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千歌「GANTZ?」穂乃果「もうひとつの物語」
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1 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/10(火) 23:42:48.38 ID:YwNwFhVh0
ラブライブ!×GANTZパロです。
前作
千歌「カタストロフィ…か」
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1497714031/
までの設定を引き継いでいます。
原作は未読でも楽しめますが、過去作品を読んでいた方がより楽しめる内容となっております。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1523371368
2 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/10(火) 23:45:20.00 ID:YwNwFhVh0
「―――ナノマシンが開発されたのは今から数百年前のことだ」
「これはウイルスに似た働きがあり、これが体内に入った生物は数週間かけて全ての細胞が入れ替わる」
「見た目はそのままだが、皮膚は頑丈になり、筋力も飛躍的に上昇する。手の一部を変形させて銃器や日本刀を生成することも出来る」
「主食は人間の血液とする所から、我々は吸血鬼(ヴァンパイア)のモデルとなったと推察されている」
「……俺たちには敵がいる。十字架でも銀製の弾丸でもなければ神父でもない」
「この写真を見てくれ。この黒い機械の服を着た連中が敵だ」
「人間でないことに誇りを持て」
「人間を捕食し、唯一の天敵である奴らを根絶やしにする―――!!」
3 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/10(火) 23:51:14.05 ID:YwNwFhVh0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜音ノ木坂学院 一学年教室〜
こころ「千歌ちゃん千歌ちゃん! 今日は一緒に帰りましょう!」
千歌「あれ、練習はいいの?」
こころ「残念ながら今日はお休みの日でして……がっかりです」
千歌「入部してから初めての休みだよね。大変じゃない?」
こころ「まさか!」
こころ「お姉さま達μ’sや雪穂さんと亜里沙さんが所属していた、憧れのアイドル研究部に入部したんです! 大変だと感じたことは一度もありません!!」
千歌「そ、そっか」
こころ「μ’sとA-RISEが火付け役となったスクールアイドルの規模は今や凄まじいのです! 最近はスクールアイドルを題材としたアニメも作成されているんです!!」
千歌「あー、知ってる知ってる。街の看板とか駅のホームとかラッピング電車とかやってるあれでしょ? えっと……確か、アク……アク……アクオスだっけ??」
こころ「Aqoure(アクア)です!! 8人組のユニットで、アニメキャラだけでなく中の声優さんが実際にライブパフォーマンスをしたりしている大人気グループなんですよ!!」
千歌「へ、へぇ……そうだったんだ」
こころ「今度Aqoureのライブブルーレイが発売されるから、買ったら一緒に見ましょう!」
千歌「う、うん……そうだね」タジタジ
4 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/10(火) 23:54:44.05 ID:YwNwFhVh0
こころ「―――それで、千歌ちゃんは結局部活には入らなかったんですね」
千歌「うん」
こころ「勿体無い……運動神経抜群だから、運動部に入れば絶対に活躍できるはずなのにできるはずなのに」
千歌「放課後は色々と忙しいからさ。毎日練習に参加できないんだよね」
こころ「もしかして、中学生の頃からずっと海未さん達とやってるあれ?」
千歌「そうだよ」
こころ「まだ続けていたんだね……前に見かけたことあるけど、そっちの方が大変なんじゃないの?」
千歌「んー、別に大変じゃないと思うな」
こころ「ちなみに……どんな練習メニューなの?」
千歌「昨日はランニング30kmの後に腕立て腹筋を30セット、後は竹刀の素振りを……」
こころ「も、もういいよ。千歌ちゃんが何を目指しているのか全く分からない……」
千歌「?」
5 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/10(火) 23:55:26.94 ID:YwNwFhVh0
こころ「あ、そう言えばさ」
千歌「ん?」
こころ「最近、都内で若い女性の行方不明事件が増えているって知ってる?」
千歌「そうなの? ニュースでやってたかな……」
こころ「お姉さまから聞いたんですよ」
千歌「にこさんが?」
こころ「お姉さまが聞いた噂によれば、同じ頃から増えた黒いスーツを着たホスト風の男性が怪しいらしいけど……実際どうなんだろうね」
千歌「ホスト風ねぇ……」
こころ「千歌ちゃんも一応気を付けてね」
千歌「うん、分かったよ」
6 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/10(火) 23:56:28.35 ID:YwNwFhVh0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜高坂家 居間〜
千歌「ただいまー」
穂乃果「お、千歌ちゃんお帰りなさい♪」
海未「お帰りなさい」
千歌「海未さん、いらしていたのですね」
海未「お邪魔しています」ペコリ
穂乃果「お菓子あるから着替えてきな〜」
千歌「はーい」
7 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/10(火) 23:57:16.84 ID:YwNwFhVh0
千歌「海未さんはどうしてここに?」
海未「穂乃果の様子を見に来たんですよ。ちゃーんとトレーニングをしているか確認する為にね」ジトッ
穂乃果「あ、あははは……まさか抜き打ちで来るとは思わなくってさ。最近はサボり気味だったから海未ちゃんに怒られちゃった」
千歌「最近お店が忙しかったですもんね」
海未「それだっていうのに、今回も剣の勝負で私と互角でやり合うんですよ? 流石に悔しいです……」
穂乃果「ふふ〜ん、これが才能の差だよ。天才でごめんねぇ♪」
海未「……ほぅ」ピキピキ
青筋を立て、目の下をピクピクと震わせる海未
心なしか、襖や窓ガラスがカタカタと揺れ始めているように感じる。
穂乃果の顔色が一瞬で真っ青になった。
穂乃果「じょ、冗談だよ……そんなに気を荒立てないで、ね?」ダラダラ
海未「全く……せめて筋トレくらいは欠かさずやって下さいね?」
穂乃果「ほーい」パクパク
軽く聞き流す穂乃果。
テーブルの上のおせんべいをボリボリと食べる。
千歌「それじゃ説得力が無いんじゃ……」
海未「はぁ…」
8 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/10(火) 23:59:19.46 ID:YwNwFhVh0
千歌「―――あ、今日こころちゃんから聞いた話なんですけど」
穂乃果「こころちゃんから?」
千歌「最近、都内で行方不明者が増えているって話です」
千歌が話を切り出すと、穏やかだった穂乃果と海未の雰囲気が一変
重苦しいものとなった。
穂乃果「……そっか、千歌ちゃんも聞いたんだね」
海未「丁度私達もその話をしていたところでした」
千歌「何か知っているんですか?」
穂乃果「まあね」
穂乃果「恐らく、その集団は吸血鬼だよ」
千歌「吸血鬼!? ……星人ってことですか?」
穂乃果「多分……正直私にもよく分からないんだ。人から聞いただけだしさ」
海未「彼らは私達のようにガンツスーツを所持している人間を皆殺しにするのが目的のようです。ミッション外で襲われることが過去に発生しています」
千歌「敵対グループなんですね……ミッション以外でも襲われる危険があるなんて」
穂乃果「東京にいた吸血鬼は先代のガンツチームが壊滅まで追い込んだって話だったけれど……まだ生き残りがいたってことだね」
千歌「でも…どうして吸血鬼だって分かるんですか? 本当はただのホストなのかもしれないじゃないですか」
穂乃果「まあそうなんだけど、この情報をくれた人がねぇ……」
千歌「ん? どういう事です?」
海未「その人、恐ろしいほどに勘が当たる方なのですよ。あれはもう未来予知に近いものがありますね」
千歌「な、なるほど。占い師か何かですか?」
海未「いえ、その人の職業は執事ですよ」
千歌「執事??」
穂乃果「とにかく、物騒なのは違いないから、千歌ちゃんも街を歩くときは気を付けるんだよ。知らない人について行ったりしちゃダメなんだからね!」
9 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:00:30.55 ID:Oxw6Sm3G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜同刻 上野 カフェテラス〜
真姫「――それで、最近の調子はどうなの? あ、そこの微分方程式の解が違う」
凛「……」カキカキ
花陽「どうって言われても……毎日変わらない生活だよ? 凛ちゃん、そこは一旦式を展開しなきゃダメ」
凛「………」カキカキ
真姫「私が言うのもあれだけど……花陽は彼氏とかは作らないわけ?」
凛「かよちんに彼氏!? そんなの凛が許さ―――」ガタッ!!
真姫「うるさい。あんたはさっさと問題を解く」
凛「………」ストンッ
花陽「彼氏かぁ……確かに、大学生活ももうすぐ終わりだっていうのに色恋沙汰が全くないっていうのも悲しいもんねぇ」ウーン
凛「かよちんには凛がいるから! そんなの必要な―――」
花陽「あ、また間違えてる。ここはこの公式を使って計算するってさっき教えたよね?」
凛「……にゃぁ」シュン
真姫「そんな調子で大丈夫なの? 試験日近いんでしょ?」
凛「これ以外にも単位が危ない必修科目が三つほどあるにゃ……」
花陽「このままだと凛ちゃんまた留年しちゃうよ? だから頑張ろう!」
真姫「凛がこの大学に入学できたのが本当に不思議よね」
10 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:01:28.51 ID:Oxw6Sm3G0
花陽「それで何の話をしていたっけ?」
真姫「彼氏よ。どうなの?」
花陽「正直興味ないかな。声を掛けられる機会はそこそこあったけれど……海未ちゃん達との事もあるし、それどころじゃないからね」
花陽「それに、私には凛ちゃんがいるから♪」ナデナデ
凛「か、かよちん///」テレッ
真姫「……質問した私がバカだったわ」ハァ
凛「そーゆー真姫ちゃんはどうなのさ?」
真姫「愚問ね。この真姫ちゃんよ? 入学当初から大人気だったわよ」
凛「ヘー、ソウダッタンダ」ジトッ
真姫「な、何よ……」
凛「別にー」
花陽「全部お断りしてるの?」
凛「『オコトワリシマス!』ってww」
真姫「ふッ!!!」ゴチンッ
凛「」ズキンッズキンッ
真姫「そうよ。まあ、跡継ぎの件とかがあるから両親には色々と言われるけどね」
花陽「結局、真姫ちゃんはお医者さんになるの?」
真姫「……どうなのかしらね、正直分からないわ。医大に進もうと決心したのも、あの部屋での戦いで役に立つ術を身につけられるかもって理由だし」
花陽「他にやりたい事があるんだね」
真姫「……ええ」
11 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:03:18.62 ID:Oxw6Sm3G0
凛「―――にゃ?」ガタッ
真姫「……っ」ギロ
花陽「凛ちゃん、真姫ちゃん? いきなり立ち上がってどうしたの?」
立ち上がった二人は険しい表情で辺りを見渡す。
その表情で事態を察した花陽はカバンの中に手を突っ込み、Xガンの引き金に指をかける。
凛「……」キョロキョロ
真姫「誰かに見られていた」
凛「うん……一瞬だったけど嫌な感じがしたにゃ」
花陽「まさか……星人?」
真姫「多分違う。こんな人通りの多い所で現れるとは考えにくいし」
凛「でもここ数日、誰かに見られている感覚は頻繁にあったよ」
真姫「何か嫌な予感がするわね……」
12 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:04:50.99 ID:Oxw6Sm3G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜数日後 夜 上野〜
高海美渡は出張で静岡から東京の街に来ていた。
数日間の出張も今日で終わり、明日の電車で帰る予定だ。
折角東京に訪れたのだ、最後の夜くらいは羽目を外そうと思い、お洒落なバーを訪れた美渡だったが……
バーテンダー「お客様……流石に飲みすぎでは?」
美渡「うるしゃいわね! じぇんじぇん平気よぉ!!」
バーテンダー「は、はぁ……左様ですか」
美渡「おかわりよ! さっきのカクテルをお願い」
バーテンダー「“みかんカクテル”でよろしいですか?」
美渡「そうよ!」
バーテンダー「―――どうぞ」コトッ
美渡は出されたカクテルを一気に半分以上飲み干す。
アルコール度数はそれ程高くはないが、もう何杯飲んだのか自身も覚えていない。
バーテンダー「来店してからずっと同じカクテルをお飲みですね。みかんがお好きなんですか?」
美渡「……別に、私はそこまで好きじゃない」
バーテンダー「?」
美渡「妹が……好きだったのよ。みかん」
バーテンダー「妹さんが好きなのですか。おいくつ何ですか?」
美渡「そうだな……丁度二十歳になる頃かな」
バーテンダー「随分と他人事のように言いますが……妹さんなんですよね?」
美渡「もう何年も会ってないんだよ……ある日突然居なくなりやがったんだ、アイツ」
バーテンダー「!」
美渡「様子が変なのは気が付いていたんだ……何か重大な秘密を抱えている、そんな感じだったんだよ」
美渡「こっちからさりげなく聞いてみても『何でもない』の一点張りでさぁ……だから深く追及しなかったんだ」
美渡「その結果がこれだよ……クソッ…」ポロポロ
バーテンダー「……」
美渡「バカ千歌ぁ……なんで居なくなったんだよぉ……なんで……なんで……うぅ」
美渡「……ひぐっ、うぅ、うあああああああああああああ」
13 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:05:35.94 ID:Oxw6Sm3G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
美渡「……すぅ、すぅ」
バーテンダー「……眠ったか。いいぞ、入れ」
スタッフルームかぞろぞろと出てきたのは黒いスーツを着た数人の男。
眠っている美渡を二人がかりで抱え上げる。
「いっそ、この場で解体してもいいんじゃねぇか?」
バーテンダー「止めてくれ。ここに妙な痕跡を残したくない」
「へいへい」
「アジトのクラブまで連れて行けばいいのか?」
「いや、あっちでも解体しているから、いつもの路地裏でいいだろう」
美渡「う、うぅ……」
「おい、慎重に運べよ。起きたら面倒だ」
「はいよ」
14 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:06:28.97 ID:Oxw6Sm3G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
美渡(う、気持ち悪い……流石に飲み過ぎた)
美渡(あれ、ここは? さっきまでバーで飲んでたよな……なんで外にいるんだ?)
「お目覚めか」
美渡「あ? お前達なんだよ!? 腕放せよ!!」
???「威勢がいいねぇ。お前みたいな女は嫌いじゃねぇ」
美渡に近寄る一人の男。
最初は暗くてよく見えなかったが、非常口の光が当たる所まで来ると、その服は真っ赤な血に染められた服と日本刀が握られていたのだ。
美渡「ひ、ひぃぃ!!?」
「斎藤さん……もう一人解体しちゃったんですか?」
斎藤「まあな。のこのことここに迷い込んだ哀れな人間がいたもんでね」
美渡「ひ、人……首が………!!!?」
斎藤「お前さんも運が悪いな。あの店を選んだ自分を恨むことだ」
背後から麻袋を被せられる。
いきなり視界が真っ暗になったこと、首無しの死体を目撃したこととで大パニックに陥った美渡は声すら出ない。
美渡(嘘……嘘嘘嘘嘘ウソウソウソ!!!? 何、死ぬ? 殺される、殺されるの!?)
斎藤「大丈夫大丈夫。痛いのは一瞬だ」
美渡「いや、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だあああああああああ!!!!!」
必死に抵抗するもビクともしない。
腕と頭を固定され、脱出は不可能だった。
美渡(助けて……誰か―――)
斎藤「そーらよっと」ブン
15 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:06:57.89 ID:Oxw6Sm3G0
斎藤は美渡の首へ日本刀を振り下ろし―――
――バキッ!!!!
斎藤「ごはあぁ!!?」
「斎藤さんがいきなり吹き飛んだ!?」
「バカ!! コンタクトつけろ!!!」
――ドゴ!! バキッ!!!
「ぐふぁ!!?」
「こいつ! 意外と強いぞ!?」
美渡(何……何が起きているの?)
麻袋を被せられた美渡は状況を全く把握できない。
拘束が解除され、その場に倒れ込んでいた美渡
そんな彼女は突如、何者かに抱きかかえられた。
美渡(ちょ、へ? 何何何!!?)
「―――美渡姉!!! 跳ぶよ!!!!」キュイィィィン!!
美渡「……えっ」
次の瞬間、美渡の意識はここで途絶えた。
16 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:08:56.89 ID:Oxw6Sm3G0
――
――――
――――――
〜数分前〜
千歌「あ、もしもし穂乃果さ―――」
『コラァ!!! バカチカ!!! 今何時だと思ってるのさ!!?』
千歌「あ、あれぇ? 穂乃果さんに掛けたはずなのに、何で雪姉が!?」
雪穂『お姉ちゃんは今お風呂に入ってるの。だから私が出た』
千歌「雪姉……穂乃果さんから何も聞いてない?」
雪穂『何を?』
千歌「今日はクラスの子と遊びに行くから帰りが遅くなるって」
雪穂『……聞いてない。事前に知らせていたの?』
千歌「うん。それも結構前に」
雪穂『あ、ああ、そうなの……いやーゴメンゴメン、いきなり怒鳴ったりして悪かったね』
千歌「い、いえ……怒られても仕方ない時間帯ですし」
雪穂『そ、そうだよ! そんな時間にウロウロしていたら補導されかねないんだから!! 早く帰って来なさい』
千歌「はーい」
雪穂『じゃあ切るね―――』ピッ
千歌(うぅ……耳がキンキンする…。穂乃果さん、ちゃんと伝えて下さいよ)ハァ
千歌(さて、早く帰らないと………ん?)
17 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:10:37.57 ID:Oxw6Sm3G0
千歌の目に二人の男に肩を担がれた一人の女性が留まった。
その光景自体が少々異常ではあったが、一番目を惹かれたのはその女性だった。
千歌「あれは…美渡……姉……?」
千歌(何で美渡姉がここに!? ……いや、そんな事はどうでもいい)
千歌(あの男達、黒いスーツ姿だ。顔立ちもホスト風……と言えばホスト風だけど)
こころ『お姉さまが聞いた噂によれば、同じ頃から増えた黒いスーツを着たホスト風の男性が怪しいらしいけど―――』
穂乃果『―――恐らく、その集団は吸血鬼だよ』
千歌(いやいや、それは考えすぎかな? 早く帰らないと雪姉に心配かけちゃうし……)
千歌(………)
千歌は周囲を確認した後、ステルスモードをオンにした。
背景に溶け込み、完全に千歌の姿は視認不可となった。
千歌(一応、美渡姉がホテルに着くまでは見届けよう……雪姉には後で謝ればいいや)
18 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:11:40.00 ID:Oxw6Sm3G0
千歌(妙だな……裏路地に入って行ったぞ?)
少し離れた位置から尾行していた千歌。
美渡を連れた男達が裏路地の入口には見張り役と思われる男が二人立っている。
千歌(これはダメだね。早く連れ戻さなきゃ!)
美渡の身の危険を察知した千歌は路地裏に向かおうとするが―――
「おい、ここは立ち入り禁止だ。帰れ」
千歌(んな!?)ビクッ
「はあ? お前、誰に向かって話してるんだよ?」
「っっ!! お前、コンタクトはしてねぇのか!?」
「あ、ああ!!」
千歌(ステルスモードの私が見えているってことは、こいつただの人間じゃない!!)
「ヤバイ、“ハンター”だ!! 今すぐ知らせ―――」
19 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:12:38.17 ID:Oxw6Sm3G0
千歌「ふッッ!!!!」
―――バキッ、バキッ!!!
千歌は見張りの男達の顎を素早いパンチで撃ちぬき、意識を奪う。
千歌(美渡姉が危ない!!!!)
猛スピードで路地裏を駆け抜ける。
現場に到着した千歌の目に飛び込んできたのは、麻袋を被せられた女性と
その首を落とそうとする男の姿だった。
千歌「―――美渡姉えええええええええ!!!!!!」
―――バキッ!!!
一気に距離を詰め、渾身の飛び蹴りを顔面にヒットさせる。
斎藤「ごはあぁ!!?」
「斎藤さんがいきなり吹き飛んだ!?」
「バカ!! コンタクトつけろ!!!」
即座に美渡を押さえつけている男達を殴り飛ばし、美渡の体を抱きかかえる。
同時にスーツの力を脚部に集中させた。
「―――美渡姉!!! 跳ぶよ!!!!」キュイィィィン!!
美渡「……えっ」
――ダンッ!!!!!
最大限まで溜めた力を一気に解放して跳び上がった。
向かい合うビルの壁を交互に蹴り飛ばし、屋上まで登る。
屋上まで登りあがった千歌は、美渡に付けられた麻袋を取り外した。
20 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:13:30.54 ID:Oxw6Sm3G0
千歌「美渡姉!! しっかりして美渡姉!!!」
美渡「………ぅ」
千歌「気絶しているだけ……か」
斎藤「―――よお、痛てぇじゃねぇか」コキコキ
千歌「ウソ!? もう屋上まで追いついたの!?」
斎藤「まさかハンターに遭遇するとはな……好都合だぜ、全く」ニヤッ
「ええ、全くですよ」
「あーあ、歯が欠けちまったぜ……」
千歌(さっき殴り飛ばした男達がもう追いついてきている……こいつら、やっぱり人間じゃない!!!)
斎藤「予定変更だ、お前ら……この女を捕らえろ!!!」
千歌(このまま戦うと美渡姉が危ない! ここは……逃げる!!!)ダッ!!
斎藤「逃がすな、追え!!!!」
美渡を抱きかかえ逃げる千歌。
屋根から屋根へ、屋上から屋上へ
スーツの脚力を最大限発揮して夜の上野を駆け抜ける。
背後を確認すると、追手はいつの間にか6人から9人、更に増えている。
このままではマズイ。
助けを呼ぶため、千歌は手首に装備しているミッション用の通信機を起動した。
千歌「お願い早く……早く誰か出て……」ピピピッ、ピピピッ
21 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:14:41.63 ID:Oxw6Sm3G0
―――ピコン
穂乃果『―――千歌ちゃん、状況を教えて』
千歌「穂乃果さん!! 今、例の吸血鬼に追われています!!」
穂乃果『追われている? ……撃退は出来ないの?』
千歌「襲われていた美渡ね……一般人を抱えてるので厳しいです!! 追手は数を増やしながら―――」
「オラァ!! ハチの巣にしてやる!!!」ズダダダダダ!!!
距離を詰めてきた吸血鬼がサブマシンガンを連射する。
丁度隣のビルへ飛び移っている最中だった千歌は咄嗟に美渡を抱きかかえ、美渡への被弾を防ぐ。
―――ドスドスドスッ!!!!
背中に数発の弾丸を浴びた千歌は着地に失敗し、背中から隣のビルの屋上に叩きつけられた。
千歌「くぅ!!!」
穂乃果『千歌ちゃん!? 大丈夫!!?』
千歌「へ、平気です。奴ら、銃を使ってきました……!」
穂乃果『周りに通行人は?』
千歌「建物の屋上を飛び移りながら逃げています……下に降りて街の人に紛れた方がいいですか?」
穂乃果『いや……奴らなら無差別に乱射しかねない。下手に犠牲者を増やさない為にも、そのまま屋上を使って逃げ続けて』
穂乃果『私も直ぐに向かう。ただ、近くにいたメンバーが向かってるみたい。後はそのメンバーの指示に従って!!』
千歌「了解…!!」
22 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:15:51.51 ID:Oxw6Sm3G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜雑居ビル 屋上〜
千歌「……はぁ、はぁ、はぁ」ギリッ
斎藤「ったく、逃げ足の速い女だぜ……」
「でも追い詰めましたね。逃げ場もう塞ぎました」
「もうじき、あと数十人到着する予定です」
千歌「ま、まだ増える……の」ゾッ
斎藤「そのまま動くなよ? 動けばその女を撃つ」
千歌「っ!!?」
斎藤「貴様が素直に俺達と一緒に来れば、そいつだけは見逃してやってもいい」
千歌「へぇ……随分と良心的じゃない?」
斎藤「どうする? 三秒以内に答えてもらおうか」
千歌「………いや、必要ないかな」
斎藤「は?」
千歌「別に私は追い詰められてここに来たわけじゃない。ここに来るように指示されただけだよ」ニヤッ
「ぐへっ!?」ブシュ
「ゴッ!!!?」ブシュゥゥゥ
「ブフゥ!!?」ゴトッ
千歌に銃口を向けていた吸血鬼の首が次々と切り落とされる。
斎藤のみが、辛うじて銃身で攻撃を防ぎ、難を逃れた。
斎藤「クソッ!! 増援か!!?」
23 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:16:51.52 ID:Oxw6Sm3G0
絵里「は〜い、待たせたわね♪」
千歌「全く……遅いですよ!」
絵里「あらら、意外と多いわね。どいつもこいつも銃やら日本刀やら携えているみたいだけど……日本の警察は何をしているのかしら?」
千歌「こいつら吸血鬼は自分の肉体の一部を変形させて武器を生成するらしいです!」
絵里「便利な能力なこと」
斎藤「てめぇ……よくも!!!」
絵里「あなた達だって私の仲間を殺そうとしたじゃない」
絵里「殺そうとするってことは、殺される覚悟があるってことでしょう。違う?」
斎藤「……言ってくれるじゃねぇか」ピキピキ
絵里「千歌、その人を連れてここから逃げなさい。ここの敵は私が何とかする」
千歌「何とかって……今だけでも10人以上はいますよ!?」
絵里「大丈夫よ。こっちに向かっているメンバーがいるの。合流するまでの時間稼ぎくらいは出来るわ」
千歌「ですが……」
絵里「あら? 私のことが信用できないの? 言っておきますけど、千歌ちゃんより私の方がまだ実力は上なんだからね」
千歌「でも……」
絵里「それに、私の得意な状況を知っているでしょ? この場は誰よりも私が適任よ」
千歌「……分かりました。お願いします!!」ダッ
「あの女!! 逃げやがった!!」
「追うぞ!!」
千歌を追いかけようとした吸血鬼達に割って入るようにガンツソードを掲げる。
人差し指をリズミカルに左右に振りながら挑発する絵里。
絵里「ダメダメ。あなた達の相手はこの私よ?」チッチッ
24 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:18:34.81 ID:Oxw6Sm3G0
「この人数を相手に一人でやるってか?」
「あんまり俺たちを舐めるなよ」ギロッ
絵里「御託は結構、さっさとかかって来なさい。それとも、私から行った方がいいかしらん?」
絵里の挑発に激怒した一人が凄まじい咆哮をしながら斬りかかる。
それを合図に他の吸血鬼も日本刀や拳銃を片手に襲い掛かってきた。
絵里「ふっっっ!!!!」シュッ!!!
―――ズバッ!!! ズバッ!!!
大振りで斬りかかってきた二人を瞬時に切り伏せる。
刀と刀をぶつけ合わせることは決してしない。
フェイントで攻撃を誘発させ、そこで生じた隙を突いて一撃で落とす。
死角からの銃弾もまるで見えているかのように躱す。
「何なんだよコイツ!!? 後ろに目でも付いてるのか!!?」
「弾が当たらねぇ!!?」ズダダダダダ!!!
μ’sメンバーで穂乃果、海未の実力は頭一つ抜けた存在である。
だが、これは強力な星人との戦闘においての話だ。
敵が人型で且つ一対多数の戦闘になれば、絵里の方が多くの敵を倒せる。
右手にガンツソードを逆手に持ち、左手にはXガンを構える。
混戦状態において近くの敵を切り伏せ、中距離の敵をXガンで撃ちぬくスタイルだ。
海未曰く、『そんな滅茶苦茶な持ち方で戦えるのは意味が分からない。他のメンバーは絶対に真似するべきでは無いです』
視野に映る周囲の敵一人一人の動き全てを注視
そこから注視した対象それぞれの動きを予測する。
―――ギョーン!! ギョーン!! ババンッ!!!!
一体、また一体と倒されていく吸血鬼。
屋上には絵里によって殺された吸血鬼の屍が積み重なる。
20人近くいた彼らも、片手で数えられる程に減っていた。
「ぜぇ……ぜぇ、ぜぇ」
「く、くそっ……化け物がぁ」
絵里「あらら、こっちの増援が来る前に決着がつきそうね」
斎藤「……っ」ギリッ
25 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:19:28.38 ID:Oxw6Sm3G0
「情報と違うじゃねぇか……ホノカとウミって女に気を付ければいいんじゃないのかよ!?」
絵里「何ですって?」
斎藤「……お前には関係ない。アヤセ エリ」
絵里「っ!? どうして名前を―――」
―――バンッ!!!!
絵里「ッッッ!!!?」グラッ
こめかみに強い衝撃が走る。
絵里の感知範囲外からの狙撃。
スーツの効果で頭部が弾け飛ぶことは無かったが
当たった場所から少量の血が流れ出る。
幹部A「あ? 対物ライフルの弾丸だぞ……これ防ぐのか」
幹部B「遠くからちまちま撃つより、首元のレンズを壊した方が早いだろ」
幹部C「そんなことより、随分と殺されちゃってるじゃん。ウチら弱くない?」
幹部A「だってあれアヤセだろ? 要注意人物のリストに入って……無いな」
幹部B「ほら言ったじゃねぇか。アヤセもヤバイってよ」
ボス「……斎藤、待たせたな」
斎藤「ぼ、ボス……!!!」
絵里(また増援か……ちょっとヤバイかな?)
ボス「お前は下がってろ。後は俺たちに任せろ」
幹部C「速攻で片付けてやんよ」カチャ
絵里「いいわよ。かかって来なさい」
ボス「―――ふっ!!!!!」ビュン!!!!
絵里「―――ッッ!!!!!」
―――ガキンッ!! ガキンッ!! ガキンッ!!
幹部B「はは!! 結構耐えるじゃねぇか!!!」
ボス「黙って攻撃しろ!!!」
絵里「こ、このっ!!!」
幹部A「隙だらけだぜ」バンッ!!
絵里「くっ!!!!」ドッ
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/11(水) 00:20:28.77 ID:3t+frP9Do
名前が同じ別人にしか見えない
27 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:21:19.60 ID:Oxw6Sm3G0
三体の吸血鬼による連携攻撃。
それだけでも厄介極まりないのにも関わらず、その隙間を縫うように弾丸を撃ち込まれる。
絵里のスーツの耐久値はみるみる削られてゆく。
絵里(こいつら、全員が滅茶苦茶な強さじゃない!? 流石に私一人じゃ無理よ!!)
ボス「―――もらった!!!!」ドゴッ!!!
絵里「んな!?」キュウゥゥゥン……
レンズからゲル状の液体が流れ出る。
スーツの機能が停止、パワーアシストも防御力も無くなってしまった。
ただの人となった絵里に畳みかけるように斬りかかる。
幹部C「オラあああ!!!」ズバッ
幹部B「はっ!!!」ドスッ
幹部A「……」バンッ!!!
―――ブシュッウウゥゥゥ!!!
絵里「か゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!?」
左肩から肘にかけての筋肉と右肘から下を斬り落とされ
わき腹をライフルの弾丸が抉る。
絵里「ぐっ、痛〜〜〜〜〜っっっ!!!!!」ズキンッズキンッ
屋上の端まで追い込まれた絵里
余りの激痛に膝から崩れ落ちる。
そんな絵里の首元に吸血鬼のボスは日本刀の刃を当てる。
ボス「……終わりだな」
絵里「お、終わり? まだ……私は死んでない…けど?」
ボス「強がるな。その怪我なら放っておいても死ぬだろうが、楽に殺してやるよ」
絵里「へぇ……意外と優しいのね」
ボス「最期に一つ、質問だ」
絵里「……?」
ボス「貴様の名前は『絢瀬 絵里』で間違いないな?」
28 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:21:50.15 ID:Oxw6Sm3G0
絵里「………さぁ? どうかしらね!!!」ダッ
幹部C「はあ!? こいつ飛び降りやがったぞ!?」
ボス「……」
ビルの屋上から真っ逆さまに落下する絵里。
スーツが無力化された今、この高さから落ちれば即死は免れない。
仮に地面に緩衝材があれば話は別だが、この真下にそのような類の物がないのは確認済みだった。だが……
幹部C「ボス…なんか妙じゃないか?」
ボス「ああ……落下したのに全く音がしない」
幹部B「っ!? ボス、下に奴の死体がありません!!」
ボス「……なるほど、仲間が来たってことか」
29 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:22:53.34 ID:Oxw6Sm3G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ことり「絵里ちゃん!!! しっかりして絵里ちゃん!!!」
絵里「こ、こと……り……ナイス…キャッチ……ね」
ことり「急いで病院に連れて行くから頑張って!!」
希「えりち……どうして一人で無茶したん!?」
絵里「希……」
希「ミッション外だから怪我は直ぐに治らないんだよ!? それなのに……バカ!!」グスッ
絵里「ごめんなさい……」
にこ「こんなところでうっかり死ぬんじゃないわよ? もし死んだら私がぶっ殺す」
絵里「えー、それは勘弁して欲しいかな……」
にこ「なんなら今すぐ戻って奴らを―――」
絵里「それはダメ。私達じゃあの四人を同時に相手は出来ない……このまま逃げた方がいいわ」
にこ「……ちっ」
絵里「……あっ」
ことり「どうしたの?」
絵里「あの場に私の右腕忘れて来ちゃった……にこ、悪いんだけど取りに行ってもらえる?」
ことり「……」
希「えりち……」ハァ
にこ「……アンタ、頭おかしいんじゃないの?」
30 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:25:14.16 ID:Oxw6Sm3G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜早朝 穂むら〜
美渡「……う、うぅ〜ん……あれ、ここは……」
穂乃果「あ、目が覚めましたか? ここはウチのお店ですよ」
美渡「え? あなたは……?」
穂乃果「お客さん、昨夜は酷く酔っていらっしゃったみたいで……そこの電柱に抱き着きながら寝ていたんですよ?」
美渡「そ、そうなんですか!? ぜ、全然覚えてない……」
穂乃果「お酒には気を付けて下さいよ? 世の中いい人ばかりではないんですから」
美渡「す、すみません」
穂乃果「一人で帰れますか?」
美渡「大丈夫です……ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」
穂乃果「気を付けて帰って下さいね」ニコッ
美渡(昨日の記憶が全くない……何か恐ろしいというか懐かしいというか、そんな事があったような……)
――ガラガラ
穂乃果「………」
千歌「ほ、穂乃果さん……?」ソロ~ッ
穂乃果「うん、もう出てきて大丈夫だよ」
千歌「美渡姉は昨日の事は……?」
穂乃果「多分覚えて無いと思う。ショックで短期間の記憶を失っているのかも」
千歌「そうですか」ホッ
穂乃果「このまま記憶が戻らないといいんだけど……」
千歌「美渡姉……」
穂乃果「千歌ちゃん、絵里ちゃんについて連絡は来た?」
千歌「あ、来ました! ことりさんから、ついさっき目を覚ましたって連絡が。他のみんなもいるそうです」
穂乃果「なら今すぐ向かおう。準備して」
千歌「はい!」
31 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:26:01.55 ID:Oxw6Sm3G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜病室〜
千歌「絵里さん!! 大丈夫ですか!?」ガラガラ
絵里「あ、千歌ちゃん。いらっしゃ〜い」ニヘラッ
千歌「あ、あれ……? 重症だって聞いたんですけど…意外と元気??」
凛「それは凛も思った」
花陽「どうなの真姫ちゃん?」
真姫「勿論重症よ。肩の筋肉のほぼ全てがバッサリ斬り落とされている。切断された腕は一応くっつけたけど、間違いなく元通りに動かす事は無理。残念ながら両腕とも使い物にならなくなったわね」
千歌「思いっきり重症じゃないですか……」
絵里「いやー、死ななかっただけラッキーだったわよ」
にこ「能天気なこと……」
ことり「私は滅茶苦茶心配してたのに…」
希「えりちらしいと言えばらしいけど」
絵里「ねぇ穂乃果、この怪我も次のミッションの転送時に治るんでしょうね?」
穂乃果「ど、どうだろう……多分大丈夫なんじゃないかな?」
絵里「た、多分って……不安になるようなこと言わないでよね!?」
花陽「凛ちゃんがミッション外で骨折した時も治ったからきっと……恐らくは……うん、治るといいね?」
絵里「そこは自信をもって言いなさいよ!!!」
穂乃果「あ、あははは……」
32 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:27:16.80 ID:Oxw6Sm3G0
海未「ゴホン……さて、本題に移りましょう」
海未「千歌の実の姉を襲った吸血鬼。絵里の話だと彼らは私と穂乃果の名前を知っていたらしいです」
穂乃果「私の名前を?」
絵里「リストがどうとか言っていたから、他のメンバーも名前と顔がバレている可能性が高いわね」
凛「最近、誰かに見られている感覚があったのはそれが原因…?」
真姫「でしょうね」
ことり「じゃあ、私達はいつ襲われてもおかしくないってことなの……?」
花陽「うぅ、ミッション以外でも戦わなくちゃいけないなんて……」
希「安心して暮らすには早めに決着をつけなくちゃアカンってことやね」
海未「絵里がかなり派手にやったので、近い内に報復が来るとみて間違いないでしょう」
絵里「ちょっ……私はどうすればいいのよ!?」
にこ「ここの警備に任せるのは?」
真姫「相手は銃火器を使うんでしょう? そんな相手に対抗できるわけないわ」
にこ「それもそっか……でも、敵がいつ来るか分からないのに私達の誰かが付きっきりで警護するのは厳しいわよ?」
海未「任せてください。夕方から早朝ならば私が傍に居ましょう」
希「ウチも!」
凛「仕方ない、ここはリリホワ組で絵里ちゃんを守ってあげるにゃ」ウンウン
絵里「うぅ……感謝するわ」ボロボロ
ことり「なら、昼間はどうするの?」
穂乃果「その辺は大丈夫。知り合いにお願いしたからさ」
花陽「知り合い?」
33 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:28:28.39 ID:Oxw6Sm3G0
穂乃果「そろそろ来ると思うんだけどなぁ……」
―――ガラガラ
「失礼しまーす……あ、穂乃果ちゃん!」
穂乃果「来てくれましたか!」
にこ「この人は?」
穂乃果「この人は伊波さん。私と海未ちゃんが移籍したガンツチームの先輩だよ」
にこ「ああ、あんた達ちょっと前に引き抜かれてたわね」
伊波「こんにちは♪ みんなの事は穂乃果ちゃんと海未ちゃんから聞いてるよ」
海未「この為にわざわざ遠方から来てくださったのですか!?」
伊波「違う違う。丁度、ご主人様から長期休暇を頂いていてね。特にやる事も無くてフラフラしていたら穂乃果ちゃんから連絡が来たんだよ」
千歌(ご主人様?)
伊波「よろしくね、千歌ちゃん」ニコッ
千歌「は、はい」ペコリ
真姫「それで、この人に任せて本当に大丈夫なの? よく知らない人間に大切な仲間の命を預けるのは賛成しかねるわ」ジトッ
伊波「ご、ごもっともな指摘だね……」
穂乃果「ふっふっふ……心配ないよ。伊波さんの実力は私が保証する!!」
真姫「お、おう…」
海未「そもそも伊波さんが負けるような敵が来たら、ここにいるメンバーじゃ誰も勝てませんし」
伊波「絵里ちゃん、大船に乗ったつもりでいてよ!!」ドンッ
絵里「え、ええ。とても頼もしいです!」
凛(ねえ希ちゃん、この人がいるなら凛達は要らないんじゃ……)ヒソヒソ
希(凛ちゃん、それを言っちゃアカンで)ヒソヒソ
34 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:29:03.53 ID:Oxw6Sm3G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜数日後 東京某所〜
幹部B「―――先日の戦闘で戦力の一割を失った」
幹部A「一割か……たった一人に少々削られ過ぎたな」
幹部C「まあ、今後の作戦に支障はないっしょ。あれから戦闘員も失った以上に補強できたし」
幹部B「犠牲はあったがこちらもハンターの主力一人を無力化出来た。スーツを失ったハンターを殺すのは容易い」
幹部C「でもよ……本当にこの作戦で行くのかい、ボス?」
ボス「……何か不服でも?」
幹部C「確かにこれなら一夜でハンターを全滅に追い込める。だが、下手をすればこっちも全滅するリスクがあるぜ?」
幹部B「随分と弱気じゃねぇか。ビビってるのか?」
幹部C「そうじゃねぇさ。ただ、時間はかかっても確実に一人ずつ殺せる方法を取るのもアリじゃねぇかって話だ」
ボス「下手に時間をかけて対策を取られる前に一気に終わらせたい。文句あるか?」
幹部C「いーや、文句は無い。確認したかっただけさ」
35 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:29:48.08 ID:Oxw6Sm3G0
バタンと扉が勢いよく開く。
するとそこから、斎藤が若い女性の髪の毛をグイグイと引っ張りながら入ってきた。
美渡の時と同様に、街で捕まえた人間を捕獲して来たのだ。
前回のような失敗をしない為に今度はアジトまでしっかりと連れてきた。
斎藤「オラァ!!! 歩けって言ってるんだよ!!!!」グイグイ
「嫌だぁ!!! 引っ張らないで!!!!」
斎藤「たらい用意しろ!! 直ぐに解体するぞ!!!」
幹部C「お、いいねぇ、今日の獲物は若い女か♪」
幹部A「決戦前に鮮度の高い血が飲めるのはいい」
ボス「……」スクッ
幹部B「ボス?」
36 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:30:47.18 ID:Oxw6Sm3G0
斎藤「しっかり押さえておけよ」カチャ
吸血鬼「ええ、任せてください」
「嘘……ウソ!? 止めて止めてやめてやめてやめてやめてええええええ!!!!」
日本刀を女性の首の付け根目がけて振り下ろす。
ボス「―――待て」ガシッ
斎藤「ぼ、ボス?」
ボス「俺がやる。お前は下がってろ」
斎藤「そ、そうですか……お願いします」
ボス「女、最期に一つだけ質問がある」
「うっっ……ひっく………へ?」
ボス「君の名前は何だ?」
「な、なま、なま……え……?」
ボス「頼む、教えてくれ」
「……ひぐっ……うぅあぁ………み、みや、みやした、ミヤシタ アイ………」
ボス「ミヤシタ アイ……だな。覚えたぞ」
ボス「………っ」シュッ
「―――きゅっ……」
―――ゴトッ……
部屋中に響き渡っていた叫び声が一瞬で消え、代わりに蛇口から水を勢いよく出すような音が響く。
その音も数秒で収まり、たらいの中には生首と鮮血が並々と溜まっていた。
37 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:31:43.33 ID:Oxw6Sm3G0
ボス「……」
幹部A「おぉ……ボスは相変わらず綺麗に首を落としますな。斎藤も見習えよ?」
斎藤「は、はい!」
幹部C「ボス、質問いいですか?」
ボス「何だ?」
幹部C「ずっと気になってたんですが、ボスはどうして殺す前に獲物の名前を聞くんです?」
幹部B「確かに。何か意図でも?」
ボス「……いいや、別に大した意味はねぇさ」
38 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:32:23.72 ID:Oxw6Sm3G0
ボス「すぅ……いいかてめぇらぁ!!!!」
一同「「「っっ!!!!」」」
ボス「いよいよ明日はハンターとの決着の日だ!! 今まで奴らに殺されてきた仲間達の無念を晴らす。先代から続いてきた因縁に終止符を打つぞ!!!!」
吸血鬼「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」」」
吸血鬼「ハンター共を殺せ!!!」
吸血鬼「皆殺しだああああ!!!!」
ボス「………」
斎藤「やってやりましょう、ボス!」
ボス「……ああ、そうだな」
39 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:33:28.41 ID:Oxw6Sm3G0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜翌日 夕方〜
こころ「ね、ねえ千歌ちゃん」
千歌「……」
こころ「千歌ちゃん」
千歌「………」
こころ「千歌ちゃんってば!!!」
千歌「うぉ!? こころちゃん、何?」
こころ「もう! さっきから声かけてるのに無視しないでよね!」
千歌「ご、ごめんね」
こころ「最近ずっと怖い顔してる……千歌ちゃんもお姉様も」
千歌「!」
こころ「何かあったの?」
千歌「……何もないよ。心配かけてごめんね」
こころ「……嘘つき」ボソッ
千歌「へ?」
こころ「何でもないですー! 今日は家族全員が揃う日なのですぐに帰っちゃいますからね!」
千歌「そ、そうなんだ。分かったよ」
こころ「もし……もしどうしても相談したくなったら、いつでも聞いてあげます」
千歌「……えっ」
こころ「だから一人で抱え込まないでください」
千歌「こころちゃん……うん、分かった。その時は相談するよ」ニコッ
こころ「約束ですよ! それじゃあ、また明日です!」
千歌「うん、ばいば〜い」フリフリ
40 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:34:32.86 ID:Oxw6Sm3G0
千歌「……ふぅ」
穂乃果「―――いい子だよね。こころちゃん」
千歌「穂乃果さん……どうしてここに?」
穂乃果「ちょっと雪穂に買い物を頼まれたんだ。そうしたら二人を見かけたの」
千歌「……大丈夫かな」
穂乃果「何が?」
千歌「私達の身近な人が吸血鬼に襲われないか……心配なんです」
千歌「あの時だってそうです……もしあの時、あの場所で美渡姉に気が付かなかったらって思うと怖くて怖くて堪らないんです」
穂乃果「……そうだね」
千歌「私達が吸血鬼に何をしたっていうのさ……確かに美渡姉を助ける為にブッ飛ばしたけど」
穂乃果「争い始めた原因は不明だけれど、吸血鬼との抗争が最も激しかったのは私達μ’sが部屋に来る前の事だって聞いたよ。先代メンバーのイズミって人が中心となって吸血鬼を壊滅させた」
千歌「でも生き残りがいた……」
穂乃果「吸血鬼にとってあの部屋の住人は全員仇なんだよ。私が逆の立場でも復讐の対象になるだろうね……」
千歌「和解の道は無いんでしょうか?」
穂乃果「無理だろうね。どちらかが全滅するまで殺し合いは終わらない」
千歌「そうですか……」
穂乃果「あっちが何もしてこなければそれでいいんだけどね」
千歌「……」
41 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:36:25.00 ID:Oxw6Sm3G0
穂乃果「お、話しているうちに家に着いたね。これから晩御飯作るから手伝ってもらえる?」
千歌「はーい」
―――ガラガラ
穂乃果「ゆきほー、ただい……ま……」
千歌「穂乃果さん? 立ち止まってどうし―――」
家の中を確認した千歌は目を疑った。
ドアや襖は壊され滅茶苦茶にされている。
廊下の床や壁にはおびただしい量の血痕と弾痕。
何が起こったのかは一目で分かってしまった。
千歌「こ、これって……まさか」
穂乃果「………ッ」
―――プルルルルル
穂乃果のスマートフォンから呼び出し音が鳴り響く
千歌「ッ!!? 穂乃果さん!!」
穂乃果「……もしもし」
『―――家の様子は見たか?』
穂乃果「うん、丁度今見てる」
『なら話は早い。お前の妹は預かった』
穂乃果「預かった? “殺した”の間違いじゃないの?」
『……ふっ、生きているかどうかは来れば分かるさ』
穂乃果「それで、私はどうすればいいの?」
『ここの場所をメールで送った。誰と来ても構わないが……恐らく誰も来てはくれないだろうがな』
穂乃果「どういう意味?」
『今に分かる。無事にたどり着けることを祈っているぞ―――』ブツンッ
42 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:37:39.05 ID:Oxw6Sm3G0
穂乃果「……切れちゃった」
千歌「穂乃果さん! 雪姉は……雪穂さんは!!?」
穂乃果「………」
千歌「穂乃果さ―――」
――メキメキメキッ!!!!
耳元に当てていたスマホが粉々に潰れる。
憤怒の形相で壁の一点を見つめ続ける穂乃果。
こんな穂乃果を今まで見た事が無かった千歌は動揺の色を隠せない。
千歌「ほ、穂乃果さん……」
穂乃果「大丈夫……私は冷静だよ」
千歌「で、でもそんな風には―――」
穂乃果「うるさい私は冷静だよ!!!!!!」
千歌「ッッ!!?」ビクッ
穂乃果「……はは、全然冷静じゃないね……ごめん」
千歌「い、いえ……そ、その、大丈夫です。それよりも、電話の相手は何と言っていたんですか?」
穂乃果「メールで送られた場所に来いって言ってた。だから急いでそこに行こう」
千歌「メール……ですか?」
穂乃果「どうしたの?」
千歌「そのメールは誰のスマホに送られたんですか?」
穂乃果「そりゃ勿論、私のスマホ……あっ」
千歌「ですよねー……」
43 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2018/04/11(水) 00:38:06.41 ID:Oxw6Sm3G0
吸血鬼「おお、まだ家の中にいるじゃん」
吸血鬼「こいつら、別に俺らでやってもいいんですよね?」
吸血鬼「ああ、ボスから許可は貰ってる」
吸血鬼「さっさと殺して別のハンターの所に行こうぜ」
千歌「こ、こいつら……いつの間に集まって来たんだ!?」
穂乃果「……丁度いいや。誰か一人くらいアイツの居場所を知ってる奴がいるよね。そいつから聞き出そう」
穂乃果「千歌ちゃん、武器を構えて。雪穂を助けに行くよ!!」カチャッ
千歌「はい!!!」
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