剣と魔法と運送業

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450 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:39:06.20 ID:hNFIRtqbO
男「…ん」パチ

ナビ「んむぅ!!!」ビクッ

男「…寝ている間に唇を奪われるとは」クス

ナビ「は、はわわ////」カァァッ

男「奪っておいて赤くなるなよ」ケラケラ

ナビ「だ!だってタイミング!!」

男「…足りないな」スッ

ナビ「にぎゃっ!??」ビクッ

パタッ

451 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:39:37.76 ID:hNFIRtqbO
ナビ「…押し倒された」ドキドキ

男「…押し倒した」ドキドキ

ナビ「お、男ちゃん!?ウチな!??」

男「分かってる」ニコッ

ナビ「いやいや絶対分かって…へ…」


チュッ…チュ


ナビ「ん…」

男「んくっ…ナビ…」


ギュッ チュッ チュ

452 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:40:20.78 ID:hNFIRtqbO
-物流協会事務局 女の執務室-


コンコン ガチャ

親父「よう」ニカッ

女「お、おじ様!??」

親父「職場訪問!…って場合じゃねぇ」

親父「時間がない、一緒に来てくれ」

女「ど、どうしたんですか!?どこへ行くんですか!??」

親父「巨石の…勇者の所だ」

453 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:40:59.91 ID:hNFIRtqbO
-物流倉庫事務所-


先輩「同僚いるか?」ガチャ

同僚「あ、おつかれっすーwww」

先輩「ちょっとツラ貸せ」クイッ

同僚「なにそれ怖いwww」

先輩「時間がない。男が危ないかも知れない」

同僚「…っ!了解っす。なら診療所へ?」

先輩「いや…巨石の間だ」

454 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:41:41.09 ID:hNFIRtqbO
-王宮 国王執務室-


側近「あのシスターの詠唱が上手く運べば、時を置かず心の補完は成就するでしょう」

国王「うむ。ではその瞬間をこの目で見届けるとしよう」スクッ

国王「贄を捧げる者の責任としてな」

ガチャ バタンッ

455 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:42:22.38 ID:hNFIRtqbO
-男の精神世界-


ドクン…ドクン…

-なぁ男ちゃん?-

-ウチら色んな所に行ったなぁ?-

-シップの甲板から見上げた、ダイヤモンドぶちまけたような星空…-

-キラキラ光る朝の水平線…-

-どこまでも続く隣国の田園風景…-

-水の街へ続く、海に架かる橋…-

-里が襲われた時、すぐに逃げるかどうかで喧嘩したやんか?-

-くすっ。男ちゃんと喧嘩するなんてあれが初めてやったんちゃう?-

-どれもこれも、大事な思い出…-

-ウチの宝物やで-

456 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:43:09.64 ID:hNFIRtqbO
-あんなぁ?あの時…-

-昔の記憶に押し潰されそうな時-

-男ちゃん、来てくれたやんか?-

-自分だって辛いのに-

-うぅん、自分の事やからこそ辛いのに-

-…あなたは来てくれた-

-嬉しかったぁ-

-もう一人やないんやって-

-見捨てられたと思ってた過去の記憶が、ようやく天に帰ってくみたいな?-

-上手く言われへんけど…-

-でな?あん時決めてんか-

-男ちゃんが好き-

-ずっと側におりたいって-

457 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:43:49.82 ID:hNFIRtqbO
-男の精神世界-



ドクン…ドクン…

-俺はずっと寂しかった-

-俺には親父がいるし、女も、協会のみんなもいる-

-でも、心の奥にずっと埋まらない空洞があって-

-そこは冷え切った場所で-

-真っ暗で誰にも触れられない場所で-

-そこは多分、一生埋まらないんだろうなって…-

-ナビの中に置き忘れた、北西の村での記憶-

-あの時の孤独感や絶望感が空洞の正体なのかも知れない-

-再リンクでそれは分かったけど、分かったからって空洞が埋まるワケじゃない-

-俺はどうしたらいいんだろう?…-

458 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:44:30.37 ID:hNFIRtqbO
-ナビ、お前が俺のこと好きだって言ってくれた時-

-本当は嬉しかったんだ-

-聞こえないフリしてゴメンな?-

-俺も、お前のことが好きだよ-

-でもこの好きって、本物なのか?-

-俺はただ、無条件に俺のことを受け止めてくれるお前に-

-寄りかかりたいだけなんじゃないか?-

-そういう思いが消えなかった-

-俺はこのまま踏み出してもいいのかな?-

459 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:45:52.29 ID:hNFIRtqbO
-王宮地下 巨石の間-


パァァァァ…

バタンッッ!!

親父「遅かったか!!」ダダッ

女「し、修道女さん!??」

修道女「…っく!お、女さん!?」ビリビリ

先輩「男!ナビちゃん!無事か!?」

同僚「おい!お前何やってんだ!!」

修道女「同僚さん!?な、何って…」ビリビリ

460 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:46:57.26 ID:hNFIRtqbO
側近「役者が揃ったようですね」ガチャ

親父「賢者!てめぇ俺の息子を!!」チャキ

側近「久しぶりですね剣士。そうか涙の欠片は貴方の…」

側近「昔話は後にしましょう、物騒なものは仕舞って下さい」

側近「国王陛下の御前ですよ」

国王「始まったようだな」ズイッ

女「へ、陛下!」

国王「…諸君には感謝している」

国王「此度の我らが計画に際し、その力を存分に発揮してくれた諸君らは」

国王「まさに王国民の鑑である」

先輩「力を貸した覚えなんてないが?」

側近「分からんか。ここに集いし諸君ら全員が力を合わせ、この計画を実現に導いてくれたのだ」

側近「私からも礼を言うぞ」

同僚「何が何やらさっぱりwww普通に生きてるだけですがwww」

側近「普通に、か」ニヤッ



男「…」zzzz

魔法石(ナビ)『…』zzzz
461 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:48:22.64 ID:eNxFMH/p0
-男の精神世界-



-あんなぁ?心の空洞は無理に埋めんでもえぇんちゃうかなぁ?-

-埋めなくてもいい?-

-多分な、きっとみんな同じなんちゃうかなぁ?-

-同じ?誰の心にも空洞が?-

-多かれ少なかれ、な-

-でな?例えばそれを無理に埋めようとするやん?-

-誰かで、何かで…か-

-ぅん…でもきっと上手くいかへん。一瞬忘れる事は出来るかもやけど-

-…分かるよ、俺もそうだった-

-普通の人はみんなそう、でも…-

-普通の人は?-

-ウチと男ちゃんは特別なんやで-

-特別?-

462 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:49:13.02 ID:eNxFMH/p0
-同じ心を持って、同じ痛みを抱えて…-

-こんなに分かり合える存在ないよ?-

-…確かにそうかも知れない-

-やろー?ウチら最強のコンビやもん♪-

-ふふ。久しぶりに聞いたな-

-えへへ。だからな?男ちゃん…-





-ウチと一つになろ?-

463 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:50:09.44 ID:eNxFMH/p0
-王宮地下 巨石の間-




パァァァァ…

側近「ここまで力が高まれば問題あるまい」

側近「修道女さん、もう結構です」スッ


パァァァァ…バシュンッ!!


修道女「…っく!は!」フラッ

同僚「ないすきゃーっちwww」ダキッ

親父「賢者、お前…」ギロリッ

親父「俺の息子を生贄にするつもりだな!?」

側近「礎、と言ってくれ」

親父「ふざけんな!何が礎だ!!」

国王「剣士よ」

国王「側近…賢者は知恵を貸してくれたに過ぎん」

国王「全ての責は国王たる私にある」

国王「恨むならば私を恨め」

464 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:50:52.60 ID:eNxFMH/p0
女「陛下!!男くんを生贄にってどういう事ですか!??」

親父「勇者が巨石に取り込まれて20年…」

親父「巨石の力に勇者の心が食い尽くされちまう前に」

親父「心の補充をしようって魂胆だよ!」スチャ

側近「無礼者!剣を仕舞え!」

女「そ、そんな…酷い…!」フルフル

465 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:51:55.29 ID:eNxFMH/p0
国王「恨むならば私を、と、重ねて言おう」

国王「強大なる魔王の力を前に、人々を、世界を守る為」

国王「勇者を取り込んだこの巨石の力…」

国王「"神の雷"を制御する心が必要なのだ」

修道女「か、神の雷…!?」

側近「巨石の力を制御するには、揺るぎなき心の力が必要なのだ」

側近「20年前のあの日…勇者から飛び散った、悪を憎む善なる心の残留思念」

側近「"涙の欠片"を内包した男くんの心が、まさに適任だったのだ」

側近「が、火災により深い傷を負った彼の心だけでは不十分…」

側近「その為に彼の心の片割れたる魔法石との接近…心の補完が切望された」

国王「諸君らは、人の心という複雑で繊細な代物を上手く導き」

国王「彼らの心が惹かれ合うのを後押ししてくれたというわけだ」

女「そ、そんな…」

先輩「じ、じゃあ俺達がした事が…」

同僚「あいつとナビちゃんの為を思ってした事が…!?」

修道女「酷い…人の心を何だと思ってるんですか!??」ブワッ

466 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:52:37.23 ID:eNxFMH/p0
親父「…まだだ」

側近「?」

親父「…俺の息子を舐めんな」ギロリッ

側近「愚弄などしていない。涙の欠片は…」

親父「俺の息子を変な名前で呼ぶんじゃねぇ!!!」クワッ

親父「男…とっとと目を覚ましやがれ」

男「…」zzzz

魔法石(ナビ)『…』zzzz

467 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:53:39.17 ID:eNxFMH/p0
-男の精神世界-


-俺達が、一つに?-

-せやでぇ。…あ、エッチな意味ちゃうで!?-

-…ま、まぁ、それもえぇねんけど…-

-あんなぁ?ウチら一つになったらな?この寂しさも消えると思うねん-

-心の空洞だって埋まるかもしれへんし!な!?-

-俺は…-

-…ウチと一つになろ?そしたらこの力も…-

-力?-

-この巨石の力もウチらのもんや-

-おいナビ、何言ってるんだ?-

-こっちへ…こっちへ…-

468 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:54:32.61 ID:eNxFMH/p0
-王宮地下 巨石の間-



パァァァァ…

女「っ!巨石が光り出した…!?」

側近「いよいよ始まるか…」

先輩「男ー!!目を覚ませー!!!」

修道女「あぁ…神よ…」

親父「…。」ギロリッ



男「…っく!」zzzz

魔法石(ナビ)『…。』

469 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:56:51.54 ID:eNxFMH/p0
-巨石内部-


男「…ん」パチ

ナビ「…。」

男「…お前、誰だ?」ムクッ

ナビ「…。」

男「ナビをどこへやった!?」

ナビ「…。」ニタァ

男「っ!?」ビクッ

ナビ「…もう疲れたんだよ、俺は」


グニャァァァァ…


勇者「独りで戦い続ける事に、な」パァァァァ…

470 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:57:52.33 ID:hNFIRtqbO
男「あなたは…先代勇者!?」

勇者「代替わりしたって事になってんのか…酷いモンだな」ハハッ

勇者「俺はここでずっと戦ってきた。ずっとな」

男「ここって…そもそもここは…?」

勇者「巨石の中さ。俺はあの日北の荒野で、巨石の力を制御し切れずに」

勇者「この中に取り込まれたんだ」

男「取り込まれた!?じ、じゃあナビシステムと同じ…?」

勇者「ナビシステムってのは人の心を魔法石に写し取ったものなんだろ?」スッ

魔法石(ナビ)『』チリンッ

男「な、ナビ!!」

471 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:58:32.08 ID:hNFIRtqbO
勇者「俺の場合は生身の人間がそのまま取り込まれちまったワケだから、順序としちゃ逆だ」

勇者「でな?この中から力を振るうには、善を望む強い心が必要なのさ」

男「誰よりも崇高な魂を持つとされる勇者だからこそ出来る芸当か…」

勇者「お褒めにあずかりどうも。だがな、俺も人間だ」ポイッ

男「ナビっ!!」パシッ

勇者「枯れる事のない膨大な力の奔流に晒され続け…」

勇者「終わりの見えない戦いに力を振るい続ける事に、もう疲れちまったんだよ」

勇者「俺の心がな」

472 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:59:08.83 ID:hNFIRtqbO
男「…不憫な話だとは思うが、しかし」

勇者「同情なんざいらねーよ」フンッ

勇者「…欲しいのはお前の心だ」チャキ

男「な、剣!?」

勇者「お前の心を寄越せ」

勇者「魔法石に入ってる分とセットでな」ニヤッ

魔法石(ナビ)『…。』

473 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:59:58.42 ID:hNFIRtqbO
-王宮地下 巨石の間-



パァァァァ…

国王「巨石が輝いておる…」

側近「準備が整いました、陛下」

国王「うむ…騎士団長!」

騎士団長「ここに」ズイッ

ズラズラッ…

国王「あとは任せたぞ」クルッ

騎士団長「承知しました」チャキッ

474 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:01:06.14 ID:hNFIRtqbO
親父「へっ…用が済んだら証拠隠滅って訳かよ」チャキ

女「くっ…!外道め!」

同僚「これw確実に消されるパティーンwww」

修道女「ひぃっ…!」ガクガク

先輩「…はいそうですかって、簡単に消されるとでも思ったか?」ギロリッ

チャキッ…ブンンッッ!!!

同僚「ちょwww先輩そんな大剣どっからwww」

475 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:01:48.77 ID:hNFIRtqbO
先輩「クソネズミ共…前々から気に入らないと思っていたが」ギリギリッ

先輩「俺の女に手ぇ上げた阿保はどいつだ!?ここで根性叩き直してやっから腹決めろ!!!」ダンッッ!!

同僚「こぇぇぇぇ」ビクビク

女「もう…どさくさに紛れて何勝手に恋人宣言してるのよ」ハァ

女「…バカね」クスッ

親父「(今俺の女って言った!?ねぇ俺の女って言った!??)」

476 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:02:27.42 ID:hNFIRtqbO
親父「…久し振りの実戦が、魔族じゃなく人間相手とはな」チャキ

親父「手加減しねぇからな…子を持つ親を舐めんじゃねぇ!!」ブンッ

親父「全員散開!男達と巨石を囲むように広がるんだ!」

先輩「了解!」バッ

女「やるしかないのね」タタッ

修道女「わ、私戦いなんて…!」ビクビク

同僚「回復役なら出来んだろwwとりあえずこっち来いwww」ズイッ

477 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:03:07.68 ID:hNFIRtqbO
-巨石内部-


パァァァァ…

勇者「…。」チャキッ

男「俺を殺そうって言うのか?」

勇者「この中にいる限り死にゃしねぇから安心しろ」

勇者「ま、斬られりゃ普通に痛いだろうけどな」ニヤッ

男「…っく!」ギリッ

478 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:03:54.68 ID:hNFIRtqbO
魔法石(ナビ)『…ん』コロンッ

男「な、ナビ!!」

魔法石(ナビ)『…男ちゃん、どうする?』

勇者「お、パートナーのお目覚めか」

男「ど、どうするって…」

魔法石(ナビ)『…あの人本気やで』ジッ

魔法石(ナビ)『形は歪んでしまっとぉけど、使命に燃える心はまだ残っとぉ』

魔法石(ナビ)『ウチらを取り込んででも…人の血で手を汚してでも』

魔法石(ナビ)『魔王を討ち取るつもりや』

勇者「そういう事だ。お前達には悪いが」

勇者「世界の平和という大義の為…」

勇者「お前達にはその礎となってもらう」

479 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:04:33.04 ID:hNFIRtqbO
男「バカな!大義の為なら普通に生きてる民の犠牲は厭わないってのか!?」

勇者「"普通"ね…」ギロリッ

魔法石(ナビ)『男ちゃん!話して分かる相手やないで!とりあえずこれ!!』

パァァァァ…ポンッ!

パシッ

男「こ、これは親父がくれた剣…!」チャキッ

勇者「ようやくやる気になったか」

勇者「ならば行くぞ…!」ダダッ

魔法石(ナビ)『男ちゃん!来るで!』

男「っ…ぬぁぁ!」

480 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:05:23.15 ID:hNFIRtqbO
ブゥンッッ!!!ガキンッ!!

男「っく!!なんて剣速…!」ギリギリッ

勇者「そう言いながらきっちり反応出来てるじゃねぇか」ニヤッ

勇者「久し振りの実戦、そうでなくちゃ面白くねぇや!!!」ババッ

勇者「ぅおりゃぁー!!」ブンッ

男「っく!!!このぉお!!」ブンッ

ガキンッ!!キンッ キィンッ

481 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:06:01.83 ID:hNFIRtqbO
-男の精神世界-


男「…っはぁ…はぁ…」ギュッ

勇者「お前、さっき普通がどうとか言ったな?」スッ

勇者「…お前達の"普通"を守る為に、俺達がどれだけのモンを諦めなきゃならなかったか」シマイ

勇者「お前、考えた事あるか?」

男「…っく、どういう事だ」チャキッ

482 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:06:39.32 ID:hNFIRtqbO
タタッ…

勇者「っはぁ!」ドカッ!バキッ!

男「ぐはっ!!」

勇者「剣士や賢者と違い、勇者はなろうと思ってなれるもんじゃねぇ」

勇者「ある日突然、啓示が下るのさ」ドカッ!バキッ!

勇者「それまで"普通"に暮らしてた俺は、啓示によってある日突然勇者に任命された」

勇者「そんな理不尽な事ってあるか?」

男「ぐっ…はぁはぁ」

483 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:07:24.17 ID:hNFIRtqbO
勇者「それまでの生活を…」ギリッ

勇者「友達と遊んだり、喧嘩したり」ゴスッ

勇者「誰かに恋をしたり」バシッ

勇者「"かったりーなー"なんて言いながら仕事したり」ドカッ

勇者「仲間と酒を飲んだり」ゲシッ

勇者「そういう"普通"を全部捨てて!」

ドカッ!バキッ!!

勇者「ただの若造が、いつ殺されるか分からない戦いの渦中に突然放り込まれて!!」

ブンッ!ドゲシッ!!

勇者「俺が諦めなきゃならなかった"普通"を謳歌するお前達の為に!!!」

ガシッ!ギリギリッ…

勇者「ずっと戦ってきたんだ!!!」

484 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:08:03.48 ID:hNFIRtqbO
男「が…は…」

魔法石(ナビ)『男ちゃん!!』

勇者「…でもそれも終わりだ」ニヤッ

ブンッッ ポイッ

男「ぐはぁぁ!!」ズシャーッッ

勇者「使命は果たす。魔王はこの手で討ち取る」チャキッ

勇者「お前達も道連れだ」

485 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:08:52.02 ID:hNFIRtqbO
-王宮地下 巨石の間-


ガキィィン!! キィン! キィン!!

親父「おらぁ!」ブンッ

騎士「ぐはぁ!」

親父「へっ…しかし、誰かを守りながら剣を振るうなんざ」

親父「あの日以来だな!勇者!」

先輩「お前か、それともお前か?女に手を上げやがったのは…」ギロリッ

先輩「腹は決まったのかよ!」

ブゥンッッ…ドカァン!

騎士「うわぁぁ!」

486 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:09:37.41 ID:hNFIRtqbO
女「修道女さん程ではない私の魔力でも、巨石の力を利用すれば…」パァァァァ…

女「こんな事も出来るのよ!」バシュゥゥ

ドッカーンッッ!!

同僚「おいおい女ちゃんwwここ室内www」

修道女「やたらと火炎属性の詠唱を用いるのは危険です!」

女「ふふっ…まだまだ」ニヤッ

同僚「あいつwwwしっかり魅了されてねぇかwww!?」

修道女「マズいです!いくら広いとは言え、室内であんな火力の詠唱は…」

同僚「みんなも何だかんだ戦い難そうだしな…あwww」ピコーン

487 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:10:27.55 ID:hNFIRtqbO
同僚「おいちょっと耳貸せwww」

修道女「な、何か思い付きましたか!?」ササッ

同僚「はい女ちゃんも集合www」

女「何よ今いいところなのに」ブツブツ

同僚「あのな…www」ゴニョゴニョ

修道女「…そ、それなら何とかなるかもです!」スッ

女「いけそうね…私も手伝うわ!」スッ

パァァァァ…

グワァァァ…

488 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:11:02.64 ID:hNFIRtqbO
同僚「巨石の力をレンタルしーのww」

同僚「ミラクルブースト転移魔法でwww」

女「巨石の間にいる私達を…」ビリビリ

修道女「騎士団の皆さん諸共まとめて転移させます!!」クワッ


パァァァァ…

バシュゥゥ!!!

489 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:15:20.15 ID:hNFIRtqbO
男「(啖呵切ったはいいが…さてどうする…?」チャキッ

カチャ…ポロッ

勇者「ん?なんか落ちたぞ」

魔法石(ナビ)『ホンマや、剣の部品ちゃう?』

男「どれどれ…あ、柄の丸い凹みって穴を塞ぐキャップだったのか」

男「…あ」ピコーン

490 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:16:35.03 ID:hNFIRtqbO
男「親父のくれた剣…キャップを外して出てきた丸い穴」スッ

男「これは多分、こう使うんだ」スポッ

カチャ…

魔法石(ナビ)『あらまぁなんと収まりのえぇ場所』スッポリ

パァァァァ…ブァン!!

オォォォ…

男「ナビと巨石の力を反応させて、強大な魔力を纏う魔法剣…」チャキッ

勇者「な、何だと…!?」

男「勇者さん」

男「これでもう一度勝負だ」チャキッ

491 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:17:16.80 ID:hNFIRtqbO
-王都市街地-


…バシュゥゥ!!!

親父「な!?外に出た…?」ポカーン

先輩「転移魔法で全員外に放り出したのか!」

先輩「助かるぜ!これで思う存分…」チャキッ

騎士団長「っく!…こ、ここは市街地!?王宮から転移してきたのか」

騎士団長「まぁ良い!貴様らを討つ事に変わりはない!!」チャキッ

騎士団長「ゆくぞ!!!」ブゥンッッ

先輩「おらぁぁ!!」ブゥンッッ

ガキィィン!!キィン!キィンキィン!!

492 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:17:49.42 ID:hNFIRtqbO
同僚「かーらーのーwww」スチャッ

親父「ん?まだ何かあんのか?」

同僚「親父さんwこれ持ってって下さいwww」ポイッ パシッ

親父「これは…通信用の魔法石?」

同僚「イッツ☆ショータイムwww」

ピピッ

493 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:18:32.50 ID:hNFIRtqbO
-王宮 国王執務室-


国王「さて、そろそろ頃合いか」

タッタッタッ…バタンッ!

警備兵「陛下!!」

側近「なんだ騒がしい!」

警備兵「報告します!き、巨石の間から…」

警備兵「男を除く全員が消失しました!」

側近「消失?…転移魔法か」ギリッ

国王「何だと!?しかしそんな事が可能なのか?」

側近「恐らく巨石の力を借りた超出力の転移魔法で…」

側近「巨石の間にいた者全員を一気に転移させたものかと…」

494 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:19:02.15 ID:hNFIRtqbO
国王「むぅ…閉鎖された空間で戦う事を避けたか、しかし一体どこへ?」

警備兵「分かりません、しかし…」

警備兵「現在、王都市街地の複数箇所で同時に戦闘が展開されていると報告が!」

国王「な、何だと!?」ダダッ

495 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:19:34.38 ID:hNFIRtqbO
ガララッ!

<キィン…ドカンッ…

国王「おい…これは…」

側近「…むぅ…」

国王「…市民を人質に取ったか…」ゴクリ

側近「あいつら…」ギリリッ

496 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:20:23.42 ID:hNFIRtqbO
-巨石内部-


勇者「そんな…バカな…っく」ボロッ

男「これで分かっただろ、俺はあんたにも負けない力がある」

男「だから…もういいんだよ」

勇者「…っくふふ、ふははは!!」

男「…?」

勇者「あーっははははは!!!!」

勇者「はは…はぁ…うっ…く…」ポロポロ

勇者「あぁ…あぁぁぁ」ポロポロ

男「…。」スッ

ギュッ…

497 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:20:54.51 ID:hNFIRtqbO
男「…勇者様」サスサス

男「長い間、俺達の為に」サスサス

男「…本当にありがとうございました」サスサス ギュッ

勇者「俺は…俺は…!!」ポロポロ

勇者「うぉぉぉぁぁぁぁぁ」ポロポロ

魔法剣(ナビ)『…。』ウルッ

498 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:21:30.41 ID:hNFIRtqbO
勇者「すまなかった、色々と」フカブカー

男「顔を上げて下さい」フルフル

男「あなたは元々、生身の人間ですから」

男「ここから出ようと思えば出られたはずなんです」

勇者「巨石の力に魅了された俺の弱さがそれを許さなかったって事か…」

499 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:24:46.66 ID:hNFIRtqbO
勇者「俺も戦士だ!正々堂々戦って負けたのだから、お前の言葉に従うよ」

男「勇者さん…」

勇者「だが、俺は諦めないぜ!」

勇者「人間として失われた時間は長いが、それでも俺は俺…」

勇者「魔王討伐に向けて!今度は俺自身の力で!」

男「俺にも出来る事があればお手伝いします」

魔法剣(ナビ)『マジか!!』

男「お前も手を貸してくれるか?」

魔法剣(ナビ)『あったりまえやん!なんたってウチら…』

男「最強のコンビだからな」ニコッ

男「ですが、その前に…」

勇者「…だな」ギリッ

500 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:25:24.82 ID:hNFIRtqbO
-王都 市街地-



…ブロロロ…

女「カーゴ…こんな時間に運行なんてあったかしら」

女「っていうかあれ…同僚くんのカーゴ!?」

ブロロロ…キキッ

同僚ナビ『集荷に参りましたわ!』

同僚「よう相棒wwささ乗った乗ったwww」グイグイ

修道女「え?え??」

女「今度は何をしようってのよ?」

バタンッ

同僚「騎士団狩りだよwww」

ブォン!ブロロロ…

501 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:25:55.14 ID:hNFIRtqbO
先輩「ん?無線?同僚か」ピピッ

同僚ナビ『私です!同僚さんは運転中なので私が騎士団の位置と人数をナビゲートします!』

親父「そいつは助かるぜ!なにせこいつら人数が…っとりゃ!」キィン!キィン!

同僚ナビ『王立騎士団は総勢100人の大所帯…ですが』

同僚ナビ『王都の街並みを隅々まで知り尽くした私達ならば』

同僚「どこに隠れてたって逃がさねぇよんwww」

女「更に同僚くんコンビの索敵情報を使って、私と修道女さんの詠唱を組み合わせて…」

修道女「攻撃魔法をピンポイントで転移!」

先輩「よし!これなら行けるぞ!」ブンッッ!

502 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:26:24.22 ID:hNFIRtqbO
同僚ナビ『先輩さん!2ブロック北に3人!』

先輩「了解!」ダダッ

同僚ナビ『剣士様はその先3ブロックに渡って2人ずつ計6人ですわ!』

親父「おうよ!剣士様なんてこっ恥ずかしいぜ!親父で構わねぇよ!」ニカッ

503 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:26:53.13 ID:hNFIRtqbO
同僚ナビ『女さん!南6ブロック先に8人固まっています!』

女「了解!行くわよ修道女さん!」パァァァァ

修道女「了解です!」パァァァァ

同僚「そして俺は、そこら辺にいる騎士団の連中を追い回して一箇所に追い込む係www」

同僚「たかまるぅwwww」ガチャン

504 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:27:25.38 ID:hNFIRtqbO
先輩「親父さん!」ピピッ

親父「おう!どした!」キィン!キィン!

先輩「この戦いが終わったら俺、親父さんに話が…!」ガキィン!

親父「あー聞こえない聞こえない!妙なフラグ立てんじゃねぇよバカ!!」

女「こっちには聞こえてるわよ…ホントにもう」クスッ

ブォン!ブロロロ…

505 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:28:03.76 ID:hNFIRtqbO
-王宮 国王執務室-



勇者「お久しぶりです、陛下」ペコッ

男「…。」ペコッ

国王「勇者!?本当に勇者なのか!??」ガタッ

側近「…。」ギリッ

勇者「賢者も久しぶりだな、今は側近か」

勇者「何とか言ったらどうだ」

側近「…。」フンッ

506 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:28:45.20 ID:hNFIRtqbO
男「陛下。20年前の勇者の落涙での一件」

男「そして、今回の俺とナビに降り掛かった出来事…」

男「全て公表して下さい」

男「勇者の命を犠牲にして、神の雷を作り出した事」

男「そしてその力を保つ為に、今度は俺とナビを…」

男「これは人の道に外れる行為です」

507 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:29:37.12 ID:hNFIRtqbO
勇者「俺が巨石の力に魅力されてしまったのは俺の不徳の致すところだ」

勇者「だが賢者、お前はそれを好機と捉え」

勇者「俺を一人の人間ではなく、兵器として利用してきた」

勇者「…俺はまだいい」

勇者「巨石の中とは言え、魔王を討つという使命の為にやってきた事は同じだからな」

勇者「だが、彼らにしようとした事は違う」

側近「…。」

508 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:30:13.58 ID:hNFIRtqbO
国王「勇者よ、そして男よ」スクッ

国王「そなた達は大義を前に小さき者を蔑ろにするな、と言うが」

国王「それは理想論だ…詭弁とも言える」

国王「誰一人傷付ける事無く、全てを守り抜く…」

国王「それが出来るならば私だってそうしたい」

国王「しかし現実を見よ」

国王「魔王を前に、我々人間の力はあまりにも無力だ」

国王「民を、世界を守る為」

国王「側近…賢者の考えは次善の策であると考え、私は支持したのだ」

509 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:30:41.98 ID:hNFIRtqbO
男「陛下!それは違います!」

国王「違わんな。私は王国の為、世界の為」

国王「私は悪にでもなろうと覚悟を決めたのだ」

国王「そなたにその覚悟はあるか?」ギロリッ

510 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:31:25.60 ID:hNFIRtqbO
ピピッ ピピッ

側近「こんな時に何だ!?」ガチャ

騎士団長『わ、私です…』

側近「おぉ騎士団長!城下の争いはどうなった?奴らを仕留めたのだろうな!??」

騎士団長『そ、それが…あっ』

親父『おいーっす』

側近「なっ!剣士か!」

親父『騎士団だっけか?コイツら全員制圧したぜ』

側近「何だと!??」

国王「か、代われ!」バッ

511 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:31:52.97 ID:hNFIRtqbO
国王「私だ!おぬしら、まさか騎士団を全員…」ワナワナ

親父『国王陛下か!安心しろよ、全員生け捕りだ』

国王「い、生け捕り…」

親父『まさか市街地で人斬りをするわけにゃいかねぇだろ』

親父『それにな、アンタ達と同じ土俵に立つつもりはねぇんだ』

国王「…どういう意味だ」ギリッ

512 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:32:26.80 ID:hNFIRtqbO
親父『っつーわけで、あとは俺の息子に委ねるとするか!』

親父『おい男!こんだけ騒がしきゃーさすがに目ぇ覚めたろ!!』

親父『そいつらにガツンと言ってやんな!!』ガチャ

国王「っく…」イテテ

男「親父ホントに声がデカいな…丸聞こえだぞ」クスッ

勇者「剣士…全然変わらないなあいつは!」ケラケラ

513 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:32:54.89 ID:hNFIRtqbO
男「…外の騒ぎで、王都の人々も目を覚ましたことでしょう」

男「どちらにしろ早晩、みんなに説明しなきゃいけなくなるはずです」

勇者「陛下、俺はこいつらに教えられました」

勇者「力の使い方次第では、誰かを守りながら戦う事も出来ると…」

国王「…むぅ」

514 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:33:21.84 ID:hNFIRtqbO
勇者「陛下!俺にもう一度チャンスを下さい!!」バッ

勇者「今度はこの手で!俺自身の力で!!」

勇者「魔王を討ち、平和を勝ち取ってみせます!!」

勇者「お願いします!!」フカブカー

男「俺からもお願いします!!」

515 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:34:27.88 ID:hNFIRtqbO
-王宮 国王執務室-



国王「…分かった」

側近「へ、陛下!!」

国王「…おぬしらの言うことは所詮理想論」

国王「だが、国を統べるものとして」

国王「初めから完全無欠の答えを諦め、次善の策に甘んじた私は間違っていたようだ」

側近「陛下!それは違います!!」

側近「王国の…世界の将来を憂い、陛下は自ら道を踏み外してでも民を守ろうとした!!」

側近「そんな陛下を誰が非難できるでしょう!??」


516 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:34:55.25 ID:hNFIRtqbO
国王「…側近よ、ありがとう」

国王「だが私は悟ってしまった」

国王「目的の為、自ら悪の道を歩まんとするような考え方は」

国王「魔王と何が違う?」

側近「そ、それは…」

517 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:35:23.28 ID:hNFIRtqbO
勇者「答えが出たようですね」

国王「あぁ…勇者よ」

勇者「はっ!」

国王「私の最後の頼みだ」

国王「魔王を討て」

国王「平和を勝ち取ってくれ」

勇者「承知致しました!!」ビシィッ

国王「男くん、そして魔法石に宿りし心よ」

男「はい!」

魔法剣(ナビ)『はぃな!』

国王「勇者の力になってやってくれ」

男「分かりました!」

魔法剣(ナビ)『やったんで!』

側近「…くっ」ギリギリッ

518 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:35:57.68 ID:hNFIRtqbO
-数日後 王都酒場街-


ワイワイ…ガヤガヤ…


<乾杯!!!カチンッ


同僚「ぷはーうめーwwwww」グビ

修道女「今回はまた大騒ぎでしたねー」ゴクッ

女「この一件で王立騎士団は解体…騎士団長は修行の旅に出るそうよ」

先輩「いい心がけだな、女性に手を上げるなんざ、紳士の風上にもだ」

先輩「あ、ラス1もーらい」パク

女「あ!私狙ってたのに!紳士の風上にも置けないわね!」

先輩「旨いもんは別だ」ニカッ

修道女「それは同感です」ケラケラ

519 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:36:24.89 ID:hNFIRtqbO
親父「勇者!お前全然変わらないなー!!」バシバシ

勇者「剣士もな!見た目は老けたが中身は全然だ!!」バシバシ

親父「それ褒めてねぇだろー!」ワハハ

520 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:37:29.78 ID:hNFIRtqbO
男「昨日、陛下から将来的な王制廃止の通達が出たな」グビ

同僚「陛下の気持ちも分からんではないが…やり方がマズかったな」

男「この国はこれからどうなるんだろうなー」

先輩「議会が中心になって、民主主義の国を作っていくそうだ」

修道女「色んなものが変わっていくんですねぇ…」

同僚「シリアスな顔しちゃってwwどうせ1時間もしたらとっ散らかっちゃうんだろwww」ケラケラ

修道女「また馬鹿にしてー!!」ムキー

521 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:38:24.79 ID:hNFIRtqbO
-王都 酒場街-

ワイワイ…ガヤガヤ…



親父「エールおかわりお待ち!」ドンッ

勇者「お!サンキュー!」

勇者「それじゃ、かつての同士との…」

親父「再会を祝して…」


<乾杯!カチンッ

522 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:38:56.53 ID:hNFIRtqbO
勇者「…しかし剣士が父親とはな!」グビグビ

親父「自分でも不思議だよ」フフッ

勇者「でも、さすが剣士の息子だな!巨石の中で剣を交えたが、強かったぞ!」

勇者「剣の腕はお前と並び立つんじゃないか?」

親父「だろー??ガキの頃から鍛えてっからよ!」ワハハ

親父「血は繋がっていないが、女共々自慢の子供さ」ニコッ

勇者「…すっかり父親の顔だな」フフッ

523 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:39:26.05 ID:hNFIRtqbO
親父「お前、これからどうすんだ?」グイッ

勇者「陛下と約束したんだ、一から修行し直して」

勇者「今度こそ、魔王を討つ!」グッ

勇者「剣士はどうする?一緒に来るか?」

親父「俺は歳食っちまったからな…身体がもたんだろうよ」

親父「鍛治の仕事もあるしな、だからすまん」

524 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:39:55.01 ID:hNFIRtqbO
勇者「いいんだよ、こうしてまた剣士に会えただけでも嬉しいんだ!!」

親父「あの頃は魔王討伐に必死で、酒なんか飲んでる余裕なかったしな」ニカッ

勇者「まったくだ」ケラケラ

親父「あ、だったら代わりにあいつ連れてけよ!」

勇者「男くんか…確かに一緒に来てくれたら心強いな!」

勇者「今は物流協会だっけ?陸軍を再編成して出来たんだよな」

勇者「来てくれないかなー」ギシッ

525 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:40:25.99 ID:hNFIRtqbO
親父「まぁ本人の気持ちもあるだろうしよ、直接聞いてみろや」

勇者「そうするよ!いやぁ…しかし」シミジミ

親父「何だよ」

勇者「普通って、いいもんだな」ジワッ

親父「…勇者、おかえり」ポンポン

勇者「ははっ…ただいま」ニカッ

<おーし今日は飲むぞー!!

<店中の酒樽を空にする!!

ワイワイ…ガヤガヤ…

526 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:41:43.99 ID:hNFIRtqbO
[BAR REQUIEM]


先輩「アードベッグを」

女「マルガリータを」


<お待たせしました

<乾杯…カチンッ


女「…あの時はビックリしたわ」フゥ

先輩「どうしても許せなくてな。君を傷付けようとしたあいつらが」

女「それにしたって…何もおじ様の前で啖呵切らなくても」クスッ

先輩「あれは勇み足だったか…」ハァ

先輩「だが、言った言葉に嘘はない」

先輩「俺は君の事、そういう風に思ってるんだ」グイッ

先輩「…君はどうなんだ?」

女「…。」カラカラッ

527 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:42:14.35 ID:hNFIRtqbO
女「あなたの気持ちは嬉しいし、私の心も同じ方を向いてると思うわ」

女「でもね…自信がないの」ハァ

女「私に人を愛する…愛される資格なんてあるのか、って」

先輩「愛の資格か…」

先輩「そんなモン必要ない!と言っちまう事も出来るが…」

先輩「強いて言うなら、とっくに持ってるんじゃないのか?」

女「私がその資格を?」

528 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:42:50.63 ID:hNFIRtqbO
先輩「君は親父さんの娘として生きてる、男の姉としても」

先輩「生きてるって事は、それ自体誰かに愛されてる証なんだ」

先輩「だから君も誰かを愛する事が出来る、愛される事を知っているからだ」

女「私が…」

先輩「今すぐじゃなくてもいい」

先輩「俺との事、少し考えてみてくれ」

女「…優しいのね」

先輩「強引になれないだけさ」グイッ

先輩「…戦闘みたいにはいかん」クスッ


529 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:45:11.92 ID:hNFIRtqbO
同僚「修道院特製エールでww」

修道女「私も同じので!」


<お待たせしました

<乾杯!カチンッ


同僚「今回も大活躍だったなwww」

修道女「最後まんまと利用されましたけどね…側近様め」グヌヌ

同僚「そういや側近…賢者ってどこ行ったんだww?」グビ

修道女「姿を消したそうですね」

同僚「陛下はともかくあの野郎wwやりたいだけやってトンズラかよwww」

530 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:45:49.26 ID:hNFIRtqbO
修道女「それと、王都襲撃の真相も結局分からずじまいですよね?」

同僚「先輩は女ちゃんを疑ってたみたいだけどなww」

修道女「まぁ勇者様と巨石の力が暴発したという事なんでしょうけど…」ウーム

同僚「あれだろ?ナビちゃん達が聞いたっつー呻き声www」

修道女「はい…一体何だったんでしょうねー」グビ

同僚「勇者にやられた魔族の亡霊とかだったりしてなwww」ケラケラ

531 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:46:31.09 ID:hNFIRtqbO
同僚「しかし、ホント飲んでも散らからなくなったよなwww」

修道女「うぅ…こうして一生いじられるのね…」シクシク

同僚「だって初登場時の衝撃が強過ぎてwwww」ケラケラ

修道女「むぅ…でも散らからなくなったのは同僚さんのお陰でもあるんですよ?」

同僚「だろーwwもっと褒め称えてくれて構わんwww」

修道女「またすぐ茶化すんだから…」クスッ

同僚「シリアスなの苦手なんだもんwww」

532 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:47:22.39 ID:hNFIRtqbO
修道女「いつも…ありがとうです」ニコッ

同僚「なんだよ急にww」

修道女「何でもないでーす」プイッ

同僚「…こちらこそ、だ」グビ

修道女「え?」

同僚「だから!…いつも助けてくれてありがとな」

修道女「…。」ポスッ

同僚「な、なんだよ急にもたれ掛かってきて…眠いのか?」

修道女「そうでーす。眠くて…もう死んでもいい位」フフッ

同僚「わけ分からん…」

533 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:48:43.03 ID:hNFIRtqbO
同僚「なぁ、今度の休み空いてるか?」

修道女「(あ、また草生えてない)」

修道女「空いてますけど、どうしたんですかー?」

同僚「ちょっと行きたい所あるんだわ」

同僚「付き合ってくれや」

修道女「そ、そそそれって!でででデート的な!??」ガバッ

同僚「そういうんじゃねーよバーカww」クスッ

修道女「な、なんだ…」シュン

修道女「じゃあどこへ行くんですか?」

同僚「…ちょっとな」グビ


534 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:49:29.57 ID:hNFIRtqbO
[BAR REQUIEM]



カランッ

男「ブルームーンで」

ナビ『あら珍しいやん』


<お待たせしました

<乾杯!

535 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:50:02.15 ID:hNFIRtqbO
ナビ『男ちゃん具合は平気?』

男「全然平気だよ。っていうか今になってみれば…」

男「意識を失ったのだって騎士団が何かしたんじゃないかっ?て気もするけど」クイッ

ナビ『そこは何とも言われへんけどな、でも…』

男「でも?」

ナビ『さすがに物忘れを無理矢理させるってのは出来ひんちゃう?』

男「そうだよな…やっぱり疲れてたのかなー」

536 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:50:35.62 ID:hNFIRtqbO
ナビ『あ、そういえば男ちゃん』

男「ん?」ゴクッ

ナビ『国王はんの前で啖呵きってもうたけど、ホンマに魔王を倒しに行くん?』

男「そーれーなーーー」ギシッ

ナビ『…悩んでんねや』チョコン

男「あぁ…いくら親父に鍛えられたとは言え、俺はただの一般市民だからな」

ナビ『せやんなー。怖いよな』プラプラ

男「魔界…魔王…」

男「勇者さん達以外、誰も見た事のない世界…」ギシッ

男「…そこへ行って自分が剣を振るうってのが、想像もつかないんだ」

537 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:51:05.03 ID:hNFIRtqbO
ナビ『…ウチは男ちゃんについてくで』

ナビ『今まで通り、一緒にカーゴ乗るんでもえぇ』

ナビ『戦うって言うなら一緒に行く』

ナビ『おとさんのお陰で、魔法剣として一緒に戦う事も出来るようになったしな』ニカッ

男「…それは、相棒としてか?」

ナビ『それもあるけど、ウチは男ちゃんの事好きやから。』

男「…うん」

538 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:51:54.96 ID:hNFIRtqbO
ナビ『…っ。もー煮えきらんなぁ』ムッ

ナビ『何?ほんなら修道女さんみたいに啖呵きったろか??』

ナビ『ウチは!男ちゃんの事が!!』ババーン

男「いいよいいよ!照れ臭い」アセッ

ナビ『なんやつまらんなー』ケラケラ

男「…。」

ナビ『…。』

539 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:52:39.28 ID:hNFIRtqbO
ナビ『男ちゃんは人を赦せる人や。』

男「赦す…?」

ナビ『せやでー。今回も勇者はんの抱えとぉ苦しみとか悲しみとか…』

ナビ『ぜーんぶ受け止めたって、最後は巨石から引っ張り出したワケやん』

ナビ『誰にでも出来る事ちゃうで』ウンウン

男「そうかな?」

ナビ『そーなの!』

540 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:53:19.44 ID:hNFIRtqbO
ナビ『それはね、慈しみやと思うの』

男「慈しみ…」

ナビ『同僚ちゃんとも、他の誰とも違う…』

ナビ『男ちゃんのそういう所が、ウチは大好きなんよ。』ニコッ

男「ナビ…」スッ

ナビ『…だーっ!ちょ!タイム!』ヒラリ

男「あ、避けられた」

541 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:53:52.85 ID:hNFIRtqbO
ナビ『男ちゃんそういうトコあるよな?巨石ん中でもせやったけど!』プンスカ

ナビ『大事な事ちゃんと言わんと、勢いでその、そ、そういう事を…』カァッ

男「あ、あれやっぱりお前だったんだな?」

ナビ『へ?』

542 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:54:22.60 ID:hNFIRtqbO
男「ほら途中からお前の姿に化けた勇者さんが出てきたからさ」

男「俺まさか男同士で…!?って心配してたんだよー!」ハハッ

男「やっぱりお前だったんだな、いやー良かった!安心したよ」ホッ

ナビ『ホッ…ちゃうわぼけ!』シャー

543 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:55:09.21 ID:hNFIRtqbO
ナビ『そうやって大事な言葉をはぐらかすんはズルいよ!』

ナビ『女の子はな!?分かってても言葉で言って欲しいねん!!』プンスカ

男「すまん、じゃあちゃんと言うよ」スチャ

ナビ『…ぁ、眼鏡』ドキッ

男「ナビ…俺はお前の事がsナビ『あーっ!た、タイムタイム!!!』アセッ

男「…今度は何だ?」ハァ

ナビ『やっぱ今日はダメ!男ちゃんお酒入っとぉもん!!』

男「こんなんで酔っ払わないぞ?」カタムケ

ナビ『いーやアカン!酔っ払っとぉ人はみんなそう言うねん!!』

男「それはまぁ確かにありがちだ」スチャ

ナビ『よし眼鏡かけたな!?もう一生かけとけ!!』

男「なんだそりゃ」ケラケラ

ナビ『全く…せやから今度シラフん時にちゃんと言うて??』

ナビ『な?な??』ジーッ

男「…その視線こそズルいよ」ハァ

544 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:55:50.21 ID:hNFIRtqbO
男「分かった。勝負は次回に持ち越しだ」

ナビ『何の勝負やねん…まぁほなそういう事で!』ニシシッ

ナビ『(何でそこで眼鏡取るねん!あの眼はエロい!直視でけへん!)』カァッ

ナビ『(あーモヤモヤするぅ…男ちゃんのあほ!エロメガネ!)』ドキドキ

545 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:57:34.92 ID:hNFIRtqbO
第二部完となります
ありがとうございました
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/02(水) 02:07:12.07 ID:aUzFGSNLO
547 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/02(水) 13:52:50.88 ID:JpYJvHyNO
個別にレス返せてなくて申し訳ないです
色んな言葉を掛けてもらえて嬉しいです
ありがとうございます
書き溜め分終わってしまったので次の投下未定なんですが、連休中に少しずつ形にしたいと思っています
見かけた際にはよろしくお願いします
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 15:27:37.01 ID:NMv1j7Ouo

3部待ってんで
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 16:41:19.19 ID:J1Sn5C6+O
一週間かけて全部読んだ。
面白いから三部期待する!同僚いいキャラだな
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