武内P「島村さんとラブホテルに入ることになってしまいました……」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/24(火) 23:02:49.31 ID:bOgng+vj0
・武内Pと卯月のお話です。
・時間軸的にはアニメ本編後のお話。
・地の文が多いです。
・R18ではないですけどR18要素はでてきます、ラブホテルだしね!
・それでもよろしければどうぞよろしくお願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1524578569
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/24(火) 23:03:53.17 ID:bOgng+vj0
 アスファルトで舗装されていない、ただ砂と砂利だけの道を、スーツを着た大柄な男と少女が走っていた。
 夕方の木陰で覆われている道とはいえ、二人とも全力で走っているのであろう。額には汗が滲み出ていた。

「ぷ、プロデューサーさん……」
「あと少しです、島村さん!」

 息も荒くなってきた少女に対して大柄の男は励ますように答える。
 そう言いつつ、プロデューサーと呼ばれた男は腕時計を確認する。間もなく長針が十二を指そうとしていた。
 男の表情が歪む。時間がないのだろう。自然と足が速くなっていた。

「プロデューサーさん、ま、待ってください!」

 差がついてきたことに対してだろう、少女が叫ぶ。

「もう少しだけ頑張ってください、見えてきました……!」

 二人の視線の向こう、そこにはバス停と、止まっているバスがあった。
 思わず表情が緩む、二人が目指していたものが見えたからだろう。
 しかし、バスからエンジン音がなり出した。まさか、男が時計を確認する。
 長針が十二を過ぎていた。

「待ってください!」

 手を掲げながら男が叫ぶものの、距離がまだあったことと、エンジン音に叫びがかき消されてしまった結果、
無常にもバスはそのまま動き出してしまった。
 間に合わなかったことに気づいたプロデューサーは足を動かすのをやめ、そこに立ちすくむ。
 ようやく追いついてきた少女は息を整えつつ、男に話しかけた。

「最後のバス、行っちゃいましたね……」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/24(火) 23:04:48.05 ID:bOgng+vj0


 シンデレラの舞踏会の後、島村卯月はまた、精力的に仕事に取り組むようになった。
 それこそ首都圏での仕事だけでなく、地方営業を含めて。
 今回もその地方営業の一貫として、卯月は首都圏から大きく外れた地方へと来ていた。
 シンデレラプロジェクトのプロデューサーは、そんな卯月を補佐するため、プロジェクト解散後も卯月の
プロデューサーを続けていた。そのため、今回も付き添いとしてこの場に一緒にいた。

「すみません、私のせいで……」

 走ってきた道を戻りながら、プロデューサーは卯月に謝る。
 バスに乗り遅れた原因。もちろん、田舎故の最終便の早さもあっただろう。しかし、そのことも含めて
プロデューサーはスケジュールを組んでいた。多少なら遅れても問題ないはずだった。

「私も、もっとちゃんと警察の人に言ったらこんなことにはならなかったはずです。なので、気にしないでください」

 原因は想定外の出来事、プロデューサーが警察に事情聴取を受けてしまったからであった。
 長い時間拘束された二人は、結果的にバスが出発していく後ろ姿を見る羽目になってしまった。
 こうやって事情聴取されるのも何度目だろうか。プロデューサーは自分の顔を呪った。
 
「いえ、私がこんな顔をしているばかりに……」

 自分がもう少し愛想の良い顔をしていればこんなことにならなかったはずだ。そんなことをプロデューサーが
考えていたときだった。

「そんな! プロデューサーさんは、確かに、顔は怖いかもしれないけれど……でも、それ以上に素敵な人です!」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/24(火) 23:06:27.78 ID:bOgng+vj0
 卯月が叫んだ。その言葉には力強さがこもっていた。

「島村さん……ありがとうございます」

 励ますために言ってくれたのだろう。落ち込んでいた彼にはとてもありがたいことだった。

「その……どう、いたしまして」

 卯月が顔を赤くしているのは、自分が叫んだことに対して恥ずかしくなったからだった。しかし、幸か不幸か、
プロデューサーがそのことに気づくことはなかった。

「今日はとりあえず宿泊できるところを探しましょう。明日、予定が入っていないのは不幸中の幸いでした」

 気を取り直したプロデューサーは、黒いスケジュール帳を取り出し、予定を確認しながら卯月に伝える。

「あ、じゃあ私、ママに伝えておきます。今日はこっちに泊まるって」
「よろしくお願いします」

 二人は携帯を取り出す。

「もしもし、千川さんですか……はい、実は、こちらで少し問題が発生しまして……ええ、それでこちらに
宿泊して明日戻ります。申し訳ありませんが……はい、よろしくお願いします」
「もしもし、あ、ママ。あのね、ちょっとトラブルでこっちに泊まることになっちゃって……うん、
明日帰ってくる……プロデューサーさんも一緒だから大丈夫……うん、それじゃあ」

 二人が通話を終えるのはほぼ同時だった。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 23:06:47.69 ID:BP/T106x0
???「ふーん」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/24(火) 23:07:24.29 ID:bOgng+vj0
「あ、プロデューサーさん。ママがプロデューサーさんと一緒なら安心だって!」
「こちらも、今のところ問題はないようです」

 お互いの朗報にひとまず安堵する。不幸中の幸いとはこのことだろう。

「それじゃあ、後は泊まる場所を探すだけですね!」
「はい、ちょっと距離がありますがこの先に泊まれる旅館があるようです。そちらの方に行ってみましょう」

 携帯の地図で確認しながら、目的地に向かって歩きだす。
 距離はあるものの、夜になる前には十分たどり着けるだろう。
 しかし、プロデューサーはそのとき失念していた。自分たちが山の方にいることを。
 ――歩いていると、次第に辺りが暗くなっていった。空が、雲に覆われている。

「一雨、きそうですね……」
「ええっ! あんなに晴れていたのに……」

 実際、ぽつぽつとだが雨粒が落ち始めてきていた。

「島村さん、傘は持ってきていますか?」
「晴れるって天気予報では言っていたから、家に置いてきちゃいました……」
「では……」

 そういって彼はバッグから折り畳み傘を取り出して開く。突然の雨にも対応できるように忍ばせておいたのが役に立った。
 卯月が濡れないよう、傘の中に入れる。

「あ、ありがとうございます……」

 間もなく、雨が本格的に降り始めた。
 折り畳み傘はそれほど大きくはないものの、卯月にそこまで雨粒はやってこない。
 ふと、卯月はプロデューサーを見た。自分より体格が大きいのに、この傘では二人は入りきるわけがない。
それなのに自分があまり濡れないのは何故だろう。
 答えは一つしか無い。案の定、傘を持った大男の肩は濡れ始めていた。

「プロデューサーさん、あの、肩が……」
「ああ、大丈夫です。このくらい……」
「でも……」

 そこまで言って卯月は口をつぐんだ。
 おそらく何を言ったところでプロデューサーは卯月のことを優先してくるだろう。
 そういう人なのだ。不器用だけれど、いつもアイドルたちのことを真剣に考えてくれる人。
 次第に雨が強くなってきた。
 どうやら通り雨ではないらしい。卯月も少しずつ濡れ始めてきた。

「まずいですね……」

 旅館まではまだ距離があった。たどり着くころには傘があってもずぶ濡れになってしまうだろう。
 卯月も不安そうにしているプロデューサーに気づいた。
 自分に何かできることはないか、せめて他に避難するところでもあれば。卯月は辺りを見回す。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/24(火) 23:08:31.71 ID:bOgng+vj0
「……あ、プロデューサーさん! あれ!」

 卯月が何かに気づいたようで、指で方角を指す。
 そこには確かにHOTELと書かれていた。

「あそこに避難しましょう!」
「あ、いえ、あそこは……」

 プロデューサーが言いよどむ。何かをためらっているようだった。
 何故ためらっているのか卯月にはわからなかったものの、ホテルなら避難するだけでなく一日泊まることだって
できるはずだ。
 雨も強くなってきている今、それが最良の案に思えた。

「どうしたんです? プロデューサーさん」
「いえ……」

 プロデューサーは卯月の顔を見る。
 きっと彼女は気づいていないのだろう。すごくうれしそうにしている表情に、全く裏は感じられなかった。
 しかし、あのホテルはまずい。何かうまく断る手段はないだろうか。
 プロデューサーの考えを遮るかのようにまばゆい光が走り、その後、大きな音が鳴り響いた。
 雷だ。

「きゃっ!」

 卯月が可愛らしい叫び声を上げる。
 このままではかえって危ない。そう考えたプロデューサーは仕方なく卯月の意見を飲むことにした。

「わかりました、島村さん。あちらのホテルに避難しましょう」

 進路を変え、ホテルに向かって歩き始める。

「でも、あのホテルって面白い形してますよね。まるで、お城みたい」
「……ええ、そうですね」

 二人が目指す先、それはラブホテルだった。


8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/24(火) 23:09:27.89 ID:bOgng+vj0
 お城の中はピンクの明かりに包まれていた。

「なんか、普通のホテルとちょっと違いますね」

 どうやら卯月はラブホテルというものを知らないらしい。卯月が裕福な家庭の子であることをプロデューサーは
知っていたものの、どうやらかなりのお嬢様でもあったようだ。
 それにちょっとした安堵を覚えると共に、危うさも感じた。
 この子を一人にしてはいけない。そんな意識すら芽生えた。

 ひとまずプロデューサーは周囲を見回す。
 どうやら人の気配はないようだ。田舎町の、それも人里離れたところであることに少し感謝した。
 何せプロデューサーとアイドルがラブホテルに二人で入ってるのだ。しかも最近売れ出している子である。
 例え、この世界に、紆余曲折の末プロデューサーと結婚したアイドルがいようと、交際を堂々と宣言するような
アイドルがいようと、ラブホテルは、まずい。
 緊急の避難だったとはいえ、誤解されても仕方のない状況である。人気を気にするのも仕方のないことであった。

 しかし、プロデューサーはあることに気づいた。フロントにすら人がいないのだ。普通のホテルだったら
一人くらい受付の人がいるはずなのに。
 実はプロデューサー自身、ラブホテルに泊まるという経験が初めてだったので、このことに軽く困惑した。
 幸い、受付に呼び鈴があったので鳴らす。

「いらっしゃいませ、どうなさいましたか」

 少しして、年老いた女性の従業員が一人出てくる。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/24(火) 23:10:26.39 ID:bOgng+vj0
「あの、受付を……」
「ああ! それでしたら、あちらのパネルからお部屋をお選びください」

 従業員の差し出した手の向こう、確かにそこには部屋の景色が映されたパネルがたくさんあった。
 その上には『お好みのお部屋のボタンを押してご入室ください』とあり、確かにパネルごとにボタンが存在していた。

「パネルが消えている部屋は現在使用中ですので、点灯しているものの中からお選びください。
その後改めてご案内致します」

 こちらが初めてなのに気づいたのだろう。
 丁寧な説明をし、従業員は再び従業員室へと戻っていった。

「どうしたんです? プロデューサーさん」
「いえ、どうやら、こちらのパネルの中から部屋を選ぶようです」
「わあ、色んなお部屋があるんですね!」

 卯月が興味津々と部屋のパネルを眺めていく。
 パネル自体にそこまで変なものが映ってないのは幸いだった。だいぶ古いようで、ほとんどのパネルは
点灯しながらもくすんでいた。
 ふと、プロデューサーは考え込む。
 ここが普通のホテルなら二部屋取るつもりだったものの、果たしてラブホテルを知らなかった
この少女を部屋に一人で泊めても良いのか。

 結論は否、ラブホテルということはおそらくそういったグッズもあるのだろう。もしかしたら
もっとまずいものもあるかもしれない。
 いくら泊まるのは初体験とはいえ、その程度の感覚はしっかりと持っていた。
 親御さんに娘を任された身でもあるため、そういった性的なものは事前に排除しておきたい。

「あ、プロデューサーさん。私、この部屋がいいです」

 卯月が選んだ部屋、それは大きな円形のベッドが置いてある部屋だった。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/24(火) 23:11:38.21 ID:bOgng+vj0
「こういうベッド、ちょっといいなって思ってたんです」

 一応他の部屋とも見比べるボタンの横に料金が書いてあるが、ほかと比べてもそこまで高いというわけではなさそうだ。

「それじゃあ、こちらにしましょう。ただ、すみません、どうやらここは一人では泊まれないようでして……」

 それが本当かどうかはプロデューサーにはわからないが、おそらく間違いではないだろう。
 何せここはラブホテルなのだから。恐らく従業員側もこちらが『そういうもの』と思っているはずだ。

「あ、じ、じゃあ、プロデューサーさんと一緒に泊まるんですね……」

 少し顔を赤くする卯月。そこは恥ずかしいらしい。

「大丈夫です、私は床で寝ますので」
「あ、いえ、大丈夫です。頑張ります!」

 何を頑張るのだろう。おそらく、卯月本人もよくわかっていないに違いない。
 ともあれ、卯月希望の部屋のボタンを押す。休憩と宿泊の二種類あったが、宿泊のボタンを選んだ。
 すると再び従業員が部屋から出てくる。今度は手に鍵を持っていた。

「ご案内致します。どうぞこちらへ」

 従業員に案内され、ホテルの中を歩いていく。
 歩いていく途中、他の部屋から音が漏れている様子はなかったため、防音はしっかりしているのだろう。
 そして、部屋の前に到着した。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/24(火) 23:13:12.09 ID:bOgng+vj0
「こちらになります」

 鍵を開け、ルームキーをソケット口に差し込む。すると、部屋の中が明るくなった。
 室内を見て、プロデューサーは驚愕した。
 普通だったからだ。
 自分が普段泊まるようなホテルとほとんど変わらなかった。
 明かりも普通の蛍光灯だったし、一見した限りでは変なものも見当たらない。
 違いがあるとすれば、トイレとバスルームが別々になっていることと、ベッドが先ほど卯月が選んだ通り、
円形になっていることくらいだろう。

「お帰りの際はフロントにご連絡ください。それでは、失礼します」

 最低限の連絡だけ済ませると、従業員はすぐその場を後にした。
 これまでの行動から推測すると、極力客と顔を合わせないようにするための配慮なのだろう。確かに、
プロデューサーもこんな店であまり他人に会いたくないという気持ちはある。

「プロデューサーさん、はい」
「あ、ど、どうも……」

 卯月がハンガーを渡してくれたので、脱いだスーツをそれにかける。
 すると横から伸びてきた手が、自然な流れでさっとハンガーを取り、ラックに引っかけた。
 こういう細かい気配りができる子なのか、と少し感心した。

「島村さん、大分濡れていますので、その、お先にお風呂を」
「あ、そうですね。でも、プロデューサーさんだってだいぶ……」
「いえ、私のことは気にしないでください。島村さんのお身体の方が大事です」
「……はい、じゃあ先に使わせてもらいますね」

 何か言い含むところがあったのか、少しの間黙っていたものの、プロデューサーの言葉に甘えることに決めたようだ。
 卯月がバスルームのドアを開ける。ちょっと広めの風呂場が見えた。そのまま中へと入っていく。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/24(火) 23:14:35.17 ID:bOgng+vj0
 ドアが閉まったのを確認してから、プロデューサーは動き始めた。
 部屋の調査をするためだ。先に卯月に風呂を勧めたのはもちろん口にしたことも事実ではあるが、卯月の目に
できる限り変なものは晒さないようにしたかった。
 いくら普通さにあっけに取られたとはいえ、ここはラブホテルなのだ。きっと、何かあるに違いない。

 まず、彼が最初に確認したのはテレビだった。
 テレビをつけた瞬間、それこそ男女のあられもない姿が映るのではないか。そんな不安があった。
 恐る恐る電源を入れる。
 そこに映ったのはなんてことはない、ただの音楽番組だった。念のためリモコンも確認するが、
有料チャンネルと無料チャンネルが分かれていた。どうやら、こういう場所でもああいった番組は有料らしい。
 これなら卯月が見ることはないだろう。

 テレビをつけっぱなしにしたまま捜索の続ける。シャワー音が鳴り始めたからだ。二人しかいない部屋の中で
シャワー音だけが響き渡るのは精神衛生上よろしくない。それはプロデューサーとて例外ではなかった。
 次に見たのは本棚だった。ホテルに関しての簡単なマニュアルなどが置かれており、十分危険なものがありそうな場所だ。
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