加蓮「……ねえ、私の眷属になってよ」奈緒「え……」

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 00:40:23.67 ID:pEANMrWe0
「幻惑魔法!」

あたしは魔法を唱え、周囲一帯に魔法の霧を出す。
手練れである美波たちには気休め程度にしかならないと思うが、少しでも時間を稼ぐんだ!

「霧!?」

「突風魔法っと」

杏が唱えた魔法であたしの作り出した霧が吹き飛ばされる。

「ごめんねー。杏、だいたいの魔法使えるんだー。なんだって賢者だから!」

杏はドヤ顔でそう言い放つ。
賢者といえば最高位の魔法使いじゃないか。なんでそんなやつが傭兵なんかやってるんだよ!
考えても仕方ねぇ。なんとかしないと……。
吹っ飛ばされたから、幸いにも美波たちとは距離がある。体は傷だらけだし、あんまり得意じゃないけど、魔法で遠距離戦だ!

美波ときらりがあたしに距離を詰める。

「獄炎魔法!」

大きな火の玉があたしの手の平から美波たちを目掛けて放たれる。

「激流魔法!」

しかし、美波が唱えた水の魔法によって綺麗にかき消されてしまう。

「私、水の魔法も得意なの!」

くそっ!次は加蓮の時にもやった……

「氷結魔法!」

足元を凍らせて動きを止める!

「にょわー☆」

が、ダメ!肉体強化された2人の脚力にあたしの魔力程度じゃ敵わなかった。

もう距離も近い!
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 00:42:01.16 ID:pEANMrWe0
美波が突いてきた槍をなんとか剣で弾き返す。
クソっ!体勢が崩れた!

「隙ありぃ!」

きらりは隙を見逃さず、あたしに攻撃しようとする。

くそっ!ここまでか……。時間もあと3分ぐらい必要だっていうのに!
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 00:42:28.09 ID:pEANMrWe0

ーーーーーー

きらりの攻撃は奈緒の腹部にクリーンヒットし奈緒は吹き飛ばされる。

吹き飛ばされ倒れた奈緒は一向に動かない。

「終わりね……。行きましょうか」

「はーい☆」

「これからキツいだろうなぁ」

話しながらも警戒は怠らず、3人は屋敷の中に入る。

「ごめんね……奈緒ちゃん」

屋敷に入るときに小さく呟かれたその言葉は風に吹かれ消えていった。
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 02:14:51.33 ID:jzuZepU8O
そういや昔トラプリのヴァンパイアSSだったかあったな
凛加蓮は望んでなったけど奈緒だけはならなかった感じの
もしかしたらならなかったのは加蓮だったかも…うろ覚えだ
106 : ◆sWs1XPoFz2Ci [saga]:2018/03/22(木) 18:28:53.63 ID:pEANMrWe0
ーーーーーーーーーーーー

部屋に戻って人形を作り、私に見えるように魔法をかけ続けてから約12分がたった。
よしっ、あともうちょっと……。

すると、聞こえたのは複数人の足音と話し声。
奈緒は!?大丈夫なの!?
すごく心配だけど私は奈緒を信じる。きっといい感じに時間を稼いでから撤退したんだろう。

まだ身代わりは不完全だけどこれ以上は無理!そろそろ隠れないと……。

足音が近づいてきた。
私は椅子に身代わり人形をセットし、ヘビに化けベッドの下に隠れる。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/22(木) 18:29:32.36 ID:pEANMrWe0
慎重にドアが開けられ、3人組が覗き込む。

「まだ、こっちに気づいてなさそうだにぃ……」

「…………」

「どうしたの?杏ちゃん」

「……いやちょっとね」

マズい!不完全だったしもしかしてバレた!?
ついこのことを言った小さい杖を持った人を見つめていると、目があった。
やばい!?戦っても負けるつもりはないけど戦うわけにはいかないもんね。

「……まぁいいや。それでどうするの?」

あの子は少しニヤけたような顔をした後、私から視線を外し、会話を続ける。

助かった……。

「……きらり?」

「ちょびっと杏ちゃんが変な気がしたんだけど……気のせいかにぃ……」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/22(木) 18:31:17.06 ID:pEANMrWe0
「作戦を説明するわね。私がまず不意を突いて心臓を一突きします。そのあと万が一のためきらりちゃんがトドメをさしてください」

「りょーかい☆」

「はーい」

3人は小声で話し合っていた。
こっちには聞こえないと思ってるだろうけど、私って耳がいいんだよね。

合図の後、隊長らしき茶髪の長髪の人が銀の槍で心臓を一突きし、そのあと長身の人がハンマーで身代わりの頭を吹き飛ばした。

うわぁ……えげつな……

身代わり人形はボロボロになって崩れ去る。

「よしっ!これで大丈夫かな。それじゃ帰りましょうか」

「うんっ!杏ちゃんよろしく☆」

「はーい。行きもこうやって楽できたらよかったのになぁ」

「しょうがないでしょ。行ったことがあるところにしかいけないんだから」

「まあねー。それじゃいくよ……」

「移動魔法!」

3人が光に囲まれ消えていった。
私が使えない、移動魔法を使えるなんてすごい魔法使いっぽい……。

ふぅ……なんとかなった……。
あたしはベッドの下からでて元の姿に戻る。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:32:06.33 ID:pEANMrWe0
「ねぇ」

っ!?
突然背後から聞こえた声に振り返る。

「誰!?」

「杏だよー」

確かあの3人組で一番小さい魔法使いの人……。

「なんで残って……」

「いやー一気に3人も移動させるのはしんどいからさ」

「……本当は?」

「杏はあれが偽物だって気づいてたんだよね」

「じゃあなんで2人に言うなりして対処しなかったの……?私を殺すために来たんじゃないの?」

「まあそれはそうなんだけどね。まぁ傭兵だし頼まれた仕事はやるけどさ、無闇に殺したいってわけじゃないんだよね。殺したってことになればこっちの人たちも安心するだろうしいいんじゃないかな」

「そっちの対応的にも杏たちが何もしなかったら手を出すつもりはないんでしょ?」

「それはそうだけど……」

杏は私のベッドの上に座ってのんびりしている。
思ったよりいい人なのかもしれない。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:32:57.02 ID:pEANMrWe0
「まぁほんとは戦うのめんどくさいだけなんだけどね」

「え……?」

「だって吸血鬼っていうくらいだし結構強いんでしょ?万が一負けて死んじゃったりしたら嫌だし、ボロボロになって勝つのも疲れるよね」

「それはそうだけど……」

杏の言っていることは嘘には聞こえない。本心で言っているのだろう。

「あっそうだ。なんかお金になりそうなの持ってない?見逃してあげたんだからそれぐらいはもらってもいいよね」

「そこの引き出しの中にアクセサリーとか宝石類が入ってるけど……」

「おっ、いいね。それじゃあ何個か貰ってくね」

杏は私の言葉を聞くと引き出しを開き物色し始めた。
アクセサリーなんてまた買えばいいだけだし、これで助かるなら安いもんだ。というか、これがここに残った目的だったのかも……。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:33:40.15 ID:pEANMrWe0
「よしっと、それじゃあ杏は帰るね」

「うん。じゃあね……っていうのはおかしいかな」

「かもね。っとそうそう。えっと奈緒ちゃん……だっけ。その人、きらり達にやられて相当やばい状態だよ」

「え!?」

奈緒が!?そんな……

「多分まだ死んでないと思うから気になるんだったら助けにいったら?それじゃあね」

私は杏の言葉を最後まで聞かずに、奈緒のいるはずの外に向かって一目散に走る。後ろから強い光に照らされる。

奈緒……!奈緒……!
無茶しないっていったのに……どうか無事でいて……
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:34:49.74 ID:pEANMrWe0
ーーーーーーーーーーーー

ここはスニエーク王国の私の部屋。
吸血鬼退治を終わらせてお城に戻ってきた。
おかしい。杏ちゃんだけが帰ってこない。もしかしたら何かあったのかも……
きらりちゃんも不安そうにしている。

私たちが帰ってきてから数分後、目の前が強い光に包まれる。

「ふう……っと」

「杏ちゃーん!」

「うわっと……抱きつくなよきらり」

「遅かったじゃない。心配してたのよ」

「一気に3人分も移動魔法使うのはさすがの杏でもきつかったからね。ちょっと休憩してたんだ」

「もう……。私は王様達に報告してくるから杏ちゃん達は部屋で休んでてね。報酬については後で話するから」

「はーい」

「はーい☆」

2人は部屋に向かって歩いていった。きらりちゃんが杏ちゃんを抱っこしてるみたい……。

さて、私はちゃんと王様に報告に行かなきゃ!
私は玉座の間に向かって歩き出した。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:35:50.68 ID:pEANMrWe0
ーーーーー

ふぅ……。なんとか無事に報告を終えることができた。
私は報告を終え、アーニャちゃんの部屋に歩き出す。

その間、王様の隣にいた大臣の歪んだ笑顔が頭から離れない。

何ヶ月かこの国にいてわかったことがある。このスニエーク王国の王様は良くも悪くも自分で決断ができない。だから、実質大臣が政治を行なっている。その大臣は自分の不利益になるようなことが起こりそうになればどんなことでも潰そうとするのだ。

今回の吸血鬼退治の話だって、決めたのは大臣。王様は大臣に提案されたからそれに乗っただけ。だけど、上からの命令には従わないといけないのが兵士。命令にはしたがうしかない。
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:37:10.93 ID:pEANMrWe0
どうしても納得できないのが討伐隊に任命されたのは私だけだということ。流石に私1人で勝てるわけがないから、人を増やしてとお願いしたものの却下された。人手が欲しいなら街で傭兵でも雇うんだなと言われたのでたまたまいた杏ちゃん達を雇った。報酬はほとんど自腹だ。

私だけの理由は、表向きには国の守りを薄くするためにはいかないからなんて言ってたけどそれは違う。10人ぐらいなら抜けたってなんとかなるはずだ。
おそらく、隣のヴァルガルズ王国から出張で来ている私や傭兵ならやられてもいいと思っているのだろう。

もし討伐できたら万々歳。もし私が死んだとしても、他国の人間だから構わないということだろう。

他国の人間を無理矢理戦わせにいかせ、死なせたなんて知られたらこの国もタダですまないだろうけど口の回る大臣のことだ。どうにかして
かわすのだろう。

ずるい人……。
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:38:38.00 ID:pEANMrWe0
そんな事を考えながら歩いていると、アーニャちゃんの部屋に辿り着いた。

これから奈緒ちゃんのことをアーニャちゃんに話さないといけないとなると、胃が痛くなるがしょうがない。

私はノックをして、アーニャちゃんの返事を確認してから部屋に入る。

「お邪魔するわね」

「ミナミ!お疲れ様です!それで……どうでしたか?」

「うん!バッチリ!しっかり吸血鬼は倒したよ!」

「それはよかったです!……それでナオは?」

「奈緒ちゃんは……」

私が何も言えないでいる。
事実をそのまま伝えるべき……?
それとも……。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:39:08.69 ID:pEANMrWe0
「もしかしてナオは……」

「奈緒ちゃんは吸血鬼に脅されてたの。この前ここに帰ってきたのも吸血鬼の命令でこの国の情報を集めに来たんだって」

「それで、吸血鬼の屋敷に着いたときに無理やりいうことを聞かされてた奈緒ちゃんと一緒に吸血鬼と戦ったんだけど……」

「帰ってきてないということはもしかして……」

「ええ……私たちの一瞬の隙を突いた吸血鬼の一撃で奈緒ちゃんは……」

「ナオ……!」

アーニャちゃんは涙こそ出ていないものの、今にも泣きそうになっている。
それもそうか……。仲の良かった子が生きてたと思ってたら死んじゃったんだもんね……。
そりゃあ悲しいはずだよ……。
私たちが殺したなんてとても言えない。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:39:36.72 ID:pEANMrWe0

私がしたことは正しいはず。


あのまま吸血鬼を放っておいたらいつ人間が狙われるかわからない。吸血鬼の味方をした奈緒ちゃんを殺してしまったのは仕方なかった……。上からの命令だし、放置しておくことは出来ないのは事実だ。私のしたことは間違ってないはず……。


なのに……どうしてこんなに胸が苦しいの……?


118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:40:15.21 ID:pEANMrWe0

ーーーーーーーーーーーー

いってて……。なんとか生きてるみたいだけどこれはもうダメみたいだな……。加蓮が無事ならそれで……

「奈緒……!奈緒……!」

この声は……加蓮か……?
無事か……。よかった……

「奈緒!しっかりして!回復魔法!」

「う……加蓮か……」

あたしはうっすらと目を開けると加蓮に抱き抱えられた。

ぼんやり見える空は暗く、今にも雨が降り出しそうだった。

「大丈夫!?」

「見ての通りあたしはもうダメだ……。加蓮が無事みたいでよかった……」

「そんな!しっかりして!今回復魔法かけるから!」

「いいよ……。もう回復魔法で治せるような状態じゃない……。加蓮もさっきまで魔力使ってて疲れただろ……?」

「でも……そんな……こんな時にまで私の心配して……!」

「体は動かないし、視界はぼやけてる。最後に加蓮と話ができてよかった……」

加蓮の目から涙が溢れ出す。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:40:54.80 ID:pEANMrWe0
「そんな……そんなこと言わないでよ!またしょうもない話するって言ったじゃん!」

「そうだったな……。わりぃ……」

そんなに悲しい顔するなよ……。加蓮に救われた命なんだ。加蓮のために失うのなら悔いはないさ。

雨が降り出したのか、ちょくちょく水滴が体に落ちるのを感じる。

「奈緒!しっかりして!」

っ!そろそろ意識が飛びそうになってきた……。ここで気を失ったら死……。確証はないけど、なんとなくわかる。

最期ぐらい笑って見送ってくれよ……。そんなことを思ってると急に加蓮の泣き声がやむ。頑張って目を開け、顔を伺うとなにか葛藤しているようだ。

しばらく固まった後、加蓮は振り絞るようにこう言った。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:41:35.25 ID:pEANMrWe0



「ねえ奈緒……私の眷属になってよ……!」


え……




121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:42:03.05 ID:pEANMrWe0
「そうすれば吸血鬼特有の再生力を得られるからその大怪我だって治るはず……!それからの生活だって、あたしにできる限りサポートする……!」

「でも……お前……」

「わかってる!この前奈緒を眷属にしたくないっていったことなんて!でも……でもこうしないと私のせいで奈緒が……」

「奈緒が眷属になって、吸血鬼みたいな……いや、私みたいな苦しみは味合わせないって約束する!」

「私の血を一定量吸えば眷属になる。血を吸うのがしんどいんだったら、私から血をあげる。だから……お願い!」

加蓮は泣きながら縋るように言った。

でも、あたしの答えは決まっている。
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:42:34.91 ID:pEANMrWe0
「ありがとな……加蓮」

「じゃあ……!」

「でも、それはできない」

「なんで!?死んじゃうんだよ!?」

「前にも言ったけど、あたしは人間だ……。人間として生まれて、人間として死ぬ。そういうもんだろ?」

「じゃ、じゃああの時のお願い!初めて試合した時のやつ……!なんでもいうこと聞くって言ってたでしょ……?」

「そんなこともあったな……。でもそれは聞けない。わかってくれ……」

「でも……私のせいで……」

「大丈夫だ、加蓮は悪くない。悪いのはあたしと……そうだな、ちょっとの運がなかったかな」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:43:08.52 ID:pEANMrWe0
「……奈緒は死ぬのは怖くないの?」

「そりゃあ怖いさ。でも、生とか……死とか、そういのには逆らったらだめなんだよ……」

あたしがそう言い終わると加蓮の泣く声はいっそう大きくなった。

クソっ!そろそろダメだ……。

「でも……私は逆らっちゃった……!」

ああ……。加蓮が何か言ったけど聞こえねぇ……。

また……またいつか会えたら一緒にバカみたいな話しような……加蓮。


「な…お……?ねえ奈緒ってば!奈緒!」


あたりに広がる泣き叫ぶような声の中、優しく冷たい雨が加蓮を濡らしていった。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:43:49.39 ID:pEANMrWe0


ーーーーーーーーーーーー

あれから何年……何十年が経っただろう。

昨日のように雨が降る夜は、あの日のことをつい思い出してしまう。


私の大切な……友達の話。

125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:44:16.83 ID:pEANMrWe0
あの日から私はまた1人で暮らし始めた。

あれから、不慣れながらも奈緒のお墓を建てた。目の前で亡くなったのを見たし、埋葬したのも自分だけど、いつかひょこり出てきて元気な声で「加蓮ー!」ってくれるような気がした。

奈緒のいない生活は元に戻っただけといえばそれまでだけど、その生活は退屈で味気なかった。

寂しくて……退屈で。慣れてたはずなのに久しぶりに感じるそれは思った以上に辛くて。
街に出て、楽しげに笑い合う人たちを見ると今すぐにでも奈緒の元にいこうと思ったこともあった。

だけど、奈緒はそんなこと望んでいないはず。奈緒に救われた命なんだから精一杯生きなきゃ。
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/22(木) 18:44:49.41 ID:pEANMrWe0
屋敷に篭っててもしょうがないと思い、旅を始めた。変装すれば正体をバレないようにすることなんか簡単なことだ。世界各地をブラブラ旅して、せめてもの罪滅ぼしとして悪い魔物をやっつけたり、影から人間をサポートした。その過程で他の吸血鬼を見つけることはなかったけど、きっと上手く隠れているんだろう。



昨日の雨はすっかりやみ、今日は快晴。今日はどこにいこうかな……。そういえばここはあの屋敷の近くだっけ。
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:46:34.46 ID:pEANMrWe0
のんびり森の街道を歩いていると、遠目に大きな魔物に襲われている集団を見かけたので急いで駆けつける。

「獄炎魔法!」

私の唱えた魔法で魔物は消し炭になる。
辺りを見渡すと血まみれの人たち。私が駆けつけるのがもう少し早かったら……。

一人一人脈を確認するとまだ脈がある人を1人見つけた。気絶してるけど、運良く軽傷みたい。


その子は、かなりボリュームのある髪を後ろにまとめ、切りそろえた前髪の下には太い眉が見えた。


128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 18:48:46.27 ID:pEANMrWe0

ふふっ、面白いこともあるもんだね。長生きはするものかも。


私がその子に回復魔法をかけると、苦しんでいた顔がどこか楽になった気がした。


また私の生活が彩られるのかな……。


私はその子を両腕で抱き抱えると、あの屋敷へと歩き出した。

129 : ◆sWs1XPoFz2Ci :2018/03/22(木) 18:51:38.94 ID:pEANMrWe0
以上で完結です。
至らぬ点も多々あったとは思いますが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

未回収の伏線的なものはそのうち書こうと思っている番外編で回収予定です。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 20:46:18.29 ID:1T8nhgvNo
おつ
何か三島の卒都婆小町を思い出した
番外編も待ってる
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/22(木) 22:00:52.30 ID:pEANMrWe0
参考までに聞いておきたいんですが、加蓮過去編と本編ifルートだとどっちの方がいいですかね
意見が多い方を書くというわけではありませんが
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 22:35:49.70 ID:1T8nhgvNo
正直どっちも見たいから >>1の書きたい方で
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 00:10:18.21 ID:5gAiWD9po
両方見たいに決まってるじゃないか(錯乱
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 07:51:50.12 ID:7Bp0P3M00
出来たら両方見たい
135 : ◆sWs1XPoFz2Ci :2018/03/23(金) 19:12:50.00 ID:22vaEn/i0
ありがとうございます
加蓮過去編から書いて、余力があればifルートにいこうと思います。
今のところスレタイは
加蓮「私が変わった日」か、加蓮「あの日の約束」
にする予定ですが変えるかもしれません。
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