加蓮「……ねえ、私の眷属になってよ」奈緒「え……」

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1 : ◆sWs1XPoFz2Ci :2018/03/21(水) 03:16:18.81 ID:RrjEOvhp0
なおかれ吸血鬼ものです
ドラクエのような中世ヨーロッパのファンタジーな世界観の物語です
戦闘シーンがときどきあります
もしかしたら登場人物の死亡シーンがあるかもしれません

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1521569778
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/21(水) 03:17:42.32 ID:RrjEOvhp0
「……よしっ、掃除終わりっと」

城門前の掃き掃除を終え、箒を持ちながら城の廊下を歩く。
ここはスニエーク王国のお城。大陸の真ん中にある小さな国だ。
にしてもなんであたしがメイドなんかしてるんだよ……絶対似合わないだろ……。

「あっ、ナオ。おつかれさまです」

「おう、アーニャ!これから勉強か?」

「いえ、これからは食事会ですね。」

他愛もない話をしながら2人で廊下を歩く。
アーニャはこの国の王女様。王様の一人娘でそのうち王位を継ぐことになるらしい。
本当は敬語を使うべきなんだろうけど昔から仲よかったからかタメ口のほうがいいらしい。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/21(水) 03:18:43.18 ID:RrjEOvhp0
「しっかし、あたしがメイドなんて似合ってないと思うんだよなぁ。なんてったって元は部隊の隊長だぜ?」

「似合ってますよ?」

「そうか?あたしは戦いの方が性に合ってる気がするよ」

「ンー、でも、去年、魔王が倒されてから魔物、減りましたね?」

「ああ、そうだな」

去年、勇者達によって魔王が倒された。それによって魔物達は力を失い、人間を襲う事もほぼなくなった。無抵抗の魔物を[ピーーー]のは忍びない、ということで人間と魔物は住み分けしてそれぞれ別の場所で暮らしている。それでもところどころで小競り合いは起きているらしいが。

「魔物もいないのに、兵士がたくさんいると、国が大変、ですね?」

「それは……そうだけどよ……」

「まあ、これは建前、です」

「え?」

「魔物が少なくなった今、気をつけないといけないのは人間です」

「ああ……」

「先日、遂に領土の奪い合いがおきてしまいました」

「だったら、戦争に備えて戦力を強化しなきゃならないんじゃないか?ただでさえ小国なのに軍を縮小してる場合じゃ……」

「ダー。その通りです。平和になったので、どの国も軍隊を縮小してますがそれは表向きは、です」

「じゃあ……この国も……?」

「ハイ。ナオ以外の辞めた兵士達は秘密裏に訓練しています」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:19:39.92 ID:RrjEOvhp0
「じゃあ、なんで私だけ……」

「それは、ナオが私のボディーガードとしてメイドさんをしてもらうからです」

「私がアーニャの?」

「ダー。メイドさんは私の横にいても、敵に警戒されません。それに、ナオは腕が立ちますし、仲良しです。」

「そういうことか……」

「お城にいるときは、兵士もいます。だからできるかぎりで結構です。でも、外に行くときはナオと一緒にいます」

「そういえばここ最近アーニャと一緒にいる時間多かったよな……」

「本当は初めに伝えるべきだったんですが、タイミングがなくて……」

「別にいいよ。ちゃんと話してくれたんだし」

アーニャは歩きながら申し訳なさそうにしていた。
あたしだけ他のメイドさんと比べてメイドの仕事少ないなぁ、と思ってたんだけどこれで合点がいった。いつアーニャが狙われるかわからないし、私も訓練続けておかないとな!

「着きました。これから勉強なので、私はここで、失礼します」

「おっ、そうか。またな」

「ダー」

そういってアーニャは部屋に入っていった。普段はメイドとして仕事してアーニャが外出するときについて行くということか。なるほど。
さて、私も仕事仕事っと。次は夕食の準備だったかな……
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:20:25.40 ID:RrjEOvhp0
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翌日 書庫

今日は午前中アーニャが勉強してる間は書庫の整理だったな。しっかし本が多いな……。書庫だから当たり前だけども。

ん?机の上に置きっぱなしの本がある。だしたらちゃんとしまえよなー。どれどれ……。

『吸血鬼とその対処法』

吸血鬼、か。本の整理にも飽きてきたしちょっと読んでみるか。
近くにあった椅子に腰掛けて本を読み始める。

『吸血鬼は別名ヴァンパイアと呼ばれ、人と非常によく似た容姿をしているが、吸血のための牙を持っていたり、鏡に映らなかったりするのが特徴。吸血鬼は知性が高く人語を話し、非常に高い魔力を持つ。
そしてなにより吸血鬼を語る上で外せないのが人の血を吸うということだ。吸血鬼に血を吸われるとそのまま血を吸い尽くされて死ぬか、吸血鬼の眷属にさせられると言われているが、詳細は不明。』

ふむふむ……。そういえば吸血鬼は兵士やってた時も出会ったらすぐに逃げろって言われてたな。やっぱ強いんだろうなぁ。眷属になるなんて真っ平御免だし。

『弱点は日光だと言われている。吸血鬼のいるであろう場所は夜中には近づかないのが懸命だ。もし出会ってしまったときは逃げること。桁外れの魔力を持っているため並大抵の人間では勝てないからだ。銀の武器や十字架、流れる水やニンニクが苦手だという報告があるが、証拠はない。』

へー。まあ吸血鬼のいるところに近づくことはないだろうけど一応覚えとくか。
ん?足音……。こんなところに誰だ?

「ナオ!」

「アーニャか。勉強は終わったのか?」

「ダー!お手伝いにきました」

「ありがとな」

読んでいた吸血鬼の本をしまい、2人で書庫整理を始める。しっかしアーニャはなんていい子なんだ……。私がしっかり守らないとな。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:21:13.96 ID:RrjEOvhp0
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ある日

晴れとも言えず、曇りとも言えない天気の中、あたしは出かける用意をしていた。
これで準備出来たかな……。おっと、剣もちゃんと持っていかないとな。
今日はアーニャがお隣のヴァルガルズ王国に行く日だ。あたしたちのスニエーク王国と友好国であるミズガルズ王国とはよく食事会を行っている。

「ナオ、準備出来ましたか?」

「ああ、ちょうど終わったところだ」

「それじゃあ、いきましょうか」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:21:47.94 ID:RrjEOvhp0
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国を出て、馬車に揺られること数時間。あたしたちは現在魔物が出る森を通過している。魔物が出る森だが、街道を通る限り危険は少ないとのこと。
だから今回ヴァルガルズ王国に行くメンバーはあたしとアーニャ、それに城の兵士数人だ。
城の警備を怠るわけにはいかないから少数だ。
のんびりアーニャと話していると外から叫び声が聞こえてきた。

「うわああああ!」

「どうしたんだ!」

「魔物だ!魔物がでたぞ!」

「いっても1、2体だろ?そんなに叫ばなくてもいいだろ」

「そんなもんじゃない!軽く10体は超えている!」

「なんだって!」

急いで馬車から出て剣を鞘から抜き、戦闘態勢をとる。
戦いはまず、状況の整理からだ。敵の数は10数体。こちらの兵士の数だと全員倒すのは厳しいだろう。こちらが絶対にしてはいけないのはアーニャを危険な目に合わせること。そういうことなら……。

「みんな!聞いてくれ!」

「まず馬車を運転してるやつ!あたしと兵士達で道を切り開くからアーニャを無事にヴァルガルズ王国まで送り届けてくれ!」

「わかった!まかせろ!」

「次に他の兵士達!死ぬ気で姫様を守ってくれ!」

「おう!」

「あたしは道を防ぐ魔物を倒す!」

「いくぞ!」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:22:15.20 ID:RrjEOvhp0
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「はぁっ!」

あたしの一撃が魔物に直撃し、魔物が地に伏せる。
よしっ、これで道は開けた!

「道は開けた!行ってくれ!」

「でも、これじゃあナオ達が!」

「大丈夫だ。馬も何頭か残ってるし、アーニャが逃げる時間を稼いだら頃合いをみてあたし達も逃げるよ。」

「でも……」

「大丈夫だ。先に行って待っててくれ」

「……わかりました!また後で!」

アーニャを乗せた馬車が駆け抜けていく。よし、後は時間稼ぎだ。足を狙って機動力を奪う!
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:22:46.60 ID:RrjEOvhp0
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「はあっ!」

勢いよく魔物の足を切り裂く。見渡すと、他の兵士達もうまくやれているようだ。

なんだか違和感がする。魔物達の殺気が少ない。というか何かに怯えているような……?

「ギィヤァァァ!!」

突然聞こえた鳴き声に振り向く。そこには巨大な猿型の魔物がいた。
3メートルを超える巨体に、遠目からでもわかる筋肉は自分の力を余すことなく誇示していた。

魔法が得意ではないあたしでは相手にならないことは一目瞭然だ。他の兵士達の中には魔法が得意なやつもいるが、あの魔物の攻撃を回避しながらだとなかなか難しいだろう。
アーニャが逃げる時間も十分に稼いだし頃合いか……。
あたしは剣を鞘に納めて叫ぶ。

「みんな!撤退だ!馬に乗れ!」

あたしの合図であたし達は各自、戦う前に止めておいた馬に向かって駆け出す。
あの魔物もそれを許そうとはせず、1人、また1人とやられていく。
くっ……。心苦しいが勝てる相手じゃない。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:23:15.33 ID:RrjEOvhp0
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決死の思いで走り、なんとか馬までたどり着いた。
後ろからはあの魔物が迫ってくる様子は何故かない。
今がチャンスだと急いで馬にまたがる。

いざ駆け出そうとした瞬間、目の前に木の山が降ってきた。後ろを振り向くと、あの猿型魔物の周りの木が無くなっていた。どうやら周りの木をむしり取って私たちの目の前に投げ、逃げ道を防いだらしい。

まずは逃げ道を防ぐとは……。まったく……賢い野郎だぜ。
こうなったら戦うしかない!

あの魔物は逃げ道を防いだことを確認するとこちらに向かってきている。
あたしは馬から降り、再び剣を抜いて斬りかかる。

「えいや!」

あたしの剣が真っ二つに折れる。

「えっ……」

くそっ!国から支給される剣じゃダメか!武器がなかったらどうにもならねぇ……。得意じゃないけど魔法で……!

「火炎魔法!」

だめだ……。魔物の体毛が少し焦げたぐらいでまともなダメージになっていない。万事休すか……。

魔物の手があたしに向けて振り下ろされる。
なんとか、かわし続けているがこれも時間の問題だろう。なにか、なにか方法はないのか!?

「ガハッ……」

魔物の攻撃をモロに受け、森の中に吹き飛ばされる。
くそっ、打開策を考えるのに夢中になりすぎたか。
魔物はトドメを刺したと思ったのかこれ以上追ってこない。

それにしてもこれは本格的にやべぇ……。体も動かないし、視界もぼやけてきた……。アーニャと約束したのに……。くそ……。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:23:54.10 ID:RrjEOvhp0
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「いってて……」

なんとか生きてるか……。
まだ残る痛みを堪えながら目を覚ますと、待っていたのは静寂だった。かすかに聞こえるのは、窓から見える森に住む鳥のさえずりだけ。いつのまにか寝かされていたベッドから体を起こす。

いったいここはどこなんだ?おそらくあたし達が戦ってた森の中なんだろうけど。窓からの景色を見る限りはここは二階か。それにしても豪華な部屋だな。

「あっ、起きた?」

「うわっ!?誰だ!?」

赤みがかった茶髪の、真紅のドレスを着た女の人が突然話しかけてきた。深い赤色が、どこか儚げな雰囲気によく似合っている。

「そんなに驚かなくてもいいじゃん。私は加蓮。この屋敷で1人で暮らしてる」

「そうか……。あたしは奈緒だ。お前が助けてくれたんだよな?礼を言うよ。ありがとう」

「どういたしまして」

加蓮という人はベッドの横にある椅子に腰掛ける。その立ち振る舞いからはどこか気品が感じられる。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:25:16.84 ID:RrjEOvhp0
さて、これからどうしよう。取り敢えずアーニャのいるであろう〇〇国に行かないとな……。

……待てよ。よく考えるとここはどこだ?それにこの加蓮っていう人は、なんで森で倒れてたあたしを助けてくれたんだ?

「なぁ加蓮……だっけ。いろいろ聞いてもいいか?」

「あ、やっと?すぐに聞かれると思ったんだけど」

「こっちも突然のことでいろいろ考えてたんだよ」

「はいはい」

「んで、聞いてもいいか?」

「うん。なんでもどうぞ」

「まずここはどこなんだ?」

「ここはスニエーク王国の南の森にある、私の屋敷だよ」

「え?でもこの森って魔物が出るよな?そこに住んでるのか?」

「まあね。でも、私の敵じゃないし」

「は……?」

当たり前だというように加蓮は話す。
あんなに強い魔物がいて何言ってるんだこいつ。
そうとう腕が立つ人なのか?
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:26:39.01 ID:RrjEOvhp0
「それであの後どうなったんだ?」

「あの後?私がそこに着いたときにはアンタ以外全員死んでたよ。」

「くっ、そうか……。」

あたしは死んでいった兵士たちに黙祷を捧げる。
あたしも死んでいてもおかしくなかったんだ……。そう思うと突然恐怖が込み上げてくる。

「それで、加蓮はなんでこの森に?魔物ばっかりだし危ないだろ?」

「確かにそうだけど、人間社会では苦手なものが多くてまともに生きづらいし、しょうがないよね」

「え?どういうことだ?」

「だって私、吸血鬼だし」

「吸血鬼!?」

「そうだよ?あ、これ見る?」

加蓮は見せつけるように牙を見せてくる。たしかにあの本に書いてた牙にそっくりだ……。

それにしても吸血鬼ってあの本に書いてあったあの吸血鬼か!?まじかよ……。
に、逃げなきゃ……。

急いでベッドから立ち上がろうとするも、体が痛み上手く動けない。

「まあまあ、体も満足に動かないだろうし、少しお話でもしようよ」

あたしは立ち上がろうとするのを諦め、ベッドの上に座る。
これはやばいことになったな……。幸いにも、今のところあたしに危害を加える気は無いみたいだし、慎重にいかないと。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:27:21.33 ID:RrjEOvhp0
「きゅ、吸血鬼のってあの吸血鬼か?」

「うん、そうだよ?」

「じゃ、じゃあなんで吸血鬼なのに私を助けてくれたんだ?」

「なんでだと思う?」

加蓮がいたずらっぽく笑顔であたしに聞いてくる。
吸血鬼のくせしてかわいい顔してるなこいつ……。おっと、そんなことはどうでもいい。吸血鬼が人を殺さずにして生かしておく理由ってなんだ……。ハッ!

「もしかしてあたしのち、血が目当てか!?」

「うーん、半分正解で半分間違いかな」

「どういうことだ?」

「うーん、順を追って説明しようか」

「私は確かに血が好き。でも、普段は人間を襲わずに魔物の血で我慢してるんだけど、やっぱ人の血のが美味しいんだよね」

「…………」

「そしたらちょうど魔物に襲われた後を見つけてさ。」

「それでギリギリ生きてたあたしの血を吸おうとしたわけだ」

「そういうこと。でも、酷い怪我でね。これ以上血を吸ったら死んじゃうなって状態。ここで死なせるぐらいなら私専用の血液パックになってもらおうかなって」

「ん?つまりどういうことだ?」

加蓮は淡々と話しているがあたしの頭の中は大パニックだ。
吸血鬼が人を助ける?聞いたことがない!
それに血液パックって……


「……ねぇ、私の眷属になってよ」

「え……」
15 : ◆sWs1XPoFz2Ci :2018/03/21(水) 03:29:01.82 ID:RrjEOvhp0
まだまだ導入ですが眠いので今回はここまで
sagaし忘れて一箇所やられてしまいましたね……
書き溜めは完結はしてるので安心してください。
質問や見にくいなどの意見があればなんでもどうぞ
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