阿良々木「忍野が怪談を解決して行く?」

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:05:41.29 ID:pV04h44/0
「あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"……」と叫んだ。
素早い動きで這いずりつつ、階段を降りて行った。

忍野「いい加減儂の上から退いてくれんかの」

阿良々木「ごめん、腰が抜けて……」

忍野「嘘を吐け。そんなもん、お前様なら数秒で治るじゃろ」

から笑いをしながら立ち上がる。

忍野「アレが何者かは知らんが、追い掛けるしかないじゃろうな」

阿良々木「あぁ、そうする以外の選択肢があっても、アレを放っておくわけにはいかないし」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:06:44.32 ID:pV04h44/0
後を追うのは楽だった。
階段から眺めるだけで、何処へ行ったかは一目瞭然だった。
多量の血液が、「それ」の動線を表していたのだ。

阿良々木「あの部屋だ」

「それ」が移動した先は、押入れにメッセージが残されていた部屋だった。

忍野「のう、ここらで1つ、儂の推理を聴いて行かんかの」

阿良々木「どうした、そんなに勿体ぶって?と言うか、そんな余裕があるのか?」

忍野「儂の考えとる通りならの」

阿良々木「…解った、聴かせてくれ」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:08:09.87 ID:pV04h44/0
僕が聴く姿勢を示すと、階段の1番上の段に腰掛け、隣をポンポンと叩いた。
座れと言うことか。
それ程長い話になるのだろう。

忍野「まず、今の儂らが置かれとる状況じゃが、これは家そのものの記憶ではないかと思うておる」

阿良々木「家の記憶?」

忍野「まぁ、擬似的な付喪神じゃと考えい」

阿良々木「…いや、そもそもなんでそんな考えに?」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:09:59.87 ID:pV04h44/0
忍野「最初のお前様の叫び声じゃよ。誰も居ないと思っておったから、つい声を上げてしもうた様じゃが、隣の部屋にアレが聴こえんわけなかろう」

阿良々木「たまたま気のせいだと思った可能性は?」

忍野「無くはない。じゃが、根拠はまだある。あの押入れから飛び出してきたナニか。あ奴は何故目の前の儂らを無視して階段を降って行ったのか」

阿良々木「僕が避けたから、とか…?」

忍野「かかっ。あれを避けたとは言わんじゃろ。隙がありすぎて、第2撃を食らわすのも容易だった筈じゃ」

阿良々木「つまり?」

忍野「アレはお前様を狙って飛び降りたのではなく、偶々飛び降りようとした所に直前までお前様が立っておったんじゃよ」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:11:16.59 ID:pV04h44/0
阿良々木「じゃあ、奴に僕達は見えていないって事になるのか?」

忍野「そうじゃな。過去の映像を見ているのと同じで、儂らはこの世界に介入出来んものだと考えておる」

阿良々木「……ちょっと待てよ。過去の世界って事は、これはまさか、呪いが生まれた瞬間を目撃しているって事か?」

忍野「うむ、恐らく、じゃがの。アレは、今日この時、何者かに惨殺されて、この家の屋根裏に隠された挙句、呪いと成り果てた」

忍野「しかし、残念ながらここで介入は出来ぬ。だから、あの部屋へ行く前に話しておきたかったのじゃ」

忍野「恐らく、あの部屋の光景は、お前様には堪えるものになるだろうよ」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:12:34.51 ID:pV04h44/0
阿良々木「そっか……。母親に助けを求めた少年、それが最初の犠牲者なんだな」

忍野「お前様が気に病むことではない。ただ、母子の事を思うなら、戻ってちゃんと供養してやらんとの」

阿良々木「……それで、あの親子は呪いから解放されるのか?」

忍野「それは無理じゃ。特に母親の方は、最早呪いそのものになってしまっておる。退治するしかあるまい」

阿良々木「そんな救われない結末がっ……」

忍野「いや、救いというなら、これ以上呪いをばら撒かずに済む、と言うのは充分に救いじゃと思うぞ」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:13:30.72 ID:pV04h44/0
忍野「それに、これは恐らくあの少年の意思でもある」

阿良々木「……?」

忍野「『ママ 助けて』というメッセージじゃ。儂らはアレを、勝手に母親に助けを求めるもの、と認識したが」

忍野「考えてみれば、あの文字を刻む時、既にそやつは死んでおるのじゃ。あの出血量では即死じゃろう」

忍野「そんな状態で何を求めていたんじゃろうな」

阿良々木「『ママを助けて』…だったのか」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:14:41.01 ID:pV04h44/0
忍の話を聴いたあと、件の和室に入ってみた。
すると、開いた襖から部屋全体に血飛沫が飛んだ痕跡が残っていた。
所が、肝心の親子の姿は見えず、僕達は諦めて部屋を後にした。

阿良々木「っ!」

流石に、2度目だったのでそこまで取り乱したりはしない。
昼間の惨殺現場から、深夜の幽霊屋敷へと戻ってきたのだ。
階段を見上げる。
そこには、無残な姿になってしまった女性がいた。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:15:31.64 ID:pV04h44/0
「あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"……」

もう、恐怖は感じなかった。
申し訳なさみたいなものさえ、感じていた。

阿良々木「ごめんなさい、僕達は…貴女を退治します」

階上から四つん這いで駆け下りてくる。
忍と僕とで一本ずつ持った妖刀心渡を、構える。
振り乱した髪の毛が伸び、僕達を捕らえようとする。
忍がそれらを全て切り落とし、僕に目配せをした。
「決めてこい」と。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:17:39.31 ID:pV04h44/0
階段を駆け上がり、彼女の目の前に立つ。
一息に、その頭目掛けて刀を振り下ろした。
せめて、苦しまぬ様に、一撃でかたをつけたかったのだ。
キラキラと砂粒が散っていく様に、彼女は崩壊して行った。
何処からともなく2人分の「ありがとう」が聴こえた気がした。

忍野「これで、呪いの被害者も回復するじゃろう。尤も、命まで奪われてしまった者はもうどうにもならんじゃろうが」

忍野「それでも、呪いを振りまくよりは幾らか救われた気持ちなのではないかと思うぞ」

阿良々木「……うん」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:18:40.45 ID:pV04h44/0
後日譚と言うか、今回のオチ。
その後、屋根裏を隈なく捜索し、遺体を見つけた。
こんな所で何をしていたのか、ご家族は?などと問い詰められては面倒なので、警察に通報した後、僕達はさっさとトンズラした。
後に聞いた話では、彼女の親類縁者は全員亡くなっており、無縁仏としてお寺で供養されるらしい。
これも呪いの影響なのか、偶然なのか、色々考えてしまう。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:19:44.98 ID:pV04h44/0
月火「お兄ちゃん!何で私の体調が悪い間に帰ってきて、回復したと思ったらもう居ないの!?ウチに帰ってきたら私に挨拶するのが筋でしょ!」

幽霊騒動を片付けた後、一旦帰宅した僕は、火憐に「もう大丈夫だ」という事を伝えて、またすぐにアパートへと戻ったのだったが、翌朝一番に月火からそんなモーニングコールが来た。

阿良々木「うるせぇ!今何時だと思ってんだ!」

お前は極道の幹部かよ、などと下らない突っ込みも思い付いたが、生憎とそんなテンションではなかった。

月火「何よその態度!プラチナムカつく!」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:21:16.28 ID:pV04h44/0
阿良々木「僕はお前のその態度に常にムカついてるよ!」

月火「大学生なんてどうせ暇なんでしょ!?もっと私に顔を見せにかえって来てよ!」

阿良々木「お前、大丈夫か…?まだ体調悪いのか…?」

月火「まぁ、そうだね。昨日の今日だし、病み上がりで絶好調とは言えないかな」

絶好調の月火とは、僕の部屋で下駄と彫刻刀装備で暴れまわる状態を指すのだとしたら、もう暫くはそのままでいて欲しいものだ。

月火「…だから、これは弱った私が間違って漏らしちゃう言葉だからね?」

阿良々木「うん?」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 10:23:28.84 ID:pV04h44/0
月火「…ありがとう、お兄ちゃん」

阿良々木「良いよ、気にすんな」

月火「大人ぶっちゃって、やっぱりムカつく!」

そう言って一方的に切られた。
一方的にキレられた。

阿良々木「プラチナ、じゃないって事は本気でムカついてたのか…?」

まぁ、いずれにせよ。
別に僕は誰かに感謝されたくてこんな事をした訳ではないのだ。
ならば、今回の報酬としては、3人分の「ありがとう」で充分だろう。

end
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/05(木) 10:25:40.37 ID:pV04h44/0
本当はまだまだ書きたかったのですが
やはり今回ので自身の未熟さが身に沁みました
出直してきます
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 14:19:11.06 ID:P6c5szVA0
乙ですよー
物語シリーズは書く人少ないから嬉しい
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