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アスラン「頼りにしているぞ、シン」
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2 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/12(木) 00:23:18.66 ID:/n5bZo6G0
しばらくしてミネルバは、ガルナハン攻略のためにマハムール基地への入港を果たし、艦内にアナウンスが流れる。
<入港完了。各員、別命あるまで待機。ザラ隊長はブリッジへ>
アスランたちがブリーフィングを行っている間、他のクルーたちは思い思いに過ごしていた。
仏頂面を続けているシンを見て、レイとルナマリアは苦笑する。
ルナマリア「まあ、シンの気持ちもわからなくはないけどね。急に現れて、フェイスだって言われて」
シン「……」
ルナマリア「おまけに二度もぶたれたし」
シン「別に、殴られたことを根に持ってるわけじゃない」
ルナマリア「ふーん?」
シン「俺は間違ったことはしてないのに、あいつが分からず屋だから!」
3 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/12(木) 00:29:27.55 ID:/n5bZo6G0
レイ「…しかし先の作戦、おまえに落ち度が無かったわけじゃない」
シン「え…?」
レイ「独断専行によるインパルスの孤立、そして事情があったとはいえ、自分の判断だけで敵基地を攻撃したのは問題だ」
シン「じゃあレイは、捕まってた人たちを見殺しにすればよかったっていうのかよ!?」
レイ「そうは言っていない。だが、俺たちは戦争をしているんだ。もし敵基地に罠でも仕掛けてあったらどうなっていた?」
シン「それは…」
レイ「おまえとインパルスが戦えなくなれば、ミネルバにとっては致命傷だ。総崩れになる可能性もある」
レイ「怒りに身を任せて冷静さを失えば、そのツケを払うのは自分ひとりではないかもしれない」
シン「……」
レイ「今のは軍人としての忠告だ。おまえが死んだら、友として俺は悲しい」
シン「レイ…」
レイ「だから、あまり無茶はするな。ザラ隊長の言うことにも、少しは耳を傾けてやれ」
シン「……わかったよ」
4 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/12(木) 00:32:44.23 ID:/n5bZo6G0
シン「ごめん、ちょっと風に当たってくる」
シンが席を外し、残されたレイとルナマリアは再び苦笑する。
ルナマリア「レイの言うことは素直に聞くのよね、シンのやつ」
レイ「そういうわけじゃないさ。元々根は素直なやつなんだ、シンは」
ルナマリア「私には反骨精神の塊みたいに見えるけど。アカデミーのときもよく教官と衝突してたし」
レイ「自分の気持ちにも素直であるが故に、納得のいかないことには黙っていられないんだろう」
ルナマリア「なるほどねー」
レイ「隊長も隊長で不器用な方だ。あれでは余計に反発されるだけだというのに…」
ルナマリア「シンと隊長って、案外似たもの同士だったり」
レイ「そうかもしれないな」
レイ「お互いに頭が冷えたら、もう一度よく話をしてみてほしいものだが」
5 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/12(木) 00:36:41.37 ID:/n5bZo6G0
甲板に出たシンは、沈んでいく陽を眺めながらぼんやりと考えていた。
怒りで血が上った頭は、レイの言葉と甲板に吹き抜ける涼やかな風が冷やしてくれた。
しかし、どうしても心のどこかでアスランに対する苛立ちが燻ぶっていた。
彼がオーブにいたこと、今更になってザフトに出戻ったこと、そんな彼に指図されること、頭ごなしに否定されて殴られたこと。
理由を挙げればキリがない。
この先自分は上手くやっていけるのだろうかと、大きな溜息をついたのと同時に、背後のドアが開いた。
振り返り、甲板に入ってきた人物をみとめた途端、シンの眉間にシワが寄った。
6 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/12(木) 00:38:30.58 ID:/n5bZo6G0
アスラン「人の顔を見るなり、そんな顔をするなよ」
怒るどころか笑みすら浮かべてみせたアスランに、シンはどんな態度をとればいいのか図りかねていた。
てっきりまたお説教のひとつでもされるものだと思っていたから、拍子抜けしてしまったのだ。
シン「いいんですか?フェイスがこんなところでサボってて」
アスラン「ああ、ブリーフィングが終わったんでな」
つい挑発的な物言いになってしまうが、アスランは気にした様子もない。
7 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/12(木) 00:40:39.31 ID:/n5bZo6G0
シン「……」
アスラン「暇なんだ、少し話相手になってくれないか?」
シン「それなら、ルナのところに行ってやれば喜びますよ」
アスラン「そういうなよ。君と話がしたいんだ」
どういう風の吹きまわしだ、とも思ったが、結局シンはアスランの申し出を受けることにした。
断って出ていくのも、子供が拗ねているようでみっともなく思えたし、アスランの態度がなんとなく気になったからだ。
シン「まあ、いいですけど」
アスラン「ありがとう」
シン「で、なにを話したいっていうんです?」
8 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/12(木) 00:42:35.38 ID:/n5bZo6G0
アスラン「…単刀直入に聞くが、君は俺のことが気に入らないか?」
アスランは、シンの瞳を真っ直ぐに見つめて問いかけた。
シン「は?…はあ、気に入らないですが」
あまりにストレートにぶつけられた問いに一瞬面食らったものの、シンもまたアスランの瞳を見返して答えた。
アスラン「そうか…それは何故なんだ?」
シン「そんなの、この間までオーブでアスハの護衛なんかやってた人が急に戻ってきて、フェイスだ、隊長だなんていって…」
シン「あなたのやってることはめちゃくちゃですよ!」
9 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/12(木) 00:45:33.16 ID:/n5bZo6G0
アスラン「…確かにな」
シン「え?」
あっさりと認めたアスランに、シンは戸惑った。
アスラン「確かに、俺のやっていることは、君から見ればめちゃくちゃだろう」
アスラン「しかし、だから俺の言うことは聞けないと、上官として認められないと、君はそういうのか?」
シン「それは…」
先ほどのレイの言葉が頭をよぎる。隊長の言うことにも耳を傾けてやれ、と。
シン「そこまで言うつもりは、ないですけど…」
10 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/12(木) 00:47:44.43 ID:/n5bZo6G0
アスラン「なら、先のインド洋での戦闘のことはどう思ってる?」
シン「……」
アスラン「今もまだ、間違いじゃないと思うか?」
シン「さっきまで、レイたちと話してたんです、そのこと」
シン「俺が自分勝手に動いて無茶したら、そのツケを払うのは自分だけじゃないかもしれないって言われて…。少しは反省しましたけど」
アスラン「それだけじゃない。彼らにもう抵抗する力は残されていなかった。基地ごと殲滅する必要はなかったはずだ」
シン「でも…あのとき、捕まった人たちが撃ち殺されてるの見て、連合の奴らが許せなくて…」
アスラン「そんな光景を目にすれば、誰でも君と同じことを思うさ、多分」
アスラン「だが、俺たち軍人が自分の理屈と正義だけで力を振るってしまったら、それはただの破壊者だ」
シン「……」
11 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/12(木) 00:49:47.37 ID:/n5bZo6G0
アスラン「己の無力さを呪い、力を求めるのはいい。だが、力を手にしたそのときから、今度は自分が誰かを泣かせる者となる」
アスラン「それだけはどうか、忘れないでくれ」
シン「…はい」
今度こそ納得した様子のシンを見て、アスランは微笑みながら言った。
アスラン「それさえ忘れなければ、君は優秀なパイロットだ」
アスラン「頼りにしているぞ、シン。君がミネルバのエースだ」
シン「え…!?」
アスラン「話は以上だ。では、またな」
アスランが甲板から出ていくのを、シンは茫然としたまま見送った。
予想もしていなかった賛辞に、なんだかくすぐったいような感覚を覚える。
ミネルバのエース。悪くない響きだ。
シンの中に渦巻いていたどうしようもない苛立ちは、いつの間にか消え失せていた。
12 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/12(木) 00:54:13.02 ID:/n5bZo6G0
今回はここまでになります。
アスランとシンがもう少し親交を深めていたらというもしもの話です。
全然書き溜めてないので更新は不定期です。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/12(木) 00:55:00.61 ID:4/V7Zk3oO
おつおつ
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/12(木) 01:24:41.77 ID:IScWtifmO
これはまた珍しい
種タヒSSって大体シンTUEEEEEEとかになるし
こういうコミュニケーションを取っていく系はあまりないから期待
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/12(木) 01:41:40.44 ID:k0yGDrnHo
乙ー こういうの見たかったんだよね
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/12(木) 02:43:28.14 ID:tqP0/D2eo
アスランが導いてくれるならどうなるかとか考えたりもしたなぁ
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/12(木) 06:04:21.78 ID:8AZDThlbO
>>14
このssを褒める気持ちは分かるがシン強物なんて滅多にないだろ?だいたいラクシズキラマンセーばっかだし
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/12(木) 09:04:06.20 ID:xDwA5fCn0
どっちがマンセーとかどうでもいいよ主観でしかないし
このSSと関係ない話だし
互いにお話してコミュニケーション深めてけばいい方向に向かうだろうなって思うよねやっぱり
とにかく期待
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/12(木) 09:45:07.94 ID:e97SfmPDO
乙
種死懐かしい
こうして思い返すと、シンもアスランも激情家だった
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/12(木) 18:54:50.03 ID:98vPkZYI0
ここのアスラン…出来る…!
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/12(木) 19:57:27.35 ID:zm+O5XezO
シン強いけど我が強すぎたからああなったしなぁ
それがこうやってちゃんと話し合って絆を深めたらどうなるのか
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/12(木) 20:06:44.53 ID:YV4bsd0P0
乙です
23 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/14(土) 00:10:04.20 ID:qu2ciWen0
マハムール基地を発ち、ローエングリンゲート攻略のためガルナハンへと向かうミネルバ。
その艦内では、レジスタンスの一員である少女"コニール"を迎え、ブリーフィングが行われていた。
アスラン「これより、ガルナハン・ローエングリンゲート突破作戦の詳細を説明する」
敵の陽電子砲"ローエングリン"を叩こうにも、強固なリフレクターを搭載したMAがそれを守っているため、正面突破が有効とはいえない。
そこでアスランたちが陽動をかけてMAを砲台から引き離し、その間にローエングリン砲台付近に通じる坑道の中を分離したインパルスで通り抜け、
奇襲によってローエングリン砲台を撃破するというのが、作戦の概要だった。
アスラン「抜け道となる坑道内は非常に狭く、分離状態のインパルスでようやく通れる程度だ」
アスラン「視界は悪いが、ミス・コニールが持ってきてくれたデータ通りに飛べばいい。やれるな?シン」
シン「はい!」
躊躇や不安を微塵も感じさせないシンの返答に、アスランは満足げに頷いた。
視界の端でルナマリアが目を丸くしていたが、シンはそれを無視した。
24 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/14(土) 00:13:50.95 ID:qu2ciWen0
アスラン「ではミス・コニール、彼にデータを」
促されて、コニールはデータの入ったディスクをシンに差し出した。
コニール「…前にザフトが基地を攻めたとき、街は大変だったんだ。逆らった人たちは酷い目に遭わされて、殺されて…」
コニール「今度失敗したらどうなるかわからない、だから…!」
涙ぐむコニールの頭にそっと手を乗せ、シンは微笑んだ。
シン「大丈夫、俺はこの艦のエースなんだ。必ず成功させてみせるさ!」
コニールを安心させるためだけに出た言葉ではない。
そう言い聞かせることで、自身を奮い立たせたのだ。
コニール「うんっ…頼んだぞ!」
シン「ああ!」
もし連合軍に見つかればただでは済まされなかっただろうに、こんな小さな子供が、
必死に恐怖に耐えながら、街を救うという大任を背負ってここまで来たのだ。
手渡されたデータディスクに、シンは自らの使命の重みを感じとった。
25 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/14(土) 00:15:42.77 ID:qu2ciWen0
やがて作戦が開始され、インパルスも発進準備に入っていた。
メイリンが読み上げる発進シークエンスを聞きながら、シンは操縦桿を握りしめる。
メイリン「コアスプレンダー、発進どうぞ!」
シン「シン・アスカ!コアスプレンダー、行きます!!」
発進したコアスプレンダーの後を、チェストフライヤー、レッグフライヤーがビーコンに従って追従する。
シンは躊躇なく、コアスプレンダーを岩壁の隙間に飛び込ませた。
26 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/14(土) 00:17:18.77 ID:qu2ciWen0
一方、アスラン率いるミネルバのMS隊は、MA"ゲルズゲー"を中心とする敵部隊と交戦。
MSの数の差、ローエングリン砲台の火力、そしてゲルズゲーの圧倒的な防御力を前にして、ミネルバは苦戦を強いられていた。
ミネルバの主砲"タンホイザー"の一撃すら、ゲルズゲーは無傷で防いでみせたのだ。
事前に知ってはいたものの、いざ目の前でその性能を見せつけられ、アスランは嫌な汗が伝うのを感じていた。
アスラン「シンは以前、あれと同タイプのMAと交戦し撃破したと聞いたが、一体どうやって…」
いや、撃破を焦る必要はない。
ゲルズゲーの持つ陽電子リフレクターがいかに強固であろうと、この場に釘付けにして時間を稼げば、インパルスが敵の陽電子砲を潰してくれる。
そうなれば、戦況は一気にこちらに傾くはず。
セイバーの機動性を活かし、アスランはゲルズゲーを撹乱する。
アスラン「レイ、ルナマリア!敵MAは俺が引き付ける!シンが来るまでの辛抱だ、持ち堪えるぞ!」
27 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/14(土) 00:19:14.49 ID:qu2ciWen0
シンは、モニターには殆どなにも映らないほどの暗闇の中を、データだけを頼りに進んでいた。
実際に坑道内に入ってみて、シンはこれがどれほど困難な作戦であるかを理解した。
狭い坑道内を抜けるまでは、合体シークエンスに移行することもできない。
フェイズシフト装甲をもたないコアスプレンダーの状態では、岩壁に激突すれば命はないだろう。
それでも、シンはスピードを緩めることなく、ひたすらに進み続けた。
アスランの信頼に応え、コニールとの約束を果たすために。
コクピットに警告音が鳴り響き、行き止まりが近いことをシンに知らせた。
シン「やっと出口か!」
シンは暗闇に照準を向け、コアスプレンダーのミサイルを発射した。
爆発によって岩壁が崩れ、流れ込んだ光の中に機体を突っ込ませる。
28 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/14(土) 00:21:27.09 ID:qu2ciWen0
モニター一面に広がる青空は、無事に坑道を抜けたことを意味していた。
だが、安心している暇はない。
視界の中に敵のローエングリン砲台を確認しながら、シンは機体を合体シークエンスに移行させた。
三機の戦闘機は瞬く間にトリコロールのMSへと姿を変え、ローエングリンに肉薄する。
シン「堕ちろっ!!」
インパルスのビームライフルに貫かれたローエングリンが爆炎を噴き上げ、ゲルズゲーに一瞬の隙が生まれる。
アスランがそれを見逃すはずもなく、セイバーの両肩から引き抜かれた二振りのビームサーベルが、ゲルズゲーを引き裂いた。
アスラン「敵の主力は潰した!このまま制圧するっ!!」
一気に攻勢に転じるミネルバ。
ローエングリンとゲルズゲーという両翼をもがれた連合軍は士気を失い、総崩れとなった。
29 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/14(土) 00:24:20.67 ID:qu2ciWen0
作戦終了。ガルナハンの街は、連合軍基地陥落の知らせを受け、活気を取り戻していた。
解放の喜びに色めく人々、街を救った英雄として歓迎され、照れくさそうに笑うシン。
アスランはその光景をセイバーのモニター越しに見やり、笑みを浮かべた。
だが、ザフトの勝利がもたらしたものは、それだけではなかった。
街の影に引きずりこまれ、男たちに足蹴にされ、血を流す連合軍の兵士たち。
連合軍がこの街にしてきたことを考えれば、当然の仕打ちではあるし、
戦争をしている以上、どちらかが戦いに勝てば、負けた方は苦汁を嘗めることになる。
頭では理解していても、アスランはその光景に後味の悪さを感じずにはいられなかった。
アスラン「わかっていたことじゃないか。何を今更…」
自嘲し、セイバーのコクピットハッチを開く。
困難な作戦をやり遂げ、期待に応えた部下に、ねぎらいの言葉のひとつぐらいかけてやらなければ、と。
30 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/14(土) 00:31:23.76 ID:qu2ciWen0
今回はここまでです。
アスランとシンの関係がどこまで物語に影響するかはわかりませんが、
ひとまずこんな調子で物語の大筋は変えずに進めていくことになると思います。
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/14(土) 03:48:06.67 ID:qz2XEwRFo
乙乙
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/14(土) 09:17:24.69 ID:cHYUR0loO
アスランもシンもお互い信頼関係を気付ければ少なくともアスラン逃亡の際にアスランの話に耳を傾けることはしたんだろうなと思う
そうすれば少しシンの暴走癖も抑えられ冷静になることが増えステラを守れた可能性もあるんじゃなかろうか
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/14(土) 10:18:15.68 ID:etkuZ4hDO
乙 大量のウィンダム撃墜したり、巨大MAも破壊したシンからすれば、アスランにはもうちょっと活躍してほしかったんだろうな、と思った
確かに、シンからすると偉そうな事いったり、殴ってくる癖に、セイバーの戦績がイマイチというか、ここのゲルズゲーくらい自力でいって欲しかったのかな
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/14(土) 10:31:40.92 ID:Wsw+3DSL0
乙ー
アニメよりちょっと素直になってるね
やっぱ一言でも会話が増えると感情って変わってくるよね
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/14(土) 18:21:52.62 ID:qB9L1hfAO
>>33
つうよりシンの場合元々はザフトの赤服でエリートだったのにオーブでずっと何もせずにいたくせに急にまた出戻りしてフェイスなって隊長になったからムカつくんでしょ
今のザフトは自分達が頑張った結果なのに急に出戻りし、しかも議長に信頼されてムカつくって
36 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 00:27:42.37 ID:LVOQTlxo0
ガルナハン基地を攻略したミネルバは、美しい港町"ディオキア"にあるザフト軍基地へと到着した。
上陸許可を得るや否や、クルーたちは一目散に基地の一角に集まった。
それというのも、この日ディオキア基地でラクス・クラインの慰問コンサートが行われるからだった。
ミーア「みーなさぁーん!ラクス・クラインでぇーすっ!」
殆どの兵士たちが熱狂する中、壇上の歌姫の正体を知るアスランだけは、冷や汗をかいていた。
天真爛漫なキャラクター性も、扇情的な衣装も、以前のラクスとは明らかに違って見える。
もし別人だとバレたら、議長はどうするつもりなのだ。
メイリン「ラクス様かわいい!でも、なんか変わられましたよねぇ」
アスラン「え!?あ、ああ…まあ…」
37 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 00:29:11.16 ID:LVOQTlxo0
なんとかコンサートを乗り切ったアスランは、シンとルナマリアを連れ立って、デュランダルの元へとやってきていた。
アスラン「失礼します」
デュランダル「久しぶりだね、アスラン」
先にテーブルについていたレイとタリアを含めれば、ミネルバの中心人物が一堂に会したことになる。
デュランダル「それから、君たちは…?」
ルナマリア「ルナマリア・ホークであります」
シン「シン・アスカです!」
デュランダル「ああ、君のことはよく憶えているよ、シン」
シン「え…?」
38 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 00:31:03.57 ID:LVOQTlxo0
思いがけない言葉に目を丸くするシンを見て、デュランダルは微笑んだ。
デュランダル「君の活躍の知らせは、私の元にも届いているよ。特にガルナハンでは、大活躍だったそうだね」
シン「い、いえ…ザラ隊長の作戦が凄かっただけで…」
アスラン「それは違うぞ、シン。あの作戦は、おまえだからこそ任せることができたんだ。誇っていい」
デュランダル「実践はアーモリーワンが初めてだったというのに、本当に大したものだよ。」
シン「あ、ありがとうございます!」
デュランダルとアスランから手放しの賛辞を受け、シンは小躍りしそうになるのを必死に抑えていた。
39 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 00:34:12.09 ID:LVOQTlxo0
その後、デュランダルの話は今現在の戦況の説明へと向かい、
シンはデュランダルにひとつの問いを投げかけられる。
デュランダル「シン、なぜ戦争が無くならないのか…考えてみたことはあるかな?」
シン「え…それは…」
シン「ユニウスセブンのときみたいなやつらや、ブルーコスモスみたいな自分勝手な連中がいるから…」
デュランダル「ふむ」
シン「…違いますか?」
言いながら、シンはいまいち自分の答えに自信を持てずにいた。
今までこんな根源的なことを訊かれたこともなかったし、考えてもみなかったのだ。
デュランダル「もちろん、それもある。憎いとか怖いとか、自分と違う考えを許せないとか、そういった理由で戦いが起こることも少なくない」
デュランダル「だが…それよりも、もっと救いようのない理由が、戦争にはあるのだよ」
40 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 00:41:18.90 ID:LVOQTlxo0
シン「救いようのない理由…で、ありますか?」
デュランダルは静かに頷き、話を続けた。
デュランダル「戦争の中では、MSを中心に多くの兵器が消費される」
デュランダル「そして、次から次へとまた新しい兵器が造られる…その一機一機の値段を考えてみてくれたまえ」
シン「…それって!?」
デュランダル「そう、戦争を産業と考え、利用する者たちがいるのだよ」
デュランダル「死の商人"ロゴス"。ブルーコスモスの母体でもある」
シンは愕然とした。金儲けのために何千、何万という人間の血を貪るなど、想像を超えた狂気だ。
憎しみや怖れから剣を手に取るという方が、ずっと理解できるというものだ。
デュランダル「今回の戦争の裏にも、間違いなく彼らがいるだろう。なんとかできればいいのだがね…」
41 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 00:46:23.60 ID:LVOQTlxo0
デュランダルの計らいで、ミネルバのパイロットたちはディオキアのザフト軍宿舎に一泊することとなった。
軍の宿舎といっても、内装は最高級ホテルにも引けをとらないほど豪華なものだ。
ルナマリアは年相応にはしゃいでいたが、シンはそんな気分にはなれなかった。
デュランダルの口から語られた、戦争を裏で操る存在ロゴス。それがシンの心に暗く影を落としていた。
死の商人。そんな奴らのくだらない金儲けのために、自分の妹と両親は殺されたのだ。
そう思うと、全身の血が沸騰し、怒りに支配されてしまいそうだった。
不意にドアをノックする音が鳴り、シンは我に返った。時計に目をやると、時刻は午後七時を回っていた。
レイとルナマリアあたりが夕食の誘いにでも来たのだろうかと思いドアを開けると、思いがけない人物が立っていた。
42 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 00:48:11.17 ID:LVOQTlxo0
アスラン「シ、シン!説明は後でする!とにかく匿ってくれ!!」
シン「はぁ!?」
返事を待たず、シンを押しのけて部屋へと侵入したアスランは、そのまま地面を這い、ベッドの下へと潜り込んでいく。
シン「ちょっと!なにやってんですか、あんたは!!」
アスラン「説明は後だと言った!誰か来たら俺の居場所は知らないと言ってくれ!!」
アスランはすっかりベッドの下に隠れてしまい、シンは状況を飲み込めずに茫然とするほかなかった。
43 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 00:51:35.86 ID:LVOQTlxo0
シン「…いつまでそうやってる気なんです?」
アスラン「………」
シン「ここに誰か来るとしたら、レイかルナぐらいのもんですよ。まさか、二人から逃げてるわけでもないでしょう」
アスラン「油断するなシン!それと、俺はここにいないものだと思え!」
シン「はあ」
上司の奇行は放っておいて、食事にでも行こうかとドアノブに手を伸ばしたとき、再びドアがノックされた。
アスラン「きた…!?」
シン「今開けます。って、え…?」
44 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 00:53:50.83 ID:LVOQTlxo0
ミーア「こんにちは、兵士さん☆」
シン「…すみません、どなたですか?」
ミーア「え?」
シン「え?」
訪ねてきた少女に心当たりがなかったシンからすれば当然の問いかけなのだが、
どうやら少女にとってそれは信じらない言葉だったらしい。
ミーア「あなた、私のこと知らないの!?嘘でしょう!?」
45 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 00:56:13.31 ID:LVOQTlxo0
シン「えっと…ああ!昼間のコンサートで歌ってた人!」
ミーア「そうだけど…そうだけど〜!」
不満気に頬を膨らませる少女に、シンは戸惑いつつも再び問いかける。
シン「それで、俺に…あーいや、自分になにか用でありますか?」
ミーア「あら、わたくしったら…忘れるところでしたわ」
ミーア「あなた、ミネルバの方でしょう?アスランがどこにいったか、ご存知ありませんか?」
シン「!」
ああ、なるほど。うちの隊長は、この少女から逃げ回っていたのだ。
ようやくシンはこの異様な状況のワケを理解した。
46 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 00:59:01.07 ID:LVOQTlxo0
シン「自分は知らないであります」
ミーア「そう…それは残念ですわ」
シン「隊長の追っかけかなにかでありますか?」
ミーア「あなた、本当に私のこと知らないんだ…!」
シン「用件は以上でありますか?自分はお腹が空いたので、失礼するであります」
ミーア「……」
シン「まだ、なにか…?」
ミーア「じゃあ、あなたでいいわ」
ミーアは悪戯っぽく笑い、シンの腕を掴むと、そのままずんずんと歩き始めた。
シン「え、ちょっと」
ミーア「お腹が空いてるんでしょう?席はもうとってあるから」
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/15(日) 01:01:12.13 ID:atd+BmLSO
『シン』?
48 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 01:01:46.44 ID:LVOQTlxo0
ドアが閉まり、二人分の足音が聞こえなくなった後で、アスランはようやくのそのそとベッドの下から這い出た。
自分の代わりに連行された部下のことは気がかりだが、ひとまず窮地は脱したと考えていいだろう。
緊張から解放され、ほっと息をつく。
アスラン「許せよ、シン」
すぐにここを出てミーアとすれ違ってはまずいので、アスランはもう少しばかりこの部屋に留まることにした。
なんの気なしに周囲を見回してみると、愛らしい桃色をした、小さめの携帯電話が目に入った。
アスラン「これは…」
シンのものだろうか。それにしては趣味が可愛らしすぎる気がする
アスラン「…形見、か」
シンがオーブで起きた戦闘の際に家族を失ったことは、以前アレックスとしてカガリと共にミネルバに乗艦した際に聞いていた。
デュランダルからロゴスの話を聞いて、シンはきっと誰よりも憤っているだろう。
49 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 01:04:35.80 ID:LVOQTlxo0
怒りや憎しみという感情が悪だとは思わない。
だが、一度経験したから分かるのだ。
抱えた憎悪を戦場で相手にぶつけるようなことになれば、その先には後悔しかないのだと。
今でもニコルのことを思い出すたび、胸が締め付けられる。
そしてキラも、同じ苦しみに苛まれているだろう。
キラの友を葬ったのは、ほかの誰でもない自分だ。
自分の部下たちには、決して同じ思いはさせまい。
導く、とまで言う自信はないが、一緒に正しい道を探していくことはできるはずだ。
自分と、ミネルバの皆と、そしてデュランダル議長と一緒ならば。
アスランはこのとき、そう信じて疑わなかった。
50 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/15(日) 01:07:10.25 ID:LVOQTlxo0
今回の更新はここまでです。
1話完結でやっていきたかったんですがディオキアの話は1話にまとめきれず…。
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/15(日) 02:08:44.45 ID:V6GxPQJDO
復讐に囚われ怒りでシンはSEEDに目覚めたが、怒りとかではなくキラみたいな感じだったらキラにも勝てる強さ持ってる気がするんだよね
まあシンがなぜSEED持ってるのかはガチで謎だけど
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/15(日) 02:43:27.80 ID:ndMrpgkQ0
おつー
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/15(日) 09:52:39.11 ID:7khO/f5o0
乙です。
さてアスランの身代わりになったシンはどうなることやら
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/15(日) 12:41:48.48 ID:EgEkVg2Ao
乙
面白いからゆっくりでもいいから頑張って
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/15(日) 13:07:27.26 ID:SyVtZmrA0
コミュ力のあるアスランなんてあれだ!
しっかりしてるクワトロだ!
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/16(月) 16:15:15.14 ID:Q6ehXFas0
しっかりしてる時点でクワトロじゃないだろ!いい加減にしろ!
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/16(月) 18:42:03.82 ID:nJnOwiFl0
まあ二の腕隠してる時点でアスランの方がまともだよね
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/16(月) 20:06:04.49 ID:MxX17HzEO
身代わりになったシンは翌日ファンになってたら笑う
59 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 00:55:29.73 ID:TTCM1fps0
ミーア「あなた、お名前は?」
シン「シン・アスカであります」
ミーア「わたくしはラクス・クライン。ラクスって呼んでね。それと、もう堅苦しいのはナシ!」
シン「…わかった、ラクス」
ミーアは満足そうに微笑み、エレベーターへと乗り込む。
ミーア「ほら、シンも!この上に美味しいレストランがあるの!」
ミーアの一方的な誘いにシンは戸惑ったが、強く拒絶する気にもなれず、ついていくことにした。
案内されたのは、施設上階にあるレストランのVIPルームだ。
60 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:00:18.88 ID:TTCM1fps0
注文を済ませたあとで、シンは今更な疑問を口にする。
シン「なんで俺、君と一緒にこんな高そうなレストランに来てるんだ?」
ミーア「アスランとご一緒するつもりだったのよ。でも、どこにもいないんですもの」
シン「まあ、忙しい人だし」
ミーア「それに、あなたが面白そうだったから」
シン「え?」
ミーア「私のことを知らないなんて言うザフトの兵士さん、初めて見たわ」
シン「それは…少し前までオーブにいて、プラントに来てからも訓練ばかりだったからさ」
ミーア「ふぅん。それでプラントの有名人には疎いんだ」
61 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:02:47.64 ID:TTCM1fps0
ミーア「でも、ライブは見てくれたんでしょう?ラクス・クラインを知らない人から見て、私の歌はどうだった?」
シン「どうって、良かったと思うよ。みんな、君の歌で元気出たみたいだし」
なんとも当たり障りのないことを言ってしまった、とシンは思ったが、目の前の少女は特に気にした様子もない。
シン「けど、ラクスは普段はプラントで歌ってるんだろ?どうして地球に?」
ミーア「さっき、あなたが言ったじゃない。みんなを元気にしてあげたいからよ!」
シン「そのためだけに、わざわざ…?」
シンは驚きを隠せなかった。
今自分たちがいるこのディオキアという街も、元々は地球連合軍に占領されそうになっていたところを、ザフト軍によって解放されたばかりなのだ。
プラントのあたりでは小競り合いこそ起きているものの、大きな戦闘があったとの報告はない。
今起きている戦争の中心地がこの地球であり、プラントにいるよりずっと危険だということは、目の前にいる少女も承知しているだろうに。
62 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:07:18.31 ID:TTCM1fps0
ミーア「戦う力のない人たちや、戦うことを選ばなかった人たちのために、そういう人たちを守るために、軍の人たちは戦ってくれているんでしょう?」
ミーア「それって、凄く大変なことだと思う。私には想像も及ばないぐらいに」
ミーア「だから、私の歌でその人たちに元気を与えることができるなら、いくらでも頑張るつもり!」
シン「ラクス…」
屈託なく笑う少女の言葉には、なんの打算も、嘘偽りも感じられなかった。
軍人である自分とはまた別の手段で、平和のために力を尽くしている人がいる。
その事実は、ロゴスへの憎悪で暗く沈み込んでいたシンの心に、希望の火を灯してくれたような気がした。
63 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:10:46.13 ID:TTCM1fps0
ミーア「ねえ、シンはミネルバの人なんでしょう?色々お話聞かせてほしいの!アスランって、軍務のときはどんな感じなの?」
シン「そうだなあ…うちの隊長は凄い人だよ。MSの操縦も上手いし、俺なんかよりずっと大人で」
シン「最初は怒鳴られたり殴られたりして、ちょっとムカついたけど…」
ミーア「へぇ、アスランって意外とスパルタなのね」
シン「まあね。でも、俺のこと心配してくれてたってわかったから、もう気にしてないよ」
シン「ただ怒るだけだったアカデミーの教官たちとは違う。ちゃんと俺のこと認めて、歩み寄ってくれたんだ、あの人は」
64 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:13:25.32 ID:TTCM1fps0
食事を終え、すっかり意気投合したシンとミーアは、施設内の庭園へとやってきていた。
空は藍色の夜闇に覆われ、ライトに照らされた噴水が煌いている。
ミーア「私、シンのこと気に入っちゃった。専属のボディガードにならない?」
シン「え?…無理だよ、俺がミネルバ離れるわけにはいかないし」
ミーア「そう、残念。でも、あなたを除いてもアスランと赤服のパイロットさんが二人いるんでしょう?」
ミーア「そこにフェイスが一人加わるんだから、戦力としては十分だと思うんだけどなあ」
シン「フェイスが…?なんのこと?」
ミネルバのパイロットが増員、それも議長直属の特務隊であるフェイスが加わるなど、シンには全く心当たりのないことだった。
65 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:14:53.31 ID:TTCM1fps0
ミーア「聞いてないの?ハイネ・ヴェステンフルス。"緋蝶"の二つ名を持つ、凄腕のパイロットなんだって」
シン「そんな報告は受けてないけど、なんでラクスがそんなことを知ってるんだよ?」
ミーア「議長がお話してたの聞いちゃった!」
シン「えぇ…」
ミーアを部屋まで送り届けたあと、シンは自室へと戻ってきていた。
ロックを解除して扉を開くと、そこにアスランの姿はなかった。
シン「後で説明するって言ってたのに、逃げたな…」
66 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:16:57.18 ID:TTCM1fps0
翌朝、シンがラウンジへと向かうと、オレンジの髪をした赤服の兵士が、他のミネルバ隊のメンバーと談笑していた。
その赤服の襟元に輝くフェイスのバッジを見て、シンは昨夜のミーアの話を思い出す。
彼がミネルバに新たに着任するパイロットということだろうか。
シンに気づいたルナマリアが、こっちだと手招きする。
ルナマリア「シン!こちらは…」
シン「ハイネ・ヴェステンフルス…」
ルナマリア「え?」
ハイネ「おっ、なんだよ!俺ってば有名人?」
シン「あ、すみません。自分は、シン・アスカであります!」
挨拶が遅れたことに気づき、慌てて敬礼してみせるシンに、ハイネは気にするなと肩を叩いた。
ハイネ「ミネルバには休暇明けから配属される。よろしくな、シン」
シン「はい!」
67 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:18:45.45 ID:TTCM1fps0
顔合わせが済んだところで、レイがひとつの疑問をアスランへと投げかける。
レイ「隊長、一つの部隊にフェイスが二人となると、作戦指揮は…?」
アスラン「ハイネの方が先任だ。これからミネルバ隊は、彼の預かりになる」
レイ「了解しました。ではヴェステンフルス隊長、よろしくお願いします」
ハイネ「ハイネでいいよ、堅っ苦しいのは得意じゃないんだ。大体、ヴェステンフルス隊長ってなげーだろ」
レイ「は、はあ…」
68 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:20:21.36 ID:TTCM1fps0
ハイネ「ていうか、アスランおまえ、隊長って呼ばれてんの?」
アスラン「ああ、まあ…」
ハイネ「……」
レイ「戦闘指揮を執られますので、我々はそうお呼びしてきました」
ハイネ「なるほどね…じゃ、これからはアスランでいこうか」
アスラン「俺はそれでも構わないが…」
当惑するシンたちに、ハイネはやれやれ、と肩を落としてみせた。
ハイネ「あのな、俺たちザフトのパイロットは、戦場に出ればみんな同じだろ?赤でも、緑でも、フェイスでも…」
確かに、ザフト軍には階級制度というものが存在しない。
その代わり、部隊の中でリーダーを決め、その者が隊長の役割を果たす。
故に、シンたちはなんの疑問も抱かずに自然とアスランを隊長と呼んできた。
ハイネ「だからさ、隊長なんて余所余所しい呼び方する必要はないんだよ」
ハイネ「おまえもおまえだぜ、アスラン。なんで名前で呼べって言わないの」
アスラン「はは…俺も、おまえみたいにやれたらなと思うよ…」
69 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:23:01.11 ID:TTCM1fps0
ハイネ「艦の方には、また改めて挨拶に行くよ。それじゃあな!」
景気よく言い放ち、ラウンジから立ち去るハイネ。
それと入れ違いに入ってきた人物に、アスランの顔がこわばった。
その人物はアスランをみとめると、はしゃぎながら彼に駆け寄る。
ミーア「ア〜スランッ☆」
アスラン「ミ…いや、ラクス…!」
ミーア「ごめんなさいアスラン。せっかくお会いできたのに…わたくし、もうここを発たなければいけないの」
アスラン「そ、そうですか。お気をつけて」
どこまでも余所余所しいアスランに、不満気に目を細めてみせたあと、
ミーアはシンの方に向き直り、小さく手を振ってその場を後にした。
70 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:25:34.97 ID:TTCM1fps0
レイとルナマリアは思わず顔を見合わせる。
ルナマリア「…ねえ、今」
レイ「…ああ」
ルナマリア「ラクス様、シンに手振ってた?」
レイ「…ああ」
ルナマリア「どういうことなの…」
レイ「…わからん」
ルナマリア「ちょっとシン!…って、いない?」
エレベーターの方を見やると、ちょうどアスランとシンが乗り込んだところだった。
声をかける間もなく扉は閉まり、ルナマリアは茫然と立ち尽くす。
71 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:26:37.97 ID:TTCM1fps0
ルナマリア「最近のシン、全然読めない…。この前の作戦から、急に隊長と仲良くなってるし」
レイ「隊長ではなく、アスランだろう?」
ルナマリア「あっ…」
レイ「休暇はまだ残ってるんだ、一緒に街にでも行ってくればいいじゃないか。最近シンとゆっくり話す機会もなかったろう?」
ルナマリア「そりゃ、まあ…」
72 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:27:28.83 ID:TTCM1fps0
レイ「それとも、おまえが誘いたいのはアスランの方か?」
珍しく冗談を言ってみせたレイに、ルナマリアは少し驚いたあと、むくれてみせた。
ルナマリア「もう!からかわないでよね!…レイはどうするの?」
レイ「俺はミネルバでシンと同室だからな。いくらでも話はできるさ。それに、今日は先約があってな」
ルナマリア「ふーん。せっかくだから、久々に三人で出かけるのもいいと思ったんだけど…仕方ないか」
レイ「悪いな」
ルナマリア「ううん。じゃあ私、行ってくるわね」
レイ「ああ」
73 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:30:13.64 ID:TTCM1fps0
エレベーターの中で、シンは率直な疑問をアスランにぶつけてみた。
シン「なんでラクスのこと避けてるんです?いい子じゃないですか、彼女」
アスラン「ああ、いや…いい子なのは間違いない、と思うが…」
シン「自分の歌でみんなを元気にするんだって…そのために、危険な地球まで降りてきて…」
シン「…俺、ちょっと感動しました。CDも貰ったんで、ちゃんと聴いてみるつもりですよ」
アスラン「そう、だな…」
シン「……?」
いつものアスランとは違う歯切れの悪さに違和感を感じたものの、シンは余計な詮索をするような性格でもなかったから、それ以上は聞かないことにした。
74 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:32:05.75 ID:TTCM1fps0
アスランと別れ、自室で残りの休暇の過ごし方を考えていると、ルナマリアから着信が入った。
シン「ルナ、なにか用?」
ルナマリア「せっかくだから街に出ようと思って。でも、一人じゃつまらないでしょ?」
シン「ああ、荷物持ちね。しょうがない、付き合ってやるよ」
ルナマリア「オッケー。じゃ、ラウンジに集合ね」
通話を切り、身支度を整えながら、ルナマリアはほくそ笑む。
実戦に出てから活躍を重ね、エースとして昇り詰めていくシンに、少しばかり気後れしていたのが馬鹿馬鹿しく思えたからだ。
ルナマリア「よーし、思いっきり羽伸ばしちゃお!」
75 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:34:01.38 ID:TTCM1fps0
さっさと支度を終えたシンは、ラウンジのソファーに腰掛け、
小型の音楽プレーヤーで、ラクスの歌を――正確にはミーアの歌だが――を聴きながら、少しばかりの安らぎを感じていた。
この休暇が終われば、またミネルバは戦場に赴くことになるのだ。
今日ぐらいは呑気でいてもバチは当たらないだろう。
この日、自分の運命を揺るがすような出会いが待ち受けていることを、シンは知る由もなかった。
76 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/17(火) 01:35:43.55 ID:TTCM1fps0
今回の更新はここまでになります。
ディオキアの話はもう少し続きます。
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 01:42:19.63 ID:/16P/48EO
おつー
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 08:29:36.73 ID:m2fm34tko
乙
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 09:02:23.54 ID:E7MlZUmw0
乙
当時シンミアとかありじゃねって友人に言ってた黒歴史を思い出したよ
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 09:44:51.42 ID:8CTIn4ADO
乙
ミーアはマジでアスランとしか絡まなかったから、もったいないと思った
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 09:57:20.20 ID:kLdCUxdw0
乙です。
ディオキアってことは次ステラと出会うのかな?
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 12:09:40.60 ID:0vIyDXEOO
俺の見間違いじゃなきゃ一度レイのシャワーシーンあっておっぱいあったような気がするんだがレイは男なんだよな?
シャワーシーンでおっぱいあったから女性陣の誰だろと期待してたらレイだったから驚いた記憶あるんだ
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 12:35:51.47 ID:E7MlZUmw0
そんなシーンあったっけ
ちょっと前までテレ玉のリマスター見てたけど記憶に残ってないな
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 12:37:42.74 ID:/aAWcxQio
いまさらながら思うけど、
種運命って料理の仕方を間違えた感じだよなあ。
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 14:23:11.23 ID:1ugkKQwC0
だからこそ色んな作品で種運命は原作アニメから変化させていい展開、納得のいく話に持って行ってるんだよなー
漫画版然りスパロボZやL然りガンダム無双2のシンルート然り
ここではさらに他では絡んだことのなかったミーアと絡んでるから新鮮な感じ
ミーアもラクスを演じてはいるけど戦争を早く終わらせたいその手伝いが出来ればっていうのは本心だから悪い娘じゃないんだよね
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 17:22:41.63 ID:3WJkM/1p0
前作キャラを無理にageて活躍させようとした結果があの惨状だからな
あとバンク挟み過ぎて話の流れがくっそダレたのを思い出した
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 17:53:45.94 ID:VroXjc0mO
種は良かったよな?
たまに種ごと叩くのがいるけど種は良作だと思うんだ
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/17(火) 18:17:23.03 ID:E7MlZUmw0
シャア板でやっても良い話題にシフトしそうだからSSに関して以外は今後も落ち着いてレスしたいところだね…
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/18(水) 07:54:54.72 ID:DX9NxUIhO
種は良かった思うし好評だと思う
種タヒはなぁ…最初の頃は面白い感じでワクワク感はあった
でも中盤前から酷くなってきたし最後はOPキラに乗っ取られたからギャグになった気する
フリーダムがいくら強くても最新式のセイバーが一発でバラけるシーンもおかしいしな
あとはミゲルと違い多少ハイネは出落ちじゃなく少しは活躍したのは良かった(種タヒでよかったのはそこだけ個人的に)
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/18(水) 18:32:13.82 ID:zPGybNKf0
種死は面白くなる要素はいっぱいあったけどほとんど無駄にしちゃってるからねぇ
シンvsキラだって入念な分析と他にはない機体特性を活かしたシンの勝利ってのもまだ納得がいくが私怨と顔芸ラッシュでやるのは明らかに調理方法を間違えた
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/18(水) 19:43:28.86 ID:OWHJUwvb0
演出用に素材の設定を作るスタイルだから先に演出があるわけでしょ
調理法を間違えたってのは素材が先にあった場合の話じゃないのかなあ
92 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/19(木) 17:31:52.79 ID:k+y3Cfxv0
ルナマリア「お待たせ」
シン「ああ、バイク借りられるみたいだけど、どうする?」
ルナマリア「ううん、歩いていきましょ」
シン「いいのか?街までそこそこ距離あるだろ」
ルナマリア「だからいいのよ」
シン「ふぅん…」
93 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/19(木) 17:33:20.09 ID:k+y3Cfxv0
空は快晴。街道は見晴らしもよく、陽光を浴びて輝く海の美しさと、吹き抜ける潮風に心地よさを感じる。
どうやら、ルナマリアの提案に乗ったのは正解だったようだ。
ルナマリア「ほんっと綺麗!プラントの人口海とは違うわねー!」
シン「ルナが歩くっていった理由が、よくわかったよ」
ルナマリア「景色だけじゃないわよ。最近ゴタゴタしてて、ゆっくり話をする機会もなかったでしょ」
シン「そういや、そうかも」
ルナマリア「色々聞きたいことあるんだから、覚悟してもらうわよ!」
シン「あはは…」
94 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/19(木) 17:34:52.48 ID:k+y3Cfxv0
ルナマリアの質問攻めにほとほと疲れ果て、一旦会話を打ち切って海の方を見やると、崖の突端で、一人の女の子が歌いながら踊っていた。
ステップを踏むたび、やわらかそうな金髪と、軽やかな白と青に彩られたドレスが、ふわりと風にはためく。
波の音に混じって耳に届く歌声は、ディオキアの海のように澄みきって美しかった。
シン「綺麗だな…」
ルナマリア「歌の話?それともあの子が?」
シン「…からかうなよ」
シンはしばし目を閉じ、彼女の歌声に聞き惚れていた。
戦いに明け暮れる世界の中にも、こんなに優しい時間があるのだ。
95 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/19(木) 17:36:53.43 ID:k+y3Cfxv0
ずっとそうしていたかったが、隣にいたルナマリアの悲鳴に驚いて目を開けると、崖の上に少女の姿はなく、
下方に水音が聞こえたのとほぼ同時に、シンは走った。
少女のいた崖から身を乗り出して下を覗き込むと、水の中で少女が必死にもがいているのが見えた。
シン「あの子、泳げないのかよ!?」
念のため基地に連絡するよう、ルナマリアに目で合図し、シンは迷うことなく崖から飛び降りた。
海面が身体を打つが、痛みに悶えている余裕などない。
波をかきわけ、少女へと手を伸ばす。
シン「掴まれ!」
パニック状態にある少女は、シンの声も聞こえない様子で、めちゃくちゃに手をばたつかせている。
シン「くそっ!」
少女を抱き寄せようとするが、細腕からは想像もできないような強い力でもがくものだから、今度はシンまで水に引きずりこまれそうになる。
遅れて海に飛び込んだルナマリアが少女の背面に回り、身動きできないよう二人で抱きかかえて、なんとか浅瀬まで辿り着いた。
96 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/19(木) 17:39:05.17 ID:k+y3Cfxv0
シン「泳げもしないのにこんなところで…死ぬ気かっ!このバカ!」
怒鳴りつけられ、少女の身体が、縮み上がる。
ルナマリア「ちょっとシン!」
シンの言っていることが間違っているわけではないが、つい先ほどまで命の危機に晒されていた相手に、
それは冷たすぎるのではないかと、ルナマリアが押さえ止めた。
ルナマリア「ほら、怖がってるじゃない!」
シン「あ……」
見れば、少女は目に涙を溜めて肩を震わせていた。
ルナマリアの言う通りだ。命を落としかけた直後に、随分と乱暴な言葉をかけて、怯えさせてしまった。
シン「ごめん、俺…」
謝ろうと顔を近づけると、少女は弾かれたように立ち上がり、シンから逃げるように走り出した。
「いやぁぁっ!!」
シン「え、!?」
「怖い!死ぬのは嫌ぁっ!!」
97 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/19(木) 17:41:27.35 ID:k+y3Cfxv0
半狂乱になった少女の向かう先は、今さっき逃れたばかりの海だった。
シンは慌てて走り寄って少女の身体を抱きとめ、懸命に叫んだ。
シン「大丈夫だ!君は死なない!」
少女の細い身体を、かたく抱きしめる。
シン「俺がちゃんと…君を守るから!!」
少女の身体から、ゆっくりと力が抜けていく。
涙に濡れたつつじ色の瞳が、おずおずとシンの顔を見上げる。
「まも…る……?」
シン「…うん」
少女を安心させるために、咄嗟に出た言葉だった。
それでも、この無垢な瞳に見つめられれば、その言葉を嘘にはしたくないと思った。
シン「俺が、君を守るよ。約束だ」
少女はシンの手を取り、その温もりを確かめるように、自分の頬に当てた。
「守る……」
シンは空いた方の手で、少女の髪を優しく撫でてやった。
少女はうっとりと目を閉じ、シンに身を委ねた。
98 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/19(木) 17:42:50.65 ID:k+y3Cfxv0
ルナマリア「もう大丈夫みたいね」
シン「ルナ、基地には連絡してくれたんだろ?」
ルナマリア「ええ。でも、救援が来るまでずっとこのままってわけにも…」
シン「あっ、あそこ!」
岩壁に、小さな洞窟のようなものができていた。
流木を集めて火でも焚けば、水浸しの服と身体を乾かすぐらいはできるだろう。
焚き木の周りに、脱いだ服を広げ、三人は肩を寄せ合って座り、身体を温めた。
シンとルナマリアは、少女を怖がらせないように、言葉を選びながらいくつかのことを聞いた。
少女の名前は、"ステラ"というらしい。
ステラは、スティングと、アウルという人たちと共にこのディオキアを訪れたのだという。
今頃、その二人もステラを探しているのだろうか。
99 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/19(木) 17:45:41.81 ID:k+y3Cfxv0
ステラは、シンの肩に頭をもたせかけ、揺らめく火をぼうっと眺めている。
洞窟の中に聞こえるのは、火がパチパチと弾ける音と、寄せて返す波の音だけ。
安心しきったステラを見て、シンとルナマリアも、心地よい静けさに身を任せた。
どれぐらいの時間そうしていただろうか。
波の音に混じってエンジン音が聞こえ、徐々に近づいてくる。
ステラが不安そうにシンとルナマリアの手を握るようにしたから、シンは大丈夫だと言い聞かせて、洞窟の外へと向かった。
アスラン「なんでこんなところで遭難するんだ?」
シン「すいません、色々あって…」
服を着て洞窟から出てきたルナマリアとステラの手を取ってボートに引き上げ、アスランに事情を説明していると、
上方からかすかに声が聞こえた。崖の上に目をやると、小さな人影が二つ、並び立っていた。
「おおーい!ステラ、どこだぁー!?」
シン「ステラ、あれって…」
ステラ「スティング、アウル…」
アスラン「ここからでは無理だ。一旦基地まで戻って、車を出そう」
100 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/19(木) 17:47:16.72 ID:k+y3Cfxv0
スティングは焦っていた。ステラを一人にして、アウルと共に街で遊び惚けていたのは失敗だった。
ステラは朝、街の近くにある海岸で遊んでいた。だが、夕暮れになって迎えに来てみれば、彼女の姿はなかった。
艦にいるときも、甲板で一日中海を眺めているようなやつだから、海岸に置いておけば平気だろうと軽んじていた。
ネオには、ステラから目を離すなと言われていたのに。
アウル「ひょっとして、海にドボンとか?」
スティング「縁起でもないこと言うんじゃねえ!ネオにどう説明する気だ!」
アウル「けどよ、こんだけ探しても見つからないんじゃ…」
スティング「……」
スティングはそれ以上の叱責を止めた。
アウルの目を見れば、口ではそう言いながら必死なのはわかったからだった。
101 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/19(木) 17:49:15.24 ID:k+y3Cfxv0
それからしばらく探し続けて、いよいよ途方に暮れたとき、一台の軍用車両が、スティングたちの近くで停まった。
アウル「おい、あれ!」
スティングたちが驚いたのは、それがザフト軍の車両だったということよりも、その車上に、探していた少女の姿があったからだった。
ステラ「スティング!」
見知った顔を見つけたステラは、車から降り、嬉しそうにスティングたちの方に駆け寄る。
スティング「ステラ!おまえ、一体どこに…」
シン「海に落ちたんですよ」
ルナマリア「私たち、偶然そばにいて」
ステラの代わりに答えたのは、黒髪の少年と赤い髪の少女。
きっと、彼らはザフトの人間だろう。こちらを警戒する様子はないし、どうやら自分たちの正体を知っているわけではないようだ。
スティング「そうですか。それは御迷惑をおかけしました、ありがとうございます」
シン「いえ、そんな」
ルナマリア「良かったねステラ、お兄さんたちに会えて」
ステラ「うんっ」
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