ウチの妹はめんどくさい

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1 :♯にんじん :2018/04/16(月) 22:52:30.10 ID:Yo4/p9EmO
undefined

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1523886750
2 : ◆ly5pzZ3c695a :2018/04/16(月) 22:54:56.91 ID:Yo4/p9EmO
テス
3 : ◆ly5pzZ3c695a :2018/04/16(月) 22:57:11.62 ID:Yo4/p9EmO
すみませんちょっとトリップ失敗しました。
地の文あり、二万字程度で完結、他サイトで投稿済みのヤツ投稿します。
気が向いたら読んで素直な感想ください。辛口歓迎。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/16(月) 22:59:19.89 ID:Yo4/p9EmO

「お兄ちゃん手伝ってっ!」

「いやなにを」

 その時の俺は、自室のベッドに寝転びながら携帯をいじっていた。

 風呂上がりのラフな格好でバーンと俺の部屋にやってきた我が妹、愛華(あいか)。
 なんの脈絡もなく飛び出してきたその言葉は、かなり具体性にかける。

 とはいえ、別に驚くことではない。ウチの妹が思いつきで行動を起こすのはよくあることだ。
 その度に振り回されるのは愛華の周囲にいる人たち。つまりクラスメイトや友人、家族である。そしてその中にはもちろん俺も含まれていた。

「今度は何なんだよ」

 俺はのっそり体を起こしながら、愛華の方に向かい合う。
 
 彼女の顔を見てすぐにわかったが、何だか楽しそうである。
 機嫌がいいのが一目で分かった。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/16(月) 23:01:07.69 ID:Yo4/p9EmO
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6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/16(月) 23:02:09.79 ID:Yo4/p9EmO

 当たり前のように愛華は部屋に侵入してくる。
 もし俺が彼女の部屋に入ったら二秒と経たず蹴り出された挙句「だからお兄ちゃんはモテないんじゃないの?」と、割とマジなトーンで吐き捨てられる。

 愛華は使用されない勉強机の前にあるクルクル回るイスを引き寄せると、背もたれを抱きしめるように逆向きに座った。
 
「なんかいいことでもあったのか?」

「ふふ、実はねー、好きな人が出来たんだー」

「ほーん。それで?」

 何気なく聞き返すが、正直嫌な予感がする。
 もう高校生にもなる訳だし、妹の恋路だって……まぁ、気にならないと言えばウソになるが、俺が口出しすることじゃない。
 いや、問題はそこではなく、今から愛華が俺にいう内容が果てしなくめんどくさいという気がしてならないのだ。

「それでねー」

 愛華はクルクル回るイスで、自分もクルクル回りながら、恥ずかしそうに?に手を当てる。
 たぶん、これは本気で恥ずかしがっている訳ではなく、そんな風に装ってるだけだろう。
 ウチの妹にはこういうところがある。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/16(月) 23:03:39.35 ID:Yo4/p9EmO

 なんていうか一言で言えば、自分を可愛く見せようとする。
 この年頃の女の子であれば普通のことなんだろうけど(まぁ実際はどうなのか知らんが)、愛華はそれを極自然にやるからすごいと思う。
 俺ですらそれが素なのか演技してるのかよく分からん時があるくらいだ。

「その好きな人ってのが、お兄ちゃんと同じクラスの人なの」

「マジかよ」

 別に妹の恋路を邪魔する気はないが、それは何か嫌である。
 ハッキリと説明はできないが、なんか嫌だ。

「え、誰?」

 それでも気になる。ていうか、どのみち聞かされてしまうだろう。
 てか、既に愛華が俺に何を頼もうとしているのか分かった。

「知ってるでしょ? テニス部の藍坂(あいざか)先輩。
 だからお兄ちゃんにちょっと手伝ってもらいなって」

 あー、あいつね、あいつ。まぁ、悪い奴ではないし、別に止めはしないけど、なんかなぁ。
 あいつ天性のイケメンだからな。顔もトップアイドル並みだし、性格もいい。
 まるで少女漫画の正統派ヒーローみたいな奴で、逆になんかなぁって思う。

 派手好きの愛華が好きになるのも分かる。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/16(月) 23:05:23.62 ID:Yo4/p9EmO

「でもお前と藍坂に接点なんかあったか?」

 俺ですらたまに喋るクラスメイトという感じで、メアドはお互い登録してるが、メールを交わしたことは一度か二度だけだ。

「いやないけど?」

「は?」

「やだなぁお兄ちゃんっ、世の中には一目惚れって言葉があるんだよ?」

「あー……、あー、はいはい」

 りょーかいしました。
 可愛い妹のためなら何とやらですね。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/16(月) 23:06:56.32 ID:Yo4/p9EmO





「よっす藍坂」

「おぉ、どうしたの立花くん。珍しいね」

 翌日の昼休み、妹様の想い人たるイケメン間違えた藍坂光輝に話しかけてみる。ちょうどいいタイミングで一人で居てくれた。
 普段は関わることなんてない俺に話しかけれて、藍坂は意外そうな反応を見せた。

「あぁちょっと用事があってだな。話したいことがあるんだけど」

「うん、別にいいよ。それで、話したいことって?」

「あー実はですね」

 妙な言い方をする俺に、藍坂は不思議そうな顔をする。

 くっそ、イケメンだなこいつ。仕草の一つ一つが様になってやがる。俳優でもやったらいいと真剣に思います。

 って、そんな話じゃなかったな。
 
 俺は何というべきか、少しばかり悩んだ挙句、こう口を開いた。

「なんかウチの妹が藍坂のこと気になってるみたいなんだけど」

 もうぶっちゃけてしまおう。愛華にはもっと慎重にやれと殴られるかもしれないが、こういうのはズバッと言った方がスッキリするよね。
 こいつイケメンだし、こういうのは慣れているはずだ。



10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/16(月) 23:11:09.50 ID:Yo4/p9EmO

「妹さん? え、立花くんって妹いたの?」

 この反応である。当たり前だが認知すらされていない。

「知らないか。俺の妹とは思えないほど顔だけはいいから、割と一年生の間では有名らしいが」

「んー、あ、そういえば部活の後輩が、同じクラスに立花ってすごく可愛い子がいるって言ってたような、いないような」

 顎先にツンツン指を当てて、上目に虚空を見つめるイケメン。
 何だそれは。狙ってやってんのか。しかしどうやら天然ものだなこれは。あざとい妹を毎日見てる俺には分かる。

「それでですね。一度会ってみてはもらえないでしょうか?」

「うーん、難しいかな。部活の練習も結構忙しいし」

 ですよねー。
 うーん、でもウチの妹も中々可愛いと思うんだけどなー。

「あ、やっぱ彼女とかいたりします?」

「いや、今はいないけど」

 聞きましたかみなさん。『今は』ですって。やはり言うことが違う。しかも全然嫌味な感じじゃない。
 
「そこを何とかお願いします! ウチの妹もクソがつくほど自己中な点を除けば、割と可愛い美少女ですしっ! ……おすし」

 しまったつい本音が。
 て言うか何で俺こんな熱心になってんだろうな。
 妹に嫌われないようにお兄ちゃんは必至です。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/16(月) 23:12:37.13 ID:Yo4/p9EmO

「んー、じゃあ今度お昼を一緒に食べるくらいなら」

「おぉマジか。すげぇ!」

 俺すげぇ! 天下のイケメンとのお食事デートを取り付けてやったぞ、妹よ!

「マジでありがとうな」

「いや、妹ちゃんもすごく可愛いらしいから、ちょっと期待してね?」

 冗談めかして笑う藍坂。眩しすぎて失明しそう。

 あー、これは出来たイケメンですわ。

 ウチの妹にはもったいないかもなこれ。





「えっホント? おぉ、お兄ちゃんすごい!」

「ハッハッハっ、もっと褒めろ」

「きゃーお兄ちゃんカッコイイっ。藍坂先輩の方がもっとかっこいいけど」

 ですよねー。異論はありません。

 そして当たり前のように俺の部屋に居座ってる愛華。
 妹に部屋に居られると、やりたいことも出来やしない。

 え、何がやりたいのかって? 

 色々だよ。

「というわけで妹よ。お兄ちゃんは頑張った」

「うん偉い偉い。褒めてあげるよお兄ちゃん」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/16(月) 23:13:31.62 ID:Yo4/p9EmO

 何でお前は偉そうやねん。なんて愛華に突っ込むのは野暮ですかね。

「だから部屋から出てってくれ。お兄ちゃんは宿題をしなかければいけないのだ」

「やーだ」

 俺のベッドを占領して、枕元に俺の漫画を山のように積み上げながら、漫画に視線を置いたまま即座に言い放つ愛華。

 あの……ここ俺の部屋なんですけど……。

 しかもラフな格好で寝転んでるから、胸元とかへそとか思いっきり俺に見えてるし。
 まぁだからと言って何も感じないんだが。自分でもびっくりするくらい。

 兄妹なんてこんなもんです。

 でも、さすがに鬱陶しいのでお兄ちゃんも反抗してみます。

「胸見えてんぞ」

「……え、キモい」

 …………割とダメージが大きいなこれは。胸が苦しい。
 そそくさと部屋から逃げ出した俺であった。
 
 
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/16(月) 23:16:01.33 ID:Yo4/p9EmO
流石に二万字一気にあげるのはキツイので、明日以降、少しずつ進めて行くつもりです。
今日はここまでにします。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/17(火) 04:12:15.56 ID:Nj4gp+Hfo
はい
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 21:30:29.81 ID:LRSABkC/0

「どうしても好きなんです!」

 現在、俺は告白されていた。
 後輩の男の子に。

 身長は少し高め。体型は痩せてるな。髪は短くて、顔は中の上といったところか。中々可愛い顔をしている。

「で、ウチの妹のどこが気に入ったんだ。顔か、やっぱり顔なのか」

 いや、分かってますよ。彼がなんの目的で俺に近づいてきたかくらい。
 ウチの妹は罪作りだ。
 基本的に可愛い自分を作りたがるから、弊害としてこう言ったことがよく起こる。

「ま、まぁ、その。顔が可愛らしいのもそうなんですけど、この前、僕が日直当番で黒板を消してる時に手伝ってくれて、優しいなって……」

 ……胸が痛い。
 そんなことでコロッとやられる後輩くんも後輩くんだと思うが、ウチの妹がすみませんね。
 たぶんそれは、『私案外優しいところもあるよアピール』を君じゃなくてクラスメイト全員にしてたんだ。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 21:31:19.67 ID:LRSABkC/0

「いや、でも愛華好きな人がいるらしいけど?」

「僕は構いませんよ! お兄さん!」

 いや君の感想は聞いてないよ。
 望み薄であることを遠回しに示唆してるんだよ。察せよ。
 ていうかお兄さんって呼ぶな。

 このくらいの情熱があるなら、本人に直接ぶつけてほしいと思う。
 まぁ俺も男だから彼の気持ちも分からなくはないんですがね。

「どうしたら許してもらえますか、お兄さん」

「待て待て待て待て、今スリーステップくらい話が飛び上がったぞ」

 言ったよね? 俺、愛華には好きな人がいるって言ったよね?
 中々面白い冗談を言ってくれる。

「まず愛華の許可を取ってこいや」

 彼のためにも一刀両断した。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 21:31:59.59 ID:LRSABkC/0





 イケメン藍坂と妹のお食事デートの日がやってまいりました、俺同伴の。
 さすがにいきなり二人きりっていうのはねー、ということでその辺りは愛華も納得していた。

 と言うわけで、場所は食堂の外にあるテラス席。
 いつも通りの母親手作り弁当を持ち込もうとしたら、妹に止められた。

「やめてお兄ちゃん」

「何がだ」

「今日は普通に食堂のご飯食べよう。そうしよう」

「母さんの弁当は?」

「あとで食べればいいでしょ」

「いや俺はいけるかもしらんが、お前は大丈夫なの?」

「何言ってるの? 私の分もお兄ちゃんが食べるんだよ」

「え……? え?」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 21:32:58.12 ID:LRSABkC/0


 そして藍坂と合流し、テラス席に座る俺たち。

「はじめましてっ、一年生の立花愛華です。お兄ちゃんがいつもお世話になってますっ」

 出ました。妹のよそ行きモード。兄じゃなくて、あえてお兄ちゃんって言うとこがやっぱあざとい気がする。……考えすぎか。

 愛華の声が、普段俺と話す時よりもワントーン高い。あと笑顔が眩しい。化粧に気合が入ってる。
 基本的にウチの妹はナチュラルメイクだが、今日のはいつもの五倍くらいナチュラルだった(何言ってんだ俺)。

 え、君どこのアイドル?

 白けた顔で眺めているのがバレたのか、グリグリと愛華に足を踏まれる。ちょ、痛いです愛華さん。

「立花だとお兄ちゃんとかぶると思うので、私のことは遠慮なく愛華って呼んでください。私、全然そう言うの気にしないので」

「愛華」

 それならさっそく名前を呼んでみる、俺が。
 さらに強く踏まれた。

 そんな俺たちの様子を見てか、藍坂がクスリと笑った。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 21:34:00.48 ID:LRSABkC/0

「愛華ちゃんは立花くんと仲良いんだね」

「はい、とてもっ。ね? お兄ちゃん」

「ですね」

 しかしすげーなこいつは、全然物怖じしてねぇ。緊張とかないの?

「実は私、藍坂先輩が出てたこのまえの試合見てたんですよ」

「あ、アレ見に来てくれてたんだ。嬉しいな」

「はいっ、藍坂先輩のことは前から知ってたんですけど、そこで本当にかっこいいなって。私なんかが釣り合わないなって思ったんですけど……」

「いやいや、愛華ちゃんもすごく可愛いと思うよ?」

「ホントですかっ」

 その後もすげぇ自然に喋り続ける美男美女。え、お前ら今初めて会ったんでしょ?
 なんでそんなに会話続くんですか。しかも中々な豪速球投げ合ってるし。

 てか俺いらねぇなこれ。俺いらなかったな。胸がキリキリして気まずいだけです。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 21:34:51.74 ID:LRSABkC/0

「ではあとは若いもん同士で」

 さりげなく席から立とうとすると、愛華に腕を鷲掴みされた。

「どこいくの?」

「いや彼女が待ってるから」

「は?」

 待ってその顔こわい。

「え、立花くんって彼女いたんだ」

「すみません見栄はりました。今までいたことすらありません。……いや待て。そう言えば、一回あるな」

 小学校三年生くらいの時に、告白されて付き合ったはいいけど、具体的に何をすればいいのか分からず自然消滅したよく分からない経験が。
 てか、これ彼女いたことあるって言えるかどうか怪しいな。見栄張ってる感が半端ない。

「え、私その話聞いてないんだけど」

 なぜお前に報告しなければならない。

 で、そのあと愛華が不機嫌になった。
 マジで勘弁してください。藍坂がなんか戸惑ってるじゃん、無駄にイケメンな苦笑してるじゃん。やめてよ。二人を紹介して引き合わせた俺の身にもなってください。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 21:36:14.63 ID:LRSABkC/0

 そのあともランチタイムが終わるまで愛華は機嫌が悪くて、居心地の悪さが尋常じゃなかった。

 終わった後で藍坂に謝ったが、「気にしなくていいよ。本当に妹さんと仲良いんだね」と気さくな笑顔で言っていた。あなたは天使ですか。ウチの妹がすみません。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 21:37:22.84 ID:LRSABkC/0



「やっぱりもういい。なんか違う」

「は?」

 自宅に帰ると、まだ機嫌の悪いままの愛華が俺にそう言った。

「藍坂先輩、確かにすごいカッコいいけど、なんか違うと思った。だからもういい」

「えぇ……」

 途中までめっちゃ楽しそうに喋ってましたやん……。ウラではそんなこと考えてたんですか。俺でも分からんかったよ。

 ……え、女の子ってみんなこうなの? 待って怖い。いやいや、うちの妹が少々あざとすぎるだけだよな。

「それより、ねぇ。兄ちゃんに彼女いたなんて知らなかったんだけど」

「いや、つっても小3の時の話だぞ」

 愛華が意外そうに目を丸くする。しかし、すぐにさっきの不機嫌な顔に戻った。いや、ちょっとだけ柔らかくなったかも。

「…………だれ?」

「いや、お前は知らんと思うぞ」

「教えて」

「絶対知らないって」

「いいから」

 愛華に急かされ、俺は渋々その名前を口にする。

 くそ恥ずかしいぞこれ、何の公開処刑ですか。いや別に公開という訳ではないか。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 21:38:06.61 ID:LRSABkC/0

「そんな人知らないんだけど」

 だから知らんと思うっていいましたやん……。
 そう思うが、口には出さない。言葉にしたらまた機嫌が悪くなる。

 なぜに俺だけがここまで丸裸にされなければならないのか。
 愛華は以前にも何度か彼氏を作っているようだが、俺はそのことを知らなかった。

 友達にそのことを知らされたり、外で妹が他の男子と手を繋いで歩いているのを見た時の衝撃ったらない。
 俺が鈍感すぎるだけかも知らんが。
 家族は普通に気付いてたみたいだし。

「まぁ、ないとは思うけど、お兄ちゃんに彼女が出来たら教えてね」

「いやです」

「は?」

「いや、いやいやさすがに嫌だ」

 妹にそこまで縛られるのは流石に遠慮させてもらいたい。

「……」

 愛華に睨まれる。

 仕方ない、奥の手を使うか。そろそろ賞味期限も切れそうだしな。

「……実はこの前買った有名店のクッキーが隠してあるんだけどさ、食べる?」

「…………食べる」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 22:20:53.49 ID:LRSABkC/0







「ねぇ、流石にちょっとハッキリ言った方がいいんじゃない? 愛華ちゃんのためにもさ」

 別に相談したかった訳ではないが、「最近愛華ちゃんどうなの?」と聞かれ、適当に話したらそう言われた。

 少し厳しい目つきで俺を見るのは、中学の頃から何かと縁のある相川。
 中学の頃から合わせて五年連続同じクラスとくれば、女子であってもそこそこ話すようになった。
 女友達と言えるかも分からない、微妙なポジションの女の子である。

 愛華とも面識がある。愛華は加奈のことめっちゃ嫌ってるけど。しかも理由が何となく気に入らないとかなり暴力的。

「ブラコンも大概にしないと」

「いや、でも俺もシスコンだし」

「そういう問題じゃないでしょ。愛華ちゃんの将来のためにも良くないと思うなぁ」

 やけに『愛華のため』というのを主張する相川。んー、愛華のためねぇ……。確かにそうなんだろうけど。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 22:23:02.95 ID:LRSABkC/0
 うん、まぁ、あのまま愛華が大人になったら、かなりの悪女になるな。周囲の男たちは、振り回されること間違いなし。

「でもあいつ俺のいうことなんか聞かないぞ」

「聞かせるんだよ」

「え、なにそれこわい」

「あのね。真面目に聞いてる? ハッキリ言わせてもらうとね、愛華ちゃん、女の目から見たら相当嫌な子だよ」

 うーん、やっぱそうなのか。まぁ、あくまで相川の一意見だが。

「……ん、あれ?」

 携帯がないぞ。おかしいな、ちゃんと鞄に入れたはずなのに。

「ちょっと? おーい聞いてる? ってなにしてるの?」

「いや、携帯が行方不明なんだけど」

 そうと分かると落ち着かないな。現代人がいかに携帯に依存してるかと分かるいい例です。

「愛華ちゃんが持ってるんじゃないの」

「え? いや、何でそうなるんだ」

 しかし相川は冗談で言ってる訳ではないようだ。

 ……え? マジで?
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 22:23:43.99 ID:LRSABkC/0

 と、思ってたら普通に見つかった。奥の方にあったよ携帯ちゃん。

「悪い、普通にあったわ」

「なーんだ、紛らわしいことしないでよ」

「紛らわしいって……。流石に愛華もそんなことはしないだろ。俺の携帯なんか見てもなにも面白くないし」

「どうなんだろうねー」

 含みのある言い方をされる。意味深ですね。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 22:24:40.62 ID:LRSABkC/0




「なんかお前の妹、彼氏できたらしいな」

「なんでお前が知ってるんだ」

 友人の高坂祐飛が、当たり前のような口調で言ってきた。

 衝撃である。

「え、知らない? さすがにウソだろ。結構な噂になってるけど」

「だってウチの妹、そういうことあんま言わないし」

「いやいやいや、別に俺だってお前の妹から聞かされた訳じゃねぇよ。普通、気付くだろ。俺が知ってるくらいだぜ?」

「うーん……」

 だって気付かないものは、気付かないからな。
 愛華の様子は、特段いつもと変わりないし。

 てかあいつ彼氏できたのか。とんでもねぇな。藍坂と昼一緒に食べたのがせいぜい一週間くらい前だぞ。
 どうやってるんだよ。マジで気になる。俺にも教えて欲しい。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 22:25:46.01 ID:LRSABkC/0

「あのな。前々から思ってたけどさ、お前はもうちょっと周りのことに目を向けた方がいいと思うぞ」

「いや普通だって」

「普通ではない。じゃあ聞くけどさ、お前、相川さんがこの前告白されたって話知ってるか?」

「えええぇっ、マジ?」

 え、うそ、めっちゃびっくりなんだけど。相川は俺と同類だと思ってた。なんかショックだ……。

 てか、全然そんな素振り見せてなかったよな?

「いつの話ですか」

「二週間くらい前」

「わりと前ですやん……」

「たぶんクラスの半分以上は知ってる。なのに、いつも相川さんと喋ってるお前が知らないのはおかしいだろ」

「いや、近すぎる故に気づけなかったという可能性も」

 ほら、ドラマとかでよくあるやつ。

「てか、相手は誰なんだ?」

「俺」

「…………」

「ウソじゃないぞ」

「えええっ」

 真顔で言わんでくれるか。マジで死ぬほどビビったんだけど。

「え、え、……マジか、マジか、なんかショックだわ」

 ひとりで取り残された感が半端ではない。いつの間にみんなはそんなに進んでいたんだ。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 22:26:29.17 ID:LRSABkC/0

「え、で、せ、成功したの?」

 心臓がドキドキ跳ねる。

「成功してたらお前に二週間も黙ったりしない」

「おおぅ……それはなんというか、ドンマイ。てか好きだったのか」

「お前に言われるとなんかムカつくな。マジで気付いてなかったのか」

「いや、なんかここの所。お前が相川と話してる姿見ないな、とは思ってたけど」

「それだよそれ。そこで察せ」

 無茶を言うな無茶を。さすがに無理があるだろ。
30 : ◆ly5pzZ3c695a :2018/04/17(火) 22:30:05.63 ID:LRSABkC/0
明日に続きます。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 08:52:31.83 ID:7S0rb5kwO
近親相姦ですか
32 : ◆ly5pzZ3c695a :2018/04/18(水) 22:22:29.27 ID:TJ54YBWd0
近親相姦ではないです。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/18(水) 22:23:57.71 ID:TJ54YBWd0





 本日、愛華が彼氏を家に連れてきた。

 史上初の出来事である。と思って、俺がソワソワしていたら、母さんが俺にとある事実を告げた。
 母さんの話では、以前にも連れてきたことがあるらしい。あ、それはまた別の彼氏ね。
 ちなみにその時の俺は外出していたらしい。
 なら気付かなくてもしょうがないか。

 そして、愛華に「お兄ちゃんは部屋から出ないで」と申しつけられたので、部屋で大人しくゲームをしている俺である。

 てか、そう言うくらいなら外出してた方がいいよな。
 俺は外に行くことにした。

 ガチャリとトビラを開けて廊下を歩いていると、愛華の彼氏くんと遭遇してしまった。
 トイレに行く所だったらしい。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/18(水) 22:24:48.91 ID:TJ54YBWd0

 ちなみに彼氏くんは、愛華と同学年の一年生。なかなかのイケメンで、好青年を具現化したような男の子であった。母さんの機嫌がよかった理由が分かりました。

 軽く会釈してその場を無言で通り過ぎようとしたら、むんずと彼氏くんに腕を掴まれた。

 なんぞですか。

「あの、少しいいですか?」

「どうぞ」

「あまり僕の口からこういうことは言いたくないんですけど。
 少し愛華から離れてもらえませんか?」

 質問の意味が分からぬ。離れるも何も、同じ家に住んでるんだから無理ですよ。

「えー、何が?」

「とぼけるんですか? 愛華も迷惑してるんです。愛華が可愛いのは分かりますけど」

 うん、わかるわかる。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/18(水) 22:31:09.91 ID:TJ54YBWd0

「流石に気持ち悪いです。高校生にもなって妹離れできない兄ってどう思います?」

 別になんとも。
 と、返すのはマズイだろうなぁ。

 返答内容に悩んでいると、彼氏くんはそれを沈黙と受け取ったらしい。
 別に正解ではない。

「だんまりですか? ホントは自覚してるんですよね。それって余計にタチ悪いですよ」

 彼氏くんに軽蔑するような目で見られる。

「今まではどうなのか知りませんけど、今は愛華は俺の彼氏です。少しは自重してください」

 言いたいことだけを言うと、彼氏くんはさっさとその場から去っていった。

 見た目と中身が随分と違う印象を受けた。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/18(水) 22:31:51.02 ID:TJ54YBWd0

 あと一つ思ったことは、いくら愛華のためと言ってるとはいえ、初対面の年上にあそこまでストレートに言っちゃうような彼は、好きになれないと思った。
 愛華がいいならそれでいいけど、できればやめてほしいと思ってしまう。
 なるほど、こういうところを気持ち悪いと言われてるのか。納得。

 ……軽く傷ついたぜ。

 ウッと胸を押さえながら、俺は自室に逃げ帰った。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/18(水) 22:36:51.49 ID:TJ54YBWd0

 自販機にジュースを買いに来たところ、相川とばったり出会った。
 自然と、一緒に教室に帰る流れになった。

「なぁ俺って気持ち悪いの?」

「なに、いきなりどうしたの。悟りでも開いた?」

「俺がキモいことがセカイの真理とでも言いたいのか」

 そう返すと、相川はクスクス笑った。
 笑ってもらえてよかったです。

「また愛華ちゃん関連のことでしょ?」

「ですね」

「なに、お兄ちゃんなんて嫌いって言われた?」

「義弟にね」

「そういえば愛華ちゃん彼氏できたんだっけ」

 今ので分かってもらえたか。察しのいいやつである。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/18(水) 22:38:02.46 ID:TJ54YBWd0

「まぁ、あんまり気にしなくていいと思うよ。これからも多分同じようなことが続くと思うし」

「お前はエスパーか何かか」

「そうかもね。まぁしょうがないよ。立花くんが愛華ちゃんから距離置かない限り、そういうことは続くよ」

「うーん、悩みどころだな」

「流石自称シスコン」

 本気で呆れたように相川が言った。

「そういや。あー、やっぱりなんでもない」

「おいこら、そこで止めるのは卑怯だぞ」

「じゃあ言うけど、相川って祐飛に告白されたの?」

「……やっと気付いたんだ」

「えーまぁ、うん」

 気付かされたと言う方が正しいが黙っておく。

「どうせ気付かされたんだろうけど」

「やはりエスパーかお前」

「ふふ、すごいでしょ? 本当に気付かなかったんだね。私も、高坂くんも、愛華ちゃんもこんなに近くにいるのに」

 口調こそいつもと変わらなかったが、何故か責められているような気になった。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/18(水) 22:39:00.47 ID:TJ54YBWd0

「……なんでそこで愛華が出てくるんだ」

「なんでだろうね」

 いたずらっぽく笑う相川。その瞬間、頭に衝撃と痛みが走った。

「痛い」

 振り返ると、そこにいたのはなんと愛華だった。

 一目で彼女が不機嫌であることが察せられた。

「なんでこんなとこにいるの?」

「居たら悪いですかい」

 と思ったが、俺に言った訳ではないようだ。

「ごめんね愛華ちゃん。でも別にお兄ちゃんを取っちゃった訳じゃないから」

「……なんでそう言う話になるの? 意味分かんない」

「あっ、だったらよかった。じゃあもうそろそろ授業も始まるし、早く教室に戻ろっか立花くん」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/18(水) 22:39:39.43 ID:TJ54YBWd0

 そう言われてしまっては仕方ない。俺は相川の背中を追うように足を踏み出したが、グッと後ろから襟を引き寄せられる。

 待って今一瞬死の世界が見えたんだけど。

 ゴホゴホ咳き込みながら、俺は乱暴をやらかした愛華を睨む。

「お兄ちゃんはここに残って」

「……ゲホ、悪い相川。そう言うことらしいからさっきに行ってくれ」

「じゃあしょうがないね」

 特に気にした様子もなく、相川はその場を離れた。
 愛華はその背中をずっと睨むばかりで、俺に何かを話す様子もない。

「あの、愛華さん?」

「あの女のこと好きなの?」

「え? えー……、あー……、どうだろうなー」

 曖昧な返事をすると、愛華にさらに強く睨まれる。

 うっ、妹が怖い。

 そのまま無言の視線に耐えていると、授業の開始を告げるチャイムが鳴った。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/18(水) 22:40:32.35 ID:TJ54YBWd0

「おい授業始まったぞ」

「……お兄ちゃん。あの女だけはやめておいた方がいいよ」

 それだけ言うと、愛華は俺の足を踏みつけてからその場を去った。

「……はぁ」

 頭を掻きながら嘆息して、俺は教室の方に向かう。普通に遅刻で怒られるな、これは。

 すると廊下を曲がった所で、相川とぶつかりそうになった。

「チャイムに助けられたね」

「先に帰ったんじゃないんですか」

「立花くんだけが怒られるのは可哀想だからね。
 っていうのは建前で、あの愛華ちゃんがなんて言うのか気になっただけ。
 私、やっぱり嫉妬されてるみたいだね」

「みたいだな」

「ショックだな。なんか、まぁしょうがないのかもしれないけど」

「そうだな」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/18(水) 22:41:17.95 ID:TJ54YBWd0

 相川は「んーっ」と、その場で大きく伸びをした。
 決して彼女は大きい方ではないが、そんなことを間近でされると強調されて困る。ちょっと透けてるし。

「こら、そう言う時はさりげなく目を逸らすの」

 バレバレである。

「愛華ちゃんに殺されちゃうよ?」

「それは困る」

 俺がそう返した時には、相川はすでに俺に背を向けていた。

「じゃあ、一緒に怒られにいきますか」


 ◯


「あ、あの、好きです。付き合ってください!」

 一人の女の子が、一人の男子生徒に告白していた。
 そんな光景を偶然見てしまった俺。

「え、と、あの。ごめん。君のことは嫌いじゃないけど……。うん、ごめん。俺、実は彼女いるし……」

 しかもフラれていた。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/18(水) 22:42:09.28 ID:TJ54YBWd0

 衝撃を受けたような顔で、何も言えなくなった女の子。完全に固まっていた。リボンの色からして、彼女は一年生だろう。
 対する男子の方(こちらもたぶん一年生)は何度か「ごめん」と言いながら、逃げるようにその場を去って行った。

 えー、あー、うん。

 幸いなことに、まだ女の子は俺の方に気付いてないし、今のうちに離れよう。
 そう思って、ゆっくりと足を後ろに運ぶ。
 その内に、女の子がポロポロと涙をこぼして泣いているのを視界に入れてしまう。

 非常に後ろ髪を引かれるが、面識のない俺があの女の子に接触して事態が好転する可能性はあり得ないので、迷わず立ち去る。

 ごめんね、と、せめても心の中で思っておいた。ただの自己満足である。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/18(水) 22:45:26.99 ID:TJ54YBWd0
続きはまた明日
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 23:01:34.38 ID:qWQeg1Mk0
期待
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