アスラン「頼りにしているぞ、シン」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:19:48.11 ID:/n5bZo6G0
アスラン「戦争はヒーローごっこじゃない!」

アスランの平手がシンの頬を打ち、その音が格納庫に響き渡る。
帰還したレイとルナマリア、メカニックたちがしんと静まり返った。

シン「…殴りたいのなら構いやしませんけどね!俺は間違ったことはしてませんよ!」

アスランを睨みつけ、シンは言い放つ。

シン「あそこの人たちだって、あれで助かったんだ!」

シンの言葉に、アスランは二度目の平手打ちで答えた。

アスラン「自分勝手な判断をするな!力を持つ者なら、その力を自覚しろ!」

シン「くっ…」

シンには、アスランの叱責の意味が理解できなかった。
自分は非道な連合の兵士たちを討ち、捕らわれていた人々を解放しただけだ。間違ったことはしていない。
このときはそう思い、アスランへの反感を強めただけだった。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1523459987
2 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:23:18.66 ID:/n5bZo6G0
しばらくしてミネルバは、ガルナハン攻略のためにマハムール基地への入港を果たし、艦内にアナウンスが流れる。

<入港完了。各員、別命あるまで待機。ザラ隊長はブリッジへ>

アスランたちがブリーフィングを行っている間、他のクルーたちは思い思いに過ごしていた。
仏頂面を続けているシンを見て、レイとルナマリアは苦笑する。

ルナマリア「まあ、シンの気持ちもわからなくはないけどね。急に現れて、フェイスだって言われて」

シン「……」

ルナマリア「おまけに二度もぶたれたし」

シン「別に、殴られたことを根に持ってるわけじゃない」

ルナマリア「ふーん?」

シン「俺は間違ったことはしてないのに、あいつが分からず屋だから!」
3 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:29:27.55 ID:/n5bZo6G0
レイ「…しかし先の作戦、おまえに落ち度が無かったわけじゃない」

シン「え…?」

レイ「独断専行によるインパルスの孤立、そして事情があったとはいえ、自分の判断だけで敵基地を攻撃したのは問題だ」

シン「じゃあレイは、捕まってた人たちを見殺しにすればよかったっていうのかよ!?」

レイ「そうは言っていない。だが、俺たちは戦争をしているんだ。もし敵基地に罠でも仕掛けてあったらどうなっていた?」

シン「それは…」

レイ「おまえとインパルスが戦えなくなれば、ミネルバにとっては致命傷だ。総崩れになる可能性もある」

レイ「怒りに身を任せて冷静さを失えば、そのツケを払うのは自分ひとりではないかもしれない」

シン「……」

レイ「今のは軍人としての忠告だ。おまえが死んだら、友として俺は悲しい」

シン「レイ…」

レイ「だから、あまり無茶はするな。ザラ隊長の言うことにも、少しは耳を傾けてやれ」

シン「……わかったよ」
4 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:32:44.23 ID:/n5bZo6G0
シン「ごめん、ちょっと風に当たってくる」

シンが席を外し、残されたレイとルナマリアは再び苦笑する。

ルナマリア「レイの言うことは素直に聞くのよね、シンのやつ」

レイ「そういうわけじゃないさ。元々根は素直なやつなんだ、シンは」

ルナマリア「私には反骨精神の塊みたいに見えるけど。アカデミーのときもよく教官と衝突してたし」

レイ「自分の気持ちにも素直であるが故に、納得のいかないことには黙っていられないんだろう」

ルナマリア「なるほどねー」

レイ「隊長も隊長で不器用な方だ。あれでは余計に反発されるだけだというのに…」

ルナマリア「シンと隊長って、案外似たもの同士だったり」

レイ「そうかもしれないな」

レイ「お互いに頭が冷えたら、もう一度よく話をしてみてほしいものだが」
5 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:36:41.37 ID:/n5bZo6G0
甲板に出たシンは、沈んでいく陽を眺めながらぼんやりと考えていた。
怒りで血が上った頭は、レイの言葉と甲板に吹き抜ける涼やかな風が冷やしてくれた。

しかし、どうしても心のどこかでアスランに対する苛立ちが燻ぶっていた。
彼がオーブにいたこと、今更になってザフトに出戻ったこと、そんな彼に指図されること、頭ごなしに否定されて殴られたこと。
理由を挙げればキリがない。

この先自分は上手くやっていけるのだろうかと、大きな溜息をついたのと同時に、背後のドアが開いた。
振り返り、甲板に入ってきた人物をみとめた途端、シンの眉間にシワが寄った。
6 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:38:30.58 ID:/n5bZo6G0
アスラン「人の顔を見るなり、そんな顔をするなよ」

怒るどころか笑みすら浮かべてみせたアスランに、シンはどんな態度をとればいいのか図りかねていた。
てっきりまたお説教のひとつでもされるものだと思っていたから、拍子抜けしてしまったのだ。

シン「いいんですか?フェイスがこんなところでサボってて」

アスラン「ああ、ブリーフィングが終わったんでな」

つい挑発的な物言いになってしまうが、アスランは気にした様子もない。
7 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:40:39.31 ID:/n5bZo6G0
シン「……」

アスラン「暇なんだ、少し話相手になってくれないか?」

シン「それなら、ルナのところに行ってやれば喜びますよ」

アスラン「そういうなよ。君と話がしたいんだ」

どういう風の吹きまわしだ、とも思ったが、結局シンはアスランの申し出を受けることにした。
断って出ていくのも、子供が拗ねているようでみっともなく思えたし、アスランの態度がなんとなく気になったからだ。

シン「まあ、いいですけど」

アスラン「ありがとう」

シン「で、なにを話したいっていうんです?」
8 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:42:35.38 ID:/n5bZo6G0
アスラン「…単刀直入に聞くが、君は俺のことが気に入らないか?」

アスランは、シンの瞳を真っ直ぐに見つめて問いかけた。

シン「は?…はあ、気に入らないですが」

あまりにストレートにぶつけられた問いに一瞬面食らったものの、シンもまたアスランの瞳を見返して答えた。

アスラン「そうか…それは何故なんだ?」

シン「そんなの、この間までオーブでアスハの護衛なんかやってた人が急に戻ってきて、フェイスだ、隊長だなんていって…」

シン「あなたのやってることはめちゃくちゃですよ!」
9 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:45:33.16 ID:/n5bZo6G0
アスラン「…確かにな」

シン「え?」

あっさりと認めたアスランに、シンは戸惑った。

アスラン「確かに、俺のやっていることは、君から見ればめちゃくちゃだろう」

アスラン「しかし、だから俺の言うことは聞けないと、上官として認められないと、君はそういうのか?」

シン「それは…」

先ほどのレイの言葉が頭をよぎる。隊長の言うことにも耳を傾けてやれ、と。

シン「そこまで言うつもりは、ないですけど…」
10 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:47:44.43 ID:/n5bZo6G0
アスラン「なら、先のインド洋での戦闘のことはどう思ってる?」

シン「……」

アスラン「今もまだ、間違いじゃないと思うか?」

シン「さっきまで、レイたちと話してたんです、そのこと」

シン「俺が自分勝手に動いて無茶したら、そのツケを払うのは自分だけじゃないかもしれないって言われて…。少しは反省しましたけど」

アスラン「それだけじゃない。彼らにもう抵抗する力は残されていなかった。基地ごと殲滅する必要はなかったはずだ」

シン「でも…あのとき、捕まった人たちが撃ち殺されてるの見て、連合の奴らが許せなくて…」

アスラン「そんな光景を目にすれば、誰でも君と同じことを思うさ、多分」

アスラン「だが、俺たち軍人が自分の理屈と正義だけで力を振るってしまったら、それはただの破壊者だ」

シン「……」
11 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:49:47.37 ID:/n5bZo6G0
アスラン「己の無力さを呪い、力を求めるのはいい。だが、力を手にしたそのときから、今度は自分が誰かを泣かせる者となる」

アスラン「それだけはどうか、忘れないでくれ」

シン「…はい」

今度こそ納得した様子のシンを見て、アスランは微笑みながら言った。

アスラン「それさえ忘れなければ、君は優秀なパイロットだ」

アスラン「頼りにしているぞ、シン。君がミネルバのエースだ」

シン「え…!?」

アスラン「話は以上だ。では、またな」

アスランが甲板から出ていくのを、シンは茫然としたまま見送った。
予想もしていなかった賛辞に、なんだかくすぐったいような感覚を覚える。
ミネルバのエース。悪くない響きだ。
シンの中に渦巻いていたどうしようもない苛立ちは、いつの間にか消え失せていた。
12 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/12(木) 00:54:13.02 ID:/n5bZo6G0
今回はここまでになります。
アスランとシンがもう少し親交を深めていたらというもしもの話です。
全然書き溜めてないので更新は不定期です。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 00:55:00.61 ID:4/V7Zk3oO
おつおつ
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 01:24:41.77 ID:IScWtifmO
これはまた珍しい
種タヒSSって大体シンTUEEEEEEとかになるし
こういうコミュニケーションを取っていく系はあまりないから期待
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 01:41:40.44 ID:k0yGDrnHo
乙ー こういうの見たかったんだよね
108.35 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)