【ゆるキャン△】リン「なでしことなら、」

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1 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/11(水) 21:06:04.80 ID:SizuxmwLo

アニメ最終話後の話です。
原作のネタバレを含みます。
苦手な人はシュラフへGO


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1523448364
2 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/11(水) 21:11:19.27 ID:SizuxmwLo
1.―――――――――――――――――――

特に理由があるわけじゃない。
秋に自転車で行った本栖湖のキャンプ場に、今は原付で向かっているのは。

国道300号線を道なりに進む。
風を切る音、エンジンの音、お互いが邪魔をせず調和してBGMのようになっている。

緑の木々が道中を彩り、アスファルトの灰色がそこに切り込んでいく。ところどころに差し込まれるのは淡い桜色。

風に煽られて、桜の花弁が宙に舞う。
ヘルメット越しに、一枚、二枚、三枚、次々と通り過ぎていく。
春を後ろにして山道を走り続けた。
3 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/11(水) 21:16:39.90 ID:SizuxmwLo
特に理由があるわけじゃない。
こんなにも心が澄んでいるのは。
もしかしたら、よく晴れていて富士山が綺麗に見えるからかもしれない。

以前自転車で来たときは息を切らせながら登ったものだ。
しかし今回は原付。坂道も余裕余裕。
――と、思ったけど。

――案外スピード出ないな。

キャンプ道具のせいか、エンジンの限界か、坂道を登る愛車は若干不機嫌だ。

「おい、もっと頑張れ」

話しかけてみるが当然返事はない。
車だったらもっと楽に登れるだろうし、空調も効いてるし、車中泊も出来るだろうし。
いずれは車の免許も取るかも。

「そしたらお前はお役御免だな」

気まぐれに愛車を優しく撫でてみる。

「冗談だよ」

返事は聞こえなかった。

「ま、これからも頼むよ。相棒」

スロットルを回すと、機嫌を取り戻したようなエンジン音を聞かせてくれた。
4 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/11(水) 21:20:52.65 ID:SizuxmwLo
橋を渡り、道を進んで行く。

トンネルの入り口が近づき、ヘッドライトを点灯させる。
柔らかい闇の中を進んでいく。
原付ならあっという間に出口だ。

暗いところから明るいところへ、目に光が飛び込んでくる。
キャンプ場までもうすぐだ。

国道300号線をそのまま進み、富士吉田、富士宮、本栖湖と書かれた道路標識を右折して県道709号線に入る。

曲がり角の先、見晴らしのいい場所で原付を一旦停め、本栖湖越しの富士山を眺めた。

――今日はよく見えるな。

スマホに目をやり、時刻を確認する。
 
――まだ時間あるな。

道をさらに進み、右手の公衆トイレに目をやってみるが、ベンチには誰もいなかった。
寝ている少女も、風邪をひきそうな少女もいなかった。
5 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/11(水) 21:27:27.35 ID:SizuxmwLo
目的地にたどり着いた私は受付がある建物へ向かい、入り口の近くに原付を停めた。

中に入ってキャンプの手続きをしよう。

「明日まで一泊お願いします」

「ではここに連絡先と名前を書いてください」

名前を書き終えると管理人さんが注意事項を述べる。

「チェックアウトは明日朝10時。薪は林の中のものを自由に使ってください」

私は「はい」と軽く会釈して、受付を後にする。
管理人さんとのいつも通りのやり取りだ。
6 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/11(水) 21:33:24.33 ID:SizuxmwLo
再びスマホを取り出し、なでしこへメッセージを送る。

[今日、バイト?]

[ううん]
[実はソロキャンしてるんだ!]

と、返信が返ってきた。
ソロキャン、単独でのキャンプ。

[え、そうなんだ]

[リンちゃんは?]

問われ、私は返信を送る。

[私もソロ]
[今キャンプ場についたとこ]
[どこのキャンプ場?]

尋ねてみると、しばらくのち

[それは秘密です!( >v< )]

との回答に

[なんでだよ]

と突っ込む。

[ねぇ、当てっこしない? キャンプ場の写真を送り合って!]

[いいよ]

[やったー!!( *>v<* )]

スマホをしまい込み、写真を撮るスポットへ向かった。
7 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/11(水) 21:44:22.94 ID:SizuxmwLo
特に理由があるわけじゃない。
テントの設営場所を湖のそば、湖畔サイトにするのは。
湖畔が好きというのはあるけれど。

波の穏やかな水面、岸で逆さになっているボート、湖を映したような青空、広がる山脈、そしてひときわ目立つ富士山。

でも、それより目を引くものがある。見たことがあるテント、馴染みのある後ろ姿、なでしこを見つけた。

理由を、見つけた。
8 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/11(水) 22:00:09.01 ID:SizuxmwLo
スマホのカメラを向け、なでしこと湖畔と富士山を写真に収める。
写真の中の彼女はスマホを両手で掲げ、富士山を撮っているようだった。

[私はココ!!( >v< )]

というメッセージとともに、私が見ているのと同じ富士山の写真が送られてきた。

今日の富士山に雲はかかっていない。

[今日は見えるね]

私が撮った写真を送り、そうメッセージを添えた。

受信したであろう彼女は私に気づき、こちらに振り返る。
私は軽く手を振り、それに応えるように彼女が駆け寄って来た。

「リンちゃーーん。晴れて、よかったねー!」

空は青く、気温もちょうどいい。
景色も春らしい緑を見せ、鼻先に木々の香りが触れる。
本栖湖の水面は富士山や木々を逆さに写している。

絶好のキャンプ日和だ。
9 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/11(水) 22:21:10.17 ID:SizuxmwLo
続きは明日
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 22:21:36.21 ID:r9Ag4JsXo
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 00:21:02.29 ID:RUUjFhNnO
続きあるのか
これは期待
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 04:23:13.60 ID:Z5iSiOpEo
よし続け
13 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/12(木) 21:23:33.34 ID:puevJmklo
2.―――――――――――――――――――

やっぱり湖畔のキャンプ場はいいな。
本栖湖に来るとそう感じる。
静かな水面を見つめていると心が落ち着く。

「なでしこもここだったんだ」

「すっごい偶然だよねー。リンちゃんもここだったんだ」

話しながら歩き、湖のほとりを進む。
なでしこはすでに設営を終えているようで、
テント、椅子、テーブルが配置されていて、テーブルの上にはガスランタンが置かれている。

「持ってきてるんだ、それ」

「いいでしょ、わたしのお気に入りなんだ〜」

なでしこいわく、年賀状のバイト代で買ったという。

穏やかな笑顔を見せ、ランタンを愛おしそうに見つめるなでしこ。
その横顔を私も見つめていた。

「火、付けてみよっか? でもまだ昼間だしなぁ、う〜ん」

「あとの楽しみにしようよ」

「うん!」

元気な返事だ。
14 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/12(木) 21:30:02.52 ID:puevJmklo
さてと。私も設営をしよう。
まずはテントから。

グランドシートを敷き、テント本体を広げ、フレームを組み立てる。
作業を見ながらなでしこが声をかけてきた。

「やっぱりリンちゃん手慣れてるね。わたしさっき石で手打っちゃった」

「慣れだよ、慣れ」

『むう〜』という声が聞こえてきそうな顔のなでしこ。

ひととおり設営を終え、なでしこの椅子の隣に私も椅子を置く。
テーブルは邪魔にならないように置き、
その上にバーナーとコッヘルを重ねて置き、次いで水の入ったボトル、マグカップを置いた。

「さっそくだけど、ココア飲む?」

「飲むー!」

椅子に腰を沈めながら、コッヘルに水を注ぎバーナーに火をつける。
沸くまでしばらく待とう。
15 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/12(木) 21:33:23.83 ID:puevJmklo
春の本栖湖もいいな。
秋や冬と景色は同じだけど、色合いが違う。
木々は赤や黄色から深い緑に、空も心なしか青が強い。

――空気が違うのかな。

そんなことを思っている間に水はお湯に変わった。

二人で椅子に座りながらココアを飲む。ゆるやかな時間だ。

「ねえリンちゃん、ここの林って薪が拾い放題みたいだけど、どの辺がいいのかな?」

「私がいい場所知ってるから、一緒に行こうか?」

「うん!」

まずはココアを飲み干してから。
16 : ◆eUYYCXmg66AS [saga]:2018/04/12(木) 21:37:13.13 ID:puevJmklo
なでしこと一緒に道を進み、林に入る。
まずは松ぼっくりから拾おう。

――とは言っても。

薪を細くして、表面をナイフで削って、毛羽立たせる。
そして先端をふわふわにしたものが着火剤となる。
フェザースティックというやつだ。

だから松ぼっくりはいらないと言えばいらない。
でもなでしこが探したそうだから探してみよう。

「リンちゃーん、いっぱいあるねー!」

松ぼっくりがヒョイヒョイと拾われていく。
元気なやつだ。そんなに拾ってどうするんだ。
人のことは言えないけれど。

私が袋の口を広げ、なでしこがそこに松ぼっくりを放り込む。

なでしこが拾う役。私が運ぶ役。
自然と役割分担がなされていく。

次は薪。これもなでしこが拾う役。

「大漁大漁!」

「ずいぶんと大量だな」

「えへへ」

「そろそろ戻ろうか」
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