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アスラン「頼りにしているぞ、シン」
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116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/21(土) 02:29:37.55 ID:hguaXYc0O
気持ち悪い
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/21(土) 03:26:37.00 ID:eQ+E/NpKo
>>115
頭大丈夫?精神科いく?
118 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/21(土) 23:10:19.91 ID:Ln/MZHyB0
研究員「大佐、本当によろしいんですか?」
ネオ「君もしつこいなあ、何度同じことを言わせるんだ?」
ネオ「記憶をデリートするんじゃ、あいつらに休暇をやって、街にまで出してやった意味が無いだろ?」
ネオ「成果をあげさせるには、恐怖で縛るより、報酬を与える方がずっと効果的だ。特に子供相手にはな」
研究員「彼らは兵器です。MSのパーツのひとつにすぎません。余計な記憶や感情が故障を引き起こしたら、どうするおつもりです?」
ネオ「そうは言うがな、生物を完全に兵器として扱うのは無理だ。いつか必ず綻びは出てくる」
研究員「綻び、ですか?」
119 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/21(土) 23:12:16.42 ID:Ln/MZHyB0
ネオ「"ゆりかご"による記憶のデリートは完璧じゃない。つぎはぎだらけの自分の記憶に、疑問を持たない人間などいるものか」
ネオ「自分たちが育った環境、今置かれている状況が異常なことぐらい、あいつらもとっくに気づいてるはずだ」
研究員「ですが…」
ネオ「あーもう!全責任は俺が負う!だから言うとおりにしろ!!」
研究員「…どうなっても知りませんよ」
ネオ「そう心配するなよ。ちゃあんと保険もかけてある」
研究員「保険?」
ネオ「オーブのお坊ちゃんは、上手いこと口車に乗ってくれたよ。無能な権力者ってのは、どこにでもいるもんだよなあ…」
120 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/21(土) 23:14:27.43 ID:Ln/MZHyB0
ユウナ「"ダルダノスの暁"作戦、開始ッ!!」
トダカ「……は?」
突然わけのわからない作戦名を叫ぶユウナに、トダカは言葉を失う。
ユウナ「わからないの?君たち軍人は、本当に教養ってものが無いよなあ…。ギリシャ神話だよ、かっこいい作戦名だろう?」
わざとらしく肩をすくめながら、ユウナは言った。
トダカ「………」
呑気なものだ。オーブ軍がこの作戦で前衛を担うことになったのは、一体誰のせいだ。
黒海奪還を掲げ、ミネルバを強襲し撃墜するのが、今回の作戦。
地球軍の都合で行われる作戦だ。なのに、なぜオーブが矢面に立たなければならない。
怒りを通り越して、もはや呆れるしかなかった。
トダカは、大きな溜息が出そうになるのを必死に堪え、号令をかけた。
トダカ「MS隊、発進!」
空母"タケミカヅチ"から、次々とMSが飛び立っていく。
ユウナには聞こえぬように、トダカは小さく呟いた。
トダカ「カガリ様を送り届けてくれた艦を討つ…か。恩知らずだな、我らは」
121 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/21(土) 23:16:47.86 ID:Ln/MZHyB0
メイリン「MS接近、機種特定!ムラサメ、アストレイ!オーブ軍です!」
タリア「インパルスとセイバーを発進させて!」
敵の戦力を確認し、タリアは指示を出す。
まずインパルスとセイバーを出したのは、長期戦も視野に入れての判断だった。
この二機は、デュートリオンビームによって、通常の機体よりも素早い補給が可能であるからだ。
122 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/21(土) 23:17:43.28 ID:Ln/MZHyB0
理念のために自分の家族を殺したオーブが、その理念をあっさりと捨てて、地球軍に付いた。
その事実に対し、シンは自分でも驚くほどに冷静だった。
怒りが湧かなかったわけではない。ただ、怒りに勝る思いが、今のシンにはあった。
力を手にしたそのときから、今度は自分が誰かを泣かせる者となる。それだけは忘れないでくれと、アスランは言った。
それに対して自分は、はいと答えた。
ならば、もう怒りに任せて引き金を引いたりはできない。
シン「ミネルバは、やらせないっ!」
インパルスのビームライフルが光を放ち、次々に敵MSを撃ち堕としていく。
セイバーの巨大ビーム砲"アムフォルタス"が、敵艦の発射したミサイル群を薙ぎ払う。
二機のコンビネーションは、オーブ軍の攻撃を完璧に防いでみせた。
エース二人の力量に頼もしさを感じながら、タリアは次の指示を出す。
タリア「ミネルバ離水!敵艦隊の前面に回り込む!!」
123 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/21(土) 23:19:40.61 ID:Ln/MZHyB0
ユウナ「なにをやってるんだ!敵のMSはたったの二機だぞ!?」
トダカ「……」
ユウナは狼狽しているが、既に一度ミネルバの戦いを目にしているトダカからすれば、この状況は予測の範囲内だった。
オーブ領海線際の戦闘で、地球軍の虎の子であるMAを討ち取り、そのまま空母含む戦艦六隻を沈めたインパルス。
そして、その隣で戦う赤いMS。初めて目にする機体だが、動きは間違いなくエースのそれだった。
ユウナ「MS隊を全機出撃させろ!取り囲んで堕とすんだよ!」
トダカ「それではこちらの被害が大きすぎます!」
ユウナ「うるさい!これは命令だぞ!」
オーブ軍オペレーター「待ってください!これは…!?敵艦首砲、発射態勢!!」
ユウナ「なに!?」
トダカ「この距離で、もう陽電子砲の射程内だというのか…!?」
今からでは、回避も間に合わない。トダカは、己の迂闊さを呪った。
ミネルバに陽電子砲が搭載されていることは事前に知っていたというのに、後手に回るとは。なんたる無様だ。
だが、そこに一筋の光が射した。
124 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/21(土) 23:21:52.56 ID:Ln/MZHyB0
一瞬のことだった。
天から降り注いだ翡翠色の光が、ミネルバの陽電子砲を貫いたのだ。
その爆発によって艦首を吹き飛ばされたミネルバは、煙を上げながら海へと落ちていく。
太陽を背に、十枚の蒼い翼を広げた白亜のMSが舞い降りる。
その神々しさに圧倒されるように、戦場は一瞬、静寂に包まれた。
インパルスのコクピットに、ハイネからの通信が入る。
ハイネ「シン、気をつけろ!奴はヤキン・ドゥーエの"フリーダム"だ!」
シン「フリーダム…?」
125 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/21(土) 23:22:53.53 ID:Ln/MZHyB0
フリーダムと呼ばれた機体の背後から、大型の白い戦艦が接近してくるのが見える。
その戦艦から、一機のMSが飛び出した。薄紅色のフェイズシフトを纏う、どこかインパルスにも似た機体。
シン「あれも地球軍の増援なのか…!?」
アスラン「いいや、違う。あれは…!」
薄紅色のMSから、全周波での通信が発せられる。
カガリ「この空域で戦闘中の全ての者に告げる!ただちに戦闘を停止せよ!」
カガリ「私は、オーブ連合首長国代表…カガリ・ユラ・アスハ!」
カガリ「その名において命ずる!オーブ軍はただちに戦闘を停止し、軍を引け!!」
126 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/21(土) 23:24:23.99 ID:Ln/MZHyB0
ダリフラ見たいのでちょっと小休止入れます
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/21(土) 23:29:06.31 ID:9QZ+1whnO
そういや種死にはカガリ!カガリ!と鳴くことしか能のない無能指揮官がいたっけか
128 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:03:32.66 ID:xt3V/HfJ0
再開します
129 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:05:39.02 ID:xt3V/HfJ0
タリア「なんてこと…!」
ミネルバのブリッジでは警報が鳴り響き、クルーたちが対応に追われていた。
発射寸前の陽電子砲を破壊されながらも、薬室への誘爆をまぬがれたのは不幸中の幸いだった。
とはいえ、被害は甚大である。今の攻撃で、何人の死傷者が出たことだろう。
アーサー「か、艦長…?」
副長のアーサーが、不安げにタリアを仰ぎ見る。
タリア「ちょっと待ってちょうだい。今は、相手の出方を窺うしかないわ」
頼りない副長に溜息をつきながら、タリアは大空に鎮座するフリーダムを睨みつけた。
130 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:08:11.06 ID:xt3V/HfJ0
ネオ「これは一体、どういうことですかな?ユウナ・ロマ・セイラン」
ユウナ「えっ…いや…これは…」
タケミカヅチのモニターに映し出された仮面は、静かにユウナを威圧する。
ネオ「今すぐキッチリお答えいただかないと…色々と面倒なことになりそうですが?」
ユウナ「あ…あ……あんなもの、僕は知らない!」
トダカ「ユウナ様!?」
信じられない、といった表情で、トダカはユウナに食って掛かる。
トダカ「あのストライクルージュは、獅子の紋章は、紛れもなくカガリ様のものです!!」
ユウナ「黙れ!あれは偽物だ!本物の…僕のカガリなら…!夫の僕に恥をかかせるような真似をするはずがない!」
131 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:10:21.84 ID:xt3V/HfJ0
ユウナ「早くあの偽物を討つんだよっ!!合戦用意!!」
トダカ「あ、あなたという人は……!」
尚も食い下がろうとするトダカに、ユウナは、指揮官席のアームレストに拳を叩きつけて怒鳴った。
ユウナ「でなけりゃ、オーブが地球軍にやられる!!また国を焼きたいのか!?」
不服を隠そうともしていなかった将校たちの顔色が変わる。
それを見て、ユウナはここぞとばかりに畳み掛ける。
ユウナ「僕らはオーブのためにここまで来たんだぞ!!撃てえっ!!オーブのためにぃ!!」
トダカ「くっ…!ミサイル照準!アンノウンMS!」
フェイズシフトを持つストライクルージュならば、ミサイルが命中したとしても致命傷を負うことはないだろう。
この攻撃の意図が伝わることを祈りながら、トダカは発射指示を出した。
トダカ「撃てえっ!!」
132 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:12:40.04 ID:xt3V/HfJ0
カガリ「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない!それがオーブの理念だったはず!」
カガリ「それを忘れたかっ!!」
懸命に呼びかけるカガリに、オーブ軍はミサイルの掃射で答えた。
フリーダムがストライクルージュを庇うように前に出て、ミサイルを撃ち落としていく。
こちらは撃たざるを得ない状況にある、だからカガリ様を守ってくれ。
今の攻撃に含まれていたメッセージを、キラは理解していた。
カガリ「なぜだ、オーブ軍!私の声を…!」
キラ「カガリ、もう駄目だ。残念だけど、こうなってしまったら…」
カガリ「そんな……」
キラ「カガリは下がってて。ここからは、僕ができるだけやってみるから」
133 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:14:21.58 ID:xt3V/HfJ0
オーブ艦隊の発砲を皮切りに、地球軍本隊が攻撃を開始する。
次々とウィンダムが発進していく。カオスが空に躍り出て、アビスが変形して海へ飛び込む。
ミネルバ側も、甲板にレイとルナマリアを配置して迎撃にあたらせ、ハイネのグフを出撃させる。
グフは、まるでオレンジの矢のように戦場を駆け抜ける。
電撃を纏う"スレイヤーウィップ"がしなり、押し寄せる敵機を海面へと叩き落していく。
両腕の四連装ビームガン"ドラウプニル"からばら撒かれた光弾が、次々と空に火の華を咲かせる。
期待を上回るグフの性能に、ハイネは高ぶりを抑えきれずに叫んだ。
ハイネ「ザクとは違うんだよ!ザクとはっ!!」
134 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:17:11.88 ID:xt3V/HfJ0
タリアは、獅子奮迅の勢いで敵を堕としていくグフを見て、ひとまずは胸を撫で下ろした。
しかし、一番の問題は所属不明機たちの動きだ。彼らの行動によって、ミネルバは一気に不利な状況に立たされた。
かと思えば、今は所属不明艦"アークエンジェル"はミネルバを援護し、地球軍の攻撃を押しとどめている。
タリア「まさか、本当に戦闘を止めたいだけ…?」
見れば、フリーダムは敵機を撃墜することなく、メインカメラや武装だけを破壊して戦っている。
アークエンジェルの砲撃も、命中はさせず、あくまで牽制としてのものだ。
馬鹿げている。こんなことをしても、戦場は混乱し、ただ戦闘が長引くだけだ。
これが、ヤキン・ドゥーエの英雄と呼ばれた者たちのやることなのか。
135 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:18:07.72 ID:xt3V/HfJ0
アスラン「くそっ、キラ…!」
アスランは焦っていた。
キラたちは、自分が今ミネルバの一員として戦っていることを知らない。
なんとか接触して、こんなことはやめさせなければ。
だが、それを許してくれるほど、この戦場は甘くない。
襲い来るカオスを捌きながら、ミネルバへ向かおうとするウィンダムを撃ち落とすのが精一杯だった。
オーブという第二の祖国を相手に、覚悟を決めきれないでいる今のアスランにとっては。
136 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:21:58.09 ID:xt3V/HfJ0
ハイネ「どれだけ数で勝っていようが、その程度の腕でぇっ!!」
グフが、ビームソード"テンペスト"を振り下ろし、ウィンダムを両断した直後、モニターの死角からビームが浴びせかけられた。
コクピットに響く警告音によってそれを察知したハイネは、咄嗟に回避運動をとり、ビームが放たれた方へと向き直る。
ハイネ「なっ…ガイアだと!?」
アーモリーワンで奪われた三機の情報は事前に聞いていた。
だが、陸戦用の機体であるガイアが、この海上戦で前に出てくるとは思っていなかったのだ。
艦艇の上を次から次へと飛び移りながら、舞い踊るように攻撃を仕掛けてくるガイア。
足場を潰してしまいたいが、あいにくとグフは艦艇を一撃で葬るほどの破壊力を持ち合わせてはいない。
ガイアの斬撃をすんでのところで躱しながら、ハイネは冷や汗が伝うのを感じていた。
ハイネ「チィッ!こいつ、できる…!」
137 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:23:40.86 ID:xt3V/HfJ0
足場を移動しながら、グフへと猛攻を仕掛けるガイア。
ガイアに踏みしめられた艦艇はバランスを崩すが、ステラは気にも留めない。
ステラ「ふふふっ…」
戦いの最中にあって、ステラは、先日自分を助けてくれた少年――シンのことばかりを考えていた。
抱きしめてくれた腕の温もりを、焔のように紅い瞳を思い出すと、ステラの身体は熱くなる。
また会うと約束した。その約束を果たすためには、生き延びなければならない。
だから、敵には死んでもらわなくちゃ。
グフの腕から伸びた鞭をビームサーベルで切断し、その爆発によろめいた隙に、コクピットに向けてビームライフルの狙いを定める。
ハイネ「しまった!」
ステラ「…ばいばい」
138 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:24:53.21 ID:xt3V/HfJ0
だが次の瞬間、急接近したフリーダムの振るう光の刃を受け、ガイアの腕はビームライフルごと宙を舞った。
フリーダムはそのまま身を翻し、今度はグフの両腕を切り飛ばす。
ステラ「なんなの…!?」
ハイネ「この野郎、手当たり次第かよ!」
一方的に武装を破壊して飛び去るフリーダム。
ハイネは、今まで味わったことのない屈辱に唇を噛んだ。
139 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:27:11.65 ID:xt3V/HfJ0
カオスの猛攻を凌ぎながら、アスランは苛立ちを募らせていた。
フリーダムの攻撃を受け、ハイネ機が戦えなくなった。状況は悪化する一方だ。
一刻も早く、キラを止めなくては。
こんなところで足止めを食らっている場合ではないというのに。
スティング「オラァ!!沈めッ!!」
アスラン「ええい、邪魔をするな!!」
爪先にビームサーベルを纏ったカオスの両足が、ギロチンのように振り下ろされるが、
セイバーは、それをシールドで防ぎ、押し返した。
かち上げられてバランスを崩したカオスに照準を合わせ、アムフォルタスの一撃を見舞う。
スティング「ぐあっ!?」
バックパックに直撃を受けたカオスは飛行能力を失い、海面へと叩きつけられる。
140 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:30:47.90 ID:xt3V/HfJ0
アスラン「なんとか、キラに呼びかけないと…!」
周波数を切り替えるために通信機を探る。その動作が生む一瞬の隙に、他とは違う紫檀色のウィンダムが、セイバーに迫っていた。
ネオ「悪く思うなよ、こっちも必死なんでね」
アスラン「くっ!?」
ほぼ同時にビームライフルを向け合った両者は、その引き金を引く前に、フリーダムによって攻撃の手段を奪われる。
アスラン「キラ!?今のうちに、周波数を…!」
邪魔が入らないうちにと、アスランはまた通信機を探る。
ネオ「……はははっ!」
堪えきれず、ネオは嗤った。
こちらが武装を失ったのを見て、目の前の紅い機体も、第三勢力の白い機体も完全に油断している。
最初から、囮作戦だということにも気づかずに。
141 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:31:53.85 ID:xt3V/HfJ0
ネオ「アウル!」
アウル「待ってましたぁ!」
突如として海中から姿を現したのは、アビス。
その手に握られた槍が、セイバーを刺し貫くべく、先端にビームを発生させる。
ハイネ「アスラン!」
アスラン「!」
コクピットにハイネの声が響き、ハッとしてモニターに目を向ける。
迫りくるアビスの槍。回避は間に合わない、シールドは、腕ごとフリーダムに叩き落された。
アスランは、背筋が凍るような感覚に身を震わせた。
アスラン「カガリ…!」
142 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:34:00.27 ID:xt3V/HfJ0
アスランが身を竦め目を閉じた次の瞬間、機体に衝撃が走った。
アビスの攻撃によるものだろうか。ならばなぜ、自分は生きている?
目を開けると、モニターに映し出されていたのは、アビスの槍に貫かれたオレンジのグフ。
ハイネは咄嗟に自分の機体をセイバーにぶつけ、槍の一撃からアスランを庇ったのだ。
アスラン「あ……ああ…!」
ハイネ「仲間が死ぬのは、もう御免だと言ったろ…」
それが、ハイネの最期の言葉だった。
143 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:36:22.40 ID:xt3V/HfJ0
アスラン「ハイネェェェッ!!」
アスランは、爆散し海に散っていくグフの破片を、呆然と見つめるしかできなかった。
セイバー同様、ハイネのグフも、敵に対応する手段を失っていた。
もし、その手に武器さえあったなら、こんな結果にはならなかったかもしれない。
だが、アスランはこんな風に思っていた。
ハイネを死に追いやったのは、キラじゃない。
キラを止めることばかり考えて、目の前の戦いに徹しきれなかった、自分の愚かさだ。
――アスラン、下がって!!
ニコルの声が、脳裏に蘇る。
アスラン「俺のせいで……また……!」
144 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:37:36.91 ID:xt3V/HfJ0
アウル「今度こそ、堕ちろよっ!!」
キラ「させない!」
再びセイバーに襲い掛かったアビスは、フリーダムによって推進部を破壊されて海へと沈んでいった。
フリーダムは、そのまま戦場にいるほぼ全てのMSの戦闘能力を奪い、地球軍とオーブは撤退を余儀なくされた。
それを見届けたアークエンジェルも、フリーダムと共に去っていった。
アスラン「キラ…カガリ…おまえたちは、戦いが起こるたびに、こんなことを続けるつもりなのか…?」
145 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/22(日) 00:40:28.83 ID:xt3V/HfJ0
今回はここまでです
原作とちょこちょこ変えてる部分ありますが基本的に行き当たりばったりで書いているので
ここ変えた意味なくね?って部分も多々出てくると思いますが許して
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/22(日) 00:50:10.11 ID:awGb8TGO0
乙です
ハイネはどうあっても逝くのか
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/22(日) 00:55:54.50 ID:9iW8WSICO
ハイネはどうあがいても死ぬのか……
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/22(日) 01:30:09.01 ID:EFyrrgGA0
乙
記憶消さない理由付けが自然でいいね
消しちゃうほうが連合っぽいっちゃぽいのかもだけど
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/22(日) 02:32:29.06 ID:ejZqZzyFO
記憶がないとはいえネオはあの人だしな
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/22(日) 10:19:46.79 ID:cI7B2kyg0
これハイネ死んだのアスランのせいってシンが怒るのでは?
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/22(日) 15:52:57.34 ID:SO3W7VsCo
乙
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/23(月) 09:31:48.28 ID:5kNKIauDO
乙 またしてもニコル死亡回数が加算されてしまった
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/23(月) 12:17:27.16 ID:2DwgUH3i0
ハイネが残ってたら機体受領できないからしょうがないね
154 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 20:51:14.58 ID:NlmXOd7+0
戦いを終えたミネルバは、マルマラ海にある小さな港"ポートタルキウス"に停泊していた。
激しい損傷を負ったミネルバと、そこから運び出された黒い袋を見て、タリアは何度目かの溜息をついた。
袋の中に納められているのは、先の戦いで命を落としたクルーたちだ。
これが、敵軍と戦った結果であるなら、まだ納得もできただろう。
だが、彼らを撃ったフリーダムは、今のザフト軍にとって、敵とみなしていいのかどうかも分からない存在だった。
タリア「……次に戦場で会ったら、こちらもそれなりの対処をしなければならないわね」
155 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 20:53:37.93 ID:NlmXOd7+0
ハイネの遺品を載せた車が走り去るのを、ミネルバのパイロットたちは重苦しい気持ちで見送った。
車が見えなくなってから、四人はミネルバへと向かう。
ルナマリア「こんなのってないよ…あの人、これからよろしくって…」
シン「クソッ!あいつらが変な乱入してこなけりゃ、こんなことにはならなかったのに!」
アスラン「……!」
前を歩いていたシンとルナマリアの会話に、アスランは耳を塞いでしまいたくなった。
シンの言う"あいつら"とは、フリーダムとアークエンジェルのことだ。
彼らが無謀な行いをしたのは、アスランにも否定しようのない事実だった。
ふと、レイが足を止め、ひとつの疑問を口にした。
レイ「アスランは先の大戦で、フリーダムとアークエンジェルと共に戦ったとお聞きしました」
レイ「今回の彼らの行動について、なにかご存知なのでは?」
156 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 20:56:53.18 ID:NlmXOd7+0
レイの懐疑的な視線に、思わずアスランの頭に血が上る。
本来アスランは、自分が疑いを向けられた程度で怒りを露わにする人間ではなかったが、
フリーダムとアークエンジェルの一件が、アスランから冷静さを失わせていた。
アスラン「もし知っていたら、あんなことを許すはずがないだろう!!」
突然大声を上げたアスランに、シンとルナマリアが何事かと振り返った。
ルナマリア「アスラン…?」
アスラン「……あ…」
心配そうに見つめてくるルナマリアに気づき、アスランは自分を戒める。
ハイネがいなくなった今、この部隊を纏め上げるのは、再び自分の役目になった。
だというのに、苛立ちを部下にぶつけてしまうなど、隊長失格ではないか。
アスラン「…すまない、八つ当たりだ」
レイ「いえ、お気になさらず。俺が無神経でした」
レイは怒鳴られたことを気にした様子もなく、踵を返して歩き始めた。
シンとルナマリアは戸惑っていたが、アスランに先に戻っていてくれと促され、レイに続くようにミネルバのハッチに消えた。
157 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 20:58:54.44 ID:NlmXOd7+0
アスラン「なにやってるんだ…俺は…」
またも仲間の命と引き換えに生き延びてしまった。
頭の中で、ニコルとハイネの笑顔が重なる。
アスラン「いいや違う…あのときとは…」
話をしなければならない。だが戦場では駄目だ。
軍服を脱ぎ、誰からも邪魔されないところでなければ。
158 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:01:14.74 ID:NlmXOd7+0
タリア「アークエンジェルと、接触を…?」
アスラン「はい。艦長は既にご存知かもしれませんが、私は先の大戦で、あの艦と共に戦いました」
アスランは当初、そのことを話さないつもりだった。公式記録には残されていないことだし、
なによりフリーダムがミネルバを攻撃したあとでは、余計な誤解を招く可能性があるかと思ったからだ。
ダーダネルス海峡の戦闘で、全周波通信を使わなかったこともそれが理由だった。
だが、軍に入って間もないレイですら知っているのであれば、もう隠していても仕方がないと判断したのだ。
アークエンジェルを説得したいというアスランの申し出を、タリアは許可した。
あの艦と交渉するのにアスランほど適した人物はいないと思ったし、
なによりアスランには、フェイスとしてその権限があった。
159 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:03:53.24 ID:NlmXOd7+0
アスランが去ってからしばらくして、再び艦長室のドアを叩く者がいた。
レイ「レイ・ザ・バレルです。艦長、少しよろしいでしょうか」
タリア「どうぞ」
レイ「失礼します」
入ってくると、レイは律義に敬礼してみせた。
タリア「そんなに畏まらなくていいわ。それで、なんの用?」
レイ「…少し、申し上げにくいことなのですが…」
160 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:05:24.60 ID:NlmXOd7+0
エーゲ海。小さく波が打ち寄せる海岸に、セイバーを着陸させる。
街で偶然再会したミリアリア・ハウの助力が得られなければ、こうも早くにキラたちと接触することは叶わなかっただろう。
セイバーから降りると、先に到着していたミリアリアが手を振っていた。
アスラン「キラたちは…?」
ミリアリア「もうすぐだと思うけど…あっ、あれ!」
アスラン「!」
ミリアリアの指さした岩場の影に、二人の人影が見える。
アスラン「キラ…カガリ…」
キラ「アスラン…」
161 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:07:36.56 ID:NlmXOd7+0
カガリ「アスラン、おまえ…ザフトに戻ったって、本当なのか…?」
アスラン「…ああ。その方がいいと思った。俺自身のためにも、オーブのためにも」
カガリ「そんなっ!なにがオーブの…!」
キラ「カガリ」
カガリを抑え、今度はキラがアスランへと疑問を投げかける。
キラ「あれは、君の機体?」
アスラン「…そうだ。今はミネルバの一員として戦っている」
キラ「じゃあ、この前の戦い…」
アスラン「おまえを止めようとした。だが、通じなかった」
162 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:09:15.53 ID:NlmXOd7+0
アスラン「キラ、カガリ…おまえたちは何故あんな馬鹿げたことをしたんだ?おまえたちのせいで、ミネルバからも要らぬ犠牲が出た!」
カガリ「馬鹿げたこと…!?」
吐き捨てるように言うアスランに、カガリはたまらず言い返した。
カガリ「あのときおまえたちが戦おうとしていたのは、オーブ軍なんだぞ!?私たちはそれを…」
アスラン「あそこで君が呼びかけたぐらいで、オーブが素直に撤退するとでも思ったのか!?」
カガリ「それは……」
キラ「二人とも、ちょっと落ち着いて」
163 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:12:09.98 ID:NlmXOd7+0
アスラン「キラ…」
キラ「君はどうしてプラントに戻ったの?僕たちを探していたのは何故?」
アスラン「…プラントは、議長は、今のこの状況を終わらせるために尽力している。その手伝いがしたいと思った」
アスラン「だというのに、おまえたちはただ戦況を混乱させているだけじゃないか!」
キラ「…本当に、そう?」
アスラン「なに…?」
キラから向けられた目に、アスランは既視感を覚えた。
先日、レイから向けられた、疑うような目。
164 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:14:47.19 ID:NlmXOd7+0
アスラン「どういう意味だ?おまえだって、デュランダル議長の言葉は聞いているはずだ!」
キラ「…だったら、今プラントにいる、あのラクスはなに?どうして本物の彼女が殺されそうになるの?」
アスラン「ラクスが狙われた…!?それはどういう…」
キラ「君がプラントに上がって、戦争が始まった後…僕らはコーディネイターの特殊部隊に襲撃されたんだ」
キラ「狙いはラクスだった。彼らはMSまで用意していて…だから僕は、またフリーダムに乗ったんだよ」
キラ「ラクスも、みんなも…もう誰も死なせたくなかったから」
165 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:17:34.36 ID:NlmXOd7+0
キラ「どうしてラクスが狙われなければならないのか…それがはっきりしないうちは、議長もプラントも信じられない」
アスラン「……」
確かに、デュランダル議長には動機がある。
議長にとって必要なのは、ラクス本人ではなく、その求心力。
ミーアという自分に都合のいいラクスを手にしたのなら、本物は必要ない。むしろ邪魔ですらある。
だが、誰よりも戦争の終結を望み、そのために力を尽くしている議長が、そんな――。
嫌な想像を振り払うように、アスランは言葉を紡ぐ。
アスラン「…プラントにだって、色んな想いの人間がいる。ユニウスセブンの事件を引き起こした犯人たちのような…」
キラ「この一件も、議長のあずかり知らない人たちが、勝手にやったことだって言うの?」
アスラン「口にしたくはないが…ラクスが狙われる理由はいくらだってある。例えば、失脚させられた旧ザラ派の逆恨みだって…」
166 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:19:34.46 ID:NlmXOd7+0
キラ「アスラン、君はおかしいと思わないの?ラクスが襲われたのと同時期に、偽物のラクスが出てくるなんて」
そんなことはキラに言われずとも分かっていた。ただ、信じたくなかったのだ。
アスランがザフトに復隊したのは、議長の力になりたいと思ってのことだったから。
アスラン「…その件は、艦に戻り次第、俺も調べてみる。だからもう、この前のようなことはするな」
カガリ「戻るって、ミネルバにか?じゃあ、オーブにもアークエンジェルにも、戻らないつもりなのか…?」
アスラン「ミネルバの仲間たちだって、俺を必要としてくれている。彼らを放り出すような真似はできない」
カガリ「そんな…」
泣きだしそうなカガリを見て、アスランはやりきれない気持ちになる。
本当なら今すぐにでも抱きしめてやりたかったが、今の自分にその資格は無いような気がした。
167 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:22:15.18 ID:NlmXOd7+0
キラ「じゃあ君は、これからもザフトで戦うつもりなの?この前みたいに、オーブとも?」
アスラン「俺だって、オーブとの戦いは避けたい。だが攻めてきているのは、地球軍とオーブだ」
キラ「でも…それでも僕たちは、オーブを撃たせたくないんだ」
キラ「カガリの国を、ウズミさんの残してくれた国を…」
キラ「本当は、オーブだけじゃない。戦って失ったものは、二度と戻らないから……」
アスラン「キラ、おまえっ…!」
綺麗事を言うな、という言葉が、喉まで出かかったが、アスランはそれを堪えて、懸命に言葉を探す。
今日ここに来たのは、彼らに怒りをぶつけるためではなく、想いを伝えるためだから。
168 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:26:28.89 ID:NlmXOd7+0
アスラン「キラ、カガリ…俺たちの想いは、きっと同じだ。だが、おまえたちはそれを伝えるために何をした?」
アスラン「戦いをやめろと叫んで、やめなかったときは力で捻じ伏せて…それが本当に、オーブを守ることに繋がるのか?」
カガリ「それは…」
俯くカガリをよそに、キラは真っ直ぐにアスランを見つめ、今までと違う強い口調で言った。
キラ「……それでも僕は、オーブ軍の戦いを放っておくことはできない…カガリが泣くのを、ただ見ているだけなんてできないよ!」
アスラン「キラ…!」
キラ「今みたいになるのを止められなくて、悔やんで…それでも諦めきれずに、カガリは僕の力を必要として…!」
キラ「君はそれを、無駄なことだって、馬鹿なことだって切り捨てるの!?」
アスラン「………」
分かっている。カガリが傷ついていることなど。
だが、戦争を終わらせるための最善の道だと思ってザフトに戻ったんだ。
いつでも手の届く距離で、大事な人を直接守れるなら、それで望む未来が得られるのなら、誰だってそうするだろう。
世界がそんな風に単純であったなら、こんなに苦しまなくてもよかったのに。
169 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:28:39.31 ID:NlmXOd7+0
アスラン「…時間だ。もう、ミネルバに戻らなければ…」
キラ「アスラン!まだ話は…!」
アスラン「あんなことを続けていれば、軍はおまえたちを野放しにはしない!いずれ、おまえたちを倒すための戦いだって起きてしまう!」
アスラン「ミネルバに…俺の仲間に、おまえたちを撃たせるようなことには、なってほしくない…!」
キラ「………」
カガリ「アスラン…」
アスラン「…理解はできても、納得のできないこともある…俺にだって…」
キラたちに背を向け、セイバーへと向かう。
これ以上カガリの顔を見ていたら、きっと戻れなくなってしまうから。
セイバーのコクピットに乗り込み、ハッチを閉じる。
これでいい。伝えるべきことは伝えた。
アスラン「今は違う道を歩んでいても、目指す先は同じはずなんだ……」
ザフトに復隊した自分の選択が、間違いでないように。
そしてもう二度と、戦場で彼らに会うことのないように。
そんなアスランの願いをのせて、セイバーは空へと舞い上がった。
170 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/23(月) 21:34:22.51 ID:NlmXOd7+0
今日の更新はここまでです
個人的にレイが好きなんですが今のところちょっと空気気味でどうにかしたい…
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/23(月) 21:47:45.77 ID:1bJd6hQmO
これもしアスラン脱走せずあのままザフトいたらレジェンドに乗ってたのだろうか
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/23(月) 23:35:49.55 ID:r70o4nJGo
乙ー
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/23(月) 23:52:40.94 ID:SKkHrxIsO
アニメでもレイは空気だったし
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/24(火) 00:31:12.21 ID:E3zq6TUu0
アニメでジエッジのシンとレイの会話だけでもあればなぁ……
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/24(火) 01:07:48.52 ID:+Z6SbYO40
乙ー
アニメだとモノローグでの心情吐露が徹底して排されてるからSSで文字にすると新鮮でいいね
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/24(火) 09:51:18.33 ID:+7Duy6Oh0
そういやルナマリアの尾行無かったな
177 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:01:48.17 ID:iButzoxC0
時間は、ディオキアでの休暇中、シンとルナマリアがステラという少女に出会った日まで遡る。
その日レイは、デュランダルに招かれ、宿舎内のVIPルームを訪れていた。
レイ「レイ・ザ・バレル、出頭いたしました」
デュランダル「入ってくれ」
部屋の主の了承を得て、木製のドアを押し開く。
出迎えたデュランダルの父親めいた表情を見て、レイの顔も自然と綻んだ。
178 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:04:07.22 ID:iButzoxC0
デュランダル「やあ、レイ。昨日はゆっくり話す時間もなくて、すまなかったね。さあ座ってくれ、なにか飲み物を用意しよう」
レイ「はい、ありがとうございます」
VIP専用の部屋だけあって、室内はエレガントな調度品で整えられている。
部屋を照らすシャンデリア。風格漂うアンティークのソファー。壁にかけられた絵画。宝石で縁取られた鏡。
だがレイの心になにより安らぎを与えたのは、室内装飾の美しさよりも、デュランダルが淹れた一杯のコーヒーだった。
上品な香り、ほどよい酸味と苦味が、戦いに疲れたレイの心に染み渡っていく。
レイ「とても美味しいです、ギル」
デュランダル「それはよかった」
こうして二人でコーヒーを飲みながら、とりとめのない話をする。
レイにとっては、この上なく幸せで大切な時間だった。
179 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:06:10.95 ID:iButzoxC0
デュランダル「ミネルバの活躍は報告で聞いているが、それだけでは味気ないだろう?レイの口から、色々と聞かせてほしい」
デュランダル「そうだな…例えば、アスラン。彼が加わったことは、ミネルバにとって良い影響を与えてくれただろうか?」
レイ「ええ。不器用な方ではありますが、不器用なりに部下とも向き合って、信頼関係を築いています」
レイ「アカデミーでは教官と衝突してばかりいたシンも、アスランには心を開いているようです」
レイ「私も、彼の篤実さは嫌いではありません」
デュランダル「そうか…ならばいいのだが」
デュランダルの常態とも言うべき微笑が、僅かに陰る。
そして、その変化に気づかないレイではなかった。
レイ「なにか、気になることでも?」
180 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:08:41.34 ID:iButzoxC0
デュランダル「…オーブの姫君がフリーダムによって攫われたことは、君も聞いているだろう?」
レイ「はい」
デュランダル「その後、彼らに目立った動きはない。このまま大人しくしてくれていれば、それでいいのだがね」
デュランダル「もし彼らが戦場に出てきたら…アスランは、一体どちらに付くのかな?」
レイ「アスランが、裏切ると…?」
デュランダル「想像もしていなかった、という顔だね。だが、彼は一度ザフトを裏切り、アークエンジェルに付いたこともある」
デュランダル「全く可能性が無いとは、言えないのではないかな?」
数秒の沈黙があった。その数秒の間に、レイは決断した。
彼にしては、少しばかり長い逡巡であった。
レイ「…であれば、アスランに監視をつけるというのは?」
181 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:10:27.49 ID:iButzoxC0
デュランダル「ふむ、監視…か」
レイ「そして、その役割には自分が適任であると考えます」
シンとルナマリアには任せられない、とレイは思った。能力的な問題ではなく、アスランの監視を続けるうちに、
知らなくていいことまで知ってしまう可能性があるからだ。例えば、今プラントにいるラクスの正体であるとか。
デュランダル「だが、君にそんな真似をさせてしまうのは、心苦しくもあるな」
レイ「少しでもギルの不安を取り除くことができるのなら、やらせてください。俺は、あなたの力になりたくて軍に入ったのですから」
182 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:11:43.96 ID:iButzoxC0
セイバーが飛び、キラたちが去ったあと、レイは撮影と録音のための機材を回収し、ここまで乗ってきた小型のジャイロへと向かう。
レイ「…ハァ」
思わず、溜息が漏れた。仲間を監視するという行為には、少なからず罪悪感が伴うものだ。
だが、それでも実行に移したのは正解だった。
彼らの会話を聞いていれば、アスランがギルに不信感を抱いたことは想像に難くない。
もしアークエンジェルに寝返るような素振りを見せれば、撮影した写真を証拠として処断を下すこともできる。
レイ「願わくば、これからも仲間でありたいと思うが…」
ギルに不利益をもたらすようなことがあるなら、そのときは自分が彼を撃たねばならない。
来たるべき、平和な世界のために。
183 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:12:59.25 ID:iButzoxC0
地球軍空母"ジョン・ポール・ジョーンズ"とオーブ艦隊は、ダーダネルスでの戦いのあと、
エーゲ海の地球連合軍基地に着艦し、船体とMSの補修に追われていた。
ネオ「うーん、やられたねえ」
研究員「幸い、アビスとガイアの損傷は軽微です。カオスも、次の戦いまでにはどうにか…」
ネオ「いや、やられたってのは、ロドニアのラボの件さ」
ネオ「閉鎖に失敗した挙句、事後処理の前にザフトに暴かれてしまうとはね」
研究所「スエズも慌てているようですが…しかし私たちにできることはありませんよ」
ネオ「ただ、無関係とも言えまい?ロドニアのラボは、スティングたちにとっては……」
研究員「彼らの耳には入らないように、他の者たちには言ってあります」
ネオ「助かる。特にアウルには聞かせたくない話だ」
184 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:14:30.39 ID:iButzoxC0
艦内の待機室でスティングとアウルがボードゲームに興じる横で、
ステラはいつものように、ボトルアクアリウムの中を泳ぐ魚を眺めていた。
ステラ「ろどにあ…の…らぼ…」
ふとステラが呟いた言葉に、スティングとアウルが手を止め、振り返る。
ステラ「って、なに?」
こてん、と首を傾げたステラに、スティングは呆れて苦笑する。
スティング「おいおい、マジかよ…」
アウル「ロドニアのラボって、僕たちが前にいたとこじゃんか」
ステラ「そうなんだ…」
スティング「そうなんだ…って、おまえも一緒だっただろうが。それで、ラボがどうしたって?」
185 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:15:53.82 ID:iButzoxC0
ステラ「さっき、ネオのところに行こうとして、話してるのが聞こえて…ザフトがラボにって…」
スティング「なっ…!」
アウル「なんだって!?」
スティングは訝しんだ。ザフトが、つまりは敵が関わっているということは、どう考えても良い話ではない。
そして、その件について自分たちがなにも聞かされていないというのは、つまり――。
そんなスティングの思索は、アウルの怒声によって遮られた。
アウル「ステラ!ザフトがラボにって、どういうことだよ!?」
ステラ「あわ、わ…」
血相を変えて詰め寄るアウルに、ステラはすっかり怯えてしまっている。
186 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:17:49.04 ID:iButzoxC0
スティング「アウル!落ち着け!」
アウル「スティング!なんでおまえは落ち着いていられるんだよ!?ラボには"母さん"が…!」
スティングに掴みかかっていた腕から力が抜け、アウルは糸の切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
強制的に恐怖を思い起こさせ、エクステンデッドを抑制するための"ブロックワード"を、アウルは自ら口にしてしまったのだ。
アウル「かあ、さん…が…!…あ…あ…!」
スティング「この馬鹿!ああ、くそっ!しっかりしやがれ!」
アウル「母さんがぁっ!!"死んじゃう"じゃないかぁっ!!」
ステラ「!」
――死。
ステラにとっては、何よりも恐ろしい言葉だった。
だが、ディオキアの海で、ステラはその恐怖から解放された。
そのときのことを、ステラは片時も忘れたことはない。
187 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:18:40.66 ID:iButzoxC0
肩を震わせて、子供のように泣きじゃくるアウル。
ステラは、そんなアウルの髪を撫で、そっと肩に抱き寄せた。
ステラ「大丈夫…死なない…守る…」
アウル「ま、もる…?」
ステラ「うん…守る」
守るということは、死なないということだ。あたたかくて、やさしい言葉。
シンが自分にしてくれたように、頭を撫でながら、その言葉を言い聞かせる。
ステラ「守る…だから、大丈夫…」
アウル「かあ…さん…」
やがて、アウルが正気を取り戻し、顔を真っ赤にして振りほどくまで、ステラはずっとそうしていた。
188 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:21:25.67 ID:iButzoxC0
スティング「まったく、どうなることかと思ったぜ」
アウル「…うっせ」
スティング「ラボの件は、俺がネオに聞いてみる。おまえはステラと一緒に、部屋で大人しくしてろ」
アウル「……」
スティング「ステラも、いいな?」
ステラ「うん…」
スティングは待機室を出て、ネオのいるであろう指令室へと向かう。
その途中で、研究員や兵士たちとすれ違う。彼らから向けられる目が、スティングは大嫌いだった。
エクステンデッドよりも遥かに脆弱な連中が、何故そんな憐れむような目で俺たちを見るのだ。
だが今は、そんなことを気にしている場合ではないことも、スティングは分かっていた。
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/26(木) 21:21:37.80 ID:fNRr88ox0
これは…スティングやアウルにも救済入るかな?
190 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:22:41.43 ID:iButzoxC0
ネオ「うーん、おまえたちには聞かせるつもりはなかったんだがなあ…」
スティング「教えてくれ、ネオ。あのラボに、なにがあったんだ?」
ネオ「ふむ……ま、聞かれてしまったのなら仕方ないか」
研究員「大佐!」
余計なことを言うな、と目で訴えてくる研究員を無視し、ネオは続けた。
ネオ「ロドニアのラボは、ザフトの襲撃を受けて壊滅した。以上」
スティング「……そうか」
ネオの言葉が本当かどうかは、スティングには分からなかった。
ただ、事態がもう手遅れで、自分たちの出る幕はないということだけは、その言葉の端から読み取ることができた。
スティング「わかった、アウルたちには俺から上手く言っておく。邪魔したな」
191 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:23:52.77 ID:iButzoxC0
スティングが指令室から出ていくのを確認し、研究員が口を開いた。
研究員「大佐が本当のことを話してしまうのではないかと思って、肝を冷やしましたよ」
ネオ「ま、あいつも俺が嘘をついたってことは、なんとなく気づいているだろうけどね」
研究員「えっ…?」
ネオ「上手く言っておくってのは、そういうことだろ?」
研究員「もしそうなら…ああも物分かりがいいと、かえって不安になりますが」
ネオ「軍人たるもの、ときには納得のいかないことも飲み込まなければならない…」
ネオ「あいつも、兵器から兵士になりつつあるのさ」
192 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/04/26(木) 21:25:12.18 ID:iButzoxC0
今回の更新はここまでです
前回アスランが尾行されている描写をしなかったのは、誰に尾行させるか迷っていたからでした
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/26(木) 22:46:17.97 ID:4ONK/axgo
乙ー
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/26(木) 22:46:40.82 ID:khtl71Ro0
乙
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/26(木) 22:52:23.77 ID:Kl1JypX7o
おつ
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/26(木) 23:01:04.08 ID:drGzCz7To
乙
安定感ある
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/27(金) 09:56:20.94 ID:ZkWYSk/L0
乙です
198 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 19:38:33.60 ID:svCzTigi0
ジョン・ポール・ジョンズのブリッジで、ネオはオーブ艦隊とミネルバの戦いを眺めていた。
ネオ「まったく、オーブ軍は本当によく働いてくれるなあ」
副官「我々地球軍に恭順の意を示すことが、国を守ることに繋がると考えているのでしょう」
ジブラルタルへ向かうミネルバをクレタ沖でオーブ軍に迎え撃たせ、自分たちはミネルバの索敵範囲外からチャンスを窺う。
我ながら卑劣な作戦だ、とネオは自嘲した。
だが、ドライでなければ"ファントムペイン"の司令官は務まらないのだ。
199 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 19:41:16.42 ID:svCzTigi0
インパルスはブラストシルエットで出撃し、その大火力で敵機を撃滅していく。
ハイネを欠いた今、ブラストの大火力でもなければ、敵の数に攻撃が追いつかなかった。
フォース以外のシルエットには飛行能力は無いが、ホバリングによって海上を移動することは可能だ。
アスラン「エネルギー残量には気をつけろよ、シン!オーブ軍の後ろには、例の地球軍空母が控えているはずだ!」
シン「オーブを盾にするような真似を…!どこまで卑劣なんだよ、地球軍は!!」
200 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 19:43:34.28 ID:svCzTigi0
思うようにいかない戦況に、ユウナは苛立ちを抑えきれずに喚いた。
ユウナ「んもう!ムラサメ隊はなにをしてるの!?」
トダカ「現在ババ一尉が隊を率いて、ミネルバに向かっています!」
うんざりしたように怒鳴るトダカや、反抗的な目で自分を見ている将校たちに、ユウナは舌打ちをした。
こいつらは、ダーダネルスの戦闘でカガリを撃てと命じたことを根に持っているのだ。
なんの力も持たない小娘が崇拝されて、オーブ再建の立役者たるセイラン家の僕が蔑ろにされるなんて、絶対におかしい。
ユウナ「艦の一隻ぐらい、さっさと堕としてみせろよ!この作戦が失敗したら、おまえのせいだからな!」
トダカ「……」
201 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 19:44:19.60 ID:svCzTigi0
ムラサメとM1アストレイの大群を相手に、インパルスとセイバーは手一杯の状態だった。
ミネルバの甲板で迎撃に当たる白と赤のザクの死角を狙い、ババ率いる別動隊のムラサメが突撃をかける。
ババ「小隊各機、俺に続けぇッ!!」
矢の如く加速するムラサメ。
一瞬遅れて反応したザクの攻撃は、それでもムラサメを一機、また一機と撃ち堕としていく。
だが、ババは振り返らない。身体を打ちひしぐGに耐えながら、ムラサメの加速をそのままにMSへと変形させる。
ビームライフルの銃口が、ミネルバのブリッジを捉えた。
ババ「やれる!」
トリガーを引こうとした刹那、ビームライフルの銃身が火を噴き上げた。
ババ「なに!?」
202 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 19:45:37.28 ID:svCzTigi0
唖然とするババの前に立ち塞がったのは、フリーダム。
オーブの守護天使として、伝説となった機体。
ババ「何故!?何故フリーダムが我らを撃つ!?」
ババを焦らせたのは、フリーダムの存在だけではない。
フリーダムが現れたということは、すなわち――。
カガリ「オーブ軍!ただちに軍を引け!」
ババはまたも、仕えるべき元首と仰ぐ少女に銃を向けなければならなかった。
203 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 19:49:03.90 ID:svCzTigi0
ネオ「アークエンジェルまで出てきたのなら、オーブだけにやらせておくわけにもいかんな…」
ネオ「カオス、アビス発進させろ!ガイアはフリーダムが来たときのために、迎撃準備しておけ!」
アークエンジェルの乱入を機に、地球軍も本格的に戦力を動かした。
状況は、まるでダーダネルスの戦いを再現したかのようだった。
204 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 19:50:14.58 ID:svCzTigi0
前回とは違い、今度は自分たちを救ってみせたフリーダムに、ミネルバのクルーたちは困惑するしかなかった。
アーサー「艦長…?」
タリア「なるほどね…どうやら彼らは、本当に戦闘を止めたいだけということのようだわ」
タリア「ただ、少なくともあれは味方ではない。本艦は前回、あれによって甚大な被害をこうむった!敵艦と認識して対応!」
205 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 19:52:15.63 ID:svCzTigi0
スティング「てめぇは俺がァッ!!」
前回の借りを返すべく、カオスがセイバーへと迫る。
スティング「この前のようには、やらせねえ!」
カオスのバックパックから、二機の機動兵装ポッドが分離する。
高出力のスラスターを内蔵して、大気圏内でのオールレンジ攻撃を可能とした兵器だ。
ポッドから発射されたビームの矢が、ミサイルの嵐が、セイバーの加速を阻む。
アスラン「チィッ!」
スティング「これでぇぇッ!!」
あの紅い機体は、この脚で真っ二つにしなければ気が済まない。
爪先に凶暴な光の刃をひらめかせ、カオスはセイバーに突進する。
206 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 19:53:44.73 ID:svCzTigi0
アスラン「ええいっ!」
咄嗟に、シールドをブーメランのように投げつけてカオスの体勢を崩し、
そのわずかな隙に、ポッドの射線から抜け出て間合いを詰める。
スティング「馬鹿な!?」
アスラン「終わらせる!」
カオスが反撃するよりも速く、セイバーの手に握られた光剣が一瞬の軌跡を描く。
推進部と下半身を切り裂かれたカオスは、コントロールを失ったポッドと共に海面へと落下していった。
アスラン「くそっ…何故こんなことになるんだ…!」
アークエンジェルを敵艦として認識せよとの指示は、当然アスランにも聞こえていた。
だが、ショックと受けている暇など無かった。カオスを退けようとも次から次へと敵機は襲ってくる。
戦いに徹することができなければ、今度はハイネのみならず、ミネルバが沈むのだ。
207 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 19:57:39.03 ID:svCzTigi0
カガリ「オーブ軍!今すぐ攻撃をやめろ!ミネルバを、敵でないものを撃ってはならない!」
懸命に訴え続けるカガリのストライクルージュに、一機のムラサメが肉薄した。
その手に握られたビームライフルの銃口が、ルージュを捉える。
こんな戦いが起きているのは、地球連合との条約に調印した自分のせいだ。
ならばいっそ彼らに討たれて、死んで詫びるべきなのではないか。
そんな思いが一瞬、カガリの頭の中を支配する。
208 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 20:00:21.16 ID:svCzTigi0
だが、ビームに貫かれて四散したのは、棒立ちになったルージュではなく、ムラサメの方だった。
カガリ「あ……!」
インパルスの精密射撃が、的確にムラサメだけを堕としたのだ。
ルージュのコクピットに、怒声が響く。
シン「なにを戦場で呆けているんだよ!この馬鹿っ!」
カガリ「お、おまえ…!?」
シン「さっさと自分のいるべきところに帰れ!でなきゃ、次はあんたを撃つ!」
カガリ「私の、いるべきところ……?」
答えは返ってこない。
インパルスは再び戦場に躍り込んでいく。
だが、それで十分だった。
カガリ「逃げるな…生きる方が、戦いだ!」
かつてアスランに言った言葉を、今度は自分に言い聞かせて、カガリはアークエンジェルへと帰還した。
209 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 20:02:44.87 ID:svCzTigi0
全周波で発信されていたシンの声は、当然地球軍の機体にも届いていた。
そして、それに反応したMSが一機。ジョン・ポール・ジョーンズの甲板で、警戒に当たっていたガイアだ。
ステラ「シン…?」
突き動かされるように、ガイアは駆けた。
ここが戦場であることなど、ステラには関係なかった。
シンに会いたい。
もう一度抱きしめてほしい。
その想いだけだった。
210 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 20:04:28.31 ID:svCzTigi0
シン「いなくなれって言ってるだろッ!!あんたもッ!!」
インパルスのブラストシルエットから繰り出される、ありったけのミサイル掃射。
フリーダムはそれを、頭部の機関砲と右手のビームサーベルで打ち払いながら間合いを詰める。
破壊されたミサイルの爆発が、インパルスの視界を埋め尽くす。
シン「くそっ、これじゃあ…!」
煙の中からフリーダムの右腕が伸びて、その手に握られたビームサーベルがインパルスの左腕を切り飛ばす。
衝撃がコクピットを揺さぶり、シンの身体の奥で、なにかが弾けた。
シン「いつもそうやって…やれると思うなァァッ!!」
211 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 20:05:41.57 ID:svCzTigi0
キラ「くっ!?」
凄まじい殺気に、キラは咄嗟に機体を反らした。
直後、インパルスのジャベリンが、恐ろしい速さでフリーダムの右腕を背中の翼ごと刺し貫いた。
あとコンマ一秒でも反応が遅れていたら、ジャベリンはコクピットを貫通していただろう。
キラ「こんな…!?」
腰部のクスィフィアスレール砲を撃ちこみ、インパルスを吹き飛ばす。
反撃を警戒しつつ、迅速にアークエンジェルへと後退する。
これ以上あの相手と戦い続ければ、どちらか、或いは双方が死ぬ。そう思った。
アスランがザフトにいる今、カガリのためにも、ここで堕とされるわけにはいかなかった。
212 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 20:07:46.94 ID:svCzTigi0
体勢を立て直したインパルスは、後退していくフリーダムを追うことはせず、ミネルバの防衛に徹する。
いかにフリーダムといえど、右腕と片翼を串刺しにされ、機体バランスを欠いた状態では、戦場を支配することなどできようもない。
考えるべきは、徐々にミネルバを包囲しつつあるオーブ艦隊への対処だ。
シン「ミネルバ!チェストフライヤーと、ソードシルエットを!」
素早く換装を終えたインパルスの胸部が、シンの瞳に宿る焔を映したように、紅く染め上がる。
シン「全艦叩っ斬る!!」
ソードインパルスの対艦刀が容赦なく振り下ろされ、瞬く間にオーブ艦の一隻が沈む。
二隻、三隻、四隻、凄まじい勢いで敵艦を撃滅していくインパルスが次に狙い定めるのは、オーブの旗艦タケミカヅチ。
その眼前に、一機の黒いMSが躍り出た。その機体、ガイアが一切の武装を解除して、無防備にコクピットハッチを開いたのだから、
シンが混乱して、インパルスが動きを止めるのは仕方のないことだった。
ガイアのパイロットが開いたハッチの上に立つのを見て、カメラの倍率を切り替える。
桃色のノーマルスーツを着たパイロットの姿が、モニターに大きく映し出された。
シン「嘘…だろ…なんで、君がっ!?」
213 :
◆kiXe9QcYqE
[saga]:2018/05/01(火) 20:09:41.98 ID:svCzTigi0
今回はここまでとなります
ダーダネルスの戦闘でシンが空気すぎたけど今回は活躍させられたかな…
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/03(木) 14:13:43.32 ID:VkJr35Tg0
乙
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/07(月) 09:38:40.00 ID:M5AnDWVDO
乙 やっばりカオスガンダムは見せ場0だった
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