気持ちになれるかも知れないじゃんか」ニカッ

男「…ありがと」フッ

709 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:07:43.57 ID:H/U81EIU0
男「色々あったみたいだな」

同僚「お互いになーww」

同僚「うちの相棒に聞いたぜ?ナビちゃんの前でガチギレしたらしいじゃんww」

男「…なんか虚しくなっちゃってさ」ハァ

同僚「難しいよな、みんなどうしたって自分の事で精一杯になっちまうもんさ」

男「多分さ、ほんのちょっとした事なんだよ」

男「みんながほんの少しずつ優しくなれれば、世界はきっと…」

同僚「お前のそういうとこ、嫌いじゃないぜ」フフッ

同僚「なぁw煉瓦橋も時計塔も俺達王国民の誇りだけどよwww」

男「…もう一個あるってか?」クスッ

同僚「そのとーりwww」ビシッ

男・同僚「修道院特製エールと揚げたてのフィッシュフライ!!」

男「ハハッ!オッケー行くか!」ニコッ

同僚「そうこなくちゃよwww」ワハハ

710 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:08:30.41 ID:H/U81EIU0
王都 酒場街


ワイワイ…ガヤガヤ…

同僚「俺さ、協会には報告してねぇんだけどww」グビ

男「?」ゴクゴク

同僚「勇者の落涙からぶっ飛んでった場所で、魔族に会ったんだww」

男「ま、魔族!?大丈夫だったのか??」

同僚「なんかすげー聡明な奴でよww説教?されちまったwww」ケラケラ

男「説教?魔族に??」ポカーン

同僚「んで、なんか色々分かんなくなっちまったんだ」フゥ

同僚「俺アホだからさwww難しい事は分かんないのよwww」

男「よく言うよ」クスッ

同僚「いや、マジでさ」

711 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:08:59.88 ID:H/U81EIU0
同僚「お前、想像した事あるか?」

男「何を?」モグモグ

同僚「魔族にも心があるかも知れないって」

男「…お前の会った魔族ってどんな奴だったんだ?」

同僚「同胞の亡骸を拾いに来たお前らをわざわざぶっ殺す趣味はねーってよw」

男「そ、それって」

同僚「んで、最後に言ったワケw」

同僚「"意味のある選択とは何か、よく考えろ"ってな」

男「衝撃だな…」

同僚「だろーww?俺もうワケ分かんなくなっちゃってよwww」

男「うぅむ…」

同僚「なぁ、俺達のやろうとしてる事って正しいのか?」

男「…。」

712 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:12:13.09 ID:H/U81EIU0
-物流協会事務局 女の執務室-


カリカリ…

女「ナビくんがいてくれて本当に助かるわ」

ショタナビ『ほめられちゃった!へへー』ニコニコ

女「それにしてもあの魔族…」ペラッ

[禁書指定 全員集合!魔族大図鑑]

女「あの姿形から見て、ガーゴイルね」パラパラッ

女「"…ガーゴイルは人間並みの高い知能を持ち、魔法詠唱に長けているぞ!"」

女「"戦闘能力も高く、剣の一振りで岩をも砕く力を持っているぞ!"」

女「…やり合わなくて正解だったわね」ゾクッ

女「でも、人間並みの高い知能って事は」

女「あの時の話は、ともすれば私達を欺く為の嘘だったのかも…?」

女「いえ、だったらもっと手っ取り早くやられていたでしょうね」フルフル

女「何故私達に遺骨を拾わせて何もせずに送り返したの?」

女「あの魔族の話が本当だとしたら」

女「私達のやろうとしている事って…」

713 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:12:50.52 ID:H/U81EIU0
女「魔王についても書かれているわね」パラパラッ

女「しかしこんな文献誰が書いたのかしら…?」

女「"魔法はその存在全てが謎に包まれているぞ!"」

女「"太古の昔からの記憶を引き継ぎ、その聡明さは人間を遥かに凌ぐぞ!"」

女「"強烈な広域魔法を連続して使ってくるから要注意だ!"」

女「"この先は君自身の目で確かめてくれ!"…って」

女「最後まで教えなさいよ!」

ショタナビ『おねーさん怒ってる?』

714 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:13:19.05 ID:H/U81EIU0
本日ここまでとします
ありがとうございました
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/10(木) 23:48:12.90 ID:m/l+EeoLo
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/11(金) 10:32:30.77 ID:lGtkKwZCO
まあ確かに一部の魔族は敵対したかもしれないが=全ての魔族が悪とかとは限らないもんな…
魔族にだってそれぞれの個性や考え方もあるし生活だってあるだろうし
それに魔王だって実際に目にしたわけでもなく話でしか聞いてないから伝承=本当とも限らないもんなぁ
そう考えたら何を信じたらいいかも何が正解かもわかんないよね
717 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:15:40.20 ID:o9PPczQNO
-1週間後 王国議会-


議長「荒野の国から書簡が?」

局長「はい、物流協会の事務局宛てに」ペラッ

国王「…。」

局長「読み上げますか?」

議長「頼む」

局長「では…」コホン

"過去は変えられない、だが"

"貴君らは筋を通してくれた"

"彼の地を訪れ、我が同胞を連れ帰ってくれた事"

"誠に痛み入る"

"西の王国より打診された陸軍派遣について"

"世界の平和という大義の元に"

"これを承認しよう"

"これ以上、無益な骸を重ねる事のなきよう"

"くれぐれもお願いされたし"

"荒野の国 首領"

局長「以上です」

議長「どういう事だ…」ポカーン

国王「…。」

718 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:16:29.06 ID:o9PPczQNO
大佐「詳しい事は分からないが、ともかくこれで荒野の国への派兵が叶うわけだな」

局長「そういう事ですね」

議長「分かりました、それでは早速使節団を派遣して具体的な話し合いをしましょう」

国王「議長」スクッ

議長「はい、陛下」

国王「私も同行する」

議長「へ、陛下ご自身がですか!?」

大佐「荒野の国までは長旅です、魔族との衝突などの危険も考えられます」

国王「陸軍の護衛では不十分だと?」

大佐「い、いえ!決してそのような事は」

国王「向こうが心を開いたのならば、こちらもそれなりの態度を示さねばならん」

国王「これは王国の長である私の責任だ」

議長「わ、分かりました」

大佐「それでは陛下のご同行を加味した上で、日程の調整などを相談しよう」

局長「承知しました、こちらも手配を進めます」

国王「…。」

719 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:19:28.73 ID:o9PPczQNO
-王都 市街地-


ブロロロ…

同僚「…。」ガチャ

同僚ナビ『やけに静かですわね、拾い食いでもしてお腹壊したんですの?』

同僚「お前は俺をどういう目で見てんのよwww」

同僚ナビ『冗談ですわ』クスッ

同僚「…なぁ相棒」

同僚ナビ『何ですの?』

同僚「修道女の奴、何があったんだ?」

同僚「勇者の落涙で再会した時、ずっと塞ぎ込んでやがったが」

同僚「お前達がぶっ飛んでった先で何があったんだ?」

720 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:20:06.59 ID:o9PPczQNO
同僚ナビ『何かがあった、私に言えるのはここまでですわ』フゥ

同僚「それほぼ何も言ってなくねwww」

同僚ナビ『個人的なお話なので、ご本人にお聞きになって下さいませ』フイッ

同僚「…分かった」

同僚ナビ『あ、次の届け先また不在でしたわ』

同僚「もー自分で時間指定しといて不在とか何なのww忍びの者なのwww?」

ガチャ ブロロロ…

721 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:21:33.13 ID:o9PPczQNO
-物流倉庫 事務所-


男「荒野の国への運行ですか?」

ナビ『マジか』

先輩「ついに決まったか」

配車係「えぇ。一週間後に出発です」

配車係「まずシップで隣国へ渡り、向こうで展開している陸軍と合流して」

配車係「あとはひたすら東へ向かいます」

ナビ『ひゃー長旅やん!』

配車係「途中、何箇所か展開している陸軍の宿営地で補給を受けられますので」

先輩「それなら問題ないか」

男「…。」ギリッ

722 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:22:08.07 ID:o9PPczQNO
配車係「それと、今回の運行では国王陛下も同行します」

ナビ『こ、国王はん!?』

配車係「荒野の国との関係上、代理の者に行かせるわけにはいかないと」

配車係「陛下直々のご意向です」

先輩「陛下を乗せて行くのか、責任重大だな」

配車係「とりあえず、来週までは通常の運行も緩めに組みますので」

配車係「体調管理等、しっかり準備しておいて下さい」

723 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:23:23.28 ID:o9PPczQNO
-夜 王都酒場街-

[BAR REQUIEM]


カランッ

女「荒野の国への派兵が決まったようね」ゴク

先輩「あぁ、一週間後に出発だ」

女「…しばらく会えなくなるわね」

先輩「珍しいじゃないか、君がそんな台詞を吐くなんて」フフッ

女「あら、ご不満?」

先輩「大歓迎だとも」

女「…不安なのよ、何だか」

女「私達がやろうとしている事は、果たして本当に正しいのかしら?」

先輩「…どういう意味だ?」

女「…。」
724 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:25:28.04 ID:o9PPczQNO
-鍛治職人の里 広場-


親父「そうか、荒野の国への派兵が決まったか」

男「俺と先輩で行ってくるよ」

親父「気ぃ付けて行ってこいよ」ポンッ

男「うん…」

親父「…何だ、まだ腹が決まってねぇって顔してるな」ジーッ

男「なぁ親父、あのさ」

親父「んー?」シュボッ スゥ

男「…魔王って、どんな奴なんだ?」

親父「魔王か…」スパァ

親父「実は俺もよく分かんねぇんだ」

男「そうなのか?だって20年前に魔王討伐目前まで行ったんだろ?」

親父「強いて言うなら…ありゃ本当の魔物だ」

725 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:26:07.34 ID:o9PPczQNO
男「どういう意味だ?」

親父「姿は見えず、声も聞こえず」

親父「ただそこに在るだけで感じる、圧倒的な殺気…」

親父「空気が震える程のな」

男「そ、そんなのを相手に戦ってたのか…」ゾクッ

親父「勇者や賢者と旅する中で、強い奴には死ぬ程遭遇したが」

親父「あそこまでの恐怖を感じた事はなかったな」

男「…。」

親父「前にも言ったがな」シュボッ スゥ

男「とにかく生き残れ、だろ?」

親父「そういうこった」スパァ

親父「必ず生きて帰ってこい、いいな?」

男「あぁ、約束する」

726 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:27:01.59 ID:o9PPczQNO
-鍛治職人の里 入り口-


ゴゥンゴゥン…

ナビ『おとさん、はじめまして』ペコッ

親父「お前さんがナビちゃんか!はじめまして!」

親父「可愛らしい女の子じゃないか!」ワハハ

ナビ『ど、どーもです』カチコチ

男「なんだよお前緊張してるのか?」クスッ

ナビ『そ、そらするやろ!男ちゃんのおとさんやで!!』

親父「懐かしいなぁその北西訛り…女の小さい頃を思い出すぜ」ニコニコ

ナビ『え、ウチとちっちゃい頃の女さんって似てるん??』

親父「容姿は違うがな、よくしゃべる所とかはそっくりだ」ウンウン

ナビ『なんか複雑やな…』ジト

男「え?俺??」

727 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:27:57.91 ID:o9PPczQNO
親父「あとその"おとさん"ってのがまた…」ウルッ

男「な、なんだよ親父!急に泣くなよ!」アセッ

親父「泣いてねーよ!俺にとっちゃ大事な思い出なのさ」ニカッ

ナビ『ウチの中の記憶にあるおとさんの様子と全然変わらへん…ホンマに年とったん?』

親父「なんだよ勇者とおんなじ事をナビちゃんまで言うのかよ!褒めてねーからそれ!」ワハハ

男「まぁともかく、こいつが俺の相方なんだ」

ナビ『ふふっ。相方ってなんかえぇなぁ♪』

男「運行でもそうだし、今は魔法剣として一緒に戦う事も出来るからな」

ナビ『魔法剣なー!さすがおとさん♪あんなんよぉ思いついたわ』ウンウン

728 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:29:20.23 ID:o9PPczQNO
親父「魔法剣?なんだそりゃ」キョトン

男「いやいや、親父がくれた剣に魔法石を嵌める為の穴があるじゃないか」

親父「穴?あー柄のトコの穴か!」

ナビ『そーそー!ウチがぴったりハマんねん!』

親父「ありゃな、指を入れる穴だ」

男「へ?」

親父「俺の手癖というか、あそこに指を入れると手首のスナップで剣が振れるんだよ」クイックイッ

男「そうなの!?」ガビーン

ナビ『なんやそれ…』ズコーン

親父「なるほどな、そこに魔法石を仕込むわけか!よく思いついたな!」ワハハ

男「俺はその為の穴だとてっきり…」

親父「だって俺魔法使わねぇもん」アッサリ

ナビ『ほんなら、たまたまやったん??』

親父「玉(魔法石)だけにな」キリッ

男「そんな…」アゼン

ナビ『おとさん、そんなんいらんねん…』ボーゼン

親父「まぁ偶然とは言え、今後のお前の武器になり得るんじゃねぇか?」ニカッ

男「魔王の話を聞いたら尚更戦いたくなくなったけどな…」ゲンナリ

729 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:31:39.57 ID:o9PPczQNO
-夜 王都郊外 煉瓦橋-


リンゴーン リーンゴーン…

同僚「どうしたのよww勇者の落涙以降元気ないじゃんかwww」

修道女「へへ、そうですかね…」

同僚「そんなに分かりやすく元気なくなる人そういないぞwww」

修道女「…。」ウツムキ

同僚「…何かあったのか?」ポンポン

修道女「…っく、う…」ウルウル

修道女「うぅ…同僚さぁん…!」ポロポロ

同僚「おいおい何だよどうしたんだよ」アセッ

修道女「わたし…わたし…」ポロポロ

ヒシッ

同僚「…っ」ギュッ ポンポン

730 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:32:13.64 ID:o9PPczQNO
[BAR REQUIEM]


カランッ…

同僚「そうか、お前の出生がな」

修道女「私、いきなりそんな話をされてもう何が何だか…」フルフル

同僚「そりゃ困るわなwwwだってお前にとっての家族はよwww」

修道女「修道院の皆さんと…シスター長さんです」コクッ

同僚「だったらもう答えは出てるじゃねぇか」

修道女「そうなんですけどねー」ベター

同僚「カウンターに突っ伏すんじゃないわよ行儀悪いwww」

731 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:32:49.26 ID:o9PPczQNO
修道女「あの方…泣いてたんです」

同僚「?」

修道女「私が産まれてきて、生きてたって事が嬉しいって…泣いてくれたんです」ウルッ

同僚「…そっか」

修道女「今更家族になる事は難しいんですけど…何かしてあげたいんですよね」

同僚「何かって…肩揉みとかか?」

修道女「そこ草生やさないんですか」クスッ

同僚「冗談のつもりじゃなかったもんwww」

732 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:35:30.72 ID:o9PPczQNO
-王立図書館-



男「長旅に備えて多めに借りておくか」テクテク

魔法石(ナビ)『すんげー!本がいっぱいやぁ!』ウキウキ

男「まぁ図書館だからな」フフッ

魔法石(ナビ)『タイトルを見てるだけでも面白いなぁ♪』

男「あれとこれと…あ、それも読んでみたかった奴だ」

魔法石(ナビ)『あ!男ちゃんあれは?』

男「ほう、たまにはこういうジャンルも挑戦してみるか」スッ

テクテク

733 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:37:03.60 ID:o9PPczQNO
-深夜 物流倉庫 事務所-


カタカタ…

配車係「明日の配車組みはこんなもんか…んーっ」ノビーッ

ナビ『どーちゃん久しぶりやんな!』ハイタッチ

同僚ナビ『ふふっ。そういえばそうですわね』ハイタッチ

ナビ『あんなー?今日男ちゃんと図書館に行ってんかぁ』

同僚ナビ『男さんも読書家でしたわね、全く同僚さんにも見習って欲しいですわ』クスッ

ナビ『でなー?なんや面白そうなタイトルの本があってん!』

734 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:37:40.86 ID:o9PPczQNO
ガチャ

女「お疲れ様です」

配車係「あ、お疲れ様でーす」

ナビ『女さんや!やっほー♪』

女「はいはい、やっほー♪」ニコッ

ショタナビ『ふわぁ…おねーさん僕もう眠いかも』ムニャ

同僚ナビ『!!!』

ナビ『あ!その子が噂の!』

女「そういえば紹介してなかったわね、私のナビくんよ」コトッ

[魔法石ノ充填ヲ開始シマス…]パァァ

735 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:39:20.79 ID:o9PPczQNO
ナビ『ウチが男ちゃんのナビやで!よろしゅうね♪』ニコッ

同僚ナビ『なんと…可愛らしい…』ハァハァ

ショタナビ『こんにちは!あれ、こんばんは、か!間違えちゃった』テヘ

同僚ナビ『くっはぁ!!』ズキュゥゥン

ナビ『なぁなぁ女さん?』

女「何かしら?」

ナビ『今日男ちゃんと図書館行ってな?面白そうな本を借りてきてん!』

女「あぁこれかしら?もう机の上に出しっぱなしにして」スッ

ナビ『それヤバない?おんなじ名前の人が24人もおったらワケ分からんくなるやん!』ケラケラ

女「ふふっ、そうじゃないのよ」

女「これは解離性障害、いわゆる多重人格の人の話なの」

ナビ『たじゅーじんかく?』

736 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:40:14.35 ID:o9PPczQNO
女「一人の人間の中に、何人もの別々の心が生まれてしまうのよ」

ナビ『ぶっ飛んだ設定やんなー』

女「信じられないかも知れないけれど、この本はノンフィクションなの」

ナビ『マジで!?こわっ!』

同僚ナビ『さぁ坊や…お姉さんと遊びましょう…』ワキワキ

ショタナビ『おねーさんこのひと怖い』

ナビ『ありゃ、変なスイッチ入ってもた』

737 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:41:16.41 ID:o9PPczQNO
ナビ『ほんで?その人はどうなるん?』

女「統合と言って、バラバラになっていた人格達が一つになるの」

ナビ『ほぇーそうなんや…あ!』

ナビ『読む前に結末聞いてもた…』ガーン

女「あら、ごめんなさい」クスッ

ナビ『(でも…心が一つに、か)』

ナビ『(なんかえぇなぁ♪)』

738 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:43:08.01 ID:o9PPczQNO
本日ここまでとします
ありがとうございました
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/11(金) 20:47:48.44 ID:zqWL/Bz2O
ガーゴイルの話ではあの場所に魔王城あるぽいが、特に何もしてくる気配ないし魔王は魔王で魔族と平和に暮らしていきたいだけって感じなのかな

魔王も実は人間側が攻めてきたから応戦しただけで本当は無害だとか?
今後魔王についてもわかるのだろうか期待乙
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/11(金) 21:17:59.50 ID:d1vTvRvKo
741 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:37:27.23 ID:G/XzkfJ2O
投下します
742 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:38:31.68 ID:NCC/SEvG0
-一週間後 王宮前-


ゴゥンゴゥン…

男「ついにこの日が来たか」

ナビ『長旅やんなぁ』

先輩「長時間運転する時はこまめな休憩が必須だ」

先輩「法令では4時間ごとに30分と定められているが、多いに越した事はない」

国王「男くん、久しいな」

男「お久しぶりです、あの時は偉そうな口をききまして…」ペコッ

国王「構わんよ。君の言葉によって、大事な事に気付かされたのだ」

先輩「陛下、カーゴでの移動は身体に堪えます」

先輩「何かあればご無理をなさらず、いつでも仰って下さい」

国王「ありがとう。では宜しく頼むよ」

先輩「それでは出発します。男、ナビちゃん」

男「はい!」

ナビ『はぃなぁ!』

バタンッ

ブォン!ブロロロ…

743 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:39:17.76 ID:NCC/SEvG0
-港湾倉庫-


キキッ…プシューッ

先輩「ここからシップに乗り込みます」

国王「これがシップか…迫力があるな」

先輩「ご覧になるのは初めてですか?」

国王「報告で知ってはいたがな、執務に追われて来れずじまいだった」



男「空荷で乗るのは初めてだな」

ナビ『向こうで陸軍の人らと合流やもんな、こっちで積んでけばえぇのに』

男「空荷の方が燃費がいいだろ?長距離だから少しでも充填回数を減らしたいのさ」

ナビ『なるほどなー』フムフム

744 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:39:58.57 ID:NCC/SEvG0
-シップ甲板-


乗組員「総員!国王陛下に敬礼!」

ビシッ!

国王「いつも任務ご苦労。視察にも来られず不義理だった」

先輩「隣国まで約8時間の航行です、少しお休みになりますか?」

国王「いや、シップの運用について乗組員達の話を聞かせてもらうよ」

先輩「承知しました」

ナビ『昼間の海もえぇなー!あ、カモメが飛んでるで!』キャッキャ

男「お前はマイペースだな」アキレ

国王「ナビシステム…魔法石に宿りし人の心か」

745 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:40:37.60 ID:NCC/SEvG0
-シップ内 カーゴ運転席-


男「…。」ペラッ

ナビ『…。』チョコン

ナビ『(難しい専門用語ばっかやな…)』ムム

男「….難しい専門用語が多いな」フゥ

ナビ『今おんなじ事考えとったわ』クスッ

ナビ『例えばこれなにー?』

男「解離性健忘か、平たく言うと酷い物忘れの事のようだな」フムフム

ナビ『なんや一時期の男ちゃんみたいやな』クスクス

男「酷いな、俺は至って健康だぞ?」

ナビ『冗談やてー。続き読も?』

男「あぁ、そうだな」

746 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:41:47.00 ID:NCC/SEvG0
-夜 女の執務室-


同僚「男と先輩、行っちまったか」

女「えぇ、今頃隣国から山間を抜けてる頃かしらね」

同僚「…女ちゃん、この後ちょっといいか?」

女「別に構わないけど?」

747 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:42:19.63 ID:NCC/SEvG0
-王都 酒場街-


[BAR REQUIEM]


カランッ…

同僚「何かさ、気になるんだ」

女「私達が出会った魔族についてね」

同僚「ぶっちゃけ女ちゃん、どう思う?」

女「分からないわ」フルフル

女「私なりに調べてみたんだけど、あの魔族は人間に匹敵する知性を持っているみたいなの」

同僚「じゃー嘘やハッタリじゃねぇって事だよな?あいつの言ってた事」グイッ

女「…なんだか自信なくなって来ちゃったわ」ハァ

女「私達のやろうとしている事って、本当に正しいのかしら…」カラカラ

同僚「…俺達が良かれと思ってした事でさ」

女「遺骨を持ち帰った事?」

同僚「それで戦争の駒を一つ進めちまったんじゃねぇか?って気がしててさ」

女「遺骨を持ち帰った事で荒野の国への派兵が認められ」

女「魔族に対する攻撃の準備が、また一つ進んだんですものね」

同僚「でもよ?遺された人達の事を考えたら放ったらかしになんて出来なかったんだ」

女「私も同じよ。その件で自分を責める必要はないわ」

同僚「どうなっちまうんだろうなー」ギシッ

女「…。」グイッ

748 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:44:07.53 ID:NCC/SEvG0
-隣国 街道沿い 陸軍キャンプ地-


ザッザッ…

男「先輩お疲れ様です」

ナビ『あれ、国王はんはー?』

先輩「先にお休みになったよ、慣れない移動で疲れたんだろ」シャガミ

先輩「おーあったけぇ、やっぱりキャンプって言ったら焚き火だな」

パチ…パチ

先輩「…夜は冷えるな」ブルッ

男「そうかと思って、こんなのあるんですけど」スッ

先輩「お!気が効くじゃないか」ニカッ

ナビ『まーたお酒かいな!』

男「まぁ固い事言うなって」キュポ

先輩「そーそー、こういう時は体の中から暖めたほうがいいんだ」トクトク


<乾杯!


749 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:44:57.14 ID:NCC/SEvG0
ナビ『』zzzz

男「…始まっちゃいましたね、荒野の国への派兵」ナデナデ

先輩「また一つ、駒が進んだな」グイッ

男「魔族の本拠地があると言われる北の果て、極寒の大地…」

先輩「荒野の国から北上していけば半日もかからない」

男「…。」

先輩「陛下の前で啖呵切ったんだろ?勇者さんのサポートをするって」

男「今も物流協会の一員としてサポートを…っていうんじゃダメですよね」

先輩「そういう意味で言ったんじゃないだろ」バシッ

男「いたた…はい、そうです」シュン

先輩「まぁ悩むのは分かる、だけど"その時"は着実に迫ってきてるんだ」

男「分かってます」

先輩「お前の剣技なら勇者さんの足手まといになる事はない、そこは自信持て」

男「ですかね」ヘラッ

先輩「…悩んでるのはそこじゃないんだろうな」

男「…。」グイッ

750 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:45:35.29 ID:NCC/SEvG0
男「魔族…魔王…」

男「それらがどんな存在なのか分からないですけど」

先輩「…。」コク

男「それでも魔族と呼ばれる存在と…そのコミュニティを統べる存在がいて」

男「それで彼らの生活が上手く回っているのならば」

男「今、俺達がやろうとしてる事って…」

先輩「お前、それ俺に言うか?」アキレ

男「あのっ!気を悪くされたならすみません!」アセッ

先輩「冗談だよ。俺とお前の間に勘繰りなんぞ必要ない」クスッ

751 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:46:18.81 ID:NCC/SEvG0
先輩「お前の考えも理解出来るよ」フゥ

先輩「話せば分かる奴を相手に、わざわざ軍事力で圧倒しようってのは」

男「…侵略、ですよね」ギリッ

先輩「なるほど。お前はこの戦争そのものの根幹に疑問を抱いているわけだな」

男「そうみたいですね…」

先輩「これは俺個人の考えだが」

男「?」

先輩「本当に守りたいものの為なら、俺は誰かを殺す事さえ厭わない」

男「…それは極論ですよ」

先輩「まぁな。だがな、俺達の両手の長さは限られてる」ノビーッ

先輩「ほらな、目一杯伸ばしてもこんなモンだ」ニカッ

男「…。」

先輩「だから、必然的に抱き締められるものの数も限られてくるんだ」

先輩「分かるか?」

男「…。」グイッ

男「分かるけど…納得は出来ないです」ギリッ

752 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:46:58.36 ID:NCC/SEvG0
-翌朝-


ゴゥンゴゥン…

先輩「それでは出発します」

国王「うむ。陸軍兵士諸君、引き続き任務に当たってくれたまえ」

兵士「はっ!」

兵士「総員!国王陛下に敬礼!」

ビシッ!

ブォン!ブロロロ…

753 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:47:42.81 ID:NCC/SEvG0
ナビ『山道が続くなぁ』

男「ここら辺を抜ければ、嫌って程真っ平らな道を延々走る事になるさ」ニコッ

ナビ『そっか…なぁ男ちゃん?』

男「んー?」

ナビ『やっとぉ事は戦争のお手伝いやけどさ』

男「…うん」

ナビ『ウチは男ちゃんとこうやってコンビ組んでるの、嬉しいねん』

男「ナビ…」

ナビ『戦争やもん、危ない事もあるかも知れんけどな?』

男「…その時は俺が守るよ」

ナビ『ちゃうやろ?一緒に戦うねんて!』ニシシッ

男「そうだったな」フフッ

ナビ『戦争はなくなって欲しいけど…』

ナビ『男ちゃんとはこうやっていつまでも一緒におりたいな♪』ニカッ

男「あぁ、俺もだ」ニコッ

ブロロロ…

754 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:49:23.94 ID:NCC/SEvG0
-深夜 西の国 陸軍本部-


ザッザッ…

兵士1「交代だ」

兵士2「お、もうそんな時間か」

兵士2「となると陛下はもうすぐ荒野の国に着くんだな」

兵士1「夜明けごろにはってとこだろうな、ちょうどお前がハニーの夢でも見てる頃さ!」

兵士2「ハニー時々チリペッパーのあいつの夢か!そいつはスイートだな!」

兵士1・2「HAHAHA!!」


ザッ…


[闇よ 月よ 全ての星々よ]

[夜の帳に舞い降りたる汝の名において]

[この者達にひと時の安らかなる眠りを与え給え]

パァァァ…

兵士1「ん?な、なん…」バタッ

兵士2「急に眠気…が」バタッ


ザッザッ…


兵士1・2「」zzzz

755 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:50:02.58 ID:NCC/SEvG0
-陸軍本部 巨石の間(仮設)-


警備用魔法石「」パァァ

スッ

警備用魔法石「」フッ…


[数多の心の一欠片 全てを統べる暗黒なる意志]

[夢と現の狭間に在りし 老獪なる汝の名において]

[我等が小さき魂を]

[誓いの縁(えにし)で結び給え ]

パァァァ…グワンッ!!

756 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:50:34.29 ID:NCC/SEvG0
-北の果て 極寒の大地-


ビュオォォォォ…ヒュゥゥゥゥ…




…カッ




ドカァァァァァン!!!!!!

757 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:51:21.89 ID:NCC/SEvG0
-荒野の国 国境付近 キャンプ地-


男「」zzzz

ナビ『男ちゃん…えへへぇ』zzzz

グラ…グラグラッ…

男「…ん」パチ

男「地震か?…いや」ムクッ

タッタッタッ ガンガン!

先輩「男!起きたか!」ガチャ

男「…あの揺れ方は前に経験があります」ムンズ

ナビ『ほぇ…男ちゃ…ふぎゃっ!』チリンッ



タッタッタッ…



先輩「な、何だ、ありゃ…」ゴクリ

男「き、北の空が…」

ナビ『燃えとぉ…』ゾクッ

758 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:52:12.03 ID:NCC/SEvG0
-早朝 荒野の国との国境-


ゴゥンゴゥン…

先輩「これが、荒野の国の首領殿から頂戴した書簡です」スッ

警備兵「…確かに。その紋章がここを通過するのは実に20年ぶりの事ですな」

国王「…。」

警備兵「お通ししろ、カーゴ2台だ」クルッ

ブォン!ブロロロ…

759 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:52:58.95 ID:NCC/SEvG0
男「何だったんだろう、昨夜の…」

ナビ『北の空が真っ赤に燃えとった…真夜中やのにまるで夕焼けみたいに』ブルッ

ナビ『協会とは連絡つかんの?』

男「王国からこれだけ離れてるとな」フルフル

男「陸軍の宿営地を何ヶ所か中継して連絡を取るから時間がかかるんだ」

ナビ『そう考えると転移魔法ってチートなんやなぁ』

男「これだけの物量と人数を転移させようと思ったら、それこそ巨石の力をフルパワーで使わなきゃ無理だろうな」

ピピッ

男「先輩、どうしました?」

先輩『緊急事態だ!』

男「き、緊急事態!?」

先輩『…巨石が作動した』

男「何ですって!!?」

760 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:54:36.89 ID:NCC/SEvG0
-4時間前-

-西の街 陸軍本部 司令室-


ピピーッ!ピピーッ!


大佐「こんな朝っぱらから何事だ!!」バタンッ

兵士「ほ、報告します!」ビシッ

兵士「例の巨石から、突如高い魔力反応が!!」

大佐「何だと!?くそっ!!」

大佐「物流協会の局長へ連絡しろ!大至急だ!!」

大佐「私は巨石の間へ向かう!!」ダダッ

兵士「了解!」ビシッ

761 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:55:15.33 ID:NCC/SEvG0
-巨石の間(仮設)-


大佐「何がどうなって…っ!?」バタンッ

大佐「な、なんだこれは…」ゾクッ


オォォォォォオォォォ…


大佐「この禍々しい殺気…妖しい煌めき…」

大佐「これが巨石の力なのか…」ゴクリ

警備兵「た、大佐!」

大佐「状況を説明しろ!」

警備兵「巨石からの魔力反応は依然上昇を続けています!」

警備兵「このままの状態で魔力の暴発が生じた場合…この場所は…!」

大佐「っく…とんでもないモノを押し付けられたもんだな」ギリッ

大佐「総員退避!!巨石から出来るだけ離れろ!!」

[総員退避!繰り返す、総員退避!]ファンファンファン

762 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:55:47.69 ID:NCC/SEvG0
-物流協会事務局 局長室-


局長「一体何がどうなってるんだ!!」ダンッ

研究員「魔法石の性質から考えて、スタンドアローンで作動する事はあり得ません」

女「動く筈のないものが動いた…」

研究員「考えられる可能性は一つだけです」

局長「…誰かが作動させた、という事か」ギリッ

女「でも、そんな事出来るのって…もしかして勇者さんが?」

局長「可能性はゼロでもないが、勇者殿の性格を考えるとしっくり来ないな」

女「そうですね…正面から正々堂々と、という方ですから」コク

局長「…まさか」ハッ

カチャ

局長「私だ!大佐に再度連絡を取ってくれ!」

局長「大至急、北西地方の集落を当たってくれるよう頼むんだ!!」

女「勇者さん以外に巨石を作動させる事の出来る人って…まさか」

局長「あぁ、勇者殿でなければ彼しかいない」

局長「…賢者殿だ」



カッ…



ドカァァァァァン!!!!

763 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:57:31.14 ID:NCC/SEvG0
-荒野の国 街道-


男「そ、それじゃ昨夜の赤い光は…!」

先輩『巨石の間と、隣接する陸軍本部を吹き飛ばして魔法攻撃をぶっ放ったらしい』

ナビ『な、なんやて!!?』

男「そ、それじゃ陸軍の人達は!!?」

先輩『大佐がすんでの所で避難させてくれた。爆風に巻き込まれて軽傷者が多数出ているみたいだがな』

先輩『死者は出なかったが、陸軍本部とその周りはめちゃくちゃだ』

男「で、でもなんで今頃になって…」

ナビ『せやな…勇者さん出てきてもぉてるのに』

先輩『俺に心当たりがある』

男「ホントですか!?」

先輩『というか、勇者さん以外に巨石を作動させられそうな人間なんて一人しかいないだろ』

男「まさか…賢者さんが!?」

先輩『恐らくな』

先輩『とにかく俺達はこのまま進むぞ、荒野の国の中心部に入れば少しは状況が掴めるだろう』

男「ここからあと4時間ってところですね、了解です!」カチャ

ナビ『なになに??何が起こってるん??』アワアワ

男「分からない、今はとにかく進むしか…ん?おいあれ何だ?」

ピピーッ ピピーッ

[9時ノ方向ヨリ高速移動体ガ接近中。距離1000、800、600…]

ナビ『な、なんやコレ!めちゃくちゃ速いで!!』

ゴォォッ…バサッ バサッ…

[距離300、200…]

男「あれは…!!」

ナビ『どどどドラゴン!!?』


グォォォォ!!

764 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 19:59:04.93 ID:NCC/SEvG0
-物流協会事務局 局長室-


グラグラ…グラ…

局長「…っく、二人とも怪我はないか?」フラ

女「はい、何とか」ヨロケ

研究員「大丈夫です…」フラフラ

局長「しかし今の爆発音…」

研究員「巨石の力が暴発したと見て間違いありません」

ガチャ バタンッ

修道女「お、女さん!」ハァハァ

女「修道女さん!来てくれたのね!」

修道女「外を見て下さい!」

局長「っ!」窓ガララッ

女「北東の空に赤い光が…朝日にはまだ早いわね」

局長「あっちの方角は…北の果て、極寒の大地」

研究員「魔族の本拠地があるとされる地域ですね」

女「それじゃ賢者さんは魔族の本拠地に直接攻撃を…?」

局長「極寒の大地は荒野の国から程近い…賢者殿、なんていうタイミングで」ギリッ

修道女「な、何かとんでもない事が起こるんじゃないでしょうか…」

女「あるいは今の攻撃で何かが始まるか、ね」

女「修道女さん」キッ

修道女「は、はいです!」

765 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:00:49.94 ID:NCC/SEvG0
-荒野の国 街道-


ゴゥンゴゥン…

男「ナビ!行くぞ!」チャキ

ナビ『はぃな!』ポンッ

ガチャ バタンッ


国王「こ、これがドラゴン…!」ゾクッ

先輩「陛下は車内にいて下さい!」ガチャ バタンッ



ドラゴン「…。」グルル

男「で、でかい…」ゴクリ

魔法石(ナビ)『これが…ドラゴン』ゾクッ

先輩「男!大丈夫か!?」ダダッ

ドラゴン「…人の子よ」

ドラゴン「爺の警告を聞いた筈だ」

男「爺って…あの同僚が会ったっていう…?」

ドラゴン「しかし警告は無視され、お前達は我等に刃を向けた」

ドラゴン「あまつさえ、我等ドラゴン族の根城たる極寒の大地へな」

766 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:01:26.00 ID:NCC/SEvG0
先輩「警告?なんの事だ!」

ドラゴン「もはや猶予はない、賽は投げられたのだ」

ドラゴン「他でもないお前達自身の手によってな」

ドラゴン「覚悟はよいな?」グルル

先輩「男!来るぞ!」チャキッ

男「た、戦うしかないのか…」

先輩「もう迷ってる暇はないぞ!やらなきゃやられるだけだ!!」

魔法石(ナビ)『せやで男ちゃん!ここを切り抜けな先はないんや!!』

男「くっ…こうするしかないのかよ!」チャキッ

男「ナビ!!」カチャリ

魔法石(ナビ)『はぃな!!』スポッ

ブゥンッッ!パァァァ…

ドラゴン「人の子よ、我が同胞が受けた痛み」

ドラゴン「ここで償ってもらおう!」グォォォォ!!

先輩「おらぁぁぁ!!」ダダッ

男「いくぞ!ナビ!!」ダダッ

魔法剣(ナビ)『やったんでぇぇ!!』パァァァ

767 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:02:23.57 ID:NCC/SEvG0
-早朝 北西地方 小さな家-


兵士1「ここか!!」バタンッ

兵士2「な、なんだこりゃ!魔法陣!?」ピョンッ

兵士1「禁呪の類か…む?見慣れぬ書物が」スッ

[DSM-5]

兵士2「おい!賢者殿がいたぞ!」


キィ…キィ…


兵士1「賢者殿!呑気に揺り椅子で寛いでる場合じゃ…!」ガシッ ユサユサ

兵士2「け、賢者殿!?」

賢者「ぅぅ…ぁぁ…」ポカーン

768 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:03:24.53 ID:NCC/SEvG0
-物流協会事務局 局長室-


局長「見つかったか!それで…何だと」

局長「…分かりました、とにかく診療所へお連れして下さい」カチャ

女「賢者さんは!?」

局長「…話せる状態じゃないらしい」フルフル

女「どういう事ですか?」

局長「詳しくは分からないが、何を問いかけても反応がないらしい」

局長「一応生きてはいるが、心ここにあらずといった様子みたいだ」

修道女「心が…?」

局長「研究員さん、考えられる事は?」

研究員「恐らく、巨石に心を飲まれたのかと」

女「心を?じゃ、勇者さんと同じ…」

研究員「いいえ」フルフル

研究員「勇者殿の場合は、彼が人一倍強い善なる心を持っている事もありますが」

研究員「肉体ごと…つまり心と体がセットで取り込まれたので」

局長「…自我を保つのに却って好条件だったわけか」

研究員「恐らく、賢者殿は巨石に自らの心を…つまり巨石をそのままナビシステムとして用いようとしたのかと」

769 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:04:02.00 ID:NCC/SEvG0
女「心だけをインストールしようとした結果、巨石の力に耐え切れず心を持っていかれた…」

修道女「で、でもそんな事が可能なんですか?」

研究員「理論上不可能ではありません」

研究員「しかし、巨石の力に対抗しうる心の強さが必要になります」

局長「賢者殿の家の中で、恐らく禁呪の類と思われる魔法陣が張られていたそうだ」

局長「そしてDSM-5という謎の書物…」

研究員「禁呪を使って心の増強を図ったという事ですか」

女「しかし失敗した…なんて事なの」フルフル


ブロロロ…キキッ

<プップー


女「来たみたいね」

局長「修道女さん、お願いします」ペコッ

局長「女くんも、気をつけてな」

修道女「はいです!」ダダッ

女「行ってきます!!」ダダッ

770 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:05:11.89 ID:NCC/SEvG0
-王都郊外 煉瓦橋-


ブロロロ…キキッ

修道女「この辺なら大丈夫でしょう」

同僚「夜中の爆発音…一体何が起こってるんだ?」

同僚ナビ『あの揺れ方、覚えがありますわ…』ブルッ

女「その通りよ、巨石が再び動き出したの」

同僚「何だと!?」

修道女「今は説明してる時間が惜しいです!ここから男さん達の所へ転移します!」

同僚「転移って、荒野の国までカーゴごとか!?」

同僚ナビ『…例のペンダントですわね』

修道女「はい、エルフの強い魔力が込められたこのペンダントと」チャリン

修道女「ナビちゃんの一番の理解者であるどーちゃんと」

修道女「同じく男さんの親友である同僚さんの力を借りれば…!」

同僚ナビ『承知しましたわ!』

修道女「どーちゃん、ナビちゃんの事を強く意識して下さい!」

修道女「同僚さんは男さんの事を!」パァァァ

女「頼んだわよ!」パァァァ

771 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:05:43.08 ID:NCC/SEvG0
同僚「お、おう!」ムムム

同僚ナビ『ナビさん…長い金髪、深緑色の瞳…』

同僚ナビ『細くて白い指先、よく通る声…』

同僚ナビ『真っ直ぐで純粋、汚れを知らない心…』

修道女「いきます!」キッ

[風の息吹よ 大地の鼓動よ]パァァァァ…

[数多の空を駆け巡りし 勇壮なる汝の名において]

[無限に翔ける翼の力で 我らを導き給え]

修道女「転移します!!」クワッ


バヒュゥゥゥン…!!

772 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:06:34.25 ID:NCC/SEvG0
-荒野の国 街道-


グォォォォ!!

男「うおっ!」バシュッ

先輩「おらぁぁ!!」ブンッ ザシュッ!!

ドラゴン「痒いわ、人の子よ」ヒュンッ

先輩「な、尻尾で…ぐわぁ!」バシッッ

男「先輩!くそっこのぉぉ!!」チャキッ

ダダッ…ピョンッ

男「ぬぉぉぉ!!」

魔法剣(ナビ)『おりゃぁぁ!!』パァァァ…

ザシュッ!!

ドラゴン「くっ!なかなかやるじゃないか!」グルル

ドラゴン「ならばこれならどうだ…」コォォォ

魔法剣(ナビ)『男ちゃん!なんか来るで!!』

ドラゴン「」ゴワァァァ!!

男「炎を!?くっ…!!」ダダッ

先輩「懐がお留守だぞ!!」ザシュ!

ドラゴン「っ!小賢しいわ!!」

兵士「総員展開!!陛下の乗ったカーゴを守れ!!」ダダダッ



バシュゥゥ…!!


ドラゴン「!」

先輩「ど、同僚のカーゴ!?」

男「みんな!!」

773 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:13:23.37 ID:NCC/SEvG0
-王立診療所 賢者の病室-


勇者「け、賢者!!」バッ

親父「…バカ野郎」ギリッ

賢者「」zzzz

医師「現状、賢者殿は薬で眠っています」

医師「しかし、薬が切れても意識が戻る事はないでしょう」

研究員「巨石の力に心酔し、ついに心までも食われてしまった…」

勇者「賢者!賢者!!あぁ…」ポロポロ

親父「…泣いてる暇はねぇぞ」グイッ

局長「巨石から放たれた魔法攻撃が極寒の大地へ向かったなら」

局長「魔族からの報復があるかも知れません」

局長「…ある、と考えた方がいいでしょう」ギリッ

774 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:14:16.75 ID:NCC/SEvG0
親父「男の所へは女達が向かった」

親父「向こうで何が起こってるかは分からんが、今はあいつらを信じるしかねぇ」

局長「勇者殿」

勇者「…はい」スクッ

局長「王国の守りの要である陸軍本部が使い物にならない以上」

局長「今、この王国を魔族から守れるのは勇者殿と剣士殿だけです」

局長「陛下に代わってお願いします、どうか…この国を」フカブカ

研究員「…。」フカブカ

勇者「…任せて下さい」コクッ

勇者「人々を守る!それが勇者たる俺の使命です!!!」キリッ

親父「歳は食っちまったが、俺も手ぇ貸すぜ!!!」クワッ

775 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:15:02.67 ID:NCC/SEvG0
-荒野の国 街道-


女「二人とも大丈夫!?」バッ

修道女「こ、これが本物のドラゴン…」

同僚「すごく…大きいです…」ゴクリ

同僚ナビ『ふざけてる場合じゃありませんわ!』

ドラゴン「援軍か」フンッ

男「みんな来てくれたのか!」

先輩「全員集合ってか」ニヤッ

ドラゴン「そんなに戦いたいのであれば相手になろうぞ」

バサッ…バサッ…

ドラゴン「我"等"でな」

男「おいおいまさか…」

魔法剣(ナビ)『そっちも援軍かいな!!?』ヒェッ

グルル…ゴガァ…

776 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:15:36.45 ID:NCC/SEvG0
先輩「頭数を合わせてくれるとは律儀なドラゴン野郎だな」ハァ

女「余裕かましてるけど勝算はあるの?」

先輩「俺には勝利の女神がついてるからな」ニコッ

女「ホントにもう…」クスッ

男「同僚!修道女さん!」

同僚「来ちゃったww」

修道女「お二人共ご無事ですか!?」

同僚ナビ『絶対に凌がなければなりませんわよ、何しろ先輩さんのカーゴには…』チラッ

男「国王陛下が乗っているからな」ギリッ

777 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:16:06.95 ID:NCC/SEvG0
修道女「どーちゃん!力を貸して下さい!」ギュッ

魔法石(同僚ナビ)『えぇ、喜んで!』

修道女「攻撃役のお二人に、私の新しい転移魔法を付与します!」パァァァ

修道女「いきます!高速転移!!」

男「なんだこれ…体が軽い!」

修道女「視界に入る範囲なら連続で高速転移が出来ます!」

先輩「こいつは凄い…よし、いけるぞ!」チャキッ

ヒュンッ ヒュンッ…

778 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:16:47.08 ID:NCC/SEvG0
女「さ、同僚くん行くわよ」バタンッ

同僚「最近多いなこのコンビwww」ガチャン!

ブォン!ブロロロ…

同僚「しかし上空でグルグル旋回しちゃってwww」ミアゲ

同僚「まるでエ○ァ量産機だなww」

女「今時、旧劇場版見てる人の方が少ないわよ…そんな事より!」

女「陛下の乗ったカーゴを守るように走り回りつつ…」

同僚「女ちゃんの攻撃魔法で撹乱かwww」

女「それも進化バージョンでね」

同僚「その本なんぞwww?」

女「いくわよ!」パタンッ

[禁書指定 絶対殲滅!爆撃☆どかん]

779 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:17:35.34 ID:NCC/SEvG0
男「おらぁぁぁ!!」ブンッ!

魔法剣(ナビ)『なぁらぁぁぁ!!』パァァァ

ドラゴン「ふんっ!!」ビシュッ

先輩「当たらないぞ、デカブツ!」ヒュンッ ヒュンッ

修道女「…!」パァァァ

同僚「急旋回からの急旋回そして急加速wwwたーのすぃーwww」ギュオン!ブロロロ…!!

女「喰らいなさい!」パァァァ


ズギャァァン!! ドカァァン!!


兵士「な、なんだこいつら」アゼン

兵士「物流協会って運送屋じゃないのかよ…」

780 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:18:22.55 ID:NCC/SEvG0
男「はぁ…はぁ…」チャキッ

ドラゴン「やるではないか、人の子よ」ボロッ

先輩「お褒めにあずかりどうも」チャキッ

修道女「み、皆さんお怪我はありませんか!?」

女「えぇ大丈夫よ」

同僚「ようやく大人しくなったか量産機どもwww」

ドラゴン「王国の紋章、そしてその連携…」

ドラゴン「成る程。貴様達が新たなる勇者一行というわけか」グルル

男「へ?」

魔法剣(ナビ)『なんでやねん!』ビシッ

先輩「いやいや、俺達は運送屋で」

女「そうよ勇者だなんて」

同僚「ラブアンドピースがモットーですwww」

同僚ナビ『否定はしませんが鼻につきまくりますわね』ジトッ

修道女「し、シスターもいまーす!」

781 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:19:11.68 ID:NCC/SEvG0
ドラゴン「新たなる勇者一行の実力、しかと見届けた!」グォォ!

ドラゴン「されば案内しよう、我ら魔なるものの始祖…」

ドラゴン「魔王様の御許へな」バサァッ!


バサァッ グルグル…


同僚「まーた始まったよ量産機コーナーwww」

女「魔王の所へ連れていくって行ってたけれど…」

先輩「向こうから案内してくれるなんて都合が良いじゃないか」ニヤッ

修道女「ま、まさかあの極寒の大地へ!?」

男「…。」ギリッ

魔法剣(ナビ)『男ちゃん、どしたん?』

男「…本当にこのまま戦い続けていいのか?」

魔法剣(ナビ)『男ちゃん…』

男「…。」フルフル

ドラゴン「見るがいい、この世界の理を」


パァァァ…


バヒュゥゥゥン…!!!

782 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/12(土) 20:19:56.52 ID:NCC/SEvG0
本日ここまでとします
ありがとうございました
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/12(土) 23:41:44.19 ID:8/zgltwAO
輸送屋だから攻撃も輸送してます乙
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