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唯「運命石のノスタルジア」
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102 :
1
[saga]:2018/03/31(土) 23:43:21.60 ID:gpA1byc20
「たまたまだったんだよ。その原因が解決しようもないことだったら、そこで私たちは詰んでた」
存在し続けること。だからその間、あずにゃんは存在しなかった。
あずにゃんは、3年前の誕生日から3日前まで、りっちゃんの手によって未来に連れて行かれていた。
「唯には辛い思いさせちまったようだな……。特に、拉致のことは悪かった」
一回目のタイムリープの後のことだ。まゆりちゃんが殺されたこと。犯人はりっちゃんたち未来からタイムリープした人たちだったのだけれど、あれの目的もある意味とても理にかなったことだった。
私が、あずにゃんの死を観測しないままにタイムリープするのを防ぐためだ。そのために、私にあずにゃんが死んでしまう9月12日以前にラボに行くと、まゆりちゃんが死ぬという恐怖を植え付けた。
「でも、あれをしたのってりっちゃんじゃないんでしょ? あ、えっと、あれの犯人はシュタなんとか世界線の未来からきたりっちゃんであって、この世界線、シュタなんとかプライム世界線のりっちゃんではないんだよね?」
「その通りだけど、なんだお前、私の話理解出来るのか?」
「えへへ、勉強したんだよ」
あの漂流中に、私はタイムリープについて調べていた。だから多少は話についていける。
元の世界線のりっちゃんたちは、完全版タイムリープマシン(電話レンジ)を開発し、さらに世界線変化を観測する装置を作り出すことでさっき言ってた原因とは何かを探して、そしてプライム世界線に移動するためのキッカケをもたらした。
この世界線のりっちゃんたちは、あずにゃんを未来に避難させるため、未来と過去に行き来できる完全なタイムマシンを開発したってことだ。
103 :
1
[saga]:2018/03/31(土) 23:43:57.11 ID:gpA1byc20
プライム世界に移動するためのキッカケについて、
「元の世界の唯はな、どうしてもタイムマシンが作れなかったんだ。力不足でな。タイムマシンが作れたんなら、梓の死に関してだけ言えばプライムに来なくても良かったんだ」
つまり、シュタインズゲートプライム世界線とは、私がタイムマシンを開発できた世界線のことだ。タイムマシンを開発できれば、あずにゃんを助けることができることは観測装置によって分かっていた。
シュタインズゲート世界線では、また別の世界でタイムマシンを開発した牧瀬さんやダルさん、岡部さんが死んでしまったから、タイムマシンについては開発できなかったんだ。
「プライムでは岡部さんたち未来ガジェット研究所勢も、それに梓も生きてるしタイムマシンを開発するのはそんなに時間がかからなかった。何年後かは言わんが私の見た目から判断しな」
りっちゃんは明らかに二十代だ。
「岡部さんたちは、大丈夫なの?」
「ああ。岡部さんたちの死の原因はすぐに分かった。『特定期間中に平沢唯、中野梓と接触すること』が原因だ。だからあと1ヶ月は彼らに会いに行くなよ」
あと、私がピアニストになってたこと。
「それは……私からしたらこじつけみたいな話なんだが、才能を開花させるため、だそうだ。ピアノだけでなく学問のもな。それと重要なのは、中学時代に唯と梓を出会わせるため。それによって梓は、未来に行った後も唯のために勉強できたんだ。この時代に戻ってきてすぐに桜高に転入できるように、中1から高1までの勉強をして、梓は1年でやりきったんだよ」
幼い頃の私にピアノが与えられるように、そして有馬先生の演奏を聴くように中学校の文化祭に行くよう仕向けた。そして、開花した私とバンドを組めるよう、りっちゃんたちにも幼い頃からドラムやベース、キーボードが与えられた。
104 :
1
[saga]:2018/03/31(土) 23:44:38.43 ID:gpA1byc20
「勘違いするなよ、唯。当事者はお前だ」
りっちゃんは私の髪をくしゃくしゃと撫でると、
「お前が梓を救うんだ。諦め? 思い出にする? そんなのお前には無理だよ」
りっちゃんの笑顔は、今も未来も変わらないようだった。
「分かってるよ。私は……」
「唯先輩!」
あずにゃんが呼んでる。私は走り出した。君の元へ。一度だけ、りっちゃんに振り返る。
「……私たち、最強だもん!」
君のために、もう一度無理をしよう。辛いことがたくさんあるだろうけど、私は前に進める。
これは、現実の物語。
素敵で残酷な、ただ一つの願いの物語。
旅に出よう。どこまでも幼くて我儘で諦めの悪い私たちだけど、君となら私は、どこにだって飛んで行ける。
私たちの物語は今、続き始めた。
……fin.
105 :
1
[saga]:2018/03/31(土) 23:49:34.33 ID:gpA1byc20
以上、第3部でした。
メインストーリーはこれで完結です。
ここまで読んでくださった方、いるか分かりませんがありがとうございました。
私自身書いていて、とても懐かしい気分になりました。
次に投稿する第4部は、けいおん単体のサイドストーリーです。この世界線での続き、大学編になっています。
後日談のつもりで書きましたが、分量は第1.2.3部と同程度あり、内容もあります。
ぜひお付き合いください。
続く第4部のタイトルは、
唯「プラチナム・スカイ」
です。よろしくお願いします。
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