「それでは、勇者の面接を始めます」

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102 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/22(日) 10:50:53.39 ID:AjSdyyFV0

行政官「はぁ……まぁ……そうかもしれませんね……」

大司教「歯切れの悪い奴じゃのう。しかし、剣聖。よく気づいたな」

剣聖「恥の多い人生を送ってきたからな」

大司教「あらまあ」

剣聖「だいたい短い間だが、それなりに信頼関係は築いてきたはずだ。何を恥じることがある」

大司教「まあ、人の心は誰しも移ろいやすいものじゃ。恥じることではないわな」

行政官「そうなんでしょうけど」

剣聖「……一つアドバイスだ行政官。自身の心変わりを恥じているのなら、いっそのこと振り切れてみろ」

行政官「振り切れる?」

剣聖「勢いに任せて思いを反転してみろ。意外かもしれんが、それだけで気が軽くなる」

行政官「具体的にはどうすればいいのですか?」

剣聖「そうだな……世俗の言葉で言うならば、『悪堕ち』だな。なに、演じるだけでも構わん」

剣聖「中途半端にいい子ちゃんぶるから恥ずかしいのだ」

剣聖「世界の平和?知ったことか。更迭されるぐらいなら、適当に勇者を決めてやる」

剣聖「ほら、言ってみろ」

行政官「えぇ……」

行政官「……」

大司教「物は試しじゃよ」

剣聖「そうだ、言ってみろ」

行政官「更迭されるぐらいなラ…適当に勇者を決めてやる……」

大司教「ほっほっほ」
103 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/22(日) 10:51:21.70 ID:AjSdyyFV0

剣聖「いいぞ」

行政官「……認定された勇者が、逃げ出そうが知ったことか。私たちの仕事は『勇者』を決めるところまでで、その後は知らん」

大司教「のってきたのう」

剣聖「それ、もっとだ」

行政官「勇者の息子……?勇者は私の友達だ!コネ入社ぐらいさせて何が悪い!……」

行政官「……ふぅ」

剣聖「どうだ?楽になったろう」

行政官「……ふふ、そうですね。ありがとうございます」

行政官「しかし、なりたくないと言っている者を勇者に任命するというのは少し罪悪感が残りますね」

剣聖「まあた、いい子ちゃんが顔を覗かしているぞ」

大司教「性分なんじゃろうて」

大司教「少なくともあやつは自分の意志で、この面接を受けに来た。なれば結果がどうなろうと知ったことではないわ」

行政官「まあ、それもそうですね」

剣聖「そういえば、辞退って許されるのか?」

行政官「制度上は。しかし、王からの拝命を受けないのは極刑に値します」

剣聖「まあ、現実的にはないということだな」

行政官「そういうことです」

大司教「……」

剣聖「……」

行政官「……」
104 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/22(日) 10:51:49.08 ID:AjSdyyFV0

行政官「…さて、それでは皆さん。議論は尽くされた、とは到底言えませんが、我々には何にしても時間がない」

大司教「全く持って、その通りじゃな。我々、人類に残された時間はあとわずかじゃ」

行政官「拙速ではありますが、採決にうつりたいと思います」

剣聖「兵は拙速を尊ぶ。…構わんさ」

行政官「既にご存知かと思いますが、この決議は我々3人が全会一致でのみ成立します。よろしいですね」

大司教「うむ」

剣聖「……うむ」

行政官「それでは、お二方よろしくお願いします」

行政官「怠惰な暮らしに溺れる先代勇者の息子、彼らは勇者足り得るか?」



行政官「可です」




剣聖「可だ」





大司教「可じゃな」






行政官「それでは全会一致で、彼を『次代の勇者』と任命いたします」
105 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/22(日) 10:52:16.76 ID:AjSdyyFV0

――――――

最終候補者 ニートな勇者 勇者認定

――――――
106 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/22(日) 10:52:44.53 ID:AjSdyyFV0
――――――


行政官「さて、これにて私たちの仕事は終わりです」

大司教「とりあえず、今晩は打ち上げじゃな」

行政官「いいですねえ」

剣聖「この間の店は、なかなか良かったぞ」

行政官「そう言っていただけると、うれしいです」

大司教「しかし、これで最後か」

大司教「ここ半年ほど、数日おきに会っておったからな。すこし名残惜しいの」

剣聖「同感だ」

行政官「まあ、同じ王都に居を構える身ですし。お会いすることもありましょう」

大司教「……まあ、そうじゃな」

行政官「……」

剣聖「……俺は、自分の言葉通り。あの若造を鍛えにいくつもりだ」

剣聖「そうだな……」

剣聖「できれば『勇者』の様子を、定期的にお前たちに知らせたいのだが」

大司教「ほう!」

行政官「それはいい考えですね。仕事の投げっぱなしはいけませんものね」

剣聖「……うむ、では今後は月一程で報告会を行うということで良いか」

行政官「そうですね、では念のため採決をとりましょうか」

行政官「職務外ではありますが、今後も定例報告会を開催していく。よろしいでしょうか?」




行政官 大司教 剣聖 「 「 「   可!   」 」 」
107 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/22(日) 10:53:12.11 ID:AjSdyyFV0

――――――

〜どこかの大陸、どこかの場所で

――――――
108 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/22(日) 10:53:39.56 ID:AjSdyyFV0

戦士「お、目が覚めたか……大丈夫か?」

若い男「あれ―――ここは?さっきまで居た綺麗な女性は何処に?」

戦士「綺麗な女性?」

魔法使い「あら、戦士の前でそんなに褒めないでよ」

若い男「い、いや、魔法使いの事じゃなくて……」

魔法使い「あらら、ちょっと大丈夫じゃなさそうね」

戦士「まあ大接戦だったしな。まさか魔王軍幹部の奴が自爆するとは思わなかったぜ」

若い男「魔王軍幹部!?自爆……?」

戦士「お前、もろに巻き込まれてたからなあ。爆発の衝撃で、記憶が混乱してるんだろう」

若い男「……つぅ!なんだこれ!」

若い男「い、い、いたい!頭が無茶苦茶いたいよ!」

戦士「今度こそ、目が覚めたかな」

若い男「うげえ……頭痛が痛いよお」

魔法使い「ちょっと見せてみなさい?」

魔法使い「あーあ、額に大きな痣ができちゃってるわ」

戦士「どれ、見せてみろ。うわあ、これは酷いな」

若い男「あちち……」


魔法使い「あら、この痣」



戦士「どうした?」




魔法使い「まるで鳥みたいな形してる」
109 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/22(日) 10:54:06.62 ID:AjSdyyFV0

――――――

「それでは勇者の面接を始めます」 おわり

――――――
110 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/22(日) 10:55:43.67 ID:AjSdyyFV0
直近のこちらもよろしくおねがいします。

勇者「ノーイベント、ノーライフ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1522420206/

穴掘り勇者
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515583167/
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/23(月) 02:22:02.68 ID:VD26TC9DO

両方とも既読ですわ
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/23(月) 02:26:32.69 ID:fr0MkOb0o
結局最初の男が勇者だってことでいいの?
いっそ面接に来た人間全員に神託が現れたら面白かったんだが
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/23(月) 07:46:10.44 ID:YxWqSluP0
その落ちすっごくいいですね
今からでも書き直したいレベルです
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/25(水) 15:54:30.75 ID:OKIsiakao
書き直すのはアレだが書き損じていた各キャラのエピソードを追加するのは何の問題も無かろうて
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/30(月) 01:07:09.65 ID:/69vshieO
めちゃくっそ面白かった
酉検索して出てきた作品大体読んであったけどアンタだったのか

どのssもすげぇ面白かったよホント書いてくれてありがとう
またなんか書いてくれ
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