剣と魔法と運送業

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367 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:36:31.84 ID:9QidveBa0
ナビ「あ、アンタ、誰や」ガクガク

???「…。」ギュッ

ナビ「い、いや!離して!!」ジタバタ

ナビ「嫌や!アンタと一緒には行かれへん!!」ジタバタ

???「…。」ニヤァ

ナビ「ひっ!いや…いやぁぁぁ!」

368 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:37:18.44 ID:9QidveBa0
-王都 男の家-

魔法石(ナビ)『!!!』ビクッ

魔法石(ナビ)『…ゆ、夢』ガクガク

男「…ん、もう朝か」パチ

魔法石(ナビ)『っ!ご、ごめん起こしてもうた』

男「平気だよ…ふわぁー」ノビーッ

魔法石(ナビ)『(せ、せやった)』

魔法石(ナビ)『(夕べから、夜も男ちゃんと一緒におれる事になって)』

魔法石(ナビ)『(今日が初めての朝…やのに)』

369 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:38:07.24 ID:9QidveBa0
魔法石(ナビ)『もう最悪やー』コロンッ

男「どうした?怖い夢でも見たか」

魔法石(ナビ)『だいせーかい。もう…せっかくの初夜やったのに』ブー

男「初夜って…まぁ間違ってないけど」

男「おはよう、ナビ」ニコッ

魔法石(ナビ)『うん…おはようさん。男ちゃん♪』ニコッ

370 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:39:04.50 ID:9QidveBa0
-物流倉庫 事務所-


男「監視されてる?」キョトン

先輩「そうだ。俺とお前、恐らく同僚と修道女さんもな」

男「な、何で俺達が…?例の巨石の件ですか!?」

先輩「だろうな。とにかく国王陛下お抱えのネズミが出てきた以上、これは緊急事態だ」

男「き、緊急事態って言われても仕事もあるし…」

魔法石(ナビ)『せやで。これからまた港湾倉庫まで行くんやもん』

先輩「むしろ普通に仕事してろ、連中が気にしてるのは恐らく機密の漏洩だ」

先輩「なぁに、怪しい動きをしなきゃ何にもされねぇから安心しろ」

男「安心しろって言われても…なぁ?」

魔法石(ナビ)『見張られとぉって考えるだけで陰鬱な気になるわ…』

先輩「ははっ。まぁしばらくの辛抱だな」

371 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:39:39.23 ID:9QidveBa0
先輩「むしろその位緊張感がある方がいいんじゃないかー?」ニヤニヤ

男「それは、どういう」

先輩「仕事中にイチャイチャすんのも程々にしろって事だよ」ニカッ

男「なっ…!」カァァッ

魔法石(ナビ)『ちょっ…!』カァァッ

先輩「お前らホントに息ピッタリだなー!」ワハハ

先輩「…まぁそれは冗談として」

先輩「もはや俺達の敵は魔族だけじゃないかも知れん。それだけ忘れんな」

男「…分かりました」

372 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:40:39.38 ID:9QidveBa0
-王都 外れ 北の街道-



ブロロロ…

先輩「地図情報、転移魔法、動力源…」

先輩「地図情報は有る」

先輩「何せ王都の中なんだ、詳細な地図情報なんぞいくらでも用意できる」

先輩「動力源も有る」

先輩「魔法石の蓄積できる魔力はその大きさに依存する、らしい」

先輩「例の巨石を使えば問題ないだろう」

先輩「となると、残るは…転移魔法」

373 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:41:23.41 ID:9QidveBa0
先輩「いくら膨大な魔力があろうと、術者がいなけりゃ詠唱は出来ない」

先輩「…攻撃の瞬間、修道女さんは同僚と一緒にいた」

先輩「と、なると…いや」

先輩「そんなワケはない…」

ブォン!ブロロロ…

374 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:42:04.53 ID:9QidveBa0
-王都外れ 東の街道-


ブロロロ…

…ちゃん…とこちゃん…

男「…ん…」

ナビ『男ちゃんってば!!!』クワッ

男「!!」ビクッ


ブロロロ…キキッ

375 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:42:47.30 ID:9QidveBa0
ゴゥンゴゥン…

ナビ『大丈夫?気分悪いんか??』

男「俺…今、寝て…?」クラクラ

ナビ『うぅん。たぶん眠ってはなかった』フルフル

ナビ『なんや目ぇ開いたまんまぼーーっとしとって』

ナビ『話し掛けても何も!心ここにあらずみたいな感じやったで!』

男「心が…」

ナビ『なぁホンマに大丈夫!?体調悪いなら無理せんと休も!?』

ナビ『それか配車係さんに言うて代わりの人を…』

男「…それはダメだ、ただでさえ復旧作業でドライバーは大忙しなんだから」

男「少し休めば良くなると思う…心配掛けてゴメンな」ヘラッ

ナビ『そんなんえぇて!なら路肩寄って休憩しよ?な?』カチッカチッ

男「あぁ…」クラクラ


ササッ

偵察兵「…。」ピピッ

376 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:43:34.57 ID:9QidveBa0
-夜 物流協会事務所-



女「運転中に意識を?」

配車係「はい。今日の運行はナビちゃんのおかげで無事に終わりましたが」

配車係「僕としても、このまま男さんに業務に就いてもらうわけには」

女「分かりました。事務局の方で手配します」

女「まずは医療機関で検査を受けてもらいましょう」

魔法石(ナビ)『お、女さん…』オロオロ

女「大丈夫よ。人間もあなた達と一緒で、時々メンテナンスが必要なの」

女「きっとすぐに良くなるわ」ニコッ

魔法石(ナビ)『そ、そっかぁ…』ホッ

377 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:44:06.58 ID:9QidveBa0
先輩「おつかれーっす」ガチャ

配車係「先輩さん、お疲れ様です」

女「あら、お帰りなさい」

先輩「おう、事務所(こっち)にいるなんて珍しいじゃないか」ヒラヒラ

女「男くんがね、運転中に意識を失ったらしいの」

先輩「男が?大丈夫なのか!?」

女「無事に帰って来てるわ、でもこのまま運行を続けるのは無理ね」

女「とりあえず明日にでも医療機関へ連れて行くわ」

先輩「それなら俺が連れてってやるよ、ちょうど明日休みだし」

女「ほんとに?助かるわ、それなら後で連絡するわね」

378 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:44:38.51 ID:9QidveBa0
先輩「了解。あとさ、こんな時に何だが…この後空いてるか?」

女「ホント、こんな時にね」ジトッ

先輩「まぁいいじゃないか、男の事は今あぁだこうだ言っても始まらんさ」

女「そりゃそうだけど…」

先輩「まぁ…いいからよ」ニコッ

女「…?」

379 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:46:19.53 ID:9QidveBa0
-王都 酒場街-


ワイワイ…ガヤガヤ…

女「こういう肩肘張らない店も悪くないわね」

先輩「たまにはいいだろ?ほいおまっとさん」コトッ


<乾杯…カチンッ

380 : ◆o/5nn0YDew [saga ]:2018/04/30(月) 11:47:17.80 ID:9QidveBa0
女「…で、どうしたの?」

女「一人酒が寂しいなんてガラじゃないでしょ?」

先輩「どうしても君と2人きりになりたくて、さ」ニコッ

女「ふふっ。その割には賑やかな店をチョイスしたものね」ニコッ

先輩「こんだけ騒がしきゃー盗み聞きもされねぇだろってな」ケラケラ

女「盗み聞き?…まさか」ハッ

先輩「そのまさかだ、監視されてる」

381 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:47:53.92 ID:9QidveBa0
女「れ、例の巨石の件で…?」

先輩「そーゆー事。しかも相手は王立騎士団」グビグビ

女「騎士団って…じゃあ陛下が直接!?」

先輩「声がでけーよ。んで、こっからは噂を元にした俺の推測だが…」


かくかくしかじか

382 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:48:54.94 ID:9QidveBa0
女「陰謀論がまさかのって感じね…」ハァ

先輩「だろー?何だか知らないが、俺達は相当デカい話に巻き込まれてるらしい」ニヤニヤ

女「もしその仮説が正しいなら、私達は兵器開発の片棒を担がされてる事になるじゃない!」

先輩「国王陛下とそのネズミが出てきたんだ、ほぼ決まりだろ」ニヤッ

女「…なんだか楽しそうね」ジトッ

先輩「そんな事ないさ」ニヤニヤ

女「どうだか…」ハァ

先輩「まぁそれはそれとして」

383 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:50:47.23 ID:9QidveBa0
女「まだ何かあるの?」

先輩「海はどうだった?」ニコッ

女「…え?」

先輩「君、俺が訪ねてった時に留守だった事あったろ?」

女「あ…あぁ、あの時ね」ドギマギ

先輩「実はあの時そこらの職員に聞いててな、ホントは港湾倉庫に行ってたそうじゃないか」

ズイッ

先輩「…お前、何か隠してんだろ」ギロリッ

女「…店、変えましょうか」フイッ

384 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:51:56.95 ID:9QidveBa0
[BAR REQUIEM]


カランッ…

先輩「アードベッグ」

女「私も」


<お待たせしました


先輩「…。」グイッ

女「…あなたに嘘はつけないわね」フゥ

先輩「おかしいと思ったんだ」フンッ

先輩「同僚達はともかく、俺や男まで呼び出して情報の付き合わせ…」カランッ

先輩「そんな事する必要あるか?」

女「…。」

先輩「何を知ってる?」

先輩「そして何を隠してる?」

385 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:52:33.15 ID:9QidveBa0
女「…知ってる事はみんなと同じよ」

女「結果的には、ね」グイッ

先輩「結果的に?」

女「マッピングシステムで実際に荷物を運ぼうと思ったら、莫大なエネルギー源が必要になるわ」

女「それを賄う方策として、巨大な魔法石が用意されてるって事までは聞いてた」

女「ただ、それがどこから来たのか」

女「なぜ極秘にされてるのか」

女「探ってみたけどサッパリだったのよ」フルフル

386 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:53:17.94 ID:9QidveBa0
先輩「その一環で港湾倉庫か」

女「えぇ。魔法石が海外から持ち込まれたのなら」

女「何らかの記録が残ってるんじゃないかと思ったのよ」

先輩「その調査は、事務局の仕事としてか?」

女「半分はね。もう半分は私の探究心」クスッ

先輩「全く君って奴は…」ハァ

387 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:53:57.91 ID:9QidveBa0
女「みんなが日々の運行や何かで知り得た話…噂でも何でも」

女「とにかくカードを出し尽くしてみれば何か分かるかも、と思ったのよ」

先輩「俺達を偵察隊か何かと勘違いしてないか?」クスッ

女「気を悪くしないで頂戴。知りたがりなのは性分なの」

先輩「まぁいいさ、結果的に面白そうな展開になってきやがったしな」ニヤッ

女「やっぱり楽しんでるじゃない…怖い人」クスッ

388 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:54:57.03 ID:9QidveBa0
先輩「同僚の調査で分かったのが勇者の落涙」

先輩「つまり巨石の出所だが」

女「あとは力の制御なのよ…ん」ノビーッ

先輩「詠唱が出来れば誰でもいいってモンでもないのか?」

女「精神が保たないわ」フルフル

女「そこまでの莫大な魔力を使いこなすことは普通の人間じゃ無理なの」

女「それこそ修道女さんレベルの詠唱士が何人も必要でしょうね」

先輩「…。」フゥ

389 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:55:34.68 ID:9QidveBa0
先輩「そこについては教えてもらってないのか?」

女「"問題ない"の一点張りよ」ハァ

先輩「問題ないって言う時は、大体何かあるもんだ」ニヤッ

女「同感ね。彼らはまだ何か隠してる」

先輩「国王陛下に騎士団…」

女「これ以上何が出てくるって言うのかしら」

390 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:57:01.93 ID:9QidveBa0
-翌日 王立診療所-


男「何だかすみません、わざわざ送ってもらっちゃって」ペコッ

先輩「気にすんな。まぁ医者にじっくり診てもらって」

先輩「バッチリ治してバリバリ働いてくれや」ニカッ

男「分かりました、それじゃ」ニコッ

先輩「お大事にな」ヒラヒラ

391 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:57:50.77 ID:9QidveBa0
-検査室-

医師「事情は分かりました。脳の状態を調べますのでこちらのベッドに横になって下さい」

男「んしょ、と」ゴロンッ

医師「楽にしていて下さい」スッ

男「ん?その注射は…」

医師「弱めの安定剤です」

医師「男さんの場合、カーゴの運転等で無意識のうちに緊張状態が続いていた事がストレスになっていたと思われます」

男「ストレスですか」

医師「はい。心が安定した状態で検査をする為に、ご協力下さい」チクッ

男「んっ…」

医師「そのまましばらく安静にしていて下さいね」スクッ

ガチャ バタンッ

男「…ぅ…ぁ」ウトウト

男「」zzz

392 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:58:59.27 ID:9QidveBa0
-王宮 国王執務室-


騎士団長「監視対象者の中に、同僚の同期である男という職員がいるのですが」

側近の「ふむ…どこかで聞いた名だ」チラッ

国王「涙の欠片か」

騎士団長「昨日体調を崩して、本日より王立診療所へ入院しています」

側近「何?」

騎士団長「報告によれば、運行中に一時的に意識を失った様で」

国王「…ほう」

騎士団長「念の為、催眠剤で昏倒させてあります」

騎士団長「向こう24時間は眠ったままです」

側近「仕事が早いな、流石だ」


393 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:59:34.20 ID:9QidveBa0
騎士団長「ありがたきお言葉を賜った後で申し上げにくいのですが…」

側近「何だ?」

騎士団長「別の監視対象者…先輩という元陸軍所属の者に、偵察兵が接触されました」

側近「監視がバレた、という事か?」

騎士団長「誠に申し訳ございません」フカブカー

側近「お前らしくないな」チラッ

国王「まぁ、構わん」

394 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 12:00:24.94 ID:9QidveBa0
国王「元陸軍という事は、偵察兵が騎士団の人間である事も見破ったのだろう」

騎士団長「仰る通りです」

国王「それがどういう意味を持つのか、さえな」

騎士団長「…無言の圧力、という事ですか」

側近「左様。旧陸軍からの選り抜きで組織された王立騎士団と」

側近「たかだか寄せ集めの現陸軍、ましてや退役者だ」

側近「どんな馬鹿でも喧嘩の相手は選ぶものだ」


395 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 12:01:12.43 ID:9QidveBa0
国王「うむ…騎士団長」

騎士団長「はっ!」

国王「引き続き対象者の監視を続けろ」

国王「男に関してはそのまま診療所にて軟禁しろ、面会謝絶とでもしておけ」

国王「男のナビシステム、魔法石を入手しろ」

国王「時は近い、油断するな」

国王「今回の失態は不問に伏す。だが次はないぞ」ギロリ

騎士団長「は、はぁっ!」ビシッ

396 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 12:01:53.79 ID:9QidveBa0
夜に続き投下します
ありがとうございました
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/30(月) 17:05:22.73 ID:wHvKp2OWO
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/30(月) 17:32:18.47 ID:x/TOOzZEO
期待
399 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 19:58:10.00 ID:9QidveBa0
投下します
400 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 19:58:54.90 ID:9QidveBa0
-王立診療所 受付-



魔法石(ナビ)『面会謝絶ぅ!?』

女「どういう事ですか?」

受付係「検査の結果、男さんの症状を鑑みて」

受付係「過度なストレスを避ける為、一時的に面会謝絶するようにと」

受付係「先生のご指示です」

女「じ、じゃあ…」

医師「症状自体は重いですが」ガチャ

受付係「あ、先生」

魔法石(ナビ)『せんせー!?お、男ちゃんどうなるん!??』アセアセ

医師「今すぐ命に関わるとか、そういった事はありません」

魔法石(ナビ)『そ、そっかぁ…』ホッ

401 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:00:12.90 ID:9QidveBa0
医師「ただ、彼には休養が必要なのです。ゆっくり一人の時間を過ごさせてあげて欲しいのです」

女「そういう事ですか…分かりました」

女「それじゃ男くんを宜しくお願いします」ペコッ

魔法石(ナビ)『せんせー、お願いします!』ペコッ

医師「はい。お任せ下さい」ニコッ

魔法石(ナビ)『ほんなら女さんどーするー?』チリンッ

女「事務局へ戻る前に食事でもしていくわ」

カツカツカツ…

402 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:01:00.82 ID:9QidveBa0
ピピッ

医師「私です。例の魔法石は女という事務局職員が所持しています」

医師「えぇ、はい。あとはお任せ致します。」

403 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:01:49.29 ID:9QidveBa0
-王都 酒場街-



魔法石(ナビ)『昼間っからお酒かいな!』

女「ふふっ違うわよ。ここら辺のパブはランチの営業もしてるの」カランッ


<いらっしゃいませー

404 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:02:56.75 ID:9QidveBa0
魔法石(ナビ)『やば!フィッシュフライでか!』ピョンピョンッ

女「私の掌2つ分位かしら?ここのは肉厚で美味しいのよ」モグモグ

魔法石(ナビ)『それをまぁ3つも4つも…女さんどんだけ食べんねん』アキレ

女「あらそうかしら?」ケロッ



偵察兵「…。」ジーッ

405 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:05:35.69 ID:9QidveBa0
<ありがとうございましたー


女「ふぅ美味しかった」

魔法石(ナビ)『しかしあんだけ食べた分どこへ行ってんねや…』ジロジロ

女「あら、私こう見えて…」ニコッ

女「欲しい所にはしっかり付いてるのよ?」チラッ

魔法石(ナビ)『っ!うおー!すげー!!』キャッキャ

女「ふふっ。…なんなら挟まってみる?」スポッ

魔法石(ナビ)『わ!わ!!わ!!!』

魔法石(ナビ)『アカン…ここが理想郷(ユートピア)か…』ドキドキ

女「大袈裟ね、女の子同士じゃない」クスクス

魔法石(ナビ)『って、てか、女さんキャラ変わってへん??突然どないしたん??』ドキドキ

女「…そこでじっとしててね」ダッ

魔法石(ナビ)『わっ!な、何!?』ユラ

偵察兵「…!」ダダッ

406 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:06:41.21 ID:9QidveBa0
-街外れ 路地裏-

女「はぁ…はぁ…」

女「ここまで来たら撒いたかしら?」フゥ

魔法石(ナビ)『(揺れる度にあっちゃこっちゃでぽよんぽよんとまぁ)』ウットリ

魔法石(ナビ)『(住みたい…ここに)』

女「さて、ここからどうしようかしら…」ガシッ!

女「!」


407 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:07:21.64 ID:9QidveBa0
偵察兵「…。」ガシッ ギリギリッ

女「痛っ!ちょっと離しなさいよ!」

偵察兵「…。」ギリギリッ

魔法石(ナビ)『な、何!?女さんどないしたん!??』

偵察兵「…魔法石を寄越せ」

女「男くんの魔法石!?それが目的なの!??」

偵察兵「…寄越せ」ギリギリッ

女「っく!…そんなの持ってないわよ!!」ジタバタ

408 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:08:29.93 ID:9QidveBa0
ブロロロ…

同僚ナビ『さて次の配達は、と』

同僚「この先の路地裏だなw…あ」


ガチャン!ギュルル!!


同僚ナビ『っ!ちょっと急旋回ですわよ!一体どうしたんですの!?』

同僚「…配達やーめっぴ」ガコンッ!

同僚ナビ『ちょっと何言って…っあ!あれ!!』

同僚「急な集荷依頼にも即対応ってな!!」

409 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:09:17.58 ID:9QidveBa0
ブロロロ…キキーッ!

女「っ!同僚くん!!」

同僚「集荷依頼はこちらですかーwww?」

女「こんの…!離せってば!!」ガブリ

偵察兵「!」バッ

女「出して!!」ガチャ バタンッ

同僚「毎度ありーwww」


ブォン!ブロロロ…


偵察兵「…。」ヒリヒリ

410 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:11:19.27 ID:9QidveBa0
-王都 街外れ-



ブロロロ…

女「助かったわ同僚くん。ありがとう」フゥ

同僚「びっくりしたわーwwwでも先輩の言ってた事マジだったのねwww」

同僚ナビ『監視されているなんてちっとも…』

女「私も偶然気が付いただけよ」

女「でも彼の言ってたのと違って、向こうから手を出してきた…」

女「状況が変わった、って事なの?」

魔法石(ナビ)『あの、女さん?』

女「あらごめんなさい、狭かったでしょう」スポンッ

同僚「んなっ!?ナビちゃんお前なんという羨ましい所からwww」

魔法石(ナビ)『控えめに言うて天国やったで』ツヤツヤ

同僚「おいちょっと残り香よこせwww」クンカクンカ

魔法石(ナビ)『にぎゃー!気持ちわるーっ!!』ジタバタ

女「もう!バカな事言わないでよ!」

同僚ナビ『全くこの人は…』ハァ

ブロロロ…

411 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:12:20.72 ID:9QidveBa0
-物流協会事務局 正門-



ブロロロ…キキッ

同僚「到着なりーwww」

女「ありがとね」

同僚ナビ『では私達は運行に戻りますわ』

女「えぇ、お気を付けて」フリフリ

魔法石(ナビ)『いってらっしゃーい!』

カツカツカツ…



ザッ

412 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:12:55.25 ID:9QidveBa0
女「…あなた達もしつこいわね」ハァ

騎士団長「先程は私の部下がとんだご無礼を」

女「全く。騎士団の名に恥じない紳士的な方だったわ」ハァ

騎士団長「お恥ずかしい限りです」

騎士団長「ですのでここからは、あくまで紳士的に進めさせて頂きます」ペラッ

騎士団長「女、あなたを拘束する」

魔法石(ナビ)『た、逮捕状!?』

女「…どういう事?」ギロリッ

413 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:17:53.70 ID:9QidveBa0
騎士団長「最近のあなたの動向を調べさせて貰いました」

騎士団長「ナビシステムの私的な持ち出し、並びに機密情報の閲覧」

騎士団長「これらは犯罪行為だ」

女「こ、これは協会にきちんと許可を取った行為です!」

魔法石(ナビ)『せやで!配車係さんにお願いしたんやもん!』

騎士団長「夜な夜な飲屋街へナビシステムのデータを持ち出す事もか?」

女「そ、それは…」

騎士団長「それに機密情報の閲覧。あなたは禁書指定されている魔術文献を入手されていますね」

女「…レディの部屋に忍び込むなんて、本当に紳士の鑑ね」ギリッ

騎士団長「捜査ですので。無礼をお許し下さい」

414 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:20:05.48 ID:9QidveBa0
騎士団長「お連れしろ、手荒な真似はするな」バッ

偵察兵「…。」スッ

女「…っく、お優しいのね」ギロリッ

騎士団長「もはやその必要がないからだ」

魔法石(ナビ)『え!お、女さん!』アワアワ

騎士団長「所持品は後程お預かりします」

騎士団長「無論、魔法石もです」

女「ナビちゃん…!ごめんなさい…」

415 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:22:19.86 ID:9QidveBa0
-王立診療所 男の病室-



魔法石(ナビ)『へ??お、男ちゃん!?』

男「」zzzz

騎士団長「今は薬で眠っている。命に別状はないし、身体は健康そのものだ」

魔法石(ナビ)『男ちゃーん!!会いたかったよぉぉー!!』ビエーン

騎士団長「お前達にはここでしばらく生活してもらう」

魔法石(ナビ)『ぐすんっ…ぐすん…え…なにそれ?』ウルウル

騎士団長「国王陛下の御命令だ。お前達をここに閉じ込め片時も離れさせるな、と」

魔法石(ナビ)『意味わかれへんわ…男ちゃんと一緒におれるのは嬉しいけど…』グスッ

416 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:23:26.28 ID:9QidveBa0
コンコン ガチャ

側近「ご苦労。」

騎士団長「御足労頂き恐縮です!」ビシッ

魔法石(ナビ)『おっちゃんだれー?』

騎士団長「無礼者。この方は国王陛下の側近。この王国で陛下に次ぐ高位の方だ」

魔法石(ナビ)『側近さん?へぇー偉い人なんやー』

側近「成る程。これが魔法石に宿りし人の心…」

騎士団長「では、私はこれで」

側近「うむ。引き続き頼むぞ」

騎士団長「はぁっ!」ビシッ

ガチャ バタン


417 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:24:12.26 ID:9QidveBa0
側近「…楽にしたまえ」ストッ

魔法石(ナビ)『わ!男ちゃんの胸の上!』キャッキャ

男「」zzzz

魔法石(ナビ)『呼吸に合わせて胸が動いとぉ…可愛い…』ニコニコ

魔法石(ナビ)『鼻のあなー♪ぷぷっローアングルやとおもろいなぁ』ケラケラ

側近「…。」ジッ

魔法石(ナビ)『側近さん?あんなぁ?』クルッ

側近「何だね?」

魔法石(ナビ)『ウチてっきり、怖い人達が男ちゃんとウチを引き離そうとしとるんやと思っててんかぁ』

魔法石(ナビ)『そーじゃないん?ウチら一緒におってえぇの?』

側近「あぁ。その通りだとも」

魔法石(ナビ)『なんだぁ…安心したぁ』
ホッ

418 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:25:44.30 ID:9QidveBa0
魔法石(ナビ)『男ちゃん…えへへ、男ちゃん…』ニコニコ コロコロ

側近「…。」スクッ


ガチャ バタンッ

ガチャリ!パァァァァ…

419 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:27:52.63 ID:9QidveBa0
-翌日 物流倉庫事務所-


先輩「うぃっすー」ガチャ

配車係「おはようございます」

女「あら、おはよう」フリフリ

先輩「…ん?下手こいて捕まったと聞いたが、釈放されたのか?」

女「お陰様で。元々逮捕容疑なんて取るに足らないものだったし…んー」ノビーッ

先輩「あー逮捕の為の逮捕って奴か」スッ フーーッ

カチッ ピンポーン

配車係「8時28分です、今日は特にかもしれない運転を心がけて下さい」

420 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:29:01.82 ID:9QidveBa0
先輩「あいよ。で?エロい事でもされたか??」ニカッ

女「バカ言わないで。建前上は正規の手続きに則った拘束なのよ?」

女「事情聴取の上、厳重注意で釈放。ただ…」ギリッ

先輩「ナビちゃん、か」

女「没収されたわ。あの状況じゃ突っ撥ねる事も出来ないし」ハァ

先輩「成る程。分かった」グイッ

女「ち、ちょっと、何?」

先輩「折り入って話がある。お前の部屋で構わん」

女「…?えぇ、分かったわ」

配車係「え、ちょ、運行」

ガチャ バタンッ

421 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:30:10.95 ID:9QidveBa0
-物流協会事務局 女の執務室-


バタンッ

女「それで?話っt ガバッ


ギュゥゥッ…


先輩「…心配させやがって」

女「心配、してくれたのね?」フッ

先輩「…守れなくてすまなかった」ギュッ

女「…気にしないで、私だっていい大人なんだk グイッ

チュッ…チュ…

422 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:30:52.53 ID:9QidveBa0
女「んっ…ちょ…ん…」チュッ

先輩「っはぁ…んく…」チュッ


女「…っぷ、もう…」

女「本当に強引なんだから」クスッ

先輩「…俺の前では強がらないでくれ」

先輩「今回は守れなかったが…あぁっくそっ…!」ギリッ

先輩「お前が居ないのは…しんどいんだ」ギュッ

女「…ん、私も、です」フフッ

ギュッ…チュッ…

423 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:32:24.28 ID:9QidveBa0
-王宮 国王執務室-



国王「涙の欠片と魔法石が揃ったか」

側近「はい。彼らの惹かれ合う心が、共依存の状態にまで高まるのは」

側近「もはや時間の問題かと」

国王「…20年か、彼にもよく働いてもらったが」

国王「この辺りが潮時だろう」

側近「…鍛治職人の里での暴発以降、力の制御は困難になる一方でした」

側近「今回の措置は良い梃入れになるかと」

国王「全ては民の為、王国の為…」

国王「ならば私は、悪にでもなろう」

側近「…。」

424 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:33:31.92 ID:9QidveBa0
-鍛治職人の里-


ゴゥンゴゥン…

親父「男が入院!?」

先輩「運転中に一時的に意識を失ったそうで…」

先輩「命に別状はないそうですが、今は面会謝絶の状態です」

親父「むぅ…それで、魔法石はどうした?」

先輩「魔法石?…ナビちゃんですか」

先輩「…騎士団の連中に没収されました」ギリッ

親父「騎士団!?国王の私兵か!」

親父「あの野郎…何を企んでやがる」

親父「…まさか」ハッ

先輩「っ!?何か心当たりがあるんですか!?」

親父「クソッ!」ダダッ

先輩「あ!親父さん!」ダダッ

425 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:34:34.93 ID:9QidveBa0
-親父の家-

親父「この前女が訪ねてきた時には余裕こいてはぐらかしちまったが」ゴソゴソ

親父「クソ野郎…まさか向こうから時計の針を進めてきやがるとは」ゴソゴソ

先輩「ど、どういう事ですか?」

親父「あった…女の奴、自分が知らない事には何にでも首突っ込みたがるだろ?」

先輩「えぇそうですね、学者肌というか」クス

親父「だからはぐらかしたのさ、危なっかしくて仕方ねぇからな」

親父「それに、アイツやお前らがいくら調べた所で最後のピースは見つからない」スッ

先輩「これは…写真?」

426 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:35:34.74 ID:9QidveBa0
親父「勇者一行出立の時のだ、ホラ左のこれが俺で」

先輩「ホントだ、ははっ親父さん変わんないっすねー」ニコッ

親父「お世辞はいいからよ、んでこの右側の男…見た事あんだろ?」

先輩「ん?この人は…陛下の側近の!?」

親父「そうだ。20年前のあの時、俺と共に勇者の落涙で全てを目撃した男」

親父「そして、ナビシステムの開発指揮を採った男」

親父「賢者だ」

427 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:36:19.79 ID:9QidveBa0
先輩「そうだったんですか…」

先輩「それでこの真ん中に写っているのが、勇者の落涙で命を落とした先代勇者なんですね」

親父「それだよ、最後のピースは」

先輩「?」

親父「勇者はな、代替わりなんざしちゃいねぇのさ」

428 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:37:52.00 ID:9QidveBa0
-王立診療所 男の病室-


ピッ…ピッ…ピッ…

男「」zzzz

魔法石(ナビ)『』zzzz

側近「わざわざご足労頂き恐縮です」

修道女「い、いえいえ私こそき、恐縮です」アワアワ

側近「前回の男さんと魔法石との再リンクの一件、報告を読ませてもらいました」

側近「過去に前例のない処置にも関わらず、見事にやってのけたそうで」

側近「感服致しました」

修道女「いやー大した事ないですよぉぉ」テレテレ

429 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:38:24.00 ID:9QidveBa0
修道女「そ、それで今回は…?」

側近「現在、男さんと魔法石は深い眠りについています」

側近「男さんの抱える心の問題…過度のストレスが原因という事にしていますが」

側近「実は別の問題があるのです」

修道女「別の問題…?そ、それじゃ前回の再リンクになにか不備が!」アセッ

側近「いいえ。修道女さんの詠唱は完璧でした」

側近「前回は魔法石側の不具合でしたが、どうやら今回は男さんの方の心に原因があるようなのです」

修道女「男さんの心に…?」

430 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:39:02.95 ID:NYTVBiDBO
側近「…彼は20年前、北西の村で火災に巻き込まれた際に深い心の傷を負いました」フゥ

側近「幼き頃の心の傷というのは、成長し大人になったからと言って簡単に癒えるものではないのです」

修道女「そうだったんですね…男さん」

側近「今回は男さんの心へ魔法石をリンクさせ、再度心の補完をしてもらいたいのです」

側近「彼の絶望感や孤独感を、魔法石の人格情報によって癒してあげて欲しいのです」

側近「お力を貸して頂けますか?」

修道女「も、もちろんです!」グッ

側近「ありがとうございます」ニコッ

431 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:40:27.50 ID:9QidveBa0
-王都へ向かう街道-



ブロロロ…

親父「20年前のあの時、俺達は魔王との戦いにケリをつけようと考えていた」

親父「勇者が最大火力の詠唱を使う間、俺と賢者であいつの守りを固めてた」

親父「当時はまだあの辺にゃドラゴンなんかがゴロゴロ居たからな」ケラケラ

先輩「ど、ドラゴンですか…」

親父「…あの場所に馬鹿でかい魔法石が埋まってたのは全くの偶然だったんだ」ギリッ

432 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:41:06.84 ID:9QidveBa0
-20年前、大陸中央 北の荒野-


ビュォォォォォ…

[天空高く聳え立つ 神をも砕く雷の王]ゴワァァァァァ…

勇者「…っく」パァァァァ

剣士「おらぁぁ!」ザシュッ

賢者「ふんっ!」バシュゥゥ

[我と汝の力を以って 全ての愚かなる者に]ギュワァァァァ…

勇者「…!!」ギリギリッ

[清浄なる一撃を与え給え]

剣士「くるか!!」バッ

賢者「これで終わりだ!!」ババッ





-ドクンッ-

433 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:41:35.77 ID:9QidveBa0
勇者「っ!!…何だ、この感じは」グワングワン

剣士「ど、どうした勇者!!」






-ドクンッ ドクンッ-

434 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:42:06.65 ID:9QidveBa0
勇者「何かがおかしい…こんな…こんな膨大な力…」グワングワン

賢者「…ちっ!力が暴走したか!?」

剣士「暴走だと!?」






-ドクンドクンドクンドクンドクン-

435 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:43:10.38 ID:9QidveBa0
勇者「漲ってくる…大いなる力…」ユラユラ

ギュワァァァァ…!!

剣士「おい!あぶねーぞ!!」

賢者「ダメだ…心が力に飲まれる!」

剣士「勇者!おいしっかりしろ勇者!!」

賢者「このままじゃ道連れだ…避難するぞ!」ガシッ

剣士「見捨てて行けるかよ!仲間なんだぞ!?」

賢者「一緒に死んでしまったら元も子もないだろう!!」

436 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:43:45.31 ID:9QidveBa0
勇者「力が…ふふ…」ニヤニヤ

勇者「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」ギュワァァァァ…!!!





カッ…





437 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:44:43.77 ID:9QidveBa0
親父「あの馬鹿でかい魔法石…巨石の力に魅了された勇者は」

親父「あの辺り一帯の空間を消し飛ばす程の爆発を起こしながら、消えた」

親父「…巨石に取り込まれたんだ」シュボッ スゥ

先輩「と、取り込まれた!??」

親父「事故の後、王国まで巨石を持ち帰った賢者は」

親父「勇者の心を宿した巨石の力を使い」

親父「魔族に反応して自動で攻撃をぶっ放つシステムを作ったんだ」

先輩「じ、じゃあ勇者は!!」

438 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:45:58.30 ID:9QidveBa0
親父「巨石の中で今も戦ってるのさ」スパァァ

先輩「親父さん…あなた…全部知ってて…!」

親父「なんで勇者を助けに行かねぇかって?馬鹿だなお前」

親父「…あいつはな、多分利用されてる事にも気付いてるんだ」

先輩「知ってて…あえて?」ゴクリ

親父「力に魅了されてたって勇者は勇者だ」

親父「巨石の力を利用してでも、賢者や王国に利用されてでも…」

親父「魔王を討つという使命を果たそうとしてるんだ」

先輩「そんな…人としての存在を捨ててまで…」

439 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:47:09.47 ID:9QidveBa0
親父「漢が一度決めた事だ、途中で邪魔しちゃ野暮ってモンだろ」

先輩「野暮って…」

親父「だがな、勇者の決意は俺の息子にゃ関係ねぇ話だ」ギロリッ

親父「賢者…お前の好きにはさせねぇぜ!」クワッ

440 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 21:16:23.64 ID:9QidveBa0
今日はここまでとします
明日第二部終了予定です
ありがとうございました
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/01(火) 01:00:13.67 ID:BHDz90dbO

楽しみにしてる
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/01(火) 07:12:52.28 ID:QcrAygzhO
443 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:31:43.56 ID:hNFIRtqbO
投下します
444 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:32:11.60 ID:hNFIRtqbO
-王宮地下 巨石の間-


ピッ…ピッ…ピッ

男「」zzzz

魔法石(ナビ)『』zzzz

修道女「こ、ここで詠唱するんですか!?」

側近「今回の詠唱は多大な魔力を必要とします」

側近「この巨大な魔法石であれば、修道女さんの魔力に大きな助けとなるでしょう」ニコッ

修道女「そ、それはまぁ…でも」

巨石「」シーン

修道女「(あの時は気付かなかったけれど、この魔法石…)」

修道女「(膨大な魔力以外の何かを内包している…これは…)」

オォォォォォ…オォォォ

修道女「(…声!?人の心!??)」ゾクッ

445 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:32:46.52 ID:hNFIRtqbO
修道女「そ、側近さん!この巨石は…!」

側近「…これだけ膨大な魔力が一箇所に凝縮すると、思念のようなものを形成する事があります」

側近「心配いりません。善なる光で満ちたあなたの心ならば」

側近「巨石の力はきっとあなたの味方をしてくれますよ」ニコッ

側近「では私はこれで。詠唱の邪魔をしてはいけませんからね」クルッ

修道女「…あっ!側近さん!」

ガチャ バタン

446 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:33:16.79 ID:hNFIRtqbO
修道女「行っちゃいました…」

修道女「…仕方ありませんか」フゥ

修道女「男さん、ナビちゃん」

修道女「今助けますからね」スッ

パァァァァ…

男「」zzzz

魔法石(ナビ)『…男ちゃん』ムニャムニャ

447 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:35:28.82 ID:hNFIRtqbO
-男の精神世界-



ナビ「…ん」パチ

ナビ「んぁーよぉ寝た」ノビーッ

ナビ「…ここどこ?」キョロキョロ

ナビ「え、ウチまだ寝てるん??」ホッペギュー

448 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:36:53.22 ID:hNFIRtqbO
ナビ「あったかいなぁ…」

ナビ「この感じ、この匂い」

ナビ「この前とは違う…うん、きっとここは男ちゃんの心ん中や!」

449 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:38:28.53 ID:hNFIRtqbO
男「」zzzz

ナビ「男ちゃんみーっけ?」ニコッ

ナビ「くすっ。夢ん中でも寝てるってどんだけ寝るねん」ケラケラ

ナビ「髪の毛…やわっこいなぁ」サワサワ

ナビ「相変わらず睫毛なが…へへ」スッ

チュッ

450 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:39:06.20 ID:hNFIRtqbO
男「…ん」パチ

ナビ「んむぅ!!!」ビクッ

男「…寝ている間に唇を奪われるとは」クス

ナビ「は、はわわ////」カァァッ

男「奪っておいて赤くなるなよ」ケラケラ

ナビ「だ!だってタイミング!!」

男「…足りないな」スッ

ナビ「にぎゃっ!??」ビクッ

パタッ

451 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:39:37.76 ID:hNFIRtqbO
ナビ「…押し倒された」ドキドキ

男「…押し倒した」ドキドキ

ナビ「お、男ちゃん!?ウチな!??」

男「分かってる」ニコッ

ナビ「いやいや絶対分かって…へ…」


チュッ…チュ


ナビ「ん…」

男「んくっ…ナビ…」


ギュッ チュッ チュ

452 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:40:20.78 ID:hNFIRtqbO
-物流協会事務局 女の執務室-


コンコン ガチャ

親父「よう」ニカッ

女「お、おじ様!??」

親父「職場訪問!…って場合じゃねぇ」

親父「時間がない、一緒に来てくれ」

女「ど、どうしたんですか!?どこへ行くんですか!??」

親父「巨石の…勇者の所だ」

453 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:40:59.91 ID:hNFIRtqbO
-物流倉庫事務所-


先輩「同僚いるか?」ガチャ

同僚「あ、おつかれっすーwww」

先輩「ちょっとツラ貸せ」クイッ

同僚「なにそれ怖いwww」

先輩「時間がない。男が危ないかも知れない」

同僚「…っ!了解っす。なら診療所へ?」

先輩「いや…巨石の間だ」

454 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:41:41.09 ID:hNFIRtqbO
-王宮 国王執務室-


側近「あのシスターの詠唱が上手く運べば、時を置かず心の補完は成就するでしょう」

国王「うむ。ではその瞬間をこの目で見届けるとしよう」スクッ

国王「贄を捧げる者の責任としてな」

ガチャ バタンッ

455 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:42:22.38 ID:hNFIRtqbO
-男の精神世界-


ドクン…ドクン…

-なぁ男ちゃん?-

-ウチら色んな所に行ったなぁ?-

-シップの甲板から見上げた、ダイヤモンドぶちまけたような星空…-

-キラキラ光る朝の水平線…-

-どこまでも続く隣国の田園風景…-

-水の街へ続く、海に架かる橋…-

-里が襲われた時、すぐに逃げるかどうかで喧嘩したやんか?-

-くすっ。男ちゃんと喧嘩するなんてあれが初めてやったんちゃう?-

-どれもこれも、大事な思い出…-

-ウチの宝物やで-

456 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:43:09.64 ID:hNFIRtqbO
-あんなぁ?あの時…-

-昔の記憶に押し潰されそうな時-

-男ちゃん、来てくれたやんか?-

-自分だって辛いのに-

-うぅん、自分の事やからこそ辛いのに-

-…あなたは来てくれた-

-嬉しかったぁ-

-もう一人やないんやって-

-見捨てられたと思ってた過去の記憶が、ようやく天に帰ってくみたいな?-

-上手く言われへんけど…-

-でな?あん時決めてんか-

-男ちゃんが好き-

-ずっと側におりたいって-

457 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:43:49.82 ID:hNFIRtqbO
-男の精神世界-



ドクン…ドクン…

-俺はずっと寂しかった-

-俺には親父がいるし、女も、協会のみんなもいる-

-でも、心の奥にずっと埋まらない空洞があって-

-そこは冷え切った場所で-

-真っ暗で誰にも触れられない場所で-

-そこは多分、一生埋まらないんだろうなって…-

-ナビの中に置き忘れた、北西の村での記憶-

-あの時の孤独感や絶望感が空洞の正体なのかも知れない-

-再リンクでそれは分かったけど、分かったからって空洞が埋まるワケじゃない-

-俺はどうしたらいいんだろう?…-

458 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:44:30.37 ID:hNFIRtqbO
-ナビ、お前が俺のこと好きだって言ってくれた時-

-本当は嬉しかったんだ-

-聞こえないフリしてゴメンな?-

-俺も、お前のことが好きだよ-

-でもこの好きって、本物なのか?-

-俺はただ、無条件に俺のことを受け止めてくれるお前に-

-寄りかかりたいだけなんじゃないか?-

-そういう思いが消えなかった-

-俺はこのまま踏み出してもいいのかな?-

459 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:45:52.29 ID:hNFIRtqbO
-王宮地下 巨石の間-


パァァァァ…

バタンッッ!!

親父「遅かったか!!」ダダッ

女「し、修道女さん!??」

修道女「…っく!お、女さん!?」ビリビリ

先輩「男!ナビちゃん!無事か!?」

同僚「おい!お前何やってんだ!!」

修道女「同僚さん!?な、何って…」ビリビリ

460 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:46:57.26 ID:hNFIRtqbO
側近「役者が揃ったようですね」ガチャ

親父「賢者!てめぇ俺の息子を!!」チャキ

側近「久しぶりですね剣士。そうか涙の欠片は貴方の…」

側近「昔話は後にしましょう、物騒なものは仕舞って下さい」

側近「国王陛下の御前ですよ」

国王「始まったようだな」ズイッ

女「へ、陛下!」

国王「…諸君には感謝している」

国王「此度の我らが計画に際し、その力を存分に発揮してくれた諸君らは」

国王「まさに王国民の鑑である」

先輩「力を貸した覚えなんてないが?」

側近「分からんか。ここに集いし諸君ら全員が力を合わせ、この計画を実現に導いてくれたのだ」

側近「私からも礼を言うぞ」

同僚「何が何やらさっぱりwww普通に生きてるだけですがwww」

側近「普通に、か」ニヤッ



男「…」zzzz

魔法石(ナビ)『…』zzzz
461 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:48:22.64 ID:eNxFMH/p0
-男の精神世界-



-あんなぁ?心の空洞は無理に埋めんでもえぇんちゃうかなぁ?-

-埋めなくてもいい?-

-多分な、きっとみんな同じなんちゃうかなぁ?-

-同じ?誰の心にも空洞が?-

-多かれ少なかれ、な-

-でな?例えばそれを無理に埋めようとするやん?-

-誰かで、何かで…か-

-ぅん…でもきっと上手くいかへん。一瞬忘れる事は出来るかもやけど-

-…分かるよ、俺もそうだった-

-普通の人はみんなそう、でも…-

-普通の人は?-

-ウチと男ちゃんは特別なんやで-

-特別?-

462 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:49:13.02 ID:eNxFMH/p0
-同じ心を持って、同じ痛みを抱えて…-

-こんなに分かり合える存在ないよ?-

-…確かにそうかも知れない-

-やろー?ウチら最強のコンビやもん♪-

-ふふ。久しぶりに聞いたな-

-えへへ。だからな?男ちゃん…-





-ウチと一つになろ?-

463 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:50:09.44 ID:eNxFMH/p0
-王宮地下 巨石の間-




パァァァァ…

側近「ここまで力が高まれば問題あるまい」

側近「修道女さん、もう結構です」スッ


パァァァァ…バシュンッ!!


修道女「…っく!は!」フラッ

同僚「ないすきゃーっちwww」ダキッ

親父「賢者、お前…」ギロリッ

親父「俺の息子を生贄にするつもりだな!?」

側近「礎、と言ってくれ」

親父「ふざけんな!何が礎だ!!」

国王「剣士よ」

国王「側近…賢者は知恵を貸してくれたに過ぎん」

国王「全ての責は国王たる私にある」

国王「恨むならば私を恨め」

464 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:50:52.60 ID:eNxFMH/p0
女「陛下!!男くんを生贄にってどういう事ですか!??」

親父「勇者が巨石に取り込まれて20年…」

親父「巨石の力に勇者の心が食い尽くされちまう前に」

親父「心の補充をしようって魂胆だよ!」スチャ

側近「無礼者!剣を仕舞え!」

女「そ、そんな…酷い…!」フルフル

465 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:51:55.29 ID:eNxFMH/p0
国王「恨むならば私を、と、重ねて言おう」

国王「強大なる魔王の力を前に、人々を、世界を守る為」

国王「勇者を取り込んだこの巨石の力…」

国王「"神の雷"を制御する心が必要なのだ」

修道女「か、神の雷…!?」

側近「巨石の力を制御するには、揺るぎなき心の力が必要なのだ」

側近「20年前のあの日…勇者から飛び散った、悪を憎む善なる心の残留思念」

側近「"涙の欠片"を内包した男くんの心が、まさに適任だったのだ」

側近「が、火災により深い傷を負った彼の心だけでは不十分…」

側近「その為に彼の心の片割れたる魔法石との接近…心の補完が切望された」

国王「諸君らは、人の心という複雑で繊細な代物を上手く導き」

国王「彼らの心が惹かれ合うのを後押ししてくれたというわけだ」

女「そ、そんな…」

先輩「じ、じゃあ俺達がした事が…」

同僚「あいつとナビちゃんの為を思ってした事が…!?」

修道女「酷い…人の心を何だと思ってるんですか!??」ブワッ

466 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:52:37.23 ID:eNxFMH/p0
親父「…まだだ」

側近「?」

親父「…俺の息子を舐めんな」ギロリッ

側近「愚弄などしていない。涙の欠片は…」

親父「俺の息子を変な名前で呼ぶんじゃねぇ!!!」クワッ

親父「男…とっとと目を覚ましやがれ」

男「…」zzzz

魔法石(ナビ)『…』zzzz

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