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カドック君がカルデア爆破から生還しました。【Fate / FGO】
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1 :
◆.qiZSe5l06
[saga]:2018/04/10(火) 19:59:17.55 ID:Dd0X/Dlv0
セイバー「極光は反転する……光を飲め」
聖剣に魔力が収束する。いや、あの禍々しさは魔剣と言った方が近いか。どんな歴史を辿ればかの騎士王があんな姿になるんだか。
カドック「キャスター、やり方も他の被害も問わない。アイツを防げるか?」
キャスター「ハッ。そいつが出来ないからお前さんたちに力を借りたんだろうが。いや、貸したのか? どっちにせよありゃ無理だ」
カドック「令呪でバックアップすればどうだ」
キャスター「さあな。こちとらさっきまではぐれサーヴァントだった身だ」
カドック「できるか、できないのか、どっちだ!」
キャスター「あそびの足りねえボウズだなぁ」
セイバー「"約束された勝利の剣"」
カドック「っ……! 令呪をもって命ずる……」
星の聖剣。その一振りが大空洞をなぎ払う。
ああ……これから世界を救おうというのだ。この程度の危機は何度だって訪れるのだろう。
僕はどこまで行っても凡庸で、平坦で、ただそこにいただけだ。
なあ、ヴォーダイム。
あんたならどうした?
・
SSWiki :
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2 :
◆.qiZSe5l06
[saga]:2018/04/10(火) 20:00:22.06 ID:Dd0X/Dlv0
・
数時間前
オルガマリー「ちょっとあなた、あなたよ! 聞いてる!?」
……疲れてる。
眠気なんてものは忘れたが、それでも不眠不休でいられるほどタフじゃない。
これからレイシフトが行われる。その最終段階としてオルガマリー所長によるミーティングが行われているわけだが、僕は疲れていた。
選抜チーム……Aチームであるこの僕が、だ。
情けない話だが、僕はこのAチームの中では一番の劣等生。凡才だ。突出した天才たちの中でやっていくには努力するしかない。
故に僕は、疲れている。
眠気も疲労もとうに忘れて、この体は無限の努力でできていた。
ただ一人、ひたすら合理的に、効率的に、出来うる最善を持てる力全てで。
凡庸の僕には時間がない。無駄にしていい時間なんて1秒たりとも有りはしない。
あいつら
天才たちは1秒あれば僕を深淵まで置き去りにする。
僕には、時間がない。
3 :
◆.qiZSe5l06
[saga]:2018/04/10(火) 20:01:13.56 ID:Dd0X/Dlv0
オルガマリー「カドック・ゼムルプス! 話を聞く気がないのなら出ていくなさい!」
ベリル「だとよ。カドックくん。所長様がご立腹だ」
ペペロンチーノ「どうせ昨日も最終調整でロクに寝てないんでしょ。医務室にでも行ってなさい。所長には私たちから言っておいてあげる」
カドック「……ああ」
ちくしょう。邪魔になるプライドなんてとっくに捨てたが、全く腹が立つ。こいつらの余裕はなんだ。あのヒステリー女の与太話を聞いてる暇があるのか、この最終局面で。
腹が立つ……自分自身の才能のなさに。
部屋を出るとき、ふと居眠りしてるマスター候補が目に付いた。たしか、レイシフト適正だけで選ばれた素人だ。
カドック「ふん……僕より先に、あいつの居眠りが見つかってりゃ……」
といいかけて、己の凡庸な思考に嫌気がさした。
・
4 :
◆.qiZSe5l06
[saga]:2018/04/10(火) 20:02:25.08 ID:Dd0X/Dlv0
・
ロマン「お……? カドック君じゃないか。僕の城に何か用かい」
カドック「ああ。少しベッドをかりる」
ロマン「ははは。これからレイシフトだっていうのにずいぶん余裕だなあ」
カドック「うるさい」
本当にこの顔が余裕あるように見えるのか?
ロマン「たしか今はミーティング中だったはずだろう」
カドック「最終確認ならとっくの昔に終わってる。そのうえで昨日も一昨日もその前も……何度も何度も"最終確認"したさ。今更他人に言われることなんてない。僕は効率的なのが好きなんだ。無駄話をするくらいならギリギリまで体を休める。バイタルチェックを頼む。ドクター」
ロマン「おいおい、僕は今サボり中なんだぞう」
カドック「……ならサボりの片手間でいい。それくらいできるだろう」
ロマン「それサボれてないよね? 僕はこれからマギ・マリが更新されてないかチェックしなくちゃならないんだ」
カドック「この最終局面でそんなものをチェックしてる暇があるなら……いやもういい」
疲れる。
ロマン「よく休んでおくんだ。カドック・ゼムルプス。僕は君のこと、陰ながら応援しているんだよ。なにせ……」
久しぶりの睡魔に意識が持っていかれる最中、あの男が何か言っているようだったが、まあどうでもいい。
・
5 :
◆.qiZSe5l06
[saga]:2018/04/10(火) 20:03:19.74 ID:Dd0X/Dlv0
・
黒板を引っ掻くような、耳障りな高音で目を覚ました。
ロマン「まずいぞ、早く起きるんだカドック君、ここも安全じゃないかもだ!」
カドック「な……に……」
ロマン「目を覚ませ! バイタルチェックは済んでる! どういうわけか君は健康そのものだ!」
当然だ。休眠こそ不規則だが、毎日1リットルの牛乳、ボウルいっぱいの野菜に適度なタンパク質に加え小まめなバイタルチェックから足りない品目を割り出しその都度補っている。あとは魔力で誤魔化しているんだ。過労だろうが寝不足だろうが健康を損なうはずがない。
ロマン「ぼーっとしてるな! くそ、カルデアスは無事なのか……!?」
なんだって?
最悪の予想が頭をよぎる。
煙っぽさ、鳴り止まないサイレン。今のセリフ……。
まさか。そんなことは有り得ない。
カルデアスに走る。
ミーティングはどうなった?
あいつらはどうなった?
レイシフトはどうなる?
人類史の観測は……。
僕たちは……。
ロマン「……生存者はいない。カルデアスだけが無事だ」
6 :
◆.qiZSe5l06
[saga]:2018/04/10(火) 20:03:53.04 ID:Dd0X/Dlv0
カドック「…………」
ロマン「Aチームも……」
カドック「ぺぺのやつ……僕をギリギリまで寝かせやがって……」
ロマン「僕は一旦ここを離れる。カルデアスを止めるわけにはいかない。キミもすぐに脱出するんだ。いいね」
カドック「…………」
脱出して、どうする。
これから僕は証明するはずだったんだ。
僕にだって……ということを。
それがどうだ。この場を生き延びて、どうなる。
もうおしまいだ。
ヴォーダイム。オフェリア。ヒナコ。ぺぺ。ベリル。デイビッド。キリエライト。そして僕。
信じられないことに、我々は何も成さないまま終わった。天才も凡才も、等しく。
アナウンス「適正マスター、発見。レイシフトまで3、2、1……」
意識が、分解され、体が解けるような感覚を最後に、僕の未来は潰えた。
・
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